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特開2022-102737多心ケーブルの検査装置及び多心ケーブルの検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102737
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】多心ケーブルの検査装置及び多心ケーブルの検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/54 20200101AFI20220630BHJP
   G01R 31/50 20200101ALI20220630BHJP
   G01R 31/58 20200101ALI20220630BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
G01R31/54
G01R31/50
G01R31/58
H01B13/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217644
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】白川 洋平
【テーマコード(参考)】
2G014
【Fターム(参考)】
2G014AA13
2G014AB38
2G014AC18
(57)【要約】
【課題】複数の絶縁電線を有する多心ケーブルの両端部における絶縁電線の端部同士の対応関係を精度よく特定することが可能な技術を提供する。
【解決手段】絶縁電線の端部同士の対応関係を特定する多心ケーブルの検査装置であって、絶縁電線の一方の端部に、容量結合により検査信号を入力する信号入力手段と、絶縁電線のそれぞれの他方の端部から、容量結合により検査信号を出力する信号出力手段と、検査信号の電圧を測定して絶縁電線の他方側の端部を特定する対応特定手段とを備え、信号入力手段および信号出力手段のうち少なくともいずれか一方は、信号伝送用ケーブルと基板とを有し、基板の一方の主面には、信号伝送用ケーブルが接続される第1電極が設けられ、基板の他方の主面には、絶縁電線と容量結合される第2電極が設けられ、基板の内部には、第1電極と第2電極とに接続され、検査信号を伝送する伝送路が設けられ、基板には、伝送路へのノイズの侵入を抑制するシールド層が設けられている、多心ケーブルの検査装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁電線を有する多心ケーブルの両端部における前記絶縁電線の対応関係を特定する多心ケーブルの検査装置であって、
前記多心ケーブルの一方の端部にて露出された複数の前記絶縁電線の端部のうち、検査対象となる前記絶縁電線の端部に、容量結合により検査信号を入力する信号入力手段と、
前記多心ケーブルの他方の端部にて露出された複数の前記絶縁電線のそれぞれの端部から、容量結合により検査信号を出力させる信号出力手段と、
前記信号出力手段から得られた検査信号の電圧を測定し、当該測定した電圧を基に、前記検査対象となる絶縁電線の他方側の端部を特定する対応特定手段と、を備え、
前記信号入力手段および前記信号出力手段のうち少なくともいずれか一方は、検査信号を伝送する信号伝送用ケーブルと、前記信号伝送用ケーブルが接続される基板と、を有し、
前記基板の一方の主面には、前記信号伝送用ケーブルの信号導体が接続される第1電極が設けられ、
前記基板の他方の主面には、前記絶縁電線の端部と容量結合される第2電極が設けられ、
前記基板の内部には、前記第1電極と前記第2電極との間で前記検査信号を伝送する伝送路が設けられ、
前記基板には、前記伝送路へのノイズの侵入を抑制するシールド層が設けられている、
多心ケーブルの検査装置。
【請求項2】
前記シールド層は、前記一方の主面上において前記第1電極と非接触な状態を保ちつつ前記第1電極の周囲を取り囲む第1シールド層、および、前記他方の主面上において前記第2電極と非接触な状態を保ちつつ前記第2電極の周囲を取り囲む第2シールド層のうち、少なくともいずれか一方を有する、
請求項1に記載の多心ケーブルの検査装置。
【請求項3】
前記第1電極は、前記一方の主面上に複数設けられており、
前記第1シールド層は、前記一方の主面上において、複数の前記第1電極の全体をまとめて取り囲むように設けられている、
請求項2に記載の多心ケーブルの検査装置。
【請求項4】
前記第2電極は、前記他方の主面上に複数設けられており、
前記第2シールド層は、前記他方の主面上において、複数の前記第2電極のそれぞれを個別に取り囲むように複数設けられている、
請求項2または3に記載の多心ケーブルの検査装置。
【請求項5】
複数の前記第2シールド層は、前記他方の主面上において、互いに非接触な状態を保つように設けられている、
請求項4に記載の多心ケーブルの検査装置。
【請求項6】
前記第1電極と、前記第2電極とは、前記基板を挟んで対向しない位置に設けられており、
前記伝送路は、前記基板の内部に、前記第1電極と前記第2電極とを結ぶように前記基板の主面内方向に沿って延在する部分を有する、
請求項2~5のいずれか1項に記載の多心ケーブルの検査装置。
【請求項7】
前記シールド層は、前記基板の内部に、前記基板の主面内方向に沿って面状に広がる第3シールド層を有し、
前記第3シールド層と、前記第1シールド層および前記第2シールド層のうち少なくともいずれか一方とで、前記伝送路のうち前記基板の主面内方向に沿って延在する部分を挟むように構成されている、
請求項6に記載の多心ケーブルの検査装置。
【請求項8】
複数の絶縁電線を有する多心ケーブルの両端部における前記絶縁電線の対応関係を特定する多心ケーブルの検査方法であって、
前記多心ケーブルの一方の端部にて露出された複数の前記絶縁電線の端部のうち、検査対象となる前記絶縁電線の端部に、容量結合により検査信号を入力する信号入力工程と、
前記多心ケーブルの他方の端部にて露出された複数の前記絶縁電線のそれぞれの端部から、容量結合により検査信号を出力させる信号出力工程と、
前記信号出力工程を行うことで得られた検査信号の電圧を測定し、当該測定した電圧を基に、前記検査対象となる絶縁電線の他方側の端部を特定する対応特定工程と、
を有し、
前記信号入力工程および前記信号出力工程のうち少なくともいずれか一方では、
検査信号を伝送する信号伝送用ケーブルの信号導体が接続された第1電極を一方の主面に有し、第2電極を他方の主面に有し、内部に前記第1電極と前記第2電極との間で検査信号を伝送する伝送路を有する基板を用い、前記第2電極と前記絶縁電線の端部とを容量結合させ、
前記基板に設けられたシールド層により、前記伝送路へのノイズの侵入を抑制させる、
多心ケーブルの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多心ケーブルの検査装置及び多心ケーブルの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の絶縁電線を有する多心ケーブルが知られている。例えば、医療用の多心ケーブルとして、数十本~数百本もの絶縁電線を有するプローブケーブルが知られている。
【0003】
数十本~数百本もの絶縁電線を有する多心ケーブルにおいては、絶縁体の識別のために付される識別色を全ての絶縁電線間で異ならせることは困難である。また、多心ケーブルの内部で複数の絶縁電線が互いに撚り合わせられている場合、多心ケーブル内における絶縁電線の位置は端部断面内において不定となり、絶縁電線の端部同士の対応関係の識別は困難となる。そのため、多心ケーブルをコネクタや回路基板等へ接続させる際には、多心ケーブルの両端から露出させた絶縁電線の端部同士の対応関係を特定するための検査が必要となる。
【0004】
上述の検査を行う際、例えば、多心ケーブルの一方の端部において露出された任意の絶縁電線の導体に検査信号を入力し、多心ケーブルの他方の端部において露出された絶縁電線の導体から出力される検査信号を測定する装置が用いられる場合がある。
【0005】
上述の装置を用いて検査を行う際、絶縁電線の導体に検査信号を直接的に入力しようとすると、複数の絶縁電線の導体の全てに対して電極を物理的に接触させる必要が生じ、検査の準備や実施に多大な時間を要してしまう。そこで、絶縁体上に電極を配置し、容量結合により検査信号を入力する検査技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-251771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、複数の絶縁電線を有する多心ケーブルの両端部における絶縁電線の端部同士の対応関係を精度よく特定することが可能な多心ケーブルの検査装置及び多心ケーブルの検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、
複数の絶縁電線を有する多心ケーブルの両端部における前記絶縁電線の対応関係を特定する多心ケーブルの検査装置であって、
前記多心ケーブルの一方の端部にて露出された複数の前記絶縁電線の端部のうち、検査対象となる前記絶縁電線の端部に、容量結合により検査信号を入力する信号入力手段と、
前記多心ケーブルの他方の端部にて露出された複数の前記絶縁電線のそれぞれの端部から、容量結合により検査信号を出力させる信号出力手段と、
前記信号出力手段から得られた検査信号の電圧を測定し、当該測定した電圧を基に、前記検査対象となる絶縁電線の他方側の端部を特定する対応特定手段と、を備え、
前記信号入力手段および前記信号出力手段のうち少なくともいずれか一方は、検査信号を伝送する信号伝送用ケーブルと、前記信号伝送用ケーブルが接続される基板と、を有し、
前記基板の一方の主面には、前記信号伝送用ケーブルの信号導体が接続される第1電極が設けられ、
前記基板の他方の主面には、前記絶縁電線の端部と容量結合される第2電極が設けられ、
前記基板の内部には、前記第1電極と前記第2電極との間で前記検査信号を伝送する伝送路が設けられ、
前記基板には、前記伝送路へのノイズの侵入を抑制するシールド層が設けられている、多心ケーブルの検査装置が提供される。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、
複数の絶縁電線を有する多心ケーブルの両端部における前記絶縁電線の対応関係を特定する多心ケーブルの検査方法であって、
前記多心ケーブルの一方の端部にて露出された複数の前記絶縁電線の端部のうち、検査対象となる前記絶縁電線の端部に、容量結合により検査信号を入力する信号入力工程と、
前記多心ケーブルの他方の端部にて露出された複数の前記絶縁電線のそれぞれの端部から、容量結合により検査信号を出力させる信号出力工程と、
前記信号出力工程を行うことで得られた検査信号の電圧を測定し、当該測定した電圧を基に、前記検査対象となる絶縁電線の他方側の端部を特定する対応特定工程と、
を有し、
前記信号入力工程および前記信号出力工程のうち少なくともいずれか一方では、
検査信号を伝送する信号伝送用ケーブルの信号導体が接続された第1電極を一方の主面に有し、第2電極を他方の主面に有し、内部に前記第1電極と前記第2電極との間で検査信号を伝送する伝送路を有する基板を用い、前記第2電極と前記絶縁電線の端部とを容量結合させ、
前記基板に設けられたシールド層により、前記伝送路へのノイズの侵入を抑制させる、多心ケーブルの検査方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の絶縁電線を有する多心ケーブルの両端部における絶縁電線の端部同士の対応関係を精度よく特定することが可能な多心ケーブルの検査装置及び多心ケーブルの検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態にかかる検査装置1の回路構成を示す図である。
図2図2は、検査装置1に多心ケーブル2をセットした様子を示す模式図である。
図3図3(a)は、長手方向に垂直な多心ケーブル2の断面を模式的に示す断面図である。図3(b)は、長手方向に垂直な絶縁電線3の断面を模式的に示す断面図である。
図4図4(a)、図4(b)は、それぞれ、絶縁電線3の検査台45への固定方法を説明する図である。
図5図5は、本発明の一実施形態にかかる厚さ方向に沿った基板44の断面を模式的に示す部分断面拡大図である。
図6図6は、本発明の一実施形態にかかる基板44の主要部を部分的に抜き出した斜視図である。
図7図7は、絶縁電線3の端部同士の対応関係を検査する際の制御フローを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本発明の一実施形態>
(1)多心ケーブルの検査装置の構成
本実施形態にかかる検査装置1は、複数の絶縁電線3を有する多心ケーブル2の両端部における絶縁電線3の対応関係を特定する装置として構成されている。
【0013】
まず、検査対象となる多心ケーブル2の構成について説明する。
【0014】
図3(a)に断面図を示すように、多心ケーブル2は、複数の絶縁電線3と、束ねられた複数の絶縁電線3の外周を一括して囲うように設けられたシールド21と、シールド21の外周を被覆するように設けられたジャケット22と、を備えている。シールド21は、例えば、銅(Cu)やCu合金等からなる金属素線の編組により構成することができる。ジャケット22は、シリコーンゴム等の可撓性、摺動性を有する材料により構成することができる。多心ケーブル2に含まれる絶縁電線3の本数は特に限定されるものではないが、例えば、10本~300本程度とすることができる。
【0015】
図3(b)に断面図を示すように、絶縁電線3は、心線としての導体31と、導体31の外周を被覆するように設けられた絶縁被覆層32と、を備えている。導体31は、例えば、Cu、Cu合金、アルミ(Al)、Al合金等により構成することができる。絶縁被覆層32は、例えば、ポリイミド、エナメル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の絶縁材料(誘電体)により構成することができる。絶縁被覆層32を含む絶縁電線3の外径は、例えば、0.2mm~0.5mm程度とすることができる。また、絶縁電線3は、同軸構造であってもよい。
【0016】
次に、検査装置1の全体構成について説明する。
【0017】
図2に示すように、検査装置1は、信号入力手段4と、信号出力手段6と、を備えている。信号入力手段4は、多心ケーブル2の一方の端部にて露出された絶縁電線3の端部のうち、検査対象となる絶縁電線3の端部に、容量結合により交流の検査信号を入力するよう構成されている。信号入力手段4は、検査信号を発生する電圧源41と、絶縁電線3の外周面に接触することで、容量結合により絶縁電線3に検査信号を入力する基板44と、を有している。
【0018】
信号出力手段6は、各絶縁電線3に押し付けられた基板61を介し、容量結合により絶縁電線3からの出力信号を出力させるよう構成されている。信号出力手段6は、出力された信号を受信し、受信した検査信号をもとに、絶縁電線3の対応関係の特定を行う演算装置8を有している。
【0019】
続いて、検査装置1の具体的構成について説明する。
【0020】
図1に回路構成を示すように、検査装置1は、信号入力手段4と、信号出力手段6と、対応特定手段81を実現するコンピュータとして構成された演算装置8と、を備えている。信号入力手段4と信号出力手段6との間に、上述の多心ケーブル2をセットして、多心ケーブル2の両端部における絶縁電線3の対応関係を検査することが可能なように構成されている。
【0021】
信号入力手段4は、多心ケーブル2の一方の端部にて露出された複数の絶縁電線3の端部のうち、検査対象となる絶縁電線3の導体31の端部に、容量結合により検査信号Vを入力するように構成されている。
【0022】
具体的に説明すると、信号入力手段4は、検査信号Vを発生する電圧源41と、この検査信号Vを増幅する第1アンプ42と、第1アンプ42で増幅された検査信号Vの入力先を回路の切り替えにより選択する第1スイッチ装置43と、第1スイッチ装置43より出力された検査信号Vを基板44へと伝送する信号伝送用ケーブル47と、信号伝送用ケーブル47が接続される基板44と、を備えている。
【0023】
信号伝送用ケーブル47は、複数の絶縁電線と、束ねられた複数の絶縁電線の外周を一括して囲うように設けられたシールドと、シールドの外周を被覆するように設けられたジャケットとを有する点で、上述の多心ケーブル2と略同様に構成されている。信号伝送用ケーブル47が有する絶縁電線の心線は、検査信号Vを伝送する信号導体として機能する。特に、信号伝送用ケーブル47に用いられる絶縁電線は、外来ノイズの影響を受けにくくするために、同軸構造であることが好ましい。
【0024】
基板44の一方の主面には、信号伝送用ケーブル47の信号導体が接続される第1電極441が設けられており、他方の主面には、後述するように多心ケーブル2の絶縁電線と容量結合される第2電極442が設けられている。また、基板44の内部には、第1電極441と第2電極442との間で検査信号Vを伝送する伝送路430が設けられている。基板44の詳しい構成については後述する。
【0025】
以上の構成により、電圧源41から、信号伝送用ケーブル47等を経由して、第1電極441に向けて検査信号Vが伝送され、第1電極441から、基板44の内部に設けられた伝送路430を介して、第2電極442に向けて検査信号Vが伝送されることとなる。
【0026】
また、信号入力手段4は、図4(a)、図4(b)に示す検査台45をさらに備えている。多心ケーブル2の一方の端部にて露出された複数の絶縁電線3は、検査台45上に整列した状態で固定される。具体的に説明すると、検査台45は、台座451と、台座451の主面上に対向するように配置された一対の係止壁452と、を備えている。一対の係止壁452のそれぞれには、絶縁電線3を係止(挟持)することが可能な係止溝452aが、例えば、等間隔で複数配置されている。複数の絶縁電線3は、それぞれの端部がこれらの係止溝452aに挟み込まれ固定されることで、台座451上に、所定の間隔を保ちつつ、略平行に並列配置されることとなる。なお、検査台45上に複数の絶縁電線3を固定する手法は、ここに示した手法に限らず、例えば、台座451上に貼り付けた粘着テープを用いてもよい。また、絶縁電線3の配列間隔についても適宜変更可能である。
【0027】
上述したように、第2電極442には検査信号Vが伝送される。図4(a)に示すように、第2電極442は、基板44の一主面上に、検査台45上に固定される複数の絶縁電線3と同様の配列間隔を保ちつつ、絶縁電線3の整列方向に沿うように、一列に配列するように複数設けられている。なお、第2電極442の数は、係止溝452aに固定される絶縁電線3の数と同程度とすることができ、また、絶縁電線3の数よりも多くすることもできる。
【0028】
基板44に設けられた複数の第2電極442のそれぞれを、台座451上に固定された複数の絶縁電線3のそれぞれに押し付けることにより、複数の絶縁電線3の外周上に、複数の第2電極442をそれぞれ当接させることができる。すなわち、絶縁電線3の導体31と、第2電極442とを、誘電体からなる絶縁被覆層32を挟んで対向配置させる(容量結合させる)ことができる。この状態で、第2電極442に対して検査信号Vを伝送することで、第2電極442に対向配置させた絶縁電線3の導体31に対し、容量結合により、検査信号Vを入力することが可能となる。
【0029】
なお、容量結合を用いた検査信号の入力効率を向上させるため、検査信号Vとしては、直流信号ではなく、交流信号を用いることが好ましい。この場合、検査信号Vの周波数は、多心ケーブル2の構造等に応じて適宜設定することが可能であり、例えば、多心ケーブル2固有の共振周波数よりも小さい周波数とすることができる。検査信号Vの周波数は、例えば、1MHz~10MHzの範囲内の所定の周波数とすることができる。
【0030】
なお、図4(a)、図4(b)には、便宜上、基板44が備える種々の構成のうち一部の構成のみを示している。基板44の詳細構成については後述する。
【0031】
信号出力手段6は、多心ケーブル2の他方の端部にて露出された複数の絶縁電線3のそれぞれの端部から、容量結合により検査信号を出力させるように構成されている。
【0032】
具体的には、信号出力手段6は、上述の検査台45と同様に構成された検査台(不図示)と、基板61と、上述の信号伝送用ケーブル47と同様に構成された信号伝送用ケーブル67と、を備えている。
【0033】
基板61の構成は、上述の基板44の構成とほぼ同様である。すなわち、基板61の一方の主面には、信号伝送用ケーブル67の信号導体(心線)が接続される第3電極(不図示)が設けられており、他方の主面には、上述の第2電極442と同様に多心ケーブル2の絶縁電線と容量結合される第4電極661(図1参照)が設けられている。また、基板61の内部には、第3電極と第4電極661との間で検査信号Vを伝送する伝送路(不図示)が設けられている。基板61が備える第3電極、第4電極661、伝送路は、それぞれ、基板44が備える第1電極441、第2電極442、伝送路430と略同様に構成されている。
【0034】
基板61に設けられた複数の第4電極661のそれぞれを、検査台の台座(いずれも不図示)上に整列した状態で固定された絶縁電線3のそれぞれに向けて押し付けることにより、複数の絶縁電線3の外周上に、複数の第4電極661をそれぞれ当接させることができる。すなわち、絶縁電線3の導体31と、第4電極661とを、誘電体からなる絶縁被覆層32を挟んで対向配置させる(容量結合させる)ことができる。この状態で、絶縁電線3の導体31に対して検査信号Vが入力されることで、絶縁電線3の導体31に対向配置している第4電極661に対し、容量結合により、検査信号Vが伝送される。そして、第4電極661から、基板61の内部に設けられた伝送路を介して、第3電極(いずれも不図示)に向けて検査信号Vが伝送されることとなる。
【0035】
また、信号出力手段6は、第3電極から信号伝送用ケーブル67を介して伝送された検査信号Vの出力先を回路の切り替えにより選択する第2スイッチ装置62と、第2スイッチ装置62から出力された検査信号Vを増幅する第2アンプ63と、第2アンプ63で増幅された検査信号Vに、参照信号生成回路7から出力される参照信号を乗算して新たな検査信号Vを生成する乗算器64と、乗算器64で生成された新たな検査信号Vから高周波成分を除去するローパスフィルタ65と、を有している。
【0036】
なお、参照信号生成回路7は、電圧源41から分岐された検査信号Vの位相を調整して参照信号とする移相器71と、移相器71からの参照信号を増幅して乗算器64へと出力する第3アンプ72と、を有している。移相器71での移相量は、容量結合や多心ケーブル2を伝送する際の位相のずれを考慮し、乗算器64において検査信号Vと参照信号とが同位相となるように適宜調整される。乗算器64において、第2アンプ63で増幅された検査信号Vに、参照信号生成回路7から出力される検査信号Vと同位相かつ同周波数の参照信号を乗算すると、これにより得られる新たな検査信号Vは、直流成分と、もとの周波数の2倍の周波数の成分と、を有することとなる。ローパスフィルタ65では、このうち2倍の周波数の成分を除去し、直流成分のみを最終的な検査信号Vとし、これを演算装置8に出力する。
【0037】
演算装置8は、信号出力手段6から得られた上述の検査信号V、すなわち、直流成分のみを有する最終的な検査信号Vの電圧を、第2スイッチ装置62のスイッチング動作を行いながら順次測定し、この測定した検査信号Vの電圧を基に、検査対象となる絶縁電線3、すなわち、第1スイッチ装置43のスイッチング動作に伴って導体31に検査信号Vが入力された絶縁電線3の他方側の端部を特定する対応特定手段81を有している。なお、演算装置8は、CPU、RAM,ROM等のメモリ、ハードディスク等の記憶装置、ソフトウェア、インターフェイス等を備えたコンピュータとして構成されており、これら資源の協調動作により、上述の対応特定手段81を実現するよう構成されている。
【0038】
なお、対応特定手段81は、第1スイッチ装置43及び第2スイッチ装置62の各スイッチング動作を制御するスイッチ制御部811と、検査信号Vの電圧測定結果等を基に絶縁電線3の端部同士の対応関係を判定する判定部812と、を有している。
【0039】
判定部812は、スイッチ制御部811を介して第1スイッチ装置43を制御し、多心ケーブル2の一端にて検査対象となる特定の絶縁電線3の端部に検査信号Vを入力させると共に、第2スイッチ装置62を制御して、多心ケーブル2の他端にて全ての絶縁電線3に対応する検査信号の電圧を順次測定する。
【0040】
そして判定部812は、多心ケーブル2の他端にて露出された各絶縁電線3の端部のうち、検査信号Vの電圧が最も大きいものを、検査対象の絶縁電線3の他方側の端部であるものと特定し、当該対応関係を記憶部82に記憶する。
【0041】
絶縁電線3の端部同士の対応関係は、例えば、多心ケーブル2の一端にて整列配置された絶縁電線3の端部に順次付与された番号と、多心ケーブル2の他端にて整列配置された絶縁電線3の端部に順次付与された番号とを、対応付けることによって表される。判定部812は、検査対象となる絶縁電線3を順次変更して、全ての絶縁電線3の端部同士の対応関係を特定し、記憶部82に記憶する。
【0042】
(2)基板44の構成
以下、基板44の構成について、主に図5図6を用いて詳しく説明する。なお、基板44の平面視形状は、図4においては一例として矩形形状としているが、これに限定されるものでではない。
【0043】
上述したように、基板44の一方の主面(図5における上端側の面)には、信号伝送用ケーブル47の信号導体が接続される第1電極441が設けられている。また、基板44の他方の主面(図5における下端側の面)には、絶縁電線3の一方の端部と向かい合う位置に、絶縁電線3の導体31と容量結合される第2電極442が設けられている。
【0044】
基板44の内部には、第1電極441と第2電極442とを接続し、第1電極441と第2電極442との間で検査信号Vを伝送する伝送路430が設けられている。
【0045】
本実施形態における伝送路430は、基板44の厚み方向に沿って延在する部分(以下、垂直伝送路431)だけでなく、基板44の主面内方向(沿面方向)に沿って延在する部分(以下、沿面伝送路432)を有している。
【0046】
また、本実施形態における基板44は、上述の第1電極441、第2電極442、伝送路430に加えて、伝送路430へのノイズ(静電ノイズなど)の侵入を抑制するシールド層449をさらに備えている。
【0047】
シールド層449は、一方の主面上において第1電極441と非接触な状態を保ちつつ第1電極441の周囲を取り囲む第1シールド層447、および、他方の主面上において第2電極442と非接触な状態を保ちつつ第2電極442の周囲を取り囲む第2シールド層448のうち、少なくともいずれか一方を有している。本実施形態では、一例として、シールド層449が、第1シールド層447および第2シールド層448の両方を有する場合を示している。ただし、本実施形態はこれに限定されるものではなく、第1シールド層447および第2シールド層448のうち、第1シールド層447のみを有していてもよく、また、第2シールド層448のみを有していてもよい。
【0048】
なお、上述したように、第1電極441は、基板44の一方の主面上に複数設けられている。これらの第1電極441に対して、第1シールド層447は、図6に示すように、基板44の一方の主面上において、複数の第1電極441の全体をまとめて取り囲むように設けられている。
【0049】
また、上述したように、第2電極442についても、基板44の他方の主面上に複数設けられている。これらの第2電極442に対して、第2シールド層448は、図6に示すように、基板44の他方の主面上において、複数の第2電極442のそれぞれを個別に取り囲むように複数設けられている。さらに、これらの複数の第2シールド層448は、基板44の他方の主面上において、互いに非接触な状態を保つように設けられている。
【0050】
また、シールド層449は、基板44の内部に、基板44の主面内方向に沿って面状に広がる第3シールド層444をさらに有している。シールド層449は、第3シールド層444と、第1シールド層447および第2シールド層448のうち少なくともいずれか一方とで、上述の沿面伝送路432を挟むように構成されている。図5図6は、一例として、第3シールド層444と第1シールド層447とで、上述の沿面伝送路432を挟む場合を示している。なお、沿面伝送路432は、第3シールド層444と第2シールド層448との間に設けられていてもいいし、第3シールド層444と第1シールド層447との間と、第3シールド層444と第2シールド層448との間の両方に設けられていてもよい。
【0051】
なお、上述の基板44は、ビルドアップ工法等の公知の方法を利用して作製することができる。以下に、ビルドアップ工法を用いて作製した基板44の構成を、より詳細に説明する。
【0052】
図5に示すように、基板44は、平板状のコア材440と、コア材440の両主面のそれぞれに接合させるように(あるいは追加成型させるように)設けられた第1プリプレグ層445および第2プリプレグ層446と、を備えている。コア材440としては、例えば、ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させて硬化させるなどした公知の絶縁材料を用いることができる。第1プリプレグ層445および第2プリプレグ層446は、それぞれ、上述の絶縁材料からなる平板を接合させることによって、形成することができる。なお、第1プリプレグ層445および第2プリプレグ層446は、熱硬化性あるいは光硬化性を有する絶縁成型材料等を用いてなる絶縁体層であってもよい。
【0053】
基板44の一方の主面を構成する第1プリプレグ層445の表面には、第1電極441と、第1シールド層447と、が設けられている。第1電極441および第1シールド層447は、それぞれ、第1プリプレグ層445の表面に貼り付けられた銅箔をパターニングすること等により形成することができる。上述したように、第1電極441は、第1プリプレグ層445の表面上に複数形成されており、第1シールド層447は、第1プリプレグ層445の表面上において、複数の第1電極441の全体をまとめて取り囲むように形成されている。
【0054】
基板44の他方の主面を構成する第2プリプレグ層446の表面には、第2電極442と、第2シールド層448と、が設けられている。第2電極442および第2シールド層448は、それぞれ、第2プリプレグ層446の表面に貼り付けられた銅箔をパターニングすること等により形成することができる。上述したように、第2電極442は、第2プリプレグ層446の表面上に複数形成されており、第2シールド層448は、第2プリプレグ層446の表面上において、複数の第2電極442のそれぞれを個別に取り囲むように複数形成されている。また、複数の第2シールド層448は、第2プリプレグ層446の表面上において、互いに非接触な状態を保つように形成されている。
【0055】
基板44の内部には、第1電極441と第2電極442とを接続する伝送路430が設けられている。上述したように、第1電極441と第2電極442とは、基板44を挟んで対向しない位置に設けられており、伝送路430は、基板44の厚み方向に沿って延在する垂直伝送路431と、基板44の主面内方向(沿面方向)に沿って延在する沿面伝送路432と、を有している。垂直伝送路431は、コア材440、第1プリプレグ層445および第2プリプレグ層446の少なくともいずれかを厚み方向に貫通するビアホールを形成し、その内部を銅メッキなどにより充填することにより形成することができる。沿面伝送路432は、コア材440の一方の主面に貼り付けられた銅箔をパターニングすること等により形成することができる。
【0056】
コア材440と第2プリプレグ層446との接合界面には、第3シールド層444が設けられている。第3シールド層444は、コア材440の他方の主面に貼り付けられた銅箔を、例えばベタパターンとしてほぼそのまま残したものを用いることができる。
【0057】
第1シールド層447、第2シールド層448、第3シールド層444は、いずれも、第1電極441、第2電極442および伝送路430と電気的に接続しない(接触しない)ように構成されている。また、第1シールド層447、第2シールド層448、第3シールド層444は、不図示のアース線などを介して、いずれも接地されている。
【0058】
(3)多心ケーブルの検査方法
本実施形態にかかる多心ケーブルの検査方法では、まず、多心ケーブル2の両端それぞれにおいて、ジャケット22とシールド21とを所定長さ分だけ除去して、複数の絶縁電線3をそれぞれ露出させる。その後、多心ケーブル2の両端それぞれにおいて、露出させた各絶縁電線3を、絶縁被覆層32を除去することなく検査台45の係止溝452a等に嵌め込み固定すると共に、検査台45、不図示の検査台に固定した各絶縁電線3に、基板44,61をそれぞれ押し当てて、上述の容量結合を構築する。その後、以下の手順により、絶縁電線3の端部同士の対応関係を特定するための検査を行う。
【0059】
図7は、絶縁電線3の端部同士の対応関係を特定するための検査を行う際の演算装置8における制御フローを示すフロー図である。ここでは、絶縁電線3の本数をn本とし、検査台45に配置された絶縁電線3の順番を1番、2番、・・・、n番とする。また、演算装置8に手動にて絶縁電線3の本数「n」が入力される。
【0060】
図7に示すように、まず、ステップS51にて、判定部812は、変数a,bのそれぞれに初期値1を代入する。その後、ステップS52にて、判定部812は、スイッチ制御部811を介して第1スイッチ装置43を制御し、a番目の絶縁電線3に検査信号Vを印加する。つまり、多心ケーブル2の一方の端部にて露出された絶縁電線3の端部のうち、検査対象となるa番目の絶縁電線3の端部に、容量結合により検査信号Vを入力する。検査対象となるa番目の絶縁電線3以外の絶縁電線3には、検査信号Vを含む他の信号は入力しない。
【0061】
信号入力手段4が備える電圧源41から送信された検査信号Vは、信号伝送用ケーブル47の信号導体を経由して、第1電極441に伝送される。第1電極441に伝送された検査信号Vは、伝送路430を介して第2電極442に伝送される。第2電極442に伝送された検査信号Vは、第2電極442に押し当てられた絶縁電線3の導体31の端部に、容量結合により入力される。
【0062】
その後、ステップS53にて、判定部812は、スイッチ制御部811を介して第2スイッチ装置62を制御し、多心ケーブル2の他方の端部にて露出されたb番目の絶縁電線3の端部から出力される検査信号V(ここでは、直流成分のみを有する最終的な検査信号V)の電圧を測定し、測定結果を変数b(すなわち他端側での絶縁電線3の端部の番号)と関連づけて記憶部82に記憶する。
【0063】
ステップS54では、判定部812が、変数bがnと等しいか否かを判定する。ステップS54で等しくない(NO)と判定された場合、ステップS55にて、bをインクリメントした後、ステップS53に戻る。ステップS54で等しい(YES)と判定された場合、すなわち、多心ケーブル2の他端側(信号出力手段6側)の全ての絶縁電線3の端部についての測定が終わった場合、ステップS56にて、判定部812が、検査信号Vの電圧が最も大きくなった番号(他端側での絶縁電線3の端部の番号)を、現在検査対象となっているa番目の絶縁電線3に対応する他方側の端部であると特定し、特定した対応関係を記憶部82に記憶する。
【0064】
ステップS57では、判定部812が、変数aがnと等しいか否かを判定する。ステップS57で等しくない(NO)と判定された場合、ステップS58にて、aをインクリメントし、変数bを初期値1に戻した後、ステップS52に戻る。ステップS57で等しい(YES)と判定された場合、すなわち、多心ケーブル2の一端側(信号入力手段4側)の全ての絶縁電線3について対応関係が特定された場合、ステップS59に進む。ステップS59では、演算装置8は、記憶部82に記憶されている対応関係の特定結果を、例えばモニタ等に出力する。その後、処理を終了する。
【0065】
(4)本実施形態の効果
本実施形態によれば、以下に述べる一つ又は複数の効果を奏する。
【0066】
(a)本実施形態にかかる基板44には、シールド層449が設けられているので、検査信号Vの送信時に、伝送路430へのノイズの侵入を抑制することができる。結果として、絶縁電線3の端部同士の対応関係を安定かつ精度よく特定することができる。
【0067】
(b)本実施形態にかかる基板44の一方の主面には、第1電極441と非接触な状態を保ちつつ、第1電極441の周囲を取り囲む第1シールド層447、および、基板44の他方の主面には、第2電極442と非接触な状態を保ちつつ、第2電極442の周囲を取り囲む第2シールド層448のうち、少なくともいずれか一方を有している。これにより、基板44の一方の主面方向、または、基板44の他方の主面方向、のうちの少なくともいずれか一方から、伝送路430へのノイズの侵入を抑制することができる。結果として、絶縁電線3の端部同士の対応関係を安定かつ精度よく特定することができる。
【0068】
(c)本実施形態にかかる第1シールド層447は、複数の第1電極441の全体をまとめて取り囲むように設けられている。これにより、基板44の一方の主面方向から、複数の第1電極441のそれぞれに接続する伝送路430へのノイズの侵入を抑制することができる。結果として、絶縁電線3の端部同士の対応関係を安定かつ精度よく特定することができる。
【0069】
(d)本実施形態にかかる第2シールド層448は、複数の第2電極442のそれぞれを個別に取り囲むように複数設けられている。これにより、基板44の他方の主面方向から、複数の第2電極442のそれぞれに接続する伝送路430へのノイズの侵入を抑制することができる。結果として、絶縁電線3の端部同士の対応関係を安定かつ精度よく特定することができる。
【0070】
(e)本実施形態にかかる複数の第2シールド層448は、互いに非接触な状態を保つように設けられている。これにより、第2シールド層448のシールド力を適度に調整する(低下させる)ことができ、結果として、絶縁電線3の端部同士の対応関係の検知感度の低下を抑制することができる。結果として、絶縁電線3の端部同士の対応関係を安定かつ精度よく特定することができる。
【0071】
(f)本実施形態にかかる伝送路430は、基板44の内部に、第1電極441と第2電極442とを結ぶように基板44の主面内方向(沿面方向)に沿って延在する部分(沿面伝送路432)を有している。このような構成により、検査台45上に固定する複数の絶縁電線3の配列間隔を大きくし、隣接する絶縁電線3の間隔を広く確保することができる。これにより、検査台45上への絶縁電線3の固定を簡便かつ速やかに行い、また、絶縁電線3の端部同士の対応関係を安定かつ精度よく特定することができる。
【0072】
(g)本実施形態にかかる第3シールド層444は、基板44の内部に、基板44の主面内方向に沿って面状に広がるように設けられ、第3シールド層444と第1シールド層447とで、伝送路430のうち基板44の主面内方向(沿面方向)に沿って延在する部分(沿面伝送路432)を挟むように構成されている。これにより、ノイズが侵入し易い沿面伝送路432へのノイズの侵入を抑制することができる。結果として、絶縁電線3の端部同士の対応関係を安定かつ精度よく特定することができる。
【0073】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0074】
上述の実施形態では、信号入力手段4および信号出力手段6のいずれもが、伝送路へのノイズの侵入を抑制するシールド層を有する基板を備える場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、信号入力手段4および信号出力手段6のうちいずれか一方のみが、シールド層を有する基板を備えていてもよい。この場合でも、上述した実施形態と略同様の効果を得ることができる。
【0075】
上述の実施形態では、基板として、第1シールド層447、第2シールド層448、第3シールド層444の全てを有する場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1シールド層447、第2シールド層448、第3シールド層444のうち、少なくともいずれかを有していればよい。この場合でも、上述した実施形態と略同様の効果を得ることができる。
【0076】
上述の実施形態では、第1シールド層447は、基板44の一方の主面上において、複数の第1電極441の全体をまとめて取り囲むように設けられている場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1シールド層447は、基板44の一方の主面上において、複数の第1電極441のそれぞれを個別に取り囲むように複数設けられていてもよい。また、この場合において、複数の第1シールド層447は、基板44の一方の主面上において、互いに非接触な状態を保つように設けられていてもよい。この場合でも、上述した実施形態と略同様の効果を得ることができる。
【0077】
上述の実施形態では、複数の第2シールド層448が、基板44の他方の主面上において、互いに非接触な状態を保つように形成されている場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の第2シールド層のうち2つ以上を任意の組み合わせで選択し、これらを互いに電気的に接合させてもよい。また、第2シールド層448は、基板44の他方の主面上において、複数の第2電極442の全体をまとめて取り囲むように設けられていてもよい。この場合でも、上述した実施形態と略同様の効果を得ることができる。
【0078】
上述の実施形態では、基板44の他方の主面上における第2電極442の配列間隔を、基板44の一方の主面上における第1電極441の配列間隔よりも大きくし、第1電極441と第2電極442とを、基板44を挟んで対向しない位置に設けるようにしていたが、本発明はこれに限定されるものではない。これらの配列間隔は自由に設定することができ、両主面において同じ大きさとすることもできるし、また、両主面において配列間隔の大小関係を逆転させることも可能である。この場合でも、上述した実施形態と略同様の効果を得ることができる。
【0079】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0080】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
複数の絶縁電線を有する多心ケーブルの両端部における前記絶縁電線の対応関係を特定する多心ケーブルの検査装置であって、
前記多心ケーブルの一方の端部にて露出された複数の前記絶縁電線の端部のうち、検査対象となる前記絶縁電線の端部に、容量結合により検査信号を入力する信号入力手段と、
前記多心ケーブルの他方の端部にて露出された複数の前記絶縁電線のそれぞれの端部から、容量結合により検査信号を出力させる信号出力手段と、
前記信号出力手段から得られた検査信号の電圧を測定し、当該測定した電圧を基に、前記検査対象となる絶縁電線の他方側の端部を特定する対応特定手段と、を備え、
前記信号入力手段および前記信号出力手段のうち少なくともいずれか一方は、検査信号を伝送する信号伝送用ケーブルと、前記信号伝送用ケーブルが接続される基板と、を有し、
前記基板の一方の主面には、前記信号伝送用ケーブルの信号導体が接続される第1電極が設けられ、
前記基板の他方の主面には、前記絶縁電線の端部と容量結合される第2電極が設けられ、
前記基板の内部には、前記第1電極と前記第2電極との間で前記検査信号を伝送する伝送路が設けられ、
前記基板には、前記伝送路へのノイズの侵入を抑制するシールド層が設けられている、
多心ケーブルの検査装置が提供される。
【0081】
(付記2)
好ましくは、
前記シールド層は、前記一方の主面上において前記第1電極と非接触な状態を保ちつつ前記第1電極の周囲を取り囲む第1シールド層、および、前記他方の主面上において前記第2電極と非接触な状態を保ちつつ前記第2電極の周囲を取り囲む第2シールド層のうち、少なくともいずれか一方を有する、
付記1に記載の多心ケーブルの検査装置が提供される。
【0082】
(付記3)
好ましくは、
前記第1電極は、前記一方の主面上に複数設けられており、
前記第1シールド層は、前記一方の主面上において、複数の前記第1電極の全体をまとめて取り囲むように設けられている、
付記2に記載の多心ケーブルの検査装置が提供される。
【0083】
(付記4)
好ましくは、
前記第2電極は、前記他方の主面上に複数設けられており、
前記第2シールド層は、前記他方の主面上において、複数の前記第2電極のそれぞれを個別に取り囲むように複数設けられている、
付記2または3に記載の多心ケーブルの検査装置が提供される。
【0084】
(付記5)
好ましくは、
複数の前記第2シールド層は、前記他方の主面上において、互いに非接触な状態を保つように設けられている、
付記4に記載の多心ケーブルの検査装置が提供される。
【0085】
(付記6)
好ましくは、
前記第1電極と、前記第2電極とは、前記基板を挟んで対向しない位置に設けられており、
前記伝送路は、前記基板の内部に、前記第1電極と前記第2電極とを結ぶように前記基板の主面内方向(沿面方向)に沿って延在する部分を有する、
付記2~5のいずれか1つに記載の多心ケーブルの検査装置が提供される。
【0086】
(付記7)
好ましくは、
前記シールド層は、前記基板の内部に、前記基板の主面内方向に沿って面状に広がる第3シールド層を有し、
前記第3シールド層と、前記第1シールド層および前記第2シールド層のうち少なくともいずれか一方とで、前記伝送路のうち前記基板の主面内方向(沿面方向)に沿って延在する部分を挟むように構成されている、
付記6に記載の多心ケーブルの検査装置が提供される。
【0087】
(付記8)
本発明の他の態様によれば、
複数の絶縁電線を有する多心ケーブルの両端部における前記絶縁電線の対応関係を特定する多心ケーブルの検査方法であって、
前記多心ケーブルの一方の端部にて露出された複数の前記絶縁電線の端部のうち、検査対象となる前記絶縁電線の端部に、容量結合により検査信号を入力する信号入力工程と、
前記多心ケーブルの他方の端部にて露出された複数の前記絶縁電線のそれぞれの端部から、容量結合により検査信号を出力させる信号出力工程と、
前記信号出力工程を行うことで得られた検査信号の電圧を測定し、当該測定した電圧を基に、前記検査対象となる絶縁電線の他方側の端部を特定する対応特定工程と、
を有し、
前記信号入力工程および前記信号出力工程のうち少なくともいずれか一方では、
検査信号を伝送する信号伝送用ケーブルの信号導体が接続された第1電極を一方の主面に有し、第2電極を他方の主面に有し、内部に前記第1電極と前記第2電極との間で検査信号を伝送する伝送路を有する基板を用い、前記第2電極と前記絶縁電線の端部とを容量結合させ、
前記基板に設けられたシールド層により、前記伝送路へのノイズの侵入を抑制させる、
多心ケーブルの検査方法が提供される。
【符号の説明】
【0088】
1 検査装置
2 多心ケーブル
3 絶縁電線
4 信号入力手段
6 信号出力手段
44,61 基板
47,67 信号伝送用ケーブル
81 対応特定手段
441 第1電極
442 第2電極
430 伝送路
431 垂直伝送路
432 沿面伝送路
449 シールド層
447 第1シールド層
448 第2シールド層
444 第3シールド層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7