(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102777
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】チューブポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 5/00 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
F04C5/00 341C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217724
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 勇至
(57)【要約】
【課題】消費電力を増加させることなく、周囲温度の影響を抑制してキャリーオーバーを低減することが可能なチューブポンプを提供する。
【解決手段】溶液の流路であるチューブ17と、所定の軸線を中心として回転しながらチューブ17接触し、かつチューブの長手方向に沿って移動可能なローラ19と、ローラ19と協調してチューブ17を挟み込むとともに、チューブ17を径方向に押し潰す押さえ部18と、を備えるチューブポンプ15であって、チューブポンプ15を使用する装置が有する熱源22から、チューブ17の少なくとも一部を加温するための熱を伝搬する熱伝導部材21を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液の流路であるチューブと、
所定の軸線を中心として回転しながら前記チューブに接触し、かつ前記チューブの長手方向に沿って移動可能なローラと、
前記ローラと協調して前記チューブを挟み込むとともに、前記チューブを径方向に押し潰す押さえ部と、を備えるチューブポンプであって、
当該チューブポンプを使用する装置が有する熱源から、前記チューブの少なくとも一部を加温するための熱を伝搬する熱伝導部材を備える、
チューブポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のチューブポンプであって、
前記熱伝導部材は前記押さえ部に熱を伝搬し、前記押さえ部を介して前記チューブを加温する、チューブポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載のチューブポンプであって、
複数のローラを回転可能に支持するとともに、回転可能なロータを更に備え、
前記熱伝導部材は、前記ロータを駆動するモータを前記熱源として、当該モータと前記押さえ部を接続する、チューブポンプ。
【請求項4】
請求項1に記載のチューブポンプであって、
前記熱伝導部材は前記ローラに熱を伝搬し、前記ローラを介して前記チューブを加温する、チューブポンプ。
【請求項5】
請求項4に記載のチューブポンプであって、
複数のローラを回転可能に支持するとともに、回転可能なロータを更に備え、
前記熱伝導部材は、前記熱源に接続するとともに前記ロータに接する、チューブポンプ。
【請求項6】
請求項1に記載のチューブポンプであって、
前記熱伝導部材および前記チューブに接続された熱交換器を用いて、前記チューブを流れる溶液を加温し、溶液を介して前記チューブを加温する、チューブポンプ。
【請求項7】
請求項1に記載のチューブポンプであって、
前記チューブおよび前記熱伝導部材が、前記熱源に直接取り付けられ、溶液が流れるパイプによって構成される、チューブポンプ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のチューブポンプであって、
前記熱伝導部材が、熱伝導率が異なる少なくとも二つの材質によって構成される、チューブポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチューブポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々のポンプの中でも、チューブポンプは機密性が高いことおよびポンプ自体が送液する溶液に影響を与えないことから、医療機器関係や分析機器関係に幅広く利用されている。チューブポンプの用途としては、溶液の送液を行うものと溶液の置換を行うものが一般的である。
【0003】
チューブポンプを低温の環境下で使用する場合、チューブの硬化に伴う溶液流量の低下が問題となっていた。この改善策として一般的なチューブポンプにおいては、チューブの材質や周囲温度によらず安定した送液を行うために、チューブの一部を加温する構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溶液を置換する目的で使用されるチューブポンプにおいて、吸引した溶液が流路内に残存することにより、再度吸引した溶液に影響を与え得る問題が知られている。このような現象はキャリーオーバーと呼ばれている。キャリーオーバーが生じた場合、送液される溶液の純度が低下する。これは医療機器や分析機器関係では装置の信頼性に関わる問題となる。
【0006】
特に低温環境下では、チューブポンプのチューブが硬化することにより溶液の流速が減少し、前回送液した溶液の置換能力が低下することで、キャリーオーバーが増加することが課題となっている。
【0007】
本発明は、周囲温度の変化に伴うキャリーオーバーの発生を抑制し得るチューブポンプを提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、溶液の流路であるチューブと、所定の軸線を中心として回転しながら前記チューブに接触し、かつ前記チューブの長手方向に沿って移動可能なローラと、前記ローラと協調して前記チューブを挟み込むとともに、前記チューブを径方向に押し潰す押さえ部と、を備えるチューブポンプであって、当該チューブポンプを使用する装置が有する熱源から、前記チューブの少なくとも一部を加温するための熱を伝搬する熱伝導部材を備える。
【0009】
本発明の一態様として、例えば、前記熱伝導部材は前記押さえ部に熱を伝搬し、前記押さえ部を介して前記チューブを加温する、チューブポンプ。
【0010】
本発明の一態様として、例えば、複数のローラを回転可能に支持するとともに、回転可能なロータを更に備え、前記熱伝導部材は、前記ロータを駆動するモータを前記熱源として、当該モータと前記押さえ部を接続する。
【0011】
本発明の一態様として、例えば、前記熱伝導部材は前記ローラに熱を伝搬し、前記ローラを介して前記チューブを加温する。
【0012】
本発明の一態様として、例えば、複数のローラを回転可能に支持するとともに、回転可能なロータを更に備え、前記熱伝導部材は、前記熱源に接続するとともに前記ロータに接する。
【0013】
本発明の一態様として、例えば、前記熱伝導部材および前記チューブに接続された熱交換器を用いて、前記チューブを流れる溶液を加温し、溶液を介して前記チューブを加温する。
【0014】
本発明の一態様として、例えば、前記チューブおよび前記熱伝導部材が、前記熱源に直接取り付けられ、溶液が流れるパイプによって構成される。
【0015】
本発明の一態様として、例えば、前記熱伝導部材が、熱伝導率が異なる少なくとも二つの材質によって構成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、溶液を送液、置換可能なチューブポンプにおいて、消費電力を増加させることなく、周囲温度の影響を抑制してキャリーオーバーを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るチューブポンプの正面図である。
【
図2】
図2は、
図1のチューブポンプを搭載した分光光度計のブロック図である。
【
図3】
図3は、チューブポンプの熱伝導部材の例を示す図である。
【
図4】
図4は、熱伝導部材の変形例を示す図である。
【
図5】
図5は、熱伝導部材の変形例を示す図である。
【
図6】
図6は、熱伝導部材の変形例を示す図である。
【
図7】
図7は、熱伝導部材の変形例を示す図である。
【
図8】
図8は、熱伝導部材の変形例を示す図である。
【
図9】
図9は、熱伝導部材の変形例を示す図である。
【
図13】
図13は、熱源が柱状の部材である場合の熱伝導部材の例を示し、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【
図14】
図14は、熱源が平板状の部材である場合の熱伝導部材の例を示し、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【
図15】
図15は、熱源がモータである場合のチューブポンプの例を示し、(A)は正面図、(B)は(A)のI-I線に沿った断面図である。
【
図16】
図16は、熱伝導部材からロータおよびローラを介して熱を伝搬する場合のチューブポンプの例を示し、(A)は正面図、(B)は(A)のII-II線に沿った断面図である。
【
図17】
図17は、熱交換器を用いたチューブポンプの例を示す図である。
【
図18】
図18は、熱源が柱状の部材である場合の熱交換を行うパイプの例を示し、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【
図19】
図19は、熱源が平板状の部材である場合の熱交換を行うパイプの例を示し、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るチューブポンプの好適な実施形態を、図面を用いて詳述する。チューブポンプは、例えば分光光度計等の溶液を用いる装置に適用され(
図2参照)、溶液の送液や、溶液の置換に用いられる装置である。
【0019】
図1は、チューブポンプの一の実施形態を示している。
図1のチューブポンプ15は、弾性を有するチューブ(しごきチューブ)17と、ロータ20と、ローラ19と、押さえ部18と、熱伝導部材21と、を備える。チューブ17は溶液(試料溶液)の流路であり、例えば中空の弾性部材により構成される。ロータ20は例えばモータ(
図15(B)参照)によって
図1の矢印方向に回転する円盤状の部材であり、その上に複数(本実施形態では4つ)のローラ19が、ロータ20の円盤の外縁に近い位置に、所定の軸線を中心として回転可能に支持されている。
【0020】
ロータ20が回転すると、4つのローラ19は、ロータ20のほぼ外縁に近い円周に沿って、ロータ20の中心点を中心として、円軌道を描くように移動する。チューブ17に接触するローラ19はチューブ17との摩擦により、それぞれの軸線を中心として回転する。すなわち、ローラ19は、チューブ17に接触しているときは、それ自身が自転しつつチューブ17の長手方向に沿って移動する。そして、押さえ部18が、ローラ19と協調してチューブ17を挟み込むとともに、チューブ17を径方向に押し潰す。このようなしごきの作用を受けるチューブ17は、しごきチューブとも呼ばれる。
【0021】
すなわちチューブポンプ15は、押さえ部18のチューブ17に対する押圧と、ロータ20の回転に伴う複数の回転するローラ19の移動により、連続的にチューブ17を径方向かつ長手方向に押し潰し、溶液を試料容器2から廃液容器16に送液する機能を持つ。更に本実施形態のチューブポンプ15は、熱伝導部材21が設けられており、熱伝導部材21の一端が押さえ部18に取付けられ、他端が所定の熱源22に接している。これにより、熱源22からの熱が熱伝導部材21を介して押さえ部18に伝搬し、押さえ部18からの熱によりチューブ17を加温することができる。
【0022】
以下に、本発明の一実施形態に係るチューブポンプが、分光光度計で試料溶液を交換するために使用される装置として機能する例を説明する。
図2は、
図1のチューブポンプ15を搭載した分光光度計1を示している。チューブポンプ15は、試料溶液を試料容器2から測定部3内のフローセル4に送液する。測定部3の内部には、光源部7と、分光器部11と、ミラー12と、フローセル4と、光検出器13と、制御部14が設けられている。光源部7は光度計の光源として用いているタングステンランプ5と重水素放電管6を有する。分光器部11は、光源部7の光の中から目的波長のみを取り出す入射スリット8と、回折格子9と、出射スリット10を有する。分光器部11によって分光された光(測定光)は、ミラー12によってフローセル4に導かれ、フローセル4において測定試料を通過する。フローセル4の通過後における測定光の光強度を光検出器13によって測定する。検出信号は制御部14にてデータ処理される。
【0023】
チューブポンプ15は測定する溶液を試料容器2から流路33を介してフローセル4に送り、フローセル4内の溶液を置換するために設置されている。更にチューブポンプ15は、測定後の溶液を廃液容器16に送液する。
【0024】
熱伝導部材21は、その一端がチューブポンプ15の押さえ部18に接続され、その他端が、熱源22(
図1)として用いられる光源部7に配置される。この構成により熱伝導部材21は、光源部7の熱を押さえ部18に伝搬し、押さえ部18によりチューブ17を加温する。また、熱伝導部材21の一端であって、押さえ部18の上部には温度センサ23が設置され、温度センサ23が測定した温度情報を制御部14に送り、制御部14が温度を記録する。
【0025】
熱伝導部材21の温度調節には、光源の冷却のために設置されているファン24を流用する。制御部14は、温度センサ23の値が目標温度になるようにファン24の風量を調節する。これにより、ファン24によって熱伝導部材21の温度を目標温度に保つことができる。
【0026】
本実施形態では、目標温度はチューブ17ならびに送液する試料溶液の性質から決定される。本実施形態において目標温度は、例えば軟化塩化ビニル製のチューブ17が十分な弾性を有し、測定する溶液に影響がない35℃に設定される。具体的には温度センサ23から送られてくる温度値が目標値以下の場合、ファン24の回転数を低下させて熱伝導部材21の温度を上昇させる。逆に温度センサ23から送られてくる温度値が目標値以上の場合、ファン24の回転数を増加させて熱伝導部材21の温度を低下させる。
【0027】
このように構成されたチューブポンプ15の作用について説明する。本実施形態によれば、チューブ17に軟化塩化ビニル等の温度によって弾性が変化しやすい材料を用いても、チューブ17は、熱伝導部材21の作用により、常に所定の温度(例えば、本例では35℃)に保たれているため、チューブ17は十分に弾性が高い状態に保たれる。そのため、チューブ17が固くなることにより生じる流速の減少が改善されることにより、キャリーオーバーを低減できる。
【0028】
加えて、電力を使用する部品を使用しないため消費電力は、従来のものと変わらない。
【0029】
本実施形態において、熱源22にタングステンランプ5と重水素放電管6から構成される光源部7を用いたが、チューブポンプを使用する装置(本例では分光光度計1)において、発熱をする部分であれば熱源22として用いることができる。例えば装置内部のモータ、電子部品、電源回路等が利用可能である。熱源として利用する部分は、発生する熱の温度ができるだけ一定であることが望ましい。
【0030】
本実施形態では、熱伝導部材21のチューブ17近傍に設置した温度センサ23を用いて温度管理を行なったが、温度センサ23の位置はこれに限定されるものではなく、熱伝導部材21の温度を測定できる位置であればよい。例えば、熱伝導部材21の長手方向における中央部や熱源22(例えば光源部7)の近傍に設置しても良い。また、熱源22の温度とチューブ17の温度の相関が判明していない場合は、チューブ17の温度を直接測定してもよい。ただし、過度な加温などの危険が無い場合は温度センサならびに温度制御は必ずしも必要ではない。
【0031】
熱伝導部材21の材質を変えることによって、チューブ17の加温温度を変えることができる。例えば、熱伝導率が高い銅やアルミニウム等の材料を用いた場合、熱源22から加温対象(例えば押さえ部18)までの温度低下を抑え、加温対象の温度を上げることができる。また、ステンレス、真鍮、鉄等の熱伝導率が比較的低い材料を用いることにより、熱源22から熱が加温対象まで伝わりづらくなり、温度を下げることができる。熱伝導部材21は、構造材料として用いられる銅、アルミニウム、真鍮、ステンレス等の熱伝導係数が15~400[W/(m・K)]の材質であれば使用できる。特に熱伝導材料として一般的に用いられている熱伝導係数が200~400[W/(m・K)]程度の材質を用いることが望ましい。
【0032】
また、複数の材質によって熱伝導部材21を構成することによっても、チューブ17の加温温度を調節することができる。例えば
図3に示すように、熱伝導率が異なる二つの材質、高熱伝導体25と低熱伝導体26を重ねて繋ぎ合わせた構造において、それぞれの材質の量の割合を変えることで、加熱対象27(例えば
図1の押さえ部18)を介してチューブに伝える熱量を調整し、温度を変えることができる。
図4に示すように、高熱伝導体25の長さ割合を多くすることにより、熱源22から熱が伝わりやすくなるためチューブの温度を上げることができる。一方、
図5に示すように、低熱伝導体26の長さの割合を多くすることにより、熱源22から熱が伝わりにくくなるためチューブの温度を下げることができる。このように、熱伝導率の異なる材質を複数用いて、その長さの割合を変化させることにより、チューブの加温温度を調節することが可能である。
【0033】
上述した熱伝導部材について、それぞれの材質の接触面積を変えることでチューブに伝わる熱量を調整し、加温温度を調節することもできる。例えば、
図6に示す高熱伝導体25と低熱伝導体26を重ねて接合している形状の熱伝導部材21において、それらの接触面積が大きい場合、熱は高熱伝導体25から加温対象27に伝わりやすくなるため、チューブの温度を上げることができる。一方、
図7に示すように接触面積が小さくした場合は、熱は高熱伝導体25から加温対象27に伝わりにくくなるためチューブの温度を下げることができる。このように、熱伝導率の異なる複数の材質の接触面積を変えることにより、チューブの加温温度を調節することが可能である。
【0034】
図3~
図7に示す熱伝導部材21は、熱伝導率が異なる二つの材質によって構成されるが、材質の数は三つ以上であってもよく、熱伝導率が異なる少なくとも二つの材質によって熱伝導部材21を構成することにより、上述したチューブの加温温度の調節が可能となる。
【0035】
図8の熱伝導部材21は、作動液28を収容したヒートパイプ29によって構成される。作動液28の気化熱を利用して熱源22から加温対象27に伝熱を伝搬することもできる。
【0036】
また、熱伝導部材21の熱源22に接する部分の形状を変えることにより、加温温度を調節することもできる。
図9は、熱源22の近傍に設置した熱伝導部材21の端部をフィン形状にした例であり、熱源22からの熱伝導部材21に伝わる熱を抑えることができ、加温温度を低くすることができる。
図10は、熱源22の近傍に設置した熱伝導部材21の端部を波型形状にした例であり、熱源22からの熱伝導部材21に伝わる熱を抑えることができ、加温温度を低くすることができる。
【0037】
熱源22と熱伝導部材21の間の熱伝導は、熱源22と熱伝導部材21が接触し、熱源22から熱伝導部材21に直接熱を伝達する態様であってよいが、熱源22と熱伝導部材21の間に間隔を設け、熱源22からの輻射熱を用い、空気を介して熱伝導部材21に熱を伝達してもよい。いずれの態様であっても同様の効果を得ることができる。
【0038】
また、熱伝導部材21の加温対象27に接する部分の形状を変えることにより、加温温度を調節することもできる。
図11は、加温対象27の近傍に設置した熱伝導部材21の端部をフィン形状にした例であり、フィン形状部分から熱を放散させ、加温対象27に伝わる熱を抑えることができ、加温温度を低くすることができる。
図12は、加温対象27の近傍に設置した熱伝導部材21の端部を波型形状にした例であり、熱源22からの熱伝導部材21に伝わる熱を現象させることができ、加温温度を低くすることができる。
【0039】
図13は、熱源22が、チューブポンプ15を用いる装置(例えば分光光度計1)内の柱状の部材である場合の熱伝導部材21の例を示す。本例の熱伝導部材21は、柱状の熱源22の周囲に巻回されたコイル形状の部材であり、熱源22との接触面積が増え、熱伝導部材21が取り込む熱量を増やすことができるため、チューブの加温温度を上げることが可能である。
図14は、熱源22が、チューブポンプを用いる装置(例えば分光光度計1)内の平板状の部材である場合の熱伝導部材21の例を示す。本例の熱伝導部材21は、平板状の熱源22の主平面上に配置された蛇腹形状の部材であり、熱源22との接触面積が増え、熱伝導部材21が取り込む熱量を増やすことができるため、チューブの加温温度を上げることが可能である。
【0040】
図15は、ロータ20を回転させるモータ32を熱源22として用いる場合のチューブポンプ15の例を示す。チューブ17を押し潰す押さえ部18の近くに配置された熱源22(モータ32) を用いることにより、効率よく熱源22から熱をチューブ17に伝えることができる。ただし、押さえ部18と熱源22との距離が長くても、チューブ17を加温できる構造であれば問題ない。
【0041】
図16は、熱伝導部材21からロータ20およびローラ19を介して熱を伝搬する場合のチューブポンプ15の例を示す。熱伝導部材21とロータ20およびローラ19が隣接する構造において、熱伝導部材21が回転駆動するロータ20に接するとともに、熱源22に接続しており、熱伝導部材21によってロータ20およびローラ19が加温される。ローラ19がチューブ17に接している状態で、ロータ20およびローラ19を介してチューブ17に熱が伝わり、チューブ17を加温することができる。尚、熱伝導部材21が各ローラ19に直接接するように構成し、熱伝導部材21からローラ19を介して、チューブ17に熱を伝搬するようにしてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、熱源22および熱伝導部材21から押さえ部18、ロータ20、ローラ19等の所定の部材を介してチューブ17を加温している。しかしながら、チューブ17を加温する方法はこれに限定されない。
図17は熱伝導部材21およびチューブ17に接続された熱交換器30を用いて、チューブ17を流れる試料溶液との間で熱交換を行い、試料溶液を温め、さらに試料溶液を介してチューブ17を加温することができる。このような方法によっても、チューブの弾性を維持し、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
上述の例では、熱交換器30が熱伝導部材21とチューブ17の間に配置されている。しかしながら、熱交換器30が、熱源22から得た熱を直接的に試料溶液に伝搬する構成を採用することもできる。
【0044】
図18は、熱源22が、チューブポンプ15を用いる装置(例えば分光光度計1)内の柱状の部材である場合の熱交換を行うパイプの例を示す。パイプ31は、柱状の熱源22の周囲に巻回されたコイル形状であって中空のパイプであり、パイプ31の中を試料溶液が流れる。すなわち、パイプ31は、溶液の流路であるチューブとして機能するとともに、熱源22からの熱をチューブひいては試料溶液に伝搬する熱伝導部材としても機能する。
【0045】
図19は、熱源22が、チューブポンプ15を用いる装置(例えば分光光度計1)内の平板状の部材である場合の熱交換を行うパイプの例を示す。パイプ31は、平板状の熱源22の主平面上に配置された蛇腹形状の部材であって中空のパイプであり、パイプ31の中を試料溶液が流れる。すなわち、パイプ31は、溶液の流路であるチューブとして機能するとともに、熱源22からの熱をチューブひいては試料溶液に伝搬する熱伝導部材としても機能する。
【0046】
図18、
図19の例においては、チューブおよび熱伝導部材が、熱源22に直接取り付けられ、溶液が流れるパイプ31によって構成される。よって、溶液の温度の調節は、熱源22に直接取り付けられるパイプ31の巻数や蛇腹形状の段数、大きさ等によって調整することができる。巻数や段数等を多くすることにより、溶液と熱源22とが接する時間を長くすることができるため、容器温度をあげることができる。また、容器の温度を下げるためには巻数や段数を少なくすればよい。
【0047】
また、溶液温度はパイプ31の材質によっても変えることができる。溶液温度を上げる場合はパイプ31に熱伝導率が高い材質を用いることで、熱源22から溶液に熱を移動させる際の損失を低減させ、溶液の温度を上げることができる。溶液温度を下げる場合は熱伝導率の低い材質を用いることで熱を溶液に伝えづらくし、溶液の温度上昇を抑えることができる。
【0048】
また、熱源22とパイプ31の間隔を変えることで、溶液温度を変えることができる。溶液温度を上げる場合は熱源22とパイプ31との距離を小さくする。これにより熱源22から溶液に熱を移動させる際の損失を抑え、溶液の温度を上げることができる。溶液温度を下げる場合は熱源22とパイプ31との間隔を開けることで熱を溶液に伝えづらくし溶液の温度上昇を抑えることができる。
【0049】
さらに、熱源22とパイプ31との間に熱伝導材料または断熱材を設置することで溶液の温度を変えることができる。溶液の温度を上げる場合は熱源22とパイプ31との間に熱伝導率が高いグリスなどの材料を挟むことで効率よく熱源22からパイプ31に熱を伝え溶液を加温することができる。溶液の温度を下げたい場合は、熱源22とパイプ31との間に熱伝導率の低い材料を入れることで熱を溶液に伝えづらくし溶液の温度上昇を抑えることができる。
【0050】
チューブ17の温度は溶液温度と実質的に同じとなるため、溶液温度を温度センサ23を用いて測定できればよい。熱源22およびパイプ31との温度と溶液温度との関係性がわかっている場合は、それらを測定することでチューブ17の温度を予想することができる。
【0051】
溶液の加温には、装置が有するヒータ等の熱源を用いてもよく、熱源の種類は特に限定されない。ヒータを用いた場合においても試料溶液を介してチューブ17が加温されるため同様の効果を得ることができる。
【0052】
上述した実施形態のチューブポンプ15は分光光度計1に適用されるが、チューブポンプ15が適用される装置は分光光度計1には限定されず、キャリーオーバーが問題となり得る医療装置、分析装置、その他の装置に適用し、効果を得ることができる。
【0053】
また、本実施形態によればチューブポンプを利用する装置の内部の排熱を使用することで、消費電力を増加させることなくキャリーオーバーの低減が可能である。さらに、熱源の冷却をも行うことができる。
【0054】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0055】
1 分光光度計
2 試料容器
3 測定部
4 フローセル
5 タングステンランプ
6 重水素ランプ
7 光源部
8 入射スリット
9 回折格子
10 出射スリット
11 分光器部
12 ミラー
13 光検出器
14 制御部
15 チューブポンプ
16 廃液容器
17 チューブ
18 押さえ部
19 ローラ
20 ロータ
21 熱伝導部材
22 熱源
23 温度センサ
24 ファン
25 高熱伝導体
26 低熱伝導体
27 加温対象
28 作動液
29 ヒートパイプ
30 熱交換器
31 パイプ
32 モータ
33 流路