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特開2022-10303ノズルチップの製造方法及び燃料ノズルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010303
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ノズルチップの製造方法及び燃料ノズルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/16 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
F23D14/16 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185804
(22)【出願日】2021-11-15
(62)【分割の表示】P 2017179164の分割
【原出願日】2017-09-19
(71)【出願人】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】大橋 武史
(72)【発明者】
【氏名】有田 彩司
(72)【発明者】
【氏名】上島 啓利
(72)【発明者】
【氏名】小林 友幸
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 宏一
(72)【発明者】
【氏名】木村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 光雄
【テーマコード(参考)】
3K017
【Fターム(参考)】
3K017BB05
3K017BC08
3K017BE01
3K017BG03
(57)【要約】
【課題】燃料ノズル先端部の冷却機構が不要なリジェネバーナ用ノズルチップと、このノズルチップを備えたリジェネバーナ用燃料ノズルと、この燃料ノズルを備えたリジェネバーナとを提供する。
【解決手段】リジェネバーナの燃料管の先端に設けられる、無機繊維成形体よりなるノズルチップ1。リジェネバーナの燃料口内に挿設されるリジェネバーナ用燃料ノズル2であって、金属製の筒状のノズル本体3と、該ノズル本体3の先端に取り付けられたノズルチップ1とを有する燃料ノズル2。空気口12と、燃料ノズル設置孔13に挿設された燃料ノズル2と、空気口12にエアーチャンバ11を介して連通する蓄熱室とを有するリジェネバーナ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リジェネバーナの燃料ノズルの先端に設けられる、内孔を有する筒状のノズルチップであって、無機繊維成形体よりなるノズルチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリジェネバーナに用いられるノズルチップと、このノズルチップを備えたリジェネバーナ用燃料ノズルと、この燃料ノズルを備えたリジェネバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
熱処理炉や鉄鋼加熱炉等の炉設備としてリジェネバーナを備えたものがある(例えば特許文献1)。リジェネバーナは、炉体の第1の炉壁と、該第1の炉壁に対面する第2の炉壁とに設置されている。各リジェネバーナは、空気口と、燃料口とを備え、空気口は蓄熱室に連通している。所定時間、第1の炉壁に設けられた第1のリジェネバーナを燃焼作動させ、第2の炉壁に設けられた第2のリジェネバーナの空気口から排ガスを吸引して第2の蓄熱室に導入して蓄熱材に蓄熱させる。この間、第1のリジェネバーナに供給される空気は、該第1の蓄熱室にて加熱されたものである。
【0003】
該所定時間経過後は、第2のリジェネバーナを所定時間燃焼作動させ、第1のリジェネバーナの空気口から排ガスを吸引して第1の蓄熱室の蓄熱材に蓄熱させる。この間、第2のリジェネバーナの空気口に供給される空気は、第2の蓄熱室で加熱されたものである。以下、このサイクルが繰り返される。
本例の他には、隣合せに配置され燃焼動作と排ガス吸引動作を繰り返されるものもある。
【0004】
上記の燃料口には燃料管が挿入されている。該燃料管は、先端が炉壁面と略面一状となるように設置されているところから、先端部は炉内の高温輻射熱を受けると共に、炉内の燃焼ガス雰囲気に晒され、炉内のスケール等により金属配管が腐食し易く、焼損・熱衝撃による割れが発生することになる。そのため、従来は、燃料管の先端部を水冷又は空冷する冷却機構を設けており、設備コストが嵩むと共に、二重金属配管構造で内側配管から燃料ガスを、外側配管から冷却用空気を同時に噴射する構成からエネルギーロスにもなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-3036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、燃料噴射孔ノズル(以下、燃料ノズルという)先端部の冷却機構が不要なリジェネバーナ用ノズルチップと、このノズルチップを備えたリジェネバーナ用燃料ノズルと、この燃料ノズルを備えたリジェネバーナ及びこのリジェネバーナを備えた工業炉とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は次の通りである。
【0008】
[1] リジェネバーナの燃料ノズルの先端に設けられる、内孔を有する筒状のノズルチップであって、無機繊維成形体よりなるノズルチップ。
【0009】
[2] [1]において、前記無機繊維成形体は、複数の無機繊維製ブロックからなり、該無機繊維製ブロックがニードルブランケットの積層体であるノズルチップ。
【0010】
[3] [2]において、前記ニードルブランケットの積層体の厚み方向端部が、ノズルチップの内孔面及び先端面となるように設置されてなるノズルチップ。
【0011】
[4] [1]~[3]のいずれかにおいて、前記無機繊維はアルミナ・シリカ繊維であることを特徴とするノズルチップ。
【0012】
[5] [1]~[4]のいずれかにおいて、前記無機繊維成形体が無機バインダーを有することを特徴とするノズルチップ。
【0013】
[6] [1]~[5]のいずれかにおいて、前記無機バインダーはアルミナ成分を含有することを特徴とするノズルチップ。
【0014】
[7] [1]~[6]のいずれかにおいて、前記無機繊維成形体が耐酸化鉄腐食性組成物を有することを特徴とするノズルチップ。
【0015】
[8] [1]~[7]のいずれかにおいて、前記ノズルチップは、内周側ほど嵩密度が高いことを特徴とするノズルチップ。
【0016】
[9] リジェネバーナの燃料口内に挿設されるリジェネバーナ用燃料ノズルにおいて、金属製の筒状のノズル本体と、該ノズル本体の先端に取り付けられた[1]~[8]のいずれかに記載のノズルチップとを有する燃料ノズル。
【0017】
[10] [9]において、前記ノズルチップの基端部が前記ノズル本体の先端部に内嵌しており、該ノズル本体の先端部に求心方向に装着されたビスが前記ノズルチップに刺入されていることを特徴とする燃料ノズル。
【0018】
[11] 空気口と、燃料口と、該燃料口に挿設された燃料ノズルと、該空気口に連通する蓄熱室とを有するリジェネバーナにおいて、該燃料ノズルが[9]ないし[10]のいずれかに記載の燃料ノズルであることを特徴とするリジェネバーナ。
【0019】
[12] [11]に記載のリジェナバーナを有する工業炉。
【発明の効果】
【0020】
本発明のノズルチップは、無機繊維成形体よりなるため、耐火性、耐腐食性、及び耐熱衝撃性が良好であり、冷却機構が不要である。本発明のノズルチップを設置したリジェネバーナを有する工業炉は、従来と比べて数%エネルギーを節約可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態に係るノズルチップの斜視図である。
図2】実施の形態に係るノズルチップの断面図である。
図3】実施の形態に係る燃料ノズルの先端部の断面図である。
図4】実施の形態に係る燃料ノズルの先端部の断面図である。
図5】実施の形態に係るリジェネバーナを設置した炉体の断面図である。
図6】別の実施の形態に係るリジェネバーナを設置した炉体の断面図である。
図7】実施の形態に係るノズルチップの製造方法を説明する斜視図である。
図8】実施の形態に係るノズルチップの製造方法を説明する断面図である。
図9図8のIX-IX線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0023】
図1,2に実施の形態に係るノズルチップを示す。このノズルチップ1は、無機繊維成形体よりなる。このノズルチップ1は、内孔1aを有した略円筒状である。内孔1aは、ノズルチップ1の軸心部を軸心線方向に延在している。なお、ノズルチップ1は、図4のように、先端側の軸心線方向Xが基端側の軸心と斜交方向となっていてもよい。
【0024】
この実施の形態では、ノズルチップ1の基端側の外周面に、先端側よりも小径の凹段部1bが設けられている。
【0025】
図3は、このノズルチップ1を備えた燃料ノズル2の先端部の軸心線方向の断面図である。この燃料ノズル2は、金属製のパイプよりなるノズル本体3と、該ノズル本体3の先端に取り付けられたノズルチップ1とを有する。ノズル本体3の先端部がノズルチップ1の凹段部1bに外嵌している。ノズル本体3の先端部外周面から求心方向にビス4が打ち込まれ、このビス4がノズルチップ1に刺し込まれることにより、ノズルチップ1がノズル本体3に対し不動状に取り付けられる。なお、ノズルチップ1とノズル本体3の固定方法については、該ノズルチップ1と接するノズル本体3の先端近傍の内周にモルタル等の接着剤を塗布し、該ノズルチップ1と該ノズル本体3とを接着固定する方法でもよい。
【0026】
ノズル本体3の先端近傍の内周には、凸部3aが周設されている。ノズルチップ1の基端側の端面は、凸部3aの先端側立下り面3bに当接している。凸部3aは、ノズルチップ1の内孔1aと等径かつ同軸状の第1内周面3cを有する。
【0027】
好ましくは、図4の通り、該第1内周面3cから離隔するほど大径となるテーパ状の第2内周面3dとを有する。このように内孔1aと第1内周面3cとを等径かつ同軸状とすると共に、テーパ状の内周面3dを設けることにより、ノズル本体3の先端部付近における流路抵抗が小さくなる。
【0028】
ノズルチップ1の先端部の外径、凹段部1bの外径は、燃料ノズル2のサイズに応じて適宜調整すれば良いが、燃料ノズル2の外径は通常40~250mm、内径は通常10~150mmであるので、当該範囲内であることが好ましい。
【0029】
図5は、この燃料ノズル2を有するリジェネバーナ5を備えた炉体の壁面6の水平断面図である。
【0030】
炉体壁面6に設けられたリジェネバーナ設置口6aにリジェネバーナ5が嵌合配置されている。このリジェネバーナ5は、キャスタブル耐火物よりなるバーナタイル10と、該バーナタイル10に装備された1対の燃料ノズル2とを有する。
【0031】
バーナタイル10は、先端面10aが炉体壁面6の炉内面と面一状となるように配置されている。バーナタイル10内の後部側には、エアーチャンバ11が設けられ、該エアーチャンバ11からバーナタイル先端面にまで空気口12が貫設されている。空気口12を挟んで1対の燃料ノズル設置孔(燃料口)13,13が設けられている。各燃料ノズル設置孔13は、バーナタイル10の先端面10aから後面まで、該先端面10aと垂直方向に貫設されている。
【0032】
各燃料ノズル設置孔13に燃料ノズル2が挿入配置されている。燃料ノズル2の先端部のノズルチップ1の先端面がバーナタイル10の先端面10aと面一状となっている。ノズルチップ1として内孔1aが燃料ノズル2の軸心線方向に延在したものが採用され、燃料ノズル2は、内孔1aの先端部の軸心線方向Xが空気口12の軸心線と平行となるように配置されている。
【0033】
エアーチャンバ11は、リジェネバーナ蓄熱室(図示略)に連通している。燃料ノズル2の後端側は燃料配管(図示略)が接続されている。
【0034】
リジェネバーナ5が燃焼作動する場合には、蓄熱室にて加熱された空気がエアーチャンバ11から空気口12を介して炉内に噴出する。また、燃料ノズル2から燃料(この場合、ガス燃料)が噴出し、空気と混ざり合って燃焼する。
【0035】
リジェネバーナ5が蓄熱作動する場合には、燃料ノズル2への燃料供給が停止されると共に、空気口12、エアーチャンバ11を介して炉内燃焼排ガスが蓄熱室に送られる。
【0036】
この実施の形態では、燃料ノズル2の先端部が無機繊維成形体よりなるノズルチップ1によって構成されているので、燃料ノズル2の先端部の耐火性、耐腐食性、耐熱衝撃性が良好である。また、該先端部の冷却機構は不要である。
【0037】
なお、上記実施の形態では、ノズルチップ1の内孔1aの先端部の軸心線方向Xが空気口12の軸心線と平行となっているが、図6のリジェネバーナ5’のように、燃料ノズル設置孔13’を炉内面に対し斜め方向に貫設した場合には、ノズルチップ1’として、ノズルチップ1と同様に内孔1aが燃料ノズル2の軸心線方向に延在したものが採用されるが、燃料ノズル2は、内孔1aの先端部の軸心線方向Xが空気口12の軸心線の延長線上と交わる方向となるように配置されている。図6のその他の構成は図5と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0038】
上記のノズルチップ1の製造方法について図7~9を参照して説明する。
【0039】
この製造方法では、図7の通り、無機繊維製ブロック20を複数個用いる。ブロック20は、第1端面25と第2端面26とを有した略長方体形状であるが、1つの長手方向の側面に斜面24aが設けられている。これにより、ブロック20は、細幅の第1長手側面21と、該第1長手側面21と平行な第2長手側面22を有した略台柱形状となっている。
【0040】
第1長手側面21と第2長手側面22の一方の長側辺との間が、平面状の第3長手側面23となっている。第3長手側面23と反対側は、第4長手側面24となっている。この第4長手側面24のうち第1長手側面21側が前記斜面24aとなっている。
【0041】
ブロック20の第2端面26と第2長手側面22とが交わる部分に切欠部27が設けられている。
【0042】
各ブロック20は、第3長手側面23を隣接するブロック20の第4長手側面24に当接させるように、且つ第1長手側面21をインナモールド30の筒部31の外周面に当てるようにして該筒部31の外周に配列される。
【0043】
隣接するブロック20同士を強く押し付けるよう圧迫することにより、各ブロック20は図7のT方向(第3長手側面23と第4長手側面24とが接近する方向)に押し縮められ、隣接するブロック20,20同士は隙間なく密着し、筒部31を取り巻く筒状体となる。
【0044】
なお、この筒状体にあっては、内周側ほどT方向に強く押し縮められることになるが、内周側の角を一部切り欠くことで(斜面24a)、内周側の嵩密度をコントロールでき、成形性が良い点で好ましい。なかでも、内周側の嵩密度の圧縮率が30~65%、外周側の嵩密度の圧縮率が20~40%であることが好ましい。
【0045】
この筒状体の外周に無機繊維のシート28を巻き付ける。この実施の形態では、シート28を2層に巻回しているが、1層又は3層以上であってもよい。
【0046】
このシート28の外周を取り巻くようにアウタモールド(図示略)を装着する。
【0047】
インナモールド30は、前記筒部31と、該筒部31の両端にそれぞれ設けられたフランジ32,33とを有する。筒部31には、多数の小孔34が設けられている。筒部31は、例えばパンチングプレートを用いて製作される。なお、一方のフランジ32は筒部31に対して着脱可能となっている。
【0048】
図示しないアウタモールドは、インナモールド30と同様の形状であるが、アウタモールドは、1対の半割体よりなり、1対の半割体を組み合わせることにより、その内側がシート28を巻きつけた無機繊維製ブロック20と同様の形状とされる。1対の半割体でシート28付き筒状体を挟み付け、シート28付き筒状体を縮径方向に押し縮めて押縮体29(図8)とする。
【0049】
インナモールド30及びアウタモールドによって挟まれた押縮体29に無機バインダー液を含浸させる。この際、無機バインダー液を、インナモールド30と同様に多数の小孔を有するアウタモールドを通して押縮体29の外周面側から供給し、インナモールド30の筒部31内をサクション(吸引)してバインダー液を押縮体の内周側から吸引排出するのが好ましい。このようにすると、押縮体の内周側ほど多量の無機バインダー液が付着残留するようになる。また、サクションすることにより、主として無機繊維の交点付近に無機バインダーが付着残留するようになる。
【0050】
次に、このように無機バインダー液を付着させた押縮体を乾燥する。この乾燥を行うには、筒部31内を吸引しながら外周側から温風を当てるのが好ましいが、これに限定されない。乾燥終了後、脱型(アウタモールド及びインナモールド30を脱型)し、次いで焼成して無機バインダーを無機繊維に焼き付ける。その後、必要に応じて切削加工してバリを除去すると共に、規格寸法に仕上げる。これにより、ノズルチップ1が製作される。
【0051】
このようにして製造されたノズルチップ1にあっては、押縮体29の内周側ほど嵩密度が高く、またバインダー付着量は内孔側ほど徐々に多くなるので、ノズルチップの内周面に沿って、繊維結着強度の高い高嵩密度部が形成される。この高嵩密度部を設けることにより、ノズルチップは耐風食性に優れたものとなる。なお、ノズルチップ1の最内周面から5mmまでの範囲における嵩密度は、最外周側の嵩密度の1.1~4.0倍特に1.5~3.0倍であることが好ましい。
ノズルチップ1の最内周面から5mmまでの範囲におけるバインダー濃度は、無機繊維100重量部あたり、15重量部以上300重量部以下であることが好ましい。
【0052】
このノズルチップは、無機繊維と無機バインダーとで構成されており、耐火性、耐腐食性、耐熱性、耐熱衝撃性に優れ、昇温時の予備加熱が不要である。また、水冷、空冷等の冷却機構が不要である。さらに、軽量でハンドリング性に優れる。
【0053】
無機繊維としては、アルミナ重量分率が65重量%以上のアルミナ質繊維が好ましく、具体的にはアルミナ/シリカ、これらを含むジルコニア、スピネル、チタニア等の単独、又は複合繊維が挙げられるが、特に好ましいのは耐熱性、繊維強度(靭性)、安全性の点で、アルミナ/シリカ系繊維、特に多結晶質アルミナ/シリカ系繊維である。
【0054】
アルミナ/シリカ系繊維のアルミナ/シリカの組成比(重量比)は65~98/35~2のムライト組成、又はハイアルミナ組成と呼ばれる範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは70~95/30~5、特に好ましくは70~74/30~26の範囲である。
【0055】
無機繊維の80重量%以上、好ましくは90重量%以上、特に好ましくはその全量が上記ムライト組成の多結晶アルミナ/シリカ系繊維であることが好ましい。
【0056】
また、無機繊維は、CaO3~20重量%、Al70~94.5重量%、及びMgO1~10重量%を含み、かつ、CaO、Al及びMgOの合計の含有割合が繊維全体の95重量%以上である無機繊維も好適である。この無機繊維は、耐スケール性に優れ、かつ断熱材として十分な繊維強度を有する。
【0057】
上記のブロック20は、ニードル処理したニードルブランケットの積層体よりなることが好ましい。この場合、ブランケットの厚み方向端部がノズルチップの内孔面及び先端面(図7のT方向の面)となるように設置されてなることが燃料ガスによる風食に強い点で好ましい。
【0058】
無機繊維シート28も同様のニードルブランケットよりなることが好ましい。
【0059】
<無機バインダー>
無機バインダーとしては、無機質の微粒子であれば特段の制限はない。無機バインダーの材料としては、アルミナ成分、ジルコニア成分、チタニア成分、マグネシア成分又はカルシア成分等のなどの1種又は2種以上を含んでいてもよい。アルミナ成分、カルシア成分またはスピネル成分を含有することがブランケットをノズルチップ等に成形加工した際に耐風食性等の機械的特性に優れる点で好ましく、アルミナ成分、及びカルシア成分またはスピネル成分を含有することがFeOスケールによる腐食を抑制できる点でより好ましく、アルミナ成分及びカルシア成分を含有することがさらにFeOスケールによる腐食を抑制でき、少量添加で効果がみられる点で特に好ましい。
無機バインダーの平均粒子径としては、通常4~30nmであり、より好ましくは7~15nmである。
無機バインダーの原料としては、無機質ゾルおよび金属塩またはその混合物など、焼成後に酸化物を形成するものであればよい。
【0060】
無機質ゾルとしては、液体溶媒中に無機バインダーが均一に分散したものであれば限定はないが、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、マグネシアゾル又はカルシアゾルなどの1種又は2種以上が挙げられる。また、金属塩としては上記金属種の蟻酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、安息香酸、リンゴ酸などの有機酸塩、また、硝酸などの鉱酸塩が挙げられる。アルミナゾルは熱膨張係数値が無機繊維集合体と近い点で好ましい。
【0061】
鉄鋼製品の加熱炉など、雰囲気中に酸化鉄成分が存在する炉に用いられるノズルチップの無機バインダーとしては、耐酸化鉄腐食性組成物である、アルミナ成分(例えばAl)とカルシア成分(例えば、CaO)とを含むアルミナ/カルシア系組成物又はアルミナ成分(例えばAl)とマグネシア成分(例えば、MgO)とを含むスピネル系組成物を含むことが好適である。この無機バインダーは特にノズルチップの無機繊維がムライト(3Al・1SiO)質繊維である場合に特に効果的である。
【0062】
ノズルチップ用無機バインダーの平均付着量は、無機繊維100質量部に対し、2~100質量部であり、より好ましくは10~60質量部である。上記範囲にあるとことで、耐スケール性向上や熱収縮率が良好かつ成形性がよい点で好ましい。
【0063】
即ち、炉内雰囲気中のFeO又はFe成分は、1000℃以上の高温域においてムライトに固溶し、FeO又はFeとSiOとが反応して低融点相が生成すると共に、残りのアルミナ成分が結晶化する(αアルミナとなる)。低融点相が生成することにより、ムライト繊維が腐食し易くなる。
【0064】
無機バインダー中に、マグネシア(MgO)成分やカルシア(CaO)成分が存在すると、バインダー焼き付け工程においてカルシア成分がムライト質繊維の特に繊維表面(単繊維の外周面)に取り込まれるようになる。このMgO含有ムライトやCaO含有ムライトはFeO又はFeとの反応性が低いので、ムライト質繊維の耐酸化鉄腐食性が向上する。
【0065】
マグネシア及びカルシア成分の付着量は、無機繊維100質量部に対し、0.3~20質量部であり、より好ましくは0.5~10質量部である。上記範囲にあるとことで、耐スケール性向上や熱収縮率が良好かつ成形性がよい点で好ましい。
【0066】
なお、無機バインダーがアルミナ成分とカルシア成分とを含むものである場合、無機バインダー液としてアルミナ微粒子が分散した酢酸カルシウム溶液を使用し、無機バインダーの焼き付け温度(焼成温度)は900~1300℃特に950~1250℃程度とすることが好ましい。
【0067】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態とされてもよい。例えば、上記実施の形態ではブロック20に切欠部27を設けることにより、ノズルチップ1の凹段部1bを形成するようにしているが、バインダーを付着させ、乾燥及び焼成した後のノズルノズルチップ素体に切削加工を施して凹段部1bを形成してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1,1’ ノズルチップ
1a 内孔
2 燃料ノズル
3 ノズル本体
4 ビス
5,5’ リジェネバーナ
6 炉体壁面
10 バーナタイル
11 エアーチャンバ
12 空気口
13,13’ 燃料ノズル設置孔
20 無機繊維ブロック
28 無機繊維シート
29 押縮体
30 インナモールド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2021-12-06
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リジェネバーナの燃料ノズルの先端に設けられる、内孔を有する筒状のノズルチップを製造する方法において、
該ノズルチップは、該内孔を取り巻く周方向に配列された複数の無機繊維製ブロックからなり、該周方向に隣接する該無機繊維製ブロック同士が隙間なく密着する筒状体よりなるノズルチップであり、該筒状体は内周側ほど嵩密度が高いノズルチップの製造方法であって、
第1長手側面と、該第1長手側面と平行な第2長手側面と、該第1長手側面と第2長手側面の一方の長側辺との間の平面状の第3長手側面と、該第3長手側面と反対側の第4長手側面と、該第1ないし第4長手側面と交わる第1端面及び第2端面とを有し、第4長手側面のうち第1長手側面側は、第1長手側面側ほど第3長手側面に接近する斜面となっている無機繊維製ブロックを用いてノズルチップを製造する方法であって、
複数の無機繊維製ブロックを、筒部を有したインナモールドの該筒部の外周面に、該外周面を取り巻くように、かつ無機繊維製ブロックの該第3長手側面が隣接する無機繊維製ブロックの第4長手側面と当接するように、かつ該第1長手側面が前記筒部の外周面に当たるように、配列し、隣接する無機繊維製ブロック同士を押し付けるように圧迫し、各無機繊維製ブロックを第3長手側面と第4長手側面とを結ぶ方向に押し縮め、隣接する無機繊維製ブロック同士を隙間なく密着させることにより、筒部を取り巻く筒状体とし、
前記各無機繊維製ブロックを厚み方向に押し縮めるに際して該筒状体の内周側の嵩密度の圧縮率を30~65%とし、外周側の嵩密度の圧縮率を20~40%とし、
該筒状体の外周に無機繊維シートを巻き付けてシート付き筒状体とし、
該シート付き筒状体の外周を取り巻くように1対の半割体よりなるアウタモールドを装着し、この際、1対の該半割体でシート付き筒状体を挟み付けて縮径方向に押し縮めて押縮体とし、
該インナモールド及びアウターモールドで挟まれた押縮体に無機バインダー液を含浸させて無機バインダー液付着押縮体とし、
次に該無機バインダー液付着押縮体を乾燥し、
乾燥後、アウタモールド及びインナモールドを脱型し、
その後、焼成して無機バインダー液を無機繊維に焼き付ける
工程を有するノズルチップの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記無機繊維はアルミナ・シリカ繊維であることを特徴とするノズルチップの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記無機バインダー液はアルミナ成分を含有することを特徴とするノズルチップの製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、前記無機バインダー液は耐酸化鉄腐食性組成物を有することを特徴とするノズルチップの製造方法。
【請求項5】
リジェネバーナの燃料口内に挿設されるリジェネバーナ用燃料ノズルを製造する方法において、金属製の筒状のノズル本体の先端に請求項1~4のいずれか1項に記載のノズルチップの製造方法で製造されたノズルチップを取り付ける工程を有する燃料ノズルの製造方法。