(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103486
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】局側装置および異常検知方法
(51)【国際特許分類】
H04L 12/44 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
H04L12/44 200
H04L12/44 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218146
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】特許業務法人ワンディーIPパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 善行
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博之
(72)【発明者】
【氏名】喜多 亮太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健太
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA06
5K033DA01
5K033DA15
5K033DB20
5K033EA04
5K033EB06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】冗長構成を備えるPONシステムにおいて発生する異常をより正確に検知する局側装置及び異常検知方法を提供する。
【解決手段】PONシステムにおいて、局側装置101は、PONシステムにおける1または複数の宅側装置との間で光信号を送受信可能な複数の光回線ユニットOSU111-1~111-K、112と、宅側装置との間で光信号の送受信を行うべき光回線ユニットを、運用系の光回線ユニットである第1の光回線ユニットから待機系の光回線ユニットである第2の光回線ユニットへ切り替えるためのスイッチ部150と、同一の宅側装置からの光信号を第1の光回線ユニット及び第2の光回線ユニットにおいて受信したときの、第1の光回線ユニットにおける光信号の受信強度と第2の光回線ユニットにおける光信号の受信強度とを比較し、比較結果に基づいてPONシステムにおける異常を検知する検知部(制御部160)とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PON(Passive Optical Network)システムにおける局側装置であって、
前記PONシステムにおける1または複数の宅側装置との間で光信号を送受信可能な複数の光回線ユニットと、
前記宅側装置との間で前記光信号の送受信を行うべき前記光回線ユニットを、運用系の前記光回線ユニットである第1の光回線ユニットから待機系の前記光回線ユニットである第2の光回線ユニットへ切り替えるためのスイッチ部と、
同一の前記宅側装置からの前記光信号を前記第1の光回線ユニットおよび前記第2の光回線ユニットにおいて受信したときの、前記第1の光回線ユニットにおける前記光信号の受信強度と前記第2の光回線ユニットにおける前記光信号の受信強度とを比較し、比較結果に基づいて前記PONシステムにおける異常を検知する検知部とを備える、局側装置。
【請求項2】
前記第1の光回線ユニットは、前記受信強度の測定対象である前記光信号の受信タイミングを示す情報、および前記受信強度の測定対象である前記光信号の送信元の前記宅側装置を特定するための情報の少なくともいずれか一方を前記第2の光回線ユニットへ通知する、請求項1に記載の局側装置。
【請求項3】
前記局側装置は、3つ以上の前記光回線ユニットを備え、
前記検知部は、複数の前記第1の光回線ユニットにおける前記受信強度と、前記第2の光回線ユニットにおける前記受信強度とをそれぞれ比較し、各比較結果に基づいて前記PONシステムにおける異常の発生箇所を判別する、請求項1または請求項2に記載の局側装置。
【請求項4】
局側装置における異常検知方法であって、
前記局側装置は、
PONシステムにおける1または複数の宅側装置との間で光信号を送受信可能な複数の光回線ユニットと、
前記宅側装置との間で前記光信号の送受信を行うべき前記光回線ユニットを、運用系の前記光回線ユニットである第1の光回線ユニットから待機系の前記光回線ユニットである第2の光回線ユニットへ切り替えるためのスイッチ部とを備え、
前記異常検知方法は、
同一の前記宅側装置からの前記光信号を前記第1の光回線ユニットおよび前記第2の光回線ユニットにおいて受信するステップと、
前記第1の光回線ユニットにおける前記光信号の受信強度と前記第2の光回線ユニットにおける前記光信号の受信強度とを比較し、比較結果に基づいて前記PONシステムにおける異常を検知するステップとを含む、異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、局側装置および異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PON(Passive Optical Network)システムにおける異常を検知するための技術が知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1(国際公開第2013/077249号)には、以下のようなPONプロテクションシステムの自己診断方法が開示されている。すなわち、当該自己診断方法は、局舎側伝送装置である1台の正常系光加入者線終端盤(OSU)と、ユーザ側伝送装置である1台以上の光加入者線終端装置(ONU)とを、ポイント・ツー・マルチポイント形態で接続する光アクセスネットワークを複数含むパッシブオプティカルネットワークに、光スイッチの切り換えでいずれかの前記OSUの代理として前記OSUに収容される前記ONUと通信できる冗長系OSUを備えたPONプロテクションシステムの自己診断方法であって、前記冗長系OSUが待機状態のときに、前記ONUからの信号光を前記ONUが含まれる前記光アクセスネットワークの前記正常系OSUと前記冗長系OSUの双方に入力するように前記光スイッチを切り換えて回路構成し、前記正常系OSUへの信号光と前記冗長系OSUへの信号光を所定期間モニタし、一方への信号光と他方への信号光とが不一致である状態であれば異常と判断する回路構成試験を行う。
【0004】
また、特許文献2(特開2014-171120号公報)には、以下のようなPONプロテクションシステムが開示されている。すなわち、PONプロテクションシステムは、局舎側伝送装置である1台の正常系光加入者線終端盤(OSU)と、ユーザ側伝送装置である1台以上の光加入者線終端装置(ONU)とを、ポイント・ツー・マルチポイント形態で接続する光アクセスネットワークを複数含むパッシブオプティカルネットワークに、光スイッチの切り替えでいずれかの前記正常系OSUの代理として前記正常系OSUに収容される前記ONUと通信できる冗長系OSUを備えたPONプロテクションシステムであって、前記光スイッチは、前記冗長系OSUの異常診断を行うための異常診断用ポートを備え、前記光スイッチに前記冗長系OSUと前記異常診断用ポートを接続させ、前記冗長系OSUを発光してない状態から発光させることで、前記冗長系OSUの異常診断を行う制御部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/077249号
【特許文献2】特開2014-171120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2に記載の技術を超えて、冗長構成を備えるPONシステムにおいて発生し得る異常をより正確に検知することが可能な技術が望まれる。
【0007】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、冗長構成を備えるPONシステムにおいて発生し得る異常をより正確に検知することが可能な局側装置および異常検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の局側装置は、PONシステムにおける局側装置であって、前記PONシステムにおける1または複数の宅側装置との間で光信号を送受信可能な複数の光回線ユニットと、前記宅側装置との間で前記光信号の送受信を行うべき前記光回線ユニットを、運用系の前記光回線ユニットである第1の光回線ユニットから待機系の前記光回線ユニットである第2の光回線ユニットへ切り替えるためのスイッチ部と、同一の前記宅側装置からの前記光信号を前記第1の光回線ユニットおよび前記第2の光回線ユニットにおいて受信したときの、前記第1の光回線ユニットにおける前記光信号の受信強度と前記第2の光回線ユニットにおける前記光信号の受信強度とを比較し、比較結果に基づいて前記PONシステムにおける異常を検知する検知部とを備える。
【0009】
本開示の異常検知方法は、局側装置における異常検知方法であって、前記局側装置は、PONシステムにおける1または複数の宅側装置との間で光信号を送受信可能な複数の光回線ユニットと、前記宅側装置との間で前記光信号の送受信を行うべき前記光回線ユニットを、運用系の前記光回線ユニットである第1の光回線ユニットから待機系の前記光回線ユニットである第2の光回線ユニットへ切り替えるためのスイッチ部とを備え、前記異常検知方法は、同一の前記宅側装置からの前記光信号を前記第1の光回線ユニットおよび前記第2の光回線ユニットにおいて受信するステップと、前記第1の光回線ユニットにおける前記光信号の受信強度と前記第2の光回線ユニットにおける前記光信号の受信強度とを比較し、比較結果に基づいて前記PONシステムにおける異常を検知するステップとを含む。
【0010】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える局側装置として実現され得るだけでなく、局側装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、局側装置における処理のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得たり、局側装置を備えるPONシステムとして実現され得たり、PONシステムの一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、PONシステムにおける処理をステップとする方法として実現され得たり、PONシステムにおける処理のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、冗長構成を備えるPONシステムにおいて発生し得る異常をより正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態に係るPONシステムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態に係る宅側装置の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施の形態に係る局側装置の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態に係る運用OSUの構成を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施の形態に係る冗長OSUの構成を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施の形態に係る運用OSUにおける受信強度測定部の構成を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施の形態に係る冗長OSUにおける受信強度測定部の構成を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施の形態に係る局側装置が検知処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0014】
(1)本開示の実施の形態に係る局側装置は、PONシステムにおける局側装置であって、前記PONシステムにおける1または複数の宅側装置との間で光信号を送受信可能な複数の光回線ユニットと、前記宅側装置との間で前記光信号の送受信を行うべき前記光回線ユニットを、運用系の前記光回線ユニットである第1の光回線ユニットから待機系の前記光回線ユニットである第2の光回線ユニットへ切り替えるためのスイッチ部と、同一の前記宅側装置からの前記光信号を前記第1の光回線ユニットおよび前記第2の光回線ユニットにおいて受信したときの、前記第1の光回線ユニットにおける前記光信号の受信強度と前記第2の光回線ユニットにおける前記光信号の受信強度とを比較し、比較結果に基づいて前記PONシステムにおける異常を検知する検知部とを備える。
【0015】
このように、同一の宅側装置からの光信号を第1の光回線ユニットおよび第2の光回線ユニットにおいて受信したときの、第1の光回線ユニットおよび第2の光回線ユニットにおける光信号の受信強度の比較結果に基づいてPONシステムにおける異常を検知する構成により、たとえば宅側装置と第1の光回線ユニットとの間の光伝送路における損失量、および宅側装置と第2の光回線ユニットとの間の光伝送路における損失量に基づいて、光スイッチ等の光伝送路における光信号の損失の増大を正確に検知し、PONシステムの異常を早期に把握することができる。したがって、冗長構成を備えるPONシステムにおいて発生し得る異常をより正確に検知することができる。
【0016】
(2)好ましくは、前記第1の光回線ユニットは、前記受信強度の測定対象である前記光信号の受信タイミングを示す情報、および前記受信強度の測定対象である前記光信号の送信元の前記宅側装置を特定するための情報の少なくともいずれか一方を前記第2の光回線ユニットへ通知する。
【0017】
このような構成により、第1の光回線ユニットおよび第2の光回線ユニットにおいて、同一の宅側装置からのバースト光信号の受信強度をより正確に測定することができる。
【0018】
(3)好ましくは、前記局側装置は、3つ以上の前記光回線ユニットを備え、前記検知部は、複数の前記第1の光回線ユニットにおける前記受信強度と、前記第2の光回線ユニットにおける前記受信強度とをそれぞれ比較し、各比較結果に基づいて前記PONシステムにおける異常の発生箇所を判別する。
【0019】
このような構成により、異常の発生箇所に応じて交換または修理などを効果的に行うことができる。
【0020】
(4)本開示の実施の形態に係る異常検知方法は、局側装置における異常検知方法であって、前記局側装置は、PONシステムにおける1または複数の宅側装置との間で光信号を送受信可能な複数の光回線ユニットと、前記宅側装置との間で前記光信号の送受信を行うべき前記光回線ユニットを、運用系の前記光回線ユニットである第1の光回線ユニットから待機系の前記光回線ユニットである第2の光回線ユニットへ切り替えるためのスイッチ部とを備え、前記異常検知方法は、同一の前記宅側装置からの前記光信号を前記第1の光回線ユニットおよび前記第2の光回線ユニットにおいて受信するステップと、前記第1の光回線ユニットにおける前記光信号の受信強度と前記第2の光回線ユニットにおける前記光信号の受信強度とを比較し、比較結果に基づいて前記PONシステムにおける異常を検知するステップとを含む。
【0021】
このように、同一の宅側装置からの光信号を第1の光回線ユニットおよび第2の光回線ユニットにおいて受信したときの、第1の光回線ユニットおよび第2の光回線ユニットにおける光信号の受信強度の比較結果に基づいてPONシステムにおける異常を検知する方法により、たとえば宅側装置と第1の光回線ユニットとの間の光伝送路における損失量、および宅側装置と第2の光回線ユニットとの間の光伝送路における損失量に基づいて、光スイッチ等の光伝送路における光信号の損失の増大を正確に検知し、PONシステムの異常を早期に把握することができる。したがって、冗長構成を備えるPONシステムにおいて発生し得る異常をより正確に検知することができる。
【0022】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0023】
[構成および基本動作]
(PONシステム)
図1は、本開示の実施の形態に係るPONシステムの構成を示す図である。
【0024】
図1を参照して、PONシステム301は、たとえば10G-EPON(Ethernet(登録商標) PON)であり、局側装置101と、光ファイバであるN本のPON回線203-1,203-2,…203-Nと、N個の光カプラ204-1,204-2,…204-Nと、複数の宅側装置202とを備える。ここで、Nは1以上の整数である。なお、PONシステム301は、GE(Gigabit Ethernet)-PONであってもよい。以下、PON回線203-1,203-2,…203-Nの各々をPON回線203とも称し、光カプラ204-1,204-2,…204-Nの各々を光カプラ204とも称する。
【0025】
局側装置101は、PONの上位側に位置する光終端装置であり、電話局および変電所等に設置される。また、宅側装置202は、PONの下位側に位置する光終端装置であり、加入者側の建物、および屋外の電柱上等に設置される。
【0026】
宅側装置202および局側装置101は、互いにフレームを送受信する。より詳細には、宅側装置202および局側装置101は、光カプラ204およびPON回線203を介して接続され、フレームを含む光信号を送受信する。
【0027】
PONシステム301では、同じ光カプラ204に接続された複数の宅側装置202は、共通のPON回線203を介して上り光信号を局側装置101へ送信する。当該複数の宅側装置202から局側装置101への光信号は時分割多重される。すなわち、上り光信号はバースト光信号である。また、PONシステム301では、局側装置101から各宅側装置202へ連続的な光信号が送信される。
【0028】
以下、宅側装置202から上位ネットワークすなわちアップリンクへの方向を上り方向と称し、アップリンクから宅側装置202への方向を下り方向と称する。
【0029】
(宅側装置)
図2は、本開示の実施の形態に係る宅側装置の構成を示す図である。
【0030】
図2を参照して、宅側装置202は、PONポート21と、光受信処理部22と、バッファメモリ23と、送信処理部24と、UNI(User Network Interface)ポート25と、受信処理部26と、バッファメモリ27と、光送信処理部28と、制御部29と、記憶部30とを備える。
【0031】
光受信処理部22は、局側装置101から送信される下り光信号をPONポート21経由で受信して電気信号に変換し、当該電気信号からフレームを再構成するとともに、フレームの種別に応じて制御部29または送信処理部24に当該フレームを振り分ける。具体的には、光受信処理部22は、データフレームをバッファメモリ23経由で送信処理部24に出力し、制御フレームを制御部29に出力する。
【0032】
たとえば、記憶部30は、局側装置101により宅側装置202に付与されたLLID(Logical Link ID)を記憶している。より詳細には、局側装置101は、新たにPON回線203に接続された宅側装置202を検知すると、当該宅側装置202のLLIDを設定し、設定したLLIDが格納された制御フレームであるレジスタフレームを宅側装置202へ送信する。制御部29は、光受信処理部22経由で局側装置101からレジスタフレームを受信すると、受信したレジスタフレームからLLIDを取得して記憶部30に保存する。
【0033】
たとえば、光受信処理部22は、再構成したフレームに格納されたLLIDを取得し、取得したLLIDが記憶部30におけるLLIDと一致する場合、当該フレームが自己の宅側装置202宛のフレームであると判断し、制御部29または送信処理部24に当該フレームを振り分ける。一方、光受信処理部22は、再構成したフレームから取得したLLIDが記憶部30におけるLLIDと一致しない場合、当該フレームを破棄する。
【0034】
送信処理部24は、光受信処理部22から受けたデータフレームをUNIポート25経由で図示しないパーソナルコンピュータ等のユーザ端末へ送信する。
【0035】
受信処理部26は、UNIポート25経由でユーザ端末から受信したデータフレームをバッファメモリ27経由で光送信処理部28へ出力する。
【0036】
制御部29は、MPCP(Multi-Point Control Protocol)およびOAM(Operations Administration and Maintenance)等、PON回線203の制御および管理に関する下位終端側処理を行う。すなわち、制御部29は、PON回線203に接続されている局側装置101とMPCPメッセージおよびOAMメッセージをやり取りすることによって、アクセス制御等の各種制御を行う。制御部29は、各種制御情報を含む制御フレームを生成し、バッファメモリ27経由で光送信処理部28へ出力する。
【0037】
光送信処理部28は、受信処理部26からデータフレームを受けると、記憶部30からLLIDを取得して当該データフレームに格納する。光送信処理部28は、LLIDが格納された当該データフレームを光信号に変換し、PONポート21経由で局側装置101へ送信する。また、光送信処理部28は、制御部29から制御フレームを受けると、記憶部30からLLIDを取得して当該制御フレームに格納する。光送信処理部28は、LLIDが格納された当該制御フレームを光信号に変換し、PONポート21経由で局側装置101へ送信する。
【0038】
(局側装置)
図3は、本開示の実施の形態に係る局側装置の構成を示す図である。
【0039】
図3を参照して、局側装置101は、K個の運用OSU111-1,111-2,…111-Kと、冗長OSU112と、スイッチ部150と、制御部160と、スイッチ制御部170と、記憶部180とを備える。制御部160は、検知部の一例である。なお、局側装置101は、2個以上の冗長OSU112を備える構成であってもよい。
【0040】
以下、運用OSU111-1,111-2,…111-Kの各々を運用OSU111とも称する。運用OSU111は、運用系の光回線ユニットであり、第1の光回線ユニットの一例である。冗長OSU112は、待機系の光回線ユニットであり、第2の光回線ユニットの一例である。Kは、N/2であり、かつ1以上の整数である。運用OSU111および冗長OSU112の合計数は、たとえば3以上である。
【0041】
運用OSU111および冗長OSU112は、PONシステム301における1または複数の宅側装置202との間で光信号を送受信可能である。
【0042】
スイッチ部150は、宅側装置202との間で光信号の送受信を行うべきOSUを、運用OSU111から冗長OSU112へ切り替えるための機器である。
【0043】
スイッチ部150は、K個の光スプリッタ151-1,151-2,…151-Kと、光スイッチ152とを含む。以下、光スプリッタ151-1,151-2,…151-Kの各々を光スプリッタ151とも称する。たとえば、光スプリッタ151は、2×2のスプリッタである。光スプリッタ151の宅側装置202側の入出力ポートには、2本のPON回線203が接続される。
【0044】
光スプリッタ151は、運用OSU111に対応して設けられ、光ファイバを介して対応の運用OSU111に接続される。より詳細には、光スプリッタ151-1は、光ファイバOPTFA-1を介して運用OSU111-1に接続され、光スプリッタ151-2は、光ファイバOPTFA-2を介して運用OSU111-2に接続され、光スプリッタ151-Kは、光ファイバOPTFA-Kを介して運用OSU111-Kに接続される。以下、光ファイバOPTFA-1,OPTFA-2,…OPTFA-Kの各々を光ファイバOPTFAとも称する。
【0045】
また、光スプリッタ151は、光ファイバを介して光スイッチ152に接続される。より詳細には、光スプリッタ151-1は、光ファイバOPTFB-1を介して光スイッチ152に接続され、光スプリッタ151-2は、光ファイバOPTFB-2を介して光スイッチ152に接続され、光スプリッタ151-Kは、光ファイバOPTFB-Kを介して光スイッチ152に接続される。以下、光ファイバOPTFB-1,OPTFB-2,…OPTFB-Kの各々を光ファイバOPTFBとも称する。
【0046】
光スイッチ152は、OSU側の1個の入出力ポートを有し、光ファイバOPTFA-Lを介して冗長OSU112に接続される。また、光スイッチ152は、宅側装置202側の(K+1)個の入出力ポートを有する。当該(K+1)個の入出力ポートには、K本の光ファイバOPTFBと、光ファイバOPTFB-Lが接続される。たとえば、光ファイバOPTFB-Lにおいて、光スイッチ152との接続端とは反対側の端部は、終端処理されている。
【0047】
光スイッチ152は、運用OSU111および冗長OSU112のうちのPON回線203を介して宅側装置202と接続されるOSUを選択的に切り替えるための機器である。スイッチ部150は、PON回線203、光ファイバOPTFB,OPTFA-Lおよび光スイッチ152を介して宅側装置202と冗長OSU112とを接続することが可能である。
【0048】
より詳細には、スイッチ制御部170は、スイッチ制御信号を制御部160から受けて、受けたスイッチ制御信号に従って光スイッチ152を制御することにより、光ファイバOPTFA-Lと、各光ファイバOPTFBおよび光ファイバOPTFB-Lのうちのいずれか1つとを光学的に結合させる。たとえば、スイッチ制御部170は、すべての運用OSU111が正常である初期状態において、光ファイバOPTFA-Lと、光ファイバOPTFB-Lとを光学的に結合させる。
【0049】
光スプリッタ151は、2本のPON回線203を通る上り光信号を合波し、対応の運用OSU111および光スイッチ152へ出力することが可能である。また、光スプリッタ151は、光ファイバOPTFA,OPTFBを通る下り光信号を合波し、2本のPON回線203へ出力することが可能である。
【0050】
局側装置101は、K:1の冗長構成を有している。すなわち、K個の運用OSU111が現用のOSUであり、1個の冗長OSU112が予備のOSUである。たとえば、冗長OSU112は、初期状態において、待機状態に設定されている。
【0051】
運用OSU111は、スイッチ部150経由で配下の各宅側装置202と光信号を送受信する。上り方向において、運用OSU111は、配下の各宅側装置202から共通のPON回線203を介してバースト光信号を受信し、各宅側装置202から運用OSU111への光信号が時分割多重される。すなわち、宅側装置202は、他の宅側装置202とともに共通のPON回線203を介して時分割多重により光信号を運用OSU111へ送信する。
【0052】
運用OSU111は、各宅側装置202から受信した上り光信号に含まれるフレームをアップリンクへ送信するとともに、アップリンクから受信したフレームを含む下り光信号をスイッチ部150経由で各宅側装置202へ送信する。
【0053】
たとえば、制御部160は、ある運用OSU111が故障した場合、宅側装置202と光信号の送受信を行うべきOSUを、当該運用OSU111から冗長OSU112へ切り替える切り替え処理を行う。より詳細には、制御部160は、故障した運用OSU111へ停止すべき旨の停止指示を出力するとともに、停止指示を出力した運用OSU111の識別情報を含むスイッチ制御信号をスイッチ制御部170へ出力する。
【0054】
運用OSU111は、制御部160から停止指示を受けると、下り光信号の各宅側装置202への送信を停止する。
【0055】
スイッチ制御部170は、制御部160から受けたスイッチ制御信号に従って光スイッチ152を制御することにより、光ファイバOPTFA-Lと光学的に結合される光ファイバOPTFB,OPTFB-Lを切り替える。具体的には、スイッチ制御部170は、光ファイバOPTFA-Lと、K本の光ファイバOPTFBのうちの当該スイッチ制御信号に含まれる識別情報が示す運用OSU111に対応する光ファイバOPTFBとを光学的に結合させる。
【0056】
また、制御部160は、同一の宅側装置202からの光信号を運用OSU111および冗長OSU112において受信したときの、運用OSU111における光信号の受信強度RSaと冗長OSU112における光信号の受信強度RSbとを比較し、比較結果に基づいてPONシステム301における異常を検知する検知処理を行う。
【0057】
たとえば、制御部160は、予めPONシステム301の管理者により設定された所定の検知周期に従う検知タイミングにおいて検知処理を行う。具体的には、制御部160は、たとえば、一日、一週間または一か月に1回の検知周期で検知処理を行う。また、たとえば、局側装置101は、当該管理者による入力操作を受け付ける図示しない受付部を含む。当該受付部は、検知処理を行うべき旨を示す入力操作を受け付けると、制御部160へ検知指示を出力する。制御部160は、受付部から検知指示を受けて検知処理を行う構成であってもよい。
【0058】
制御部160は、検知処理において、K個の運用OSU111の中から1つの運用OSU111を対象運用OSU111として選択し、対象運用OSU111における光信号の受信強度RSaと冗長OSU112における光信号の受信強度RSbとを比較し、比較結果に基づいてPONシステム301における異常を検知する。
【0059】
より詳細には、制御部160は、光信号の送信および受信のうちの受信のみを行うべき旨の受信指示を冗長OSU112へ出力するとともに、対象運用OSU111と冗長OSU112とが同一の宅側装置202からの上り光信号を受信可能な状態となるように光スイッチ152を制御するためのスイッチ制御信号をスイッチ制御部170へ出力する。
【0060】
具体的には、制御部160は、たとえば運用OSU111-1を対象運用OSUとして選択すると、光ファイバOPTFA-Lと、光ファイバOPTFB-1とを光学的に結合させるためのスイッチ制御信号をスイッチ制御部170へ出力する。
【0061】
制御部160は、スイッチ制御部170による光スイッチ152の切り替えが完了し、対象運用OSU111と冗長OSU112とが同一の宅側装置202からの上り光信号を受信可能な状態になると、上り光信号の受信強度を測定すべき旨を示す測定指示を対象運用OSU111および冗長OSU112へ出力する。
【0062】
制御部160は、測定指示に対する応答として、対象運用OSU111から光信号の受信強度RSaの測定結果を示す結果情報Raを受けるとともに、冗長OSU112から光信号の受信強度RSbの測定結果を示す結果情報Rbを受けると、受けた結果情報Ra,Rbに基づいてPONシステム301における異常を検知する。
【0063】
たとえば、制御部160は、K個の運用OSU111を順に対象運用OSU111として選択し、各対象運用OSU111における光信号の受信強度RSaと冗長OSU112における光信号の受信強度RSbとの比較結果に基づいてPONシステム301における異常を検知する。
【0064】
(運用OSUおよび冗長OSU)
図4は、本開示の実施の形態に係る運用OSUの構成を示す図である。
図5は、本開示の実施の形態に係る冗長OSUの構成を示す図である。
【0065】
図4および
図5を参照して、運用OSU111および冗長OSU112は、アップリンクIF(Interface)部31と、制御IF部32と、受信処理部33と、送信処理部34と、光トランシーバ35と、PON制御部36と、上りフレームを蓄積するバッファメモリ37と、下りフレームを蓄積するバッファメモリ38と、受信強度測定部40と、記憶部50とを含む。運用OSU111における記憶部50は、当該運用OSU111の配下の宅側装置202のLLIDを記憶している。
【0066】
光トランシーバ35は、受光素子35Aおよび発光素子35Bを有する。受光素子35Aは、たとえばAPD(Avalanche photo Diode)である。なお、以下で説明するPON制御部36の動作の一部または全部を、制御部160が行う構成であってもよいし、PON制御部36自体が運用OSU111および冗長OSU112の外部に設けられてもよい。
【0067】
光トランシーバ35は、PON線路の親局側起点として、PON回線203とスイッチ部150を介して接続される。光トランシーバ35は、このPON回線203を介して各宅側装置202と双方向通信が行えるように、特定の波長、たとえば1310nm帯の上り光信号を受信し、電気信号に変換して受信処理部33へ出力するとともに、送信処理部34から受けた電気信号を別波長たとえば1570nm帯の下り光信号に変換して送信する。
【0068】
受信処理部33は、光トランシーバ35から受けた電気信号からフレームを再構成するとともに、フレームの種別に応じてPON制御部36またはバッファメモリ37にフレームを振り分ける。具体的には、受信処理部33は、データフレームをバッファメモリ37へ出力し、制御フレームをPON制御部36へ出力する。
【0069】
また、受信処理部33は、どのロジカルリンクからフレームをいつ受信するかを示すグラント情報を送信処理部34から受けて、バースト受信を支援するための制御信号を光トランシーバ35へ出力してもよい。また、受信処理部33は、このグラント情報を受けて、当該グラント情報に示されていない受信フレームをフィルタリングする、すなわち廃棄するようにしてもよい。
【0070】
アップリンクIF部31は、バッファメモリ37に蓄積された上りフレームをアップリンクへ送信する。また、アップリンクIF部31は、アップリンクからフレームを受信すると、当該フレームが通常のデータフレームである場合にはバッファメモリ38へ出力し、当該フレームが制御フレームである場合にはPON制御部36へ出力する。
【0071】
アップリンクIF部31は、PON制御部36から制御フレームを受けた場合には、バッファメモリ37からのフレーム列の合間において、当該制御フレームをバッファメモリ37からのフレームよりも優先してアップリンクへ出力する。
【0072】
送信処理部34は、バッファメモリ38またはPON制御部36が送信すべきフレームを有する場合、優先順位に従ってそのフレームを受け取り、光トランシーバ35へ出力する。
【0073】
PON制御部36は、MPCPおよびOAMなど、PON回線203の制御および管理に関する局側処理を行う。すなわち、PON制御部36は、PON回線203に接続されている各宅側装置202とMPCPメッセージおよびOAMメッセージをやりとりすることによって、宅側装置202の登録、離脱および帯域割り当てを含めた上りアクセス制御、下りアクセス制御、ならびに宅側装置202の運用管理などを行う。
【0074】
たとえば、PON制御部36は、各宅側装置202から受けたPON回線203における上り帯域の割り当て要求に基づいて、PON回線203における上り帯域を各宅側装置202に割り当てる。具体的には、PON制御部36は、宅側装置202から受けたPON回線203における帯域の割り当て要求を示すレポートフレームに基づいて、PON回線203における帯域を宅側装置202に割り当てる、すなわちグラントを示すゲートフレームを宅側装置202へ送信する。PON制御部36は、ゲートフレームを用いて、宅側装置202に対して、上りフレームの送信開始タイミングおよび送信可能データ長を通知する。
【0075】
制御IF部32は、制御部160からの指示に基づいて、アップリンクIF部31、受信処理部33、送信処理部34、光トランシーバ35およびPON制御部36への設定を行い、これら各ユニットの状態を制御部160に通知する。また、これら各ユニットに異常が発生した場合は、制御部160からの指示に依らず、異常が発生したユニットの状態を制御部160に通知する。制御部160は、たとえば制御IF部32から通知された情報に基づいて、宅側装置202と光信号の送受信を行うべきOSUを、運用OSU111から冗長OSU112へ切り替える切り替え処理を行ってもよい。
【0076】
受信強度測定部40は、光トランシーバ35により受信される光信号の受信強度を測定する。
【0077】
図6は、本開示の実施の形態に係る運用OSUにおける受信強度測定部の構成を示す図である。
図7は、本開示の実施の形態に係る冗長OSUにおける受信強度測定部の構成を示す図である。
【0078】
図6および
図7を参照して、受信強度測定部40は、電源電圧供給部41と、APDバイアス供給/電流電圧変換部42と、電圧電流変換部43と、出力抵抗44と、測定制御部45とを有する。
【0079】
光トランシーバ35は、図示しない増幅器を有する。受光素子35Aは、受信した上り光信号に応じた電流を当該増幅器へ出力する。当該増幅器は、受光素子35Aから受けた電流を増幅して電圧に変換し、受信処理部33へ出力する。
【0080】
電源電圧供給部41は、APDバイアス供給/電流電圧変換部42および電圧電流変換部43に電源電圧を供給する。
【0081】
APDバイアス供給/電流電圧変換部42は、受光素子35Aにバイアス電圧を供給し、かつ光トランシーバ35における受光素子35Aの出力電流を電圧に変換して電圧電流変換部43へ出力する。
【0082】
電圧電流変換部43は、APDバイアス供給/電流電圧変換部42から受けた電圧を電流に変換する。
【0083】
出力抵抗44は、電圧電流変換部43によって変換された電流を、受光素子35Aの出力電流の測定結果を示す電圧VRSSIに変換して測定制御部45へ出力する。
【0084】
運用OSU111における測定制御部45は、制御部160から測定指示を受けると、光トランシーバ35により受信される上り光信号の受信強度RSaの測定を行う。冗長OSU112における測定制御部45は、制御部160から測定指示を受けると、光トランシーバ35により受信される上り光信号の受信強度RSbの測定を行う。
【0085】
(受信強度の測定例1)
(運用OSU)
たとえば、運用OSU111における測定制御部45は、制御部160から測定指示を受けると、受信強度RSaの測定対象である上り光信号の送信元の宅側装置202を対象宅側装置202として決定し、対象宅側装置202のLLIDである対象LLIDを記憶部50から取得する。対象宅側装置202は、予め設定されている構成であってもよいし、測定制御部45が運用OSU111の配下の宅側装置202の中から選択して対象宅側装置202を決定する構成であってもよい。測定制御部45は、記憶部50から取得した対象LLIDを含む受信検知指示を受信処理部33へ出力する。
【0086】
運用OSU111における測定制御部45は、出力抵抗44から出力される電圧VRSSIをたとえば定期的にモニタし、電圧VRSSIのモニタ結果および現在時刻であるモニタ時刻を含むモニタ情報を記憶部50に保存する。
【0087】
受信処理部33は、測定制御部45から受信検知指示を受けると、光トランシーバ35から受けた電気信号からフレームを再構成するたびに、再構成したフレームに含まれるLLIDと受信検知指示が示す対象LLIDと比較する。受信処理部33は、電気信号から再構成したフレームに含まれるLLIDが対象LLIDと一致した場合、当該フレームの受信時刻tx1を受信強度測定部40における測定制御部45へ通知する。
【0088】
運用OSU111における測定制御部45は、受信時刻tx1の通知を受信処理部33から受けると、記憶部50におけるモニタ情報を参照し、当該受信時刻tx1に対応するモニタ時刻における電圧VRSSIを取得する。
【0089】
ここで、記憶部50は、電圧VRSSIと光トランシーバ35により受信される上り光信号の受信強度との対応関係を示す対応情報T1を記憶している。
【0090】
運用OSU111における測定制御部45は、記憶部50における対応情報T1に基づいて、取得した電圧VRSSIに対応する受信強度RSaすなわち対象光信号の受信強度RSaを取得し、取得した受信強度RSaを含む結果情報Raを制御部160へ出力する。
【0091】
たとえば、運用OSU111は、受信強度の測定対象である光信号の送信元の宅側装置202を特定するための情報を冗長OSU112へ通知する。より詳細には、運用OSU111における測定制御部45は、受信強度RSaの測定対象である光信号の送信元の宅側装置202を特定するための情報として、対象LLIDを冗長OSU111における測定制御部45へ通知する。
【0092】
(冗長OSU)
冗長OSU112における測定制御部45は、運用OSU111における測定制御部45から対象LLIDの通知を受けると、当該対象LLIDを含む受信検知指示を受信処理部33へ出力する。
【0093】
冗長OSU112における測定制御部45は、出力抵抗44から出力される電圧VRSSIをたとえば定期的にモニタし、電圧VRSSIのモニタ結果およびモニタ時刻を含むモニタ情報を記憶部50に保存する。
【0094】
受信処理部33は、測定制御部45から受信検知指示を受けると、光トランシーバ35から受けた電気信号からフレームを再構成するたびに、再構成したフレームに含まれるLLIDと受信検知指示が示す対象LLIDと比較する。受信処理部33は、電気信号から再構成したフレームに含まれるLLIDが対象LLIDと一致した場合、当該電気信号の変換元の上り光信号である対象光信号の受信時刻tx2を受信強度測定部40における測定制御部45へ通知する。
【0095】
冗長OSU112における測定制御部45は、対象光信号の受信時刻tx2の通知を受信処理部33から受けると、記憶部50におけるモニタ情報を参照し、当該受信時刻tx2に対応するモニタ時刻における電圧VRSSIを取得する。
【0096】
ここで、記憶部50は、電圧VRSSIと光トランシーバ35により受信される上り光信号の受信強度との対応関係を示す対応情報TKを記憶している。
【0097】
冗長OSU112における測定制御部45は、記憶部50における対応情報TKに基づいて、取得した電圧VRSSIに対応する受信強度RSbすなわち対象光信号の受信強度RSbを取得し、取得した受信強度RSbを含む結果情報Rbを制御部160へ出力する。
【0098】
なお、冗長OSU112における測定制御部45における対象光信号の受信時刻tx2は、運用OSU111における測定制御部45における対象光信号の受信時刻tx1と同じであってもよいし、異なっていてもよい。具体的には、運用OSU111における測定制御部45における対象光信号および冗長OSU112における測定制御部45における対象光信号は、互いに異なるタイミングにおいて同一の宅側装置202から送信された光信号であってもよい。
【0099】
(受信強度の測定例2)
(運用OSU)
たとえば、運用OSU111における測定制御部45は、対象宅側装置202を決定すると、対象宅側装置202からの上り信号の受信時刻tyを特定する。
【0100】
より詳細には、運用OSU111における測定制御部45は、どのロジカルリンクからフレームをいつ受信するかを示すグラント情報を受信処理部33から受けて、受けたグラント情報に基づいて、対象宅側装置202からの上り信号の受信時刻tyを特定する。
【0101】
運用OSU111における測定制御部45は、出力抵抗44から出力される電圧VRSSIに基づいて、受信時刻tyにおいて運用OSU111における光トランシーバ35により受信される上り光信号の受信強度RSaを取得する。
【0102】
より詳細には、運用OSU111における測定制御部45は、記憶部50における対応情報T1に基づいて、受信時刻tyにおける電圧VRSSIに対応する受信強度RSaを取得し、取得した受信強度RSaを含む結果情報Raを制御部160へ出力する。
【0103】
たとえば、運用OSU111は、受信強度の測定対象である光信号の受信タイミングを示す情報を冗長OSU112へ通知する。より詳細には、運用OSU111における測定制御部45は、受信強度RSaの測定対象である光信号の受信タイミングを示す情報として、受信時刻tyを冗長OSU111における測定制御部45へ通知する。
【0104】
(冗長OSU)
冗長OSU112における測定制御部45は、運用OSU111における測定制御部45から受信時刻tyの通知を受けると、出力抵抗44から出力される電圧VRSSIに基づいて、受信時刻tyにおいて冗長OSU112における光トランシーバ35により受信される上り光信号の受信強度RSbを取得する。
【0105】
より詳細には、冗長OSU112における測定制御部45は、記憶部50における対応情報TKに基づいて、受信時刻tyにおける電圧VRSSIに対応する受信強度RSbを取得し、取得した受信強度RSbを含む結果情報Rbを制御部160へ出力する。
【0106】
(制御部)
再び
図3を参照して、制御部160は、上述したように、運用OSU111および冗長OSU112からそれぞれ結果情報Ra,Rbを受けると、受けた結果情報Ra,Rbに基づいてPONシステム301における異常を検知する。
【0107】
たとえば、制御部160は、結果情報Raが示す受信強度RSaから、結果情報Rbが示す受信強度RSbを差し引いた値を受信強度差RSDとして算出し、算出した受信強度差RSDに基づいてPONシステム301における異常を検知する。
【0108】
より詳細には、記憶部180は、受信強度差RSDに関する下限しきい値であるしきい値Tminおよび受信強度差RSDに関する上限しきい値であるしきい値Tmaxを記憶している。
【0109】
制御部160は、算出した受信強度差RSDと、しきい値Tmin,Tmaxとを比較し、受信強度差RSDがしきい値Tmin以上であり、かつしきい値Tmax以下である場合、PONシステム301において異常は発生していないと判断する。
【0110】
一方、制御部160は、受信強度差RSDがしきい値Tmin未満であるか、または受信強度差RSDがしきい値Tmaxより大きい場合、PONシステム301において異常が発生していると判断する。
【0111】
制御部160は、K個の運用OSU111を順に対象運用OSU111として選択することにより、K個の運用OSU111における各受信強度RSaを取得し、各受信強度RSaについてK個の受信強度差RSDをそれぞれ算出する。制御部160は、算出した各受信強度差RSDと、しきい値Tmin,Tmaxとを比較し、少なくともいずれか1つの受信強度差RSDがしきい値Tmin未満であるか、またはしきい値Tmaxより大きい場合、PONシステム301において異常が発生していると判断する。
【0112】
たとえば、制御部160は、複数の運用OSU111における受信強度RSaと、冗長OSU112における受信強度RSbとをそれぞれ比較し、各比較結果に基づいてPONシステム301における異常の発生箇所を判別する。
【0113】
より詳細には、制御部160は、算出した各受信強度差RSDと、しきい値Tmin,Tmaxとの比較結果に基づいて、PONシステムにおける異常の発生箇所を判別する。
【0114】
たとえば、制御部160は、ある受信強度RSaに対応する受信強度差RSDがしきい値Tmin未満である場合、当該受信強度RSaに対応する運用OSU111の光トランシーバ35と、当該運用OSU111に対応する光スプリッタ151との間の光信号の経路において異常が発生していると判断する。
【0115】
また、たとえば、制御部160は、ある受信強度RSaに対応する受信強度差RSDがしきい値Tmaxより大きい場合、光スイッチ152と、当該受信強度RSaに対応する運用OSU111に対応する光スプリッタ151との間の光信号の経路において異常が発生していると判断する。
【0116】
また、たとえば、制御部160は、すべての受信強度差RSDがしきい値Tmaxより大きい場合、光スイッチ152と、冗長OSU112の光トランシーバ35との間の光信号の経路において異常が発生していると判断する。
【0117】
制御部160は、PONシステム301における異常の検知結果を音声または表示によりPONシステム301の管理者へ通知する。
【0118】
[動作の流れ]
本開示の実施の形態に係るPONシステムにおける各装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートおよびシーケンスの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態で流通する。
【0119】
図8は、本開示の実施の形態に係る局側装置が検知処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【0120】
図8を参照して、まず、局側装置101は、所定の検知周期に従う検知タイミングを待ち受け(ステップS102でNO)、検知タイミングが到来すると(ステップS102でYES)、K個の運用OSU111の中から1つの運用OSU111を対象運用OSU111として選択する(ステップS104)。
【0121】
次に、局側装置101は、対象運用OSU111と冗長OSU112とが同一の宅側装置202からの上り光信号を受信可能な状態となるように光スイッチ152を切り替える。具体的には、局側装置101は、光スイッチ152において、光ファイバOPTFA-Lと、対象運用OSU111に対応する光ファイバOPTFBとを光学的に結合させる(ステップS106)。
【0122】
次に、局側装置101は、同一の宅側装置202からの光信号を対象運用OSU111および冗長OSU112において受信する(ステップS108)。
【0123】
次に、局側装置101は、対象運用OSU111における当該光信号の受信強度RSaおよび冗長OSU112における当該光信号の受信強度RSbを測定する(ステップS110)。
【0124】
次に、局側装置101は、受信強度RSaと受信強度RSbとを比較する。具体的には、局側装置101は、受信強度RSaから受信強度RSbを差し引いた値を受信強度差RSDとして算出する(ステップS112)。
【0125】
次に、局側装置101は、受信強度差RSDとしきい値Tmin,Tmaxとを比較する(ステップS114)。
【0126】
次に、局側装置101は、検知処理において、K個の運用OSU111のうちの対象運用OSU111として未選択の運用OSU111がある場合(ステップS116でNO)、ステップS104~ステップS114の処理を繰り返し、K個の運用OSU111のうちの対象運用OSU111として未選択の運用OSU111がなくなると(ステップS116でYES)、算出した各受信強度差RSDと、しきい値Tmin,Tmaxとの比較結果に基づいて、PONシステムにおける異常の有無を判断するとともに異常の発生箇所を判別する(ステップS118)。
【0127】
次に、局側装置101は、PONシステム301における異常の検知結果を音声または表示によりPONシステム301の管理者へ通知する(ステップS120)。
【0128】
次に、局側装置101は、新たな検知タイミングを待ち受ける(ステップS102でNO)。
【0129】
なお、本開示の実施の形態に係る局側装置101では、運用OSU111における測定制御部45は、対象LLIDまたは受信時刻tyを冗長OSU111における測定制御部45へ通知する構成であるとしたが、これに限定するものではない。運用OSU111における測定制御部45は、対象LLIDおよび受信時刻tyを冗長OSU111における測定制御部45へ通知しない構成であってもよい。この場合、たとえば、制御部160は、受信強度の測定対象である光信号の送信元の宅側装置202を特定するための情報、および受信強度の測定対象である光信号の受信タイミングを示す情報の少なくともいずれか一方を、運用OSU111における測定制御部45および冗長OSU112における測定制御部45へ通知する。
【0130】
また、本開示の実施の形態に係る局側装置101では、制御部160は、複数の運用OSU111における受信強度RSaと、冗長OSU112における受信強度RSbとをそれぞれ比較し、各比較結果に基づいてPONシステム301における異常の発生箇所を判別する構成であるとしたが、これに限定するものではない。制御部160は、1つの運用OSU111における受信強度RSaと、冗長OSU112における受信強度RSbとの比較結果に基づいてPONシステム301における異常の有無を判断する一方で、複数の運用OSU111における受信強度RSaと、冗長OSU112における受信強度RSbとの各比較結果に基づく異常の発生箇所の判別を行わない構成であってもよい。
【0131】
この場合、たとえば、制御部160は、K個の運用OSU111のうちの、伝送路長がより短いPON回線203を介して局側装置101と接続された運用OSU111を対象運用OSU111として選択する。これにより、PON回線203における上り光信号の減衰が抑制された、比較的高い強度の上り光信号の受信強度に基づいて、より正確な検知処理を行うことができる。
【0132】
ところで、冗長構成を備えるPONシステムにおいて発生し得る異常をより正確に検知することが可能な技術が望まれる。
【0133】
より詳細には、たとえば、冗長構成を備えるPONシステム301において、光スイッチ152における光信号の損失が増大する場合がある。従来の技術では、このような光スイッチ152における光信号の損失を異常として検知することは困難である。
【0134】
光スイッチ152における光信号の損失が増大した状態では、故障した運用OSU111の代わりに冗長OSU112を用いて宅側装置202との光信号の送受信を行う場合において、冗長OSU112と宅側装置202との間で正常に光信号の送受信を行うことができない場合がある。したがって、光スイッチ152等の光伝送路における光信号の損失の増大を異常として正確に検知することが可能な技術が望まれる。
【0135】
これに対して、本開示の実施の形態に係る局側装置101では、運用OSU111および冗長OSU112は、PONシステム301における1または複数の宅側装置202との間で光信号を送受信可能である。スイッチ部150は、宅側装置202との間で光信号の送受信を行うべきOSUを、運用OSU111から冗長OSU112へ切り替えるための機器である。制御部160は、同一の宅側装置202からの光信号を運用OSU111および冗長OSU112において受信したときの、運用OSU111における光信号の受信強度と冗長OSU112における光信号の受信強度とを比較し、比較結果に基づいてPONシステム301における異常を検知する。
【0136】
本開示の実施の形態に係る異常検知方法は、局側装置101における異常検知方法である。局側装置101は、PONシステム301における1または複数の宅側装置202との間で光信号を送受信可能な複数のOSUと、宅側装置202との間で光信号の送受信を行うべきOSUを、運用OSU111から冗長OSU112へ切り替えるためのスイッチ部150とを備える。この異常検知方法では、まず、局側装置101が、同一の宅側装置202からの光信号を運用OSU111および冗長OSU112において受信する。次に、局側装置101が、運用OSU111における光信号の受信強度と冗長OSU112における光信号の受信強度とを比較し、比較結果に基づいてPONシステム301における異常を検知する。
【0137】
このように、同一の宅側装置202からの光信号を運用OSU111および冗長OSU112において受信したときの、運用OSU111および冗長OSU112における光信号の受信強度の比較結果に基づいてPONシステム301における異常を検知する構成および方法により、たとえば宅側装置202と運用OSU111との間の光伝送路における損失量、および宅側装置202と冗長OSU112との間の光伝送路における損失量に基づいて、光スイッチ152等の光伝送路における光信号の損失の増大を正確に検知し、PONシステム301の異常を早期に把握することができる。
【0138】
したがって、本開示の実施の形態に係る局側装置101および異常検知方法では、冗長構成を備えるPONシステムにおいて発生し得る異常をより正確に検知することができる。
【0139】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0140】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
PONシステムにおける局側装置であって、
前記PONシステムにおける1または複数の宅側装置との間で光信号を送受信可能な複数の光回線ユニットと、
前記宅側装置との間で前記光信号の送受信を行うべき前記光回線ユニットを、運用系の前記光回線ユニットである第1の光回線ユニットから待機系の前記光回線ユニットである第2の光回線ユニットへ切り替えるためのスイッチ部と、
同一の前記宅側装置からの前記光信号を前記第1の光回線ユニットおよび前記第2の光回線ユニットにおいて受信したときの、前記第1の光回線ユニットにおける前記光信号の受信強度と前記第2の光回線ユニットにおける前記光信号の受信強度とを比較し、比較結果に基づいて前記PONシステムにおける異常を検知する検知部とを備え、
前記スイッチ部は、前記第1の光回線ユニットおよび前記第2の光回線ユニットのうちの、光ファイバを介して前記宅側装置と接続される前記光回線ユニットを選択的に切り替えるための光スイッチを含み、
前記スイッチ部は、前記光ファイバおよび前記光スイッチを介して前記宅側装置と前記第2の光回線ユニットとを接続することが可能である、局側装置。
【符号の説明】
【0141】
21 PONポート
22 光受信処理部
23,27 バッファメモリ
24 送信処理部
25 UNIポート
26 受信処理部
28 光送信処理部
29 制御部
30 記憶部
31 アップリンクIF部
32 制御IF部
33 受信処理部
34 送信処理部
35 光トランシーバ
35A 受光素子
35B 発光素子
36 PON制御部
37,38 バッファメモリ
40 受信強度測定部
41 電源電圧供給部
42 APDバイアス供給/電流電圧変換部
43 電圧電流変換部
44 出力抵抗
45 測定制御部
50 記憶部
101 局側装置
111 運用OSU
112 冗長OSU
150 スイッチ部
151 光スプリッタ
152 光スイッチ
160 制御部
170 スイッチ制御部
180 記憶部
202 宅側装置
203 PON回線
204 光カプラ
OPTFA 光ファイバ
OPTFB 光ファイバ