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特開2022-103594リードフレーム、リードフレームの製造方法及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103594
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】リードフレーム、リードフレームの製造方法及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/50 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
H01L23/50 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218326
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】林 真太郎
【テーマコード(参考)】
5F067
【Fターム(参考)】
5F067AA01
5F067AA04
5F067AB03
5F067BA02
5F067BD05
5F067DA16
5F067DC11
5F067DC15
5F067DC19
5F067EA04
(57)【要約】
【課題】接着剤に含まれる溶剤成分による封止樹脂との密着性の低下の抑制、及びワイヤーボンディング障害を回避することができるリードフレーム、リードフレームの製造方法及び半導体装置を提供する。
【解決手段】リードフレームは、一方の面に、半導体チップが搭載される第1領域と、前記第1領域の周囲の第2領域と、を有するリードフレームであって、前記第2領域は、粗化領域と、前記粗化領域と前記第1領域との間に設けられ、前記粗化領域よりも平坦度が高い粗化緩和領域と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に、半導体チップが搭載される第1領域と、前記第1領域の周囲の第2領域と、を有するリードフレームであって、
前記第2領域は、
粗化領域と、
前記粗化領域と前記第1領域との間に設けられ、前記粗化領域よりも平坦度が高い粗化緩和領域と、
を有することを特徴とするリードフレーム。
【請求項2】
前記第1領域が、粗化領域を有することを特徴とする請求項1に記載のリードフレーム。
【請求項3】
前記一方の面とは反対側の他方の面が、粗化領域を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のリードフレーム。
【請求項4】
前記粗化領域のSレシオは1.05~2.20であり、
前記粗化緩和領域のSレシオは1.01~1.10であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のリードフレーム。
【請求項5】
前記リードフレームがダイパッドを有し、
前記ダイパッドの一方の面に、前記第1領域と前記第2領域とが設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のリードフレーム。
【請求項6】
一方の面に、半導体チップが搭載される第1領域と、前記第1領域の周囲の第2領域と、を有するリードフレームの製造方法であって、
リードフレームの基材の少なくとも前記一方の面に粗化面を形成する工程と、
前記第2領域の一部の粗化面を潰して、前記粗化面を備えた粗化領域と、前記粗化領域と前記第1領域との間に設けられ、前記粗化領域よりも平坦度が高い粗化緩和領域と、を形成する工程と、
を有することを特徴とするリードフレームの製造方法。
【請求項7】
前記粗化面を形成する工程において、前記粗化面を、前記第1領域にも形成することを特徴とする請求項6に記載のリードフレームの製造方法。
【請求項8】
前記粗化面を形成する工程において、前記粗化面を、前記一方の面とは反対側の他方の面にも形成することを特徴とする請求項6又は7に記載のリードフレームの製造方法。
【請求項9】
前記粗化面のSレシオは1.05~2.20とし、
前記粗化緩和領域のSレシオは1.01~1.10とすることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載のリードフレームの製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のリードフレームと、
前記第1領域の上に接着剤を用いて搭載された半導体チップと、
前記第2領域に接触し、前記半導体チップを封止する封止樹脂と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リードフレーム、リードフレームの製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リードフレームに半導体チップを搭載し、樹脂で封止した半導体装置が知られている。このような半導体装置は、動作時の発熱により膨張や収縮が繰り返される。そこで、リードフレームと樹脂との密着性の向上のために、リードフレームの表面に粗化処理が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-5149号公報
【特許文献2】特開2008-187045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リードフレームの表面に粗化処理が行われた場合、半導体チップのリードフレームへの固定に用いられる接着剤(ダイアタッチペースト)に含まれる溶剤成分がリードフレームの表面に濡れ広がりやすい。溶剤成分はリードフレームと樹脂との間の密着性を低下させるおそれがある。また、半導体チップを搭載する部位と連続する部位(例えば、ダイパッド上)にワイヤーボンディングを行う場合は、濡れ広がった溶剤成分がワイヤーボンディングを阻害するおそれがある。
【0005】
本開示は、接着剤に含まれる溶剤成分による封止樹脂との密着性の低下の抑制、及びワイヤーボンディング障害を回避することができるリードフレーム、リードフレームの製造方法及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、一方の面に、半導体チップが搭載される第1領域と、前記第1領域の周囲の第2領域と、を有するリードフレームであって、前記第2領域は、粗化領域と、前記粗化領域と前記第1領域との間に設けられ、前記粗化領域よりも平坦度が高い粗化緩和領域と、を有するリードフレームが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、接着剤に含まれる溶剤成分による封止樹脂との密着性の低下を抑制し、且つ、ワイヤーボンディング障害を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るリードフレームを示す上面図である。
図2図1中の一部を拡大して示す図である。
図3】第1実施形態に係るリードフレームを示す断面図である。
図4】粗化領域及び粗化緩和領域の走査型電子顕微鏡写真の例を示す図である。
図5】溶剤成分の濡れ広がりが抑制される様子を示す模式図である。
図6】Sレシオの算出方法を示す図である。
図7】第1実施形態に係るリードフレームの製造方法を示す図(その1)である。
図8】第1実施形態に係るリードフレームの製造方法を示す図(その2)である。
図9】第1実施形態に係るリードフレームの製造方法を示す図(その3)である。
図10】第1実施形態に係るリードフレームの製造方法を示す図(その4)である。
図11】第1実施形態に係るリードフレームの製造方法を示す図(その5)である。
図12】第1実施形態に係るリードフレームの製造方法を示す図(その6)である。
図13】第1実施形態に係るリードフレームの製造方法を示す図(その7)である。
図14】粗化部の走査型電子顕微鏡写真の例を示す図である。
図15】第2実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図16】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す図(その1)である。
図17】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す図(その2)である。
図18】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す図(その3)である。
図19】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す図(その4)である。
図20】接着剤に含まれる溶剤成分の挙動を示す断面図である。
図21】変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。本開示では、便宜上、リードフレームの半導体チップが搭載される側を一方の側又は上側、その反対側を他方の側又は下側とする。また、リードフレームの半導体チップが搭載される面を一方の面又は上面、その反対側の面を他方の面又は下面とする。但し、リードフレーム及び半導体装置は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。また、平面視とは対象物をリードフレームの一方の面の法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物をリードフレームの一方の面の法線方向から視た形状を指すものとする。
【0010】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。第1実施形態はリードフレームに関する。
【0011】
[リードフレームの構造]
まず、リードフレームの構造について説明する。図1は、第1実施形態に係るリードフレームを示す上面図である。図2は、図1中の一部を拡大して示す図である。図3は、第1実施形態に係るリードフレームを示す断面図である。図3(a)は、図1及び図2中のIIIa-IIIa線に沿った断面図に相当し、図3(b)は、図1及び図2中のIIIb-IIIb線に沿った断面図に相当し、図3(c)は、図1及び図2中のIIIc-IIIc線に沿った断面図に相当する。
【0012】
第1実施形態に係るリードフレーム100は、一方の面に半導体チップが搭載され、封止樹脂により被覆されて半導体装置となるリードフレームである。リードフレーム100においては、基部101の表面に部分的に粗化面102が形成されている。
【0013】
図1図3に示すように、リードフレーム100は、複数の個片化領域Cが連結部15を介して連結された構造を有する。連結部15は、外枠部151と、ダムバー152と、サポートバー153とを有する。外枠部151は、各個片化領域Cの外側に設けられており、リードフレーム100の外縁部に額縁状に形成された部分と、隣り合う個片化領域Cの間に直線状に形成された部分とを有する。ダムバー152は、各個片化領域C内に外枠部151に沿って、ダイパッド11を囲むようにロの字状に配置されている。サポートバー153は、各個片化領域C内に斜めに配置されている。ダムバー152は樹脂により封止される樹脂封止領域Dの外側に配置され、サポートバー153の大部分は樹脂封止領域Dの内側に配置されている。
【0014】
ダムバー152の四隅は、外枠部151の四隅に連結されている。ダムバー152には、複数のリード12が設けられている。リード12は、ダムバー152からダイパッド11側に延びるインナーリード12Aと、ダムバー152からインナーリード12Aとは反対側に延びるアウターリード12Bとを有する。サポートバー153は、一端が外枠部151に連結され、他端がダイパッド11の四隅に連結され、ダイパッド11を支持している。
【0015】
リードフレーム100の上面100Aは、半導体チップが搭載される第1領域110と、第1領域110の周囲で封止樹脂に接触する第2領域120とを有する。第1領域110は、ダイパッド11の略中心部に設けられており、矩形状の平面形状を有する。第2領域120は、ダイパッド11の第1領域110の周囲と、連結部15と、リード12とに設けられている。第2領域120は、上面100Aのうちの第1領域110以外の領域である。例えば、ダイパッド11は1辺の長さが5mm~15mm程度の平面形状を有し、第1領域110は1辺の長さが4mm~13mm程度の平面形状を有する。
【0016】
第2領域120は、粗化領域121と、粗化緩和領域122とを有する。粗化緩和領域122は、例えば、ロの字型の平面形状を有し、平面視で第1領域110の外縁に沿って第1領域110を包囲する。粗化領域121は、第2領域120のうちの粗化緩和領域122以外の部分である。従って、粗化緩和領域122は、粗化領域121と第1領域110との間に設けられている。例えば、平面視での粗化緩和領域122の幅は0.1mm~1.0mm程度である。粗化領域121に粗化面102が形成されており、粗化緩和領域122には粗化面102が形成されていない。粗化緩和領域122の平坦度は粗化領域121の平坦度よりも高く、粗化緩和領域122のSレシオは粗化領域121のSレシオよりも低い。例えば、粗化緩和領域122のSレシオは1.01~1.10であり、粗化領域121のSレシオは1.05~2.20である。図4は、粗化領域及び粗化緩和領域の走査型電子顕微鏡(scanning electron microscopy:SEM)写真の例を示す図である。図4(a)は粗化領域のSEM写真の例を示し、図4(b)は粗化緩和領域のSEM写真の例を示す。Sレシオについては後述する。なお、図4(a)における粗化領域は、酸化処理により形成されたものである。
【0017】
個片化領域C及び連結部15の下面100B及び側面の平坦度は特に限定されないが、粗化領域121の平坦度と同程度であることが好ましい。個片化領域C及び連結部15の下面100B及び側面にも粗化面102が形成されていることが好ましい。第1領域110の平坦度は特に限定されないが、例えば粗化領域121の平坦度と同程度であることが好ましい。第1領域110にも粗化面102が形成されていることが好ましい。
【0018】
サポートバー153が2段階に折り曲げ加工されており、ダイパッド11の上面は、リード12の上面よりも下側に位置する。ダイパッド11の上面と、リード12の上面とは略平行である。
【0019】
リード12のインナーリード12Aの先端の上面には、部分的にめっき膜18が形成されている。めっき膜18は、例えばワイヤーボンディングにより金属線が接続される部分に形成されている。めっき膜18は、例えば、Ag膜、Au膜、Ni/Au膜(Ni膜とAu膜をこの順番で積膜した金属膜)、Ni/Pd/Au膜(Ni膜とPd膜とAu膜をこの順番で積膜した金属膜)等である。なお、めっき膜18が形成されていなくてもよい。
【0020】
詳細は後述するが、リードフレーム100を用いて半導体装置を製造する際には、第1領域110にAgペースト等の接着剤(ダイアタッチペースト)を塗布し、接着剤の上に半導体チップを搭載する。そして、封止樹脂により半導体チップ及びリードフレーム100を覆う。
【0021】
粗化領域121が第1領域110に連続している場合、接着剤に含まれる溶剤成分が、毛細管現象により粗化領域121の表面に濡れ広がりやすい。溶剤成分が粗化領域121に濡れ広がると、封止樹脂と粗化領域121との間の密着性が低下する。これに対し、本実施形態では、第1領域110と粗化領域121との間に、粗化領域121よりも平坦度が高い粗化緩和領域122が設けられている。従って、溶剤成分の毛細管現象による粗化領域121への濡れ広がりが抑制される。このため、接着剤に含まれる溶剤成分による密着性の低下を抑制し、封止樹脂と粗化領域121との間に優れた密着性が得られる。
【0022】
図5は、溶剤成分の濡れ広がりが抑制される様子を示す模式図である。図5では、第1領域110内の一部の円状の領域に接着剤としてAgペースト116が塗布されている。Agペースト116は、粗化緩和領域122から離れて塗布されている。第1領域110の平坦度は粗化領域121の平坦度と同程度であり、第1領域110の平坦度は粗化緩和領域122の平坦度よりも低い。このため、Agペースト116に含まれる溶剤成分117が第1領域110内でAgペースト116の周囲に円状に濡れ広がっている。その一方で、溶剤成分117は、第1領域110と粗化緩和領域122との境界を越えず、第1領域110内に留まっている。このように、溶剤成分117の粗化領域121への濡れ広がりが抑制される。
【0023】
なお、接着剤に含まれる溶剤成分の濡れ広がりを抑制するために、疎水性を有する有機剤を粗化面の上に部分的に塗布することも考えられる。しかしながら、このような有機剤はリードフレームと封止樹脂との密着性を逆に低下させるおそれがある。また、有機剤の使用はコストの上昇に直結しやすい。また、有機剤を所望の位置に所望の量で塗布するために大きな手間がかかるおそれもある。また、有機剤は熱処理を受けた場合に変質するおそれがある。特に、1つのダイパッド11の上に複数の半導体チップが搭載される場合には、複数回の熱処理を受けることがあり、この場合には変質しやすくなるおそれがある。
【0024】
また、粗化領域121と粗化緩和領域122との間では可視光の反射率が相違するため、目視又は光学顕微鏡により容易に粗化緩和領域122を確認できる。これに対し、密着性が低下しない程度の量の有機剤を塗布した場合には有機剤が塗布されているか否かを確認しにくい。
【0025】
なお、粗化緩和領域122は、第1領域110の周囲に連続して形成されている必要はない。例えば、粗化緩和領域122は、第1領域110の周囲に断続的に形成されていてもよい。また、リード12の配置によっては、平面視で、第1領域110のいずれかの辺の近傍に粗化緩和領域122が設けられていなくてもよい。
【0026】
ここで、Sレシオについて説明する。図6は、Sレシオの算出方法を示す図である。Sレシオとは、図6に示すように、平面視での面積がSである領域Tの実表面積がSである場合の面積Sに対する実表面積Sの比である。つまり、Sレシオは、「S/S」で表される。
【0027】
[リードフレームの製造方法]
次に、第1実施形態に係るリードフレーム100の製造方法について説明する。図7図13は、第1実施形態に係るリードフレーム100の製造方法を示す図である。図7(a)~図13(a)は上面図であり、図7(b)~図13(b)はそれぞれ図7(a)~図13(a)中のI-I線に沿った断面図である。図8図13は、個片化領域Cの1つを示す。
【0028】
まず、図7に示すように、所定形状の金属製の板材10を準備する。板材10は、最終的に破線で示す切断ラインに沿って切断されて個片化領域C毎に個片化される部材である。板材10の材料としては、例えば、Cu、Cu合金、42アロイ等を用いることができる。板材10の厚さは、例えば、100μm~200μm程度とすることができる。板材10の表面のSレシオは、例えば全体にわたって1.00~1.03程度である。
【0029】
次に、図8に示すように、板材10の上面に感光性のレジスト161を形成し、板材10の下面に感光性のレジスト162を形成する。そして、レジスト161及び162を露光及び現像し、所定の位置に開口部161X及び162Xを形成する。開口部161X及び162Xは、板材10にダイパッド11、リード12及びサポートバー153を形成するための開口部であり、互いに平面視で重複する位置に設けられる。
【0030】
次に、図9に示すように、レジスト161及び162をエッチングマスクとして板材10をエッチング(例えば、ウェットエッチング)する。エッチングにより、開口部161X及び162Xが平面視で重複するように形成されている部分では、板材10が貫通する。
【0031】
次に、図10に示すように、レジスト161及び162を除去する。このようにして、板材10に、複数の個片化領域Cと、連結部15とが形成される。連結部15は、外枠部151と、ダムバー152と、サポートバー153とを有する。また、外枠部151又はダムバー152の各個片化領域C側に、ダイパッド11を囲むように複数のリード12が形成される。リード12は、インナーリード12Aと、アウターリード12Bとを含む。板材10の上面は、第1領域110と第2領域120とを含む。
【0032】
次に、図11に示すように、リード12のインナーリード12Aの先端の上面に、部分的にめっき膜18を形成する。めっき膜18は、例えばワイヤーボンディングにより金属線が接続される部分に形成する。
【0033】
次に、図12に示すように、板材10の表面全体に対して粗化処理を行う。この結果、板材10の表面に粗化面102が形成される。板材10の残部が基部101となる。粗化面102の表面のSレシオは、粗化処理の種類にもよるが、例えば1.05~2.20である。粗化処理をめっき膜18の形成前に行ってもよい。粗化処理としては、例えば酸化処理、マイクロエッチング処理、粗化Cuめっき処理又は粗化Niめっき処理を行う。
【0034】
酸化処理では、Cu又はCu合金からなる板材10を黒化処理液中で陽極酸化することにより、その表面に水酸化物を含み、針状結晶を有する酸化銅の皮膜を形成する。つまり、板材10のCuを陽極酸化する。酸化処理により形成される粗化面102のSレシオは、例えば1.05~1.50となる。
【0035】
マイクロエッチング処理では、インヒビターが添加され、硫酸及び過酸化水素を含むエッチング液を用いてCu又はCu合金からなる板材10の表面をエッチングする。このエッチングでは、インヒビターが板材10の表面に吸着し、表面の溶解速度に差が生じる。このため、溶解が優先的に進む部分が窪み、溶解が遅れた部分が凸となる。マイクロエッチング処理により形成される粗化面102のSレシオは、例えば1.05~1.50となる。
【0036】
粗化Cuめっき処理では、硫酸銅系のめっき液を用いて板材10の表面に陰極電解によるめっき処理を行う際に、高電流密度領域の粗大な結晶を局所的に析出させる。粗化Cuめっき処理により形成される粗化面102のSレシオは、例えば1.20~2.20となる。
【0037】
粗化Niめっき処理では、陰極電解によりNiめっき、Pdめっき、Auめっきを順次行い、Niめっきの際に臭化Ni等のハロゲンを含む酸性めっき浴を使用する。ハロゲンを含む酸性めっき浴を使用することで、ハロゲンを含まない酸性めっき浴に比較し、結晶粒の大きなNiが得られる。粗化Niめっき処理により形成される粗化面102のSレシオは、例えば1.20~1.80となる。
【0038】
図14は、粗化部のSEM写真の例を示す図である。図14(a)は粗化処理が施されていないCu素材のSEM写真を示す。図14(b)はマイクロエッチング処理により得られる粗化部のSEM写真の例を示す。図14(c)は酸化処理により得られる粗化部のSEM写真の例を示す。図14(d)は粗化Cuめっき処理により得られる粗化部のSEM写真の例を示す。図14(e)は粗化Niめっき処理により得られる粗化部のSEM写真の例を示す。なお、図14(e)に示す試料では、粗化Niめっき処理を施した後に、Pdめっき処理及びAuめっき処理を施しているが、Pdめっき及びAuめっきの厚さは0.005μm~0.05μm程度と極めて薄い。このため、Pdめっき及びAuめっきは、粗化Niめっきの粗化面に沿って形成されており、粗化面の粗度は粗化Niめっきの表面の粗度と同等の値となる。
【0039】
粗化処理の後、図13に示すように、金型(図示せず)を用いて、サポートバー153の折り曲げ加工を行うとともに、第2領域120の一部を押圧して粗化を緩和する粗化緩和加工とを行う。この結果、金型により押圧された部分の粗化面102が潰され、押圧された部分の平坦度が、押圧されていない部分の平坦度よりも高くなり、第2領域120に粗化緩和領域122が形成される。第2領域120の押圧されていない部分が粗化領域121となる。粗化面102は、例えば1μm~2μm程度の深さで潰す。粗化緩和領域122のSレシオは、例えば1.01~1.10とする。粗化面102を潰す加工はコイニング加工とよばれることがある。
【0040】
このようにして、第1実施形態に係るリードフレーム100を製造することができる。
【0041】
なお、サポートバー153の折り曲げ加工と、第2領域120の粗化緩和加工とを同時に行う必要はなく、第2領域120の粗化緩和加工をサポートバー153の折り曲げ加工より先に行ってもよく、サポートバー153の折り曲げ加工を第2領域120の粗化緩和加工より先に行ってもよい。
【0042】
また、サポートバー153の折り曲げ加工を行わずに、ダイパッド11の上面とリード12の上面とが同一平面にあるようにしてもよい。
【0043】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に係るリードフレーム100を用いて製造された半導体装置に関する。
【0044】
[半導体装置の構造]
まず、半導体装置の構造について説明する。図15は、第2実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0045】
第2実施形態に係る半導体装置200は、図15に示すように、大略すると、リードフレーム201と、半導体チップ20と、金属線30(ボンディングワイヤ)と、樹脂部40(封止樹脂)とを有する。
【0046】
リードフレーム201は、リードフレーム100の個片化領域Cの内側の部分であり、半導体チップ20が搭載されるダイパッド11(チップ搭載部)と、複数のリード12(端子部)と、サポートバー153とを備えている。リード12はダイパッド11と電気的に独立しており、平面視において、ダイパッド11の周囲に所定のピッチで複数個設けられている。但し、リード12は必ずしもダイパッド11の周囲4方向に設けなくてもよく、例えば、ダイパッド11の両側のみに設けてもよい。リード12の幅は、例えば、0.2mm程度とすることができる。リード12のピッチは、例えば、0.4mm程度とすることができる。
【0047】
半導体チップ20は、ダイパッド11上にフェイスアップ状態で搭載されている。半導体チップ20は、例えば、Agペースト等の接着剤17を介してダイパッド11上に搭載(ダイボンディング)することができる。半導体チップ20の上面側に形成された各電極端子は、金線や銅線等である金属線30を介して、リード12の上面に形成されためっき膜18と電気的に接続(ワイヤーボンディング)されている。
【0048】
樹脂部40は、樹脂封止領域Dに設けられて、リードフレーム201、半導体チップ20及び金属線30を封止している。各リード12のアウターリード12B(図2参照)は樹脂部40から突出している。すなわち、樹脂部40は、リード12のアウターリード12Bを露出するように半導体チップ20等を封止している。リード12のアウターリード12Bは、外部接続端子となる。リード12の樹脂部40から突出するアウターリード12Bは、例えば2段階に折り曲げ加工されている。各リード12のインナーリード12A(図2参照)は樹脂部40に被覆されている。樹脂部40としては、例えば、エポキシ樹脂にフィラーを含有させた所謂モールド樹脂等を用いることができる。
【0049】
なお、半導体装置の樹脂部内(樹脂部とリードフレームとの界面)に水分が侵入すると、半導体装置を実装基板へ実装する際のリフロー工程等で、樹脂部内の水分が急激に膨張及び気化し、樹脂部にクラック等が発生するおそれがある。このようなクラック等が発生すると、半導体装置は破壊される。
【0050】
これに対し、第2実施形態に係る半導体装置200では、リードフレーム201がリードフレーム100から形成されており、リードフレーム201は、樹脂部40との密着性に優れた粗化領域121を備える。従って、上記の水分の侵入を抑制し、半導体装置200の破壊を抑制することができる。
【0051】
[半導体装置の製造方法]
次に、第2実施形態に係る半導体装置200について説明する。図16図19は、第2実施形態に係る半導体装置200の製造方法を示す図である。図16(a)~図19(a)は上面図であり、図16(b)~図19(b)はそれぞれ図16(a)~図19(a)中のI-I線に沿った断面図である。
【0052】
まず、図16に示すように、各個片化領域Cのダイパッド11の第1領域110に接着剤17を塗布し、接着剤17の上に半導体チップ20をフェイスアップ状態で搭載し、加熱により接着剤17を硬化させる。これにより、半導体チップ20がダイパッド11に固定される。例えば、接着剤17としては、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂等の樹脂を含むものが使用される。または、これら樹脂中に銀や銅等の導電性フィラーを含有させた接着剤17が用いられる。
【0053】
ここで、接着剤17に含まれる溶剤成分の挙動について説明する。図20は、接着剤17に含まれる溶剤成分の挙動を示す断面図である。第1領域110が粗化面となっているため、図20に示すように、接着剤17に含まれる溶剤成分19は毛細管現象により第1領域110内で濡れ広がる。ただし、第2領域120には、平面視で第1領域110の外縁に沿って第1領域110を包囲するようにして粗化緩和領域122が形成されている。このため、溶剤成分19は、粗化緩和領域122内まで濡れ広がらず、第1領域110内に留まる。従って、溶剤成分19の粗化領域121への濡れ広がりが抑制される。
【0054】
半導体チップ20の固定の後、図17に示すように、半導体チップ20の上面側に形成された電極端子を、金属線30を介して、リード12の上面に形成されためっき膜18と電気的に接続する。金属線30は、例えば、ワイヤーボンディングにより、半導体チップ20の電極端子及びめっき膜18と接続できる。
【0055】
次に、図18に示すように、リードフレーム100、半導体チップ20及び金属線30を封止する樹脂部40を樹脂封止領域Dに形成する。樹脂部40としては、例えば、エポキシ樹脂にフィラーを含有させた所謂モールド樹脂等を用いることができる。樹脂部40は、例えば、トランスファーモールド法やコンプレッションモールド法等により形成できる。
【0056】
次に、図19に示すように、ダムバー152のリード12の間の部分と、ダムバー152のリード12とサポートバー153との間の部分とを除去する。更に、アウターリード12Bと外枠部151との接続部分と、サポートバー153と外枠部151との接続部分を切断し、個片化領域C毎に個片化する。個片化された構造体毎に、リードフレーム100からリードフレーム201が得られる。その後、リード12の樹脂部40から突出している部分の折り曲げ加工を行うことにより、複数の半導体装置200が完成する(図15参照)。
【0057】
(第2実施形態の変形例)
次に、第2実施形態の変形例について説明する。図21は、第2実施形態の変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【0058】
第2実施形態の変形例に係る半導体装置200Aでは、図21に示すように、ダイパッド11にワイヤーボンディング部が設けられ、このワイヤーボンディング部にめっき膜18Aが形成されている。めっき膜18Aは、めっき膜18と同時に形成することができる。更に、めっき膜18Aと、半導体チップ20の上面側に形成されたグランド端子として用いられる電極端子とを電気的に接続する金属線30Aが設けられている。
【0059】
半導体装置200Aでは、例えば、ダイパッド11をグランド導体として用い、半導体チップ20のグランド端子とダイパッド11とを金属線30Aで接続することができる。
【0060】
なお、本開示のリードフレームが用いられるパッケージの形態は特に限定されない。本開示のリードフレームは、例えば、QFP(Quad Flat Package:)、QFN(Quad Flat Non-leaded package)等の各種パッケージに用いることができる。
【0061】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0062】
100、201:リードフレーム
10:板材
11:ダイパッド
12:リード
17:接着剤
19:溶剤成分
20:半導体チップ
40:樹脂部
100A:上面
100B:下面
101:基部
102:粗化面
110:第1領域
116:Agペースト
117:溶剤成分
120:第2領域
121:粗化領域
122:粗化緩和領域
200、200A:半導体装置
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