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特開2022-103855構造物の製造方法、及び複数の構造物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103855
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】構造物の製造方法、及び複数の構造物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/343 20060101AFI20220701BHJP
   E04H 15/20 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
E04B1/343 T
E04H15/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218745
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】399127832
【氏名又は名称】株式会社LIFULL
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】北川 啓介
(72)【発明者】
【氏名】小池 克典
【テーマコード(参考)】
2E141
【Fターム(参考)】
2E141BB05
2E141CC05
2E141EE03
2E141EE32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡便に製作が可能であり、外皮部材とその内面の内壁部材によって構成される構造物の外形を、所定の大きさに規制して製作することができる、構造物の製造方法を提供する。
【解決手段】構造物1の外形を形作る外皮部材10の内側に気体を送入して、外皮部材を膨らませる工程と、膨らんだ状態の外皮部材の一部分の膨らみを外側から規制しつつ、外皮部材の内面に内壁部材11を付着させて内壁とする工程を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の製造方法であって、
前記構造物の外形を形作る外皮部材の内側に気体を送入して、外皮部材を膨らませる工程と、
前記膨らんだ状態の外皮部材の一部分の膨らみを外側から規制しつつ、前記外皮部材の内面に内壁部材を付着させて内壁とする工程と、を含む、
構造物の製造方法。
【請求項2】
前記外側からの規制を、内部に気体が送入され、前記膨らんだ状態の外皮部材と接する袋体により行う、
請求項1に記載の構造物の製造方法。
【請求項3】
前記袋体が、前記外皮部材とは別の外皮部材である、
請求項2に記載の構造物の製造方法。
【請求項4】
前記外皮部材と、前記袋体とを連通させる連通部を形成する工程を含む、
請求項2または3に記載の構造物の製造方法。
【請求項5】
前記内壁部材により内壁とする工程の後、前記連通部を切り離す工程を含む、
請求項4に記載の構造物の製造方法。
【請求項6】
前記連通部の切り離し箇所に、前記構造物の窓を形成する工程を含む、
請求項5に記載の構造物の製造方法。
【請求項7】
前記外側からの規制により、前記構造物の少なくとも一つの側面又は天井を形作る、
請求項1から6のいずれか1項に記載の構造物の製造方法。
【請求項8】
前記外側からの規制により、前記構造物の対向する側面を形作る、
請求項1から6のいずれか1項に記載の構造物の製造方法。
【請求項9】
複数の構造物の製造方法であって、
前記複数の構造物の外形を形作る外皮部材を並べて配置し、そのそれぞれの前記外皮部材の内側に気体を送入して、膨らませる工程と、
前記外皮部材の一部分の膨らみを、当該外皮部材と隣接する他の外皮部材により規制しつつ、規制された前記複数の外皮部材の内面に内壁部材を付着させて内壁とする工程と、を含む、
複数の構造物の製造方法。
【請求項10】
前記外皮部材と、少なくとも1つの前記隣接する他の外皮部材と、が連通部で連通されている、
請求項9に記載の複数の構造物の製造方法。
【請求項11】
前記内壁部材により内壁とする工程の後、前記連通部を切り離す工程を含む、
請求項10に記載の複数の構造物の製造方法。
【請求項12】
前記連通部の切り離し箇所に、前記複数の構造物の窓を形成する工程を含む、
請求項11に記載の複数の構造物の製造方法。
【請求項13】
前記隣接する他の外皮部材からの規制により、前記複数の構造物の少なくとも一つの側面又は天井を形作る、
請求項9から12のいずれか1項に記載の複数の構造物の製造方法。
【請求項14】
前記隣接する他の外皮部材からの規制により、前記複数の構造物の対向する側面を形作る、
請求項9から12のいずれか1項に記載の複数の構造物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外皮部材を内側から膨らませると共に、外側から一部分の膨らみを規制して、外皮部材の内面に内壁部材を付着させて構造物の内壁とする、構造物の製造方法、及び複数の構造物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内部空間を有する構造物は、テント、簡易住宅等の分野で広く使用されている。このような構造物には、屋外、及び屋内での使用に耐え得る一定の強度が求められている。構造物への強度付与については各種の検討がされており、例えば、特許文献1には、薄膜体と発泡材を含む構造物が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の構造物は、内部に閉じた空間を有する構造物であって、外側に配される薄膜体と、その内面に固着される吹き付け発泡材により構成されている。薄膜体は、地面に配置された土台に接合され、薄膜体の内側に送風機によって空気を送風することで、膨らみ自立させることができる。作業者は、自立した薄膜体の形状を維持させたまま、その構造物の内側へ自ら発泡装置を持ち込んで入り、薄膜体の内面に発泡材を吹き付けて構造物の内壁を製作する。
【0004】
特許文献1に記載の構造物は、簡便に製作が可能であり、木材や鉄鋼の柱や梁といった構造体を使用せずとも、強度を確保し安定した形態を保つことができる。また、発泡材による内壁によって構成されているため、断熱性や遮音性を備えており、居住空間として利用可能である。そのため、迅速に居住環境が必要となる災害時等において、仮設住宅や倉庫として活用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-168606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の構造物の製作方法は、薄膜体の内部に空気を送風して構造物の外観形状を形作るため、図7に示すように、薄膜体は風船のように外側に凸状に膨らんでしまい、外観形状を一定に揃えて製作することが困難であるという問題があった。また、完成後の外観形状が一定でないことによって、運搬時に車両へ積載する際に困難を生じたり、限られた敷地内に多数の構造物を配置しなければならない場合に、設置空間を十分に活かしきれない等の問題が生じる場合があった。
【0007】
また、このような構造物を、災害時において仮設住宅等に活用する際には、短時間に多くの構造物を製作する必要が生じる場合があるが、従来の製作方法では、構造物をひとつずつ製作しなければならず、迅速性について改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は上記の事項に鑑みてなされたものであり、外皮部材とその内面の内壁部材によって構成される構造物の外観形状を、所定の大きさに規制して製作することができ、尚且つ複数同時に製作することができる、構造物の製造方法、及び複数の構造物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記課題を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る構造物の製造方法は、前記構造物の外形を形作る外皮部材の内側に気体を送入して、外皮部材を膨らませる工程と、前記膨らんだ状態の外皮部材の一部分の膨らみを外側から規制しつつ、前記外皮部材の内面に内壁部材を付着させて内壁とする工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る構造物の製造方法において、前記外側からの規制を、内部に気体が送入され、前記膨らんだ状態の外皮部材と接する袋体により行うと好適である。
【0012】
本発明に係る構造物の製造方法において、前記袋体が、前記外皮部材とは別の外皮部材であると好適である。
【0013】
本発明に係る構造物の製造方法において、前記外皮部材と、前記袋体とを連通させる連通部を形成する工程を含むと好適である。
【0014】
本発明に係る構造物の製造方法において、前記内壁部材により内壁とする工程の後、前記連通部を切り離す工程を含むと好適である。
【0015】
本発明に係る構造物の製造方法において、前記連通部の切り離し箇所に、前記構造物の窓を形成する工程を含むと好適である。
【0016】
本発明に係る構造物の製造方法において、前記外側からの規制により、前記構造物の少なくとも一つの側面又は天井を形作ると好適である。
【0017】
本発明に係る構造物の製造方法において、前記外側からの規制により、前記構造物の対向する側面を形作ると好適である。
【0018】
本発明に係る複数の構造物の製造方法は、前記複数の構造物の外形を形作る外皮部材を並べて配置し、そのそれぞれの前記外皮部材の内側に気体を送入して、膨らませる工程と、前記外皮部材の一部分の膨らみを、当該外皮部材と隣接する他の外皮部材により規制しつつ、規制された前記複数の外皮部材の内面に内壁部材を付着させて内壁とする工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る複数の構造物の製造方法において、前記外皮部材と、少なくとも1つの前記隣接する他の外皮部材と、が連通部で連通されていると好適である。
【0020】
本発明に係る複数の構造物の製造方法において、前記内壁部材により内壁とする工程の後、前記連通部を切り離す工程を含むと好適である。
【0021】
本発明に係る複数の構造物の製造方法において、前記連通部の切り離し箇所に、前記複数の構造物の窓を形成する工程を含むと好適である。
【0022】
本発明に係る複数の構造物の製造方法において、前記隣接する他の外皮部材からの規制により、前記複数の構造物の少なくとも一つの側面又は天井を形作ると好適である。
【0023】
本発明に係る複数の構造物の製造方法において、前記隣接する他の外皮部材からの規制により、前記複数の構造物の対向する側面を形作ると好適である。
【0024】
上記発明の概要は、本発明に必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、外皮部材とその内面に付着させた内壁部材によって地面に対して垂直な壁を製作することができ、これらの垂直な壁によって構成される構造物を、所定の大きさに合わせて製作することができる。また、このような構造物を複数同時に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態に係る構造物の斜視図
図2図1のA-A断面図
図3図2の部分拡大図B
図4】第1の実施形態に係る外形の規制方法を示す斜視図
図5】第2の実施形態に係る外形の規制方法を示す断面図
図6】第3の実施形態に係る外形の規制方法を示す断面図
図7】従来の実施形態に係る構造物の断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0028】
図1は、本実施形態に係る構造物の斜視図、図2は、図1のA-A断面図、図3は、図2の部分拡大図B図4は、第1の実施形態に係る外形の規制方法を示す斜視図、図5は、第2の実施形態に係る外形の規制方法を示す断面図、図6は、第3の実施形態に係る外形の規制方法を示す断面図、図7は、従来の実施形態に係る構造物の断面図である。
【0029】
本実施形態に係る構造物1は、図1及び2に示すように、外皮部材10の内面に内壁部材11を固着させた壁面と天井によって構成され、内部には人が出入り可能な空間を備える。
【0030】
外皮部材10は、構造物1の完成時において、図1に示すように、構造物1の外側に配され、全体の外観形状を形作る。外皮部材10の内面には、吹き付けられた内壁部材11が固着しており、外皮部材10と内壁部材11は一体となって構造物1の壁面を形成する。
【0031】
外皮部材10は、構造物1の製造前の状態においては、略袋状の薄膜体である。外皮部材10は、後述する構造物1の製造方法に示すように、略袋状の内部に送風機60によって空気が流入され、内部の圧力を高めることで膨らまされる。その後、外皮部材10の内面に内壁部材11を付着させ硬化させることで、内壁部材11は、外皮部材10の内面に固着する。そのため、外皮部材10は、送風機60によって内部に付与した空気圧によって面内に発生する引張力に対して、破断することのない材料が用いられる。外皮部材10の材料として、樹脂基材(樹脂フィルム、樹脂シートでもよい)、紙基材、皮革基材等を例示できる。なお、外皮部材10の材料は、これ以外でもよい。樹脂基材としては、アクリル、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、及びポリ塩化ビニル等を例示できる。ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン等を例示できる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等を例示できる。一例としての樹脂基材は、紫外線吸収剤を含有している。紙基材としては、上質紙、和紙、洋紙、合成紙、不織布等を例示できる。外皮部材10は、1種の材料を含有してもよく、2種以上を含有してもよい。なお、構造物1を屋外に設置する場合には、外皮部材10に耐水性、撥水性又は耐紫外線性が具備されると好適である。
【0032】
内壁部材11は、発泡材が好適に用いられ発泡材の材料としては、アクリル、ポリウレタン、ポリスチレン、フェノール、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ウレア樹脂、ウレタン-ウレア樹脂、シリコーン、ポリイミド、メラミン、ガラス、セラミックス、土、爆裂食材等を例示できる。以下、内壁部材11が発泡材である場合を中心に説明を行うが、内壁部材11として、発泡しない材料を使用してもよい。
【0033】
発泡材は、霧状に噴射されたのちに発泡し硬化する、従来公知の発泡材を適宜選択して使用できる。硬化後の発泡材には、無数の気泡が形成され、多量の空気を含んだ材料となるため、軽量かつ断熱性や遮音性に優れた材料となる。構造物1の完成時における発泡材の厚みは、外皮部材10と一体の壁面としたときに、自立可能であり、居住空間を構成する壁面として機能できる厚みであればよく、必要される断熱性や遮音性に応じて、適宜設定して構わない。また、発泡材の厚みは一定でなくてもよく、例えば、下部を厚く、上部を薄くしても構わない。
【0034】
構造物1は、図1に示すように、上記のように一体となった外皮部材10と内壁部材11を用いた、正面20、左右の側面30、背面40及び天井50によって構成される。また、構造物1は、これらの各要素と地面によって閉じられた空間を形成する。本実施形態においては、地面に接する底面を有さない構造について説明を行うが、構造物1の構成要素はこれに限らず、底面を有し、正面20、左右側面30、背面40及び天井50と共に閉じた空間を形成してもよい。また、本実施形態においては、正面20、左右側面30、背面40及び天井50は、ひとつの略袋形状の外皮部材10によって、互いに継ぎ目なく連結された構造について説明を行うが、外皮部材10の形状はこれに限らず、正面20、左右の側面30、背面40及び天井50のそれぞれに分割して製作され、各要素を溶着、テープ又は接着剤等の公知の手段を用いて、接合しても構わない。
【0035】
正面20には、図1に示すように、人が出入りできる程度の大きさの出入孔21が設けられている。出入孔21には、図示しない扉と枠体が取り付けられ、開閉可能な出入り口が設置される。なお、出入り口の構造はこれに限らず、例えば、出入孔21の上部に垂れ幕状のシートを設置し、出入孔21の縁部と垂れ幕状のシートとを面ファスナーで固定するといった、簡易的な目隠しであっても構わない。
【0036】
背面40には、図2に示すように、送風機60のダクトが挿入可能な空気流入孔41が設けられている。空気流入孔41は、例えば、背面40にあたる外皮部材10に設けられ、送風機60のダクト外径よりも僅かに大きい貫通孔等である。空気流入孔41は、送風機60のダクトを挿入していないときは、図示しない蓋状部品等によって、塞ぐことができる。なお、本実施形態においては、空気流入孔41が背面40に備えられる構造について説明を行うが、空気流入孔41の位置はこれに限らず、正面20または左右側面30のいずれに位置しても構わない。
【0037】
正面20、左右側面30及び背面40の下部であって地面と接する部分には、図3に示すように、構造物1の地面と接する縁部の全周に渡り、適宜間隔を開けて複数のハトメ12を備える。構造物1を地面に固定する際には、図3に示すようなペグ71をハトメ12に通して使用するため、ハトメ12の内径はペグ71の太さよりも僅かに大きく形成されると好適である。
【0038】
次に、上記のような特徴を備える構造物1の製造方法について説明する。
【0039】
[第1の実施形態]
先ず、外皮部材10を略袋形状の開口部を下方にして、地面で開口部を塞ぐように設置しする。次に、図3に示すように、ハトメ12にペグ71を貫通させ、地面にペグ71を打ち込み、外皮部材10の開口部周縁を地面に固定する。外皮部材10と地面とで閉じられた内部空間には、後述するように送風機60によって空気が流入されるため、空気の流入による外皮部材10の内部空間の圧力によって、外皮部材10が移動しない強さで固定される。このようなペグ71による構造物1の固定方法を用いることで、完成後の構造物1を移動させる場合においても、ペグ71を外すだけで良く、容易に移動が可能である。なお、構造物1は軽量であるため、風などの外力によって移動しないよう、使用時においてもペグ71による固定を行い、必要に応じて補強のための固定手段を追加しても構わない。
【0040】
次に、図4に示すような外形規制治具80を用いて、構造物1の外形を外側から規制する。外形規制治具80は、構造物1の左右の側面30を地面に対して垂直かつ一定の幅に規制し、例えば木材等からなる壁面を有する。なお、外形規制治具80は、左右の側面30の幅を規制するものだけでなく、例えば構造物1の四方を囲う枠体等の治具を用いても構わない。
【0041】
次に、送風機60を用いて外皮部材10の内側に空気を加圧させて流入する。空気の流入により内部空間が加圧され、外皮部材10は外形規制治具80によって規制された大きさまで外側に膨らむ。外皮部材10の周縁部が地面に固定されているため、送風機60による加圧によって外皮部材10は自立させることができる。このとき、出入孔21は任意の閉塞手段により閉じられる。外皮部材10の内部へ送る空気は、送風機60から延びるダクトを空気流入孔41へ挿入して行われるが、出入孔21を僅かに開けた隙間等から流入させても構わない。また、外皮部材10の周縁部と地面との間に隙間が生じ、内部の空気が漏れてしまう場合には、土嚢等を使用して隙間を塞いでも構わない。なお、送風機60には、外皮部材10を自立させ、外皮部材10の面内に引張力を発生させることができる性能が求められ、例えば圧力型のターボファンやシロッコファン等を備えた高出力の送風機を用いると好適である。
【0042】
次に、外皮部材10を自立させた状態で、送風機60による空気の流入を続けたまま、出入孔21を開放し、作業者は、発泡材を噴射させる発泡装置と共に外皮部材10の空間内に進入する。作業者の進入後、出入孔21を再び閉じ、外皮部材10の外側への膨らみを維持させる。その後、作業者は手作業によって外皮部材10の内面へ霧状の発泡材を吹き付ける。吹き付けた発泡材は外皮部材10の内面に付着し、発泡と共に膨張する。発泡が完了した発泡材は外皮部材10に固着し、硬化することで外皮部材10と発泡材は一体となる。なお、発泡材の硬化が完了し、構造物1の内部空間を加圧しなくとも自立可能な状態となれば、送風機60からの送風を停止することができる。なお、内壁部材11を外皮部材10に付着させる方法は、上記に限らず、従来公知の塗布手段を適宜選択して使用できる。
【0043】
このように外皮部材10は、送風機60によって内部が加圧されることにより、外側に向かって膨らみ、外皮部材10の面内に引張力が発生している状態で、外皮部材10の内面に発泡材を吹き付けて固着される。そのため、送風機60からの加圧を除去しても、外皮部材10には引張力が残存し、一方で硬化した発泡材には圧縮力が発生する。したがって、構造物1は外側に配される外皮部材10が引張力を負担し、内側に配される発泡材が圧縮力を負担して一体となすため、形態が安定した状態となる
【0044】
このような外形規制治具80を使用することによって、外皮部材10の内部空間を加圧した場合でも、外形規制治具80にて設定をした幅以上に外皮部材10は膨らむことがなく、地面に対して垂直であって、対向する壁面を一定の間隔に形成することができる。
【0045】
[第2の実施形態]
以上説明した第1の実施形態に係る外形の規制方法は、外形規制治具80によって外形を規制した場合について説明を行った。次に説明する第2の実施形態に係る外形の規制方法は、第1の実施形態とは異なる形態を有する外形の規制方法について説明を行うものである。なお、上述した第1の実施形態の場合と同一又は類似する部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
図5に示す第2の実施形態に係る外形の規制方法は、第1の実施形態のような壁面の形状を規制する治具を用いず、複数の構造物1を隣接させることによって外形を規制する方法である。図5に示すように、構造物1同士が接する側面において、一方の構造物1が他方の構造物1の外形を規制し、同じく他方の構造物1が一方の構造物1の外形を規制する。外皮部材10の内部への送風は、各外皮部材10に対して送風機60が一つずつ用いられる。隣接する構造物1の内部空間の圧力が同じであれば、互いに接する左右側面30は、地面に対して垂直に保たれる。
【0047】
このような外形の規制方法を用いることによって、構造物1を構成する部材以外の材料や、治具を使用することなく、地面に対して垂直であって、対向する壁面を任意の間隔に形成することができる。
【0048】
[第3の実施形態]
以上説明した第2の実施形態に係る外形の規制方法は、複数の独立した構造物1を隣接させることによって外形を規制した場合について説明を行った。次に説明する第3の実施形態に係る外形の規制方法は、第2の実施形態とは異なる形態を有する外形の規制方法について説明を行うものである。なお、上述した第1及び第2の実施形態の場合と同一又は類似する部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
図6に示す第3の実施形態に係る外形の規制方法は、隣接する構造物1を連通部31で連結し、内部空間を繋げた状態において、第2の実施形態と同様に、一方の構造物1が他方の構造物1の外形を規制する方法である。図6に示すように、一つの送風機60から外皮部材10に流入された空気は、連通部31を通過し、隣接する外皮部材10に流入する。連通部31から流入した空気は、隣接する複数の外皮部材10を膨らませ、自立させることができる。本実施形態においては、図6に示すように、一つの送風機60を用いて複数の外皮部材10を膨らませる方法について説明をするが、送風機60の数は一つに限らず、外皮部材10の数よりも少ない数の送風機60が用いれば良い。
【0050】
このような外形の規制方法を用いることによって、構造物1を構成する部材以外の材料や、治具等を使用することなく、尚且つ構造物1よりも少ない数の送風機60によって、地面に対して垂直な壁面を形成することができる。
【0051】
連通部31によって連通され、自立した状態にある複数の外皮部材10の内面には、前述の通り発泡材が吹き付けられ、外皮部材10に固着して一体となる。このとき、隣接する構造物1は、連通部31の周縁に吹き付けられた発泡材によって連結して硬化した状態となるが、発泡材の硬化後に、連通部31を切り離すことによって、構造物1をそれぞれ独立させることができる。切り離された構造物1には、連通部31のあった位置に貫通孔が形成され、これらは構造物1を居住スペース等として使用する際に、窓として活用することができる。
【0052】
上記の第3の実施形態のように実施される、構造物1を製造する方法によれば、構造物1の構成部品以外の治具等を使用することなく、少数の送風機60を用いて、同時に複数の構造物1を製作することができる。また、製作される構造物1は、外皮部材10とその内面の発泡材にて構成されるため軽量で、且つ外形を一定に揃えることが可能である。また、構造物1を居住スペースとして使用する場合には、窓として利用できる貫通孔があらかじめ形成されているため、作業時間を短縮することができる。
【0053】
構造物1は被災地や途上国での仮設住宅等に使用することが可能であり、そのような場合には、一般的に複数の構造物1が必要となることが多く、一方で、外形規制治具80のような治具を製作するための十分な部材が入手困難であったり、複数の送風機60を確保することが難しい場合も想定される。したがって、第3の実施形態は、被災地や途上国での仮設住宅等を製作する場面において、有効な構造物の製作方法になり得る。
【0054】
なお、上記では構造物1の側面30の外形のみを規制する方法について説明を行ったが、外形を規制する部位は側面30に限らず、正面20、背面40及び天井50を規制しても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0055】
1 構造物
10 外皮部材
11 内壁部材
12 ハトメ
20 正面
21 出入孔
30 側面
31 連通部
40 背面
41 空気流入孔
50 天井
60 送風機
71 ペグ
80 外形規制治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7