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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103913
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】活物質保持部材、電極及び鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/14 20060101AFI20220701BHJP
   H01M 10/12 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
H01M4/14 R
H01M10/12 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218826
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】村松 将典
【テーマコード(参考)】
5H028
5H050
【Fターム(参考)】
5H028AA05
5H028CC11
5H028CC21
5H028HH05
5H050AA01
5H050BA09
5H050CA06
5H050CB15
5H050HA04
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】活物質の漏出を低減することができる、活物質保持部材、電極及び鉛蓄電池を提供する。
【解決手段】活物質保持部材11は、基材13が少なくとも一周巻き回されることによって形成される複数の筒状部材12を備える。筒状部材12は、隣り合う筒状部材12に近接する部分である近接部13cを有している。複数の筒状部材12の少なくとも一つは、基材13の捲れ長さLWが筒状部材12の周長さの1/4以下となるように形成された特定筒状部材12Aである。捲れ長さLWとは、基材13の巻き回し端部13dが視認可能となるように筒状部材12を見て、近接部13cから巻き回し端部13dまで基材13の巻き回し方向に延びる基材13の一部分を基材端部面13fとしたとき、基材端部面13fにおいて筒状部材12の第一端部13a又は第二端部13bを形成する部分の周方向に沿った長さである。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端部と第二端部との間で第一方向に延在し、基材が少なくとも一周巻き回されることによって形成される複数の筒状部材を備え、
前記筒状部材は、前記第一方向に直交する第二方向に配列されると共に、前記第二方向に隣り合う前記筒状部材に近接する部分である近接部を有しており、
複数の前記筒状部材の少なくとも一つは、前記基材の捲れ長さが前記筒状部材の周長さの1/4以下となるように形成された特定筒状部材であり、
前記捲れ長さとは、前記基材の巻き回し端部が視認可能となるように前記第一方向及び前記第二方向の両方に直交する第三方向から前記筒状部材を見て、前記近接部から前記巻き回し端部まで前記基材の巻き回し方向に延びる前記基材の一部分を基材端部面としたとき、前記基材端部面において前記筒状部材の前記第一端部又は前記第二端部を形成する部分の周方向に沿った長さである、活物質保持部材。
【請求項2】
第一端部と第二端部との間で第一方向に延在し、基材が少なくとも一周巻き回されることによって形成される複数の筒状部材を備え、
前記筒状部材は、前記第一方向に直交する第二方向に配列されると共に、前記第二方向に隣り合う前記筒状部材に近接する部分である近接部を有しており、
複数の前記筒状部材の少なくとも一つは、前記基材の捲れ長さが前記筒状部材の周長さの1/4以下となるように形成された特定筒状部材であり、
前記捲れ長さとは、前記基材の巻き回し端部が視認可能となるように前記第一方向及び前記第二方向の両方に直交する第三方向から前記筒状部材を見て、前記基材を前記巻き回し端部から前記近接部まで捲ったと仮定したときの捲れ部分である基材端部面において、前記第一端部又は前記第二端部を形成していた部分の周方向に沿った長さである、活物質保持部材。
【請求項3】
前記筒状部材は、帯状の前記基材が螺旋状に巻き回されることにより形成されている、請求項1又は2記載の活物質保持部材。
【請求項4】
前記筒状部材は、前記第一端部又は前記第二端部において、内周側の前記基材と外周側の前記基材との接合部を跨ぐように且つ互いの前記基材を固定する捲れ防止部であって、前記筒状部材の外周面側に設けられる前記捲れ防止部を有する、請求項1~3の何れか一項記載の活物質保持部材。
【請求項5】
複数の前記筒状部材には、前記筒状部材を前記第一方向における前記第二端部側から見て、前記基材が右回りに巻き回された第一筒状部材と、前記基材が左回りに巻き回された第二筒状部材との2種類の前記筒状部材が含まれている、請求項1~4の何れか一項記載の活物質保持部材。
【請求項6】
複数の前記筒状部材の全てが、前記第一方向における前記第二端部側から見て、前記基材が右回りに巻き回された前記筒状部材で統一されているか、又は前記基材が左回りに巻き回された前記筒状部材で統一されている、請求項1~5の何れか一項記載の活物質保持部材。
【請求項7】
前記筒状部材は、帯状の前記基材が前記第二端部から前記第一端部に向かって内周側の前記基材の一部が外周側の前記基材に被覆される重なり部を有しながら螺旋状に巻き回しされることにより形成されている、請求項1~6の何れか一項記載の活物質保持部材。
【請求項8】
前記筒状部材は、前記第二方向に隣り合う前記筒状部材の前記重なり部同士が互いに接触しないように配置されている、請求項7記載の活物質保持部材。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項記載の活物質保持部材と、
複数の前記筒状部材の前記第一端部を封止する第一封止部と、
複数の前記筒状部材の前記第二端部を封止する第二封止部と、
前記筒状部材に充填される活物質と、を有する、電極。
【請求項10】
前記筒状部材における前記基材の捲れ高さが、前記筒状部材に対し前記第一封止部が内挿されている内挿部分の前記第一方向における長さ以下であり、
前記捲れ高さとは、前記基材端部面の前記近接部における前記第一方向の長さである、請求項9記載の電極。
【請求項11】
請求項9又は10記載の電極と、
前記活物質保持部材を収容する電槽と、を備える、鉛蓄電池。
【請求項12】
前記筒状部材の一部に接触して配置される押さえ部材を更に備え、
前記押さえ部材は、前記筒状部材における前記基材端部面の少なくとも一部に接触している、請求項11記載の鉛蓄電池。
【請求項13】
請求項7又は8記載の活物質保持部材と、複数の前記筒状部材の前記第一端部を封止する第一封止部と、前記筒状部材の前記第二端部を封止する第二封止部と、前記筒状部材に充填される活物質とを有する電極と、
前記活物質保持部材を収容する電槽と、を備え、
前記電極は、前記第一封止部が前記電槽内の鉛直方向下方に位置し、前記第二封止部が前記電槽内の鉛直方向上方に位置するように、前記電槽に収容されている、鉛蓄電池。
【請求項14】
請求項7又は8記載の活物質保持部材と、複数の前記筒状部材の前記第一端部を封止する第一封止部と、前記筒状部材の前記第二端部を封止する第二封止部と、前記筒状部材に充填される活物質とを有する電極と、
前記活物質保持部材を収容する電槽と、を備え、
前記電極は、前記第一封止部が前記電槽内の鉛直方向上方に位置し、前記第二封止部が前記電槽内の鉛直方向下方に位置するように、前記電槽に収容されている、鉛蓄電池。
【請求項15】
前記筒状部材は、前記第三方向における一方側に面する第一外周面と、前記第三方向における他方側に面する第二外周面と、を有し、
全ての前記筒状部材における前記巻き回し端部が、前記第一外周面又は前記第二外周面に配置されている、請求項11~14の何れか一項記載の鉛蓄電池。
【請求項16】
前記筒状部材は、前記第三方向における一方側に面する第一外周面と、前記第三方向における他方側に面する第二外周面と、を有し、
前記巻き回し端部が前記第一外周面に配置されている前記筒状部材と、前記巻き回し端部が前記第二外周面に配置されている前記筒状部材と、を備えている、請求項11~15の何れか一項記載の鉛蓄電池。
【請求項17】
前記巻き回し端部が前記第一外周面に配置されている前記筒状部材と、前記巻き回し端部が前記第二外周面に配置されている前記筒状部材とが、前記第二方向に交互に配置されている、請求項16記載の鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、活物質保持部材、電極及び鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、産業用又は民生用の二次電池として広く用いられており、特に、電動車用鉛蓄電池(例えば自動車用鉛蓄電池。いわゆるバッテリ)、UPS(Uninterruptible Power Supply)、防災(非常)無線用電源、電話用電源等のバックアップ用鉛蓄電池の需要が多い。
【0003】
鉛蓄電池では、活物質を保持(収容)可能な筒状部材として、互いに併設された複数の筒状部材を備える活物質保持部材が用いられることがある。例えば、鉛蓄電池は、筒状部材を備える活物質保持部材と、筒状部材内に挿入された芯金(集電体)と、筒状部材及び芯金の間に充填された電極材(活物質を含有する電極材)とを有する電極を備えている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-203506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、活物質保持部材の筒状部材としては、基材が巻き回されることにより形成された筒状部材が用いられる場合がある。このような筒状部材では、筒状部材の軸方向における筒状部材の端において基材の巻き回し端部が筒状部材の外周面(表面)で固定されているものの、基材に負荷される外部応力に起因して基材が巻き回し端部を起点に剥がれる(筒状部材の外周面から捲れる)ことにより活物質が筒状部材から漏出する場合がある。そのため、筒状部材を備える活物質保持部材に対しては、電池特性を向上させる観点から、活物質の漏出を低減することが求められる。
【0006】
そこで、本発明の一側面の目的は、活物質の漏出を低減することができる、活物質保持部材、電極及び鉛蓄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る活物質保持部材は、第一端部と第二端部との間で第一方向に延在し、基材が少なくとも一周巻き回されることによって形成される複数の筒状部材を備え、筒状部材は、第一方向に直交する第二方向に配列されると共に、第二方向に隣り合う筒状部材に近接する部分である近接部を有しており、複数の筒状部材の少なくとも一つは、基材の捲れ長さが筒状部材の周長さの1/4以下となるように形成された特定筒状部材であり、捲れ長さとは、基材の巻き回し端部が視認可能となるように第一方向及び第二方向の両方に直交する第三方向から筒状部材を見て、近接部から巻き回し端部まで基材の巻き回し方向に延びる基材の一部分を基材端部面としたとき、基材端部面において筒状部材の第一端部又は第二端部を形成する部分の周方向に沿った長さである。
【0008】
本発明の一側面に係る活物質保持部材は、第一端部と第二端部との間で第一方向に延在し、基材が少なくとも一周巻き回されることによって形成される複数の筒状部材を備え、筒状部材は、第一方向に直交する第二方向に配列されると共に、第二方向に隣り合う筒状部材に近接する部分である近接部を有しており、複数の筒状部材の少なくとも一つは、基材の捲れ長さが筒状部材の周長さの1/4以下となるように形成された特定筒状部材であり、捲れ長さとは、基材の巻き回し端部が視認可能となるように第一方向及び第二方向の両方に直交する第三方向から筒状部材を見て、基材を巻き回し端部から近接部まで捲ったと仮定したときの捲れ部分である基材端部面において、第一端部又は第二端部を形成していた部分の周方向に沿った長さである。
【0009】
基材が少なくとも一周巻き回されることによって形成される筒状部材は、延在方向における端部である第一端部及び第二端部の少なくとも一方において、筒状部材の外周面(表面)に作用される外部応力に起因して基材が巻き回し端部を起点に捲れやすい(剥がれやすい)傾向がある。本発明の一側面に係る活物質保持部材は第二方向に配列されており、基材が巻き回し方向とは反対方向に捲れたとしても、隣り合う筒状部材同士が互いに近接する近接部を越えて捲れる可能性は小さい。更に、本発明の活物質保持部材に備わる特定筒状部材は、基材の捲れ長さが筒状部材の周長さの1/4以下となるように形成されているので、仮に基材が巻き回し端部から捲れたとしても基材の捲れ量が短く抑制され、活物質の漏出を低減することができる。
【0010】
本発明の一側面に係る活物質保持部材では、筒状部材は、帯状の基材が螺旋状に巻き回されることにより形成されていてもよい。この構成では、基材が螺旋状に巻き回されることにより形成された筒状部材を備える活物質保持部材であっても基材の捲れ量が短く抑制され、活物質の漏出を低減することができる。
【0011】
本発明の一側面に係る活物質保持部材では、筒状部材は、第一端部又は第二端部において、内周側の基材と外周側の基材との接合部を跨ぐように且つ互いの基材を固定する捲れ防止部であって、筒状部材の外周面側に設けられる捲れ防止部を有してもよい。この構成では、例えば、筒状部材の第一端部又は第二端部において内周側の基材と外周側の基材とが外周面側から一体的に固定されるので、巻き回し端部が捲れることをより確実に防止できる。
【0012】
本発明の一側面に係る活物質保持部材の複数の筒状部材には、筒状部材を第一方向における第二端部側から見て、基材が右回り(時計回り)に巻き回された第一筒状部材と、基材が左回り(反時計回り)に巻き回された第二筒状部材との2種類の筒状部材が含まれていてもよい。
【0013】
基材が少なくとも一周巻き回されることによって形成される筒状部材は、延在方向における端部である第一端部及び第二端部の少なくとも一方において、筒状部材の外周面に一方向に作用される外部応力に起因して基材が巻き回し端部を起点に捲れやすい(剥がれやすい)傾向がある。この構成では、巻き回し端部が剥がれる方向が右回りに巻かれた筒状部材と左回りに巻かれた筒状部材とが混在するので、外部応力が作用する方向と右回りに巻かれた筒状部材が捲れる方向とが仮に一致したとしても、外部応力が作用する方向と左回りに巻かれた筒状部材の巻き回し端部が捲れる方向とは互いに反対となるので、左回りに巻かれた筒状部材の巻き回し端部が捲れることはない。すなわち、基材が右回りに巻き回された第一筒状部材と、基材が左回りに巻き回された第二筒状部材との2種類の筒状部材を備えることにより、一方向に作用する外部応力に対して巻き回し端部が捲れるリスクが分散される。この結果、活物質の漏出を低減することができる。
【0014】
本発明の一側面に係る活物質保持部材では、複数の筒状部材の全てが、第一方向における第二端部側から見て、基材が右回りに巻き回された筒状部材で統一されているか、又は基材が左回りに巻き回された筒状部材で統一されていてもよい。この構成では、筒状部材の種類が一種類となるので調達コストを削減できる。
【0015】
本発明の一側面に係る活物質保持部材では、筒状部材は、帯状の基材が第二端部から第一端部に向かって内周側の基材の一部が外周側の基材に被覆される重なり部を有しながら螺旋状に巻き回しされることにより形成されていてもよい。ここで、内周側の基材は外周側の基材によって一部が覆われるので、第二端部側の巻き回し端部は、第一端部側の巻き回し端部と比べて捲れ難い。この構成では、筒状部材の両端に形成される巻き回し端部の一方を捲れ難くすることができるので、活物質の漏出を低減できる。更に、この構成では、延在方向に隣り合う帯状の基材の接合部から活物質が漏出することを低減できる。
【0016】
本発明の一側面に係る活物質保持部材では、筒状部材は、第二方向に隣り合う筒状部材の重なり部同士が互いに接触しないように配置されていてもよい。ここで、上記重なり部は、筒状部材の外周面から径方向に突出している。また、筒状部材同士は、多少の隙間を介して配列されている場合もある。互いに隣り合う筒状部材の重なり部同士が重なったり交差したりすると重なり部同士が密着するので、電解液又は電槽内で発生したガスの流通を阻害する。この構成では、重なり部同士が密着する部分がないので、電槽に活物質保持部材が収容されたときに、電解液又はガスの流通に優れた環境を提供することができる。
【0017】
本発明の一側面に係る電極は、上記の活物質保持部材と、複数の筒状部材の第一端部を封止する第一封止部と、複数の筒状部材の第二端部を封止する第二封止部と、筒状部材に充填される活物質と、を有してもよい。この構成では、上記の活物質保持部材を備える電極を提供することができる。
【0018】
本発明の一側面に係る電極では、筒状部材における基材の捲れ高さが、筒状部材に対し第一封止部が内挿されている内挿部分の第一方向における長さ以下であり、捲れ高さとは、基材端部面の近接部における第一方向の長さであってもよい。捲れ高さとは、基材端部面の近接部における第一方向の長さである。
【0019】
この構成の電極では、巻き回し端部から近接部まで基材が捲れる場合があるが、仮に筒状部材の端部から基材が捲れたとしても、その部分には、第一封止部が内挿されている。このため、第一封止部は、活物質が筒状部材の第一端部にまで落ちてくることを妨げると共に、第一封止部が内挿されている分だけ筒状部材の内部における活物質の充填量が少なくなる。これにより、仮に基材が巻き回し端部から近接部まで捲れたとしても、捲れた部分から活物質が漏出することを低減できる。
【0020】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池は、上記の電極と、活物質保持部材を収容する電槽と、を備えてもよい。この構成では、上記の活物質保持部材を備える鉛蓄電池を提供することができる。
【0021】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池は、筒状部材の一部に接触して配置される押さえ部材を更に備え、押さえ部材は、筒状部材における基材端部面の少なくとも一部に接触していてもよい。この構成では、巻き回し端部を含む基材端部面が押さえ部材によって押さえられるので、基材が巻き回し端部から捲れることを抑制できる。
【0022】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池では、上記の活物質保持部材と、複数の筒状部材の第一端部を封止する第一封止部と、筒状部材の第二端部を封止する第二封止部と、筒状部材に充填される活物質とを有する電極と、活物質保持部材を収容する電槽と、を備え、電極は、第一封止部が電槽内の鉛直方向下方に位置し、第二封止部が電槽内の鉛直方向上方に位置するように、電槽に収容されていてもよい。この構成では、活物質が微粒子化しやすい筒状部材の鉛直方向下方側の端部において活物質の漏出を低減できる上記の構成を有しているので、効果的に活物質の漏出を低減することができる。
【0023】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池では、上記の活物質保持部材と、複数の筒状部材の第一端部を封止する第一封止部と、筒状部材の第二端部を封止する第二封止部と、筒状部材に充填される活物質とを有する電極と、活物質保持部材を収容する電槽と、を備え、電極は、第一封止部が電槽内の鉛直方向上方に位置し、第二封止部が電槽内の鉛直方向下方に位置するように、電槽に収容されていてもよい。この構成では、捲れやすい巻き回し端部が上方となるように配置されているので、活物質の漏出を低減することができる。
【0024】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池では、筒状部材は、第三方向における一方側に面する第一外周面と、第三方向における他方側に面する第二外周面と、を有し、全ての筒状部材における巻き回し端部が、第一外周面又は第二外周面に配置されていてもよい。この構成では、筒状部材における巻き回し端部の位置を第一外周面又は第二外周面の何れかに統一した状態で配列させるので、組立時の作業性を向上させることができる。
【0025】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池では、筒状部材は、第三方向における一方側に面する第一外周面と、第三方向における他方側に面する第二外周面と、を有し、巻き回し端部が第一外周面に配置されている筒状部材と、巻き回し端部が第二外周面に配置されている筒状部材と、を備えていてもよい。この構成では、筒状部材における巻き回し端部の位置を第一外周面と第二外周面とで振り分けられるので、一方向に作用する外部応力に対して巻き回し端部が捲れるリスクが分散される。この結果、活物質の漏出を低減することができる。
【0026】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池では、巻き回し端部が第一外周面に配置されている筒状部材と、巻き回し端部が第二外周面に配置されている筒状部材とが、第二方向に交互に配置されていてもよい。この構成では、筒状部材における巻き回し端部の位置を第一外周面と第二外周面とで規則的に振り分けられるので、一方向に作用する外部応力に対して巻き回し端部が捲れるリスクが分散される。この結果、活物質の漏出を効果的に低減することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、活物質の漏出を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、一実施形態に係る鉛蓄電池をY軸方向から見た断面図である。
図2図2は、一実施形態に係る鉛蓄電池をZ軸方向から見た断面図である。
図3図3(A)は、一実施形態に係る筒状部材の構成を示す斜視図である。図3(B)は、変形例に係る筒状部材の構成を示す斜視図である。
図4図4は、Y軸方向から見た活物質保持部材を示す正面図である。
図5図5(A)は、Z軸方向から見た第一端部側の巻き回し端部を示す模式図である。図5(B)は、Z軸方向から見た第二端部側の巻き回し端部を示す模式図である。
図6図6(A)は、Y軸方向から見た第一端部側の巻き回し端部を拡大して示す正面図である。図6(B)は、Y軸方向から見た第二端部側の巻き回し端部を拡大して示す正面図である。
図7図7(A)は、第一端部側の巻き回し端部が捲られた状態の第一筒状部材を示す斜視図である。図7(B)は、第二端部側の巻き回し端部が捲られた状態の第一筒状部材を示す斜視図である。
図8図8(A)は、第一端部側の巻き回し端部が捲られた状態の第二筒状部材を示す斜視図である。図8(B)は、第二端部側の巻き回し端部が捲られた状態の第二筒状部材を示す斜視図である。
図9図9(A)は、下部連材をY軸方向から見た正面図である。図9(B)は、下部連材の一部をZ軸方向から見た平面図である。
図10図10は、下部連材と筒状部材との接続部をY軸方向から見た正面図である。
図11図11は、第一端部をY軸方向から見た正面図である。
図12図12(A)は、下部連材をY軸方向から見た正面図である。図12(B)は、下部連材をZ軸方向から見た平面図である。
図13図13は、Y軸方向から見た変形例に係る活物質保持部材を示す正面図である。
図14図14(A)は、Z軸方向から見た変形例に係る第一端部側の巻き回し端部を示す模式図である。図14(B)は、Z軸方向から見た変形例に係る第二端部側の巻き回し端部を示す模式図である。
図15図15(A)は、Z軸方向から見た変形例に係る第一端部側の巻き回し端部を示す模式図である。図15(B)は、Z軸方向から見た変形例に係る第二端部側の巻き回し端部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して一実施形態に係る鉛蓄電池について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0030】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0031】
図1図3を用いて、本実施形態に係る鉛蓄電池100の一例を説明する。説明の便宜のため、図面には、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を付する場合がある。X軸方向(第三方向)は、正極(電極)10を構成する筒状部材12が配列される方向であり、Y軸方向(第二方向)は、セパレータ30を介して正極10及び負極20が交互に配置される方向であり、Z軸方向(第一方向)は、筒状部材12の延在方向に沿う方向であり、鉛直方向に沿う軸である。
【0032】
図1及び図2に示されるように、一実施形態に係る鉛蓄電池100は、電極群110と、電極群110を収容する電槽120と、電極群110に接続された連結部材130a,130bと、連結部材130a,130bに接続された極柱140a,140bと、電槽120の注液口を閉塞する液口栓150と、電槽120に接続された支持部材160と、を備える。
【0033】
電極群110は、複数の正極10と、複数の負極20と、複数のセパレータ30と、を備える。正極10及び負極20は、セパレータ30を介してY軸方向に交互に配置されている。セパレータ30間における正極10の周囲の空間には、電解液40が充填されている。セパレータ30の材料としては、正極10と負極20との電気的な接続を阻止し、電解液40を透過させる材料であれば特に限定されない。セパレータ30の材料の例には、微多孔性ポリエチレン、ガラス繊維及び合成樹脂の混合物等が含まれる。
【0034】
正極10は、例えば板状の電極である。正極10は、活物質保持部材11と、複数の芯金14と、正極材(活物質)16と、下部連座(第一封止部)51と、上部連座(第二封止部)61と、連結部18aと、耳部18bと、を有する。
【0035】
活物質保持部材11は、複数の筒状部材12を含んで構成される。複数の筒状部材12は、X軸方向に沿って隣接して一列に並設されている。複数の筒状部材12は、活物質保持用チューブ(クラッドチューブ)群を構成する。筒状部材12は、Z軸方向に延びている。複数の筒状部材12が並設した構造は、互いに別体である筒状部材12により形成され得る。
【0036】
筒状部材12は、第一端部13aと第二端部13bとの間で一方向(第一方向)に延在すると共に円筒状に形成されている。なお、筒状部材12は、楕円筒状又は角筒状(例えば、角丸四角筒状)等に形成されていてもよい。筒状部材12の中心軸としては、筒状部材12の断面における重心を用いてよい。筒状部材12は、電池の活物質を保持するための部材であり、筒状部材12の内部(内部空間)に活物質を保持(収容)することができる。「活物質」には、化成後の活物質及び化成前の活物質の原料の双方が包含される。
【0037】
筒状部材12は、図7(A)に示されるように、第二端部13b側から軸方向に見たときに、基材13が右回りに巻き回しされることにより形成されている第一筒状部材12Rと、図8(A)に示されるように、第二端部13b側から軸方向に見たときに、基材13が左回りに巻き回しされることにより形成されている第二筒状部材12Lとが存在する。本実施形態の活物質保持部材11を構成する複数の筒状部材12には、Z軸方向における第二端部13b側から見て、基材13が右回りに巻き回された第一筒状部材12Rと、基材13が左回りに巻き回された第二筒状部材12Lとの2種類の筒状部材12が含まれている。
【0038】
更に詳細には、本実施形態の活物質保持部材11は、基材13が右回りに巻き回された第一筒状部材12Rと、基材13が左回りに巻き回された第二筒状部材12Lとが、X軸方向に交互に配置されている。なお、第一筒状部材12Rと第二筒状部材12Lとの配列は、例えば二つずつ交互に規則的に配列したり、ランダムに配列したりしてもよい。
【0039】
基材13は、少なくとも一周巻き回されていればよく、一周を超えて巻き回されていてよく、複数回巻き回しされていてもよい。本実施形態の筒状部材12は、基材13が複数回巻き回しされている。また、本実施形態では、基材13は、図3(A)に示されるように、螺旋状に巻き回しされている。「螺旋状」とは、所定方向に延在する中心軸から所定距離の周囲を周回しながら当該中心軸の延在方向に進行することを意味する。なお、基材13は、図3(B)に示されるように、渦巻状に巻き回しされていてもよい。基材13を渦巻状に巻き回す場合、例えば、矩形状の基材13を基材13の一辺に沿って巻き回して筒状部材12を形成できる。
【0040】
「渦巻状」とは、同一平面内で周回することを意味する。例えば、螺旋状の場合、基材13が巻き回されるに伴い筒状部材12が伸長するのに対し、渦巻状の場合、基材13が巻き回されるに伴い筒状部材12が厚くなるものの筒状部材12は伸長しない。螺旋状の場合における巻き回し方向は、中心軸に対する基材13の回転方向を意味する。渦巻状の場合における巻き回し方向は、筒状部材12の内層から外層に向かって基材13が巻き回される際の巻き回し方向を意味する。
【0041】
図4に示されるように、筒状部材12は、例えば、第一端部13a及び第二端部13bにおいて筒状部材12の軸方向に垂直な端面を有している。当該端面は、帯状の基材13を螺旋状に巻き回して筒状部材12を形成した後、筒状部材12の軸方向に垂直に筒状部材12の両端部を切断することにより形成してもよい。帯状の基材13の幅(短手方向のサイズ)は、5mm~35mmである。また、筒状部材12の軸方向に垂直な端面が得られる形状の基材13を用いることで、両端部を切断することなく上記端面を形成することもできる。
【0042】
基材13を螺旋状に巻き回す場合、本実施形態のように基材13同士が重なり合うように(基材13同士の重なり部13gが形成されないように)巻き回すことも可能であるし、基材13同士が重ならないように巻き回すこともできる。本実施形態の筒状部材12は、帯状の基材13が第二端部13bから第一端部13aに向かって内周側の基材13の一部が外周側の基材13に被覆される重なり部13gを有しながら螺旋状に巻き回しされることにより形成されている。重なり部13gは、0.5mm~5mmの幅を有しており、1mm~3mmの幅であることが好ましい。当該重なり部13gの幅は、基材13の厚みの4倍より小さいと基材13部分よりも溶着部分である重なり部13gが破壊されやすくなり、充放電に伴う活物質の膨張収縮に耐えられなくなる可能性が高まるため、重なり部13gの幅は、基材13の厚みの4倍以上であることが好ましい。本実施形態では、筒状部材12は、X軸方向に隣り合う筒状部材12,12の重なり部13g,13g同士が互いに接触しないように配置されている。
【0043】
基材13同士の接合手段の例には、溶着(例えば超音波溶着)及び接着剤等が含まれる。基材13を螺旋状に巻き回す場合、基材13同士の接合部13hが螺旋状に形成されることから、接合部13hの一部が開裂した場合であっても、基材13を渦巻状に巻き回す場合と比較して開裂部が拡張し難く、活物質の漏出を低減しやすい。また、基材13を螺旋状に巻き回す場合、一定の幅の基材13の巻き回数等を調整することにより筒状部材12の長さを容易に調整できる。
【0044】
基材13の水平方向(筒状部材の配列方向)に対する巻き回し角度θの例は、10°~90°である。巻き回し角度θは、Y軸方向から筒状部材12を見たときの、筒状部材12のX軸方向中心における基材13の水平方向に対する角度である。巻き回し角度θの角度範囲は、30°~50°であることが好ましく、35°~45°であることがより好ましい。なお、図4図13)では、筒状部材12のX軸方向の位置によらず基材13の角度を一律に同じとして略して描いているが、Y軸方向から見たときに、実際にはX軸方向における端部ほど角度がきつくなるように見える。
【0045】
図4及び図5(A)に示されるように、筒状部材12は、X軸方向に隣り合う筒状部材12に近接する部分である近接部13cを有している。近接部13cは、筒状部材12,12同士が互いに接する部分であってもよいし、隙間を介して隣り合う筒状部材12に近接する部分であってもよい。当該隙間は、筒状部材12の直径と比較して十分に小さい。複数の筒状部材12の少なくとも一つは、基材13の捲れ長さLWが筒状部材12の周長さの1/4以下となるように形成された特定筒状部材12Aである。本実施形態では、正極10を構成する全ての筒状部材12が特定筒状部材12Aである。以下、特定筒状部材12Aも単に「筒状部材12」と称する。基材13の捲れ長さLWは、筒状部材12の周長さの1/6以下となることが好ましく、1/8以下となることがより好ましい。
【0046】
「捲れ長さLW」について説明する。捲れ長さLWとは、図4及び図5(A)に示されるように第一端部13a側の基材13の巻き回し端部13dが視認可能となるようにY軸方向から筒状部材12を見て、基材端部面13fにおいて筒状部材12の第一端部13aを形成する部分13eの周方向に沿った長さを意味する。基材端部面13f(着色部)は、図6(A)に示されるように、近接部13cから第一端部13a側の巻き回し端部13dまで基材13の巻き回し方向に延びる基材13の一部分である。
【0047】
同様に捲れ長さLWとは、図4及び図5(B)に示されるように第二端部13b側の基材13の巻き回し端部13dが視認可能となるようにY軸方向から筒状部材12を見て、基材端部面13fにおいて筒状部材12の第二端部13bを形成する部分13eの周方向に沿った長さを意味する。基材端部面13f(着色部)は、図4及び図6(B)に示されるように、近接部13cから第二端部13b側の巻き回し端部13dまで基材13の巻き回し方向に延びる基材13の一部分である。
【0048】
「捲れ長さLW」は、言い換えれば、図7(A)及び図8(A)に示されるように、基材13を第一端部13a側の巻き回し端部13dから近接部13cまで捲ったと仮定したときの捲れ部分である基材端部面13fにおいて、筒状部材12の第一端部13aを形成していた部分13eの周方向に沿った長さを意味する。また、「捲れ長さLW」は、図7(B)及び図8(B)に示されるように、基材13を第二端部13b側の巻き回し端部13dから近接部13cまで捲ったと仮定したときの捲れ部分である基材端部面13fにおいて、筒状部材12の第二端部13bを形成していた部分13eの周方向に沿った長さを意味する。基材端部面13fは、筒状部材12の外周面に沿った曲面であり、Y軸方向から見たときに、近接部13cを形成する部分と、第一端部13a又は第二端部13bを形成する部分と、接合部13hを形成する部分とによって囲まれる略三角形状を有している面である。
【0049】
ここで「基材13の巻き回し端部13dが視認可能となるようにY軸方向から筒状部材12を見る」とは、本実施形態においては「Y軸方向の一方側V1及び他方側V2の一方から筒状部材12を見る」ことと同義である。
【0050】
図5(A)に示される例では、Y軸方向の他方側V2から筒状部材12を見たときに、基材13の第一端部13a側の巻き回し端部13d(基材端部面13f)が視認可能となり、Y軸方向の一方側V1から筒状部材12を見たとしても、基材13の第一端部13a側の巻き回し端部13d(基材端部面13f)は視認できない。図5(B)に示される例では、Y軸方向の他方側V2から筒状部材12を見たときに、基材13の第二端部13b側の巻き回し端部13d(基材端部面13f)が視認可能となり、Y軸方向の一方側V1から筒状部材12を見たとしても、基材13の第二端部13b側の巻き回し端部13d(基材端部面13f)は視認できない。
【0051】
また、「近接部13cから巻き回し端部13dまで基材13の巻き回し方向に延びる基材13の一部分」における巻き回し方向とは、図3(A)に示されるように筒状部材12が帯状の基材13によって形成されている場合には、帯状の基材13の長手方向に沿った方向を意味する。また、「巻き回し端部13d」は、図6(A)、図6(B)、図7(A)、図7(B)、図8(A)及び図8(B)に示されるように、第一端部13a側と第二端部13b側との両側に存在する。
【0052】
本実施形態の筒状部材12では、第一端部13a側及び第二端部13b側の両側における基材13の捲れ長さLWが、筒状部材12の周長さの1/4以下となるように形成されている。なお、筒状部材12は、第一端部13a側及び第二端部13b側の少なくとも一方における基材13の捲れ長さLWが、筒状部材12の周長さの1/4以下となるように形成されていれば、特定筒状部材12Aと特定される。
【0053】
図5(A)及び図5(B)に示されるように、筒状部材12は、Y軸方向におけるV1側の第一外周面12xとV2側の第二外周面12yとを有している。活物質保持部材11を構成する全ての筒状部材12は、第一外周面12x又は第二外周面12yに第一端部13a側及び第二端部13b側の巻き回し端部13dが形成されている。本実施形態の活物質保持部材11では、活物質保持部材11を構成する全ての筒状部材12が、第二外周面12yに第一端部13a側及び第二端部13b側の巻き回し端部13dが形成されている。
【0054】
図2に示されるように、活物質保持部材11は、Y軸方向においてセパレータ30,30に挟まれている。活物質保持部材11を構成する複数の筒状部材12は、セパレータ30に接触された状態で配置されている。電極群110が比較的狭い空間を有する電槽120に収容されることによって、活物質保持部材11がセパレータ30により押圧された状態で挟持されている。
【0055】
筒状部材12を形成する基材13は、不織布、織布等を含んで形成されてもよく、例えば不織布を含んで形成される。基材13は、樹脂材料を含有することができる。樹脂材料の例には、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート等が含まれる。基材は、例えばポリエステルを含有することが可能であり、ポリエステルを含有する不織布を含むことができる。
【0056】
基材13が繊維を含む場合、繊維は配向していてよい。例えば、不織布は、不織布の製造におけるMD方向(機械方向)と、MD方向と直交するCD方向(幅方向)と、を有してよい。繊維がMD方向に配向しやすいことから、MD方向はCD方向よりも機械強度が高い傾向がある。そのため、CD方向における機械強度が高い樹脂シートは、機械強度が相対的に低い方向(CD方向)においても機械強度が高いシートである。基材13が不織布を含む場合、繊維配向に起因する機械強度の影響を抑制しやすいため活物質の漏出が抑制されやすい観点から、活物質保持部材11における少なくとも一つの筒状部材12において、筒状部材12の軸方向(Z軸方向)に対して不織布のMD方向及びCD方向が傾斜していることが好ましい。
【0057】
筒状部材12の軸方向に対するMD方向又はCD方向の傾斜角度は、繊維配向に起因する機械強度の影響を抑制しやすいため活物質の漏出が抑制されやすい観点から、下記の範囲が好ましい。傾斜角度は、0°を超えることが好ましく、10°以上がより好ましく、20°以上が更に好ましく、30°以上が特に好ましく、40°以上が極めて好ましく、43°以上が非常に好ましい。傾斜角度は、90°未満が好ましく、80°以下がより好ましく、70°以下が更に好ましく、60°以下が特に好ましく、50°以下が極めて好ましく、47°以下が非常に好ましい。これらの観点から、傾斜角度は、0°を超え90°未満が好ましく、10°~80°がより好ましく、43°~47°が更に好ましい。傾斜角度が45°である場合には、繊維配向に起因する機械強度の影響を最も抑制しやすいと推測される。
【0058】
基材13は、細孔を有する多孔質体であってよい。基材13は、下記範囲の平均細孔径を有する部分を備えることが好ましい。基材13の平均細孔径は、電極材の流出を抑制しやすい観点から、60μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、45μm以下が更に好ましく、40μm以下が特に好ましい。基材13の平均細孔径は、電気抵抗が減少しやすい観点から、2μmを超えることが好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましく、20μm以上が特に好ましく、30μm以上が極めて好ましく、35μm以上が非常に好ましい。これらの観点から、基材13の平均細孔径は、2μmを超え60μm以下が好ましい。平均細孔径は、細孔分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所製、AUTO PORE IV 9520)により測定できる。
【0059】
活物質保持部材11における少なくとも一つの筒状部材12は、下記範囲の厚さ(肉厚又は筒状部材12を構成する壁部の厚さとも称する。以下も同様)を有する部分を備えてよい。筒状部材12の厚さは、下記の範囲であってよい。筒状部材12の厚さは、0.05mm以上、0.1mm以上又は0.2mm以上であってよい。筒状部材12の厚さは、1mm以下、0.8mm以下、0.6mm以下又は0.4mm以下であってよい。これらの観点から、筒状部材12の厚さは、0.05mm~1mmであってよい。
【0060】
活物質保持部材11における少なくとも一つの筒状部材12の長さは、下記の範囲であってよい。筒状部材12の長さは、50mm以上、100mm以上、120mm以上、160mm以上又は200mm以上であってよい。筒状部材12の長さは、800mm以下、750mm以下、700mm以下、650mm以下、600mm以下又は580mm以下であってよい。これらの観点から、筒状部材12の長さは、50mm~800mmであってよい。
【0061】
芯金14は、各筒状部材12に挿入されている。芯金14は、棒状に形成されている。芯金14は、筒状部材12の内部においてZ軸方向に沿って延びている。芯金14は、例えば、鋳造(加圧鋳造法)により得ることができる。芯金14の構成材料は、導電性材料であればよく、その例には、例えば、鉛-カルシウム-錫系合金、鉛-アンチモン-ヒ素系合金等の鉛合金が含まれる。鉛合金は、セレン、銀、ビスマス等を含んでいてもよい。芯金14の長さは、例えば45mm~805mmである。
【0062】
正極材16は、筒状部材12の内部に充填されている。正極材16は、活物質を含む。活物質には、化成後の活物質及び化成前の活物質の原料の双方が包含される。ここでの正極材16は、化成後の活物質を含有している。化成後の正極材16は、例えば、正極活物質の原料を含む未化成の正極材16を化成することで得ることができる。化成後の正極材16は、例えば、正極活物質の原料を含む正極材ペーストを熟成及び乾燥することにより未化成の正極材16を得た後に未化成の正極材16を化成することで得ることができる。正極活物質の原料の例には、鉛粉、鉛丹等が含まれる。化成後の正極材16における正極活物質の例には、二酸化鉛等が含まれる。正極材16は、必要に応じて添加剤を更に含有していてもよい。正極材16の添加剤の例には、補強用短繊維等が含まれる。補強用短繊維の例には、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)等が含まれる。
【0063】
筒状部材12、芯金14及び正極材16は、筒状電極を構成する。正極10の筒状電極は、連結部18a、耳部18b及び連結部材130aを介して極柱140aに電気的に接続されている。
【0064】
図1図9(A)及び図9(B)に示されるように、下部連座51は、活物質保持部材11を構成する複数の筒状部材12の下端部である第一端部13aに取り付けられている。下部連座51は、複数の筒状部材12の下端部を封止する。下部連座51は、複数の筒状部材12の下端部に嵌合されている。
【0065】
なお、筒状部材12の下端部である第一端部13aは、図10に示されるように、下部連座51を形成する後段にて詳述する樹脂を溶かすことによって溶着されていてもよい。また、下部連座51をインジェクション成形するときに筒状部材12を一体的に形成してもよい。なお、下部連座51が溶かされることによって形成される部分、又は筒状部材12を一体的に形成される部分は、筒状部材12の第一端部13aにおいて、内周側の基材13と外周側の基材13との接合部13hを跨ぐように且つ筒状部材12の外周面側から互いの基材13を固定する捲れ防止部55を形成する。捲れ防止部55は、上述した第一端部13a側の基材端部面13fを径方向外側から完全に覆っている。
【0066】
図1図9(A)及び図9(B)に示されるように、下部連座51は、複数の本体部52と、複数の本体部52のそれぞれに設けられた突出片(内挿部分)53と、複数の本体部52を連結する連結部54と、を備える。
【0067】
本体部52は、その一部が筒状部材12の下端部である第一端部13aに嵌入(挿入されて嵌合)される。本体部52は、Z軸方向を軸方向とし且つ上方に開口する有底円筒状に形成されている。本体部52の筒孔52hには、芯金14の下端14aが嵌入される。これにより、芯金14が筒孔52hに保持される。本体部52の筒孔52hは、円形孔を含む。ここでの筒孔52hの円形孔は、XY面に沿う断面の形状が真円形状の孔である。本体部52は、複数の筒状部材12に対応して複数設けられている。複数の本体部52は、X軸方向に沿って所定の隙間をあけて並列されている。
【0068】
突出片53は、各本体部52にZ軸方向に沿って突出するように四つずつ設けられている。ここでの突出片53は、上方から見て、各本体部52における軸方向回りの四等配の位置(等間隔の四箇所)に設けられている。突出片53は、本体部52の径方向に沿って延び且つZ軸方向に沿って延びる板状に形成されている。突出片53は、筒状部材12の内部に配置される。突出片53の上部は、上方に尖る尖部を構成する。突出片53の上部の先端は、丸面取りされている。連結部54は、複数の本体部52をY軸方向に沿って所定の隙間をあけて並列させた状態で連結する。連結部54は、Y軸方向に沿って延在する。連結部54は、本体部52と一体(渾然一体)になるように設けられている。
【0069】
下部連座51は、例えば耐酸性を有する材料で形成されている。下部連座51の材料としては、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂が挙げられる。下部連座51は、サイクル特性を向上させやすい観点から、熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、ポリオレフィンを含むことがより好ましく、ポリプロピレンを含むことが更に好ましい。サイクル特性を向上させやすい観点から、筒状部材12がポリオレフィンを含む場合において下部連座51がこれらの材料を含むことが好ましい。下部連座51は、筒状部材12と同一の材料で形成されていてもよく、筒状部材12と異なる材料で形成されていてもよい。下部連座51の材料としては、特に限定されない。
【0070】
図11に示されるように、筒状部材12における基材端部面13fの捲れ高さLHは、筒状部材12に内挿されている下部連座51の一部である突出片53のZ軸方向における長さLと同じ又は長さL以下である。本実施形態の基材端部面13fの捲れ高さLHは、筒状部材12に内挿されている突出片53のZ軸方向における長さL以下である。
【0071】
「捲れ高さLH」とは、上述した基材端部面13fの近接部13cにおけるZ軸方向における長さを意味している。「捲れ高さLH」は、言い換えれば、図7(A)及び図8(A)に示されるように、基材13を第一端部13a側及び第二端部13b側の巻き回し端部13dから近接部13cまで捲ったと仮定したときの捲れ部分である基材端部面13fにおいて、筒状部材12の近接部13cを形成していた部分13iのZ軸方向に沿った長さを意味する。
【0072】
図11に戻り、筒状部材12に内挿されている突出片53のZ軸方向における長さLは、3mm~15mmであり、5mm~13mmであることが好ましい。捲れ高さLHの例は、2.5mm~13mmである。また、筒状部材12に内挿されている突出片53のZ軸方向における長さLと捲れ高さLHとの差は、1mm~13mmであり、11mm~13mmであることが好ましい。
【0073】
なお、鉛蓄電池100を使用後に、Z軸方向において筒状部材12のどの位置まで下部連座51(突出片53)が挿入されているかを確認するためには、図1に示されるような筒状部材12の断面が確認できるように切断し、当該切断面に下部連座51が含まれているかを目視にて確認する方法がある。目視にて各部材の区別ができない場合には、サンプルの組成分析を実施する等して下部連座51の有無を確認してもよい。
【0074】
また、図11に示されるように、芯金14の下端14aは、Z軸方向において、突出片53の上端53aよりも下方に位置するように設けられている。Z軸方向において芯金14と突出片53とが重複する部分の長さは、2mm~15mmであり、5mm~13mmであることが好ましい。
【0075】
図1及び図12に示されるように、上部連座61は、活物質保持部材11を構成する複数の筒状部材12の上端部である第二端部13bに取り付けられている。上部連座61は、溶着により筒状部材12の上端部に固着されている。溶着では、上部連座61及び筒状部材12及び上部連座61の境界部分は一体化していてよい。溶着は、加熱、超音波照射、レーザー照射等により実現できる。なお、熱硬化性の接着剤等により、上部連座61が複数の筒状部材12の上端部に固着されていてもよい。なお、第二端部13bにおいても、第一端部13aと同様に、内周側の基材13と外周側の基材13との接合部13hを跨ぐように且つ互いの基材13を固定する捲れ防止部55が設けられてもよい。
【0076】
上部連座61は、長尺状の開口62aを有する有底箱状の基部62と、基部62の底面62bに設けられた複数の筒部63と、を含む。上部連座61は、座部材を構成する。
【0077】
基部62は、筒状部材12の上端に当接する。筒部63は、複数の筒状部材12の数に対応する所定数だけ設けられている。筒部63は、筒状部材12の内径に対応する外径を有する円筒状に形成されている。筒部63は、複数の筒状部材12の上端部のそれぞれに連通するように挿入される。筒部63は、その筒孔63aが基部62の内部と連通する。
【0078】
上部連座61は、例えばポリスチレンを含む材料で形成されている。なお、上部連座61の材料としては、特に限定されない。例えば上部連座61の材料の例には、耐酸性を有する材料が含まれる。上部連座61の材料の例には、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂等が含まれる。
【0079】
負極20は、例えば板状の電極である。負極20は、例えばペースト式負極板である。負極20は、連結部材130bを介して極柱140bに電気的に接続されている。負極20は、負極集電体と、当該負極集電体に保持された電極材である負極材と、を有する。負極集電体としては、板状の集電体を用いることができる。負極集電体と正極10の芯金14との組成は、互いに同一であってよく、互いに異なっていてもよい。負極材は、活物質を含む。ここでの負極材は、化成後の活物質を含有している。
【0080】
化成後の負極材は、例えば、負極活物質の原料を含む未化成の負極材を化成することで得ることができる。化成後の負極材は、例えば、負極活物質の原料を含む負極材ペーストを熟成及び乾燥することにより未化成の負極材を得た後に未化成の負極材を化成することで得ることができる。負極活物質の原料の例には、鉛粉等が含まれる。化成後の負極材における負極活物質の例には、多孔質の海綿状鉛(Spongy Lead)等が含まれる。負極材は、必要に応じて添加剤を更に含有することができる。負極材の添加剤の例には、硫酸バリウム、補強用短繊維、炭素材料(炭素質導電材)、スルホン基及びスルホン酸塩基からなる群より選択される少なくとも一種を有する樹脂(スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂)等が含まれる。補強用短繊維としては、正極材と同様の補強用短繊維を用いることができる。
【0081】
炭素材料の例には、カーボンブラック、黒鉛等が含まれる。カーボンブラックの例には、ファーネスブラック(ケッチェンブラック(登録商標)等)、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等が含まれる。スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂の例には、リグニンスルホン酸、リグニンスルホン酸塩、フェノール類とアミノアリールスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物等が含まれる。リグニンスルホン酸塩の例には、リグニンスルホン酸のアルカリ金属塩等が含まれる。フェノール類の例には、ビスフェノール等のビスフェノール系化合物等が含まれる。アミノアリールスルホン酸の例には、アミノベンゼンスルホン酸、アミノナフタレンスルホン酸等が含まれる。
【0082】
支持部材160は、電槽120の底面に配置され、下部連座51を支持する。支持部材160は、Z軸方向を突出方向とする複数の突条160aを有する。突条160aは、電槽120の底面上に設けられている。突条160aは、X軸方向に延びる。突条160aは、Y軸方向に並ぶ。突条160aは、下部連座51に当接する(図1参照)。すなわち、支持部材160は、下部連座51における電槽120の底面側の部分を各突条160aによって支持している。突条160aは、正極10に接していればよく、負極20に接していなくてよい。
【0083】
上記実施形態の活物質保持部材11を備える鉛蓄電池100の作用効果について説明する。基材13が少なくとも一周巻き回されることによって形成される筒状部材12は、延在方向における端部である第一端部13a及び第二端部13bの少なくとも一方において、筒状部材12の外周面(第一外周面12x又は第二外周面12y)に作用される外部応力に起因して基材13が巻き回し端部13dを起点に捲れやすい(剥がれやすい)傾向がある。図5(A)及び図5(B)に示されるように、上記実施形態の活物質保持部材11はX軸方向に配列されており、基材13が巻き回し方向とは反対方向に捲れたとしても、隣り合う筒状部材12同士が互いに近接する近接部13cを越えて捲れる可能性は小さい。
【0084】
更に、図5(A)及び図5(B)に示されるように、上記実施形態の活物質保持部材11に備わる複数の筒状部材12の少なくとも一つは、基材13の捲れ長さLWが筒状部材12の周長さの1/4以下となるように形成されている(特定筒状部材12Aとして形成されている)。このため、仮に基材13が巻き回し端部13dから捲れたとしても基材13の捲れ量が短く抑制され、正極材16の漏出を低減することができる。
【0085】
上記においては、図10に示されるように、第一端部13aにおいて、内周側の基材13と外周側の基材13との接合部13hを跨ぎ且つ互いの基材13を固定する捲れ防止部55が設けられている変形例を説明した。この場合には、捲れ防止部55によって、筒状部材12の第一端部13aにおいて内周側の基材13と外周側の基材13とが一体的に固定されるので、巻き回し端部13dが捲れることをより確実に防止できる。
【0086】
上記実施形態では、図4に示されるように、巻き回し端部13dが剥がれる方向が右回りに巻かれた第二筒状部材12Lと左回りに巻かれた第一筒状部材12Rとが混在するので、仮に、外部応力が作用する方向と第一筒状部材12Rの基材13の捲れる方向とが一致したとしても、外部応力が作用する方向と第二筒状部材12Lの基材13の捲れる方向とは互いに反対となるので、第二筒状部材12Lの巻き回し端部13dが捲れることはない。すなわち、基材13が右回りに巻き回された第一筒状部材12Rと、基材13が左回りに巻き回された第二筒状部材12Lとの2種類の筒状部材12を備えることにより、一方向に作用する外部応力に対して巻き回し端部13dが捲れるリスクが分散される。この結果、正極材16の漏出を低減することができる。
【0087】
なお、活物質保持部材11を構成する複数の筒状部材12の全てを、Z軸方向における第二端部13b側から見て、基材13が右回りに巻き回された筒状部材12で統一するか、左回りに巻き回された筒状部材12で統一すれば、筒状部材12の種類が一種類となり、調達コストを削減できる。
【0088】
上記実施形態の筒状部材12は、図3(A)に示されるように、帯状の基材13が第二端部13bから第一端部13aに向かって内周側の基材13の一部が外周側の基材13に被覆される重なり部13gを有しながら螺旋状に巻き回しされることにより形成されている。このような筒状部材12では、内周側の基材13は外周側の基材13によって一部が覆われるので、第二端部13b側の巻き回し端部13dは、第一端部13a側の巻き回し端部13dと比べて捲れ難くできる。すなわち、筒状部材12の両端に形成される巻き回し端部13dの一方を構造的に捲れ難くできるので、正極材16の漏出を低減できる。更に、上記実施形態の筒状部材12では、延在方向に隣り合う帯状の基材13の接合部13hから正極材16が漏出することを低減できる。
【0089】
筒状部材12の重なり部13gは、筒状部材12の外周面から径方向に突出しており、互いに隣り合う筒状部材12の重なり部13g同士が重なったり交差したりすると重なり部13g同士が密着し、電解液40又は電槽120内で発生したガスの流通を阻害する。上記実施形態の活物質保持部材11では、図4に示されるように、X軸方向に隣り合う筒状部材12の重なり部13g同士が互いに接触しないように、筒状部材12が配置されている。このため、重なり部13g同士が密着する部分を無くなり、電解液140又はガスの流通に優れた環境を提供できる。
【0090】
上記実施形態の筒状部材12では、基材13の捲れ高さLHが、図11に示されるように、筒状部材12に内挿されている下部連座51(突出片53)のZ軸方向における長さ以下となるように形成されている。筒状部材12は、仮に、筒状部材12の巻き回し端部13dから基材13が捲れたとしても、上記実施形態の筒状部材12では、下部連座51が内挿されているので、正極材16が筒状部材12の第一端部13aにまで落ちてくることを妨げると共に、下部連座51が内挿されている分だけ筒状部材12の内部空間における正極材16の充填量を少なくする。このような構成において、仮に基材13が巻き回し端部13dから近接部13cまで捲れたとしても、捲れた部分から正極材16が漏出することを低減できる。
【0091】
上記実施形態の活物質保持部材11では、図5(A)及び図5(B)に示されるように、全ての筒状部材12における巻き回し端部13dを、第二外周面12y側に統一して配置しているので、組立時の作業性を向上させることができる。
【0092】
以上、一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られない。発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0093】
<変形例1>
上記実施形態の鉛蓄電池100の活物質保持部材11は、第二端部13b側から見たときに基材13が右回りに巻き回されることによって形成された第一筒状部材12Rと、基材13が左回りに巻き回された第二筒状部材12Lとの二種類で筒状部材12が構成されている例を挙げて説明したがこれに限定されない。図13及び図14(A)に示されるように、活物質保持部材11は、例えば、基材13が右回りに巻き回されることによって形成された第一筒状部材12Rの一種類の筒状部材12によって構成されてもよいし、図14(B)に示されるように、基材13が左回りに巻き回されることによって形成された第二筒状部材12Lの一種類の筒状部材12によって構成されてもよい。変形例1に係る活物質保持部材11では、筒状部材12の種類が一種類となるので調達コストを削減できる。
【0094】
<変形例2>
上記実施形態の鉛蓄電池100では、活物質保持部材11を構成する全ての筒状部材12が、第一外周面12x又は第二外周面12yに第一端部13a側及び第二端部13b側の巻き回し端部13dが形成されている例を挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、図15(A)及び図15(B)に示されるように、活物質保持部材11は、第一外周面12xに第一端部13a側及び第二端部13b側の巻き回し端部13dが形成されている筒状部材12と、第二外周面12yに第一端部13a側及び第二端部13b側の巻き回し端部13dが形成されている筒状部材12とによって構成されていてもよい。
【0095】
なお、図15(A)に示される活物質保持部材11は、基材13が右回りに巻き回されることによって形成された第一筒状部材12Rの一種類の筒状部材12で構成されている。図15(B)に示される活物質保持部材11は、基材13が右回りに巻き回されることによって形成された第一筒状部材12Rと、基材13が左回りに巻き回された第二筒状部材12Lとの二種類の筒状部材12で構成されている。
【0096】
変形例2に係る活物質保持部材11は、筒状部材12における巻き回し端部13dの位置を第一外周面12xと第二外周面12yとで振り分けられるので、一方向に作用する外部応力に対して巻き回し端部13dが捲れるリスクが分散される。この結果、正極材16の漏出を低減することができる。なお、図15(B)に示される活物質保持部材11の構成とすることで、基材13の巻き回し方向及び巻き回し端部13dの配置位置をより一層分散させることができる。この構成では、一方向に作用する外部応力に対して巻き回し端部13dが捲れるリスクがより分散化され正極材16の漏出をより効果的に低減することができる。
【0097】
<変形例3>
上記実施形態では、主に、第一端部13a側及び第二端部13b側の両方の捲れ長さLWが筒状部材12の周長さの1/4以下となるように形成されている例を挙げて説明したが、特に、図7(A)及び図8(A)に示されるように、帯状の基材13が第二端部13bから第一端部13aに向かって重なり部13gを有しながら螺旋状に巻き回しされることにより形成されている筒状部材12を用いる場合には、巻き終わり側である第一端部13a側の巻き回し端部13dの捲れ長さLWのみを筒状部材12の周長さの1/4以下となるように形成してもよい。すなわち、第一端部13a側の巻き回し端部13dの捲れ長さLWのみを筒状部材12の周長さの1/4以下とする特定筒状部材12Aを用いてもよい。
【0098】
重なり部13gを有する筒状部材12においては、巻き始め側である第二端部13b側の巻き回し端部13dは、後から巻き回される基材13によって径方向外側から押さえられるので、巻き終わり側である第一端部13a側の巻き回し端部13dと比べると、捲れにくいという側面がある。このような側面を踏まえ、以下に示す構成の鉛蓄電池100としてもよい。すなわち、変形例3に係る鉛蓄電池100は、巻き終わり側である第一端部13a側の巻き回し端部13dが電槽120内の鉛直方向下方に位置する(下部連座51によって封止される)ように配置され、第一端部13a側の巻き回し端部13dの捲れ長さLWのみが筒状部材12の周長さの1/4以下となるように形成された特定筒状部材12Aを備える構成としてもよい。
【0099】
活物質保持部材11及び活物質保持部材11を有する正極10は、液式鉛蓄電池において用いられることが好ましく、鉛蓄電池100は、液式鉛蓄電池であることが好ましい。一般に、液式鉛蓄電池では、電極群110の全体が電解液40中に浸漬される傾向があり、制御弁式鉛蓄電池等と比較して電解液40の量が多い傾向がある。この場合、電解液量によって放電容量が規制されにくいため、放電容量を大きくしやすい傾向がある。しかしながら、液式鉛蓄電池では、電解液40の成層化によって電極群110の下方の領域における硫酸の濃度が高まり、電極群110における筒状部材12の下方の基材13が劣化しやすい。
【0100】
また、液式鉛蓄電池では、経年劣化(充放電サイクルに起因する劣化を包含する)が進むことによって正極材16の泥状化が進行し、正極材16が漏出しやすい状態となる。これらの状態で筒状部材12の基材13に捲れが生じると、正極材16が顕著に漏出する。一方、上述の各態様及びその変形態様に係る活物質保持部材11においては、基材13が巻き回し端部13dを起点に捲れ難いことから、正極材16の漏出を抑制しつつ液式鉛蓄電池の長所を活かすことができる。
【0101】
当該変形例3に係る鉛蓄電池100は、正極材16が微粒子化しやすい筒状部材12の鉛直方向下方側の端部において正極材16の漏出を低減できるので、効果的に正極材16の漏出を低減することができる。
【0102】
<変形例4>
変形例3で説明したような側面を踏まえ、巻き終わり側である第一端部13a側の巻き回し端部13dが電槽120内の鉛直方向上方に位置する(上部連座61によって封止される)ように配置され、第一端部13a側の巻き回し端部13dの捲れ長さLWのみが筒状部材12の周長さの1/4以下となるように形成された特定筒状部材12Aを備える構成の鉛蓄電池100としてもよい。当該変形例4に係る鉛蓄電池100は、捲れやすい第一端部13a側の巻き回し端部13dが上方となるように配置されているので、正極材16の漏出を低減することができる。
【0103】
<変形例5>
上記実施形態の変形例として、捲れ防止部55を備える鉛蓄電池100を例に挙げて説明したが、捲れ防止部55を備えない構成であっても、鉛蓄電池100は、筒状部材12の基材端部面13fの一部に接触するようにセパレータ(押さえ部材)30を配置すればよい。この構成により、巻き回し端部13dを含む基材端部面13fがセパレータ30によって押さえられるので、基材13が巻き回し端部13dから捲れることを抑制できる。
【0104】
<変形例6>
上記実施形態及び変形例では、筒状部材12の下端部である第一端部13aと下部連座51とが嵌合されている例を挙げて説明したが、この構成に加えて、筒状部材12の下端部である第一端部13aと下部連座51とは、熱可塑性樹脂(例えば、ポリスチレン、PP又はPE等)からなる接着剤によって固着されていてもよい。なお、熱可塑性樹脂からなる接着剤により下部連座51が複数の筒状部材12の第一端部13aに固着される部分は、筒状部材12の第一端部13aにおいて、内周側の基材13と外周側の基材13との接合部13hを跨ぐように且つ筒状部材12の外周面側から互いの基材13を固定する捲れ防止部55を形成している。捲れ防止部55は、上述した第一端部13a側の基材端部面13fを径方向外側から完全に覆っている。この場合も、捲れ防止部55によって、筒状部材12の第一端部13aにおいて内周側の基材13と外周側の基材13とが一体的に固定されるので、巻き回し端部13dが捲れることをより確実に防止できる。
【0105】
<その他の変形例>
上記実施形態及び変形例の筒状部材12は、延在方向から見た外形の断面が円形に形成されている例を挙げて説明したが、筒状であれば、楕円形状、矩形形状、菱形形状及び正方形形状等であってもよい。
【0106】
本発明の一態様に係る活物質保持部材11、電極群110及び鉛蓄電池100は、例えば電動車に用いることができる。電動車の例には、フォークリフト、ゴルフカート等が含まれる。
【0107】
電動車用の鉛蓄電池100では、鉛蓄電池100の高さ方向に正極10及び負極20の高さを大きく設計されやすい。そのため、電解液40中の硫酸が下方に沈降しやすいことから、成層化を防止するためのメンテナンスが重要である。そこで、充電末期に過充電をかけることによりガッシングさせて電解液40を撹拌させる場合がある。この場合、筒状部材12の基材13が捲れて正極材16が漏出していると、このガッシングによって正極材16が舞い上がって電極(例えば負極20)上に堆積することにより短絡が生じやすい。上記実施形態及び変形例に係る鉛蓄電池100は、正極材16の漏出を抑制できることから、ガッシングに起因する短絡を抑制できるため、電動車においても好適に用いることができる。
【0108】
本発明の一側面では、上記実施形態及び上記変形例の各構成を適宜組み合わせてもよい。本発明の一側面は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0109】
10…正極、11…活物質保持部材、12…筒状部材、12A…特定筒状部材、12L…第二筒状部材、12R…第一筒状部材、12x…第一外周面、12y…第二外周面、13…基材、13a…第一端部、13b…第二端部、13c…近接部、13d…巻き回し端部、13f…基材端部面、13g…重なり部、13h…接合部、16…正極材(活物質)、20…負極、30…セパレータ(押さえ部材)、51…下部連座(第一封止部)、53…突出片(内挿部分)、61…上部連座(第二封止部)、100…鉛蓄電池、110…電極群、120…電槽。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15