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特開2022-104130硬化性樹脂組成物、及びそれを用いたプリプレグ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104130
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、及びそれを用いたプリプレグ
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/18 20060101AFI20220701BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220701BHJP
   C08G 59/46 20060101ALI20220701BHJP
   C08G 59/56 20060101ALI20220701BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
C08G59/18
C08L63/00 C
C08G59/46
C08G59/56
C08J5/24 CFC
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219149
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(72)【発明者】
【氏名】谷口 裕一
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AD15
4F072AD28
4F072AE01
4F072AE02
4F072AF14
4F072AF15
4F072AF19
4F072AF27
4F072AF28
4F072AF30
4F072AF31
4F072AG03
4F072AH02
4F072AJ22
4F072AL01
4J002CD011
4J002CD021
4J002CD031
4J002CD051
4J002CD101
4J002CD131
4J002CL062
4J002DA019
4J002DF008
4J002DH008
4J002DK009
4J002DL009
4J002ET006
4J002ET017
4J002EU138
4J002FA042
4J002FA049
4J002FD019
4J002FD110
4J002FD146
4J002FD147
4J002FD158
4J002GT00
4J036AA01
4J036AB01
4J036AB03
4J036AB07
4J036AD01
4J036AD04
4J036AD05
4J036AD08
4J036AD21
4J036AF01
4J036AF19
4J036AG06
4J036AG07
4J036AH05
4J036AH07
4J036AH09
4J036DA06
4J036DC03
4J036DC25
4J036DC26
4J036DC30
4J036DC38
4J036GA02
4J036GA04
4J036JA11
(57)【要約】
【課題】長期保管時の粘度安定性に優れ、かつ熱硬化時には高い硬化速度を示し、短時間での成形においても成形物の高い耐熱性を示す硬化性樹脂組成物の提供を目的とする。
【解決手段】エポキシ樹脂(A)、ジシアンジアミドまたはその誘導体(B)、固形の芳香族ウレア化合物(C)、硬化促進剤(D)を必須成分とする硬化性樹脂組成物であって、硬化促進剤(D)が有機アミンの塩、第4級アンモニウム塩、有機リン化合物、有機ホスホニウム塩のうち、少なくとも一つから選ばれる化合物であり、硬化促進剤(D)の配合量が(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分の合計100質量部に対し、0.05~3.0質量部である硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、ジシアンジアミドまたはその誘導体(B)、固形の芳香族ウレア化合物(C)、硬化促進剤(D)を必須成分とする硬化性樹脂組成物であって、硬化促進剤(D)が、下記一般式(1)で表される有機アミンの塩、下記一般式(2)で表される第4級アンモニウム塩、下記一般式(3)で表される有機リン化合物、下記一般式(4)で表される有機ホスホニウム塩のうち、少なくとも一つから選ばれる化合物であり、硬化促進剤(D)の配合量が、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分の合計100質量部に対し、0.05~3.0質量部であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは水素原子、炭素原子数1~20の1価の有機残基であり、Xは有機アニオン、ハロゲン化物イオンであり、mは0~4の整数である。)
【化2】

(式(2)中、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~10の1価の有機残基であり、Yは有機アニオン、ハロゲン化物イオンを表す。)
【化3】

(式(3)中、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~10の1価の有機残基を表す。)
【化4】

(式(4)中、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~10の1価の有機残基であり、Zは有機アニオン、ハロゲン化物イオンを表す。)
【請求項2】
E型粘度計により測定した25℃における粘度をV、25℃にて168時間経過後の粘度をWとし、粘度増加率W/Vが1.25未満であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物に、体積含有率が45~70%となるように強化繊維を配合してなることを特徴とするプリプレグ。
【請求項4】
請求項3に記載のプリプレグを加熱成形して得られる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化時に高い耐熱性が得られるエポキシ樹脂組成物と、それを用いたプリプレグに関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合材料はガラス繊維、アラミド繊維や炭素繊維等の強化繊維と、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂等の熱硬化性マトリクス樹脂から構成され、軽量かつ、強度、耐食性や耐疲労性等の機械物性に優れることから、航空機、自動車、土木建築およびスポーツ用品等の構造材料として幅広く適応されている。
【0003】
繊維強化複合材料の製造方法には、熱硬化性のマトリクス樹脂が予め強化繊維へ含浸されたプリプレグを用いるオートクレーブ成形法、プレス成形法や、強化繊維へ液状のマトリクス樹脂を含浸させる工程と熱硬化による成形工程を含む、ウェットレイアップ成形法、引き抜き成形法、フィラメントワインディング成形法、RTM法等の手法がある。
【0004】
繊維強化複合材料の製造方法においては生産性を高めるために、様々な取り組みがなされており、その一つとしてマトリクス樹脂の硬化速度を高める検討がされている。一方、プリプレグは保管時における長期の粘度安定性、すなわち保管する温度ではマトリクス樹脂の硬化反応が進行しないことが求められる。
【0005】
マトリクス樹脂の保管安定性を保つ手法として、エポキシ樹脂の硬化剤として固形の硬化剤であるジシアンジアミド、ヒドラジド化合物、イミダゾール化合物やジアミノジフェニルスルホン等が用いられる。これら固形の硬化剤は室温付近ではエポキシ樹脂への溶解性が極めて低いために硬化反応が進行しない。一方、加温することで硬化剤が溶解、または硬化剤が熱分解することによってエポキシ樹脂中に溶解することで硬化反応を進行させることができる(特許文献1~2)。
【0006】
マトリクス樹脂の硬化速度を高める手法として、特許文献3、4ではエポキシ樹脂と固形の硬化剤であるジシアンジアミドに加え、イミダゾール化合物やウレア化合物を添加する検討がされている。
【0007】
マトリクス樹脂の保存安定性を高める手法として、特許文献5にはエポキシ樹脂とアミン化合物との反応物を硬化剤に用いた検討がされている。本手法によりマトリクス樹脂の粘度増加率を抑制できるものの、硬くて脆い成形物が得られる傾向にある。
【0008】
マトリクス樹脂の保存安定性を高める手法として。特許文献6ではエポキシ樹脂と固形の硬化剤に加えホウ酸エステル化合物を添加することにより、マトリクス樹脂の粘度増加率を抑制する検討がされているが、本手法では硬化速度が低下する。
【0009】
マトリクス樹脂に機能を付与する手法としてリン系化合物を添加する取り組みがなされている。特許文献7、8では特定のリン化合物を用いることにより難燃性を付与させている。
【0010】
マトリクス樹脂の硬化性を調整する手法として、特許文献9では特定のリン系化合物や有機塩基化合物を添加する取り組みがなされている。本手法では硬化温度が180℃と高く、より低い温度で高い硬化性を示すマトリクス樹脂が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010-265371号公報
【特許文献2】国際公開第2018/21146号
【特許文献3】国際公開第2019/98028号
【特許文献4】特開2016-522278号公報
【特許文献5】特開2019-189833号公報
【特許文献6】特開平9-157498号公報
【特許文献7】国際公開第2016/199857号
【特許文献8】特許第5648685号公報
【特許文献9】特開2019-65282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は長期保管時の粘度安定性に優れ、かつ熱硬化時には高い硬化速度が得られるため、短時間で成形される繊維強化複合材料のマトリクス樹脂として使用される樹脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは前述の課題を解決するため検討を行った結果、固形の硬化剤と特定の化合物を用いることで、長期の保管時における粘度安定性と硬化時に高い硬化速度の樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂(A)、ジシアンジアミドまたはその誘導体(B)、固形の芳香族ウレア化合物(C)、硬化促進剤(D)を必須成分とする硬化性樹脂組成物であって、硬化促進剤(D)が下記一般式(1)で表される有機アミンの塩、下記一般式(2)で表される第4級アンモニウム塩、下記一般式(3)で表される有機リン化合物、下記一般式(4)で表される有機ホスホニウム塩から少なくとも一つから選ばれる化合物であり、硬化促進剤(D)の配合量が(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分の合計100質量部に対し、0.05~3.0質量部であることを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【化1】

(式(1)中、Rは水素原子、炭素原子数1~20の1価の有機残基であり、Xは有機アニオン、ハロゲン化物イオンであり、mは0~4の整数である。)
【化2】

(式(2)中、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~10の1価の有機残基であり、Yは有機アニオン、ハロゲン化物イオンを表す。)
【化3】

(式(3)中、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~10の1価の有機残基を表す。)
【化4】

(式(4)中、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~10の1価の有機残基であり、Zは有機アニオン、ハロゲン化物イオンを表す。)
【0015】
本発明の硬化性樹脂組成物は、E型粘度計により測定した25℃における粘度をV、25℃にて168時間経過後の粘度をWとし、粘度増加率W/Vが1.25未満であることが好適である。
【0016】
本発明の別の態様は、上記硬化性樹脂組成物に、体積含有率が45~70%となるように強化繊維を配合してなることを特徴とするプリプレグであり、プリプレグを加熱成形して得られる成形体である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の硬化性樹脂組成物は、保管時における粘度安定性と硬化時の高い硬化速度が優れ、これを使用したプリプレグの長期保管性と硬化速度が高いことによる成形物の生産性を向上させ、繊維強化複合材料に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、ジシアンジアミドまたはその誘導体(B)、固形の芳香族ウレア化合物(C)、硬化促進剤(D)を必須成分とする。以下、エポキシ樹脂(A)、ジシアンジアミドまたはその誘導体(B)、固形の芳香族ウレア化合物(C)、硬化促進剤(D)を、それぞれ(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分ともいう。
【0019】
エポキシ樹脂(A)は、1分子中に平均して2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であって、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、イソホロンビスフェノール型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂や、これらビスフェノール型エポキシ樹脂のハロゲン、アルキル置換体、水添品、単量体に限らず複数の繰り返し単位を有する高分子量体、アルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテルや、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂や、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレ-ト、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン等の脂環式エポキシ樹脂や、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレンジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ樹脂や、フタル酸ジグリシジルエステルや、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステルや、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステルや、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルキシリレンジアミン等のグリシジルアミン類等を用いることができる。これらは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明で使用するエポキシ樹脂(A)は、(A)~(D)成分の合計100質量部の内、80~96質量部、好ましくは84~94質量部であることがよい。
【0020】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化剤としてジシアンジアミドまたはその誘導体(B)を用いる。ジシアンジアミドは、常温で固体の硬化剤であり、室温ではエポキシ樹脂にほとんど溶解しないが、180℃以上まで加熱すると溶解し、エポキシ基と反応する特性を有する室温での保存安定性に優れた潜在性硬化剤である。その誘導体としては、N‐ヘキシルジシアンジアミドのようなN‐置換ジシアンジアミド誘導体等を使用することが出来る。使用する量としてはエポキシ樹脂(A)のエポキシ基1当量に対して、0.2~0.8当量(ジシアンジアミド1モルを4当量として計算)の範囲で配合することが好ましい。より好ましくは0.35~0.65当量である。エポキシ当量に対して0.2当量未満では硬化物の架橋密度が低くなり、破壊靱性が低くなりやすくなり、0.8当量を超えると未反応のジシアンジアミドが残りやすくなるため、機械物性が悪くなる傾向にある。別の観点では硬化性樹脂組成物100重量部に対して0.01~7重量部の範囲が好ましい。
【0021】
固形の芳香族ウレア化合物(C)としては、ジシアンジアミドの硬化助剤として作用し、混合時での強化繊維への含浸性に加え、硬化時における耐熱性をより満足させるものが好ましい。固形であることが必須であり、融点は好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上である。
【0022】
固形の芳香族ウレア化合物としては例えば、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア、N-フェニル-N’,N’-ジメチルウレア、N-(4-クロロフェニル)-N’,N’-ジメチルウレア、N-(3,4-ジクロロフェニル)-N’,N’-ジメチルウレア、N-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-N’,N’-ジメチルウレア、N-(3-クロロ-4-エチルフェニル)-N’,N’-ジメチルウレア、N-(3-クロロ-4-メトキシフェニル)-N’,N’-ジメチルウレア、N-(4-メチル-3-ニトロフェニル)-N’,N’-ジメチルウレア、2,4-ビス(N’,N’-ジメチルウレイド)トルエン、メチレン-ビス(p-N’,N’-ジメチルウレイドフェニル)等を挙げることができ、この中でも3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレアが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、化学的に安定で、かつ常温ではエポキシ樹脂に溶解しないものであれば上記に限定されるものではない。
【0023】
固形の芳香族ウレア化合物(C)の使用量は、(A)~(D)成分の合計100質量部に対し、好ましくは0.5~8質量部、より好ましくは1~5質量部である。8質量部を超えると保管時における粘度の増加を招く。0.5質量部未満の場合、硬化性が不足する。
【0024】
(D)成分は、下記一般式(1)で表される塩、下記一般式(2)で表される第4級アンモニウム塩、下記一般式(3)で表される有機リン化合物、下記一般式(4)で表される有機ホスホニウム塩のうち、少なくとも一つから選ばれる化合物であり、(D)成分の配合量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分の合計100質量部に対し、0.05~3.0質量部である。これらの化合物を用いることで長期の保管において粘度の増加が生じることなく、熱硬化時に高い硬化速度を示す。(D)成分の添加量が0.05質量部未満であると硬化速度が向上せず、3.0質量部を超えると保管時における粘度の増加や成形体の耐熱性低下を招く。好ましくは0.10~2.0質量部、より好ましくは0.50~1.0質量部である。
【化5】

式(1)中、Rは水素原子、炭素原子数1~20の1価の有機残基であり、Xは有機アニオン、ハロゲン化物イオンであり、mは0~4の整数である。Rは、好ましくは水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であり、より好ましくは水素原子、又は炭素原子数1~6のアルキル基である。特に好ましくは水素原子である。Xは、好ましくはフェニル構造を含むアニオンである。mは、好ましくは0~2である。
【化6】

式(2)中、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~10の1価の有機残基であり、Yは有機アニオン、ハロゲン化物イオンである。Rは、好ましくはアルキル基、アラルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であり、より好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~10のアラルキル基又はアリール基である。特に好ましくは炭素原子数3~6のアルキル基である。Yは、好ましくはハロゲン化物イオン、又は水酸化物イオンである。
【化7】

式(3)中、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~10の1価の有機残基である。Rは、好ましくはアルキル基、アラルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であり、より好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~10のアラルキル基又はアリール基である。特に好ましくは炭素数6~10のアリール基であり、炭素数1~3のアルキル基やアルコキシ基の置換基を有してもよい。
【化8】

式(4)中、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~10の1価の有機残基であり、Zは有機アニオン、ハロゲン化物イオンである。Rは、好ましくはアルキル基、アラルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であり、より好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~10のアラルキル基又はアリール基である。Zは、好ましくはハロゲン化物イオン、又は水酸化物イオンである。
【0025】
(D)成分のうち、式(1)で表されるジアザビシクロウンデセン等の環状アミン化合物の塩類としては、ジアザビシクロウンデセンのフェノール塩、ジアザビシクロノネンのフェノール塩等が挙げられる。
式(2)で表される第4級アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、フェニルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
式(3)で表される有機リン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ-n-プロピルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン等が挙げられる。
式(4)で表される第4級ホスホニウム化合物としては、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムアイオダイド、テトラメチルホスホニウムハイドロオキサイド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムクロリド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムブロミド、トリメチルベンジルホスホニウムクロリド、トリメチルベンジルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、トリフェニルメチルホスホニウムブロミド、トリフェニルブチルホスホニウムブロミド、トリフェニルメチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルエチルホスホニウムクロリド、トリフェニルエチルホスホニウムブロミド、トリフェニルエチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロリド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロミド等が挙げられる。
これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、上記に限定されるものではない。
【0026】
これらの内、ジアザビシクロウンデセン等の環状アミン化合物の塩類としては、ジアザビシクロウンデセンのフェノール塩、第4級アンモニウム塩としては、テトラブチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、有機リン化合物としては、トリス(メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン、第4級ホスホニウム化合物としては、トリフェニルブチルホスホニウムブロミド、トリフェニルエチルホスホニウムアイオダイドを用いることが望ましい。
【0027】
(D)成分は、(B)成分や(C)成分と同様に、固形又は半固形であることが好ましい。
【0028】
本発明の硬化性樹脂組成物はE型粘度計により測定した25℃における粘度をV、25℃にて168時間経過後の粘度をWとした時の粘度増加率W/Vが1.25満であると長期保管時の使用において、製造直後との差異無しに取り扱いが可能であり好ましい。粘度増加率W/Vは、より好ましくは1.10以下である。
【0029】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、更に他の硬化性樹脂を配合することもできる。このような硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、硬化性アクリル樹脂、硬化性アミノ樹脂、硬化性メラミン樹脂、硬化性ウレア樹脂、硬化性シアネートエステル樹脂、硬化性ウレタン樹脂、硬化性オキセタン樹脂、硬化性エポキシ/オキセタン複合樹脂等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0030】
本発明の硬化性樹脂組成物には、カップリング剤や、カーボン粒子や金属めっき有機粒子等の導電性粒子、熱硬化性樹脂粒子、あるいはシリカゲル、ナノシリカ、アルミナファイバーやクレー等の無機フィラーや、導電性フィラーを配合することができる。導電性粒子や導電性フィラーを用いることにより得られる樹脂硬化物や繊維強化複合材料の導電性を向上させられる。
【0031】
導電性フィラーとしては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、金属ナノ粒子などが挙げられ、単独で使用しても併用してもよい。この中で特にカーボンナノチューブの配合は導電性を向上させるだけで無く、繊維強化複合材料に対して1wt%未満の配合量でも繊維強化複合材料の衝撃強度を高められるという点で広く知られており、好適に用いることができる。
【0032】
本発明の硬化性樹脂組成物は、強化用繊維又は束に含浸されてプリプレグとされる。プリプレグとする方法は公知の方法でよい。このようにして得られるプリプレグは、オートクレーブ成形法、プレス成形法、フィラメントワインディング成形法によって得られる繊維強化複合材料に好適に用いられる。
【0033】
本発明のプリプレグに用いられる強化繊維としては、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ボロン繊維等から選ばれるが、強度に優れた繊維強化複合材料を得るためには炭素繊維を使用するのが好ましい。
【0034】
本発明の硬化性樹脂組成物と強化繊維より構成されたプリプレグにおける、強化繊維の体積含有率は45~70%であると良く、より好ましくは50~66%の範囲であると、空隙が少なく、かつ強化繊維の体積含有率が高い成形体が得られるため優れた強度の成形材料が得られる。
【実施例0035】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。配合量を示す部は、特に断りがない限り質量部である。またエポキシ当量の単位はg/eqである。
【0036】
実施例で使用した各成分の略号は下記の通りである。
(A)成分
YD-128:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量187(日鉄ケミカル&マテリアル社製)
(B)成分
DICY:ジシアンジアミド
(C)成分
DCMU:3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア、固形(融点155~160℃)
TDU:1,1’-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(3,3-ジメチルウレア)、固形(融点180~195℃)
(D)成分
SA851:ジアザビシクロウンデセンのフェノールノボラック樹脂塩(サンアプロ社製)、半固形
5002:ジアザビシクロウンデセン誘導体のテトラフェニルボレート塩(サンアプロ社製)、固形
TBAB:テトラブチルアンモニウムブロミド、固形(融点102~106℃)
TDMPP:トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン、固形(融点145~147℃)
ETPPI:トリフェニルエチルホスホニウムアイオダイド、固形(融点164~168℃)
(D’)成分(式(1)~(4)以外の硬化促進剤)
DBU:ジアザビシクロウンデセン、液状
TBB:トリブチルボレート、液状
【0037】
実施例1
(A)成分としてYD-128を93部、(D)成分としてTDMPPを0.7部、150mLのポリ容器へ入れ、ホットスターラー上にて70℃-1.5h撹拌することにより(D)成分を均一に溶解させた後、(B)成分としてDICYを4.0部、(C)成分としてDCMUを3.0部ポリ容器に加え、真空ミキサー(あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて、室温下で25mmHgに減圧下にて5分間攪拌しながら混合し、硬化性樹脂組成物を得た。
【0038】
(初期粘度、168時間経過後の粘度、粘度増加率の測定)
25℃における粘度の値は、E型粘度計コーンプレートタイプを用いて測定した。硬化性樹脂組成物を調整し、その内1.1mLを測定に用い測定開始から60秒経過後の値を初期粘度の値をVとした。また、調整した硬化性樹脂組成物を、25℃に設定した恒温水槽に168時間静置させてからE型粘度計コーンプレートタイプを用いて同様に粘度の測定を実施し、測定開始から60秒経過後の値を168時間経過後の粘度の値Wとした。また、粘度増加率をW/V(168時間経過後の粘度/初期粘度)の式を用いて算出した。
【0039】
(ゲルタイムの測定)
150℃に加熱しておいたゲル化試験機(日新科学製)のプレート上に硬化性樹脂組成物を添加し、フッ素樹脂棒を用いて一秒間に2回転の速度で攪拌し、硬化性樹脂組成物の硬化が進行し可塑性を失うまでに要した時間をゲル化時間とした。
【0040】
(ガラス転移温度測定用成形板の作製)
2mm厚のコの字型スペーサーを縦80mm×横80mm×厚さ8mmの鋼製板2枚で挟むことにより金型を作製し、熱風循環式オーブン内で1h静置することにより150℃に加熱した後、硬化性樹脂組成物を金型へ流し込み、150℃、0.5hオーブン内で静置することにより硬化させ、60mm×60mm×厚さ2mmの成形物を得て、後述するガラス転移温度の測定に用いた。
【0041】
(ガラス転移温度の測定)
得られた成形板を卓上バンドソーにより3mm×3mmの大きさに切削し、さらにベルトディスクサンダーを用いておよそ0.8mmの厚さまで研磨加工した。示差走査熱量計を用い、窒素雰囲気下にて昇温速度10℃/分の条件で測定し、DSC曲線の変曲点での温度をガラス転移温度Tgとした。
【0042】
実施例2~8、比較例1~4
(A)~(D)成分、(D’)成分を、表1、表2に記載された組成にて使用した以外は、実施例1と同様にして硬化性樹脂組成物を作製した。この硬化性樹脂組成物を使用して、実施例1と同様にして初期粘度、168時間経過後の粘度、粘度増加率、ゲルタイム、ガラス転移温度を測定した。
【0043】
試験の結果をそれぞれ表1、表2に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】