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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104341
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20220701BHJP
【FI】
B23K26/00 Q
B23K26/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219500
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】布垣 俊武
(72)【発明者】
【氏名】井田 一彦
(72)【発明者】
【氏名】上山 春樹
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CB07
4E168DA60
4E168EA11
4E168JA12
4E168JA13
4E168KA15
(57)【要約】
【課題】アクチュエータ起因の加工異常を早期発見して加工不良を抑制すると共に、不良原因の切り分け作業による作業工数および装置のダウンタイムを削減することができるレーザー加工装置を提供すること。
【解決手段】レーザー加工装置は、レーザービーム照射ユニットの集光器30が、凹レンズ31と、凹レンズ31と所定の間隔をもって配設された凸レンズ33と、凹レンズ31に対する凸レンズ33の距離を変更するアクチュエータ34と、凹レンズ31と凸レンズ33との距離を測定する距離測定ユニット35と、を有する。また、レーザー加工装置1の制御ユニット90は、アクチュエータ34の変位量を指示する指示部91と、距離測定ユニット35によって測定された凹レンズ31と凸レンズ33との距離が指示部91の指示通りに変位しているか否かを判断する判断部94と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された被加工物に対して透過性を有する波長のレーザービームを該被加工物の内部に集光点を位置づけて照射し加工を施すレーザービーム照射ユニットと、
該チャックテーブルと該レーザービームの集光点とを相対的に加工送りする加工送りユニットと、
各構成要素を制御する制御ユニットと、
を含むレーザー加工装置であって、
該レーザービーム照射ユニットは、
レーザー発振器と、
該レーザー発振器が発振したレーザービームを集光する集光器と、
を含み、
該集光器は、
凹レンズと、該凹レンズと所定の間隔をもって配設された凸レンズと、
該凹レンズに対する該凸レンズの距離を変更するアクチュエータと、
該凹レンズと該凸レンズとの距離を測定する距離測定ユニットと、
を有し、
該制御ユニットは、
該アクチュエータの変位量を指示する指示部と、
該距離測定ユニットによって測定された該凹レンズと該凸レンズとの距離が該指示部の指示通りに変位しているか否かを判断する判断部と、
を有することを特徴とする、レーザー加工装置。
【請求項2】
該制御ユニットは、
該指示部によって指示するアクチュエータの変位量を所定量ずつ変化させた際の、該指示部が指示した変位量に対応する該凹レンズと該凸レンズとの距離または変位量をデータとして記憶する記憶部を有することを特徴とする、
請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
該制御ユニットは、
所定のタイミングで新たに取得した該データと、既に該記憶部に記憶されている該データとを比較する比較部と、
該比較部で比較したデータが所定値以上の差を有している場合に警告を報知する報知部と、
を有することを特徴とする、
請求項2に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
該アクチュエータは、ピエゾ素子を含むことを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハのような被加工物を加工するために、被加工物に対して透過性を有する波長のレーザービームを被加工物の内部に集光点を位置付けて照射するレーザー加工装置が用いられる(特許文献1参照)。
【0003】
このようなレーザー加工装置を用いて被加工物に内部加工を施す際には、レーザー発振器から発振されたレーザービームを集光器で集光して被加工物に照射しているが、被加工物の内部で発生する球面収差によって、所望の加工が施せない場合がある。そこで、集光器に含まれるレンズ群のレンズ間距離をアクチュエータにより調整することで、球面収差を補正し、所望の加工を実現する技術が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-111143号公報
【特許文献2】特開2019-042749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レンズ間距離を調整するアクチュエータが輸送時または清掃時の衝撃や経年劣化等により故障した場合、加工結果に異常が発生する。しかしながら、加工結果に異常が発生する原因は様々な要因が考えられるため、アクチュエータ起因の異常なのか、その他の要素に起因する異常なのかの切り分け作業が必要である。また、加工結果の異常が発生してからでないと気付くことができず、加工不良を未然に防ぐことができないという課題があった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、アクチュエータ起因の加工異常を早期発見して加工不良を抑制すると共に、不良原因の切り分け作業による作業工数および装置のダウンタイムを削減することができるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のレーザー加工装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物に対して透過性を有する波長のレーザービームを該被加工物の内部に集光点を位置づけて照射し加工を施すレーザービーム照射ユニットと、該チャックテーブルと該レーザービームの集光点とを相対的に加工送りする加工送りユニットと、各構成要素を制御する制御ユニットと、を含むレーザー加工装置であって、該レーザービーム照射ユニットは、レーザー発振器と、該レーザー発振器が発振したレーザービームを集光する集光器と、を含み、該集光器は、凹レンズと、該凹レンズと所定の間隔をもって配設された凸レンズと、該凹レンズに対する該凸レンズの距離を変更するアクチュエータと、該凹レンズと該凸レンズとの距離を測定する距離測定ユニットと、を有し、該制御ユニットは、該アクチュエータの変位量を指示する指示部と、該距離測定ユニットによって測定された該凹レンズと該凸レンズとの距離が該指示部の指示通りに変位しているか否かを判断する判断部と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明のレーザー加工装置において、該制御ユニットは、該指示部によって指示するアクチュエータの変位量を所定量ずつ変化させた際の、該指示部が指示した変位量に対応する該凹レンズと該凸レンズとの距離または変位量をデータとして記憶する記憶部を有してもよい。
【0009】
また、本発明のレーザー加工装置において、該制御ユニットは、所定のタイミングで新たに取得したデータと、既に該記憶部に記憶されている該データとを比較する比較部と、該比較部で比較したデータが所定値以上の差を有している場合に警告を報知する報知部と、を有してもよい。
【0010】
また、本発明のレーザー加工装置において、該アクチュエータは、ピエゾ素子を含んでもよい。
【発明の効果】
【0011】
本願発明は、アクチュエータ起因の加工異常を早期発見して加工不良を抑制すると共に、不良原因の切り分け作業による作業工数および装置のダウンタイムを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係るレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示されたレーザー加工装置のレーザービーム照射ユニットの概略構成を説明する説明図である。
図3図3は、アクチュエータへの印加電圧と凸レンズの変位量との関係の一例を示す説明図である。
図4図4は、アクチュエータへの印加電圧と凸レンズの変位量との関係の別の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0014】
〔実施形態〕
まず、本発明の実施形態に係るレーザー加工装置1の構成について図面に基づいて説明する。図1は、実施形態に係るレーザー加工装置1の構成例を示す斜視図である。図2は、図1に示されたレーザー加工装置1のレーザービーム照射ユニット20の概略構成を模式的に示す模式図である。以下の説明において、X軸方向は、水平面における一方向である。Y軸方向は、水平面において、X軸方向に直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向に直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向に直交する方向である。実施形態のレーザー加工装置1は、加工送り方向がX軸方向であり、割り出し送り方向がY軸方向である。
【0015】
図1に示すように、レーザー加工装置1は、チャックテーブル10と、レーザービーム照射ユニット20と、加工送りユニット40と、割り出し送りユニット50と、集光点位置調整ユニット60と、撮像ユニット70と、表示ユニット80と、制御ユニット90と、を備える。実施形態に係るレーザー加工装置1は、チャックテーブル10に保持された被加工物100に対して、レーザービーム照射ユニット20によってレーザービーム21を照射することにより、被加工物100を加工する装置である。レーザー加工装置1による被加工物100の加工は、例えば、被加工物100に対して透過性を有する波長のレーザービーム21によって被加工物100の内部に剥離層を形成する剥離層形成加工等である。
【0016】
被加工物100は、実施形態において、シリコン(Si)、サファイア(Al)、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)、またはリチウムタンタレート(LiTa)等を基板とする円板状の半導体デバイスウェーハ、光デバイスウェーハ等のウェーハである。なお、被加工物100は実施形態に限定されず、本発明では円板状でなくともよい。被加工物100は、例えば、環状フレーム110が貼着されかつ被加工物100の外径よりも大径なテープ111が被加工物100の裏面に貼着されて、環状フレーム110の開口内に支持される。
【0017】
チャックテーブル10は、被加工物100を保持面11で保持する。保持面11は、ポーラスセラミック等から形成された円板形状である。保持面11は、実施形態において、水平方向と平行な平面である。保持面11は、例えば、真空吸引経路を介して真空吸引源と接続している。チャックテーブル10は、保持面11上に載置された被加工物100を吸引保持する。チャックテーブル10の周囲には、被加工物100を支持する環状フレーム110を挟持するクランプ部12が複数配置されている。
【0018】
チャックテーブル10は、回転ユニット13によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。回転ユニット13は、X軸方向移動プレート14に支持される。回転ユニット13およびチャックテーブル10は、X軸方向移動プレート14を介して、加工送りユニット40によりX軸方向に移動される。回転ユニット13およびチャックテーブル10は、X軸方向移動プレート14、加工送りユニット40およびY軸方向移動プレート15を介して、割り出し送りユニット50によりY軸方向に移動される。
【0019】
図2に示すように、レーザービーム照射ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物100に対してパルス状のレーザービーム21を照射するユニットである。なお、図2の矢印は、加工送り時のチャックテーブル10の移動方向を示す。レーザービーム照射ユニット20は、レーザー発振器22と、アッテネータ23と、ミラー24と、集光器30と、を含む。
【0020】
レーザー発振器22は、被加工物100を加工するための所定の波長を有するレーザービーム21を発振する。レーザービーム照射ユニット20が照射するレーザービーム21は、被加工物100に対して透過性または吸収性を有する波長である。
【0021】
アッテネータ23は、レーザー発振器22が発振したレーザービーム21の出力を調整する。アッテネータ23は、例えば、1/2波長板、ビームスプリッタ、およびビームダンパ等を備える。1/2波長板は、回動角度に応じてレーザー発振器22が発振したレーザービーム21の直線偏光方向を変化させる。ビームスプリッタは、1/2波長板を通過したレーザービーム21のうち、所定の直線偏光方向を有するレーザービーム21をビームダンパに向けて反射し、所定の直線偏光方向以外の直線偏光方向を有するレーザー光線をミラー24に向けて透過する。
【0022】
ミラー24は、レーザー発振器22と集光器30との間のレーザービーム21の光路上に設けられる。ミラー24は、レーザー発振器22が発振したレーザービーム21を反射して、レーザー発振器22から集光器30へと導く。実施形態において、ミラー24は、アッテネータ23によって出力を調整されたレーザービーム21を、集光器30へ向けて反射する。
【0023】
集光器30は、レーザー発振器22から発振されたレーザービーム21を、チャックテーブル10の保持面11に保持された被加工物100に集光して、被加工物100に照射させる。集光器30は、実施形態において、ミラー24に導かれたレーザービーム21を、被加工物100に集光する。集光器30は、凹レンズ31と、集光点位置調整手段32と、凸レンズ33と、アクチュエータ34と、距離測定ユニット35と、を含む。
【0024】
凹レンズ31は、レーザー発振器22から発振されたレーザービーム21の光路上に設けられる。凹レンズ31は、集光器30において、凸レンズ33より前段に設けられる。凹レンズ31は、凹レンズ支持部311に支持される。凹レンズ支持部311は、集光点位置調整手段32によってZ軸方向に移動自在に支持される。
【0025】
集光点位置調整手段32は、凹レンズ31の凹レンズ支持部311を、Z軸方向に移動自在に支持する。集光点位置調整手段32は、周知のナット321と、周知のボールねじ322と、周知のパルスモータ323と、を含む。ナット321は、凹レンズ31の凹レンズ支持部311に固定される。ボールねじ322は、Z軸方向に平行な軸心回りに回転自在に設けられる。パルスモータ323は、ボールねじ322を軸心回りに回転させる。ナット321は、ボールねじ322が軸心回りに回転することによって、Z軸方向に移動する。すなわち、ナット321に固定された凹レンズ支持部311に支持される凹レンズ31は、パルスモータ323がボールねじ322を軸心回りに回転させることによって、Z軸方向に移動する。
【0026】
凸レンズ33は、レーザー発振器22から発振されたレーザービーム21の光路上に設けられる。凸レンズ33は、集光器30において、凹レンズ31と所定の間隔をもって、凹レンズ31より後段に設けられる。凸レンズ33は、凸レンズ支持部331に支持される。凸レンズ支持部331は、凹レンズ支持部311の下方に配置される。凸レンズ33は、アクチュエータ34を介して凹レンズ31に支持される。
【0027】
凸レンズ33は、第一の凸レンズ332と、第二の凸レンズ333と、第三の凸レンズ334と、を含む。第一の凸レンズ332、第二の凸レンズ333、および第三の凸レンズ334は、互いにZ軸方向に間隔をおいて配置される。第一の凸レンズ332、第二の凸レンズ333、および第三の凸レンズ334は、凸レンズ支持部331に支持される。
【0028】
アクチュエータ34は、凹レンズ31に対する凸レンズ33の距離を変更する。アクチュエータ34は、凹レンズ支持部311の下端と凸レンズ支持部331の上端との間に設けられる。アクチュエータ34は、例えば実施形態において、ピエゾ素子と、拡大機構と、を含む。
【0029】
ピエゾ素子は、電源を有する制御ユニット90に接続される。ピエゾ素子は、制御ユニット90から印加される電圧の大きさに対応して伸縮する。ピエゾ素子の変位量は、例えば、0μm以上500μm以下である。
【0030】
拡大機構は、例えば、上端が凹レンズ支持部311の下端に接続し、下端が凸レンズ支持部331の上端に接続する。拡大機構は、ピエゾ素子の伸縮の変位量を拡大して、凹レンズ支持部311に対する凸レンズ支持部331の変位量に変換する。拡大機構は、例えば、数μmのピエゾ素子の動きを、数100μmの動きに変換する。
【0031】
すなわち、アクチュエータ34は、ピエゾ素子に電圧が印加されることにより、電圧の大きさに応じて、凹レンズ31に対する凸レンズ33の距離を変更する。アクチュエータ34は、実施形態のピエゾアクチュエータに限定されず、ボイスコイルアクチュエータであってもよい。
【0032】
距離測定ユニット35は、凹レンズ31と凸レンズ33との距離を測定する。距離測定ユニット35は、実施形態では静電容量センサを含むが、本発明では凹レンズ31と凸レンズ33との距離の変位を検出できるものであればよく、例えば、歪みゲージを含んでもよい。距離測定ユニット35は、実施形態において、凸レンズ支持部331の上端面に固定される。距離測定ユニット35は、凹レンズ支持部311の下端面までの距離351を測定する。距離測定ユニット35は、測定した距離351のデータを、制御ユニット90へ出力する。
【0033】
なお、実施形態において、距離測定ユニット35の静電容量センサ自体が測定する距離351は、凹レンズ支持部311の下端面と距離測定ユニット35(静電容量センサ)の電極の端面との距離である。したがって、例えば、凹レンズ支持部311の下端面から凹レンズ31までの予め測定した距離と、距離測定ユニット35の電極の端面から凸レンズ33までの予め測定した距離とを調整値として、距離測定ユニット35が測定した距離351に加算することによって、凹レンズ31と凸レンズ33との実際の距離に変換することができる。
【0034】
図1に示すように、加工送りユニット40は、チャックテーブル10と、レーザービーム照射ユニット20とを加工送り方向であるX軸方向に相対的に移動させるユニットである。加工送りユニット40は、実施形態において、チャックテーブル10をX軸方向に移動させる。加工送りユニット40は、実施形態において、レーザー加工装置1の装置本体2上に設置されている。
【0035】
加工送りユニット40は、X軸方向移動プレート14をX軸方向に移動自在に支持する。加工送りユニット40は、周知のボールねじ41と、周知のパルスモータ42と、周知のガイドレール43と、を含む。ボールねじ41は、軸心回りに回転自在に設けられる。パルスモータ42は、ボールねじ41を軸心回りに回転させる。ガイドレール43は、X軸方向移動プレート14をX軸方向に移動自在に支持する。ガイドレール43は、Y軸方向移動プレート15に固定して設けられる。
【0036】
割り出し送りユニット50は、チャックテーブル10と、レーザービーム照射ユニット20とを割り出し送り方向であるY軸方向に相対的に移動させるユニットである。割り出し送りユニット50は、実施形態において、チャックテーブル10をY軸方向に移動させる。割り出し送りユニット50は、実施形態において、レーザー加工装置1の装置本体2上に設置されている。
【0037】
割り出し送りユニット50は、Y軸方向移動プレート15をY軸方向に移動自在に支持する。割り出し送りユニット50は、周知のボールねじ51と、周知のパルスモータ52と、周知のガイドレール53と、を含む。ボールねじ51は、軸心回りに回転自在に設けられる。パルスモータ52は、ボールねじ51を軸心回りに回転させる。ガイドレール53は、Y軸方向移動プレート15をY軸方向に移動自在に支持する。ガイドレール53は、装置本体2に固定して設けられる。
【0038】
集光点位置調整ユニット60は、集光器30(図2参照)によって集光されたレーザービーム21の集光点を、チャックテーブル10の保持面11に垂直な光軸方向に移動させるユニットである。より詳しくは、集光点位置調整ユニット60は、チャックテーブル10と、レーザービーム照射ユニット20とを集光点位置調整方向であるZ軸方向に相対的に移動させる。集光点位置調整ユニット60は、実施形態において、レーザービーム照射ユニット20のうち、少なくとも集光器30をZ軸方向に移動させる。集光点位置調整ユニット60は、実施形態において、レーザー加工装置1の装置本体2から立設した柱3に設置されている。
【0039】
集光点位置調整ユニット60は、レーザービーム照射ユニット20のうち、少なくとも集光器30をZ軸方向に移動自在に支持する。集光点位置調整ユニット60は、周知のボールねじ61と、周知のパルスモータ62と、周知のガイドレール63と、を含む。ボールねじ61は、軸心回りに回転自在に設けられる。パルスモータ62は、ボールねじ61を軸心回りに回転させる。ガイドレール63は、レーザービーム照射ユニット20をZ軸方向に移動自在に支持する。ガイドレール63は、柱3に固定して設けられる。なお、集光点位置調整ユニット60は、集光器30の凹レンズ31をZ軸方向に移動自在に支持する集光点位置調整手段32と同一のものでもよいし、レーザービーム照射ユニット20の他の光学部品(例えば、ミラー24)を集光器30とともにZ軸方向に移動自在に支持するものであってもよい。
【0040】
すなわち、加工送りユニット40、割り出し送りユニット50、および集光点位置調整ユニット60は、チャックテーブル10に保持された被加工物100とレーザービーム21の集光点とを相対的に移動させる移動ユニットである。
【0041】
撮像ユニット70は、チャックテーブル10に保持された被加工物100を撮像する。撮像ユニット70は、チャックテーブル10に保持された被加工物100を撮像するCCD(Charge Coupled Device)カメラまたは赤外線カメラを含む。撮像ユニット70は、例えば、レーザービーム照射ユニット20の集光器30(図2参照)に隣接するように固定されている。撮像ユニット70は、被加工物100を撮像して、被加工物100とレーザービーム照射ユニット20との位置合わせを行うアライメントを遂行するための画像を得て、得た画像を制御ユニット90に出力する。
【0042】
表示ユニット80は、液晶表示装置等により構成される表示部である。表示ユニット80は、例えば、加工条件の設定画面、撮像ユニット70が撮像した被加工物100の状態、加工動作の状態等を、表示面に表示させる。表示ユニット80の表示面がタッチパネルを含む場合、表示ユニット80は、入力部を含んでもよい。入力部は、オペレータが加工内容情報を登録する等の各種操作を受付可能である。入力部は、キーボード等の外部入力装置であってもよい。表示ユニット80は、表示面に表示される情報や画像が入力部等からの操作により切り換えられる。表示ユニット80は、報知装置を含んでもよい。報知装置は、音および光の少なくとも一方を発してレーザー加工装置1のオペレータに予め定められた報知情報を報知する。報知装置は、スピーカーまたは発光装置等の外部報知装置であってもよい。
【0043】
制御ユニット90は、レーザー加工装置1の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物100に対する加工動作をレーザー加工装置1に実行させる。制御ユニット90は、レーザービーム照射ユニット20、加工送りユニット40、割り出し送りユニット50、集光点位置調整ユニット60、撮像ユニット70、および表示ユニット80を制御する。制御ユニット90は、演算手段としての演算処理装置と、記憶手段としての記憶装置と、通信手段としての入出力インターフェース装置と、を含むコンピュータである。演算処理装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のマイクロプロセッサを含む。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)等のメモリを有する。演算処理装置は、記憶装置に格納された所定のプログラムに基づいて各種の演算を行う。演算処理装置は、演算結果に従って、入出力インターフェース装置を介して各種制御信号を上述した各構成要素に出力し、レーザー加工装置1の制御を行う。
【0044】
制御ユニット90は、例えば、撮像ユニット70に被加工物100を撮像させる。制御ユニット90は、例えば、撮像ユニット70によって撮像した画像の画像処理を行う。制御ユニット90は、例えば、画像処理によって被加工物100の加工ラインを検出する。制御ユニット90は、例えば、レーザービーム21の集光点である加工点が加工ラインに沿って移動するように加工送りユニット40を駆動させると共に、レーザービーム照射ユニット20にレーザービーム21を照射させる。制御ユニット90は、距離測定ユニット35による測定結果を取得する。図2に示すように、制御ユニット90は、指示部91と、記憶部92と、比較部93と、判断部94と、報知部95と、を有する。
【0045】
指示部91は、集光器30のアクチュエータ34の変位量を指示する。指示部91は、実施形態において、アクチュエータ34を変位させる変位量に対応して、ピエゾ素子に所定の大きさの電圧を印加する。
【0046】
記憶部92は、指示部91によって指示するアクチュエータ34の変位量を所定量ずつ変化させた際の、指示部91が指示した変位量に対応する凹レンズ31と凸レンズ33との距離を、データとして記憶する。記憶部92は、指示部91が指示した変位量の代わりに、アクチュエータ34への印加電圧を、データとして記憶してもよい。また、記憶部92は、凹レンズ31と凸レンズ33との距離の代わりに、凹レンズ31と凸レンズ33との距離の変位量を、データとして記憶してもよい(例えば、図3および図4のデータ921、922-1、922-2)。記憶部92は、指示部91が指示したアクチュエータ34の変位量と、距離測定ユニット35によって測定された凹レンズ31と凸レンズ33との距離の変位量との関係を、データとして記憶する。
【0047】
比較部93は、所定のタイミングで新たに取得したデータ(例えば、図3のデータ922-1、および図4のデータ922-2)と、既に記憶部92に記憶されているデータ(例えば、図3および図4のデータ921)とを比較する。アクチュエータ34に不具合がある場合、凹レンズ31と凸レンズ33との距離が、指示部91の指示通りに変位していない可能性がある。すなわち、既に記憶部92に記憶されているデータとは、アクチュエータ34が正常時である際に予め取得したデータである。所定のタイミングで新たに取得したデータとは、レーザー加工装置1の校正等の際に取得するデータである。
【0048】
判断部94は、比較部93による比較結果を取得する。判断部94は、距離測定ユニット35によって測定された凹レンズ31と凸レンズ33との距離が指示部91の指示通りに変位しているかどうかを判断する。すなわち、判断部94は、比較部93の比較結果に基づいて、所定のタイミングで新たに取得したデータと既に記憶部92に記憶されているデータとに所定値以上の差(例えば、図3の差931-1、および図4の差931-2)があるか否かを判断する。
【0049】
判断部94は、所定のタイミングで新たに取得したデータと既に記憶部92に記憶されているデータとに所定値以上の差がないと判断すると、距離測定ユニット35によって測定された凹レンズ31と凸レンズ33との距離が指示部91の指示通りに変位していると判断する。また、判断部94は、所定のタイミングで新たに取得したデータと既に記憶部92に記憶されているデータとに所定値以上の差があると判断すると、距離測定ユニット35によって測定された凹レンズ31と凸レンズ33との距離が指示部91の指示通りに変位していないと判断する。
【0050】
報知部95は、判断部94が比較部93で比較したデータが所定値以上の差を有していると判断した場合に警告を報知する。報知部95は、例えば、音および光の少なくともいずれかを発して、レーザー加工装置1のオペレータに予め設定された警告を報知する。報知部95は、表示ユニット80に含まれる報知装置または外部報知装置に警告を報知させてもよい。また、報知部95は、判断部94が比較部93で比較したデータが所定値以上の差を有していないと判断した場合に警告を報知することがない。
【0051】
図3は、アクチュエータ34への印加電圧と凸レンズ33の変位量との関係の一例を示す説明図である。図4は、アクチュエータ34への印加電圧と凸レンズ33の変位量との関係の別の一例を示す説明図である。図3および図4の横軸は、制御ユニット90の指示部91が指示したアクチュエータ34の変位量に基づくアクチュエータ34への印加電圧[V]を示す。図3および図4の縦軸は、凹レンズ31に対する凸レンズ33の距離の変位量[μm]を示す。
【0052】
図3および図4に示すデータ921は、指示部91によって指示するアクチュエータ34の変位量を所定量ずつ変化させた際の、指示部91が印加した印加電圧に対応する凹レンズ31に対する凸レンズ33の変位量について、既に記憶部92に記憶されているデータである。すなわち、データ921は、アクチュエータ34が正常である際のデータである。上述の通り、実施形態のアクチュエータ34は、ピエゾ素子を含む。ピエゾ素子に印加される印加電圧と変位量との関係は、比例関係を示す。したがって、データ921に示すように、アクチュエータ34が正常である場合、アクチュエータ34に印加される印加電圧と、アクチュエータ34によって変位する凸レンズ33の変位量との関係は、比例関係を示す。
【0053】
図3に示すデータ922-1は、指示部91によって指示するアクチュエータ34の変位量を所定量ずつ変化させた際の、指示部91が印加した印加電圧に対応する凹レンズ31に対する凸レンズ33の変位量について、所定のタイミングで新たに取得したデータである。図3に示すように、印加電圧が0V以上約4.2V以下の範囲において、新たに取得したデータ922-1は、既に記憶されているデータ921と一致して、比較部93で比較したデータ921、922-1が所定値以上の差を有していない。しかしながら、新たに取得したデータ922-1は、印加電圧が約4.2V以上の範囲において、変位量が増加しない。
【0054】
これに対し、既に記憶されているデータ921は、印加電圧が約4.2V以上の範囲においても、印加電圧が0V以上約4.2V以下の範囲と同様に、印加電圧と凸レンズ33の変位量との関係が比例関係を示す。すなわち、印加電圧が約4.2V以上の範囲において、新たに取得したデータ922-1と既に記憶されているデータ921とに所定値以上の差931-1が生じているため、アクチュエータ34は、印加電圧が約4.2V以上の範囲で正常に動作していないことを示す。
【0055】
図4に示すデータ922-2は、指示部91によって指示するアクチュエータ34の変位量を所定量ずつ変化させた際の、指示部91が印加した印加電圧に対応する凹レンズ31に対する凸レンズ33の変位量について、所定のタイミングで新たに取得したデータである。図4に示すように、新たに取得したデータ922-2は、印加電圧が0V以上約3V以下の範囲において、変位量が増加せず、印加電圧が約3V以上の範囲において変位量が増加する。
【0056】
これに対し、既に記憶されているデータ921は、印加電圧が0V以上の範囲において、印加電圧と凸レンズ33の変位量との関係が比例関係を示す。すなわち、印加電圧が0V以上の範囲において、新たに取得したデータ922-2と既に記憶されているデータ921とに所定値以上の差931-2が生じているため、アクチュエータ34は、印加電圧が0V以上の範囲で正常に動作していないことを示す。
【0057】
以上説明したように、実施形態に係るレーザー加工装置1は、距離測定ユニット35によって測定された凹レンズ31と凸レンズ33との距離が、指示部91が指示した指示通りにアクチュエータ34が変位しているか否かを判断する。これにより、アクチュエータ34に指示した変位量と、凸レンズ33の実際の変位量とが一致している否かどうかを確認できるので、アクチュエータ34が正常に動作しているか、すなわち、アクチュエータ34が故障していないかを確認することができる。したがって、加工不良を未然に防ぐことが可能となるだけでなく、アクチュエータ34起因の加工異常を早期発見して加工不良を抑制すると共に、不良原因の切り分け作業による作業工数および装置のダウンタイムを削減することができる。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、凹レンズ31および凸レンズ33は、実施形態の構成に限定されない。本発明は、集光器30を複数の組みレンズで構成する場合であって、組みレンズの距離を調整する際にピアゾ素子等を含むアクチュエータ34を使用している場合に適用できる。
【0059】
また、レーザービーム照射ユニット20は、必ずしもアッテネータ23を含まなくてもよく、レーザー発振器22がレーザービーム21の出力を制御してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 レーザー加工装置
10 チャックテーブル
11 保持面
20 レーザービーム照射ユニット
21 レーザービーム
22 レーザー発振器
30 集光器
31 凹レンズ
33 凸レンズ
34 アクチュエータ
35 距離測定ユニット
351 距離
40 加工送りユニット
90 制御ユニット
91 指示部
92 記憶部
921、922-1、922-2 データ
93 比較部
931-1、931-2 差
94 判断部
95 報知部
100 被加工物
図1
図2
図3
図4