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特開2022-104427はつり用先端工具及びこれを用いた電動ハンマ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104427
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】はつり用先端工具及びこれを用いた電動ハンマ
(51)【国際特許分類】
   B25D 17/02 20060101AFI20220701BHJP
   B25D 11/04 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
B25D17/02
B25D11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219630
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】船倉 玖彬
【テーマコード(参考)】
2D058
【Fターム(参考)】
2D058AA11
2D058BA11
2D058CA03
2D058CB06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コンクリートのはつり作業における効率化と成果物の品質の安定性を保つことができるはつり用先端工具及びこれを用いた電動ハンマを提供する。
【解決手段】軸方向に延びるシャンク30と、前記シャンクの先端から前記軸方向に延びる刃補助軸20と、前記刃補助軸の先端から前記軸方向に延びる第1の刃11と第2の刃12とが直交して形成されたL字の断面形状を有し、前記L字の内側の先端にのみ刃が付いた片刃の刃と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びるシャンクと、
前記シャンクの先端から前記軸方向に延びる刃補助軸と、
前記刃補助軸の先端から前記軸方向に延びる第1の刃と第2の刃とが直交して形成されたL字の断面形状を有し、前記L字の内側の先端にのみ刃が付いた片刃の刃と、を有するはつり用先端工具。
【請求項2】
前記刃補助軸は、前記L字の外側の面と連続して延びる面を有する請求項1に記載のはつり用先端工具。
【請求項3】
前記刃補助軸の根元は、長方形の断面を有する請求項2に記載のはつり用先端工具。
【請求項4】
前記刃補助軸の先端の前記刃の前記L字の角と対角線上にある角が削り取られている請求項1乃至3のいずれか一項に記載のはつり用先端工具。
【請求項5】
前記刃は、前記第1の刃の端辺に直交接続されるとともに前記第2の刃と対向して延びる第3の刃を更に有し、コ字状の断面形状を有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載のはつり用先端工具。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のはつり用先端工具と、
前記はつり用先端工具の前記シャンクの根元を支持し、
前記シャンクを振動させる電動ハンマ本体と、を有する電動ハンマ。
【請求項7】
前記はつり用先端工具の前記刃の長さは、前記シャンクの振動の振幅よりも長い請求項6に記載の電動ハンマ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はつり用先端工具及びこれを用いた電動ハンマに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリートをはつるための電動ハンマの先端工具の刃先形状は、先端が尖ったシャープな刃先形状か、平たい刃先形状が一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-147235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、窓枠等を形成するために行われる開口部のコーナー部分の直角形状へのはつり作業は、底面をはつる工程と側面をはつる工程の2工程が必要であり、労力を要していた。建築工事では繰り返しの作業が多く、作業の短縮化・効率化は必須である。また、コーナー部のはつり作業は、作業者により成果物の品質に差が出る可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、コンクリートのはつり作業における効率化と成果物の品質の安定性を保つことができるはつり用先端工具及びこれを用いた電動ハンマを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るはつり用先端工具は、軸方向に延びるシャンクと、
前記シャンクの先端から前記軸方向に延びる刃補助軸と、
前記刃補助軸の先端から前記軸方向に延びる第1の刃と第2の刃とが直交して形成されたL字の断面形状を有し、前記L字の内側の先端にのみ刃が付いた片刃の刃と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、1工程でコーナーのはつり作業を行うことができ、作業効率化と成果物の品質の安定性を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係るはつり用先端工具の一例を示した斜視図である。
図2】第1の実施形態に係るはつり用先端工具の一例の正面図である。
図3】第1の実施形態に係るはつり用先端工具の一例を示した側面図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係るはつり用先端工具の一例を示した斜視図である。
図5】第2の実施形態に係るはつり用先端工具150の一例の側面図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係るはつり用先端工具の一例を示した斜視図である。
図7】第3の実施形態に係るはつり用先端工具の一例を示した正面図である。
図8】本発明の第4の実施形態に係る電動ハンマの一例を示した斜視図である。
図9】はつり加工の対象となる窓枠の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0010】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るはつり用先端工具の一例を示した斜視図である。図1に示されるように、本実施形態に係るはつり用先端工具50は、刃10と、刃補助軸20と、シャンク30とを有する。刃10が最も先端にあり、刃10の根元を支持するように刃10と連続して刃補助軸20が設けられ、刃補助軸20の根元を支持するようにシャンク30が設けられている。
【0011】
刃10は、コンクリートをはつる(砕く)部分であり、はつり用先端工具の先端に設けられる。刃10は、シャンク30の軸方向に延びるとともに、L字型の断面形状を有する。刃10は、底面刃11と側面刃12とを有し、底面刃11と側面刃12が直交してL字を形成している。即ち、板状の底面刃11と板状の側面刃12がそれぞれ軸方向に沿って延び、端辺で接続された形状となっている。
【0012】
底面刃11と側面刃12とで直角な角を形成することにより、窓枠等の直角な角を有する開口をコンクリートに形成する場合には、1工程で加工を済ますことができ、生産性及び加工品質を高めることが可能となる。即ち、従来は、平板状の刃しか存在しなかったため、開口の底面を加工してから側面を加工する、又は側面を加工してから底面を加工する、といったように、2工程ではつり作業を行う必要があったが、本実施形態に係るはつり用先端工具50によれば、1回のはつり作業でコーナーを形成することができる。
【0013】
底面刃11及び側面刃12は、先端に片刃11a及び片刃12aをそれぞれ有する。片刃11a及び片刃12aは、L字の内側に設けられており、底面刃11及び側面刃12の内面と外面との間で、外側に広がる傾斜面を構成している。一方、底面刃11及び側面刃12の外側は、傾斜面はなく全て平坦面をなす。
【0014】
刃補助軸20は、その先端が刃10の根元に接続され、刃10を支持する役割を果たす。すなわち、刃10のL字形状の長さがあまりに長いと、強度が弱くなってしまうので、板状ではなく、直方体の刃補助軸20で刃10を支持して全体の強度を高めている。
【0015】
刃補助軸20は、刃10がコンクリートをはつりながら進んだときに、そのままスムーズに進行できるように、刃10の外形に沿わせた形状とすることが好ましい。これにより、刃補助軸20がガイド機能を果たすことができる。よって、図1に示されるように、刃補助軸20の正面21は、底面刃11と側面刃12を22辺とする長方形、より正確には正方形の断面形状を有している。なお、刃補助軸20は、底面刃11の外面と連続する底面22及び側面刃12の外面と連続する側面23は、底面刃11及び側面刃12の外面と連続する平坦面である必要があるが、他の2面(上面24及び側面25)は必ずしも平坦面である必要はなく、任意の形状の面とすることができる。しかしながら、加工の容易性を考慮すると、底面刃11と側面刃12を2辺とする長方形又は正方形に正面21の形状を加工し、全体として直方体又は直方体に近似した形状とすることが好ましい。
【0016】
シャンク30は、はつり先端工具50の軸をなすとともに、その先端が刃補助軸20の根元に接続され、刃補助軸20を支持する。よって、シャンク30の中心と、刃補助軸20の重心は一致するように接続される。
【0017】
シャンク30は、たとえば、六角形部分31を有する六角シャンクとして構成される。回転動作を伴わない一般的な電動ハンマ本体は、スリップが起きにくい六角シャンク17mmが取り付け可能な仕様が多いため、本実施形態に係るはつり用先端工具50も、それに合わせて17mmの六角シャンクを採用することが好ましい。そのため、本実施形態に係るはつり用先端工具50では、一般的な電動ハンマに着脱可能で規格化された六角シャンクに構成した例を挙げている。しかしながら、シャンク形状は、この形態に限定される訳ではなく、用途に応じて種々のシャンク形状としてよい。
【0018】
はつり用先端工具50は、摩耗に強い材料であれば、種々の材料を用いることができる。例えば、はつり用先端工具50をクロムモリブデンにより構成してもよい。
【0019】
図2は、第1の実施形態に係るはつり用先端工具の一例の正面図である。図2に示されるように、底面刃11と側面刃12でL字形状を構成し、L字の内側に片刃11a、12aが形成されている。底面刃11の幅d1と側面刃12の幅d2は、必ずしも同じ幅を有する必要はないが、同じ幅を有し、刃補助軸20の正面21又は断面の形状は、正方形に構成されてもよい。
【0020】
底面刃11及び側面刃12の幅d1、d2は、用途に応じて種々の値とすることができるが、例えば、d1=d2=30mmに構成されてもよい。
【0021】
なお、底面刃11と側面刃12の互いの幅dを異ならせることも可能であるが、はつり工程のバランスを考慮すると、底面刃11と側面刃12の幅d1、d2は同一とすることが好ましい。
【0022】
図3は、第1の実施形態に係るはつり用先端工具50の一例を示した側面図である。刃10の長さL1と刃補助軸20の長さL2の合計Lは、加工対象となるコンクリートの厚さよりも長いことが好ましい。コンクリートの厚さよりも長さLが長ければ、刃10を加工箇所に接触させてからはつり用先端工具を前進させれば、コンクリートを貫通できるので、1回のはつり工程で窓枠のコーナーを加工できるからである。よって、刃10の軸方向の長さL1と、刃補助軸20の軸方向の長さL2の合計Lは、はつり対象となるコンクリートの外壁の厚さよりも長くすることが好ましい。
【0023】
刃10の長さL1は、電動ハンマ本体(図示せず)の振動の振幅よりも大きければ、任意の長さとすることができる。強度的には、刃10よりも刃補助軸20の方が強いので、刃10を可能な限り短く構成し、残りの部分を刃補助軸20とする構成であってもよい。
【0024】
このように、第1の実施形態に係るはつり用先端具50は、窓枠等のコーナーを1回のはつり工程で加工することができ、生産性及び加工品質を向上させることができる。
【0025】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るはつり用先端工具の一例を示した斜視図である。第2の実施形態に係るはつり用先端工具150は、刃補助軸120の構成のみが、第1の実施形態に係るはつり用先端工具50と異なっている。よって、刃補助軸120以外の構成要素には、第1の実施形態に係るはつり用先端工具50と同じ参照符号を付し、その説明を省略する。
【0026】
図4において、刃補助軸120の底面刃11及び側面刃12と連続していない上面122及び側面123は、角の部分が面取りされて削り取られた形状を有する。これは、刃10がコンクリートをはつり加工している際にコンクリートくずが発生するが、そのコンクリートくずを後方に流して正面121に溜まらないようにするためである。つまり、第1の実施形態に係るはつり用先端工具50の場合、刃10を前進させたときに発生したコンクリートくずが刃補助軸20の正面21で滞留し易くなる場合もあり得る。しかしながら、第2の実施形態に係るはつり用先端工具150においては、正面121が三角形となり、角が取れてコンクリートくずが後ろに流れやすい形状となっているので、コンクリートくずが後ろに流れやすくなる。これにより、加工対象がコンクリートくずに隠れにくくなり、加工がし易くなるとともに、刃10及び刃補助軸120がスムーズに前進できるので、生産性及び加工品質を更に向上させることができる。
【0027】
図5は、第2の実施形態に係るはつり用先端工具150の一例の側面図である。図5に示される通り、刃補助軸120の角が無くなって流線形の形状となっているため、刃10のはつり加工で発生したコンクリートくずが後方に流れやすい構成となっていることが分かる。
【0028】
このように、第2の実施形態に係るはつり用先端工具150によれば、はつり作業中のコンクリートくずの滞留を防ぎ、生産性及び加工品質を更に向上させることができる。
【0029】
なお、正面121、上面122及び側面123の角の削り方、その形状は問わず、三辺の角が取れ、コンクリートくずが後ろに流れやすい形状となっていればよい。
【0030】
図6は、本発明の第3の実施形態に係るはつり用先端工具の一例を示した斜視図である。第3の実施形態に係るはつり用先端工具250においては、刃110が、底面刃11及び側面刃12に加えて、第2の側面刃13を更に有する構成となっている点で、第1の実施形態に係るはつり用先端工具50と異なっている。よって、刃110以外の構成要素には、第1の実施形態に係るはつり用先端工具50と同じ参照符号を付し、その説明を省略する。また、底面刃11及び側面刃12は、第1の実施形態における刃10と同一の構成要素であるから、同一の参照符号を付す。
【0031】
図6に示されるように、底面刃11及び側面刃12に加えて第2の側面刃13を追加し、刃110をコの字型の断面形状としてもよい。かかる構成により、窓枠等の開口の左右のコーナーについて、はつり用先端工具150を付け替えることなく、また、電動ハンマ本体を持ち変えることなくはつり作業を連続的に行うことができる。
【0032】
また、窓枠の上部を加工する場合には、六角シャンク30は180°回転させて付け替えることが可能であるから、はつり用先端工具250を上下反転して電動ハンマ本体に取り付ければ、窓枠の上側も容易にはつり作業を行うことができる。
【0033】
このように、第3の実施形態に係るはつり用先端工具250によれば、窓枠等のコーナーの加工の生産性を更に向上させることができる。
【0034】
図7は、第3の実施形態に係るはつり用先端工具の一例を示した正面図である。図7に示される通り、コの字の断面形状有して刃110が構成されている。第2の側面刃13も、当然に内側に片刃13aが設けられ、外側は平坦面を有する構成となっている。左下側のコーナーを加工するときには、底面刃11と側面刃12を用い、右下側のコーナーを加工するときには、底面刃11と第2の側面刃13をはつり加工に用いる。
【0035】
また、刃110を上下反転させて電動ハンマ本体に取り付ければ、窓枠の上側についても、左右のはつり加工を容易に行うことができる。
【0036】
図8は、本発明の第4の実施形態に係る電動ハンマの一例を示した斜視図である。図8に示されるように、電動ハンマ本体60にはつり用先端工具50を取り付けることにより、電動ハンマ70として構成することができる。
【0037】
なお、図8においては、第1の実施形態に係るはつり用先端工具50を取り付けているが、第2又は第3の実施形態に係るはつり用先端工具150、250も同様に電動ハンマ本体60に取り付け、電動ハンマ70を構成することが可能である。電動ハンマ本体60の振動は、軸方向に前後振動する振動である。
【0038】
図9は、はつり加工の対象となる窓枠の一例を示した図である。図9(a)は、加工対象となる窓枠80を示しており、図9(b)は、加工目標となる窓枠81を示している。
【0039】
図9(a)、(b)に示されるように、窓枠80を広げ、窓枠81にするためには、領域82のコンクリートをはつる必要がある。領域82の4辺については、通常のドリルではつり作業が可能であるが、4つのコーナーについては、角がしっかり出るように正確に加工する必要がある。
【0040】
そのような場合に、本実施形態に係る電動ハンマ70を用いることにより、1回のはつり作業で窓枠81のコーナーを形成することができる。
【0041】
なお、電動ハンマ70の使用方法は、以下の通りである。
(1) 電動ハンマ本体60に、はつり用先端工具のシャンク30を挿入する。
(2) 刃10をはつり予定のコンクリート構造物表側の基準点83にあてる。
(3) 電動ハンマ70の電源を入れ、目標方向に刃10を押し進める。
(4) 刃10の先端がコンクリート構造物の裏側に到達するまではつり作業を進める。
【0042】
このように、本実施形態に係るはつり用先端工具50、150、250及び電動ハンマ70を用いることにより、コーナー部のはつり作業の生産性及び品質を向上させることができる。
【0043】
即ち、従来、開口部のコーナー部分の直角形状へのはつり作業は、底面と側面の2工程の作業が必要であったが、本発明のはつり用先端工具は、1工程でコーナーのはつり作業を行うことが出来るため、作業効率化と成果物の品質の安定性を保つことができる。また、作業時間短縮し、はつり工程短縮となり、コスト低減が見込める。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0045】
10、110 刃
11 底面刃
12、13 側面刃
20、120 刃補助軸
30 シャンク
31 六角部
50、150、250 はつり用先端工具
60 電動ハンマ本体部
70 電動ハンマ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9