(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104460
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】潤滑油用添加剤組成物及び潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 155/02 20060101AFI20220701BHJP
C10M 145/14 20060101ALI20220701BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20220701BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20220701BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20220701BHJP
C10N 40/06 20060101ALN20220701BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20220701BHJP
C10N 40/12 20060101ALN20220701BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20220701BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20220701BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20220701BHJP
C10N 50/10 20060101ALN20220701BHJP
【FI】
C10M155/02
C10M145/14
C10N40:00 D
C10N40:02
C10N40:00 A
C10N40:04
C10N40:06
C10N40:08
C10N40:12
C10N40:25
C10N40:30
C10N30:06
C10N50:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219716
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将太
(72)【発明者】
【氏名】鎌野 秀樹
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA08A
4H104BB08A
4H104BB31A
4H104CB08C
4H104CJ15C
4H104DA02A
4H104LA03
4H104PA01
4H104PA02
4H104PA03
4H104PA04
4H104PA05
4H104PA07
4H104PA09
4H104PA20
4H104PA39
4H104PA41
4H104PA42
4H104PA44
4H104QA18
(57)【要約】
【課題】耐荷重添加剤として好適であり、耐摩耗性及び極圧性の双方に優れる潤滑油用添加剤組成物、並びに当該潤滑油用添加剤組成物を含有する潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】特定のアルキル(メタ)アクリレート(A)に由来する構成単位(a)と、特定の水酸基含有(メタ)アクリレート(B)に由来する構成単位(b)と、前記水酸基含有(メタ)アクリレート(B)のホウ酸エステル化物(C)に由来する構成単位(c)とを含み、前記構成単位(c)はホウ素原子に1以上の水酸基が結合した側鎖を有する、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を含有する、潤滑油用添加剤組成物とした。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(a-1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(A)に由来する構成単位(a)と、下記一般式(b-1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)に由来する構成単位(b)と、前記水酸基含有(メタ)アクリレート(B)のホウ酸エステル化物(C)に由来する構成単位(c)とを含み、前記構成単位(c)はホウ素原子に1以上の水酸基が結合した側鎖を有する、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を含有する、潤滑油用添加剤組成物。
【化1】
[上記一般式(a-1)中、R
a1は、水素原子又はメチル基である。R
a2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。]
【化2】
[上記一般式(b-1)中、R
b1は、水素原子又はメチル基である。R
b2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のR
b2は、同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)が、さらに下記要件(α)を満たす、請求項1に記載の潤滑油用添加剤組成物。
<要件(α)>
前記構成単位(a)と前記構成単位(b)との含有比率[(a)/(b)]が、モル比で、20/80~80/20である。
【請求項3】
前記ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)が、さらに下記要件(β)を満たす、請求項1又は2に記載の潤滑油用添加剤組成物。
<要件(β)>
前記ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)のホウ素含有量が、前記ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の全量基準で、0.10質量%~1.70質量%である。
【請求項4】
前記ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、質量平均分子量(Mw)が5,000~100,000である、請求項1~3のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項5】
耐荷重添加剤として用いられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物を、耐荷重添加剤として使用する、使用方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油基油と、を含有する、潤滑油組成物。
【請求項8】
下記一般式(a-1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(A)と、下記一般式(b-1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)とを重合させて、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)を製造する工程(S1)と、
前記ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)と無機ホウ酸系化合物(y)とを反応させて、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を製造する工程(S2)とを含む、潤滑油用添加剤組成物の製造方法。
【化3】
[上記一般式(a-1)中、R
a1は、水素原子又はメチル基である。R
a2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。]
【化4】
[上記一般式(b-1)中、R
b1は、水素原子又はメチル基である。R
b2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のR
b2は、同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項9】
前記工程(S1)において、前記アルキル(メタ)アクリレート(A)と前記水酸基含有(メタ)アクリレート(B)との配合比率[(A)/(B)]を、モル比で、20/80~80/20に調整する、請求項8に記載の潤滑油用添加剤組成物の製造方法。
【請求項10】
前記工程(S2)において、前記無機ホウ酸系化合物(y)のモル数と前記ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)中の水酸基のモル数との比率[(y)/(x)]を1/3以上3/3未満に調整する、請求項8又は9に記載の潤滑油用添加剤組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油用添加剤組成物及び当該潤滑油用添加剤組成物を含有する潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油には、潤滑油として必要な性質及び性能を付与したり、補足増強したりする目的で、各種潤滑油用添加剤が配合される。
代表的な潤滑油用添加剤の一つとして、潤滑油に耐摩耗性及び極圧性を付与する耐荷重添加剤が挙げられる。耐荷重添加剤としては、例えば、リン酸エステル類、亜リン酸エステル類、及びホスホン酸エステル類等のリン系化合物、チオリン酸エステル類等の硫黄-リン系化合物が汎用されている。
【0003】
しかしながら、リンや硫黄は、腐食性の高い元素である。そこで、近年では、リン系化合物や硫黄-リン系化合物に代わる耐荷重添加剤として、ポリマー系化合物に関する検討が各種進められつつある(特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-124266号公報
【特許文献2】特開平6-65588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、耐荷重添加剤としての検討が進められているポリマー系化合物は、耐摩耗性及び極圧性の両立が未だ不十分である。
【0006】
そこで、本発明は、耐荷重添加剤として好適であり、耐摩耗性及び極圧性の双方に優れる潤滑油用添加剤組成物、並びに当該潤滑油用添加剤組成物を含有する潤滑油組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、特定の構成単位及び特定の側鎖を有するホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記[1]~[4]に関する。
[1] 下記一般式(a-1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(A)に由来する構成単位(a)と、下記一般式(b-1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)に由来する構成単位(b)と、前記水酸基含有(メタ)アクリレート(B)のホウ酸エステル化物(C)に由来する構成単位(c)とを含み、前記構成単位(c)はホウ素原子に1以上の水酸基が結合した側鎖を有する、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を含有する、潤滑油用添加剤組成物。
【化1】
[上記一般式(a-1)中、R
a1は、水素原子又はメチル基である。R
a2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。]
【化2】
[上記一般式(b-1)中、R
b1は、水素原子又はメチル基である。R
b2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のR
b2は、同一であっても異なっていてもよい。]
[2] 上記[1]に記載の潤滑油用添加剤組成物を、耐荷重添加剤として使用する、使用方法。
[3] 上記[1]に記載の潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油基油と、を含有する、潤滑油組成物。
[4] 下記一般式(a-1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(A)と、下記一般式(b-1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)とを、無機ホウ酸系化合物(y)の存在下で重合させて、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を製造する工程(S)を含む、潤滑油用添加剤組成物の製造方法。
【化3】
[上記一般式(a-1)中、R
a1は、水素原子又はメチル基である。R
a2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。]
【化4】
[上記一般式(b-1)中、R
b1は、水素原子又はメチル基である。R
b2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のR
b2は、同一であっても異なっていてもよい。]
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐荷重添加剤として好適であり、耐摩耗性及び極圧性の双方に優れる潤滑油用添加剤組成物、並びに当該潤滑油用添加剤組成物を含有する潤滑油組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記載された数値範囲の上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、数値範囲として「A~B」及び「C~D」が記載されている場合、「A~D」及び「C~B」の数値範囲も、本発明の範囲に含まれる。
また、本明細書に記載された数値範囲「下限値~上限値」は、特に断りのない限り、下限値以上、上限値以下であることを意味する。
また、本明細書において、実施例の数値は、上限値又は下限値として用いられ得る数値である。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、他の類似の用語についても同様の意味である。
【0011】
[潤滑油用添加剤組成物の態様]
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、下記一般式(a-1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(A)に由来する構成単位(a)と、下記一般式(b-1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)に由来する構成単位(b)と、前記水酸基含有(メタ)アクリレート(B)のホウ酸エステル化物(C)に由来する構成単位(c)とを含み、前記構成単位(c)はホウ素原子に1以上の水酸基が結合した側鎖を有する、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を含有する。
【化5】
[上記一般式(a-1)中、R
a1は、水素原子又はメチル基である。R
a2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。]
【化6】
[上記一般式(b-1)中、R
b1は、水素原子又はメチル基である。R
b2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のR
b2は、同一であっても異なっていてもよい。]
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、上記一般式(a-1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(A)に由来する構成単位(a)と、上記一般式(b-1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)に由来する構成単位(b)と、上記水酸基含有(メタ)アクリレート(B)のホウ酸エステル化物(C)に由来する構成単位(c)を含むホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)が、耐摩耗性及び極圧性の双方に優れることを見出し、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を潤滑油用添加剤として(特に耐荷重添加剤として)好適に用いることができることを見出すに至った。
ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)が、耐摩耗性及び極圧性に優れる理由は、上記構成単位(a)を含むことによって油溶性が確保されること、上記構成単位(b)を含むことによって多点吸着型のポリマーとなっていること、上記構成単位(c)を含むことによってホウ素を含むとともにホウ素原子に1以上の水酸基が結合した側鎖を有することによるものと推察される。
なお、本発明者らの検討によると、上記構成単位(a)及び(b)からなる、ホウ素化されていないポリ(メタ)アクリレート系共重合体は、耐摩耗性及び極圧性の両立が困難であることが確認されている。また、ホウ素化されたポリ(メタ)アクリレート系共重合体であっても、ホウ素原子に1以上の水酸基が結合した側鎖を有していない場合には、耐摩耗性及び極圧性の両立が困難であることが確認されている。
【0013】
なお、以降の説明では、アルキル(メタ)アクリレート(A)、水酸基含有(メタ)アクリレート(B)、水酸基含有(メタ)アクリレート(B)のホウ酸エステル化物(C)を、それぞれ「モノマー(A)」、「モノマー(B)」、及び「モノマー(C)」ともいう。
【0014】
本実施形態において、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、モノマー(A)由来の構成単位(a)、モノマー(B)由来の構成単位(b)、及びモノマー(C)由来の構成単位(c)のみから構成されていてもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(a)、(b)、及び(c)以外の他の構成単位を含んでいてもよい。
本実施形態において、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)における、構成単位(a)、(b)、及び(c)の合計含有量は、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の全構成単位基準で、好ましくは70モル%~100モル%、より好ましくは80モル%~100モル%、更に好ましくは90モル%~100モル%である。
【0015】
以下、アルキル(メタ)アクリレート(A)、水酸基含有(メタ)アクリレート(B)、及び水酸基含有(メタ)アクリレート(B)のホウ酸エステル化物(C)について説明する。
【0016】
<アルキル(メタ)アクリレート(A)>
本実施形態において使用されるアルキル(メタ)アクリレート(A)は、下記一般式(a-1)で表される。
【化7】
【0017】
アルキル(メタ)アクリレート(A)に由来する構成単位(a)は、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)において、主に油溶性を発揮させる機能を担う。
なお、アルキル(メタ)アクリレート(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。したがって、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、アルキル(メタ)アクリレート(A)に由来する構成単位(a)を1種単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0018】
上記一般式(a-1)中、Ra1は、水素原子又はメチル基である。すなわち、アルキル(メタ)アクリレート(A)は、重合性官能基として、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する。
Ra1が水素原子及びメチル基以外の置換基であるモノマーは入手が困難であり、かつ当該モノマーは反応性が低いため、それらを重合することも困難である。
ここで、本実施形態では、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の分子量を調整しやすくする観点から、Ra1は、水素原子であることが好ましい。すなわち、アルキル(メタ)アクリレート(A)は、重合性官能基として、アクリロイル基を有することが好ましい。
【0019】
上記一般式(a-1)中、Ra2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。
当該アルキル基の炭素数が8未満である場合、当該アルキル基の炭素数が20超である場合、いずれもホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の油溶性を確保し難くなる。
【0020】
Ra2として選択し得る、炭素数8~20のアルキル基としては、例えば、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、及びイコシル基が挙げられる。これらは、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0021】
ここで、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の油溶性をより確保しやすくする観点から、当該アルキル基の炭素数は、好ましくは10~18、より好ましくは10~16、更に好ましくは10~14である。
【0022】
<水酸基含有(メタ)アクリレート(B)>
本実施形態において使用される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)は、下記一般式(b-1)で表される。
【化8】
【0023】
水酸基含有(メタ)アクリレート(B)に由来する構成単位(b)は、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を多点吸着型のポリマーにする機能を担っており、耐摩耗性及び極圧性の向上に資すると推察される。
なお、水酸基含有(メタ)アクリレート(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。したがって、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、水酸基含有(メタ)アクリレート(B)に由来する構成単位(b)を1種単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0024】
上記一般式(b-1)中、Rb1は、水素原子又はメチル基である。すなわち、水酸基含有(メタ)アクリレート(B)は、重合性官能基として、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する。
Rb1が水素原子及びメチル基以外の置換基であるモノマーは入手が困難であり、かつ当該モノマーは反応性が低いため、それらを重合することも困難である。
ここで、本実施形態では、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の分子量を調整しやすくする観点から、Rb1は、水素原子であることが好ましい。すなわち、水酸基含有(メタ)アクリレート(B)は、重合性官能基として、アクリロイル基を有することが好ましい。
【0025】
上記一般式(b-1)中、Rb2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。
当該アルキレン基の炭素数が1である場合、極性が高くなり油溶性が低下する。
また、当該アルキレン基の炭素数が5以上である場合、油溶性が向上し過ぎて金属への吸着性が低下する。
ここで、適切な油溶性と金属への適切な吸着性を確保しやすくする観点から、当該アルキレン基の炭素数は、好ましくは2~3、より好ましくは2である。
【0026】
m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のRb2は、同一であっても異なっていてもよい。また、-(ORb2)m1で表される部分同士の結合態様は、ランダム結合でもブロック結合であってもよいが、重合のしやすさの観点からは、ランダム結合であることが好ましい。
m1が0である場合、水酸基含有(メタ)アクリレート(B)がカルボン酸となるため油溶性が低下する。
また、m1が11以上の整数である場合、-(ORb2)-部分の影響で極性が高くなり、油溶性が低下する。
ここで、適切な油溶性を確保しやすくする観点から、m1は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、更に好ましくは1~2、より更に好ましくは1である。
【0027】
<水酸基含有(メタ)アクリレート(B)のホウ酸エステル化物(C)>
本実施形態において使用される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)のホウ酸エステル化物(C)は、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート(B)と無機ホウ酸系化合物(y)とを反応させて合成することができる。なお、水酸基含有(メタ)アクリレート(B)のホウ酸エステル化物(C)に由来する構成単位(c)は、上記構成単位(a)及び(b)を含むポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)と無機ホウ酸系化合物(y)とを反応させて、上記構成単位(b)の一部をホウ素化することで生成することもできる。
【0028】
無機ホウ酸系化合物(y)としては、例えば、下記一般式(y-1)で表される化合物が挙げられる。
(Ry1O)n-B-(OH)3-n (y-1)
[上記一般式(y-1)中、Ry1は炭素数1又は2のアルキル基である。nは0又は1である。]
無機ホウ酸系化合物(y)の具体例としては、例えば、オルトホウ酸、ホウ酸モノメチル、ホウ酸モノエチル等が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、オルトホウ酸が好ましい。
なお、n=2である場合、水酸基含有(メタ)アクリレート(B)のホウ酸エステル化物(C)中に、ホウ素原子に1以上の水酸基が結合した側鎖が形成されなくなる。換言すれば、構成単位(c)中に、ホウ素原子に1以上の水酸基が結合した側鎖が形成されなくなる。そのため、耐摩耗性及び極圧性に優れる潤滑油用添加剤組成物とすることができなくなる。
【0029】
<要件(α)>
本実施形態のホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点及び基油への溶解性の観点から、要件(α)を満たすことが好ましい。すなわち、上記構成単位(a)と上記構成単位(b)との含有比率[(a)/(b)]が、モル比で、20/80~80/20であることが好ましい。
また、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の基油への溶解性を更に良好なものとする観点から、[(a)/(b)]は、より好ましくは40/60以上、更に好ましくは50/50以上である。
さらに、本発明の効果を更に発揮させやすくする観点から、[(a)/(b)]は、より好ましくいは75/25以下、更に好ましくは70/30以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、より好ましくは40/60~75/25、更に好ましくは50/50~70/30である。
【0030】
<要件(β)>
本実施形態のホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点及び基油への溶解性の観点から、要件(β)を満たすことが好ましい。すなわち、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)のホウ素含有量が、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の全量基準で、0.10質量%~1.70質量%であることが好ましい
また、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の基油への溶解性を更に良好なものとする観点から、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)中のホウ素量は、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の全量基準で、より好ましくは1.60質量%以下、更に好ましくは1.40質量%以下、より更に好ましくは1.20質量%以下である。
さらに、本発明の効果を更に発揮させやすくする観点から、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)のホウ素含有量は、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の全量基準で、より好ましくは0.20質量%以上、更に好ましくは0.60質量%以上、より更に好ましくは0.80質量%以上である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、より好ましくは0.20質量%~1.60質量%、更に好ましくは0.60質量%~1.40質量%、より更に好ましくは0.80質量%~1.20質量%である。
ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)のホウ素含有量は、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を有機溶剤(例えば、潤滑油基油)に所定量溶解した後、当該有機溶剤中のホウ素量をJIS-5S-38-03に準拠して測定した結果と、有機溶剤へのホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の溶解量とに基づいて算出することができる。
【0031】
<他のモノマー>
ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、上記構成単位(a)、(b)、及び(c)以外に、本発明の効果を阻害することのない範囲で、他のモノマー由来の構成単位を含有していてもよい。当該他のモノマーとしては、モノマー(A)、(B)、及び(C)以外の官能基含有モノマーが挙げられる。当該他の官能基含有モノマーとしては、例えば、モノマー(A)、(B)、及び(C)以外の官能基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
但し、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、上記構成単位(a)、(b)、及び(c)の合計含有量が、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の全構成単位基準で、好ましくは50質量%超~100質量%、より好ましくは60質量%~100質量%、更に好ましくは70質量%~100質量%、より更に好ましくは80質量%~100質量%、更になお好ましくは90質量%~100質量%である。
また、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、モノマー(A)、(B)、及び(C)以外の官能基含有モノマーに由来する構成単位の含有量が、全構成単位基準で、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%未満、更に好ましくは30質量%未満、より更に好ましくは20質量%未満、更になお好ましくは10質量%未満である。
【0032】
<ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の物性等>
(質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn))
本実施形態のホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の質量平均分子量(Mw)は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点及び基油への溶解性の観点から、好ましくは5,000~100,000、より好ましくは5,000~50,000、更に好ましくは5,000~30,000である。
また、本実施形態のホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の分子量分布(Mw/Mn)は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.7以下、更に好ましくは2.4以下である。なお、本実施形態のポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.01以上であってもよく、1.3以上であってもよく、1.4以上であってもよい。
質量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、後述する実施例に記載の方法にて測定又は算出される値である。
【0033】
(重合態様)
本実施形態のホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の重合態様は特に限定されず、ブロック共重合、ランダム共重合、ブロック/ランダム共重合のいずれであってもよい。これらの中でも、重合反応の容易さの観点から、ランダム共重合であることが好ましい。
【0034】
[潤滑油用添加剤組成物の製造方法]
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物の製造方法は、特に制限されないが、例えば、下記一般式(a-1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(A)と、下記一般式(b-1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)とを、無機ホウ酸系化合物(y)の存在下で重合させて、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を製造する工程(S)を含む製造方法とすることが好ましい。
【化9】
[上記一般式(a-1)中、R
a1は、水素原子又はメチル基である。R
a2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。]
【化10】
[上記一般式(b-1)中、R
b1は、水素原子又はメチル基である。R
b2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のR
b2は、同一であっても異なっていてもよい。]
【0035】
以下、工程(S1)及び工程(S2)について、詳細に説明する。
【0036】
<工程(S1)>
工程(S1)では、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を製造するための原料となるポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)を製造する。
ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)の製造方法(重合方法)は、特に限定されず、公知の方法のいずれかを適用して製造される。このような方法としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法等が挙げられるが、簡便性の観点から、溶液重合法を採用することが好ましい。
【0037】
(溶液重合法)
溶液重合法は、例えば、モノマー(A)及び(B)、並びに溶媒及び開始剤を反応器に仕込み、反応器内を窒素置換した後、60℃~100℃で、2時間~10時間、撹拌して反応させることにより行われる。反応器には、モノマー(A)及び(B)以外の他のモノマーも任意に仕込まれる。
【0038】
溶液重合法において使用される溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メトキシブタノール、エトキシブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;鉱油;ポリ-α-オレフィン、エチレン-α-オレフィン共重合体、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリフェニルエーテル、アルキル置換ジフェニルエーテル、ポリオールエステル、二塩基酸エステル、ヒンダードエステル、モノエステル、GTL基油等の合成油が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
溶液重合法において使用される開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス-(N,N-ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、1,1’-アゾビス(シクロヘキシル-1-カルボニトリル)等のアゾ系開始剤;過酸化水素;過酸化ベンゾイル、t-ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、過安息香酸等の有機過酸化物;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素-Fe2+のレドックス開始剤;その他既存のラジカル開始剤が挙げられる。
【0040】
なお、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)の分子量(ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の分子量)は、公知の方法で制御される。例えば、反応温度、反応時間、開始剤の量、各モノマーの仕込み量、溶媒の種類、連鎖移動剤の使用等により、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)の分子量(ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の分子量)の分子量を制御することができる。
【0041】
(工程(S1)における好適態様)
工程(S1)において、上記要件(α)を満たすポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)(ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X))を製造する観点から、アルキル(メタ)アクリレート(A)と水酸基含有(メタ)アクリレート(B)との配合比率[(A)/(B)]を、モル比で、20/80~80/20に調整することが好ましい。
また、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)(ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X))の基油への溶解性を更に良好なものとする観点から、[(A)/(B)]は、より好ましくは40/60以上、更に好ましくは50/50以上である。
さらに、本発明の効果を更に発揮させやすくする観点から、[(A)/(B)]は、より好ましくいは75/25以下、更に好ましくは70/30以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、より好ましくは40/60~75/25、更に好ましくは50/50~70/30である。
【0042】
<工程(S2)>
工程(S2)では、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)と無機ホウ酸系化合物(y)とを反応させて、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を製造する。
無機ホウ酸系化合物(y)は、上記したものと同様のものを用いることができ、好ましくはオルトホウ酸である。
ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)と無機ホウ酸系化合物(y)との反応は、例えば、溶媒中で反応温度100℃~150℃で進行させることができる。反応時間は、例えば3時間~10時間である。溶媒は、上記工程(S1)で挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0043】
(工程(S2)における好適態様)
工程(S2)において、上記要件(β)を満たすホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を製造する観点から、前記ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)中の水酸基のモル数と無機ホウ酸系化合物(y)のモル数との比率[(y)/(x)]を、1/3以上3/3未満に調整することが好ましい。
また、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の基油への溶解性の観点から、[(y)/(x)]は、好ましくは2.9/3以下、より好ましくは2.7/3以下、更に好ましくは2.5/3以下である。
さらに、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、[(y)/(x)]は、好ましくは1.5/3以上、より好ましくは1.7/3以上、更に好ましくは2.0/3以上である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、より好ましくは1.5/3~2.9/3、更に好ましくは1.7/3~2.7/3、より更に好ましくは2.0/3~2.5/3である。
【0044】
<潤滑油用添加剤組成物中のホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の含有量>
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、潤滑油基油に添加した際に本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の含有量が、潤滑油用添加剤組成物の全量基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、更になお好ましくは90質量%以上、一層好ましくは95質量%以上である。ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の純度を考慮すると、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の含有量は、潤滑油用添加剤組成物の全量基準で、通常99質量%未満である。
なお、本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、潤滑油基油との溶解性や取扱性の観点から、希釈溶剤により希釈されていてもよい。なお、潤滑油用添加剤組成物中のホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の含有量は、希釈溶剤を除いた、潤滑油用添加剤組成物中の有効成分の全量基準に対する含有量を意味する。
【0045】
<潤滑油用添加剤組成物の用途>
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、耐摩耗性及び極圧性の双方に優れる。したがって、耐荷重添加剤として有用である。
したがって、本実施形態では、当該潤滑油用添加剤組成物を、耐荷重添加剤として使用する使用方法が提供される。
【0046】
[潤滑油組成物]
本実施形態の潤滑油組成物は、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を含有する潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油基油とを含有する。
潤滑油用添加剤組成物の含有量は、潤滑油用添加剤組成物の添加効果を良好に発揮させる観点から、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.30質量%以上、より好ましくは0.40質量%以上、更に好ましくは0.50質量%以上、より更に好ましくは0.60質量%以上になるように調整される。また、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下、より更に好ましくは1.5質量%以下になるように調整される。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは0.30質量%~3.0質量%、より好ましくは0.40質量%~2.5質量%、更に好ましくは0.50質量%~2.0質量%、より更に好ましくは0.60質量%~1.5質量%である。
また、潤滑油用添加剤組成物の含有量は、潤滑油用添加剤組成物の添加効果を良好に発揮させる観点から、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)由来のホウ素量が、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは20質量ppm~400質量ppm、より好ましくは30質量ppm~380質量ppm、更に好ましくは40質量ppm~350質量ppmである。
【0047】
<潤滑油基油>
潤滑油基油は、潤滑油組成物に用いられる一般的な基油を、特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、鉱油及び合成油からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
潤滑油基油の100℃における動粘度は1mm2/s~50mm2/sの範囲にあることが好ましく、2mm2/s~30mm2/sの範囲にあることがより好ましく、3mm2/s~20mm2/sの範囲にあることが更に好ましい。また、潤滑油基油の粘度指数は80以上であることが好ましく、90以上であることがより好ましく、100以上であることがより更に好ましい。
潤滑油基油の動粘度及び粘度指数はJIS K2283:2000に準じて測定又は算出される値である。
【0048】
潤滑油基油の具体例を以下に挙げる。
鉱油としては、例えば、パラフィン基原油、中間基原油、又はナフテン基原油を常圧蒸留及び/又は減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を常法に従って精製することによって得られる精製油;等が挙げられる。精製油を得るための精製方法としては、例えば、溶剤脱ろう処理、水素化異性化処理、水素化仕上げ処理、白土処理等が挙げられる。
合成油としては、例えば、炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、エーテル系油等が挙げられる。また、合成油としては、天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス,Gas To Liquids WAX)を異性化することで得られるGTL(Gas To Liquids)を用いてもよい。
【0049】
<他の添加剤>
本実施形態の潤滑油組成物は、上記潤滑油用添加剤組成物の効果を阻害しない範囲で、酸化防止剤、油性剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、防錆剤、金属不活性化剤、及び消泡剤等の他の添加剤を含有してもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本実施形態では、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を含有する潤滑油用添加剤組成物とともに、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を含有する潤滑油用添加剤組成物以外の他の添加剤として、酸化防止剤、油性剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、防錆剤、金属不活性化剤、及び消泡剤等から選択される1種以上の添加剤を含有する潤滑油組成物用の添加剤パッケージも提供される。
【0050】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、従来の潤滑油組成物に使用されているアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤等を使用することができる。これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、モノオクチルジフェニルアミン及びモノノニルジフェニルアミン等のモノアルキルジフェニルアミン系化合物;4,4’-ジブチルジフェニルアミン、4,4’-ジペンチルジフェニルアミン、4,4’-ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’-ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン、及び4,4’-ジノニルジフェニルアミン等のジアルキルジフェニルアミン系化合物;テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、及びテトラノニルジフェニルアミン等のポリアルキルジフェニルアミン系化合物;α-ナフチルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、ブチルフェニル-α-ナフチルアミン、ペンチルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘキシルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘプチルフェニル-α-ナフチルアミン、オクチルフェニル-α-ナフチルアミン、及びノニルフェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系化合物が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール及び2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール等のモノフェノール系化合物;4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)及び2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)等のビスフェノール系化合物が挙げられる
酸化防止剤の含有量は、潤滑油組成物の酸化安定性を保つのに必要な最低量を加えれば良い。具体的には、例えば、潤滑油組成物の全量基準で、0.01~1質量%が好ましい。
【0051】
(油性剤)
油性剤としては、脂肪族アルコール;脂肪酸及び脂肪酸金属塩等の脂肪酸化合物;ポリオールエステル、ソルビタンエステル、及びグリセライド等のエステル化合物;脂肪族アミン等のアミン化合物等を挙げることができる。
油性剤の含有量は、添加効果の点から、潤滑油組成物の全量基準で、通常0.1~20質量%であり、好ましくは0.5~10質量%である。
【0052】
(清浄分散剤)
清浄分散剤としては、金属スルホネート、金属サリチレート、金属フェネート、及びコハク酸イミド等が挙げられる。
清浄分散剤の含有量は、添加効果の点から、潤滑油組成物の全量基準で、通常0.01~10質量%であり、好ましくは0.1~5質量%である。
【0053】
(粘度指数向上剤)
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン-プロピレン共重合体等)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン-ジエン水素化共重合体等)等が挙げられる。
粘度指数向上剤の含有量は、好ましくは、潤滑油組成物の全量基準で、0.3~5質量%である。
【0054】
(防錆剤)
防錆剤としては、金属系スルホネート、コハク酸エステル、並びにアルキルアミン及びモノイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン等を挙げることができる。
防錆剤の含有量は、添加効果の点から、潤滑油組成物の全量基準で、通常0.01~5質量%であり、好ましくは0.03~3質量%である。
【0055】
(金属不活性剤)
金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール及びチアジアゾール等を挙げることができる。
金属不活性剤の好ましい含有量は、添加効果の点から、潤滑油組成物の全量基準で、通常0.01~5質量%であり、好ましくは0.01~1質量%である。
【0056】
(消泡剤)
消泡剤としては、メチルシリコーン油、フルオロシリコーン油、及びポリアクリレート等を挙げることができる。
消泡剤の含有量は、添加効果の点から、潤滑油組成物の全量基準で、通常0.0005~0.01質量%である。
【0057】
<グリース組成物>
本実施形態の潤滑油用添加剤組成物は、グリース組成物に配合して用いることもできる。
すなわち、本実施形態では、上記潤滑油用添加剤組成物と、増ちょう剤と、潤滑油基油とを含有するグリース組成物を提供することもできる。
【0058】
<潤滑油組成物の物性等>
(動粘度、粘度指数)
本実施形態の潤滑油組成物の100℃動粘度は、好ましくは1.0mm2/s~50mm2/s、より好ましくは2.0mm2/s~30mm2/s、更に好ましくは3.0mm2/s~20mm2/sである。
本実施形態の潤滑油組成物の粘度指数は、好ましくは90以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは110以上である。
潤滑油組成物の動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準じて測定又は算出される値である。
【0059】
(耐摩耗性)
本実施形態の潤滑油組成物は、後述する実施例に記載のシェル摩耗試験による摩耗痕径が、好ましくは0.57mm以下、より好ましくは0.53mm以下、更に好ましくは0.50mm以下である。
【0060】
(極圧性)
本実施形態の潤滑油組成物は、後述する実施例に記載のシェル四球試験耐荷重性(EP)試験による最大非焼付荷重(LNL)が、好ましくは490N以上、より好ましくは618N以上、更に好ましくは785N以上である。
【0061】
[潤滑油組成物の用途]
本実施形態の潤滑油組成物は、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を含有するため、耐摩耗性及び極圧性に優れる。
そのため、本実施形態の潤滑油組成物は、例えば、ギア油(マニュアルトランスミッション油、デファレンシャル油等)、自動変速機油(オートマチックトランスミッション油等)、無段変速機油(ベルトCVT油、トロイダルCVT油等)、パワーステアリング油、ショックアブソーバー油、及び電動モーター油等の駆動系油;ガソリンエンジン用、ディーゼルエンジン用、及びガスエンジン用等の内燃機関(エンジン)用油;油圧作動油;タービン油;圧縮機油;流体軸受け油;転がり軸受油;等をはじめ各種の用途に好適に使用でき、これら各用途で使用される装置に充填し、当該装置に係る各部品間を潤滑する潤滑油組成物として好適に使用することができる。
【0062】
[潤滑油組成物を用いる潤滑方法]
本実施形態の潤滑油組成物を用いる潤滑方法としては、好ましくは、前記潤滑油組成物を、前述した各用途で使用される装置に充填し、当該各装置に係る各部品間を潤滑する方法が挙げられる。
【0063】
[提供される本発明の一態様]
本発明の一態様によれば、下記[1]~[10]が提供される。
[1] 下記一般式(a-1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(A)に由来する構成単位(a)と、下記一般式(b-1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)に由来する構成単位(b)と、前記水酸基含有(メタ)アクリレート(B)のホウ酸エステル化物(C)に由来する構成単位(c)とを含み、前記構成単位(c)はホウ素原子に1以上の水酸基が結合した側鎖を有する、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を含有する、潤滑油用添加剤組成物。
【化11】
[上記一般式(a-1)中、R
a1は、水素原子又はメチル基である。R
a2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。]
【化12】
[上記一般式(b-1)中、R
b1は、水素原子又はメチル基である。R
b2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のR
b2は、同一であっても異なっていてもよい。]
[2] 前記ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)が、さらに下記要件(α)を満たす、上記[1]に記載の潤滑油用添加剤組成物。
<要件(α)>
前記構成単位(a)と前記構成単位(b)との含有比率[(a)/(b)]が、モル比で、20/80~80/20である。
[3] 前記ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)が、さらに下記要件(β)を満たす、上記[1]又は[2]に記載の潤滑油用添加剤組成物。
<要件(β)>
前記ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)のホウ素含有量が、前記ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)の全量基準で、0.10質量%~1.70質量%である。
[4] 前記ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)は、質量平均分子量(Mw)が5,000~100,000である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の潤滑油用添加剤組成物。
[5] 耐荷重添加剤として用いられる、上記[1]~[4]のいずれかに記載の潤滑油用添加剤組成物。
[6] 上記[1]~[4]のいずれかに記載の潤滑油用添加剤組成物を、耐荷重添加剤として使用する、使用方法。
[7] 上記[1]~[5]のいずれかに記載の潤滑油用添加剤組成物と、潤滑油基油と、を含有する、潤滑油組成物。
[8] 下記一般式(a-1)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(A)と、下記一般式(b-1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート(B)とを重合させて、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)を製造する工程(S1)と、
前記ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)と無機ホウ酸系化合物(y)とを反応させて、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)を製造する工程(S2)とを含む、潤滑油用添加剤組成物の製造方法。
【化13】
[上記一般式(a-1)中、R
a1は、水素原子又はメチル基である。R
a2は、炭素数8~20のアルキル基を示す。]
【化14】
[上記一般式(b-1)中、R
b1は、水素原子又はメチル基である。R
b2は、炭素数2~4のアルキレン基を示す。m1は、1~10の整数を示す。m1が2以上の整数の場合の複数のR
b2は、同一であっても異なっていてもよい。]
[9] 前記工程(S1)において、前記アルキル(メタ)アクリレート(A)と前記水酸基含有(メタ)アクリレート(B)との配合比率[(A)/(B)]を、モル比で、20/80~80/20に調整する、上記[8]に記載の潤滑油用添加剤組成物の製造方法。
[10] 前記工程(S2)において、前記無機ホウ酸系化合物(y)のモル数と前記ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)中の水酸基のモル数との比率[(y)/(x)]を1/3以上3/3未満に調整する、上記[8]又は[9]に記載の潤滑油用添加剤組成物の製造方法。
【実施例0064】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
[各種物性値の測定方法]
各実施例及び各比較例で用いた各原料並びに各実施例及び各比較例の潤滑油組成物の各性状の測定は、以下に示す要領に従って行ったものである。
【0066】
(1)動粘度、粘度指数
潤滑油組成物の40℃動粘度、100℃動粘度、及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定又は算出した。
【0067】
(2)ホウ素量
潤滑油組成物のホウ素量は、JIS-5S-38-03に準拠して測定した。
潤滑油用添加剤組成物のホウ素含有量は、潤滑油組成物のホウ素量をJIS-5S-38-03に準拠して測定した結果と、潤滑油組成物への潤滑油用添加剤組成物の添加量(溶解量)とに基づいて算出した。
【0068】
(3)質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)
Waters社製の「1515アイソクラティックHPLCポンプ」、「2414示差屈折率(RI)検出器」に、東ソー社製のカラム「TSKguardcolumn SuperHZ-L」を1本、及び「TSKSuperMultipore HZ-M」を2本、上流側からこの順で取り付け、測定温度:40℃、移動相:テトラヒドロフラン、流速:0.35ml/分、試料濃度1.0mg/mlの条件で測定し、標準ポリスチレン換算にて求めた。
【0069】
[実施例1~4、比較例1~3]
以下に示す潤滑油基油及び潤滑油用添加剤組成物を、表1に示す配合量(質量%)で十分に混合し、実施例1~4及び比較例1~3の潤滑油組成物をそれぞれ調製した。
実施例1~4及び比較例1~3で用いた潤滑油基油及び潤滑油用添加剤組成物の詳細は、以下に示すとおりである。
【0070】
<潤滑油基油>
API分類でグループIIに分類される鉱油(150N)
【0071】
<潤滑油用添加剤組成物>
・ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x):比較製造例1に説明する方法で製造した。
・ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-1:製造例1に説明する方法で製造した。
・ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-2:製造例2に説明する方法で製造した。
・ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’):比較製造例2に説明する方法で製造した。
【0072】
<製造例1及び2、比較製造例1及び2>
(製造例1及び2で用いたモノマー等)
・「ドデシルアクリレート」:上記一般式(a-1)中、Ra1が水素原子であり、Ra2がドデシル基(炭素数12のアルキル基)である化合物である。アルキル(メタ)アクリレート(A)として使用した。
・「2-ヒドロキシエチルアクリレート」:上記一般式(b-1)中、Rb1が水素原子であり、Rb2がエチレン基(炭素数2のアルキレン基)であり、m1=1である化合物である。水酸基含有(メタ)アクリレート(B)として使用した。
・無機ホウ酸系化合物(C):オルトホウ酸
(比較製造例1及び2で用いたモノマー等)
・「1-(メタクリロイルエトキシ)-4,4,6-トリメチル-ジオキサボリナン」:特開平6-65588号公報の参考例1の化合物に該当するモノマーである。
・「ドデシルメタクリレート」:上記一般式(a-1)中、Ra1がメチル基であり、Ra2がドデシル基である化合物である。
・「ステアリルメタクリレート」:上記一般式(a-1)中、Ra1がメチル基であり、Ra2がステアリル基である化合物である。
【0073】
(比較製造例1:ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)の製造)
温度計、窒素導入管、及び撹拌機を取り付けた200mL容の4つ口フラスコに、ドデシルアクリレートを30.3g(126mmоl)、2-ヒドロキシエチルアクリレートを8.6g(74mmоl)、溶媒として2-プロパノールを39.9g仕込んだ。
次いで、フラスコ内を窒素置換し、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を0.17g添加した後、撹拌しながらゆっくり昇温し、75~85℃の温度で還流させながら4時間反応させて、反応終了後に溶媒を減圧留去することにより、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)を得た。
ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)の質量平均分子量(Mw)は12,800であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)は、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)の含有量が50質量%となるように鉱物油で希釈して、潤滑油基油に混合した。
【0074】
(製造例1:ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-1の製造)
温度計、窒素導入管、ディーンスターク及び撹拌機を取り付けた500mL容の4つ口フラスコに、比較製造例1で得られたポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)25gを鉱物油で希釈した希釈品、オルトホウ酸を0.97g(15.7mmоl)、溶媒としてトルエンを260.0g仕込んだ。
撹拌しながらゆっくり昇温し、110~120℃の温度で還流させながら4時間反応させて、反応終了後に溶媒を減圧留去することにより、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-1を50質量%含む鉱物油希釈品(50質量%鉱物油希釈品)を得た。
ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-1の質量平均分子量(Mw)は12,300であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。また、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-1のホウ素含有量は0.29質量%であった。
製造例1において、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)中の水酸基のモル数と無機ホウ酸系化合物(y)のモル数との比率[(y)/(x)]は、1/3である。
なお、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-1の質量平均分子量(Mw)とポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)の質量平均分子量にほとんど差がないことから、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)とオルトホウ酸の反応によって架橋構造は形成されておらず、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-1が有するホウ素原子には1以上の水酸基が結合した状態である。
ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-1は、50質量%鉱物油希釈品の状態で、潤滑油基油に混合した。
【0075】
(製造例2:ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-2の製造)
製造例1においてオルトホウ酸を1.93g(31.2mmоl)仕込んだこと以外は同様の操作を行って、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-2を得た。
ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-2の質量平均分子量(Mw)は12,300であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。また、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-2のホウ素含有量は0.57質量%であった。
製造例2において、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)中の水酸基のモル数と無機ホウ酸系化合物(y)のモル数との比率[(y)/(x)]は、2/3である。
なお、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-2の質量平均分子量(Mw)とポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)の質量平均分子量にほとんど差がないことから、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)とオルトホウ酸の反応によって架橋構造は形成されておらず、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-2が有するホウ素原子には1以上の水酸基が結合した状態である。
ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-2は、50質量%鉱物油希釈品の状態で、潤滑油基油に混合した。
【0076】
(比較製造例2:ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)の製造)
温度計、窒素導入管、及び撹拌機を取り付けた200mL容の4つ口フラスコに、1-(メタクリロイルエトキシ)-4,4,6-トリメチル-ジオキサボリナンを5.3g(20.7mmоl)、ドデシルメタクリレートを39.2g(154.3mmоl)、ステアリルメタクリレートを4.4g(13mmоl)、溶媒として鉱物油を48.9g仕込んだ。
次いで、フラスコ内を窒素置換し、開始剤としてパーブチルOを0.5g添加した後、撹拌しながらゆっくり昇温し、95~100℃の温度で還流させながら4時間反応させて、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)を50質量%含む鉱物油希釈品(50質量%鉱物油希釈品)を得た。ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)の質量平均分子量(Mw)は155,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は3.3であった。また、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)のホウ素含有量は0.25質量%であった。
ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)は、重合の際に用いた希釈溶媒で希釈された状態のまま(すなわち、50質量%鉱物油希釈品の状態で)、潤滑油基油に混合した。
【0077】
[評価方法]
以下に説明する試験を実施し、耐摩耗性及び極圧性について評価を行った。
【0078】
<シェル摩耗試験>
シェル摩耗試験機を用いて、ASTM D 4172に準拠して、試験条件を、荷重30kg、回転数1,200rpm、温度80℃、試験時間30分に設定して、潤滑油組成物の耐摩耗性を評価した。結果は、試験剛球の摩耗痕径(mm)で表した。
【0079】
<シェル四球試験耐荷重性(EP)試験>
ASTM D2783-03(2014)に準拠して、四球試験機により回転数1,800回転/分、油温(室温:25±5℃)の条件で行い、最大非焼付荷重(LNL)を測定した。この値が大きいほど極圧性が良好である。
【0080】
<評価基準>
以下の基準(I)又は(II)を満たすものを合格とした。
・基準(I):シェル摩耗試験における摩耗痕径が0.50mm未満であり、最大非焼付荷重(LNL)が490N以上である。
・基準(II):シェル摩耗試験における摩耗痕径が0.50mm以上0.60mm以下であり、最大非焼付荷重(LNL)が618N以上である。
【0081】
結果を表1に示す。表1中、潤滑油用添加剤組成物の含有量の括弧内の数値は、樹脂分換算の含有量を意味する。
【0082】
【0083】
表1より、以下のことがわかる。
実施例1~4に示す結果から、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-1又はホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-2を配合した潤滑油組成物は、上記基準(I)及び(II)のいずれかを満たし、耐摩耗性及び極圧性に優れることがわかる。
比較例1に示す結果から、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)を配合した潤滑油組成物は、上記基準(I)と(II)のいずれも満たさず、耐摩耗性及び極圧性の両立ができていないことがわかる。また、比較例2に示す結果から、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)の配合量を増やすことで、耐摩耗性は良好になるものの、極圧性が著しく低下することがわかる。以上のことから、ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(x)を配合した潤滑油組成物では、耐摩耗性及び極圧性の両立が困難であることがわかる。
また、比較例3に示す結果から、ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)を配合した潤滑油組成物は、上記基準(I)と(II)のいずれも満たさず、耐摩耗性及び極圧性の両立ができていないことがわかる。ホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X’)は、ホウ素原子に少なくとも1つ以上の水酸基が結合した側鎖を有していないため、ホウ素原子に少なくとも1つ以上の水酸基が結合した側鎖を有するホウ素化ポリ(メタ)アクリレート系共重合体(X)-1及び(X)-2のように、耐摩耗性及び極圧性の両立ができなかったものと考えられる。