(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104900
(43)【公開日】2022-07-12
(54)【発明の名称】材料を堆積させるための組成物、合成方法および使用
(51)【国際特許分類】
C23C 16/448 20060101AFI20220705BHJP
【FI】
C23C16/448
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021210852
(22)【出願日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】63/131,853
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・デゼラー
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ・ウィートン
(72)【発明者】
【氏名】チ・シエ
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA12
4K030AA18
4K030BA02
4K030BA08
4K030BA11
4K030EA01
4K030FA10
4K030LA15
(57)【要約】
【課題】本開示は、基材上に13族金属含有材料を堆積させるための組成物を提供する。
【解決手段】組成物は金属アルキル前駆体を含み、金属アルキル前駆体は13族金属原子と二つの異なるアルキルリガンドタイプとを含む。第一のリガンドタイプは、3個の炭素原子に結合されている炭素原子によって13族金属原子に結合された分岐C4~C8アルキルであり、第二のリガンドタイプは直鎖C1~C4アルキルである。13族金属原子は第一のリガンドタイプの二つのリガンドに結合されていて、組成物中の第一のリガンドタイプと第二のリガンドタイプの比は約2対1である。さらに本開示は、組成物の製造方法およびその使用、ならびに基材上に材料を堆積させる方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に13族金属含有材料を堆積させるための組成物であって、前記組成物が金属アルキル前駆体を含み、
前記金属アルキル前駆体が、13族金属原子と、二つの異なるアルキルリガンドタイプとを含み、
第一のリガンドタイプが、3個の炭素原子に結合されている炭素原子によって前記13族金属原子に結合された分岐C4~C8アルキルであり、第二のリガンドタイプが直鎖C1~C4アルキルであり、
前記13族金属原子が前記第一のリガンドタイプの二つのリガンドに結合されていて、組成物中の第一のリガンドタイプと第二のリガンドタイプの比が約2対1である、組成物。
【請求項2】
前記第一のリガンドタイプの両方のリガンドが同一である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第一のリガンドタイプがC4~C6アルキルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第一のリガンドタイプがtert‐ブチルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記第二のリガンドタイプがメチルまたはエチルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記第一のリガンドタイプがtert‐ブチルであり、前記第二のリガンドタイプがメチルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記13族金属原子が、アルミニウム、ガリウム、およびインジウムから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記13族金属原子がアルミニウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記13族金属原子がガリウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記13族金属原子がインジウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が少なくとも90重量%の前記金属アルキル前駆体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物の蒸気圧が64~69°Cの温度で約1トルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が60°Cの温度で少なくとも10週間安定している、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が標準温度および標準圧力で固体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記金属アルキル前駆体の少なくとも50%が、固体組成物中で二量体として存在する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記金属アルキル前駆体が、気相中で二量体と単量体の混合物として存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の組成物を生成する方法であって、
ビス(メチル)tert‐ブチルアルミニウムを、三塩化アルミニウムおよびtert‐ブチルリチウムと反応させて、ビス(tert‐ブチル)メチルアルミニウムを得ることを含む方法。
【請求項18】
ビス(メチル)tert‐ブチルアルミニウムが、約1:1:3のモル比で四塩化アルミニウムおよびtert‐ブチルリチウムと反応する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、ビス(tert‐ブチル)メチルアルミニウムの精製を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の組成物を生成する方法であって、
トリメチルアルミニウムを、三塩化アルミニウムおよびtert‐ブチルリチウムと反応させて、ビス(tert‐ブチル)メチルアルミニウムを得ることを含む方法。
【請求項21】
金属アルキル前駆体を含む組成物を使用して13族金属含有材料を基材上に堆積させる方法であって、前記金属アルキル前駆体が、13族金属原子と、二つの異なるアルキルリガンドタイプとを含み、
第一のリガンドタイプが、3個の炭素原子に結合されている炭素原子によって前記13族金属原子に結合された分岐C4~C8アルキルであり、第二のリガンドタイプが直鎖C1~C4アルキルであり、
前記13族金属原子が前記第一のリガンドタイプの二つのリガンドに結合されていて、組成物中の第一のリガンドタイプと第二のリガンドタイプの比が約2対1である、方法。
【請求項22】
前記13族金属含有材料が蒸着プロセスによって蒸着される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記蒸着プロセスが循環蒸着プロセスである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記13族金属原子が、アルミニウム、ガリウム、およびインジウムから成る群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
金属アルキル前駆体を含む組成物の使用であって、金属アルキル前駆体が、13族金属原子と、二つの異なるアルキルリガンドタイプとを含み、
第一のリガンドタイプが、3個の炭素原子に結合されている炭素原子によって前記13族金属原子に結合された分岐C4~C8アルキルであり、第二のリガンドタイプが直鎖C1~C4アルキルであり、
前記13族金属原子が前記第一のリガンドタイプの二つのリガンドに結合されていて、組成物中の第一のリガンドタイプと第二のリガンドタイプの比が約2対1であり、
基材上に前13族金属含有材料を堆積させる、使用。
【請求項26】
金属アルキル前駆体を含む組成物を含有する反応物容器であって、前記金属アルキル前駆体が、13族金属原子と、二つの異なるアルキルリガンドタイプとを含み、
第一のリガンドタイプが、3個の炭素原子に結合されている炭素原子によって前記13族金属原子に結合された分岐C4~C8アルキルであり、第二のリガンドタイプが直鎖C1~C4アルキルであり、
前記13族金属原子が前記第一のリガンドタイプの二つのリガンドに結合されていて、組成物中の第一のリガンドタイプと第二のリガンドタイプの比が約2対1である、反応物容器。
【請求項27】
13族金属含有材料を基材上に堆積させるための蒸着用組立品であって、前記蒸着用組立品が、
前記基材を保持するように配置構成された一つ以上の反応チャンバと、
蒸気相で前記反応チャンバの中に金属アルキル前駆体を提供するように配置構成された前駆体注入器システムと、
請求項1に記載の組成物を含有するように配置構成された反応物容器と、を備え、
前記蒸着用組立品が、前記前駆体注入器システムを介して前記反応チャンバに請求項1に記載の組成物を供給し、前記基材上に13族金属含有材料を堆積させるように配置構成されている、蒸着用組立品。
【請求項28】
炭素含有物質を基材上に堆積させるための組成物であって、前記組成物が金属アルキル前駆体を含み、
前記金属アルキル前駆体が、13族金属原子と、二つの異なるアルキルリガンドタイプとを含み、
第一のリガンドタイプが、3個の炭素原子に結合されている炭素原子によって前記13族金属原子に結合された分岐C4~C8アルキルであり、第二のリガンドタイプが直鎖C1~C4アルキルであり、
前記13族金属原子が前記第一のリガンドタイプの二つのリガンドに結合されていて、組成物中の第一のリガンドタイプと第二のリガンドタイプの比が約2対1である、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、基材上に金属前駆体を堆積させて金属含有層を形成するための組成物に関する。さらに本開示は、組成物の製造方法およびその使用、ならびに基材上に材料を堆積させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
13族金属、特にアルミニウム、ガリウム、およびインジウムは、半導体デバイスの製造のための様々な用途で使用される。一つの例は、仕事関数チューニング用途のための金属含有薄膜である。適切な金属前駆体化合物の選択は、堆積の成功および材料性能にとって非常に重要である。こうした金属化合物は、望ましい組成物、抵抗率、および効果的な仕事関数を有する膜を生成するのに有用であるように、物理的特性と化学的特性の特定の組み合わせを必要とする。
【0003】
アルキル金属化合物は蒸着において魅力的な前駆体である。しかしながら、要求の厳しい堆積用途で使用するための揮発性、反応性、および安定性の適切な組み合わせを有する適切な前駆体を見つけることは困難である。従って、当技術分野において、半導体デバイスの製造のための薄膜を堆積させるための改善された金属前駆体に対するニーズがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Jones et al., Journal of Crystal Growth, 1989, 96: 769-773
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、金属前駆体組成物およびそれらを生成する方法を記述する。第一の態様において、基材上に13族金属含有材料を堆積させるための組成物が開示されている。組成物は、13族金属原子と二つの異なるアルキルリガンドタイプとを含む金属アルキル前駆体を含む。第一のリガンドタイプは、3個の炭素原子に結合されている炭素原子によって13族金属原子に結合された分岐C4~C8アルキルであり、第二のリガンドタイプは直鎖C1~C4アルキルであり、13族金属原子は第一のリガンドタイプの二つのリガンドに結合されている。本開示による組成物において、第一のリガンドタイプと第二のリガンドタイプの比は約2対1である。
【0006】
第二の態様において、本開示による組成物を生成する方法が開示されていて、本方法は、ビス(メチル)tert‐ブチルアルミニウムを、三塩化アルミニウムおよびtert‐ブチルリチウムと反応させて、ビス(tert‐ブチル)メチルアルミニウムを得ることを含む。
【0007】
第三の態様において、本開示による組成物を生成する方法が開示されていて、本方法は、トリメチルアルミニウムを、三塩化アルミニウムおよびtert‐ブチルリチウムと反応させて、ビス(tert‐ブチル)メチルアルミニウムを得ることを含む。
【0008】
第四の態様において、本開示による組成物を生成する方法であって、本方法は、トリ(tert‐ブチル)アルミニウムをトリメチルアルミニウムと反応させて、ビス(tert‐ブチル)メチルアルミニウムを得ることを含む。
【0009】
第五の態様において、本開示による組成物を使用して基材上に13族金属含有材料を堆積させる方法が開示されている。
【0010】
第六の態様において、基材上に13族金属含有材料を堆積させるための本開示による組成物の使用が開示されている。
【0011】
第七の態様において、本開示による組成物を含有する化学反応物容器が開示される。
【0012】
第八の態様において、本開示による反応物容器を備える蒸着用組立品が開示されている。
【0013】
金属の混合アルキル化合物は、半導体用途の前駆体として使用される。これらは、ホモレプティック金属アルキル前駆体の一部よりも安定している場合があり、その一方で敏感な堆積用途にとって十分な反応性を有しうる。しかしながら、異なるリガンドは多くの場合、要求の厳しい用途における前駆体としての混合リガンド化合物の使用を妨げるリガンド再分配反応の影響を受けやすい。本開示による組成物は、他の混合アルキル金属化合物で観察されたリガンド再分配に対する安定性を提供しうる。多くの混合リガンドアルキル前駆体で観察されたこのような再分配は、凝縮相源化合物からの蒸気相前駆体送達に特有の動的蒸発条件下で、複数の望ましくない副生成物の形成につながりうる。これらの副生成物は揮発性が異なるため、前駆体源容器中のそれらの相対濃度は経時的に大きく変化することがあり、プロセスの相当なドリフト(偏り)がしばしば生じる。
【0014】
本開示は、例えば分岐アルキル基を含有するバルクアルキルリガンドを含有する金属錯体に共通する、異性化反応に対する予想外の安定性を有する組成物を提供する。上記の種類の安定性の両方は、本開示による組成物の蒸着特性を改善しうる。加えて、安定性は、自己分解の低減、金属取り込みの増加、およびプロセスドリフトの低減を伴う望ましい膜の原子層堆積(ALD)型成長を促進しうる。
【0015】
本開示のさらなる理解を提供するために含まれていて、本明細書の一部を構成する添付図面は、例示的な実施形態を図示し、記載内容とともに本開示の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本開示による反応物容器を備える蒸着用組立品を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に提供された組成物、方法、および使用の例示的な実施形態の説明は、単に例示的なものであり、例示の目的のみを意図している。以下の説明は、本開示の範囲または特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。さらに、記載された特徴を有する複数の実施形態の列挙は、追加の特徴を有する他の実施形態、または記載された特徴の異なる組み合わせを組み込む他の実施形態を除外することを意図していない。例えば、様々な実施形態が例示的な実施形態として記載されていて、従属する特許請求の範囲に引用されうる。別途記載がない限り、例示的な実施形態またはその構成要素は、組み合わせられる場合があり、または互いに別々に適用されうる。
【0018】
本開示において、任意の二つの変数はその変数の実行可能な範囲を構成することができ、示された任意の範囲は端点を含みうる、または除外しうる。加えて、示された変数の任意の値は(それらが「約」で示されているか否かにかかわらず)、正確な値またはおおよその値を指し、等価物を含み、平均値、中央値、代表値、または大多数等を指しうる。さらに本開示において、「含む」「によって構成される」および「有する」という用語は独立的に、「典型的にまたは広く含む」または「含む」を指す。本開示において、任意の定義された意味は、一部の実施形態において、通常の意味および慣習的な意味を必ずしも排除するものではない。
【0019】
一態様において、13族金属含有材料を基材上に堆積させるための組成物が開示されている。組成物は金属アルキル前駆体を含み、金属アルキル前駆体は13族金属原子と二つの異なるアルキルリガンドタイプとを含む。第一のリガンドタイプは、3個の炭素原子に結合されている炭素原子によって13族金属原子に結合された分岐C4~C8アルキルである。第二のリガンドタイプは、直鎖C1~C4アルキルである。13族金属原子は第一のリガンドタイプの二つのリガンドに結合されていて、組成物中の第一のリガンドタイプと第二のリガンドタイプの比は約2対1である。しかしながら、一部の態様において、基材上に炭素含有材料を堆積させるために、本開示による組成物を利用することが可能である。
【0020】
組成物とは本明細書において、蒸着用途に使用されうる化学物質の調製を意味する。概して組成物は、長期間にわたって、例えば数か月にわたって、その保存と使用を可能にするのに十分な安定性を有する必要がある。前駆体は、反応チャンバの中への蒸気移動を可能にするために、蒸着条件に耐えるべきである。加えて、所定の条件下での前駆体化合物の蒸発速度は、一定であることが好ましい。一部の組成物は、組成物から蒸発する複数の物質による損害を受ける場合がある。物質の揮発性が異なる場合、組成物は、より揮発性の低い物質において経時的に濃縮されうる。これは、プロセスドリフトと呼ばれる現象につながりうる。すなわち、組成物の化学組成が変化するにつれて、堆積プロセスパラメータのうちの一つ以上が経時的に徐々に変化する。プロセスドリフトの影響は、敏感な用途では有害である場合があり、ドリフトを補償するためのプロセスのチューニングは、高価、困難、または不可能でさえある場合がある。組成物はまた、前駆体分子が蒸着のために蒸着チャンバに送達されうるように、前駆体分子の気化を可能にする必要がある。それ故に、前駆体が組成物中に含有されている温度および圧力の範囲は、蒸着に適している必要がある。
【0021】
「前駆体」および「反応物」という用語は、本開示においては互換的に使用され、別の化合物を生成する化学反応に関与する分子(化合物、または単一の要素を含む分子)を指すことがある。前駆体または反応物は典型的に、問題の化学反応から生じる化合物または要素を少なくとも部分的に形成する部分を包含する。結果として生じるこうした化合物または要素は、基材上に堆積されうる。しかしながら、前駆体または反応物は、かなりの程度で、得られた化合物または要素に取り込まれていない要素または化合物でありうる。一部の実施形態において、反応物または前駆体は還元剤でありうる。
【0022】
本開示による組成物は、13族金属原子を含む金属アルキル前駆体を含む。一部の実施形態において、13族金属は、アルミニウム、ガリウム、およびインジウムから成る群から選択される。一部の実施形態において、13族金属はアルミニウムである。一部の実施形態において、13族金属はガリウムである。一部の実施形態において、13族金属はインジウムである。
【0023】
本開示による金属アルキル前駆体は、二つの異なるアルキルリガンドタイプ、第一のリガンドタイプおよび第二のリガンドタイプを含む。それ故に、各13族金属原子は、二つの異なる種類のリガンドに結合されている。
【0024】
第一のリガンドタイプは、3個の炭素原子に結合されている炭素原子によって13族金属原子に結合された分岐C4~C8アルキルである。言い換えれば、13族金属原子は炭素原子に結合されていて、この炭素原子はまた、3個の炭素原子に結合されている(3個の「分岐炭素原子」)。こうしたアルキルリガンドは、金属原子の周りに大きい空間を占め、反応に対する立体効果を作り出す場合があり、また原子の空間的配向も結合強度に影響を与えうる。第一のリガンドタイプは、4~8個の炭素原子を含有するアルキル基であり、すなわちC4~C8アルキルである。それ故に、4個、5個、6個、7個、または8個の炭素原子を含有しうる。金属原子に結合されている炭素原子は、他の3個の炭素原子に接続されているため、第一のリガンドタイプの最も小さいリガンドは、tert‐ブチル基である。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプは、tert‐ブチルである。
【0025】
3個の分岐炭素原子のうちのどれかは、それに付着した1個以上のさらなる炭素原子を有しうる。多くの場合、分岐炭素原子に付着した1個または2個のさらなる炭素原子がある。一部の実施形態において、3個の分岐炭素原子のうちの1個または2個は、それに付着した1個以上のさらなる炭素原子を有する。一部の実施形態において、3個の分岐炭素原子のすべては、それらに付着したさらなる炭素原子を有する。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプは、C4またはC5アルキルである。こうした実施形態において、分岐炭素原子のうちの1個は、それに付着した1個の追加の炭素原子を有する。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプは、C4~C6アルキルである。こうした実施形態において、1個の分岐炭素原子は、それに付着した2個のさらなる炭素原子を有しうる。代替的に、分岐炭素原子のうちの2個は、各分岐炭素原子に付着した1個のさらなる炭素原子を有しうる。
【0026】
13族金属原子は、第一のリガンドタイプの二つのリガンドに結合されている。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプの両方のリガンドは同一である。第一のリガンドタイプの二つの同一のリガンドを有することは、金属アルキル前駆体中の第一のリガンドタイプの二つの異なるリガンドを有することと比較して、前駆体合成プロセスを単純化しうる。
【0027】
一部の実施形態において、第一のリガンドタイプは、飽和炭化水素である。一部の実施形態において、第二のリガンドタイプは、飽和炭化水素である。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプおよび第二のリガンドタイプは、飽和炭化水素である。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプは、一つ以上の二重結合を含みうる。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプの二つのリガンドは、13族金属原子とともに置換金属環状化合物を形成する。金属環状化合物は、例えば置換メタラシクロブタン、置換メタラシクロペンタン、または置換メタラシクロヘキサンでありうる。
【0028】
第二のリガンドタイプは直鎖C1~C4アルキルである。それ故に、第二のリガンドタイプは、第一のリガンドタイプよりも小さい。一部の実施形態において、第二のリガンドタイプは、メチルまたはエチルである。一部の実施形態において、第二のリガンドはプロピルである。一部の実施形態において、第二のリガンドタイプはブチルである。前記第一のリガンドタイプがtert‐ブチルであり、前記第二のリガンドタイプがメチルである、請求項1に記載の組成物。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプはtert‐ブチルであり、第二のリガンドタイプはエチルである。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプはtert‐ブチルであり、第二のリガンドタイプはプロピルである。
【0029】
一部の実施形態において、第一のリガンドタイプは1,1‐ジメチルプロピルであり、第二のリガンドタイプはメチルである。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプは1,1‐ジメチルプロピルであり、第二のリガンドタイプはエチルである。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプは1,1‐ジメチルプロピルであり、第二のリガンドタイプはプロピルである。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプは1,1‐ジメチルプロピルであり、第二のリガンドタイプはブチルである。
【0030】
一部の実施形態において、第一のリガンドタイプは1‐エチル‐1‐メチルプロピルであり、第二のリガンドタイプはメチルである。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプは1‐エチル‐1‐メチルプロピルであり、第二のリガンドタイプはエチルである。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプは1‐エチル‐1‐メチルプロピルであり、第二のリガンドタイプはプロピルである。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプは1‐エチル‐1‐メチルプロピルであり、第二のリガンドタイプはブチルである。
【0031】
一部の実施形態において、第一のリガンドタイプは1,1‐ジエチルプロピルであり、第二のリガンドタイプはメチルである。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプは1,1‐ジエチルプロピルであり、第二のリガンドタイプはエチルである。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプは1,1‐ジエチルプロピルであり、第二のリガンドタイプはプロピルである。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプは1,1‐ジエチルプロピルであり、第二のリガンドタイプはブチルである。
【0032】
本開示による組成物において、組成物中の第一のリガンドタイプと第二のリガンドタイプの比は約2対1である。それ故に、各13族金属原子について、第一のリガンド群のおよそ二つのリガンドと、第二のリガンド群の一つのリガンドとがある。
【0033】
一部の実施形態において、第二のリガンドタイプは水素でありうる。それ故に、本開示による基材上に13族金属含有材料を堆積させるための組成物は、金属アルキル前駆体を含む場合があり、金属アルキル前駆体は、13族金属原子と二つの異なるアルキルリガンドタイプを含み、また第一のリガンドタイプは、3個の炭素原子に結合されている炭素原子によって13族金属原子に結合された分岐C4~C8アルキルであり、第二のリガンドタイプは水素である。組成物において、13族金属原子は第一のリガンドタイプの二つのリガンドに結合されていて、組成物中の第一のリガンドタイプと第二のリガンドタイプの比は約2対1である。
【0034】
本開示による金属アルキル前駆体は、単量体(下記に構造1として図示)または二量体(下記に構造2として描写)として存在しうる。構造において、L1は第一のリガンドタイプを示し、L2は第二のリガンドタイプを示す。固体組成物において、金属アルキル前駆体は、主に二量体として存在しうる。ガスにおいて、金属アルキル前駆体は、単量体と二量体の間で自由に交換することができ、両方の形態の混合物をもたらしうる。気相において、金属アルキル前駆体はそれ故に、二量体と単量体の混合物として存在しうる。単量体形態は、気相において一般的でありうる。
【0035】
以下に描出される通り、両方の形態において、各13族金属原子はタイプ1の二つのリガンドに結合されていて、第一のリガンドタイプと第二のリガンドタイプと比は2対1である。しかしながら、二量体において、13族金属原子は第二のリガンドタイプの二つのリガンドに接続されている。この構成において、第二のリガンドタイプは、架橋リガンドとして特徴付けられうる。本開示を金属アルキル前駆体の構造の任意の特定の理論に限定することなく、M‐L2‐Mユニットは、3中心の2電子結合で説明されうる。
【0036】
【0037】
本開示を任意の特定の理論に限定することなく、二量体は特に安定的である場合があり、本開示による金属アルキル前駆体を含む固体組成物を蒸着プロセスにおいて有利なものにする。一部の実施形態において、金属アルキル前駆体の少なくとも50%は、固体組成物中の二量体として存在する。
【0038】
金属アルキル前駆体は、蒸着プロセスにおいて前駆体でありうる。それ故に、本開示による組成物は、13族金属を(金属性の金属として、または他の要素を有する化合物として)基材上に堆積させるために使用されうる。
【0039】
本開示による蒸着プロセスは、化学蒸着(CVD)プロセスでありうる。本開示による蒸着プロセスは、原子層堆積(ALD)プロセスでありうる。本開示による蒸着プロセスは、循環蒸着プロセスでありうる。本明細書で使用される「循環堆積」という用語は、基材上に層を堆積させるために反応チャンバの中に前駆体(反応物)を連続的に導入することを指し、原子層堆積および循環化学蒸着などの処理技法を含む。
【0040】
CVDタイプのプロセスは典型的に、二つ以上の前駆体または反応物間の気相反応を含む。前駆体または反応物は、反応チャンバまたは基材に同時に提供されることができ、または部分的にもしくは完全に分離されたパルスで供給されることができる。基材および/または反応空間を加熱して、ガス状反応物間の反応を促進しうる。一部の実施形態において、反応物は、所望の厚さを有する薄膜が堆積されるまで提供される。それ故に、CVDタイプのプロセスは、循環プロセスまたは非循環プロセスでありうる。一部の実施形態において、所望の厚さを有する薄膜を堆積させるために、循環CVDタイプのプロセスを複数のサイクルで使用することができる。循環CVDタイプのプロセスにおいて、重なり合わない、または部分的にもしくは完全に重なり合うパルスで反応物が反応チャンバに提供されうる。
【0041】
ALDタイプのプロセスは、前駆体および/または反応物の化学物質の制御された、典型的には自己制御的な表面反応に基づいている。気相反応は、前駆体を交互におよび逐次的に反応チャンバの中に供給することによって回避される。気相反応物は、例えば反応物パルス間の反応チャンバから過剰の反応物および/または反応物の副生成物を除去することによって、反応チャンバ内で互いに分離される。これは、排気工程で、および/または不活性ガスパルスもしくはパージを用いて達成することができる。一部の実施形態において、基材を不活性ガス等のパージガスと接触させる。例えば、過剰の反応物および反応物の副生成物を除去するために、反応物パルス間で基材をパージガスと接触させることができる。一部の実施形態において、各反応は自己制御的であり、単層成長が達成される。これらを「真のALD」反応と呼ぶことができる。一部のこのような実施形態において、金属前駆体は基材表面上に自己制御的に吸着しうる。第二の反応物前駆体または反応物、および任意選択のさらなる反応物または前駆体は、吸着された金属前駆体と反応して、基材上の金属または金属化合物の単層にまで形成する。
【0042】
本開示による組成物は、基材上に13族金属含有材料を堆積させるために使用されうる。本明細書で使用される「基材」という用語は、構造、デバイス、回路、もしくは層を形成するのに使用されうる任意の下地材料(複数可)、または構造、デバイス、回路、もしくは層が上に形成されうる任意の下地材料(複数可)を指しうる。基材は、シリコン(例えば単結晶シリコン)などのバルク材料、ゲルマニウムなどの他のIV族材料、またはII-VI族もしくはIII-V族半導体材料などの他の半導体材料を含むことができる、かつバルク材料の上に重なる、または下にある一つ以上の層を含むことができる。さらに、基材は、基材の層の少なくとも一部分の中、またはその一部分上に形成される様々な特徴(陥凹部、突出部、およびこれに類するものなど)を含むことができる。例えば、基材は、バルク半導体材料と、バルク半導体材料の少なくとも一部分の上に重なる絶縁または誘電材料層とを含むことができる。
【0043】
13族金属含有材料は、層または薄膜として堆積されうる。本明細書で使用する「層」および/または「膜」という用語は、任意の連続的または非連続的な構造および材料(例えば本明細書に記載の蒸着プロセスによって堆積された材料)を指すことができる。例えば、層および/または膜としては、二次元材料、三次元材料、ナノ粒子、または部分的もしくは完全な分子層、または部分的もしくは完全な原子層、または原子および/もしくは分子のクラスターさえをも挙げることができる。膜または層は、ピンホールを有する材料または層を含むことができ、少なくとも部分的に連続している場合がある。層はシード層でありうる。シード層は、別の材料の核形成速度を増加させる役割を果たす非連続層でありうる。しかしながら、シード層はまた実質的にまたは完全に連続している場合がある。
【0044】
13族金属含有材料は、アルミニウム金属、インジウム金属、またはガリウム金属などの金属性金属(金属元素)でありうる。一部の実施形態において、13族金属は、アルミニウム、ガリウム、およびインジウムから成る群から選択される。それ故に、金属の酸化状態は0としうる。一部の実施形態において、金属の酸化状態はゼロ以外である。一部の実施形態において、酸化状態は、例えば+1または+3でありうる。堆積物、または堆積物を含む層は、本開示による組成物から金属が堆積した他の要素または化合物を含みうる。一部の実施形態において、13族金属は、金属炭化物、窒化物、または酸化物を産生するように堆積されうる。例えば、酸化アルミニウム、炭化アルミニウム、または窒化アルミニウム、酸化ガリウム、炭化ガリウム、または窒化ガリウム、酸化インジウム、炭化インジウム、または窒化インジウムが堆積されうる。現在の組成物はまた、13族金属を含む三元材料を、例えばケイ素および酸化物とともに堆積させるために使用されうる。加えて、本開示による組成物は、コバルト‐アルミニウム、ルテニウム‐アルミニウム、モリブデン‐アルミニウム、またはタングステン‐アルミニウムなどの金属合金を堆積させるために使用されうる。
【0045】
本開示による組成物は、第一のリガンドタイプの二つのリガンドと、それに付着した第二のリガンドタイプのリガンドとを有する13族金属を含む。複数のタイプのリガンド(すなわち混合アルキル金属化合物)を含む金属アルキル化合物は、リガンド再分配の影響を受けやすいことが多く、これが蒸着において望ましくない様々な副生成物の形成を引き起こしうる。このような条件下で、最も揮発性の高い物質は優先的に気化されることになり、所与の前駆体バッチの使用中にプロセスドリフトを引き起こす。言い換えれば、有利な組成物は、ツール上で長期間にわたってその均一性を維持する。本開示によるリガンド構成は予想外に、類似の構造の他の金属アルキル化合物と比較して、再分配の傾向がはるかに低いことが判明した。
【0046】
さらに、本明細書に記載のリガンド構成を有する前駆体化合物は、tert‐ブチル基などのバルクアルキルリガンドを含有する金属錯体に共通する異性化反応に対して、予想されていたよりも安定性がある。本開示による前駆体化合物の安定性は、前駆体の貯蔵寿命、蒸発温度でのツール上の安定性、ならびに蒸着中の分解の低減を向上しうる。特に、堆積中の安定性は、堆積物の自己限定的な成長が目的とされる、原子層堆積タイプのプロセスにおいて重要である場合がある。
【0047】
本開示による組成物のさらなる利点として、組成物は、中程度の加熱での使用を可能にするのに十分な高い蒸気圧を有しうる。これは、限られた熱収支を有する蒸着プロセスにおいて組成物を使用することを可能にしうる。
【0048】
一部の実施形態において、本開示による組成物は、少なくとも80重量%の金属アルキル前駆体を含む。一部の実施形態において、本開示による組成物は、少なくとも90重量%の金属アルキル前駆体を含む。一部の実施形態において、本開示による組成物は、少なくとも92重量%の金属アルキル前駆体を含む。一部の実施形態において、本開示による組成物は、少なくとも95重量%の金属アルキル前駆体を含む。一部の実施形態において、本開示による組成物は、少なくとも98重量%の金属アルキル前駆体を含む。一部の実施形態において、本開示による組成物は、本質的に金属アルキル前駆体から成る。一部の実施形態において、本開示による組成物は、金属アルキル前駆体から成る。それ故に、本開示による組成物は、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも92重量%、少なくとも95重量%、または少なくとも98重量%のビス(tert‐ブチル)メチルアルミニウムを含みうる。一部の実施形態において、本開示による組成物は、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも92重量%、少なくとも95重量%、または少なくとも98重量%のビス(tert‐ブチル)メチルガリウムを含む。一部の実施形態において、本開示による組成物は、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも92重量%、少なくとも95重量%、または少なくとも98重量%のビス(tert‐ブチル)メチルインジウムを含みうる。
【0049】
半導体用途で使用される組成物は、堆積プロセスの再現性、移動可能性およびスケーラビリティを確認するために優先的に純粋である。一部の実施形態において、組成物は、金属アルキル前駆体の関連化合物、例えば第一のリガンドタイプの三つのリガンドまたは第二のリガンドタイプの二つのリガンドを含む対応する化合物を含有しうる。組成物はまた、第一のリガンドタイプのリガンドの異性化に由来する化合物を含みうる。
【0050】
本開示による組成物の純度は、例えば第一のリガンドタイプのリガンドと第二のリガンドタイプのリガンドの比として測定されうる。標的金属アルキル前駆体のみを含む組成物において、第一のリガンドタイプのリガンドと第二のリガンドタイプのリガンドの比、例えばtert‐ブチルとメチルの比は、2である。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプのリガンドと第二のリガンドタイプのリガンドの比は、約1.90、約1.95、約1.99、約2.05、または約2.10である。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプのリガンドと第二のリガンドタイプのリガンドの比は、約1.90~2.05である。一部の実施形態において、前記比は約1.95~2.10である。一部の実施形態において、第一のリガンドタイプのリガンドと第二のリガンドタイプのリガンドの比は、約1.95~2.05である。
【0051】
一部の実施形態において、本開示による組成物は、金属アルキル前駆体以外に最大で10重量%の他の物質を含む。一部の実施形態において、本開示による組成物は、金属アルキル前駆体以外に最大で8重量%の他の物質を含む。一部の実施形態において、本開示による組成物は、金属アルキル前駆体以外に最大で5重量%の他の物質を含む。一部の実施形態において、本開示による組成物は、金属アルキル前駆体以外に最大で2重量%の他の物質を含む。一部の実施形態において、金属アルキル前駆体以外の物質の量は、NMR分光法の検出限界未満である。
【0052】
一部の実施形態において、本開示による組成物の蒸気圧は、20℃以上の温度で約1トル以上である。一部の実施形態において、組成物の蒸気圧は、50℃以上の温度で約1トル以上でありうる。一部の実施形態において、組成物の蒸気圧は、60℃以上の温度で約1トル以上でありうる。一部の実施形態において、組成物の蒸気圧は、70℃以上の温度で約1トル以上でありうる。一部の実施形態において、組成物の蒸気圧は、100℃以上の温度で約1トル以上でありうる。一部の実施形態において、組成物の蒸気圧は、120℃以上の温度で約1トル以上でありうる。一部の実施形態において、組成物の蒸気圧は、150℃以上の温度で約1トル以上でありうる。一部の実施形態において、組成物の蒸気圧は、180℃以上の温度で約1トル以上でありうる。
【0053】
例えば一部の実施形態において、本開示による組成物の蒸気圧は、20℃~50℃の温度で約1トル以上である。一部の実施形態において、本開示による組成物の蒸気圧は、50℃~100℃の温度で約1トル以上である。一部の実施形態において、本開示による組成物の蒸気圧は、70℃~150℃の温度で約1トル以上である。一部の実施形態において、本開示による組成物の蒸気圧は、100℃~170℃の温度で約1トル以上である。
【0054】
一部の実施形態において、組成物の蒸気圧は、65℃の温度で約1トルである。一部の実施形態において、組成物の蒸気圧は、90℃で約10トルである。一部の実施形態において、組成物の蒸気圧は、64~69℃の温度で約1トルである。一部の実施形態において、組成物の蒸気圧は、70~74℃の温度で約3トルである。一部の実施形態において、組成物の蒸気圧は、75~79℃の温度で約5トルである。一部の実施形態において、組成物の蒸気圧は、80~84℃の温度で約7トルである。
【0055】
本開示による組成物の安定性は、例えばリガンドの異性化を検出するために使用されうる試料の1H NMRスペクトルを決定することによって測定されうる。一部の実施形態において、本開示による組成物は、少なくとも10週間にわたって62℃の温度で安定である。
【0056】
一部の実施形態において、組成物は、標準温度および標準圧力で固体でありうる。一部の実施形態において、組成物は、周囲圧力および120℃未満の温度で固体である。それ故に、蒸着プロセスの場合、本開示による組成物は、固体組成物として使用されうる。本開示を特定の任意の理論に制限することなく、組成物の安定性は、組成物の固体形態に少なくとも部分的に起因する場合があると見なされうる。比較的に高い蒸気圧および安定性は、様々なプロセスにおいて、また低い堆積温度が必要な場合でも、本組成物の使用を可能にしうる。それ故に、一部の実施形態において、本開示による組成物は、蒸着プロセスによって基材上に13族金属含有材料を蒸着するために適切である。一部の実施形態において、アルミニウム含有材料が堆積される。一部の実施形態において、ガリウム含有材料が堆積される。一部の実施形態において、インジウム含有材料が堆積される。
【0057】
一態様において、本開示は、本開示による組成物を生成する方法に関する。本方法は、ビス(メチル)tert‐ブチルアルミニウムを、以下に記載の通りに、三塩化アルミニウムおよびtert‐ブチルリチウムと反応させて、ビス(tert‐ブチル)メチルアルミニウムを得ることを含む。一部の実施形態において、ビス(メチル)tert‐ブチルアルミニウムは、モル比1:1:3で三塩化アルミニウムおよびtert‐ブチルリチウムと反応する。この反応は、tert‐ブチル基をリチウムから三塩化アルミニウムに移動することよって進行することができ、容易に除去される副生成物としての塩化リチウムの形成によって塩化物の除去が促進される。ビス(メチル)tert‐ブチルアルミニウム出発物質と新しく生成されたtert‐ブチルを有するアルミニウム種との間のアルキルリガンド交換反応は、標的分子を高収率で産生しうる。収率は、当技術分野で周知の方法を用いて調整されうる、反応物の比率に依存しうる。
【0058】
一部の実施形態において、本開示による組成物を生成する方法は、反応混合物からビス(tert‐ブチル)メチルアルミニウムを精製することを含む。ビス(tert‐ブチル)メチルアルミニウムは、濾過によって精製されて、三塩化アルミニウムを除去することができる。ビス(tert‐ブチル)メチルアルミニウムは、分別昇華によって精製されうる。こうした方法において、反応で使用される溶媒は、最初に蒸発されうる。次に、ビス(tert‐ブチル)メチルアルミニウムは、不揮発性成分を残留画分に残す昇華装置の凝縮器で収集されうる。代替的に、または追加的に、塩化物などの塩は、濾過によって反応混合物から除去されうる。
【0059】
一態様において、本開示による組成物を生成する方法であって、トリス(tert‐ブチル)アルミニウムをトリメチルアルミニウムと反応させてビス(tert‐ブチル)メチルアルミニウムを得ることを含む方法が開示されている。
【0060】
別の態様において、本開示による組成物を生成する方法であって、トリメチルアルミニウムを三塩化アルミニウムおよびtert‐ブチルリチウムと反応させてビス(tert‐ブチル)メチルアルミニウムを得ることを含む方法が開示されている。
【0061】
また別の態様において、本開示による組成物を使用して基材上に13族金属含有材料を堆積させる方法が開示されている。一部の実施形態において、13族金属含有材料は、蒸着プロセスによって蒸着される。蒸着プロセスは、ALDまたは循環CVDプロセスなどの循環蒸着プロセスでありうる。基材上に13族金属含有材料を堆積させる方法は、反応チャンバ内に基材を提供することと、本開示による組成物を蒸気相で反応チャンバの中に提供することと、基材上に13族金属含有材料を形成するために蒸気相で反応チャンバに第二の反応物を提供することとを含みうる。上述の通り、材料は、例えばアルミニウム含有材料、インジウム含有材料、またはガリウム含有材料でありうる。
【0062】
方法の一部の実施形態において、基材上に堆積された13族金属は、アルミニウム、ガリウム、およびインジウムから成る群から選択される。一部の実施形態において、アルミニウム含有材料が堆積される。一部の実施形態において、ガリウム含有材料が堆積される。一部の実施形態において、インジウム含有材料が堆積される。
【0063】
それ故に、一態様において、蒸着プロセスで使用する、本開示による組成物が開示されている。さらなる一態様において、基材上に13族金属含有材料を堆積させるための本開示による組成物の使用が開示されている。
【0064】
堆積された金属含有材料の化学組成は、第二の反応物による影響を受けることになる。従って、第二の反応物は、問題の用途に従って選択されることになる。具体的な堆積条件は、問題の用途に従って変化しうる。一部の実施形態において、13族金属含有材料を堆積させる方法は、本開示による組成物を反応チャンバの中にパルス注入することを含む。一部の実施形態において、方法は、第二の反応物を反応チャンバの中にパルス注入することを含む。一部の実施形態において、方法は、反応物のパルス間で反応チャンバをパージすることを含む。
【0065】
本明細書で使用される「パージ」という用語は、不活性ガスまたは実質的に不活性のガスが、互いに反応するガスの二つのパルス間で反応器チャンバに供給される手順を指しうる。しかしながら、パージングは、互いに反応しないガスの二つのパルス間で行われうる。例えば窒素ガスを使用することによるパージ(またはパージング)は例えば、二つの前駆体のパルス間、または前駆体と還元剤の間で提供されうる。パージングは、互いに反応する二つのガス間の気相の相互作用を回避または少なくとも低減しうる。当然のことながら、パージは時間的に、または空間的に達成されうるか、または両方で達成されうる。例えば、時間的パージの場合、パージ工程は、例えば反応チャンバに第一の前駆体を提供し、パージガスを反応チャンバに提供し、かつ第二の前駆体を反応チャンバに提供し、層が堆積される基材が移動しないという、時系列で使用することができる。例えば、空間的パージの場合、パージ工程は、第一の前駆体が連続的に供給される第一の位置から、パージガスカーテンを通って、第二の前駆体が連続的に供給される第二の位置に基材を移動させるという形態を取ることができる。
【0066】
本開示による13族含有物質を堆積させる方法は、反応チャンバ内に基材を提供することを含む。言い換えれば、基材は、堆積条件を制御できる空間の中に運ばれる。反応チャンバは、集積回路を形成するために異なるプロセスが実行されるクラスタツールの一部でありうる。一部の実施形態において、反応チャンバは、フロータイプの反応器、例えばクロスフロー反応器でありうる。一部の実施形態において、反応チャンバはシャワーヘッド反応器でありうる。一部の実施形態において、反応チャンバは空間分割された反応器でありうる。一部の実施形態において、反応チャンバは枚葉式ALD反応器でありうる。一部の実施形態において、反応チャンバは大量生産可能な枚葉式ALD反応器でありうる。一部の実施形態において、反応チャンバは、複数の基材を同時に製造するためのバッチ式反応器でありうる。
【0067】
一態様において、本開示による組成物を含有する反応物容器が開示されている。蒸着のための化学反応物送達システムは、反応チャンバの中に反応物を提供するための反応物容器を含むことができる。反応物送達システムは、放射熱ランプ、抵抗ヒーターなどのヒーターを含む加熱手段を含みうる。一部の実施形態において、前記加熱手段は、前記反応物容器を約40℃~約140℃の温度に、例えば約70℃、85℃、90℃、110℃または120℃の温度に加熱するように適合されうる。一部の実施形態において、加熱手段は、反応物容器を約50℃~約140℃の温度に加熱するように適合されうる。一部の実施形態において、加熱手段は、反応物容器を約60℃~約140℃の温度に加熱するように適合されうる。一部の実施形態において、加熱手段は、反応物容器を約80℃~約140℃の温度に加熱するように適合されうる。一部の実施形態において、加熱手段は、反応物容器を約100℃~約140℃の温度に加熱するように適合されうる。一部の実施形態において、加熱手段は、反応物容器を約40℃~約120℃の温度に加熱するように適合されうる。一部の実施形態において、加熱手段は、反応物容器を約40℃~約100℃の温度に加熱するように適合されうる。一部の実施形態において、加熱手段は、反応物容器を約40℃~約80℃の温度に加熱するように適合されうる。一部の実施形態において、加熱手段は、反応物容器を約40℃~約70℃の温度に加熱するように適合されうる。
【0068】
反応物容器は、本開示による固体組成物を含む。ヒーターは反応物容器を加熱し、反応物容器内の反応物を蒸発させる。反応物容器は、反応物容器を通るキャリアガス(例えばN2)の流れのための入口および出口を有することができる。キャリアガスは不活性ガスでありうる。キャリアガスは反応物蒸気(例えば昇華した反応物)をキャリアガスとともに、反応物容器の出口を通して、最終的に反応チャンバ内の基材に押しやる。反応物容器は典型的に、反応物容器の内容物を容器の外部から流体的に隔離するための隔離弁を含む。一つの隔離弁を反応物容器の入口の上流に設け、別の隔離弁を反応物容器の出口の下流に設けることができる。
【0069】
本開示による組成物は、標準圧力および標準温度で固体でありうる。用途に応じて、組成物は、非常に低い圧力で加熱および/または維持されて、蒸着プロセスのために十分な量の反応物蒸気を生成することができる。気化(昇華)した後の蒸気相反応物は、弁と、フィルターと、導管と、反応チャンバの中への蒸気相反応物の送達に関連する他の構成要素とにおける望ましくない凝縮を防ぐために、処理システム全体にわたって気化温度以上に保たれることが重要である。
【0070】
反応物容器には、入口および出口から延在するガスライン、ライン上の隔離弁、および弁の継手が供給される場合があり、継手は残りの蒸着用組立品のガスフローラインに連結するように構成されている。多くの場合、反応物容器と反応チャンバの間の様々な弁およびガスフローラインを加熱するために幾つかの追加ヒーターを設けて、反応物蒸気がこのような構成要素上に凝縮して堆積するのを防ぐことが望ましい。従って、反応物容器と反応チャンバの間のガス輸送構成要素は、温度が反応物の気化/凝縮/昇華温度よりも高く維持される「ホットゾーン」と呼ばれることがある。
【0071】
一部の実施形態において、本開示による反応物容器は、蒸着用組立品での使用のために構成および配置されている。一部の実施形態において、本開示による反応物容器は、ビス(tert‐ブチル)メチルアルミニウムを含有する。一部の実施形態において、本開示による化学反応物容器は、ビス(tert‐ブチル)メチルガリウムを含有する。一部の実施形態において、本開示による化学反応物容器は、ビス(tert‐ブチル)メチルインジウムを含有する。
【0072】
さらに別の態様において、本開示による反応物容器を備える蒸着用組立品が開示されている。蒸着用組立品は、基材上に13族金属含有材料を蒸着するための反応チャンバと、本開示による金属アルキル前駆体を反応チャンバの中に供給するために反応チャンバに接続された本開示による反応物容器を含む反応物送達システムとを含む。
【0073】
基材上に13族金属含有材料を堆積させるための蒸着用組立品は、基材を保持するように配置構成された一つ以上の反応チャンバと、本開示による金属アルキル前駆体を反応チャンバの中に蒸気相で提供するように配置構成された前駆体注入器システムとを備える。蒸着用組立品は、本開示による組成物を含有するように配置構成された反応物容器をさらに備え、組立品は、本開示による組成物を前駆体注入器システムを介して反応チャンバに提供して基材上に13族金属含有材料を堆積させるように配置構成されている。
【0074】
一部の実施形態において、蒸着用組立品は、制御プロセッサと、ALDプロセスを実施するために反応チャンバを操作するように構成されたソフトウェアとを追加的に含みうる。一部の実施形態において、蒸着用組立品は、制御プロセッサと、CVDプロセスを実施するために反応チャンバを操作するように構成されたソフトウェアとを追加的に含みうる。
【0075】
図面の詳細な説明
本開示は、図面に描写された以下の例示的な実施形態によってさらに説明されている。本明細書に示された図は、任意の特定の材料、構造またはデバイスの実際の図であることを意味せず、本開示の実施形態を説明するための単なる概略的な表現にすぎない。当然のことながら、図内の要素は単純化および明瞭化のために例示されていて、必ずしも実寸に比例して描かれていない。例えば、図中の一部の要素の寸法は、本開示の例示された実施形態の理解の向上を助けるために他の要素と比較して誇張されている場合がある。図面に描写された構造および装置は、追加の要素および詳細を含んでいることがあり、それらの要素および詳細は明確化のために省略されている場合がある。
【0076】
図1は、本開示による反応物容器10を示す。反応物容器10は、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、ニッケル、銀、それらの合金、グラファイト、窒化ホウ素、セラミック材料、または前記材料の組み合わせもしくは混合物などの適切な容器材料から作製されている。反応物容器10材料は、熱伝導材料でありうる。反応物容器10材料は、被覆された材料、またはクラッド材料でありうる。反応物容器は、反応物容器10の内部容積12を画定するハウジング11を備える。内部容積12は、本開示による組成物を保持するために適合されている。
【0077】
図1において、反応物容器10は、本開示による組成物16を含む。図において、組成物16は単に、容器10の内部容積12内に定置されている。しかしながら、反応物容器中の組成物の揮発性を改善または調節するために、様々な配置が当該技術分野において周知である。任意のこうした配置、例えば棚、チャネルまたは区画が、本開示による反応物容器10で使用されうる。さらに、組成物16が使用されるプロセス、そのスケール、ならびに前駆体容器10のサイズに応じて、反応物容器10中の前駆体の装填の程度は変化しうる。それ故に、この点においても、
図1は、組成物16の装填の可能な程度を示す単なる概略図であり、だいたいその程度で前駆体容器10の中に装填されうる。
【0078】
反応物容器10は、ヒーター、例えば放射熱ランプまたは抵抗ヒーターなどの加熱手段に連結されうる。加熱手段は反応物容器10を加熱して、反応物容器10内の前駆体の蒸発を促進する。加熱手段は、反応物容器10の内部または外部でありうる。
【0079】
図1のハウジング11は、底111および側壁112を備える。一部の実施形態において、ハウジング11は、実質的に円筒形状を有する。それ故に、ハウジング11は円形の底111を有する。しかしながら、反応物容器10は、その内部容積12を通るキャリアガスの均等な流れを促進する任意の形状を有することができる。一部の実施形態において、反応物容器10は、実質的に直角プリズムの形状を有する。反応物容器10の形状は、有用性、製造および取り扱いの容易さに起因して、上述の理想的な幾何学的形状から逸脱しうる。例えば、任意の縁および/または角は、丸みを帯びている場合があり、または一部の側面は少なくとも部分的に傾斜している場合がある。一部の実施形態において、底および側壁は識別できない場合がある。底111は湾曲している場合がある。ハウジング11は、例えば機械加工によって一部品から構成されうる。しかしながら、ハウジング11は、互いに気密の様態で取り付けられた二つ以上の部品から形成されている可能性がある。例えば、底111および側壁112は分離可能でありうる。
【0080】
反応物容器10のサイズおよび比率は、問題の設計選択および用途に従って、ならびに蒸着プロセスの規模に起因して変化しうる。一部の実施形態において、反応物容器10の高さは、その幅よりも大きい。一部の実施形態において、反応物容器10の高さは、その幅に等しい。一部の実施形態において、反応物容器10の高さは、その幅よりも小さい。一部の実施形態において、反応物容器10は、約0.5~4の範囲内の高さと幅のアスペクト比(例えば1対2または1対3)を有しうる。反応物容器10の高さは、リッド13と、リッド13から最も離れているハウジング11の部分との間の反応物容器10の外側の測定値である。反応物容器10の幅は、高さに対して垂直に反応物容器10を横切る最長の測定値である。
【0081】
反応物容器10は、内部容積12を周囲雰囲気から分離するためのリッド13を備える。リッド13は、キャリアガスを反応物容器10の中に供給するための入口14を備えうる。入口14は入口弁141を備えることができ、入口14は、入口弁141が開いている時に、反応物容器10の内部容積12の中にキャリアガスを選択的に導入するように配置されうる。リッド13は、キャリアガスおよび気化した前駆体を蒸着用組立品(図示せず)の反応チャンバの中に供給するための出口15を備えうる。出口15は出口弁151を備えることができ、出口弁151が開いている時に、気化した前駆体を含有するキャリアガスを反応チャンバの中に選択的に放出するように配置されうる。蒸着用組立品に接続された時、ガスラインは、入口14と出口15、隔離弁、および弁の継手から延在する場合があり、継手は残りの蒸着用組立品のガス流ラインに接続するように構成されている。
【0082】
反応物容器10は、明確化のために図から省略されている追加的な特徴を備えうる。例えば、反応物容器10は、効率的な前駆体蒸発を可能にするための前駆体分配手段を備えうる。この目的のために、様々な前駆体保持構造またはキャリアガス誘導配置が、反応物容器10の内部容積12中に存在しうる。反応物容器10は、固体前駆体粒子がキャリアガス流に捕捉されるのを避けるための特徴を備えうる。様々なフィルターまたは他の封入構造を使用しうる。加えて、入口14および出口15、ならびにそこから延在するガスラインは、反応物蒸気が凝結して任意の構成要素上に堆積することを防止するために、反応物容器10と反応チャンバの間の様々な弁およびガスラインを加熱するためのヒーターを備えうる。
【0083】
図2は、本開示による反応物容器231を備える蒸着用組立品20を概略的に図示する。蒸着用組立品20を使用して、本明細書に記載の通りの堆積方法を実行し、基材上に13族金属含有材料を堆積させることができる。図示した例において、蒸着用組立品20は、一つ以上の反応チャンバ22、前駆体注入器システム23、本開示による組成物を保持するための反応物容器231、第二の反応物容器232、パージガス源233、排気源24、およびコントローラー25を含む。
【0084】
反応チャンバ22は、任意の適切な反応チャンバ、例えばALDまたはCVD反応チャンバを含むことができる。
【0085】
反応物容器231は、容器と、本明細書に記載の通りの組成物とを(単独で、または一つ以上のキャリア(例えば不活性)ガスと混合されて)含むことができる。第二の反応物容器232は、容器と、一つ以上の追加の反応物とを(単独で、または一つ以上のキャリアガスと混合されて)含むことができる。パージガス源233は、一つ以上の不活性ガス(N2、He、Arなど)を含むことができる。三つの反応物容器231~233で図示されているものの、蒸着用組立品20は、任意の適切な数の反応物容器を含むことができる。反応物容器231~233は、ライン234~236を介して反応チャンバ22に連結されることができ、それぞれがフローコントローラー、弁、ヒーターなどを含むことができる。一部の実施形態において、反応物容器231内の本開示による組成物、および/または第二の反応物および/またはパージガスは加熱されうる。一部の実施形態において、反応物容器231は、本開示による組成物が約50℃~約140℃(約70℃~約130℃など)の温度に、例えば60℃、80℃、90℃、100℃、110℃、または120℃の温度に達するように加熱される。排気源24は、一つ以上の真空ポンプを含むことができる。
【0086】
コントローラー25は、弁と、マニホールドと、ヒーターと、ポンプと、蒸着用組立品20中に含まれた他の構成要素とを選択的に動作させるための電子回路およびソフトウェアを含む。このような回路および構成要素は、前駆体、反応物、およびパージガスを、それぞれの源231~233から導入するように動作する。コントローラー25は、ガスパルスシーケンスのタイミングと、基材および/または反応チャンバ22の温度と、反応チャンバ22内の圧力と、様々な他の動作とを制御して、蒸着用組立品20を適切に動作させることができる。コントローラー25は、反応チャンバ22内外への前駆体、反応物、およびパージガスの流れを制御するために、弁を電気的にまたは空気圧で制御する制御ソフトウェアを含むことができる。コントローラー25は、特定のタスクを実行するモジュール(ソフトウェアまたはハードウェア構成要素など)を含むことができる。
【0087】
異なる数と種類の前駆体源および反応物源ならびにパージガス源を含む、蒸着用組立品20の他の構成が可能である。さらに、ガスを反応チャンバ22の中に選択的に供給する、および調整された様態で供給するという目的を達成するために使用されうる弁、導管、前駆体源、およびパージガス源の多くの配置があることが理解される。さらに、蒸着用組立品の概略図であるため、説明を簡単にするために多くの構成要素が省略されている。そのような構成要素としては、例えば様々な弁、マニホールド、精製器、ヒーター、容器、通気孔、および/またはバイパスを挙げることができる。
【0088】
蒸着用組立品20の作動中に、基材(半導体ウェーハ(図示せず)など)が、例えば基材ハンドリングシステムから反応チャンバ22に搬送される。基材(複数可)が反応チャンバ22に搬送された後、ガス源231~233からの一つ以上のガス(前駆体、反応物、キャリアガス、および/またはパージガスなど)は、反応チャンバ22中に導入される。
【0089】
実施例
以下の実施例において、ビス(tert‐ブチル)メチルアルミニウムの調製を実験規模のために記載する。しかしながら、プロセスは、当業者の能力の範囲内での修正を伴う大量生産のために拡張可能でありうる。例えば、工程3に記載の通りの溶媒を蒸留する前に、濾過を使用して不溶性LiCl塩副生成物を除去しうる。次いで、濾過後の溶媒の蒸留は、昇華を完了せずに、適切な純度(>95%純粋)で所望のtBu2AlMe生成物を生成することが期待されうる。
【0090】
以下の実施例において、tBuはtert‐ブチルを表し、Meはメチルを表す。
【0091】
実施例1
ビスメチル(tert‐ブチル)アルミニウム由来のビス(tert‐ブチル)メチルアルミニウムの調製。
【0092】
tBuAlMe2の出発物質は、非特許文献1に記載の通りに調製されることができ、これを出発物質として使用した。簡潔に述べると、tBuAlMe2合成方法は、非極性脂肪族溶媒(ヘキサンなど)中のMe2AlClの溶液に、tert‐ブチルリチウムを添加することを含む。Me2AlCl溶液は、市販業者から購入することができるか、またはAlMe3とAlCl3を2対1のモル比で同じ溶媒中で混合することによって調製しうる。
【0093】
ビス(tert‐ブチル)メチルアルミニウムの合成を、以下のスキーム(I)の化学反応に従って行った。
【0094】
【0095】
tBu2AlMeを、以下に記載の工程を使用して調製した。標準的な不活性大気技法を使用して酸素および水分を厳密に排除したうえで、すべての工程を実施した。
【0096】
工程1:tBuAlMe2とAlCl3を1:1のモル比で混合する
まず、52.6グラム(394mmol)のAlCl3を、PTFE被覆された磁気攪拌バーを備えた3リットルの丸底フラスコの中に入れた。700mLの無水ヘキサンをフラスコに加え、得られた懸濁液の攪拌を開始した。45.0グラム(394mmol)のtBuAlMe2をフラスコに加えた。混合物を周囲温度で1時間攪拌し、すべてのAlCl3を溶解して、無色透明の溶液を得た。
【0097】
工程2:tBuLiの添加
フラスコの内容物を-78℃の冷浴を使用して冷却し、攪拌を継続した。反応混合物の温度が-30℃に低下した時、tBuLi(1.69M、700mL、1.18mol)のペンタン溶液の低速での添加を開始した。添加を約30分間にわたって完了した。混合物の攪拌を冷却浴中で夜通し続けた(約18時間)。その間、システムは徐々に室温にまで温まり、反応は完了した。
【0098】
工程3:溶媒の除去
40℃の温度に設定した加熱マントルの中に反応混合物を入れた。反応溶媒を攪拌しながら、10トルで制御された真空下で蒸留した。溶媒の大半が除去された時、真空レベルを1トルに低下させ、残留していた溶媒を蒸発させた。tBu2AlMeおよびLiClの混合物から成る粗製生成物が、白色粉末の形態でフラスコ中に残った。
【0099】
工程4:LiCl塩からのtBu2AlMeの分離
工程3で得られた粗製反応生成物を、バルク昇華装置のチャンバに移した。精製されたtBu2AlMeを約6時間にわたり、真空中(圧力<100mトル)でチャンバ温度90℃および凝縮器温度-20℃にて凝縮器で収集すると、不揮発性LiCl副生成物がチャンバに残った。105グラム(876mmol、収率77%)のtBuAlMe2(>95%純粋)が凝縮器から得られた。
【0100】
実施例2
トリメチルアルミニウムからのビス(tert‐ブチル)メチルアルミニウムの調製
【0101】
同様に、tBu2AlMeは、以下の反応スキーム(スキームII)に従って、市販の試薬AlMe3、AlCl3、およびtBuLiを使用して調製することができる。実施例1と同様の4工程の合成プロセスを使用することができ、実施例Iと比較した各工程の差異のみを記載している。
【0102】
【0103】
工程1:AlMe3とAlCl3を1:2のモル比で混合する
AlMe3(100mL、ヘキサン中2.0M、200mmol)とAlCl3(400mmol)を1:2のモル比で混合し、システムが平衡になるまで攪拌する。
【0104】
工程2:tBuLiの添加
tBuLi(ヘキサン中約1.7M、約700mL、1.20mol)を、上述の元のプロセスで使用された条件と同じ条件下で添加する。
【0105】
工程3および工程4
生成物を単離するために必要な最終工程は、実施例1に示す通りに完了することができる。
【外国語明細書】