(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105394
(43)【公開日】2022-07-14
(54)【発明の名称】吸着塔
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20220707BHJP
【FI】
B01D53/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000157
(22)【出願日】2021-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山元 一生
(72)【発明者】
【氏名】小野 宏之
【テーマコード(参考)】
4D012
【Fターム(参考)】
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA01
4D012CA03
4D012CA11
4D012CB13
4D012CG01
4D012CG06
(57)【要約】
【課題】性能を低下させることなく吸着剤の全長を短縮した吸着塔を提供する。
【解決手段】原料ガスから目的ガスを分離するガス分離装置に使用される吸着剤が充填された吸着塔であって、前記吸着剤は、吸着されるガスがラングミュア型の吸着等温線を示し、前記吸着されるガスの吸着速度及び前記吸着されるガスの平衡吸着量がいずれも異なる2種類の吸着剤が積層され、前記吸着塔の物質移動帯部分に前記2種類の吸着剤のうち前記吸着されるガスの吸着速度がより大きい第一の吸着剤が積層され、前記吸着塔の平衡吸着部分に前記2種類の吸着剤のうち前記吸着されるガスの平衡吸着量がより大きい第二の吸着剤が積層された、吸着塔。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスから目的ガスを分離するガス分離装置に使用される吸着剤が充填された吸着塔であって、
前記吸着剤は、吸着されるガスがラングミュア型の吸着等温線を示し、前記吸着されるガスの吸着速度及び前記吸着されるガスの平衡吸着量がいずれも異なる2種類の吸着剤が積層され、
前記吸着塔の物質移動帯部分に前記2種類の吸着剤のうち前記吸着されるガスの吸着速度がより大きく、前記吸着されるガスの平衡吸着量がより小さい、第一の吸着剤が積層され、
前記吸着塔の平衡吸着部分に前記2種類の吸着剤のうち前記吸着されるガスの平衡吸着量がより大きく、前記吸着されるガスの吸着速度がより小さい、第二の吸着剤が積層された、
吸着塔。
【請求項2】
前記物質移動帯部分の長さZ
1及び前記平衡吸着部分の長さZ
2が下記計算方法によって計算される、請求項1に記載の吸着塔。
(計算方法)
【数1】
式(1)及び式(2)中:
Z
a 第一の吸着剤の物質移動帯長さ(m)
M
in ガス分離装置の吸着時間内に吸着塔内に流入する不純物量(mol)
M
1 物質移動帯で除去できる不純物量(mol)
A 吸着塔の断面積(m
2)
p 第一の吸着剤の充填密度(kg/m
3)
q 第一の吸着剤の平衡吸着量(mol/kg)
【請求項3】
前記物質移動帯部分の長さZ
1前記平衡吸着部分の長さZ
2が下記計算方法によって計算される、請求項1に記載の吸着塔。
(計算方法)
【数2】
式(3)及び式(4)中:
【数3】
u 空塔速度(m/s)
k
X 第一の吸着剤の吸着速度定数(1/s)
k
Y 第二の吸着剤の吸着速度定数(1/s)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着塔に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス分離装置を用いて原料ガスから目的ガス以外の不純物を精製したいという要請は産業用のガスを利用するにあたって頻繁に存在する。例えば、深冷空気分離装置の前処理として、空気中の二酸化炭素(CO2)及び水の除去、又は水を電気分解して生成した水素ガス中に含まれる水の除去が挙げられる。このようなガスの精製を経済的に行う手法として吸着分離法がある。
吸着分離法を用いたガス分離方法の例として、圧力スイング吸着法(PSA(Pressure Swing Adsorption)法)及び温度スイング吸着法(TSA(Temperature Swing Adsorption)法)が挙げられる。これらのガス分離方法は、一般に、複数の吸着塔を用いるシステムであり、1つの吸着塔でガスを精製し、その吸着塔で不純物を除去できなくなれば別の吸着塔に切り替えてガスの精製を続けることができる。別の吸着塔でガスの生成を行っている最中に、不純物を除去できなくなった吸着塔を加熱及び/又は脱圧等の方法で再吸着可能な状態に再生し、不純物の除去と吸着塔の再生を繰り返すことで、工業的に望ましい連続的なガスの精製を行うことができる手法である。
【0003】
PSA法及びTSA法には様々な設計パラメータが存在する。例えば、吸着塔に充填する吸着剤の量及び吸着塔を切り替える時間を、原料ガスの条件及び目的とする条件に応じて最適化する。特に、吸着塔の大きさの設計に関しては、装置のイニシャルコスト及びランニングコストに大きな影響を及ぼすため、最適な設計を目指すことが重要である。
一般に、最適な設計は、実際に装置を運転して様々なパラメータを最適化することで行われるが、吸着塔内部の吸着挙動が詳細にわかっている系においては、理論的な方法によって最適設計を考えられる場合がある(非特許文献1)。例えば、ゼオライトに対するCO
2の吸着等温線の形状はラングミュア型の吸着等温線であり、一般にラングミュア型の吸着等温線を持つ吸着質/吸着剤の系で、吸着剤を充填した吸着塔に吸着質を流すと、塔内の吸着量分布は、(1)CO
2を平衡吸着量まで吸着してこれ以上吸着できない平衡吸着部分と、(2)吸着剤にガスが吸着している最中であり平衡に到達していない物質移動帯部分以下の2種類の領域に分けられることが知られている(
図1)。物質移動帯の長さは吸着剤の吸着速度に依存し、吸着速度が速いと短く、吸着速度が遅いと長くなる。
【0004】
これまで、吸着力の強い吸着剤と弱い吸着剤を混合した吸着剤層を用いてPSA法を実施することで吸着時の発熱を抑えて吸着塔の性能を高めることが提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-209480号公報
【特許文献2】特許第4128695号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】竹内雍(編著)、分離技術シリーズ3「分かり易い吸着の測定と解析」、分離技術会、平成23年8月10日、p.54-55
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
吸着剤は平衡吸着量が大きく、かつ物質移動帯が短いものが望ましい。しかし実際には平衡吸着量が大きいものの物質移動帯が長かったり、物質移動帯は短いものの平衡吸着量が少なかったりする場合が多い。平衡吸着量を大きくしつつ物質移動帯が短くなるような吸着剤の製造には、高度な技術を必要とする。そのため、平衡吸着量が大きくかつ物質移動帯長さが小さい吸着剤を製造するためには、そのいずれかのみの性質をもつ吸着剤に比べて製造のコストがかかり、結果として吸着塔のコストが増大する。一方平衡吸着量が多いか、物質移動帯が短いという特性のどちらかだけを持つ吸着剤は、その両方をもつ吸着剤に比べて安価であることが多い。
平衡吸着量が大きいが物質移動帯が長い吸着剤、又は物質移動帯が短いが平衡吸着量が小さい吸着剤を、それぞれ単独で用いた場合、吸着塔内での吸着剤の全長が長くなるという問題があった。吸着剤の全長が長くなることで、吸着剤の使用量が増加し、吸着剤の再生に要する時間が長くなったり、吸着剤のコストが上昇したりする。
【0008】
本発明は、性能を低下させることなく吸着剤の全長を短縮した吸着塔を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1] 原料ガスから目的ガスを分離するガス分離装置に使用される吸着剤が充填された吸着塔であって、
前記吸着剤は、吸着されるガスがラングミュア型の吸着等温線を示し、前記吸着されるガスの吸着速度及び前記吸着されるガスの平衡吸着量がいずれも異なる2種類の吸着剤が積層され、
前記吸着塔の物質移動帯部分に前記2種類の吸着剤のうち前記吸着されるガスの吸着速度がより大きく、前記吸着されるガスの平衡吸着量がより小さい、第一の吸着剤が積層され、
前記吸着塔の平衡吸着部分に前記2種類の吸着剤のうち前記吸着されるガスの平衡吸着量がより大きく、前記吸着されるガスの吸着速度がより小さい、第二の吸着剤が積層された、
吸着塔。
[2] 前記物質移動帯部分の長さZ
1及び前記平衡吸着部分の長さZ
2が下記計算方法によって計算される、[1]に記載の吸着塔。
(計算方法)
【数1】
式(1)及び式(2)中:
Z
a 第一の吸着剤の物質移動帯長さ(m)
M
in ガス分離装置の吸着時間内に吸着塔内に流入する不純物量(mol)
M
1 物質移動帯で除去できる不純物量(mol)
A 吸着塔の断面積(m
2)
p 第一の吸着剤の充填密度(kg/m
3)
q 第一の吸着剤の平衡吸着量(mol/kg)
[3] 前記物質移動帯部分の長さZ
1が下記計算方法によって計算される、[1]に記載の吸着塔。
(計算方法)
【数2】
式(3)及び式(4)中:
【数3】
u 空塔速度(m/s)
k
X 第一の吸着剤の吸着速度定数(1/s)
k
Y 第二の吸着剤の吸着速度定数(1/s)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、性能を低下させることなく吸着剤の全長を短縮した吸着塔を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、ラングミュア型の吸着等温線をもつ吸着質/吸着剤の系における吸着塔内の濃度分布を表す模式図である。
【
図2】
図2は、吸着剤量の最適設計法を表す模式図である。
【
図3】
図3は、平衡吸着量と物質移動帯の関係を表す模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の吸着塔を用いるガス分離装置の一実施形態を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の両側の数値をその数値範囲に含む。
本発明において、「ppm」は「体積ppm」すなわち「体積百万分率」を意味する。
本発明において、標準状態における原料ガス中の不純物の濃度の単位は「mol/Nm3」を用いる。
本発明において、min{a,b}は、a及びbのうち大きくない方を意味する。ただし、a及びbはいずれも実数である。
本発明において、吸着塔に充填した吸着剤の長さは、吸着塔の原料ガス入口から分離ガス出口の方向に沿った長さを意味する。
【0013】
本発明の吸着塔は、原料ガスから目的ガスを分離するガス分離装置に使用される吸着剤が充填された吸着塔である。
図4に示す、本発明の吸着塔を用いるガス分離装置の一実施形態を説明する。
ガス分離装置101は、原料ガスG1を圧縮する圧縮機3と、圧縮機3で圧縮した原料ガスから目的ガスを分離する吸着塔1と、圧縮機の原料ガス出口3aと吸着塔1の原料ガス入口1aを接続する供給配管とを備える。
吸着塔1には、吸着されるガスがラングミュア型の吸着等温線を示し、前記吸着されるガスの吸着速度及び前記吸着されるガスの平衡吸着量がいずれも異なる2種類の吸着剤(第一の吸着剤2a、及び第二の吸着剤2b)が原料ガスの流れ方向(吸着塔1の原料ガス入口1aから目的ガス出口1bへの向き)に積層されている。
図4では吸着塔1は1個のみ示されているが、通常、吸着塔1は複数個が切替え可能に並列に接続されている。
【0014】
第一の吸着剤は、吸着塔の物質移動帯部分に位置する。
第一の吸着剤は、2種類の吸着剤のうち、吸着されるガスの吸着速度がより大きく、吸着されるガスの平衡吸着量がより小さい。
【0015】
第二の吸着剤は、吸着塔の平衡吸着部分に位置する。
第二の吸着剤は、2種類の吸着剤のうち、吸着されるガスの平衡吸着量がより大きく、吸着されるガスの吸着速度がより小さい。
【0016】
2種類の吸着剤の組み合わせ(第一の吸着剤/第二の吸着剤)は、特に限定されないが、例えば、NaX型ゼオライト/NaLS(Low Silica)X型ゼオライト等の組み合わせが挙げられる。
【0017】
ラングミュア型の吸着等温線を持つ吸着質/吸着剤の系において、目的とする実験条件で吸着塔から不純物を破過させないようにする最適な層長の計算方法については以下のような方法が知られている(
図2参照)。
【0018】
まず、物質移動帯の長さを実験又は計算によって算出し、その領域で除去可能な不純物量(=M
1とする)を計算する(
図2のS部分)。
次に、除去する必要のある吸着質の量からM
1を引き、平衡吸着部で除去すべき量M
2を計算し、吸着剤の平衡吸着部の吸着剤量を決定する(
図2のT部分)。
【0019】
図2のS部分及びT部分の吸着剤量及び吸着剤の層長の計算式は以下のとおりである。
【数4】
式(5)中:
M
1 物質移動帯で除去できる不純物量(mol)
Z
a 物質移動帯の長さ(m)
A 吸着塔の断面積(m
2)
p 吸着剤の質量密度(kg/m
3)
q 吸着剤の平衡吸着量(mol/kg)
【0020】
【数5】
式(6)中:
M
in 切り替え時間内に吸着塔内に流入する不純物量(mol)
M
1 物質移動帯で除去できる不純物量(mol)
【0021】
【数6】
式(7)中:
Za 物質移動帯の長さ(m)
【0022】
【数7】
式(8)中:
A 吸着塔の断面積(m
2)
p 吸着剤の質量密度(kg/m
3)
q 吸着剤の平衡吸着量(mol/kg)
【0023】
【0024】
図2及び式(5)~式(9)からわかるとおり、吸着剤の全長を短くするためには、平衡吸着量qが大きい吸着剤が望ましい。また、物質移動帯の長さZa(≡Z1)が短くなると平衡吸着部分が増えるので(
図3参照)、吸着塔で処理可能な不純物量を多くできる。そのため、平衡吸着量が大きくかつ物質移動帯部分が短いことが吸着剤として望ましい特性となる。
【0025】
本発明の吸着塔では、吸着剤に吸着されるガスがラングミュア型の吸着等温線を示す吸着剤を2種類用い、この2種類の吸着剤を2層に積層する。ガス流れの下流側の物質移動帯部分に吸着速度がより大きく平衡吸着量がより小さい第一の吸着剤を用い、上流側の平衡吸着部分に平衡吸着量がより大きく吸着速度がより小さい第二の吸着剤を用いることによって、吸着塔に充填する吸着剤の全長を短くできる。
【0026】
吸着剤を2層に積層することによって、1種類の吸着剤より吸着剤層の高さを削減できるときには、下記の不等式の条件を満たしている時のみ可能で、設計可能な吸着剤の長さは式(10)のとおりである。
【数9】
今回の設計が可能な場合、不等式(11)が成り立つ。
【数10】
【0027】
この条件式を吸着剤の平衡吸着量q
x、q
yと吸着速度定数k
x、k
yの満たすべき関係式に直すと式(12)のとおりである。
【数11】
【0028】
式(12)中、各パラメータの意味は下記のとおりである。
【数12】
【0029】
[作用効果]
本発明の吸着塔は、平衡吸着量が大きいが物質移動帯長さが長い吸着剤と、平衡吸着量は大きくないが物質移動帯長さが短い吸着剤を2層に積層したことにより、吸着剤の全長が短く、性能が良い。しかも、本発明の吸着塔は、平衡吸着量が大きくかつ物質移動帯が短いが高価である吸着剤を使用する必要がないので、同等の性能をより安価に得られる。
【実施例0030】
以下では実施例によって本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は後述する実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。
【0031】
[実施例1]
下記設計条件において、空気中のCO2をゼオライトを吸着剤として用いて吸着除去するための吸着塔の設計を行った。
ゼオライトに対するCO2の吸着は、ラングミュア型の吸着等温線を示す。
(設計条件)
原料空気圧力:600kPaA
原料空気温度:15℃
CO2濃度 :500ppm
流速 :0.2 m/s
切替え時間 :4時間
塔径 :4m
(このCO2濃度、原料空気流量、切替え時間のとき、CO2流入量4535mol)
【0032】
空気中のCO2を吸着除去する際に、吸着剤として以下の特徴を持つゼオライト2種類を用いて吸着塔を設計した。
(ゼオライトA)
A社製 ゼオライト
300PaのCO2分圧の時の平衡吸着量 :1.2mol/kg
上記実験条件におけるCO2の物質移動帯長さ:24cm
充填密度 :640kg/m3
(ゼオライトB)
B社製 ゼオライト
300PaのCO2分圧の時の平衡吸着量 :1.0mol/kg
上記実験条件におけるCO2の物質移動帯長さ:8cm
充填密度 :640kg/m3
なお、300Pa=原料空気全圧600kPaAのときの500ppm-CO2の分圧である。
ゼオライトAの方がCO2の平衡吸着量が大きいので、ゼオライトAをガス流れの上流側に、ゼオライトBの方がCO2の物質移動帯長さが短いので、ゼオライトBを下流側に配置する。
【0033】
上記実験条件において、片方のゼオライトだけを用いた従来の設計方法と2種類のゼオライトを用いた新規の設計方法における差を示す。
【0034】
(従来の設計方法)
ゼオライトAのみ:層長59cm 吸着剤量4744kg
ゼオライトBのみ:層長60cm 吸着剤量4850kg
【0035】
(新規の設計方法)
ゼオライトA 44cm+ゼオライトB 8cm:層長52cm,吸着剤量4150kg
新規の設計方法では、1塔あたり吸着剤量で約600kgの削減となった。また、この設計方法で実験を行ったところ、実際にCO2の破過は見られなかった。再生に必要な再生ガス量をシミュレータにより試算したところ3%の低減となった。
【0036】
詳細な計算方法は以下の通りである。
まず、2層積層するにあたり、上記の設計思想の考え方からMTZ長さの短いゼオライトBを下流側に配置し、平衡吸着量の多いゼオライトAを上流側に配置するのがよい。
式(1)によりゼオライトBの物質移動帯で除去できるCO
2量M
1を計算すると、次のとおりである。
【数13】
4時間の切り替え時間内に入ってくるCO
2量M
in(mol)を原料空気流量とCO
2濃度、温度、圧力から計算すると4535molとなる。
【0037】
平衡吸着部分で除去すべきCO
2量M
2を計算すると、次のとおりである。
【数14】
となる。
【0038】
式(2)より、平衡吸着部分の長さZ
2は下記の式で与えられるので、平衡吸着部分の高さは、次のとおりである。
【数15】
【0039】
よって、積層した吸着剤の全長Z=Z1+Z2=8+44=52(cm)である。
この値は、ゼオライトA単独の場合及びゼオライトB単独の場合のいずれに比べても小さい値であった。
【0040】
[実施例2]
下記設計条件において、空気中のトルエン蒸気を活性炭を吸着剤として用いて吸着除去するための吸着塔の設計を行った。
活性炭に対するトルエン蒸気の吸着は、ゼオライトに対するCO2の吸着と同様に、にラングミュア型の吸着等温線を示す。また、吸着塔にガスを流した際の挙動もCO2/ゼオライトの系と同様である。
(設計条件)
原料空気圧力:0.1kPaG
原料空気温度:25℃
トルエン濃度:8.28g/m3-air
流速 :0.25m/s
切替え時間 :4時間
塔径 :4m
(このトルエン濃度、原料空気流量、切替え時間のとき、トルエン流入量23410g)
【0041】
空気中のトルエン蒸気を吸着除去する際に、吸着剤として以下の特徴を持つ活性炭2種類を用いて吸着塔を設計した。
(活性炭A)
A社製 活性炭
圧力0.1kPaGで8.28g/m3のトルエン濃度時の平衡吸着量 0.4gトルエン/g-活性炭
上記実験条件におけるトルエンの物質移動帯長さ:9cm
かさ密度 :0.356g/cm3
(活性炭B)
B社製 活性炭
圧力0.1kPaGで8.28g/m3のトルエン濃度時の平衡吸着量 0.5gトルエン/g-活性炭
上記実験条件におけるトルエンの物質移動帯長さ:18cm
かさ密度 :0.356g/cm3
活性炭Bの方がCO2の平衡吸着量が大きいので活性炭Bをガス流れの上流側に、活性炭Aの方がCO2の物質移動帯長さが短いので、活性炭Aを下流側に配置する。
【0042】
上記実験条件において、片方の活性炭だけを用いた従来の設計方法と2種類の活性炭を用いた新規の設計方法における差を示す。
【0043】
(従来の設計方法)
活性炭Aのみ:層長25cm
活性炭Bのみ:層長26cm
【0044】
(新規の設計方法)
活性炭B 12cm+活性炭A 9cm:層長21cm
このように活性炭Bと活性炭Aを組み合わせる方法により、吸着剤の全長を削減できる。
1…吸着塔、1a…吸着塔の原料ガス入口、1b…吸着塔の目的ガス出口、2…吸着剤、2a…第一の吸着剤、2b…第二の吸着剤、3…圧縮機、3a…圧縮機の原料ガス出口、3b…圧縮機の原料ガス入口、4…供給配管、5…原料ガス配管、6…分離ガス配管、101…ガス分離装置、G1…原料ガス、G2…目的