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▶ 小林製薬株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105722
(43)【公開日】2022-07-14
(54)【発明の名称】ゴシツ加工物を含有する錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/46 20060101AFI20220707BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220707BHJP
   A61K 36/232 20060101ALI20220707BHJP
   A61K 36/73 20060101ALI20220707BHJP
   A61K 36/484 20060101ALI20220707BHJP
   A61K 36/54 20060101ALI20220707BHJP
   A61K 36/258 20060101ALI20220707BHJP
   A61K 36/284 20060101ALI20220707BHJP
   A61K 36/076 20060101ALI20220707BHJP
   A61K 36/65 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
A61K47/46
A61K9/20
A61K36/232
A61K36/73
A61K36/484
A61K36/54
A61K36/258
A61K36/284
A61K36/076
A61K36/65
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086135
(22)【出願日】2022-05-26
(62)【分割の表示】P 2017129093の分割
【原出願日】2017-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】松村 晴香
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、生薬を含有していながらも、包装時や輸送時等において破損しない十分な硬度を備える錠剤を提供することである。
【解決手段】ゴシツ加工物と、ゴシツ加工物以外の植物加工物を含有し、前記ゴシツ加工物の含有量が5~80重量%である錠剤を製造することによって、包装時や輸送時等に耐え得る十分な硬度を備えさせることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴシツ加工物と、ゴシツ加工物以外の植物加工物を含有する錠剤であって、前記ゴシツ加工物の含有量が5~80重量%である錠剤。
【請求項2】
植物加工物が、トウキ、シャクヤク、センキュウ、カンゾウ、ケイヒ、オタネニンジン、ビャクジュツ、ブクリョウ及びボタンピからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
直打錠剤である、請求項1又は2に記載の錠剤。
【請求項4】
素錠である、請求項1~3のいずれかに記載の錠剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の錠剤と、前記錠剤を充填したパウチ容器又はビン容器とを含む製品。
【請求項6】
ゴシツ加工物以外の植物加工物を含有する錠剤の硬度を向上させる方法であって、
ゴシツ加工物以外の植物加工物を含有する錠剤に、ゴシツ加工物を配合する、前記硬度の向上方法。
【請求項7】
ゴシツ加工物以外の植物加工物を含有する錠剤に光沢性を付与する方法であって、
ゴシツ加工物以外の植物加工物を含有する錠剤に、ゴシツ加工物を配合する、前記光沢性の付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴシツ加工物を含有する錠剤に関する。より具体的には、本発明は、ゴシツ加工物以外の植物加工物を含有していながらも、包装時や輸送時等において破損しない十分な機械的強度を備える錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
生薬には、その種類に応じて、様々な生理機能や薬理効果が報告されており、近年では、食品や医薬品等において広く利用されている。従来、生薬は、錠剤、顆粒剤、煎剤、カプセル剤等に製剤化されているが、これらの中でも、錠剤は、服用容易性、生薬の苦味のマスキング等の利点がある点、及び製法も比較的容易である点などから、最も受け入れられ易い製剤形態といえる。
【0003】
錠剤は、製錠された後、包装されて輸送されるが、包装や輸送の過程で相当の振動、衝撃等の外力を受ける。したがって、錠剤の商品価値を維持するためには、錠剤が破損しないように適当な機械的強度(硬度)を有するように製錠しなければならない。
【0004】
ここで、生薬を含有する錠剤には、生薬そのものを粉末化した生薬末(生薬粉砕物)を配合する場合と、生薬の有効成分を抽出した生薬エキス末を配合する場合とがある。
【0005】
生薬末を含有する錠剤は、生薬末自体に繊維質や精油成分等が多く含まれているため、他の有効成分と同様の製剤化技術で圧縮成形して錠剤を製造しても、包装時や輸送時等に耐え得る硬度を備えることができない問題がある。
【0006】
生薬エキス末を含有する錠剤は、一般的な薬物錠剤に比べて、1日に摂取すべき有効成分(生薬エキス末)の量が多くなる。このため、錠剤の厚みが大きくなったり、1回当たりの服用錠数が多くなったりするため、消費者にとって服用し難いという欠点がある。このような欠点の克服には、錠剤中の生薬エキス末の含有量を高めることが有効になるが、錠剤中の生薬エキス末の含有量を高めると、相対的に配合される賦形剤の含有量が少なくなり、その結果、錠剤の硬度が低下し、包装時や輸送時等に耐え得る硬度を備えることができなくなる問題がある。
【0007】
一般に、錠剤の硬度を高める製剤化手法として、乳糖、結晶化セルロース等の賦形剤や、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の結合剤を配合することが知られている。しかしながら、このような製剤化手法を生薬末を含む錠剤や生薬エキス末を含む錠剤に適用したとしても、十分な硬度は得られない問題がある。
【0008】
また、錠剤の硬度を高める他の製剤化手法として、打錠圧を増加することが知られている(非特許文献1)。しかしながら、このような製剤化手法も、生薬末を含む錠剤や生薬エキス末を含む錠剤に適用しても十分な硬度は得られない。また、硬度を向上させようとするあまり過剰に打錠圧を加えると、打錠時のキャッピング(錠剤上面の剥離)、ラミネーション(層状の剥離)等の問題が生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】医薬品開発基礎講座X・製錠工学、地人書館、156頁、1971年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、生薬を含有していながらも、包装時や輸送時等において破損しない十分な硬度を備える錠剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、植物加工物と共にゴシツ加工物を配合して錠剤を製造することによって、包装時や輸送時等に耐え得る十分な硬度を備えさせ得ることを見出した。さらに、植物加工物と共にゴシツ加工物を配合して錠剤を製造することによって、上記硬度の向上だけでなく、光沢性も付与できることも見出した。本発明は、このような知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0012】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. ゴシツ加工物と、ゴシツ加工物以外の植物加工物を含有する錠剤であって、前記ゴシツ加工物の含有量が5~80重量%である錠剤。
項2. 植物加工物が、トウキ、シャクヤク、センキュウ、カンゾウ、ケイヒ、オタネニンジン、ビャクジュツ、ブクリョウ及びボタンピからなる群から選択される1種以上である、項1に記載の錠剤。
項3. 直打錠剤である、項1又は2に記載の錠剤。
項4. 素錠である、項1~3のいずれかに記載の錠剤。
項5. 請求項1~4のいずれかに記載の錠剤と、前記錠剤を充填したパウチ容器又はビン容器とを含む製品。
項6. ゴシツ加工物以外の植物加工物を含有する錠剤の硬度を向上させる方法であって、
ゴシツ加工物以外の植物加工物を含有する錠剤に、ゴシツ加工物を配合する、前記硬度の向上方法。
項7. ゴシツ加工物以外の植物加工物を含有する錠剤に光沢性を付与する方法であって、
ゴシツ加工物以外の植物加工物を含有する錠剤に、ゴシツ加工物を配合する、前記光沢性の付与方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の錠剤によると、生薬を含んでいながらも、硬度を向上させ、包装時や輸送時等に耐え得る十分な硬度を備えることができると共に、さらに錠剤に光沢性を付与し、ユーザの視覚的満足感を高める審美性を備えることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.ゴシツ加工物を含有する錠剤
本発明の錠剤は、所定量のゴシツ加工物と、ゴシツ加工物以外の植物加工物を含有することを特徴とする。以下、本発明の錠剤について詳述する。
【0015】
ゴシツ加工物
本発明の錠剤は、ゴシツ加工物を含有する。ゴシツは、ヒユ科ヒナタイノコズチ(Achyranthes fauriei Leveille et VaniotまたはAchyranthes bidentata Blume)の植物の根である。本発明においては、錠剤に、ゴシツ加工物を植物加工物と共に配合することによって、錠剤の硬度を向上させ、且つ錠剤に光沢性を付与することができる。
【0016】
ゴシツ加工物としては、上述の原料としてのゴシツの粉砕物(ゴシツ末)、乾燥物、溶媒抽出物等が挙げられる。錠剤の硬度向上効果および光沢性付与効果を良好に得る観点から、粉砕物(ゴシツ末)であることが好ましい。
【0017】
ゴシツ末は、ゴシツそのものを粉末化したものである。ゴシツ末の平均粒径については特に限定されないが、錠剤の硬度向上効果および光沢性付与効果を良好に得る観点から、例えば、0.1~100μm、好ましくは5~80μm、より好ましくは10~80μmが挙げられる。ここで、平均粒径とは、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒子径を意味する。レーザー回折・散乱法とは、粒子に対してレーザー光を当てたときに粒子サイズによって回折散乱光の光強度分布が異なることを利用して粒子サイズを測定する方法であり、通常、レーザー回折式の粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所製「レーザー式粒度分析計SALD-2200」)を用いることにより求めることができる。
【0018】
ゴシツ末を得るための調製法としては特に限定されず、例えば、生のゴシツ又はゴシツの乾燥物を、ジェットミル等の公知の粉砕器により粉砕する方法が挙げられる。
【0019】
ゴシツの乾燥物は、ゴシツそのもの又はゴシツ処理物を乾燥させたものである。ゴシツ処理物としてはゴシツの発酵処理物及び酵素処理物等が挙げられる。乾燥物中の水分量としては、10重量%以下が好ましく、8重量%以下がより好ましい。乾燥物の具体的形態は問わず、細切物及び粉砕物(上述のゴシツ末よりも平均粒径が大きいもの)等のいずれでもよい。
【0020】
ゴシツの乾燥物を調製する方法としては特に限定されず、例えば、ゴシツそのもの又は上述のゴシツ処理物を、天日乾燥、遠赤外線照射、乾燥機(熱風乾燥、冷風乾燥、真空凍結乾燥)等の従来公知の乾燥方法に供する方法が挙げられる。なお、乾燥に先立って細切又は粉砕してもよいし、乾燥後に細切又は粉砕してもよい。粉砕の方法は、上述のゴシツ末を調製する際における粉砕方法に準じることができる。
【0021】
ゴシツの溶媒抽出物は、ゴシツの構成成分のうち抽出溶媒に可溶の成分(エキス)である。ゴシツの溶媒抽出物の具体的態様としては、抽出物そのものの液状物及び乾燥物、並びに抽出物と賦形剤との混合物の乾燥物等が挙げられる。
【0022】
ゴシツの溶媒抽出物を得る方法としては特に限定されず、例えば、ゴシツを抽出処理することにより得られる抽出液又はその濃縮液を、乾燥処理に供する方法が挙げられる。抽出処理に使用される抽出溶媒としては特に限定されないが、例えば、水、有機溶媒(エタノール、メタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等のアルコール;含水エタノール、含水メタノール等の含水アルコール;エーテル、ヘキサン、ベンゼン、クロロホルム、アセトン、ペンタン、酢酸エチル等)等が挙げられる。これらの抽出溶媒は、加熱されたものであってもよく、単独溶媒または任意の溶媒の組み合わせによる混合溶媒として用いられる。抽出の条件としては、一般的に植物抽出に適用されるものであれば特に限定されないが、例えば、抽出原料総重量(乾燥重量換算)1重量部に対して、1~500重量部、好ましくは10~200重量部の水や有機溶媒を加え、室温~100℃程度、好ましくは30~70℃程度で撹拌しながら1~300分程度、好ましくは30~200分程度が挙げられる。得られた抽出液について、濾過により固形分を除去し、必要に応じて濃縮した後に、乾燥処理に供される。濃縮の方法としては、特に限定されず、エバポレーター等の公知の溶媒留去法が挙げられる。抽出液又はその濃縮液の乾燥方法としては、特に限定されず、例えば、スプレードライ、減圧濃縮乾燥、凍結乾燥等の公知の乾燥方法が挙げられる。抽出液を乾燥処理(特に、スプレードライによる乾燥処理)に供する場合、抽出液に賦形剤を添加することが望ましい。このように賦形剤を添加することにより、乾燥時間を短縮すると共に、乾燥後の吸湿性を低減させることも可能になる。抽出液の乾燥処理に際して添加される賦形剤としては、薬学的に許容されるものである限り、特に制限されず、例えば、無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、夕ルク、酸化チタン等の無機賦形剤;セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類;デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等のデンプン類;デキストリン、ゼラチン等が挙げられる。これらの賦形剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。抽出液の乾燥処理に際して添加される賦形剤の量(即ち、ゴシツ加工物に含まれる賦形剤量)としては、特に制限されるものではないが、例えば、抽出液の乾燥重量100重量部当たり、賦形剤が5~70重量部、好ましくは20~50重量部が挙げられる。なお、上述の溶媒抽出物には、原料となるゴシツ由来の効果等が失われない範囲で、脱臭、脱色等の精製操作が行われたものであってもよい。
【0023】
上述のゴシツ加工物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本発明の錠剤におけるゴシツ加工物の含有量は、5~80重量%である。この割合で配合することによって、以下に詳述する植物加工物を含有させた錠剤に、高い錠剤硬度とともに光沢性を付与することができ、さらにその厚みを薄くすることもできる。これらの効果をより良好に得る観点から、ゴシツ加工物の好ましい含有量は8~80重量%であり、より好ましくは10~80重量%である。また、ゴシツ加工物の含有量当たりの硬度向上効果及び付与する光沢性の上昇率の観点からは、さらに好ましくは10~70重量%、とくに好ましくは10~60重量%が挙げられる。なお、ゴシツ加工物に賦形剤が含まれている場合における上記のゴシツ加工物の含有量は、当該賦形剤の含有量を除いて換算される値である。
【0025】
本発明の錠剤において、ゴシツ加工物以外の植物加工物に対するゴシツ加工物の配合比率としては特に限定されないが、硬度向上効果及び光沢性付与効果をより良好に得る観点から、当該植物加工物1重量部に対しゴシツ加工物が0.1~15重量部、好ましくは0.15~4重量部、より好ましくは0.15~2.5重量部が挙げられる。
【0026】
ゴシツ加工物以外の植物加工物
本発明の錠剤は、ゴシツ加工物以外の植物加工物を含有する。植物加工物は、原料となる植物(ゴシツ以外)の、粉砕物(生薬末)、乾燥物、溶媒抽出物等が挙げられる。ゴシツ加工物による錠剤の硬度向上効果及び光沢性付与効果を良好に得る観点から、粉砕物(生薬末)であることが好ましい。これらの植物加工物の具体的態様及び調製方法は、下記の植物を原料とすることを除いて、上述のゴシツ加工物の具体的態様及び調製方法と同様である。
【0027】
植物加工物の原料となる植物は、ゴシツの原料であるヒユ科ヒナタイノコズチ以外の植物であれば特に限定されない。例えば、錠剤に付与すべき生理機能や薬理効果等に応じて当業者が適宜選択することができる。当該植物の具体例としては、例えば、オタネニンジン(Panax Ginseng)、田七ニンジン(Panax pseudo-ginseng)、西洋ニンジン(Panax quinquefolium Linne)、カンカ(Cistanche Tubulosa)プランタゴオバタ(Plantago. Ovata Forsk)マオウ(Ephedra sinica Stapf,Ephedra intermedia Schrenk et C.A. Meyer,Ephedra equisetina Bunge)、ダイオウ(Rheum palmatum Linne, Rheum tanguticum Maximowicz, Rheum officinable Baillon, Rheum coreanum Nakaiまたはそれらの種間雑種)、カンゾウ(Glycyrrhiza uralensis Fischer,Glycyrrhiza glabra Linne)、マオウ(Ephedra sinica Stapf,Ephedra intermedia Schrenk et C.A. Meyer,Ephedra equisetina Bunge)、シャクヤク(Paeonia lactiflora Pallas)、オウゴン(Scutellariae baicalensis Georgi)、ショウキョウ(Zingiber officinale Roscoe)、ケイガイ(Schizonepeta tenuifolia Briquet)、レンギョウ(Forsythia suspense Vahl, Forsythia viridissima Lindley)、トウキ(Angelica acutiloba Kitagawa, Angelica acutiloba Kitagawa var. sugiyamae Hikino)、センキュウ(Cnidium officinale Makino)、サンシン(Gardenia jasminoides Ellis)、ハッカ(Mentha arvensis Linne var. piperascens Malinvaud)、ボウフウ(Saposhnikovia divaricata Schischkin)、ビャクジュツ(Atractylodes japonica Koidzumi ex Kitamura, Atractylodes ovata De Candolle)、キキョウ(Platycodon grandiflorum A. De Candolle)、サイコ(Bupleurum falcatum Linne)、ハンゲ(Pinellia ternata Breitenbach)、タイソウ(Zizypus jujube Miller var. inermis Rehder)、キジツ(Citrus aurantium Linne var. daidai Makino, Citrus aurantium Linne ,Citrus natsudaidai Hayata)、ボウイ(Sinomenium acutum Rehder et Wilson)、オウギ(Astragalus membranaceus Bunge, Astragalus mongholicus Bunge)、ソウジュツ(Atractylodes lancea De Candolle, Atractylodeschinensis Koidzumi)、ボタンピ(Paeonia suffruticosa Andrews, Paeonia moutan Sims)、ケイヒ(Cinnamomum cassis Blume)、ブクリョウ(Poria cocos Wolf)等が挙げられる。これらの植物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明の錠剤において、硬度向上効果及び光沢性付与効果をより良好に得る観点から、植物としては、トウキ、シャクヤク、センキュウ、ボタンピ、オタネニンジン、カンゾウ、ケイヒ、ビャクジュツ及びブクリョウからなる群から選択される1種以上が好ましく挙げられる。
【0028】
本発明において植物加工物の原料となる植物の部位は、本発明の効果を奏する限り特に限定されず、また、植物の種類に応じて当業者が適宜選択することができるが、例えば、全草、根茎、葉、根、果実等が挙げられる。
【0029】
本発明の錠剤におけるゴシツ加工物以外の植物加工物の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、総量で通常0.1~90重量%程度、好ましくは10~90重量%程度、より好ましくは20~80重量%程度、さらに好ましくは30~80重量%程度、とくに好ましくは40~80重量%程度が挙げられる。本発明の錠剤では、ゴシツ加工物の配合によって硬度が向上するため、ゴシツ加工物以外の植物加工物が高含有量で含まれていても十分な機械的強度を備えることができる。
【0030】
他の成分
本発明の錠剤は、前記のゴシツ加工物及びゴシツ加工物以外の植物加工物の他に、その用途等に応じて、他の栄養成分や薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分や薬理成分としては、食品や医薬品に使用可能なものであれば特に制限されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、抗炎症剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬エキス末、ビタミン類、メントール類等が挙げられる。これらの栄養成分や薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、使用する成分の種類等に応じて当業者によって適宜設定される。
【0031】
さらに、本発明の錠剤は、前記のゴシツ加工物及びゴシツ加工物以外の植物加工物の他に、必要に応じて、錠剤への製剤化に必要とされる他の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、食品や医薬品に使用可能なものであれば特に制限されないが、例えば、水、賦形剤(前記ゴシツ加工物に含まれる場合及び前記植物加工物に含まれる場合における賦形剤以外)、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、矯味剤、増粘剤、色素、pH調整剤、緩衝剤、キレート剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加剤の含有量については、使用する添加剤の種類等に応じて適宜設定される。
【0032】
製剤物性
本発明の錠剤は、包装時や輸送時等において破損しない適度な硬度を備えることが可能になっている。本発明の錠剤の硬度については、包装時や輸送時等において破損しない程度であればよいが、具体的には、170N以上、より好ましくは180N以上、さらに好ましくは190N以上である。本発明における錠剤の硬度は、ロードセル式錠剤硬度計を用いて測定される。
【0033】
本発明の錠剤は、さらに、光沢性を有する。光沢性は、錠剤の表面を目視することにより判断することができる。
【0034】
製剤形態
本発明の錠剤は、ゴシツ加工物の配合により硬度が高められるため、造粒を予め行わない直打錠剤であってよい。また、本発明の錠剤は、ゴシツ加工物の配合により光沢性が付与されるため、剤皮(例えば、光沢化剤、糖衣基剤、ゼラチン等の水溶性コーティング基剤、腸溶性コーティング基剤、フィルムコーティング基剤等)が設けられない素錠であってもよい。無論、本発明の錠剤が、これらの剤皮が設けられたコーティング錠であること、及びこの場合において、二層錠又はそれ以上の多層錠であることを除外するものではない。
【0035】
本発明の錠剤の大きさは、本発明の効果を奏する限り特に限定されず、例えば、服用対象、服用目的等に応じて当業者が適宜決定することができる。例えば、本発明の錠剤の直径は服用しやすいサイズが例示され、好ましくは直径18mm以下、より好ましくは15mm以下、さらに好ましくは12mm以下が挙げられる。本発明の錠剤はゴシツ加工物の配合により硬度が高められるため、生薬成分の含有量に対し、賦形剤や結合剤などの錠剤硬度を高める目的で配合される添加剤の量を低減することができる。したがって、本発明の錠剤は上述よりもさらに小さい直径で製錠することができ、その直径は、好ましくは10mm以下、より好ましくは9mm以下、さらに好ましくは8mm以下が挙げられる。同様に、錠剤の厚み(最も厚い部分)も薄くすることができ、好ましくは4.45mm以下、さらに好ましくは4.43mm以下が挙げられる。さらに、本発明の錠剤の1錠当たりの重量についても同様に、好ましくは180~400mgが挙げられ、より好ましくは250~350mgが挙げられる。
【0036】
本発明の錠剤の包装態様としては特に限定されず、例えば、PTP包装体などに収容する個別包装、及びパウチ容器又はビン容器に充填される非個別包装が挙げられる。本発明の錠剤はゴシツ加工物の配合により硬度が高められているため、パウチ容器又はビン容器に充填された非個別包装の商品として提供されることがより好ましい。なお、当該商品においてビン容器の材質としては特に限定されず、ガラス、金属、樹脂のいずれであってもよい。
【0037】
製剤方法
本発明の錠剤の製造方法は、得られた錠剤が所望の効果を発揮できる限り、特に限定されず、従来公知の方法に従い製造することができる。通常は、ゴシツ加工物と植物加工物、およびその他、必要に応じて賦形剤等を混合して打錠すればよい。
【0038】
ゴシツ加工物及び植物加工物として、液状物を用いる場合は、その乾燥重量が上述の含有量(つまりゴシツ加工物にあっては5~80重量%、植物加工物にあっては0.1~90重量%等)となる量で用いられる。また、ゴシツ加工物及び植物加工物として賦形剤を含むものを用いる場合は、当該賦形剤を除いた重量が上述の含有量となる量で用いられる。
【0039】
打錠成形においては、配合すべき材料の全部を含む混合物を、予め造粒することなく打錠(直打錠)してもよいし、また打錠前に配合すべき材料の一部または全部を顆粒状等の粒錠に造粒した後に打錠してもよい。本発明においては、ゴシツ加工物の配合で錠剤の硬度が高められるため、予め造粒しない直打錠であっても良好な機械的特性を有する錠剤を得ることができる。
【0040】
打錠成型機としては、単発打錠機、ロータリー式打錠機、高速回転式打錠機等の装置を用いることができる。また、打錠成型する際の打錠圧については、錠剤を成形可能である限り、特に制限されないが、例えば250~4000kg/cm2が挙げられる。
【0041】
摂取量
本発明の錠剤の1日摂取量は、服用対象及び配合されている生薬の種類に応じて適宜変更され得るが、例えば大人一人(体重60kg)に対する1日あたりの投与量は、ゴシツ加工物及び植物加工物の総量で、通常0.01~12g程度、好ましくは0.05~10g程度、より好ましくは0.07~8g程度が挙げられる。また、本発明の錠剤は、通常1日2~3回に分けて経口投与の形態で用いられる。
【0042】
2.錠剤の硬度を向上させる方法・錠剤に光沢性を付与する方法
本発明は、錠剤の硬度を向上させる方法を提供する。具体的には、錠剤の硬度を向上させる方法は、ゴシツ加工物以外の植物加工物を含有する錠剤に、ゴシツ加工物を配合することを特徴とする、当該硬度向上方法において、使用される成分の種類や配合量、錠剤の成形方法等については、前記「1.ゴシツ加工物を含有する錠剤」の欄に記載の通りである。
【0043】
また、本発明は、錠剤に光沢性を付与する方法を提供する。具体的には、錠剤に光沢性を付与する方法は、ゴシツ加工物以外の植物加工物を含有する錠剤に、ゴシツ加工物を配合することを特徴とする。当該光沢性付与方法において、使用される成分の種類や配合量、錠剤の成形方法等については、前記「1.ゴシツ加工物を含有する錠剤」の欄に記載の通りである。
【実施例0044】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
試験例1
1.錠剤の製造
1-1.ゴシツ末の準備
ゴシツ末は、次のように調製した。「ゴシツ乾燥物」(細切物)を、サンプルミルSK-M 10R型(協立理工株式会社製)を用い、回転数10目盛りにて1分間粗粉砕した後、メッシュ500μmで篩過し、さらに、SP-2型卓上粉砕機(株式会社サカイ株式会社製)を用いて回転数16000rpmで本粉砕し、ゴシツ末を得た。得られたゴシツ末の平均粒径は40μmであった。
【0046】
1-2.錠剤の製造
表1に示す組成の錠剤を製造した。具体的には、表1に示す成分の全てを表示の量比で混合し、得られた混合末を打錠機にて10kNの打圧で打錠し、1錠当たり200mg(直径8mmの円盤状)の凸型錠剤を得た。
【0047】
2.錠剤の評価
2-1.硬度
比較例1及び実施例1~9の各錠剤について、ロードセル式錠剤硬度計(PC-30、岡田精工株式会社製)を用いて錠剤に対して水平方向の硬度を測定した。なお、垂直方向は、打錠時に杵で加圧・圧縮する方向であり、水平方向は、当該垂直方向に対して直角の方向である。また、硬度は、10錠の錠剤の硬度をそれぞれ測定し、それら測定値からの平均値として得た。
【0048】
2-2.光沢性
モニター者10名に、比較例1及び実施例1~9の各錠剤の光沢性の程度について評価してもらった。錠剤表面の光沢性が明らかに認められた場合の光沢度「10」、光沢性が認められなかった場合の光沢度「1」として、VAS(Visual Analog Scale)法により評点化し、10名が判定した光沢度の評点の平均値(小数点第二位を四捨五入)を求めた。
【0049】
2-3.厚み
比較例1、実施例3、実施例6、実施例7及び実施例9の錠剤の厚みについて、デジタル外側マイクロメーター211-101E(株式会社MonotaRo製)を用いて測定した。
【0050】
3.結果
得られた結果を表1及び2に示す。ゴシツ末を含有せずトウキ末のみを含む錠剤(比較例1)は、錠剤硬度が小さく光沢性も無いが、ゴシツ末をトウキ末とともに含む錠剤(実施例1~9)は、錠剤硬度が向上し、光沢性も付与された。また、錠剤の厚みについても、トウキ末のみを含む錠剤(比較例1)に比べて、ゴシツ末及びトウキ末を含む錠剤(実施例3、6、7及び9)の方が薄く、服用性に優れた錠剤であった。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
試験例2
トウキ末に代えて、シャクヤク末、センキュウ末、カンゾウ末、ケイヒ末、ニンジン末、ビャクジュツ末、ブクリョウ末またはボタンピ末を採用した以外は、比較例1、実施例2、5、6及び8と同様に錠剤を調製した。いずれの生薬末を用いた場合でも、実施例2、5、6及び8と同様に調製した錠剤は、比較例1と同様に調製した錠剤に比べて、錠剤硬度が向上しかつ光沢性も付与され、さらに厚みの薄い錠剤とすることができたことを確認した。
【0054】
処方例
表3に示す組成の錠剤を調製した。これらはいずれも、前記実施例と同様に、錠剤硬度及び光沢性に優れ、かつ厚みが薄く服用性に優れた錠剤であった。
【0055】
【表3】
【手続補正書】
【提出日】2022-06-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴシツ加工物と、ゴシツ加工物以外の植物加工物を含有する錠剤であって、前記ゴシツ加工物の含有量が5~80重量%である錠剤。