(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105933
(43)【公開日】2022-07-15
(54)【発明の名称】4-メチルピラゾール化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 231/14 20060101AFI20220708BHJP
【FI】
C07D231/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000574
(22)【出願日】2021-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 遼
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 紘久
(57)【要約】 (修正有)
【課題】4-メチルピラゾール化合物の新規な製造方法を提供する。
【解決手段】4-クロロメチルピラゾール化合物を、アミド溶媒、ニトリル溶媒、アルコール溶媒及びジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種の極性溶媒及び芳香族炭化水素溶媒との混合溶媒中、アンモニウム塩及び3級アミン塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩、及び亜鉛と反応させることにより、式(2):
(式中、R
1、R
2及びR
3は、各々独立してC
1~C
6アルキルを表す。)で表される4-メチルピラゾール化合物を製造する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、各々独立してC
1~C
6アルキルを表す。)で表される4-クロロメチルピラゾール化合物を、アミド溶媒、ニトリル溶媒、アルコール溶媒及びジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種の極性溶媒及び芳香族炭化水素溶媒との混合溶媒中、アンモニウム塩及び3級アミン塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩、及び亜鉛と反応させることにより、式(2):
【化2】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、前記と同様の意味を表す。)で表される4-メチルピラゾール化合物を製造する方法。
【請求項2】
式(1)又は式(2)において、R1、R2及びR3がメチルを表す請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記極性溶媒がN-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、エタノール、i-プロパノール、1,2-プロパンジオール、tert-ブタノール、ポリエチレングリコール又はジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記極性溶媒がN-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、i-プロパノール、又はジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記芳香族炭化水素溶媒がトルエンである請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記塩が、塩化アンモニウム、ギ酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸アンモニウム又はトリエチルアミン塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記塩が、塩化アンモニウム、ギ酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム又はトリエチルアミン塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4-メチルピラゾール化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
4-メチルピラゾール化合物は、医農薬等をはじめとするファインケミカルズの中間体として有用な化合物である。例えば、該化合物は殺ダニ活性を有するアクリロニトリル化合物の中間体として有用である。
【0003】
従来、4-メチルピラゾール化合物の製造方法としては、4-クロロメチルピラゾール化合物のクロロメチル基を脱クロロ化して製造する方法が報告されている(特許文献1及び特許文献2)。
一方、2-クロロメチル-4-ピロン化合物のクロロメチル基を脱クロロ化して2-メチル-4-ピロン化合物を製造する方法(特許文献3)及び2-メチル-4,5-ビス(クロロメチル)ピリジン化合物のクロロメチル基を脱クロロ化して2,4,5-トリメチルピリジン化合物を製造する方法が報告されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-342178号公報
【特許文献2】特開2008-007503号公報
【特許文献3】国際公開第2011/109254号
【特許文献4】特表2019-501944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に記載の方法は、4-クロロメチルピラゾール化合物を、パラジウム触媒及び水素ガスを用いて脱クロロ化することで、4-メチルピラゾール化合物を高収率で製造できる点で大変優れたものである。
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の方法では、高価なパラジウム触媒を用いている。近年、パラジウムの急激な価格高騰に伴い、高価で貴重なパラジウムを使用しない反応の開発が重要な課題となっている。
さらに、特許文献1及び特許文献2に記載の方法は、水素ガスを高圧で使用するために、安全面で改善の余地があり、より工業的に安全で、量産に適している方法が求められている。
一方、特許文献3に記載の方法は、飽和塩化アンモニウム水溶液中、亜鉛を用いて、2-メチル-4-ピロン化合物を製造しているが、収率は低く、4-メチルピラゾール化合物を製造するものではない。
また、特許文献4に記載の方法は、亜鉛及び酢酸を用いて2,4,5-トリメチルピリジン化合物を製造しているが、4-メチルピラゾール化合物を製造するものではない。
従って、パラジウム触媒及び水素ガスを使用しないで、4-クロロメチルピラゾール化合物を高収率かつ安価に量産できる製造方法の開発が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、パラジウム触媒及び水素ガスを使用しないでそれらを用いた製造方法に匹敵するほど高収率かつ、経済的に有利な4-メチルピラゾール化合物を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題解決を目標に鋭意研究を重ねた結果、4-クロロメチルピラゾール化合物をアミド溶媒、ニトリル溶媒、アルコール溶媒及びジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種の極性溶媒及び芳香族炭化水素溶媒との混合溶媒中、アンモニウム塩及び3級アミン塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩、及び安価な亜鉛と反応させることで、クロロメチル基を脱クロロ化して、高収率で4-メチルピラゾール化合物を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は下記〔1〕~〔7〕に関するものである。
〔1〕
式(1):
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、各々独立してC
1~C
6アルキルを表す。)で表される4-クロロメチルピラゾール化合物を、アミド溶媒、ニトリル溶媒、アルコール溶媒及びジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種の極性溶媒及び芳香族炭化水素溶媒との混合溶媒中、アンモニウム塩及び3級アミン塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩、及び亜鉛と反応させることにより、式(2):
【化2】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、前記と同様の意味を表す。)で表される4-メチルピラゾール化合物を製造する方法。
〔2〕
式(1)又は式(2)において、R
1、R
2及びR
3がメチルを表す〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕
前記極性溶媒がN-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、エタノール、i-プロパノール、1,2-プロパンジオール、tert-ブタノール、ポリエチレングリコール又はジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種である、〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕
前記極性溶媒がN-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、i-プロパノール、又はジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種である、〔3〕に記載の製造方法。
〔5〕
前記芳香族炭化水素溶媒がトルエンである〔1〕乃至〔4〕のうち何れか一に記載の製造方法。
〔6〕
前記塩が、塩化アンモニウム、ギ酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸アンモニウム又はトリエチルアミン塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、〔1〕乃至〔5〕のうち何れか一に記載の製造方法。
〔7〕
前記塩が、塩化アンモニウム、ギ酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム又はトリエチルアミン塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、〔6〕に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法により、農医薬の製造中間体として重要な4-メチルピラゾール化合物を安価で且つ効率よく製造することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の4-メチルピラゾール化合物の製造方法を更に詳細に説明する。
【0011】
本明細書において示した各置換基の具体例を以下に示す。ここで、n-はノルマル、i-はイソ、sec-はセカンダリー、tert-はターシャリーを各々意味する。
【0012】
本明細書における「Ca~Cbアルキル」の表記は、炭素原子数がa~b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表し、例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、n-ヘキシル等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0013】
各置換基につき原料事情や合成の簡便さを考慮した場合、R1としてはメチル、エチル、n-プロピル、i-ブチルが好ましいが、特にメチルが好ましい。R2としてはメチル、エチル、n-ブチルが好ましいが、特にメチルが好ましい。R3としてはメチル、エチル、n-プロピル、n-ブチルが好ましいが、特にメチルが好ましい。
【0014】
本反応に用いる極性溶媒としては、本反応に不活性な溶媒であれば使用可能であるが、具体的には、アミド溶媒、ニトリル溶媒、アルコール溶媒及びジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種の極性溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0015】
アミド溶媒としては、例えば、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド及びN-メチルピロリドン等が挙げられ、これらの中でもN-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド及びN,N-ジメチルアセトアミドが好ましい。これらは1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0016】
ニトリル溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられ、これらの中でもアセトニトリルが好ましい。これらは1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0017】
アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、tert-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルア
ルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン及びポリエチレングリコール等が挙げられ、これらの中でもエタノール、i-プロパノール、1,2-プロパンジオール、tert-ブタノール及びポリエチレングリコールが好ましく、i-プロパノール及びポリエチレングリコールがより好ましく、i-プロパノールが特に好ましい。これらは1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0018】
本反応に用いる極性溶媒の使用量としては、基質の4-クロロメチルピラゾール化合物に対して0.1質量~20質量部が好ましく、0.5質量~10質量部がより好ましく、1質量~5質量部が更に好ましい。
【0019】
本反応に用いる芳香族炭化水素溶媒としては、本反応に不活性な溶媒であれば使用可能であるが、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n-プロピルベンセン、i-プロピルベンセン、メチルエチルベンゼン、ジエチルベンゼン、i-ブチルベンゼン、ジ-i-プロピルベンセン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン、テトラヒドロナフタレン及びn-ペンチルナフタレン等が挙げられ、これらの中でもトルエンが好ましい。これらは1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0020】
本反応に用いる芳香族炭化水素溶媒の使用量としては、基質の4-クロロメチルピラゾール化合物に対して0.1質量~20質量部が好ましく、0.5質量~10質量部がより好ましく、1質量~5質量部が更に好ましい。
【0021】
本反応には、アンモニウム塩及び3級アミン塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩が使用される。
【0022】
アンモニウム塩としては、例えば、フッ化アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、ギ酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸アンモニウム、トリフルオロ酢酸アンモニウム、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸アンモニウム、硝酸アンモニウム及び硫酸アンモニウム等が挙げられ、これらの中でも塩化アンモニウム、ギ酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム及び酢酸アンモニウムが好ましく、塩化アンモニウム、ギ酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムがより好ましい。これらは1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0023】
3級アミン塩酸塩としては、例えば、トリエチルアミン塩酸塩、トリ-n-プロピルアミン塩酸塩、トリ-n-ブチルアミン塩酸塩、ピリジン塩酸塩、2-ピコリン塩酸塩、3-ピコリン塩酸塩、4-ピコリン塩酸塩、メチルエチルピリジン塩酸塩及びN,N-ジメチルアニリン塩酸塩等が挙げられ、これらの中でもトリエチルアミン塩酸塩が好ましい。これらは1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0024】
本反応に用いる塩の使用量としては、基質の4-クロロメチルピラゾール化合物に対して、1当量~10当量が好ましく、特に3当量~5当量を用いることが好ましい。
【0025】
本反応には、還元剤として亜鉛を用いる。亜鉛の使用量としては、基質の4-クロロメチルピラゾール化合物に対して、1当量~5当量が好ましく、特に1.5当量~3当量を
用いることが好ましい。
【0026】
本反応の反応温度は、通常、0℃以上の温度範囲で行なうことができる。しかし、反応試剤の使用量を含めて経済的な製造を考慮した場合の温度範囲としては、0℃~100℃が好ましく、0℃~80℃がより好ましく、10℃~50℃が更に好ましい。
【0027】
本反応の反応時間は、用いる試剤の量、濃度、反応温度等により一定しないが、通常は30分~74時間、好ましくは1時間~48時間、より好ましくは3時間~24時間の範囲で終了するように、条件を設定することが好ましい。
【0028】
本発明における反応の終了後は、亜鉛の分離、溶媒の留去、有機溶媒による抽出、洗浄等の常法による後処理の後、目的化合物である4-メチルピラゾール化合物を蒸留、結晶化等の方法により、純粋な形で高収率で単離することができる。
【0029】
本発明の4-メチルピラゾール化合物の製造方法は、高収率であることに加えて、高価なパラジウム触媒及び水素ガスを用いていないために、工業生産における安全面に優れると共に、全体の製造コストを下げることが可能となり、量産に適するという効果を奏する。
また本発明の4-メチルピラゾール化合物の製造方法により、不純物を抑制することもできる。
【実施例0030】
以下に、本発明を実施例を挙げて具体的に述べることにより、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
なお、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと記載する。)による定性及び定量分析の条件を以下に記載する。
[定性分析]
HPLCを用いた定性分析は、以下に記載する測定条件を用いて実施した。
カラム:Inertsil ODS-3,250mm,4.6mmφ,5μm(ジーエルサイエンス社製)
流速:1.2mL/min
カラム温度:10℃
UV検出波長: 254nm
溶離液:アセトニトリル/水=1/1(体積比)
サンプル溶解液:アセトニトリル
[定量分析]
HPLCを用いた定量分析には、1,4-ジエトキシベンゼンを内部標準物質とした内部標準法を用い、測定はUV検出波長を220nmに変更した以外は定性分析と同様の測定条件で実施した。
【0031】
[実施例1-1]
1,3,4-トリメチル-1H-ピラゾール-5-カルボン酸メチル(以下、化合物(2-1)と称する。)の製造
4-(クロロメチル)-1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-5-カルボン酸メチル(以下、化合物(1-1)と称する。)1.04g、亜鉛1.00g、塩化アンモニウム1.33g、トルエン5.01g及びi-プロパノール1.00gを加え、窒素雰囲気下、10℃にて21時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を室温に昇温し、トルエン50mlで希釈し濾過することで、化合物(2-1)を含むトルエン溶液51.30gを得た。このトルエン溶液をHPLCを用いて定量分析した結果、化合物(2-1)を0.70g含むことを確認した(収率88.5%)。
[実施例1-2~実施例1-4]
極性溶媒を変更した以外は、上記の実施例1-1に記載した方法と同じ条件で反応を行った。極性溶媒の種類、極性溶媒の使用量及び収率を下記の第1表に記載する。
【0032】
[第1表]
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――実施例No 極性溶媒 使用量 収率(%)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――実施例1-1 i-プロパノール 1.00g 88.5
実施例1-2 エタノール 1.00g 82.4
実施例1-3 1,2-プロパンジオール 1.04g 87.3
実施例1-4 tert-ブタノール 1.03g 83.0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0033】
[実施例2-1]
化合物(1-1)1.02g、亜鉛0.97g、塩化アンモニウム1.34g、トルエン4.98g及びi-プロパノール2.02gを加え、窒素雰囲気下、10℃にて24時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を室温に昇温し、トルエン50mlで希釈し濾過することで、化合物(2-1)を含むトルエン溶液50.62gを得た。このトルエン溶液をHPLCを用いて定量分析した結果、化合物(2-1)を0.79g含むことを確認した(収率96.0%)。
[実施例2-2及び実施例2-3]
亜鉛、トルエン及びi-プロパノールの使用量を変更した以外は、上記の実施例2-1に記載した方法と同じ条件で反応を行った。各々の試薬の使用量及び収率を下記の第2表に記載する。
【0034】
[第2表]
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――実施例No 亜鉛 トルエン i-プロパノール 収率(%)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――実施例2-1 0.97g 4.98g 2.02g 96.0
実施例2-2 0.99g 2.04g 5.02g 96.1
実施例2-3 0.50g 1.99g 4.94g 90.4
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0035】
[実施例3-1]
化合物(1-1)0.10g、亜鉛0.10g、塩化アンモニウム0.14g、トルエン0.49g及びN-メチルピロリドン0.11gを加え、窒素雰囲気下、50℃にて3時間撹拌した。反応終了後の溶液をHPLCを用いて定性分析した結果、化合物(2-1)のピーク面積(S2-1と表す。)と化合物(1-1)のピーク面積(S1-1と表す。)の面積比(S2-1/S1-1)は100/0(Rt=7.0分/8.8分)であり、溶媒であるトルエンのピークを削除した、化合物(2-1)及び化合物(1-1)の相対面積百分率の和は96.8%であった。
[実施例3-2~実施例3-6]
極性溶媒の種類を変更した以外は、上記の実施例3-1に記載した方法と同じ条件で反応を行った。極性溶媒の種類、化合物(2-1)と化合物(1-1)の面積比(S2-1/S1-1)及び相対面積百分率の和を下記の第3表に記載する。
【0036】
[第3表]
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例No 極性溶媒 面積比 面積百分率の和(%)
(S2-1/S1-1)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――実施例3-1 N-メチルピロリドン 100/0 96.8
実施例3-2 N,N-ジメチルホルムアミド 100/0 95.5
実施例3-3 N,N-ジメチルアセトアミド 100/0 95.4
実施例3-4 ジメチルスルホキシド 100/0 91.9
実施例3-5 アセトニトリル 100/0 67.4
実施例3-6 ポリエチレングリコール 86/14 95.2
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0037】
[実施例4-1~実施例4-4]
塩の種類及び使用量を変更した以外は、上記の実施例3-1に記載した方法と同じ条件で反応を行った。塩の種類、塩の使用量、化合物(2-1)と化合物(1-1)の面積比(S2-1/S1-1)及び相対面積百分率の和を下記の第4表に記載する。
【0038】
[第4表]
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――実施例No 塩 使用量 面積比 面積百分率の和(%)
(S2-1/S1-1)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――実施例4-1 ギ酸アンモニウム 0.15g 100/0 98.3
実施例4-2 炭酸水素アンモニウム 0.19g 100/0 96.7
実施例4-3 酢酸アンモニウム 0.19g 80/20 98.0
実施例4-4 トリエチルアミン塩酸塩 0.34g 100/0 92.0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0039】
[実施例5-1]
化合物(1-1)1.02g、亜鉛0.48g、塩化アンモニウム0.79g、トルエン5.03g及びN-メチルピロリドン1.02gを加え、窒素雰囲気下、50℃にて9時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を室温に冷却し、トルエン50mlで希釈し濾過することで、化合物(2-1)を含むトルエン溶液52.07gを得た。このトルエン溶液をHPLCを用いて定量分析した結果、化合物(2-1)を0.79g含むことを確認した(収率95.4%)。
[実施例5-2及び実施例5-3]
亜鉛、塩化アンモニウムの使用量を変更した以外は、上記の実施例5-1に記載した方法と同じ条件で反応を行った。各々の試薬の使用量及び収率を下記の第5表に記載する。
【0040】
[第5表]
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――実施例No 亜鉛 塩化アンモニウム 収率(%)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――実施例5-1 0.48g 0.79g 95.4
実施例5-2 0.48g 1.33g 96.9
実施例5-3 0.99g 1.34g 98.3
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0041】
[比較例1-1~比較例1-3]
金属の種類及び使用量を変更した以外は、上記の実施例1-1記載した方法と同じ条件で反応を行った。金属の種類、金属の使用量及び収率を下記の第6表に記載する。
【0042】
[第6表]
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例No 金属 使用量 収率(%)
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比較例1-1 マグネシウム 0.37g 0
比較例1-2 鉄 0.83g 0
比較例1-3 アルミニウムイソプロポキシド 3.02g 0
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【0043】
[比較例2]
化合物(1-1)0.40g、亜鉛0.39g、塩化アンモニウム1.07g、トルエン4.33g及び水2.00gを加え、窒素雰囲気下、30℃にて18時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を室温に冷却し、トルエン30mlで希釈し濾過及び抽出することで、化合物(2-1)を含むトルエン溶液27.22gを得た。このトルエン溶液をHPLCを用いて定量分析した結果、化合物(2-1)を0.17g含むことを確認した(収率52.5%)。
【0044】
[比較例3]
化合物(1-1)0.10g、亜鉛0.10g及び酢酸0.51gを加え、窒素雰囲気下、100℃にて2時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を室温に冷却し、アセトニトリルで希釈し濾過することで、化合物(2-1)を含むアセトニトリル溶液を得た。このアセトニトリル溶液をHPLCを用いて定量分析した結果、化合物(2-1)を34.8mg含むことを確認した(収率40.4%)。
【0045】
第1表から第5表が示すように、実施例1-1~実施例5-3の4-メチルピラゾール化合物を製造する方法は、特に収率の点で、優れた結果が得られた。
一方、比較例1-1~比較例1-3の方法は、4-メチルピラゾール化合物が生成せず、比較例2及び比較例3の方法は、低収率であることが確認された。
本発明の製造方法は、高価なパラジウム触媒及び水素ガスを使用しないことで低コストで工業的に安全に農医薬の製造中間体として重要な化合物である4-メチルピラゾール化合物を高収率で製造する方法として有用である。