(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106522
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】金属複合粒子担持体の製造方法、及び組成物
(51)【国際特許分類】
B22F 9/24 20060101AFI20220712BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20220712BHJP
B22F 1/17 20220101ALI20220712BHJP
【FI】
B22F9/24 E
B22F1/00 K
B22F1/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021001576
(22)【出願日】2021-01-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】橋口 雄太
(72)【発明者】
【氏名】辻 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】川口 達也
(72)【発明者】
【氏名】松下 敏之
(72)【発明者】
【氏名】深澤 駿
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 忠博
(72)【発明者】
【氏名】中村 功
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA06
4K017BA02
4K017BB02
4K017CA08
4K017EJ02
4K017FB07
4K017FB11
4K018BA01
4K018BB04
4K018BB05
4K018BC22
(57)【要約】
【課題】金属複合粒子が担体に担持された後の金属複合粒子の凝集を十分に抑制することが可能な金属複合粒子担持体の製造方法を提供すること。
【解決手段】第1金属元素を構成元素として有する第一金属化合物を含む溶液と、第1還元剤を含む溶液とを混合して第1反応液を得る工程1と、第1反応液と、第2金属元素を構成元素として有し、第2金属元素は第1金属元素とは異なる第二金属化合物を含む溶液と、を混合して混合液を得る工程2と、混合液、第2還元剤を含む溶液、及び担体を含む分散液を用いて、担体に金属複合粒子を担持させ、金属複合粒子担持体を得る工程3と、を含み、工程1、工程2及び工程3を、複数のマイクロミキサを備えるマイクロリアクタシステムで行う金属複合粒子担持体の製造方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む第1金属元素を構成元素として有する第一金属化合物を含む溶液と、第1還元剤を含む溶液とを混合して第1反応液を得る工程1と、
前記第1反応液と、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む第2金属元素を構成元素として有し、前記第2金属元素は前記第1金属元素とは異なる第二金属化合物を含む溶液と、を混合して混合液を得る工程2と、
前記混合液、第2還元剤を含む溶液、及び担体を含む分散液を用いて、前記担体に金属複合粒子を担持させ、金属複合粒子担持体を得る工程3と、を含み、
前記工程1、前記工程2及び前記工程3を、複数のマイクロミキサを備えるマイクロリアクタシステムで行う、金属複合粒子担持体の製造方法。
【請求項2】
前記工程3は、前記混合液と前記第2還元剤を含む前記溶液とを混合して、前記金属複合粒子を含む第2反応液を得る工程3-1と、
前記第2反応液と前記担体を含む前記分散液とを混合して、前記金属複合粒子担持体を得る工程3-2とを有し、
前記混合液と前記第2還元剤を含む前記溶液とが合流してから、前記第2反応液と前記担体を含む前記分散液とが合流するまでの滞留時間が5.99秒以下である、請求項1に記載の金属複合粒子担持体の製造方法。
【請求項3】
前記工程3-1で得られる前記第2反応液を、前記工程2の前記第1反応液の代わりに用いることによって、前記工程2と前記工程3-1とを交互に1回以上繰り返して行う、請求項2に記載の金属複合粒子担持体の製造方法。
【請求項4】
前記工程3では一つのマイクロミキサを用い、前記混合液、前記第2還元剤を含む前記溶液、及び前記担体を含む前記分散液を同時に混合して前記金属複合粒子担持体を得る、請求項1に記載の金属複合粒子担持体の製造方法。
【請求項5】
金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む第1金属元素を構成元素として有する第一金属化合物を含む溶液と、第1還元剤を含む溶液とを混合して第1反応液を得る工程1と、
前記第1反応液と、第2還元剤を含む溶液とを混合して混合液を得る工程2Aと、
前記混合液と、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む第2金属元素を構成元素として有し、前記第2金属元素は前記第1金属元素とは異なる第二金属化合物を含む溶液と、担体を含む分散液とを用いて、前記担体に金属複合粒子を担持させ、金属複合粒子担持体を得る工程3Aと、を含み、
前記工程1、前記工程2A及び前記工程3Aを、複数のマイクロミキサを備えるマイクロリアクタシステムで行う、金属複合粒子担持体の製造方法。
【請求項6】
前記工程3Aは、前記混合液と前記第二金属化合物を含む前記溶液とを混合して、前記金属複合粒子を含む第2反応液を得る工程3A-1と、
前記第2反応液と前記担体を含む前記分散液とを混合して、前記金属複合粒子担持体を得る工程3A-2とを有し、
前記混合液と前記第二金属化合物を含む前記溶液とが合流してから、前記第2反応液と前記担体を含む前記分散液とが合流するまでの滞留時間が5.99秒以下である、請求項5に記載の金属複合粒子担持体の製造方法。
【請求項7】
前記分散液における前記担体の含有量が0.1~5質量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の金属複合粒子担持体の製造方法。
【請求項8】
前記第1還元剤及び前記第2還元剤は、ヒドラジン化合物、水素化ホウ素化合物、及び有機カルボン酸化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の金属複合粒子担持体の製造方法。
【請求項9】
前記第一金属化合物及び前記第二金属化合物は、それぞれ、前記第1金属元素及び前記第2金属元素として、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)のうち1種のみを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の金属複合粒子担持体の製造方法。
【請求項10】
前記金属複合粒子担持体における前記金属複合粒子の担持量が0.01~50質量%である、請求項1~9のいずれか一項に記載の金属複合粒子担持体の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法で得られる金属複合粒子担持体を含む組成物。
【請求項12】
金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)からなる群より選ばれる2種以上の金属を含有し、コア部分とシェル部分の組成が互いに異なるコア-シェル構造を有する金属複合粒子と、前記金属複合粒子を担持する担体と、を備える金属複合粒子担持体を含有する組成物であって、
前記金属複合粒子の平均粒子径が1.0~15nmであり、
電気化学的表面積が105~200m2/g-Ptである、組成物。
【請求項13】
前記金属複合粒子担持体における前記金属複合粒子の担持量が0.01~50質量%である、請求項12に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属複合粒子担持体の製造方法、及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロミキサを用いて、2種類の金属化合物と還元剤溶液とを逐次的に混合することで、コアーシェル型ナノ粒子を得る方法が知られている。特許文献1では、第1マイクロミキサに各溶液の供給を開始してから、第3マイクロミキサの液出口から分散液が流出するまでの時間を0.001~6秒にすることで、金属複合粒子の凝集を抑制する技術が提案されている。また、製造した金属複合粒子を、担体の撹拌を行っている受け容器に捕集して混合することで、金属複合粒子担持体を製造することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の製造方法によれば、金属複合粒子の機能を発揮するうえで不要な保護剤を低減することができる。一方で、金属複合粒子の良好な分散状態を維持したまま担体に担持させることが難しい。この要因としては、金属複合粒子と担体が接触する前に、金属複合粒子が接触して凝集が生じてしまうことが考えられる。また、特許文献1の製造方法では、受け容器の担体に対して、金属複合粒子を連続的に混合しているため、担体の担持量が経時的に変化してしまう。このため、同一組成の金属複合粒子担持体を連続的に生産することが難しいという事情がある。
【0005】
そこで、本開示では、金属複合粒子が担体に担持された後の金属複合粒子の凝集を十分に抑制することが可能な金属複合粒子担持体の製造方法を提供する。また、本開示では、担体に担持された金属複合粒子の凝集が十分に抑制されている金属複合粒子担持体を含む組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、一つの側面において、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む第1金属元素を構成元素として有する第一金属化合物を含む溶液と、第1還元剤を含む溶液とを混合して第1反応液を得る工程1と、第1反応液と、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む第2金属元素を構成元素として有し、第2金属元素は第1金属元素とは異なる第二金属化合物を含む溶液と、を混合して混合液を得る工程2と、上記混合液、第2還元剤を含む溶液、及び担体を含む分散液を用いて、担体に金属複合粒子を担持させ、金属複合粒子担持体を得る工程3と、を含み、工程1、工程2及び工程3を、複数のマイクロミキサを備えるマイクロリアクタシステムで行う、金属複合粒子担持体の製造方法を提供する。
【0007】
上記製造方法では、金属複合粒子の合成と担体への担持を複数のマイクロミキサを備えるマイクロリアクタシステムで行っている。このため、各工程を連続的に且つ迅速に行うことが可能であり、金属複合粒子担持体を連続的に製造することができる。このように連続的な製造が可能であることから、金属複合粒子担持体を工業スケールで大量生産することができる。
【0008】
そして、上記製造方法の工程3では、金属複合粒子の生成と担体への担持が速やかに進行する。担体への担持により金属複合粒子の凝集が十分に抑制されることから、このようにして得られる金属複合粒子担持体では、金属複合粒子が高い分散性を維持した状態で担体に担持される。
【0009】
上記工程3は、上記混合液と第2還元剤を含む溶液とを混合して、金属複合粒子を含む第2反応液を得る工程3-1と、上記第2反応液と担体を含む分散液とを混合して、金属複合粒子担持体を得る工程3-2とを有し、上記混合液と第2還元剤を含む溶液とが合流してから、第2反応液と担体を含む分散液とが合流するまでの滞留時間が5.99秒以下であることが好ましい。これによって、担体に担持される前(分散液に合流する前)の第2反応液に含まれる金属複合粒子の凝集を一層抑制することができる。したがって、金属複合粒子が担体に担持された後の金属複合粒子の分散性を十分に維持することができる。
【0010】
工程3-1で得られる第2反応液を、工程2の第1反応液の代わりに用いることによって、工程2と工程3-1とを交互に1回以上繰り返して行うことが好ましい。これによって、金属複合粒子に含まれる金属種の数を増やすことができる。
【0011】
上記工程3では一つのマイクロミキサを用い、上記混合液、第2還元剤を含む溶液、及び担体を含む分散液を同時に混合して金属複合粒子担持体を得ることが好ましい。このような製造方法であれば、使用するマイクロミキサの数を減らして設備の簡素化を図ることができる。また、金属複合粒子の生成と担体への担持とを同時進行で行うことができるため、金属複合粒子の凝集を一層抑制することができる。
【0012】
本開示は、一つの側面において、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む第1金属元素を構成元素として有する第一金属化合物を含む溶液と、第1還元剤を含む溶液とを混合して第1反応液を得る工程1と、第1反応液と、第2還元剤を含む溶液とを混合して混合液を得る工程2Aと、上記混合液と、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む第2金属元素を構成元素として有し、第2金属元素は第1金属元素とは異なる第二金属化合物を含む溶液と、担体を含む分散液とを用いて、担体に金属複合粒子を担持させ、金属複合粒子担持体を得る工程3Aと、を含み、工程1、工程2A及び工程3Aを、複数のマイクロミキサを備えるマイクロリアクタシステムで行う、金属複合粒子担持体の製造方法を提供する。
【0013】
上記製造方法では、金属複合粒子の合成と担体への担持を複数のマイクロミキサを備えるマイクロリアクタシステムで行っている。このため、各工程を連続的に且つ迅速に行うことが可能であり、金属複合粒子担持体を連続的に製造することができる。このように連続的な製造が可能であることから、金属複合粒子担持体を工業スケールで大量生産することができる。
【0014】
そして、上記製造方法の工程3では、金属複合粒子の生成と担体への担持が速やかに進行する。担体への担持により金属複合粒子の凝集が十分に抑制されることから、このようにして得られる金属複合粒子担持体では、金属複合粒子が高い分散性を維持した状態で担体に担持される。
【0015】
上記工程3Aは、上記混合液と第二金属化合物を含む溶液とを混合して、金属複合粒子を含む第2反応液を得る工程3A-1と、第2反応液と担体を含む分散液とを混合して、金属複合粒子担持体を得る工程3A-2とを有し、上記混合液と第二金属化合物を含む溶液とが合流してから、第2反応液と担体を含む分散液とが合流するまでの滞留時間が5.99秒以下であることが好ましい。これによって、担体に担持される前(分散液に合流する前)の第2反応液に含まれる金属複合粒子の凝集を一層抑制することができる。したがって、金属複合粒子が担体に担持された後の金属複合粒子の分散性を十分に維持することができる。
【0016】
工程3A-1で得られる第2反応液を、工程2Aの前記第1反応液の代わりに用いることによって、工程2Aと工程3A-1とを交互に1回以上繰り返して行うことが好ましい。これによって、金属複合粒子に含まれる金属種の数を増やすことができる。
【0017】
上記工程3Aでは一つのマイクロミキサを用い、上記混合液、第二金属化合物を含む溶液、及び担体を含む分散液を同時に混合して金属複合粒子担持体を得ることが好ましい。このような製造方法であれば、使用するマイクロミキサの数を減らして設備の簡素化を図ることができる。また、金属複合粒子の生成と担体への担持とを同時進行で行うことができるため、金属複合粒子の凝集を一層抑制することができる。
【0018】
分散液における担体の含有量は0.1~5質量%であってよい。これによって、分散液の流動性を維持しつつ、分散液に含まれる担体と金属複合粒子との接触頻度を十分に高い水準に維持することができる。
【0019】
第1還元剤及び第2還元剤は、ヒドラジン化合物、水素化ホウ素化合物、及び有機カルボン酸化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでよい。これによって、十分に高い収率で金属複合粒子を生成させることができる。したがって、金属複合粒子担持体における金属複合粒子の担持量を十分に多くすることができる。
【0020】
第一金属化合物及び第二金属化合物は、それぞれ、第1金属元素及び第2金属元素として、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)のうち1種のみを含んでよい。これによって、例えば触媒のような種々の分野に有用な金属複合粒子担持体を製造することができる。
【0021】
金属複合粒子担持体における金属複合粒子の担持量は0.01~50質量%であることが好ましい。これによって、例えば触媒のような種々の分野に有用な金属複合粒子担持体を得ることができる。
【0022】
本開示の一側面に係る組成物は、上述のいずれかの製造方法で得られる金属複合粒子担持体を含む。上記組成物は、金属複合粒子の凝集が十分に抑制された金属複合粒子担持体を含有する。したがって、例えば触媒等の用途において高い性能を発揮することができる。
【0023】
本開示の一側面に係る組成物は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)からなる群より選ばれる2種以上の金属を含有し、コア部分とシェル部分の組成が互いに異なるコア-シェル構造を有する金属複合粒子と、金属複合粒子を担持する担体と、を備える金属複合粒子担持体を含有する組成物であって、金属複合粒子の平均粒子径が1.0~15nmであり、電気化学的表面積が105~200m2/g-Ptである、組成物を提供する。
【0024】
上記組成物は、所定の平均粒子径を有し且つコア部分とシェル部分の組成が互いに異なるコア-シェル構造を有する金属複合粒子が担持された金属複合粒子担持体を含有する。このような組成物は、電気化学的表面積が十分に大きいことから、金属複合粒子担持体における金属複合粒子の凝集が十分に抑制されている。このため、例えば触媒等の用途において高い性能を発揮することができる。
【0025】
上記金属複合粒子担持体における金属複合粒子の担持量が0.01~50質量%であってよい。このような組成物は、例えば触媒のような種々の分野において有用である。
【発明の効果】
【0026】
金属複合粒子が担体に担持された後の金属複合粒子の凝集を十分に抑制することが可能な金属複合粒子担持体の製造方法を提供することができる。また、担体に担持された金属複合粒子の凝集が十分に抑制されている金属複合粒子担持体を含む組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】金属複合粒子担持体の製造方法の一例を示す図である。
【
図2】
図1の製造方法に用いられるマイクロリアクタシステムの一例を示す模式図である。
【
図3】金属複合粒子担持体の製造方法の変形例を示す図である。
【
図4】
図3の製造方法に用いられるマイクロリアクタシステムの一例を示す模式図である。
【
図5】金属複合粒子担持体の製造方法の一例を説明する図である。
【
図6】
図5の製造方法に用いられるマイクロリアクタシステムの一例を示す模式図である。
【
図7】比較例で用いたマイクロリアクタシステムを示す模式図である。
【
図8】実施例1で得られた金属複合粒子担持体における金属複合粒子のSTEM-EDSマッピング分析結果を示す写真である。
【
図9】実施例2で得られた金属複合粒子担持体における金属複合粒子のSTEM-EDSマッピング分析結果を示す写真である。
【
図10】実施例3で得られた金属複合粒子担持体における金属複合粒子のSTEM-EDSマッピング分析結果を示す写真である。
【
図11】比較例1で得られた金属複合粒子担持体における金属複合粒子のSTEM-EDSマッピング分析結果を示す写真である。
【
図12】実施例1の金属複合粒子担持体における金属複合粒子の粒径分布である。
【
図13】実施例2の金属複合粒子担持体における金属複合粒子の粒径分布である。
【
図14】実施例3の金属複合粒子担持体における金属複合粒子の粒径分布である。
【
図15】比較例1の金属複合粒子担持体における金属複合粒子の粒径分布である。
【
図16】参考例1の金属複合粒子担持体における金属複合粒子の粒径分布である。
【
図17】参考例2の金属複合粒子担持体における金属複合粒子の粒径分布である。
【
図18】参考例3の金属複合粒子担持体における金属複合粒子の粒径分布である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、場合により図面を参照して、本発明の幾つかの実施形態を以下に詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0029】
[金属複合粒子担持体の製造方法(実施形態1)]
一実施形態に係る金属複合粒子担持体の製造方法は、以下の工程1、工程2及び工程3を有する。この製造方法では、複数のマイクロミキサを備えるマイクロリアクタシステムを用いて、以下の手順で金属複合粒子担持体を製造することができる。複数のマイクロミキサの形状及びサイズは、互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0030】
(工程1)金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)からなる群から選ばれる少なくとも1種の第1金属元素を構成元素として有する第一金属化合物を含む溶液と、第1還元剤を含む溶液とを混合して第1反応液を得る。
【0031】
(工程2)工程1で得られる第1反応液と、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)からなる群から選ばれる少なくとも1種の第2金属元素を構成元素として有する第二金属化合物を含む溶液とを混合して混合液を得る。ただし、第二金属化合物に構成元素として含まれる第2金属元素は、第一金属化合物に構成元素として含まれる第1金属元素とは異なる。
【0032】
(工程3)工程2で得られた混合液と、第2還元剤を含む溶液と、担体を含む分散液とを、順次、又は同時に混合して、金属複合粒子が担体に担持された金属複合粒子担持体を得る。順次混合する場合、工程3は、混合液と第2還元剤を含む溶液とを混合して金属複合粒子を含む第2反応液を得る工程3-1と、第2反応液と担体を含む分散液とを混合して金属複合粒子担持体を得る工程3-2とを有してよい。
【0033】
工程1~工程3の全ての工程において、溶媒中の金属複合粒子の分散状態を維持する機能を有する保護剤を用いなくてもよい。ただし、保護剤を用いる場合を排除するものではない。合計時間TAは0.001秒~6秒であることが好ましい。
【0034】
本実施形態における合計時間TAは、以下のとおり定義される。工程2で得られた混合液と、第2還元剤を含む溶液と、担体を含む分散液とを、同時に混合する場合、合計時間TAは、第一金属化合物を含む溶液と第1還元剤を含む溶液とが合流してから、工程2で得られた混合液と第2還元剤を含む溶液と担体を含む分散液とが合流するまでの時間である。工程2で得られた混合液と、第2還元剤を含む溶液と、担体を含む分散液とを順次混合する場合、合計時間TAは、第一金属化合物を含む溶液と第1還元剤を含む溶液とが合流してから、第2反応液と担体を含む分散液とが合流するまでの時間である。
【0035】
製造する金属複合粒子担持体の金属複合粒子に含まれる金属種の数に合わせて、工程3-1と工程3-2の間に、再び工程2及び工程3-1を1回以上繰り返してもよい。再び工程2を行うときは、工程1で得られる第1反応液の代わりに工程3-1で得られる第2反応液を用いればよい。また、2回目の工程2では、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)からなる群から選ばれる少なくとも1種の第3金属元素を構成元素として有する第三金属化合物を含む溶液と、工程3-1で得られた第2反応液とを混合して混合液を得ればよい。3回目の工程2も同様にして行うことができる。
【0036】
本実施形態における各用語を以下に説明する。各用語の意味内容は、本実施形態のみならず、別の実施形態及び各変形例に適用される。
【0037】
<金属複合粒子>
金属複合粒子とは、1つの粒子中に複数種の金属を含有し、複数種の金属がナノレベルで複合化した金属ナノ粒子である。複数種の金属は、後述の第一金属化合物及び第二金属化合物中の金属種である。なお、本開示において金属粒子及び金属ナノ粒子は、複数の金属から構成される場合と、単独の金属から構成される場合の両方を含む。
【0038】
ナノ粒子(金属ナノ粒子)とは、粒子径が0.1nm以上、1000nm未満の粒子を示し、ナノ粒子を構成する物質は単一種に限定されず、複数の化合物、例えば複数の金属化合物からなる複合体であってもよい。
【0039】
<第一金属化合物、第二金属化合物>
工程1において使用される第一金属化合物及び工程2で使用される第二金属化合物は、それぞれ、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を構成元素として含む化合物である。
【0040】
工程1及び工程2において使用される金属化合物は、ナノ粒子が凝集する前に金属を含む溶液と還元剤とを混合することが可能であれば、2種以上の金属が含まれてもよい。
【0041】
Au化合物としては、特に制限はなく、例えば、ヨウ化金、臭化金、塩化金、水酸化金、酸化金、塩化金ナトリウム、テトラクロロ金酸又はこの水和物、テトラクロロ金酸アンモニウム又はこの水和物、テトラクロロ金酸リチウム又はこの水和物等の無機Au化合物;シアン化金、シアン化金カリウム、酢酸金等の有機Au化合物などが挙げられる。これらの中でも、塩化金、テトラクロロ金酸水和物、テトラクロロ金酸リチウム水和物等が好ましい。上述のAu化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
Ag化合物としては、特に制限はなく、例えば、ヨウ化銀、臭化銀、塩化銀、亜硫酸銀、リン酸銀、酸化銀、クロム酸銀、重クロム酸銀、タングステン酸二銀(I)、亜塩素酸銀、硝酸銀、臭素酸銀、硫酸銀等の無機Ag化合物、チオシアン化銀、炭酸銀等の有機Ag化合物などが挙げられる。上述のAg化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
Cu化合物としては、特に制限はなく、例えば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、塩化第二銅、臭化第二銅、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、硫酸テトラアンミン銅(II)等の無機Cu化合物;シアン化第一銅、アセチルアセトン銅、酢酸第二銅、オレイン酸銅等の有機Cu化合物が挙げられる。これらの中でも、塩化第二銅、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)等が好ましい。上述のCu化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
Pt化合物としては、酸化白金、塩化白金、臭化白金、ヨウ化白金、ヘキサクロロ白金(IV)酸二水素、ヘキサクロロ白金(IV)酸ナトリウム、ヘキサクロロ白金(IV)酸カリウム、テトラクロロ白金(II)酸ナトリウム、テトラクロロ白金(II)酸カリウム、ヘキサブロモ白金(IV)酸アンモニウム、テトラブロモ白金(II)酸カリウム、ヘキサヨード白金(IV)酸カリウム、テトラクロロ白金(II)酸アンモニウム、ヘキサヒドロキシ白金(IV)酸二水素、ヘキサヒドロキシ白金(IV)酸ナトリウム、水酸化テトラアミン白金(II)、ヘキサシアノ白金(IV)酸カリウム等の無機Pt化合物;塩化白金酸とエチレン等のオレフィンとの錯体等の有機Pt化合物などが挙げられる。これらの中でも、ヘキサクロロ白金(IV)酸二水素、ヘキサクロロ白金(IV)酸カリウム、テトラクロロ白金(II)酸カリウムが好ましい。上述のPt化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
Ir化合物としては、特に制限はなく、例えば、塩化イリジウム、臭化イリジウム、ヨウ化イリジウム、(NH4)2IrCl6、IrCl3、H2IrCl6等の無機Ir化合物;[Ir(CO)2Cl2]2、Li[Ir(CO)2I2]、[Ir(CO)2I]2、IrCl(CO)(PPh3)2、[Ir(cod)Cl]2、酢酸イリジウム(II)、ジカルボニルアセチルアセトナトイリジウム等の有機Ir化合物などが挙げられる。上述のIr化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
Os化合物としては、特に制限はなく、例えば、塩化オスミウム、臭化オスミウム等の無機Os化合物;酢酸オスミウム等の有機Os化合物などが挙げられる。上述のOs化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
Pd化合物としては、特に制限はなく、例えば、パラジウム(II)アセチルアセトナト、パラジウム(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナト、テトラアンミンパラジウム(II)クロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)クロリド等のパラジウム錯体;塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、ヨウ化パラジウム(II)等のハロゲン化パラジウム;酢酸パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)、プロピオン酸パラジウム(II)、パラジウム(II)ピバラート、ステアリン酸パラジウム(II)、安息香酸パラジウム(II)等のカルボン酸パラジウム、炭酸パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、硫酸パラジウム(II)、テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウム、テトラクロロパラジウム(II)酸カリウム等のパラジウム無機塩などが挙げられる。これらの中でも、特に、テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウム、テトラクロロパラジウム(II)酸カリウムが好ましく、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウム、テトラクロロパラジウム(II)酸カリウムがより好ましい。上述のパラジウム化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
Rh化合物としては、特に制限はなく、例えば、塩化ロジウム、臭化ロジウム、ヨウ化ロジウム等の無機Rh化合物;[Rh(CO)2Cl2]2、Li[Rh(CO)2I2]、[Rh(CO)2I]2、RhCl(CO)(PPh3)2、[Rh(cod)Cl]2、酢酸ロジウム(II)、ジカルボニルアセチルアセトナトロジウム等の有機Rh化合物などが挙げられる。上述のRh化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
Ru化合物としては、特に制限はなく、例えば、塩化ルテニウム、臭化ルテニウム、ヨウ化ルテニウム等の無機Ru化合物;RuCl2(DMSO)4、[Ru(cod)Cl2]n、[Ru(nbd)Cl2]n、(cod)Ru(2-methallyl)2、[Ru(benzene)Cl2]2、[Ru(benzene)Br2]2、[Ru(benzene)I2]2、[Ru(p-cymene)Cl2]2、[Ru(p-cymene)Br2]2、[Ru(p-cymene)I2]2、[Ru(mesitylene)Cl2]2、[Ru(mesitylene)Br2]2、[Ru(mesitylene)I2]2、[Ru(hexamethylbenzene)Cl2]2、[Ru(hexamethylbenzene)Br2]2、[Ru(hexamethylbenzene)I2]2、RuCl2(PPh3)3、RuBr2(PPh3)3、RuI2(PPh3)3、RuH4(PPh3)3、RuClH(PPh3)3、RuH(OAc)(PPh3)3、RuH2(PPh3)4等の有機Ru化合物挙げられる。例示中、DMSOはジメチルスルホキシド、codは1,5-シクロオクタジエン、nbdはノルボルナジエン、Phはフェニル基をそれぞれ表す。上述のRu化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
Fe化合物としては、特に制限はなく、例えば、酸化第一鉄、酸化第二鉄、四酸化三鉄、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、セレン化鉄、酸化タングステン酸鉄(III)、三酸化チタン鉄、五酸化チタン二鉄、窒化鉄、二硫化鉄、バナジン酸鉄(II)、ホウ化鉄、ホウ化二鉄、ヨウ化鉄、リン化鉄、リン化二鉄、ヘキサシアニド鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアニド鉄(III)酸カリウム等の無機Fe化合物;鉄(II)メトキシド、鉄(III)メトキシド、鉄(III)エトキシド、鉄(II)プロポキシド等の鉄アルコキシド、鉄ペンタカルボニル、酢酸鉄(II)、ステアリン酸鉄(III)、ラウリン酸鉄(III)、鉄(II)アセチルアセトナト、鉄(III)アセチルアセトナト、2-エチルヘキサン酸鉄(II)等の有機Fe化合物などが挙げられる。これらの中でも、塩化鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)が好ましい。上述のFe化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
Co化合物としては、特に制限はなく、例えば、酢酸コバルト(II)、塩化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、ヨウ化コバルト(II)、フッ化コバルト(II)、フッ化コバルト(III)、炭酸コバルト(II)、シアン化コバルト(II)、これらの水和物等の無機Fe化合物;トリス(カルボネート)コバルト(III)酸ナトリウム、コバルト(II)アセチルアセトネート水和物、コバルト(III)アセチルアセトネート等の有機Co化合物などが挙げられる。上述のCo化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
Ni化合物としては、特に制限はなく、例えば、ジクロロニッケル(塩化ニッケル(II))、ジブロモニッケル(臭化ニッケル(II))、炭酸ニッケル(II)等の無機Ni化合物;ニッケルアセテート(II)等の有機Ni化合物などが挙げられる。上述のNi化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
Cr化合物としては、特に制限はなく、例えば、塩化クロム、臭化クロム、硫酸クロム、酸化クロム等の無機Cr化合物;酢酸クロム、プロピオン酸クロム、2-エチルヘキシル酸クロム、アクリル酸クロム、メタクリル酸クロム、クロムアセチルアセトナト等の有機Cr化合物などが挙げられる。上述のCr化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
Zn化合物としては、特に制限はなく、例えば、酸化亜鉛、硫化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛等の無機Zn化合物;酢酸亜鉛、ギ酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトナト等の有機Zn化合物などが挙げられる。上述のZn化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
Re化合物としては、塩化レニウム、臭化レニウム、オキシハロゲン化レニウム、レニウム酸塩、過レニウム酸塩等の無機Re化合物;酢酸レニウム等の有機Re化合物などが挙げられる。上述のRe化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
さらに、第一金属化合物及び第二金属化合物は、構成元素として、上記金属元素を有する化合物であれば特に制限されない。効率的に金属複合粒子を製造する観点から、第一金属化合物及び第二金属化合物は、金属塩又は金属錯体であることが好ましい。具体的には、金属塩としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物、水酸化物、硫化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、カリウム複合酸化物、アンモニウム複合酸化物、ナトリウム複合酸化物等の複合酸化物等が好適に用いられる。上記貴金属の錯体として、アンミン錯体、シアノ錯体、ハロゲノ錯体、ヒドロキシ錯体等が好適に用いられる。中でも、工業的に入手が容易で、水への溶解性も高いことから、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩が好適に用いられる。
【0057】
上記第一金属化合物としては、好ましくは、構成元素として、金、銀、銅、白金、パラジウム、鉄、コバルト及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を有する金属化合物である。より好ましくは、構成元素として、金、銅、白金、パラジウム、鉄及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を有する金属化合物である。さらに好ましくは、構成元素として、金、銅、白金、パラジウム及び鉄からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を有する金属化合物である。さらにより好ましくは、構成元素として、金、白金、及びパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を有する金属化合物である。特に好ましくは、構成元素としてパラジウムを有するパラジウム化合物である。
【0058】
上記第二金属化合物としては、好ましくは、構成元素として、パラジウム、金、銀、銅、白金、イリジウム、オスミウム、ロジウム、ルテニウム、コバルト、ニッケル、クロム、亜鉛及びレニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を有する金属化合物である。より好ましくは、構成元素として、パラジウム、金、銀、銅、白金、イリジウム、オスミウム、ロジウム、ルテニウム、クロム、亜鉛及びレニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を有する金属化合物である。さらに好ましくは、構成元素として、パラジウム、金及び白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を有する金属化合物である。さらにより好ましくは、構成元素として、パラジウム及び白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を有する金属化合物である。特に好ましくは、構成元素として白金を有する白金化合物である。ただし、第二金属化合物は、構成元素として、第一金属化合物とは異なる金属元素を含んでいる。第二金属化合物は、好ましくは第一金属化合物とは共通する金属元素を含まない。
【0059】
第一金属化合物及び第二金属化合物は、それぞれ、複数種の金属化合物の混合物であってもよい。
【0060】
以上から、好適な第一金属化合物としては、テトラクロロパラジウム酸カリウム(K2PdCl4)、テトラクロロ金(III)酸(HAuCl4)又はこの水和物、硫酸銅(II)(CuSO4)、硫酸鉄(II)(FeSO4)、好適な第二金属化合物としては、テトラクロロ金(III)酸(HAuCl4)又はこの水和物、ヘキサクロロ白金(IV)酸二水素(H2PtCl6)が挙げられる。
【0061】
各金属化合物を含む溶液に用いられる溶媒は、金属複合粒子担持体の製造を阻害しないものならば特に限定されない。各金属化合物の溶解性及び各溶液中の金属化合物の安定性等を向上させる観点から、水、脂肪族アルコール類、及びエーテル類が好ましい。
【0062】
<還元剤>
還元剤(第1還元剤及び第2還元剤)としては、上記第一金属化合物及び第二金属化合物をそれぞれ0価の金属に還元することができれば、その種類は特に制限されず、公知の還元剤を使用することができる。第1還元剤及び第2還元剤は同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0063】
例えば、ヒドラジン化合物(例えば、ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、抱水ヒドラジン、フェニルヒドラジン)、水素化ホウ素化合物(例えば、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド(TBAB)、テトラエチルアンモニウムボロヒドリド(TEAB)、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素ホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素カリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化シアノホウ素ナトリウム)、ボラン錯体(例えば、ボラン・tert-ブチルアミン錯体、ボラン・テトラヒドロフラン錯体)、有機カルボン酸化合物(クエン酸、クエン酸三ナトリウム二水和物、シュウ酸、シュウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム)、トリエチルシラン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、次亜硝酸ナトリウム、亜リン酸、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、アルデヒド類、アルコール類、アミン類、糖類などが挙げられる。工業的に好適に金属化合物を還元する観点から、第一金属化合物及び第二金属化合物は、いずれにもヒドラジン化合物、水素化ホウ素化合物、及び有機カルボン酸化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種含むことが好ましい。また、これら還元剤は1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
具体的には、還元剤として、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、及びクエン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましく、ヒドラジン、及び水素化ホウ素ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を使用することがより好ましい。
【0065】
なお、これらの還元剤の中には、水との反応性が高過ぎるものもあるため、溶媒として水以外の溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、ジグリム、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド等のアプロトニックな極性溶媒)を使用し溶液として用いてもよい。このような溶媒を用いることによって、還元剤が分解することを抑制できる。また、溶媒の使用量の低減、水と溶媒の使用量の低減を目的とし、還元剤を工程1の前にあらかじめ上述のアプロトニックな極性溶媒に溶解し、反応直前に水と混合して用いてもよい。混合はマイクロミキサ(マイクロリアクタ)を用いたマイクロフロープロセスであってもよいし、バッチプロセスであってもよい。
【0066】
還元剤の使用量は特に制限されない。還元を十分に進行させる点と一次粒子径がより小さい金属複合粒子が得られる点で、還元する第一金属化合物、及び第二金属化合物のモル量に対して、それぞれ、100モル%~800モル%であってよく、150モル%~400モル%であってもよい。
【0067】
<保護剤>
金属複合粒子の凝集を抑制する保護剤は用いなくてもよい。ここで保護剤とは、金属ナノ粒子の表面に吸着し、金属ナノ粒子同士の凝集を抑制し、溶媒中での分散状態を維持できる分散剤として機能するものである。保護剤を使用する場合、保護剤としては、具体的には、以下に述べる公知のものが挙げられる。例えば、アルキルアミン、アルカンチオール、アルカンジオールなどの低分子型分散剤や、各種官能基を有する高分子型分散剤などが挙げられる。なお、高分子型分散剤としては、例えば、スチレン系樹脂(スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体など)、アクリル系樹脂((メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸などの(メタ)アクリル酸系樹脂など)、水溶性ウレタン樹脂、水溶性アクリルウレタン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(ニトロセルロース;エチルセルロースなどのアルキルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースなどのアルキル-ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロースなどのセルロースエーテル類など)、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール(液状のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、天然高分子(ゼラチン、デキストリン、アラビヤゴム、カゼインなどの多糖類など)、ポリエチレンスルホン酸またはその塩、ポリスチレンスルホン酸またはその塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、窒素原子含有高分子化合物[例えば、ポリアルキレンイミン(ポリエチレンイミンなど)、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリエーテルポリアミン(ポリオキシエチレンポリアミンなど)などのアミノ基を有する高分子化合物]などが挙げられ、ポリビニルピロリドン等が好適に使用されることがある。
【0068】
<担体>
金属複合粒子担持体を得る際に用いられる担体としては、一般的に固体触媒の担体として使用されているものならば特に限定されない。例えば、無機化合物及び有機化合物のいずれであってもよい。担体としては、例えば、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化コバルト、二酸化マンガン、酸化銅、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化アルミニウム(α-Al2O3、γ-Al2O3)、酸化バリウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化クロム、酸化スカンジウム、酸化カドミウム、及び酸化インジウムなどの金属酸化物又はこれらの金属酸化物を組み合わせた複合酸化物;活性炭;カーボンブラック;有機高分子;ゼオライト;メソポーラスシリケート;粘土;珪藻土;軽石などが挙げられる。担体は、金属複合粒子の高分散に担持するため、高比表面積を持つことが好ましい。高比表面積な担体を用いた場合、触媒寿命が長くなる、もしくは、反応速度が大きくなる傾向がある。なお、これらの担体は、一種類を単独で用いられてもよく、二種以上を混合して用いられてもよい。上記担体の中で、好ましくは酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、シリカゲル、活性炭、より好ましくは活性炭、γ-Al2O3、α-Al2O3、シリカゲル、さらに好ましくは活性炭が挙げられる。なお、担持量を後述の範囲に調整することを目的とし、金属複合粒子が担持された担体を用いてもよい。
【0069】
上記担体に対する金属複合粒子の担持量は、金属複合粒子担持体全体に対して、好ましくは0.01~50質量%であり、より好ましくは0.1~15質量%であり、さらに好ましくは1~10質量%である。金属複合粒子の担持量を上記範囲とすることにより、金属複合粒子の凝集を抑制し、単分散の粒径分布を有する金属複合粒子担持体を製造することができる。
【0070】
金属複合粒子の担持量を上記範囲とするため、工程1から工程3で使用する第一金属化合物中の金属換算の質量及び第二金属化合物中の金属換算の質量の合計量1gに対し、担体は好ましくは1.7g~100000g、より好ましくは2.5g~10000g、さらに好ましくは10g~100g使用する。
【0071】
<分散液の溶媒>
担体の分散液に用いられる溶媒としては、金属複合粒子担持体の製造を阻害しないものならば特に限定されず、例えば、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t-ブチルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、ブタノン、シクロヘキサノン)、脂肪族炭化水素類(例えば、n-ペンタン、n-へキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン等)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-メチレンジオキシベンゼン等)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ハロゲン化芳香族炭化水素類(例えば、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン等)、ニトロ化芳香族炭化水素類(例えば、ニトロベンゼン等)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン等)、カルボン酸エステル類(例えば、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等)等が挙げられる。なお、これらの溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用してもよい。
【0072】
これらの中でも、担体の分散性等を向上させるために、水、脂肪族アルコール類、及びエーテル類、が好ましい。
【0073】
脂肪族アルコール類では、1~3価のヒドロキシル基を有する脂肪族アルコール類がより好ましく、炭素数1~4の脂肪族アルコールがさらに好ましい。具体的には、メタノール、エチレングリコール、グリセリン、2-メトキシエタノール、ジエチレングリコールが挙げられる。
【0074】
脂肪族エーテル類としては、炭素数1~8のアルキルエーテルが好ましい。具体的には、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0075】
上述の溶媒のうち、水、メタノール、エチレングリコール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ギ酸メチルが好ましく、エタノールがさらに好ましい。
【0076】
<マイクロリアクタシステム>
本開示の製造方法に用いられるマイクロリアクタシステムの構造には格別の制限はない。少なくとも5種の流体を導入するための、微細な断面形状を有する複数の流体導入チャンネルと、この流体導入チャンネルに連結し、導入された5種の流体を互いに混合し反応させるための、微細な断面形状を有する複数のマイクロミキサと、これらのマイクロミキサから反応生成液体を導出するための、微細な断面形状を有する複数の流体導出チャンネルとを有するものであることが好ましい。流体導入チャンネルの数、マイクロミキサの数、及び流体導出チャンネルの数は、混合する金属化合物や還元剤の種類に応じて、適宜調整される。
【0077】
上記マイクロミキサにおいて、複数種の流体が混合される。液体は、マイクロミキサ及び液体導出チャンネル内において所望温度に温度調節される。
【0078】
本開示の製造方法において、連続して行われる工程1~3の全てがマイクロミキサを備えるマイクロリアクタシステムを用いて行われ、上流工程のマイクロミキサの流体導出チャンネルと、それに連続する下流工程のマイクロミキサの流体導入チャンネルとが、毛細管状連結チューブにより互いに連結されていることが好ましい。このようにすると、マイクロミキサ内において、互いに混合された混合物は、マイクロミキサ内、及び流体導出チャンネル内において、所望温度に温度調節される。マイクロミキサ、流体導出チャンネル、及び毛細管状チューブ内において、所望の反応が進行して完了する。毛細管状連結チューブには、その中を流れる流体の温度を所望値に調節する手段、例えば、恒温浴、温度調節ジャケットなどが設けられていることが好ましい。
【0079】
本開示の製造方法に用いられるマイクロリアクタシステムにおいて、上記流体導入チャンネル、上記マイクロミキサ及び上記流体導出チャンネルの横断面(径方向断面)の面積は、好ましくはいずれも0.7μm2~10mm2であり、より好ましくは0.08mm2~2mm2である。上記横断面の長径/短径比は1以上であってよい。それぞれの横断面における長径及び短径が1μm~4mmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは25μm~2mmである。
【0080】
<金属複合粒子担持体の製造方法の例>
図1は、金属複合粒子の製造方法の一例を説明する図である。この製造方法は、工程1、工程2、工程3-1及び工程3-2を有する。全工程において金属複合粒子の凝集を防ぐことを目的とする保護剤を用いなくてよい。
【0081】
図2は、
図1の金属複合粒子担持体の製造方法に用いられるマイクロリアクタシステムの一例を示す模式図である。
図2のマイクロリアクタシステム100は、上流側から下流側に向かって、第1マイクロミキサ13a、第2マイクロミキサ13b、第3マイクロミキサ13c、及び第4マイクロミキサ13dをこの順で備える。
【0082】
第1マイクロミキサ13aには、A液(第一金属化合物を含む溶液)及びB液(第1還元剤を含む溶液)を導入するチャンネル16a,16bと、第1反応液を導出するチャンネル14aが接続されている。
【0083】
第2マイクロミキサ13bには、第1反応液及びC液(第二金属化合物を含む溶液)を導入するチャンネル14a,17aと、混合液を導出するチャンネル14bが接続されている。
【0084】
第3マイクロミキサ13cには、混合液及びD液(第2還元剤を含む溶液)を導入するチャンネル14b,17bと、金属複合粒子を含む第2反応液を導出するチャンネル14cが接続されている。
【0085】
第4マイクロミキサ13dには、第2反応液及びE液(担体を含む分散液)を導入するチャンネル14c,18と、金属複合粒子担持体を含む流体を導出するチャンネル14dが接続されている。
【0086】
第1マイクロミキサ13aは流体入口1,2と流体出口3を有する。第2マイクロミキサ13bは流体入口4,5と流体出口6を有する。第3マイクロミキサ13cは流体入口7,8と流体出口9を有する。第4マイクロミキサ13dは流体入口10,11と流体出口12を有する。金属複合粒子担持体を含む流体(分散液)は、チャンネル14dの先端19から受け容器15に流出する。
【0087】
本開示においては、上述した5種類の液体を混合することができれば使用されるマイクロリアクタシステムの構成は特に制限されず、公知のマイクロリアクタ(マイクロミキサ)を使用することができる。
【0088】
市販されているマイクロリアクタ(マイクロミキサ)としては、例えば、Advanced-Flow(登録商標)Reactor(Corning Inc.製);ModularMicroReaction System、FlowPlate(登録商標)、ART(登録商標)及びMiprowa(登録商標)(EhrfeldMikrotechnik GmbH製);GRAMFLOW(登録商標)、KILOFLOW(登録商標)、PROTRIX(登録商標)及びPLANTRIX(登録商標)(Chemtrix製);HTM(登録商標)、MR-LAB(登録商標)、MRPILOT(登録商標)及びXXL(登録商標) SERIES(Little Things Factory製);KeyChem(登録商標)(YMC製);α型ミキサ、β型ミキサ及びDH型ミキサ(MiChS社製)等が挙げられる。いずれのマイクロリアクタ(マイクロミキサ)も本実施形態の製造方法に使用することができる。
【0089】
また、本開示の製造方法に用いられるマイクロリアクタシステムにおいて、各マイクロミキサから導出される流体の流量は、このマイクロリアクタ内において混合された2種の流体が、所望の混合効率及び所望の滞留時間をもって反応し得るように規定することが好ましい。
【0090】
本実施形態の製造方法に用いられるマイクロリアクタシステムは、マイクロミキサに加えて、2個以上の液体供給手段を備えてよい。また、マイクロミキサとして、1個の生成液体導出手段を有する反応器(例えばT字ジョイント型反応器、Y字ジョイント又は十字ジョイント等)を、備えてもよい。マイクロリアクタシステムは、温度調整手段、流体流量調整手段などが設けられていることが好ましい。
【0091】
図1の金属複合粒子担持体の製造方法を、
図2のマイクロリアクタシステム100を用いて行う場合を例にして以下に説明する。本例では、金属複合粒子の凝集を防ぐことを目的とした保護剤を用いなくてよい。合計時間T
Aは0.001秒~6秒であってよい。本例の合計時間T
Aは、流体入口1から導入される第一金属化合物を含む溶液と、流体入口2から導入される第1還元剤を含む溶液とが第1マイクロミキサ13aにおいて合流してから、第4マイクロミキサ13dにおいて金属複合粒子を含む分散液と、担体を含む分散液とが合流するまでの時間である。
【0092】
本例では、工程2及び工程3-1をそれぞれ1回以上行い、複数の金属を混合及び還元することにより、金属複合粒子担持体を製造することができる。なお、工程2及び工程3-1を繰り返し行う場合、合計時間TAは、工程1において第一金属化合物を含む溶液と第1還元剤とが合流してから、工程2及び工程3-1を繰り返し行った後、最後の工程3-2において、工程3-1で得られた第2反応液と担体を分散液とが合流するまでに所要した時間の総和である。
【0093】
工程2で得られる混合液と第2還元剤を含む溶液とが合流してから、第2反応液と担体を含む分散液とが合流するまでの滞留時間T3は、5.99秒以下であってよく、好ましくは5.5秒以下であり、より好ましくは3.5秒以下であり、さらに好ましくは1.5秒以下であり、さらにより好ましくは1秒以下であり、特に好ましくは0.05~1秒である。なお、工程2で得られた混合液と、第2還元剤を含む溶液と、担体を含む分散液とを同時に混合する場合、滞留時間T3は0秒となる。このような同時の混合は、十字のマイクロミキサを用いて行うことができる。
【0094】
金属複合粒子の単分散の粒子径のばらつき低減し、単独の金属から構成される金属粒子の生成を抑制するとともに、金属複合粒子の凝集を抑制する観点から、合計時間TAは、0.001秒~6秒であることが好ましく、0.001~4秒であることがより好ましく、0.001秒~2秒であることがさらに好ましく、0.01秒~1.3秒であることがさらにより好ましい。
【0095】
【0096】
(工程1)
本工程は、第1マイクロミキサ13aを用いて、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を構成元素として有する第一金属化合物を含む溶液と、還元剤(第1還元剤)を含む溶液とを混合して第1反応液を得る工程である。
【0097】
混合温度は10℃~90℃であることが好ましく、20℃~50℃であることがより好ましい。本工程のゲージ圧力は、好ましくは0~20MPa、より好ましくは0.1MPa~5MPaである。
【0098】
第一金属化合物を含む溶液、及び還元剤を含む溶液の流量は、上記滞留時間T1、溶液の濃度、流路の長さ、ミキサの容量等に応じて適宜調整される。一例の製造装置においては、0.1mL/分~100mL/分であることが好ましく、1mL/分~20mL/分であることがさらに好ましい。
【0099】
本工程における反応雰囲気は、還元剤による反応が阻害されなければ特に限定されず、例えば、窒素、ヘリウム、及びアルゴンなどの不活性ガス;酸素、及びオゾンなどの酸化性ガスが挙げられ、これらのガスを混合して使用してもよい。本工程では、空気または不活性ガス中で行われることが好ましい。
【0100】
工程1において上記と同じ溶媒が使用され、第一金属化合物の濃度は第一金属化合物1gに対し、溶媒を好ましくは20g~60000g、より好ましくは200g~3000g用いて調製される。同様に、第1還元剤の濃度は第1還元剤1gに対し、溶媒を好ましくは100g~50000g、より好ましくは500g~10000g用いて調製される。第1反応液は、例えば、溶媒と、溶媒中に分散された1種の金属からなる金属粒子とを含む。
【0101】
(工程2)
本工程は、第2マイクロミキサ13bを用いて、工程1の第1反応液又は工程3-1の第2反応液と、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)からなる群から選ばれる少なくとも1種の第二金属化合物を含む溶液とを混合する工程である。ただし、第二金属化合物は、第一金属化合物とは異なる金属種からなる。しかし、本工程を繰り返す場合、少なくとも一度異なる金属種を用いれば、それ以外は第一金属化合物と同じ金属種を用いてもよい。
【0102】
工程1において第一金属化合物を含む溶液と、第1還元剤を含む溶液とが合流してから、工程2において、第1反応液と第二金属化合物を含む溶液とが合流するまでに所要する滞留時間T1は、適宜に設定することができる。滞留時間T1は、0.001秒~5秒であることが好ましく、0.005秒~1秒であることがより好ましく、0.005秒~0.7秒であることがさらに好ましく、0.005秒~0.5秒であることがさらにより好ましい。
【0103】
工程2の混合温度は10℃~90℃であることが好ましく、20℃~50℃であることがより好ましい。
【0104】
第二金属化合物を含む溶液の流量は、上記滞留時間、溶液の濃度、流路の長さ、マイクロミキサの容量等に応じて適宜調整される。一例のマイクロリアクタシステムにおいては、0.1mL/分~200mL/分であることが好ましく、1mL/分~40mL/分であることがさらに好ましい。
【0105】
本工程の圧力、および反応雰囲気は、工程1と同じである。工程2において上記と同じ溶媒が使用され、第二金属化合物の濃度は第二金属化合物1gに対し、溶媒を好ましくは20g~60000g、より好ましくは200g~3000g用いて調製される。
【0106】
(工程3-1)
本工程は、第3マイクロミキサ13cを用いて、工程2で得られる混合液と、還元剤(第2還元剤)を含む溶液とを混合して金属複合粒子を含む第2反応液を得る工程である。
【0107】
工程2において第1反応液と第二金属化合物を含む溶液とが合流してから、工程2で得られた混合液と第2還元剤を含む溶液とが合流するまでに所要する滞留時間T2は、0.001秒~5秒であることが好ましく、0.005秒~0.7秒であることがさらに好ましく、0.005秒~0.5秒であることがさらにより好ましい。
【0108】
混合温度は10℃~90℃であることが好ましく、20℃~50℃であることがより好ましい。
【0109】
還元剤を含む溶液の流量は、上記滞留時間や溶液の濃度、流路の長さ、ミキサの容量等に応じて適宜調整される。一例の製造装置においては、0.1mL/分~400mL/分であることが好ましく、1mL/分~80mL/分であることがさらに好ましい。
【0110】
本工程の圧力、及び反応雰囲気は、工程1と同じである。工程3において上記と同じ溶媒が使用され、還元剤の濃度は還元剤1gに対し、溶媒を、好ましくは100g~50000g、より好ましくは500g~10000g用いて調製される。
【0111】
工程3-1では、溶媒と溶媒中に分散された金属複合粒子を含む第2反応液(分散液)が得られる。金属複合粒子は、2種類の金属がナノレベルで複合化した粒子であってよい。
【0112】
(工程3-2)
本工程は、第4マイクロミキサ13dを用いて、工程3-1の混合後に、工程3-1で得られる第2反応液と担体を含む分散液とを混合し、金属複合粒子を担体に担持して、金属複合粒子担持体を得る工程である。
【0113】
工程3-1で混合液と第2還元剤を含む溶液とが合流してから、工程3-1で得られる第2反応液と担体を含む分散液とが合流するまでの滞留時間T3は、5.99秒以下であってよく、好ましくは5.5秒以下であり、より好ましくは3.5秒以下であり、さらに好ましくは1.5秒以下であり、さらにより好ましくは1秒以下であり、特に好ましくは0.05~1秒である。
【0114】
工程3-2の混合温度は10℃~90℃であることが好ましく、20℃~50℃であることがより好ましい。
【0115】
溶媒中に担体が分散している分散液の流量は、上記滞留時間や溶液の濃度、流路の長さ、ミキサの容量等に応じて適宜調整される。一例の製造装置においては、0.1mL/分~400mL/分であることが好ましく、1mL/分~80mL/分であることがさらに好ましい。
【0116】
分散液における担体の含有量は、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.2~4質量%であり、さらに好ましくは0.3~3質量%である。担体の含有量が高くなり過ぎると、流動性が低下して第4マイクロミキサ13d及びその上流側において分散液が詰まり易くなる傾向にある。一方、担体の含有量が低くなり過ぎると、分散液に含まれる担体と第2反応液に含まれる金属複合粒子との接触頻度が低下する傾向にある。
【0117】
金属複合粒子の担持量を後述の範囲とするため、工程3-1で得られた第2反応液の使用量を適宜調節してよい。
【0118】
(工程2a及び工程3aの実施)
製造する金属複合粒子担持体中に含まれる金属種の数に合わせて、上記工程3-1と工程3-2の間に、工程2と工程3-1の繰り返しとして以下の工程2a及び工程3aを行ってもよい。工程2aと工程3aは1回ずつ行ってもよいし、2回以上繰り返し行ってもよい。
【0119】
(工程2a)第5マイクロミキサにおいて、工程3-1の後、工程3-1で得られた第2反応液と、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)からなる群から選ばれる少なくとも1種の第3金属元素を構成元素として有する第三金属化合物を含む溶液とを混合し、混合液を得る。第3金属元素は、第1金属元素及び第2金属元素と異なっていてもよいし、どちらか一方と同じであってもよい。第三金属化合物は、第一金属化合物及び第二金属化合物と異なっていてもよいし、どちらか一方と同じであってもよい。
【0120】
(工程3a)第6マイクロミキサにおいて、工程2aで得られる混合液と、還元剤(第3還元剤)を含む溶液とを混合して反応液(第3反応液)を得る。第3還元剤は、第1還元剤及び第2還元剤と同じであってもよいし、異なっていてもよい。工程2aと工程3aを繰り返す場合、第7マイクロミキサにおいて、この第3反応液と上記第二金属化合物を含む溶液とを混合し、混合液を得る。その後、別のマイクロミキサを用いて工程2aを再び行ってよい。最後の工程3aの後の工程3-2では、最後の工程3aで得られた反応液(第n反応液,nは3以上の整数である。)と担体を含む分散液とを混合して、金属複合粒子担持体を得る。第5マイクロミキサ、第6マイクロミキサ、及び第7マイクロミキサは、第3マイクロミキサと第4マイクロミキサの間に、上流側から下流側に向かってこの順に配置されてよい。
【0121】
このような場合、滞留時間T3は、最後の工程3aで混合液と第n還元剤(nは3以上の整数である。)を含む溶液とが合流してから、工程3-2において、最後の工程3aで得られた反応液と担体を含む分散液とが合流するまでに所要した時間となる。また、合計時間TAとは、工程1で第一金属化合物を含む溶液と第1還元剤を含む溶液とが合流してから、工程2及び工程3-1の後、工程2a及び工程3aを必要回数繰り返し、その後の工程3-2において、最後の工程3aで得られた反応液と担体を含む分散液とが合流するまでに所要した時間の総和となる。
【0122】
上述の合計時間TAが0.001秒~6秒の範囲内で、工程数をさらに増やしてもよい。この場合も、各滞留時間及び合計時間の定義は上述したとおりである。
【0123】
<変形例>
図3は、金属複合粒子担持体の製造方法の変形例を説明する図である。この製造方法は、工程1、工程2、及び工程3を有する。この変形例では、混合液、第2還元剤を含む溶液、及び担体を含む分散液を同時に混合して金属複合粒子担持体を得る工程3を有する点で、上述の例と異なっている。その他の点は、上述の説明内容を適用することができる。
【0124】
図4は、
図3の金属複合粒子担持体の製造方法に用いられるマイクロリアクタシステムの一例を示す模式図である。
図4のマイクロリアクタシステム102は、上流側から下流側に向かって、第1マイクロミキサ13a、第2マイクロミキサ13b、及び第8マイクロミキサ13eをこの順で備える。
【0125】
第1マイクロミキサ13a及び第2マイクロミキサ13bとこれらに接続されるチャンネルの構成は、
図2と同じである。第8マイクロミキサ13eには、混合液を導入するチャンネル14b、D液(第2還元剤を含む溶液)を導入するチャンネル17b、E液(担体を含む分散液)を導入するチャンネル18が接続されている。また、第8マイクロミキサ13eには、金属複合粒子担持体を含む流体を導出するチャンネル14dが接続されている。
【0126】
第8マイクロミキサ13eは流体入口21,22,23と流体出口24を有する。金属複合粒子担持体を含む溶液は、チャンネル14dの先端19から受け容器15に流出する。本変形例の工程3では、第8マイクロミキサ13eにおいて3つの流体を同時に混合している。これによって、金属複合粒子の生成と、生成した金属複合粒子の担体への担持を一つの工程で行うことができる。したがって、
図2の例よりもマイクロミキサの数を減らすことができる。
【0127】
[金属複合粒子担持体の製造方法(実施形態2)]
一実施形態に係る金属複合粒子担持体の製造方法は、以下の工程1、工程2A及び工程3Aを有する。この製造方法では、複数のマイクロミキサを備えるマイクロリアクタシステムを用いて、以下の手順で金属複合粒子担持体を製造することができる。複数のマイクロミキサの形状及びサイズは、互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。工程1は実施形態1と同じであってよい。本実施形態2の製造方法では、第2還元剤を含む溶液と第二金属化合物を含む溶液を混合する順番が、実施形態1と逆になっている。その他の構成は実施形態1と同じであり、実施形態1の説明が適用される。工程2A及び工程3Aについて以下に説明する。
【0128】
(工程2A)
工程1で得られる第1反応液と、第2還元剤を含む溶液とを混合して混合液を得る。工程2Aにおいて第1反応液と第2還元剤を含む溶液とが合流してから、工程2Aで得られた混合液と第二金属化合物を含む溶液とが合流するまでに所要する滞留時間T2は、0.001秒~5秒であることが好ましく、0.005秒~0.7秒であることがさらに好ましく、0.005秒~0.5秒であることがさらにより好ましい。
【0129】
(工程3A)
工程2Aで得られた混合液と、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)からなる群から選ばれる少なくとも1種の第2金属元素を構成元素として有する第二金属化合物を含む溶液と、担体を含む分散液とを、順次、又は同時に混合して、金属複合粒子が担体に担持された金属複合粒子担持体を得る。順次混合する場合、工程3Aは、混合液と第二金属化合物を含む溶液とを混合して金属複合粒子を含む第2反応液を得る工程3A-1と、第2反応液と担体を含む分散液とを混合して金属複合粒子担持体を得る工程3A-2とを有してよい。
【0130】
工程1、工程2A及び工程3Aの全ての工程において、溶媒中の金属複合粒子の分散状態を維持する機能を有する保護剤を用いなくてもよい。ただし、保護剤を用いる場合を排除するものではない。合計時間TAは0.001秒~6秒であることが好ましい。
【0131】
本実施形態における合計時間TAは、以下のとおり定義される。工程2Aで得られた混合液と、第二金属化合物を含む溶液と、担体を含む分散液とを、順次混合する場合、合計時間TAは、第一金属化合物を含む溶液と第1還元剤を含む溶液とが合流してから、工程3A-1で得られた第2反応液と担体を含む分散液とが合流するまでの時間である。工程2Aで得られた混合液と、第二金属化合物を含む溶液と、担体を含む分散液とを同時に混合する場合、合計時間TAは、第一金属化合物を含む溶液と第1還元剤を含む溶液とが合流してから、工程2Aで得られた混合液と第二金属化合物を含む溶液と担体を含む分散液とが合流するまでの時間である。
【0132】
<金属複合粒子担持体の製造方法の例>
図5は、金属複合粒子担持体の製造方法の一例を説明する図である。この製造方法は、工程1、工程2A、以下の工程3A-1及び工程3A-2を有する。この例では、工程3-1及び工程3-2に変えて工程3A-1及び工程3A-2を有する点で、
図3の例と異なっている。その他の点は、
図3の説明内容を適用することができる。
【0133】
図6は、
図5の金属複合粒子担持体の製造方法に用いられるマイクロリアクタシステムの一例を示す模式図である。
図2のマイクロリアクタシステム104は、上流側から下流側に向かって、第1マイクロミキサ13a、第2マイクロミキサ13b、第3マイクロミキサ13c、及び第4マイクロミキサ13dをこの順で備える。
【0134】
第1マイクロミキサ13aには、A液(第一金属化合物を含む溶液)及びB液(第1還元剤を含む溶液)を導入するチャンネル16a,16bと、第1反応液を導出するチャンネル14aが接続されている。
【0135】
第2マイクロミキサ13bには、第1反応液及びD液(第2還元剤を含む溶液)を導入するチャンネル14a,17aと、混合液を導出するチャンネル14bが接続されている。
【0136】
第3マイクロミキサ13cには、混合液及びC液(第二金属化合物を含む溶液)を導入するチャンネル14b,17bと、金属複合粒子を含む第2反応液を導出するチャンネル14cが接続されている。
【0137】
第4マイクロミキサ13dには、第2反応液及びE液(担体を含む分散液)を導入するチャンネル14c,18と、金属複合粒子担持体を含む流体を導出するチャンネル14dが接続されている。
【0138】
第1マイクロミキサ13aは流体入口1,2と流体出口3を有する。第2マイクロミキサ13bは流体入口4,5と流体出口6を有する。第3マイクロミキサ13cは流体入口7,8と流体出口9を有する。第4マイクロミキサ13dは流体入口10,11と流体出口12を有する。金属複合粒子担持体を含む流体(分散液)は、チャンネル14dの先端19から受け容器15に流出する。
【0139】
上述のマイクロリアクタシステム104では、C液とD液を混合する順番が
図2のマイクロリアクタシステム100と異なっている。その他の点はマイクロリアクタシステム100と同じであるため、マイクロリアクタシステム100及びこれを用いた製造方法の例の内容に基づいて、本例の製造方法を行うことができる。
【0140】
(工程1)
本工程は、第1実施形態の
図1及び
図2の例と同様にして行うことができる。ここでは重複する記載を省略する。
【0141】
(工程2A)
本工程は、第2マイクロミキサ13bを用いて、工程1の第1反応液と、還元剤(第2還元剤)を含む溶液とを混合して混合液を得る。ここで用いる還元剤は工程1で用いる還元剤(第1還元剤)と同じであってもよく、異なっていてもよい。工程1において第一金属化合物を含む溶液と、第1還元剤を含む溶液とが合流してから、工程2Aにおいて、第1反応液と第2還元剤を含む溶液とが合流するまでに所要する滞留時間T1Aは、適宜に設定することができる。滞留時間T1Aは、0.001秒~5秒であることが好ましく、0.005秒~1秒であることがより好ましく、0.005秒~0.7秒であることがさらに好ましく、0.005秒~0.5秒であることがさらにより好ましい。工程2Aの混合温度は10℃~90℃であることが好ましく、20℃~50℃であることがより好ましい。
【0142】
(工程3A-1)
本工程は、第3マイクロミキサ13cを用いて、工程2Aで得られる混合液と、第二金属化合物を含む溶液とを混合して金属複合粒子を含む第2反応液を得る工程である。第二金属化合物は、上述の例と同じである。
【0143】
工程2Aにおいて第1反応液と第2還元剤を含む溶液とが合流してから、工程2Aで得られた混合液と、第二金属化合物を含む溶液とが合流するまでに所要する滞留時間T2Aは、0.001秒~5秒であることが好ましく、0.005秒~0.7秒であることがさらに好ましく、0.005秒~0.5秒であることがさらにより好ましい。混合温度は10℃~90℃であることが好ましく、20℃~50℃であることがより好ましい。
【0144】
工程3A-1では、溶媒と溶媒中に分散された金属複合粒子を含む第2反応液(分散液)が得られる。金属複合粒子は、2種類の金属がナノレベルで複合化した粒子であってよい。工程3A-1の圧力及び反応雰囲気は、工程1と同じであってよい。
【0145】
(工程3A-2)
本工程は、第4マイクロミキサ13dを用いて、工程3A-1の混合後に、工程3A-1で得られる第2反応液と担体を含む分散液とを混合し、金属複合粒子を担体に担持して、金属複合粒子担持体を得る工程である。
【0146】
工程3A-1で混合液と第二金属化合物を含む溶液とが合流してから、工程3A-1で得られる第2反応液と担体を含む分散液とが合流するまでの滞留時間T3Aは、5.99秒以下であってよく、好ましくは5.5秒以下であり、より好ましくは3.5秒以下であり、さらに好ましくは1.5秒以下であり、さらにより好ましくは1秒以下であり、特に好ましくは0.05~1秒である。工程3A-2の混合温度は10℃~90℃であることが好ましく、20℃~50℃であることがより好ましい。担体を含む分散液は、上記第1実施形態の例と同様である。
【0147】
本実施形態の変形例では、第1実施形態の変形例と同様に、
図6の第3マイクロミキサ13c及び第4マイクロミキサ13dの代わりに、
図4に示す第8マイクロミキサ13eと同様のものを用いて、工程2Aで得られた混合液と、第二金属化合物を含む溶液と、担体を含む分散液とを同時に混合して、金属複合粒子担持体を得てもよい。これによって、金属複合粒子の生成と、生成した金属複合粒子の担体への担持を一つの工程で行うことができる。したがって、
図6の例よりもマイクロミキサの数を減らすことができる。
【0148】
<後処理>
上述の各実施形態のおける各例の製造方法では、受け容器15に捕集される流体(液体組成物)に金属複合担持体が含まれている。この液体組成物を、濾過して金属複合粒子担持体を得てもよい。例えば、遠心分離によって不純物を含む上澄みを分離し、沈殿として回収することができる。また、遠心分離によらず、濾過のみによって回収してもよい。
【0149】
濾過の際、得られる固体を上記溶媒により洗浄することが好ましい。洗浄により、金属複合粒子担持体表面に付着した還元剤等から生成した無機物を除去することができる。濾過等によって得られる固体を乾燥することにより、金属複合担持体が含む固形の組成物を得ることができる。乾燥温度は、使用する溶媒の沸点によって適宜調節してよい。水を溶媒として用いた場合は、乾燥温度は、80℃~120℃であることが好ましく、90℃~110℃であることがさらに好ましい。なお、減圧下で乾燥する場合、さらに低温で乾燥してもよい。
【0150】
上記各実施形態の製造方法は、各工程において、互いに異なるマイクロミキサを用いて複数の流体を混合している。このため、各工程を連続的に且つ迅速に行うことが可能であり、金属複合粒子担持体を連続的に製造することができる。このように連続的な製造が可能であることから、金属複合粒子担持体を工業スケールで大量生産することができる。そして、各実施形態の製造方法の工程1、工程2(工程2A)及び工程3(工程3A)、或いは、工程3-1(工程3A-1)及び工程3-2(工程3A-2)によって得られる金属複合粒子担持体では、担体への担持により金属複合粒子の凝集が十分に抑制されることから、金属複合粒子が高い分散性を維持した状態で担体に担持される。なお、工程3又は工程3A(或いは工程3-2又は工程3A-2)では、金属複合粒子担持体を含む組成物が得られる。このため、上記各実施形態の製造方法は、金属複合粒子担持体を含む組成物の製造方法ということもできる。
【0151】
上記各実施形態の製造方法によれば、金属複合粒子の凝集を抑制する保護剤を用いることなく、工業的に好適な方法により、金属複合粒子担持体を製造することができる。例えば、保護剤の使用量は、第1金属元素1molに対して1.5mol以下であってよい。また、単分散の粒径分布を有する金属複合粒子担持体を製造することができる。さらに、単独金属から構成される金属粒子の生成を抑制し、金属原子の利用効率を高めることができる。
【0152】
[組成物]
本開示の組成物の一実施形態を説明する。組成物は、金属複合粒子担持体を1つ以上含む。金属複合粒子担持体は、担体と該担体に担持された金属複合粒子とを含む。金属複合粒子とは、1つの粒子中に複数種の金属を含有する。このような金属複合粒子担持体は、上述の製造方法によって製造することができる。金属複合粒子担持体における金属複合粒子の担持量は、好ましくは0.01~50質量%であり、より好ましくは0.1~15質量%であり、さらに好ましくは1~10質量%である。このような範囲であることによって、触媒としての活性を十分に高くすることができる。組成物に含まれる複数の金属複合粒子の少なくとも一部が担体に担持されていればよい。組成物は、担体に担持されていない金属複合粒子を含んでいてもよい。
【0153】
組成物は、固体(粉体)であっても、溶媒中に分散されて分散液になっていてもよい。すなわち、粒子状の組成物であってもよいし、スラリー状の組成物であってもよい。金属複合粒子は、外殻部と中心部とで第1金属元素及び第2金属元素の濃度分布が異なるコア-シェル構造を有する。
【0154】
コア部分とシェル部分の組成が互いに異なるコア-シェル構造を有する金属複合粒子は、上述の各製造方法によって得ることができる。コア-シェル構造を有することはSTEM-EDSマッピング分析により確かめられる。例えば、以下の分析条件により分析することができる。
【0155】
<装置名> 日本電子製 JEM-ARM200F 原子分解能分析電子顕微鏡及び日本電子製 シリコンドリフト検出器
<測定条件> 加速電圧 120kV
【0156】
STEM-EDSマッピングにより、金属複合粒子の外殻部に第2金属元素のみの領域が存在するとき、その金属複合粒子のコア-シェル構造を有する。なお、STEMとは走査透過電子顕微鏡法、ESDとはエネルギー分散型蛍光X線分析法を示す。
【0157】
粒子径は、TEM又はSTEM、SEM等で測定することができる。粒子組成物に含まれる金属複合粒子の粒子径は、金属化合物の濃度、並びに滞留時間等に応じて適宜調整される。例えば、金属複合粒子を触媒として用いる場合、触媒活性を向上させる観点から、粒子組成物に含まれる金属複合粒子の平均粒子径は、1.0~15nmであることが好ましく、2.0~10nmがより好ましく、3.0~5.0nmがさらに好ましい。なお、TEMとは透過型電子顕微鏡を示し、上記STEMはTEMの一種である。また、SEMとは走査型電子顕微鏡を示す。
【0158】
TEMを用いて測定される金属複合粒子担持体に担持される金属複合粒子の粒子径の粒径分布より算出される標準偏差は、1.5以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましく、0.8以下であることがさらに好ましい。このように、組成物に含まれる金属複合粒子担持体の金属複合粒子は粒子径のばらつきが十分に小さい。なお、標準偏差は、0.1以上であってよい。
【0159】
TEMを用いて測定される金属複合粒子の最大粒子径は、25nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることがさらに好ましい。なお、最大粒子径は、1.0nm以上であってよい。
【0160】
粒子径を小さくすることで、金属複合粒子の単位質量あたりの表面積が大きくなる。また、粒子径のばらつきを小さくすることで、粒子の大きさの違いに起因する電子状態等の各種性質の差を小さくすることができる。このため、触媒としての活性が向上し、種々の触媒反応に用いることができる。また、再現性よく反応させることもできる。上記組成物は、触媒組成物ということもできる。
【0161】
金属複合粒子の平均粒子径、粒子径の標準偏差及び変動係数の算出方法は以下のとおりである。金属複合粒子を、走査型電子顕微鏡(TEM)を用いて1,000,000~1,500,000倍に拡大された画像の写真を撮影する。金属複合粒子の平面上への投影面積(すなわち写真における面積)と同一面積を有する真円の直径(円相当直径)を粒子の粒径とみなす。このような暗視野STEM写真による粒径の測定を、任意に抽出した同じ種類の約90~170個の粒子について行い、これらの粒子の粒径の算術平均値を平均粒子径とする。また、この平均粒子径を用いて標準偏差が求められる。さらに、粒子径の標準偏差を粒子径の平均値(平均粒子径)で割ることによって変動係数が求められる。
【0162】
より正確な平均粒子径、標準偏差及び変動係数を算出する観点から、90個以上の粒子の粒子径の測定値を用いることが好ましい。
【0163】
この平均粒子径を算出するために円相当直径を求めた粒子径のうち最大値が、TEMで測定した粒子の最大粒子径である。金属複合粒子の粒子径のばらつきは小さい方が好ましく、単分散であってもよい。例えば、変動係数は0.5以下であってよく、好ましくは0.4以下であり、より好ましくは0.25以下である。なお、変動係数は、0.1以上であってよい。
【0164】
STEM-EDSマッピングにより、1つの金属複合粒子中に存在する金属種を測定することができる。上記各製造方法によって、金属複合粒子担持体に担持される金属粒子の全てが複数種の金属から構成される粒子組成物を得ることができる。TEM測定において、金属種ごとにL核の電子がはじき飛ばされたときの特性X線を測定することで、各粒子中に存在する金属種を同定することができる。
【0165】
本開示の金属複合粒子担持体を含有する組成物は、酸化反応及び還元反応の触媒として適用することができる。一例として、固体高分子型燃料電池(PEFC)におけるカソード用電極触媒として酸素還元反応(ORR)に用いることができる。
【0166】
金属複合粒子は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)及びレニウム(Re)から選ばれる2種の金属から構成されてもよい。このうち、銀及び金からから選ばれる1種の金属、並びに、銅、パラジウム及び白金から選ばれる1種の金属から構成されることが好ましく、パラジウム及び白金から構成されることがさらに好ましい。
【0167】
金属複合粒子の表面積は、電気化学的表面積によって評価することができる。平均粒子径が同一の場合、金属複合粒子担持体における金属複合粒子同士の凝集が抑制されると、金属複合粒子の表面積が増加する。したがって、本評価にて求めた表面積より、担体に担持される金属複合粒子の分散性(凝集の程度)を評価することができる。触媒反応は金属複合粒子の表面で進行するため、表面積が大きい方が触媒反応は進行しやすい。したがって、金属複合粒子担持体を酸化反応及び還元反応等の触媒として適用する場合、表面積が大きい方が触媒活性が高くなる傾向にある。
【0168】
本実施形態の金属複合粒子担持体の電気化学的表面積(Electrochemically active surface area;ECSA)は、105~200m2/g-Ptであることが好ましく、105~180m2/g-Ptであることがより好ましく、110~140m2/g-Ptであることがより好ましい。なお、電気化学的表面積の測定方法及び酸素還元活性評価(カソード触媒評価)の方法の例を後述するが、これらの方法に限定されない。
【0169】
本実施形態における組成物は、コア部分とシェル部分の組成が互いに異なるコア-シェル構造を有する金属複合粒子が担持された金属複合粒子担持体を含有するうえに、電気化学的表面積が十分に大きいことから、金属複合粒子担持体における金属複合粒子の凝集が十分に抑制されている。このため、例えば触媒等の用途において高い性能を発揮することができる。組成物は、金属複合粒子の凝集を抑制する保護剤を含まなくてもよい。このような組成物は触媒としての機能を一層高くすることができる。組成物における保護剤の含有量は、例えば、第1金属元素1molに対して1.5mol以下であってよい。
【0170】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例0171】
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0172】
[金属複合粒子担持体の製造]
<実施例1>
(A液の調製)
還元剤(第1還元剤)であるNaBH4(和光純薬工業株式会社製)7.6mgを秤量し、ジグリムの含有量が10質量%である水溶液で25mLにメスアップした(NaBH4濃度:8.0mmol/L)。
(B液の調製)
第一金属化合物であるK2PdCl4(Sigma-Aldrich製)326mgを秤量し、純水で200mLにメスアップした(Pd濃度:5mmol/L)。
(C液の調製)
第二金属化合物であるH2PtCl6・6H2O(Sigma-Aldrich製)363mgを秤量し、純水で200mLにメスアップした(Pt濃度:3.5mmol/L)。
(D液の調製)
還元剤(第2還元剤)であるNaBH4(和光純薬工業株式会社製)5.3mgを秤量し、純水で25mLにメスアップした(NaBH4濃度:5.6mmol/L)。
【0173】
得られた各溶液をそれぞれシリンジに約20mL充填し、HARVARD社製のシリンジポンプにセットした。
【0174】
(E液の調製)
担体である活性炭(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名:カーボンECP、比表面積:800m2/g)6400mgを秤量し、エタノール1600mlを加え、活性炭スラリー(活性炭の含有量:0.5質量%)を調製した。活性炭スラリーの撹拌を継続しながら、EYELA製チューブポンプを用いて活性炭スラリー(分散液)をスラリー送液用ポンプ(兵新装備株式会社製、モーノポンプ)に循環供給した。
【0175】
(マイクロフロープロセスを用いた金属複合粒子担持体の製造)
図2に示すマイクロリアクタシステム100を以下の要領で作製した。マイクロチューブ16a,16b,17a,17bの一端とシリンジポンプとを、それぞれ連結した。マイクロチューブ16a,16bの他端と、第1マイクロミキサ13aの2つの入口とをそれぞれ連結した。マイクロチューブ17a,17bの他端と、第2マイクロミキサ13bの流体入口5、第3マイクロミキサ13cの流体入口8とを、それぞれ連結した。マイクロチューブ16a,16b,17a,17bは、いずれもPEEK製の長さ100cm及び内径1mmのものを用いた。
【0176】
マイクロチューブ18の一端とスラリー送液用ポンプとを連結し、マイクロチューブ18の他端と第4マイクロミキサ13dの流体入口11とを連結した。マイクロチューブ18は、テフロン(登録商標)製であり、長さ70cm及び内径1mmであった。第1マイクロミキサ13a、第2マイクロミキサ13b及び第3マイクロミキサ13cには、EYELAのPEEK製三方ジョイント(内径:0.5mm)を用いた。第4マイクロミキサ13dにはEYELAのPEEK製ティー(内径:1.5mm)を用いた。
【0177】
第1マイクロミキサ13aの流体出口3と第2マイクロミキサ13bの流体入口4とを、マイクロチューブ14aで連結した。第2マイクロミキサ13bの流体出口6と第3マイクロミキサ13cの流体入口7とを、マイクロチューブ14bで連結し、第3マイクロミキサ13cの流体出口9と第4マイクロミキサ13dの流体入口10とを、マイクロチューブ14cで連結した。マイクロチューブ14a,14b,14cには、いずれも、PEEK製の長さ5cm及び内径1mmのものを用いた。第4マイクロミキサ13dの流体出口12と受け容器15とは、長さ21.5cm及び内径1.58mmのテフロン(登録商標)製のチューブ14dで連結した。
【0178】
シリンジポンプを用いて、A液を4mL/min、B液を4mL/min、C液を4mL/min、D液を4mL/min、及びE液を20.5mL/minでそれぞれ送液した。まず、第1マイクロミキサ13aでA液とB液を混合して反応させて第1反応液を得た。その後、第2マイクロミキサ13bで第1反応液とC液を混合して混合液を得た。第3マイクロミキサ13cで混合液とD液とを混合して反応させて第2反応液を得た。その後、第4マイクロミキサ13dで第2反応液とE液とを混合して固形分を含む第3反応液を得た。チューブ14dの先端19から導出する第3反応液を容器15に捕集した。
【0179】
第1マイクロミキサ13aにおいてA液とB液とが合流してから、第2マイクロミキサ13bで第1反応液とC液とが合流するまでの滞留時間T1は0.3秒であった。第2マイクロミキサ13bにおいて第1反応液とC液とが合流してから、第3マイクロミキサ13cにおいて混合液とD液とが合流するまでの滞留時間T2は0.2秒であった。また、第3マイクロミキサ13cにおいて混合液とD液とが合流してから、第4マイクロミキサ13dにおいて第2反応液とE液とが合流するまでの滞留時間T3は0.15秒であった。
【0180】
第1マイクロミキサ13aにおいてA液とB液が合流してから、第2反応液が第4マイクロミキサ13dに流入し、第2反応液と活性炭を含むE液とが合流するまでに所要した合計時間TAは0.65秒であった。
【0181】
受け容器15に捕集した分散液に含まれる固形分を濾取し、減圧下、40℃で4時間乾燥した。このようにして、担体である活性炭に、コア-シェル構造を有する金属複合粒子が担持された金属複合粒子担持体(Pd-コア/Pt-シェル/活性炭)を製造した。ここで、本開示において「Pd-コア/Pt-シェル/活性炭」とは、コアがPdであり、シェルがPtである粒子が、活性炭で構成される担体に担持されていることを意味する。
【0182】
<実施例2~3>
第3マイクロミキサ13cと第4マイクロミキサ13dを連結するPEEK製のマイクロチューブ14cの長さ及び内径を表1に記載のサイズに変えることによって滞留時間T3及び合計時間TAを変更したこと以外は、実施例1と同様にして金属複合粒子担持体(Pd-コア/Pt-シェル/活性炭)を製造した。
【0183】
<比較例1>
実施例1と同様にしてA液(NaBH4濃度:8.0mmol/L)、B液(Pd濃度:5.0mmol/L)、C液(Pt濃度:3.5mmol/L)、及びD液(NaBH4濃度:5.7mmol/L)を調製した。
【0184】
(バッチプロセスによる金属複合粒子担持体の製造)
図7に示すマイクロリアクタシステム200を作製した。マイクロリアクタシステム200では、A液、B液、C液及びD液を送液する各シリンジポンプ、第1マイクロミキサ13a、第2マイクロミキサ13b、及び第3マイクロミキサ13cを、マイクロチューブを用いて、実施例1のマイクロリアクタシステム100と同様にして連結した。第3マイクロミキサ13cの流体出口9と、受け容器15とを、長さ9cm及び内径0.75mmのPEEK製のマイクロチューブ20で連結した。受け容器15には、活性炭(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名:カーボンECP)340mgとエタノール85mlとを入れ、磁気撹拌子を用いて撹拌を継続して行った。
【0185】
シリンジポンプを用いて、A液を4mL/min、B液を4mL/min、C液を4mL/min、及びD液を4mL/minでそれぞれ送液した。まず、第1マイクロミキサ13aでA液とB液を混合して反応させて第1反応液を得た。第2マイクロミキサ13bで第1反応液とC液を混合して混合液を得た。第3マイクロミキサ13cで混合液とD液とを混合して反応させて第2反応液を得た。マイクロチューブ20の先端から導出される第2反応液を、磁気撹拌子を用いて撹拌を行っている受け容器15に捕集して、活性炭と第2反応液を混合した。受け容器15における混合は15分間行った。
【0186】
実施例1と同様にして計測される滞留時間T1及び滞留時間T2は、それぞれ、0.3秒及び0.2秒であった。また、第3マイクロミキサ13cにおいて混合液とD液とが合流してから、第2反応液が受け容器15内の活性炭を含む分散液に合流するまでの滞留時間T3は0.15秒であった。第1マイクロミキサ13aにおいてA液とB液の混合を開始してから、第2反応液が受け容器15に流入し、活性炭を含む分散液に接触するまでに所要した合計時間TAは0.65秒であった。
【0187】
第2反応液が受け容器15に流入してから、受け容器15で15分間撹拌を継続して行った。この分散液に含まれる固体を濾取し、減圧下、40℃で4時間乾燥した。このようにして、担体である活性炭に、コア-シェル構造を有する金属複合粒子が担持された金属複合粒子担持体(Pd-コア/Pt-シェル/活性炭)を含む組成物を得た。
【0188】
<参考例1~3>
第3マイクロミキサ13cと第4マイクロミキサ13dを連結するPEEK製のマイクロチューブ14cの長さ及び内径を表3に記載のサイズに変えることによって滞留時間T3及び合計時間TAを変更したこと以外は、実施例1と同様にして金属複合粒子担持体(Pd-コア/Pt-シェル/活性炭)を製造した。
【0189】
[金属複合粒子担持体の評価]
<触媒性能評価>
(試験電極の作製)
各実施例及び比較例1で製造した金属複合粒子担持体の触媒としての性能を評価するため、以下の手順で試験電極を作製した。各実施例及び比較例1で得られた金属複合粒子担持体を含む組成物20mgと2プロパノール2.5mlと超純水2.5mlの混合溶液とをそれぞれ混合した。さらに、これに5質量%のNafion(登録商標)が分散した水溶液45μlを加えて混合液を得た。
【0190】
直径5mmのグラッシーカーボン電極の表面を、1μmのダイアモンド粒子を含有するスラリー、及び0.05μmのアルミナ粒子を含有するスラリーをこの順に用いて平滑に研磨した。上記混合液を氷水中で超音波分散した後、この混合液6.5μlを、グラッシーカーボン電極の上記表面上に滴下して室温乾燥させた。このようにして各実施例及び比較例1の試験電極を作製した。
【0191】
(電気化学測定)
電解セルには、ビーカ型三極式を使用した。対極には白金電極、参照極には可逆水素電極(RHE)を用いた。作用極には、上記試験電極を回転電極として使用した。上記電解セルを用いた電気化学測定には、BAS社製のALS-760E(商品名)を用いた。電解セルを電解液である0.1M過塩素酸溶液で満たし電解液にアルゴンガスを30分間吹き込んで電解液中の溶存酸素を除去し、電解セルの温度を25℃に維持した状態で測定を行った。電位走査範囲は0.05~1.2V、走査速度は50mV/secとした。試験電極の表面の不純物を取り除くため、波形の変化がほぼ認められなくなる20サイクルの前処理を行った後に測定を開始した。これによって、サイクリックボルタンメトリ曲線を得た。
【0192】
(電気化学的表面積の算出)
上述の電気化学測定によって得られたサイクリックボルタンメトリ曲線のうち、電気二重層領域から水素発生電流の立ち上がりまでの範囲を水素吸着波とみなした。この前提下、計測電流から電気二重層の放電電流を差し引いて積分し、水素吸着電気量を求めた。そのようにして求められた水素吸着電気量QH(C)を、以下の式(1)によって電気化学的表面積(Electrochemically active surface area;ECSA)(m2/g-Pt)に換算した。結果は表1に示すとおりであった。ここで、式(1)中のLPtは、試験電極に用いられた触媒(金属複合粒子担持体)中の白金の質量(g)である。
ECSA=QH/2.1×LPt ・・・(1)
【0193】
(酸素還元活性の評価(カソード触媒の評価))
酸素還元活性評価には、電気化学的表面積の測定に用いた電解セルを用いた。開始電位0.05V、最終電位1.0V、走査速度10mV/secで、バックグランドを測定した。その後、酸素を30分間吹き込んで酸素飽和させた。この状態で、開始電位0.05V、最終電位1.0V、走査速度10mV/secで、電極の回転数を400rpm、900rpm、1600rpm、2500rpm、3600rpmと変化させて分極曲線を測定した。
【0194】
活性化支配電流の算出には、よく知られたKoutecky-Levichプロットを用いた。下記式(2)で、ω1/2=0となるy切片から活性支配電流Ik(A)を求め、0.9V時の白金質量あたりの活性(MA)(A/g-Pt)を以下の式(4)により算出した。結果は表1に示すとおりであった。
【0195】
1/I=1/Ik+1/IL
=1/Ik+1/Bω1/2 ・・・(2)
上記式(2)中、Bは、下記式(3)で算出される値である。
【0196】
B=0.62nFAD2/3C∞ν-1/6ω1/2 (3)
上記式(3)における各記号は以下の値である。
Ik:活性支配電流
IL:拡散限界電流
n:反応電子数
F:ファラデー定数
A:電気化学的表面積(上述の測定で求めた値)
D:酸素の拡散係数
ν:0.1M過塩素酸の動粘度
C∞:酸素溶解度
ω:回転電極の角速度(rad/s)
【0197】
MA=Ik/LPt ・・・(4)
上記式(4)におけるLPtは、試験電極に用いられた触媒(金属複合粒子担持体)中の白金の質量(g)である。
【0198】
<構造の解析>
図8の写真(A)、(B)、(C)、(D)は、実施例1で得られた金属複合粒子担持体における金属複合粒子のSTEM-EDSマッピング分析結果である。
図9の写真(A)、(B)、(C)、(D)は、実施例2で得られた金属複合粒子担持体における金属複合粒子のSTEM-EDSマッピング分析結果である。
図10の写真(A)、(B)、(C)、(D)は、実施例3で得られた金属複合粒子担持体における金属複合粒子のSTEM-EDSマッピング分析結果である。
図11の写真(A)、(B)、(C)、(D)は、比較例1で得られた金属複合粒子担持体における金属複合粒子のSTEM-EDSマッピング分析結果である。
【0199】
図8において、写真(A)は暗視野STEM画像を示し、写真(B)はパラジウムのL像を示し、写真(C)は白金のL像を示している。写真(D)は、写真(B)と写真(C)を合成したものであり、パラジウム及び金のL像を示している。
図9、
図10及び
図11における写真(A)、(B)、(C)、(D)は、
図8と同様にそれぞれ暗視野STEM画像、パラジウムのL像、白金のL像、パラジウム及び金のL像を示している。本明細書におけるL像とは原子中のL核の電子がはじき飛ばされたときの特性X線により検出された像をいう。この結果より、実施例1,2,3及び比較例1の金属複合粒子は、いずれもPd-コア/Pt-シェル構造を有することが確認された。
【0200】
<粒径分布の測定>
図12、
図13、
図14及び
図15は、実施例1、実施例2、実施例3及び比較例1の金属複合粒子担持体における金属複合粒子の粒径分布である。
図16、
図17及び
図18は、参考例1、参考例2及び参考例3の金属複合粒子担持体における金属複合粒子の粒径分布である。これらの粒径分布は、暗視野STEM写真から求めた円相当直径の度数分布である。実施例1、実施例2、実施例3及び比較例1では、粒径のばらつきが小さい金属複合粒子が担持されていることが確認された。参考例1~3においても、粒径のばらつきが小さい金属複合粒子が担持されていることが確認された。暗視野STEM写真から求めた平均粒子径、最大粒子径、標準偏差、変動係数、及び測定した金属複合粒子の粒子数は表2及び表4に示すとおりであった。
【0201】
<担持量の測定>
受け容器に捕集した分散液から固形分を濾取して得られた濾液のICP分析を行った。その結果、第1金属元素及び第2金属元素が検出されなかった。このことから、金属複合粒子担持体の製造に用いた第1金属元素及び第2金属元素の全量が担体に担持されていることが確認された。反応に用いた第一金属化合物及び第二金属化合物の量に基づいて、金属複合粒子担持体を基準とする金属複合粒子の担持量を求めた。結果は、表1及び表3に示すとおりであった。
【0202】
【0203】
【0204】
表1に示すとおり、実施例1~3の方が、比較例1よりも電気化学的表面積が大きかった。このことは、実施例1~3では担体に担持された後の金属複合粒子の凝集が十分に抑制されていることを示している。したがって、実施例1~3は比較例1よりも触媒性能に優れる。
【0205】
【0206】
【0207】
参考例1~3より、上記滞留時間や合計時間を長くしても、実施例1~3と同様に、粒径のばらつきが小さい金属複合粒子が担持されていることが確認された。
本開示によれば、金属複合粒子が担体に担持された後の金属複合粒子の凝集を十分に抑制することが可能な金属複合粒子担持体の製造方法を提供することができる。また、担体に担持された金属複合粒子の凝集が十分に抑制されている金属複合粒子担持体を含む組成物を提供することができる。
1,2…流体入口、4,5…流体入口、6…流体出口、7,8…流体入口、9…流体出口、10,11…流体入口、12…流体出口、13a…第1マイクロミキサ、13b…第2マイクロミキサ、13c…第3マイクロミキサ、13d…第4マイクロミキサ、13e…第8マイクロミキサ、14a,14b,14c…チャンネル(マイクロチューブ)、14d…チャンネル(チューブ)、15…受け容器、16a,16b,17a,17b,18…チャンネル(マイクロチューブ)、19…先端、20…マイクロチューブ、21,22,23…流体入口、24…流体出口、100,102,104,200…マイクロリアクタシステム。