(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106779
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】金属酸化物でカプセル化された薬物組成物及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/02 20060101AFI20220712BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20220712BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20220712BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20220712BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20220712BHJP
A61K 31/7052 20060101ALI20220712BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20220712BHJP
A61K 31/56 20060101ALI20220712BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20220712BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20220712BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20220712BHJP
A61K 31/43 20060101ALI20220712BHJP
A61K 31/424 20060101ALI20220712BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220712BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220712BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220712BHJP
A61P 5/44 20060101ALI20220712BHJP
A61P 11/08 20060101ALI20220712BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
A61K47/02
A61K9/50
A61K9/51
A61K31/167
A61K31/7048
A61K31/7052
A61K31/192
A61K31/56
A61K31/137
A61K31/506
A61K31/519
A61K31/43
A61K31/424
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P29/00
A61P31/04
A61P5/44
A61P11/08
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022066726
(22)【出願日】2022-04-14
(62)【分割の表示】P 2020560122の分割
【原出願日】2019-01-16
(31)【優先権主張番号】201841001745
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ネイキルク, コリン シー.
(72)【発明者】
【氏名】フランケル, ジョナサン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】1つ以上の金属酸化物材料によって囲まれた薬物含有コアを有する医薬組成物を調製する方法を提供する。
【解決手段】(a)薬物を含む粒子をリアクタにロードすること、(b)蒸気又はガス状の金属前駆体をリアクタ内の粒子に塗布すること、(c)不活性ガスを使用してリアクタの1つ以上のポンプパージサイクルを実行すること、(d)蒸気又はガス状の酸化剤をリアクタ内の粒子に塗布すること、及び(e)不活性ガスを使用してリアクタの1つ以上のポンプパージサイクルを実行することの一連のステップを含む。粒子の温度は35℃を超えない。これにより、1つ以上の金属酸化物材料によって囲まれた薬物含有コアを含む医薬組成物が生成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の金属酸化物材料によって囲まれた薬物含有コアを含む医薬組成物を調製する方法であって、
(a)薬物を含む粒子をリアクタにロードすること;
(b)蒸気又はガス状の金属前駆体をリアクタ内の粒子に塗布すること;
(c)不活性ガスを使用してリアクタの1つ以上のポンプパージサイクルを実行すること;
(d)蒸気又はガス状の酸化剤をリアクタ内の粒子に塗布すること;及び
(e)不活性ガスを使用してリアクタの1つ以上のポンプパージサイクルを実行すること;
の一連のステップを含み、
粒子の温度が35℃を超えず、それによって、1つ以上の金属酸化物材料によって囲まれた薬物含有コアを含む医薬組成物を生成する、
方法。
【請求項2】
コアを囲む1つ以上の金属酸化物材料の全体の厚さを増加させるために、一連のステップ(b)~(e)が1回又は複数回繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リアクタ圧力が次のステップ(a)、ステップ(b)、及び/又はステップ(d)を安定化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
リアクタの内容物が、ステップ(b)、ステップ(c)、及び/又はステップ(e)の前及び/又は最中に攪拌される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
蒸気又はガス状の内容物のサブセットが、ステップ(c)及び/又はステップ(e)の前にポンプで排出される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
金属酸化物層が0.1nmから100nmの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
粒子が、薬物と、1つ以上の薬学的に許容される添加物とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
粒子が、体積平均に基づいて、0.1μmから1000μmの間のメジアン粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
医薬組成物がリアクタから取り出され、薬学的に許容される希釈剤又は担体と混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
粒子が本質的に薬物からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
薬物が、小分子、ウイルス粒子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ポリペプチドと脂質を含む組成物、又はポリヌクレオチドと脂質を含む組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
1つ以上の金属酸化物材料によって囲まれた薬物含有コアを含む医薬組成物であって、該方法が、
(a)薬物を含む粒子をリアクタにロードすること;
(b)蒸気又はガス状の金属前駆体をリアクタ内の粒子に塗布すること;
(c)不活性ガスを使用してリアクタの1つ以上のポンプパージサイクルを実行すること;
(d)蒸気又はガス状の酸化剤をリアクタ内の粒子に塗布すること;及び
(e)不活性ガスを使用してリアクタの1つ以上のポンプパージサイクルを実行すること;
の一連のステップを含み、
粒子の温度が35℃を超えず、それによって、1つ以上の金属酸化物材料によって囲まれた薬物含有コアを含む医薬組成物を生成する、
医薬組成物。
【請求項13】
コアを囲む1つ以上の金属酸化物材料の全体の厚さを増加させるために、一連のステップ(b)~(e)が1回又は複数回繰り返される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
リアクタ圧力が次のステップ(a)、ステップ(b)、及び/又はステップ(d)を安定化させる、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
リアクタの内容物が、ステップ(b)、ステップ(c)、及び/又はステップ(e)の前及び/又は最中に攪拌される、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
蒸気又はガス状の内容物のサブセットが、ステップ(c)及び/又はステップ(e)の前にポンプで排出される、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
金属酸化物層が0.1nmから100nmの範囲の厚さを有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
粒子が、薬物と、1つ以上の薬学的に許容される添加物とを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項19】
粒子が、体積平均に基づいて、0.1μmから1000μmの間のメジアン粒径を有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項20】
医薬組成物がリアクタから取り出され、薬学的に許容される希釈剤又は担体と混合される、請求項12に記載の組成物。
【請求項21】
コアが本質的に薬物からなる、請求項12に記載の組成物。
【請求項22】
薬物が、小分子、ウイルス粒子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ポリペプチドと脂質を含む組成物、又はポリヌクレオチドと脂質を含む組成物である、請求項12に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、35℃以下のプロセス温度で、金属酸化物でカプセル化した薬物を調製する、医薬組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流動性が向上し、貯蔵寿命が長く、溶解性が向上し、かつ、必要とする対象への医薬組成物の投与の前又は後に機能的である薬物を高画分で含む、薬物を含む医薬組成物(例えば、小分子、ウイルス粒子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ポリペプチドと脂質の混合物、またはポリヌクレオチドと脂質の混合物、小分子、ウイルス粒子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ポリペプチドと脂質の混合物、又はポリヌクレオチドと脂質の混合物)を開発することは、製薬産業にとって重要である。これらの特性は、治療用量あたりの関連する製造コストを削減する可能性がある。これらの特性はまた、(i)調製方法の安全性、予測可能性、及び成功率を実現又は高めること;(ii)例えば、医薬組成物の調製中及び/又は投与前の保存条件において、経時的な薬物の安定性を向上させること;(iii)薬物の溶解度を上げること;及び/又は(iv)1つ以上の治療上の利益を与える必要がある対象に投与しなければならない医薬組成物の量を減らすこと、によって、医薬組成物の商業的価値の増加又は政府承認の可能性の増加をもたらしうる。薬物をカプセル化するための数多くのコーティング技術、例えば、ポリマーメッシュコーティング、パンコーティング、エアロゾルコーティング、流動床リアクタコーティング、分子層堆積コーティング、及び原子層堆積コーティングなどが開発されている。カプセル化された薬物を調製するための組成物及び方法の進歩にもかかわらず、既知の方法によって調製された医薬組成物は、流動性の低下を示し、及び/又は、例えば調製プロセス中に分解する薬物を含み、したがって、カプセル化された薬物を調製するための新しい組成物及び方法についての満たされていない欲求が存在する。本発明は、特に金属酸化物カプセル化薬物についてのこのニーズに対処するものである。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、1つ以上の金属酸化物材料によって囲まれた薬物含有コアを有する医薬組成物を調製する方法が提供される。本方法は、(a)薬物を含む粒子をリアクタにロードすること、(b)蒸気又はガス状の金属前駆体をリアクタ内の粒子に塗布すること、(c)不活性ガスを使用してリアクタの1つ以上のポンプパージサイクルを実行すること、(d)蒸気又はガス状の酸化剤をリアクタ内の粒子に塗布すること、及び(e)不活性ガスを使用してリアクタの1つ以上のポンプパージサイクルを実行すること、の一連のステップを含む。粒子の温度は35℃を超えない。これにより、1つ以上の金属酸化物材料によって囲まれた薬物含有コアを含む医薬組成物が生成される。
【0004】
実装形態は、下記の特徴の1つ以上を含みうる。
【0005】
リアクタの内部の温度は、35℃を超える必要はない。
【0006】
コアを囲む1つ以上の金属酸化物材料の全体の厚さを増加させるために、一連のステップ(b)~(e)を1回又は複数回繰り返すことができる。
【0007】
リアクタ圧力は、次のステップ(a)、ステップ(b)、及び/又はステップ(d)を安定化することができる。
【0008】
リアクタの内容物は、ステップ(b)、ステップ(c)、及び/又はステップ(e)の前及び/又は最中に攪拌されうる。
【0009】
蒸気又はガス状の内容物のサブセットは、ステップ(c)及び/又はステップ(e)の前にポンプで排出されうる。
【0010】
金属酸化物層は、0.1nmから100nmの範囲の厚さを有することができる。
【0011】
粒子は、薬物と、1つ以上の薬学的に許容される添加物とを含みうる。
【0012】
粒子は、体積平均に基づいて、0.1μmから1000μmの間のメジアン粒径を有しうる。
【0013】
医薬組成物は、リアクタから取り出されて、薬学的に許容される希釈剤又は担体と混合されうる。
【0014】
粒子は本質的に薬物で構成されうる。
【0015】
薬物は、小分子、ウイルス粒子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ポリペプチドと脂質を含む組成物、又はポリヌクレオチドと脂質を含む組成物でありうる。
【0016】
1つ以上の金属酸化物材料には、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化ガリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ランタン、及び/又は二酸化ジルコニウムが含まれうる。
【0017】
1つ以上の金属酸化物材料は、酸化アルミニウム及び/又は酸化チタンで構成されうる。
【0018】
酸化剤は、水、オゾン、及び有機過酸化物の群から選択することができる。
【0019】
ポリペプチドは抗体又は抗体断片でありうる。
【0020】
抗体又は抗体断片は、アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、ペンブロリズマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、又はトラスツズマブの群から選択されうる。
【0021】
小分子薬物は、アセトアミノフェン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、イブプロフェン、プロピオン酸フルチカゾン、サルメテロール、パゾパニブHCl、パルボシクリブ、又はアモキシシリン・クラブラン酸カリウムの群から選択されうる。
【0022】
別の態様では、1つ以上の金属酸化物材料によって囲まれた薬物含有コアを有する医薬組成物は、上記の方法のいずれかによって調製することができる。
【0023】
他に定義されない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明で使用するための方法及び材料を本明細書で説明する;当技術分野で知られている他の適切な方法及び材料もまた使用することができる。材料、方法、及び例は、単なる例示であり、限定することは意図していない。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ、及び他の参考文献は、ここに参照することによってその全体が組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めて、本明細書が支配する。
【0024】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】粒子、例えば、薬物のALD及び/又はCVDコーティングのための回転リアクタの概略図
【
図3】本方法の1サイクルについて、ステップ(d)、(h)、(i)、及び(m)の間に測定する代表的な残留ガス分析トレースを示すグラフ
【
図4】(上):コーティングされていないクラリスロマイシン、酸化アルミニウムでコーティングされたクラリスロマイシン、又は酸化チタンでコーティングされたクラリスロマイシンを含む組成物由来のクラリスロマイシンを重ね合わせたHPLCクロマトグラムを示すグラフ;(下):HPLCクロマトグラムから定量化した値を示す表
【
図5】(上):コーティングされていないCCC、酸化アルミニウムでコーティングされたCCC、又は酸化チタンでコーティングされたCCCを含む組成物由来のクラリスロマイシン・カルボマー複合体(CCC)を重ね合わせたHPLCクロマトグラムのグラフ;(下):HPLCクロマトグラムから定量化した値を示す表
【
図6】(上):分析した、コーティングされていないパゾパニブ、酸化アルミニウムでコーティングされたパゾパニブ、又は酸化チタンでコーティングされたパゾパニブを含む組成物由来のパゾパニブを重ね合わせたHPLCクロマトグラムのグラフ;(下):HPLCクロマトグラムから定量化した値を示す表
【
図7】(上):コーティングされていないクラリスロマイシンパルボシクリブ、酸化アルミニウムでコーティングされたパルボシクリブ、又は酸化チタンでコーティングされたパルボシクリブを含む組成物由来のパルボシクリブを重ね合わせたHPLCクロマトグラムのグラフ;(下):HPLCクロマトグラムから定量化した値を示す表
【
図8】コーティングされていないパゾパニブHCl、酸化アルミニウムでコーティングされたパゾパニブHCl、又は酸化チタンでコーティングされたパゾパニブHClの組成物に由来するパゾパニブHClのMALDI-TOFで分析したスペクトルパターンを示すグラフ
【
図9】コーティングされていないパゾパニブHCl、酸化アルミニウムでコーティングされたパゾパニブHCl、又は酸化チタンでコーティングされたパゾパニブHClの組成物に由来するパゾパニブHClのMALDI MS/MSで分析した断片化パターンを示すグラフ
【
図10】コーティングされていないパルボシクリブ、酸化アルミニウムでコーティングされたパルボシクリブ、又は酸化チタンでコーティングされたパルボシクリブの組成物に由来するパルボシクリブのMALDI-TOFで分析したスペクトルパターンを示すグラフ
【
図11】コーティングされていないパルボシクリブ、酸化アルミニウムでコーティングされたパルボシクリブ、又は酸化チタンでコーティングされたパルボシクリブの組成物に由来するパルボシクリブのMALDI MS/MSで分析した断片化パターンを示すグラフ
【
図12】UV分光法で分析した、コーティングされていないクラリスロマイシン、酸化アルミニウムでコーティングされたクラリスロマイシン、又は酸化チタンでコーティングされたクラリスロマイシンに由来するクラリスロマイシンの経時による相対放出率を示すグラフ
【
図13】UV分光法で分析した、コーティングされていないCCC、酸化アルミニウムでコーティングされたCCC、又は酸化チタンでコーティングされたCCCに由来するクラリスロマイシン・カルボマー複合体(CCC)の経時による相対放出率を示すグラフ
【
図14】UV分光法で分析した、コーティングされていないパルボシクリブ、酸化アルミニウムでコーティングされたパルボシクリブ、又は酸化チタンでコーティングされたパルボシクリブに由来するパルボシクリブの経時による相対放出率を示すグラフ
【
図15】相対湿度90%への曝露の有無による、コーティングされていないインドメタシン、酸化アルミニウムでコーティングされたインドメタシン、又は酸化チタンでコーティングされたインドメタシンを含む組成物の結晶化度を示すグラフ
【
図16】金属酸化物材料でコーティングされたアセトアミノフェンの透過電子顕微鏡法によって取得した代表的な画像
【
図17】XPS分析で決定した、コーティングされていないアセトアミノフェン又は金属酸化物材料でコーティングされたアセトアミノフェン組成物についての結合エネルギーに対する強度のプロファイルを示すグラフ;差し込みは、グラフから定量化したC1s、O1s、及びN1sのパーセンテージを示した表である。
【
図18】コーティングされていないアバスチン(登録商標)又は酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)の組成物に由来するアバスチン(登録商標)のインタクト質量の抽出イオンクロマトグラムを示すグラフ
【
図19】コーティングされていないアバスチン(登録商標)又は酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)の組成物で検出された、予測糖型及び主な不均一性のデコンボリューション質量を示すグラフ
【
図20】コーティングされていないアバスチン(登録商標)又は酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)の組成物のLC-MSで検出された主な不均一性を示す表
【
図21】コーティングされていないハーセプチン(登録商標)又は酸化アルミニウムでコーティングされたハーセプチン(登録商標)の組成物に由来するハーセプチン(登録商標)のインタクト質量の抽出イオンクロマトグラムを示すグラフ
【
図22】コーティングされていないハーセプチン(登録商標)又は酸化アルミニウムでコーティングされたハーセプチン(登録商標)の組成物で検出された、予測糖型及び主な不均一性のデコンボリューション質量を示すグラフ
【
図23】コーティングされていないハーセプチン(登録商標)又は酸化アルミニウムでコーティングされたハーセプチン(登録商標)の組成物のLC-MSで検出された主な不均一性を示す表
【
図24】in-silicoで消化させたアバスチン(登録商標)配列と比較した、コーティングされていないアバスチン(登録商標)又は酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)の二重消化組成物の配列包括度のパーセンテージを示す表
【
図25】コーティングされていないアバスチン(登録商標)又は酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)の組成物で同定された全化合物を示すプロット
【
図26】in-silicoで消化させたアハーセプチン(登録商標)配列と比較した、コーティングされていないハーセプチン(登録商標)又は酸化アルミニウムでコーティングされたハーセプチン(登録商標)の二重消化組成物の配列包括度のパーセンテージを示す表
【
図27】コーティングされていないハーセプチン(登録商標)又は酸化アルミニウムでコーティングされたハーセプチン(登録商標)の組成物で同定された全化合物を示すプロット
【
図28】コーティングされていないアバスチン(登録商標)又は酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)の組成物のFTIR分析の結果を示すグラフ
【
図29】コーティングされていないアバスチン(登録商標)又は酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)の組成物のFTIR分析の結果を示すグラフ
【
図30】コーティングされていないアバスチン(登録商標)又は酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)の組成物由来のアバスチン(登録商標)のアルファヘリックス、ベータシート、ランダムコイル、及びベータターンのパーセンテージを示す表
【
図31】コーティングされていないアバスチン(登録商標)又は酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)の組成物の遠紫外線CD分析の結果を示すグラフ
【
図32】コーティングされていないアバスチン(登録商標)又は酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)の組成物の内因性及び外因性蛍光分析の結果を示すグラフ
【
図33】コーティングされていないアバスチン(登録商標)又は酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)の組成物のλmaxを示す表
【
図34】コーティングされていないハーセプチン(登録商標)又は酸化アルミニウムでコーティングされたハーセプチン(登録商標)の組成物のFTIR分析の結果を示すグラフ
【
図35】コーティングされていないハーセプチン(登録商標)又は酸化アルミニウムでコーティングされたハーセプチン(登録商標)の組成物のFTIR分析の結果を示すグラフ
【
図36】コーティングされていないハーセプチン(登録商標)又は酸化アルミニウムでコーティングされたハーセプチン(登録商標)の組成物由来のハーセプチン(登録商標)のアルファヘリックス、ベータシート、ランダムコイル、及びベータターンのパーセンテージを示す表
【
図37】コーティングされていないハーセプチン(登録商標)又は酸化アルミニウムでコーティングされたハーセプチン(登録商標)の組成物の遠紫外線CD分析の結果を示すグラフ
【
図38】コーティングされていないハーセプチン(登録商標)又は酸化アルミニウムでコーティングされたハーセプチン(登録商標)の組成物の近紫外線CD分析の結果を示すグラフ
【
図39】(上):コーティングされていないアバスチン(登録商標)又は酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)の組成物のサイズ排除クロマトグラフィー分析の結果を示すグラフ;(下):定量化されたモノマー及び凝集体の保持時間を示す表
【
図40】コーティングされていないアバスチン(登録商標)又は酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)の組成物のイオン交換クロマトグラフィー分析の結果を示すグラフ
【
図41】(上):コーティングされていないハーセプチン(登録商標)又は酸化アルミニウムでコーティングされたハーセプチン(登録商標)の組成物のサイズ排除クロマトグラフィー分析の結果を示すグラフ;(下):定量化されたモノマー及び凝集体の保持時間を示す表
【
図42】コーティングされていないハーセプチン(登録商標)又は酸化アルミニウムでコーティングされたハーセプチン(登録商標)の組成物のイオン交換クロマトグラフィー分析の結果を示すグラフ
【
図43】コーティングされていないアバスチン(登録商標)又は酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)の組成物から単離されたアバスチン(登録商標)のSPR結合アッセイの結果を示すグラフ
【
図44】
図43に示される結果から定量化されたKD値を示す表
【
図45】コーティングされていないハーセプチン(登録商標)又は酸化アルミニウムでコーティングされたハーセプチン(登録商標)の組成物から単離されたハーセプチン(登録商標)のSPR結合アッセイの結果を示すグラフ
【
図46】
図45に示される結果から定量化されたKD値を示す表
【
図47】コーティングされていないアバスチン(登録商標)又は酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)の組成物からFTIRで測定した、経時によるアバスチン(登録商標)の二次構造のパーセンテージを示す表
【
図48】コーティングされていないアバスチン(登録商標)又は酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)の組成物からFTIRで測定した、経時によるアバスチン(登録商標)のλmaxを示す表
【
図49】コーティングされていないアバスチン(登録商標)又は酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)の組成物の経時によるアバスチン(登録商標)の内因性及び外因性蛍光の結果を示すグラフ
【
図50】コーティングされていないアバスチン(登録商標)又は酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)の組成物の経時によるSECで測定したアバスチン(登録商標)の凝集体のパーセンテージを示すグラフ
【
図51】
図50に提示された結果から定量化された凝集体のパーセンテージを示す表
【
図52】コーティングされていないハーセプチン(登録商標)又は酸化アルミニウムでコーティングされたハーセプチン(登録商標)の組成物からFTIRで測定した、経時によるハーセプチン(登録商標)の二次構造のパーセンテージを示す表
【
図53】コーティングされていないハーセプチン(登録商標)又は酸化アルミニウムでコーティングされたハーセプチン(登録商標)の組成物からFTIRで測定した、経時によるハーセプチン(登録商標)のλmaxを示す表
【
図54】コーティングされていないハーセプチン(登録商標)又は酸化アルミニウムでコーティングされたハーセプチン(登録商標)の組成物の経時によるハーセプチン(登録商標)の内因性及び外因性蛍光の結果を示すグラフ
【
図55】コーティングされていないハーセプチン(登録商標)又は酸化アルミニウムでコーティングされたハーセプチン(登録商標)の組成物の経時によるSECで測定したハーセプチン(登録商標)の凝集体のパーセンテージを示すグラフ
【
図56】
図55に提示された結果から定量化された凝集体のパーセンテージを示す表
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、金属酸化物の1つ以上の層によってカプセル化された薬物を含む医薬組成物を調製する方法を提供する。このような医薬組成物は、流動性、溶解性、経時的な安定性が向上し、かつ、必要とする対象への医薬組成物の投与の前又は後に機能的である高画分の薬物を含む。概して、医薬組成物を調製する提供された方法は、前述の特性を有する医薬組成物を安全、確実、かつ予測可能に生成することができる。結果として、提供される医薬組成物及び金属酸化物カプセル化薬物を調製する方法は、治療的価値を高め、商業的価値を高め、かつ治療用量あたりの製造コストを削減する。
【0027】
有利な医薬組成物の製造は、蒸気又はガス状の金属前駆体と、蒸気又はガス状の酸化剤とを順次塗布する(及び、前記金属又は酸化剤の各塗布後に不活性ガスを使用して1つ以上のポンプパージサイクルを実行する)ことにより、方法全体を、例えば35℃を超えないより低い温度で行うことができるという発見によって可能となった。50℃未満の温度で実行する場合に、蒸気又はガス状の前駆体を使用して金属酸化物で薬物をコーティングする既知の方法は、温度が50℃未満に低下すると、リアクタ内の酸化剤(例えば、水)のレベルが上昇することから、特性が改善された医薬組成物を生成しない。リアクタ内の酸化剤の上昇した持続的なレベルは、金属前駆体及び酸化剤の粒子表面との反応並びに相互の反応(及び吸着)に悪影響を及ぼす可能性がある。加えて、リアクタ内の酸化剤レベルの上昇は、未反応の金属前駆体、該金属前駆体と基質又は粒子の表面の露出したヒドロキシル基との反応に由来するガス状副生成物、及び/又は薬物の周りの金属酸化物層に組み込まれていない未反応の酸化剤を除去する能力を妨げる可能性があり、これは、汚染金属酸化物粒子の形成、及び/又は薬物の周囲に形成される金属酸化物層の数及び均一性に関する予測可能性の低下につながりうる。特定の理論に縛られはしないが、ポンプパージサイクルのステップは、熱力学的ではなく動力学的にそこに捕捉された、粒子表面上及びリアクタの内表面上の酸化剤分子をノックオフする速度論的効果を媒介する可能性がある。結果として、リアクタ内の問題となる水分含有量は、リアクタ内の圧力、温度、及び分子数によって決定される、当技術分野でよく知られている熱力学的原理に基づいて予想される量未満に低減される。
【0028】
本明細書では、機械システム及び化学工学プロセスを利用する方法が提供される。本開示はまた、前記システム及びプロセスの例示的な構成成分及び動作条件、並びに例示的な薬物基質、蒸気及びガス状金属前駆体、並びに蒸気及びガス状酸化剤を提供する。
【0029】
薬物
「薬物」という用語は、その最も広い意味で、小分子、ウイルス粒子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ポリペプチドと脂質を含む組成物、及びポリヌクレオチドと脂質を含む組成物を含む。薬物は、鎮痛剤、麻酔剤、抗炎症剤、駆虫剤、抗不整脈剤、抗喘息剤、抗生物質、抗がん剤、抗凝固剤、抗うつ剤、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、降圧薬、抗ムスカリン薬、抗マイコバクテリア薬、抗腫瘍薬、抗酸化剤、解熱剤、免疫抑制剤、免疫刺激剤、抗甲状腺薬、抗ウイルス薬、抗不安鎮静薬、催眠薬、神経遮断薬、収斂剤、静菌剤、ベータアドレナリン受容体遮断薬、血液製剤、代用血液、気管支拡張薬、緩衝剤、心臓変力剤、化学療法剤、造影剤、コルチコステロイド、咳抑制薬、去痰薬、粘液溶解薬、利尿薬、ドーパミン作動薬、抗パーキンソン病薬、フリーラジカル捕捉剤、成長因子、止血剤、免疫剤、脂質調節剤、筋弛緩剤、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、副交感神経興奮薬、副甲状腺カルシトニン、ビスホスホネート、プロスタグランジン、放射性医薬品、ホルモン、性ホルモン、抗アレルギー剤、食欲刺激剤、食欲抑制剤、ステロイド、交感神経刺激薬、甲状腺剤、ワクチン、血管拡張剤、及びキサンチンからなる群より選択することができる。
【0030】
小分子薬物の例示的なタイプには、アセトアミノフェン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、イブプロフェン、プロピオン酸フルチカゾン、サルメテロール、パゾパニブHCl、パルボシクリブ、及びアモキシシリン・クラブラン酸カリウムが含まれるが、これらに限定されない。ポリペプチド薬物の例示的なタイプには、タンパク質(例えば、抗体)、ペプチド断片(例えば、抗体断片)、アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、ペンブロリズマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、又はトラスツズマブが含まれるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチド薬物の例示的なタイプには、メッセンジャーmRNA(mRNA)、そのハイブリッド、RNAi誘導剤、RNAi剤、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、触媒DNA、三重らせん形成誘導RNA、アプタマー、及びベクターを含めた、DNA、RNAのうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。脂質の例示的なタイプには、脂肪、ワックス、ステロール含有代謝産物、ビタミン、脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質、及びポリケチド、及びプレノール脂質が含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
本開示では、リアクタにロードされる薬物は、粉末形態でありうる。薬物を粉末形態で調製する例示的な方法には、凍結乾燥(lyophilization,freeze-drying)、沈殿、及び乾式圧縮を利用するプロセスが含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
金属酸化物材料
「金属酸化物材料」という用語は、その最も広い意味で、金属と見なされる元素と酸素をベースとした酸化剤との反応から形成されるすべての材料を含む。例示的な金属酸化物材料には、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化ガリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ランタン、及び二酸化ジルコニウムが含まれるが、これらに限定されない。例示的な酸化剤には、水、オゾン、及び無機過酸化物が含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
原子層堆積(ALD)
原子層堆積は、元素又は化合物の自己制御的単層を順次追加することによって原子又は分子単層のレベルに制御された厚さ及び均一性を有する膜の堆積を可能にする、薄膜堆積技術である。自己制御とは、一度に単一の原子層のみが形成されることを意味し、表面を再生してさらなる堆積を可能にするには、後続のプロセスステップが必要である。
【0034】
化学気相堆積(CVD)
化学気相堆積は、元素又は化合物が気相中又は表面上での化学反応によって表面に堆積される薄膜堆積技術である。それは、堆積が自己制御されない、すなわち、化学物質が供給されている限り、膜は成長し続けるという点において、原子層堆積とは異なっている。それは、化学反応の結果、前駆体核種とは化学的に異なる堆積膜が生成されるという点で、物理気相堆積とは異なっている。
【0035】
リアクタシステム
その最も広い意味での「リアクタシステム」という用語は、ALD又はALD/CVDの混合又はCVDを実行するために使用することができるすべてのシステムを含む。例示的なリアクタシステムが
図1に示されており、以下においてさらに説明される。
【0036】
図1は、薄膜コーティングで例えば熱に敏感な粒子などの粒子のコーティングを実行するためのリアクタシステム10を示している。リアクタシステム10は、ALD及び/又はCVDコーティング条件を使用してコーティングを実行することができる。ALD及びCVDプロセスの薄膜コーティングへの相対的な寄与は、プロセス条件の適切な選択によって制御することができる。特に、リアクタシステム10は、主にALDプロセス、例えば、ほぼ完全にALDプロセスを、低い処理温度、例えば50℃未満、例えば35℃以下で実行することを可能にする。例えば、リアクタシステム10は、主に、22~35℃、例えば、25~35℃、25~30℃、又は30~35℃の温度でのALDによって、粒子上に薄膜金属酸化物を形成することができる。概して、粒子はこのような温度にとどまるか、又は維持することができる。これは、反応ガス及び/又はリアクタチャンバ(例えば、以下で論じるチャンバ20及びドラム40)の内面をこのような温度にとどめるか、又は維持することによって達成することができる。
【0037】
低温条件でALD反応を実行することにより、生物学的構成成分、例えば、ワクチン又はバイオ医薬品の成分を劣化させることなく、粒子上にコーティングを形成することができる。例えば、非晶質形態の生物学的構成成分は、生物学的構成成分を破壊することなく、又は生物学的構成成分を結晶形態へと変換することなく、コーティングすることができる。
【0038】
リアクタシステム10は、真空管22によって真空ポンプ24に結合された固定真空チャンバ20を含む。真空ポンプ24は、1Torr未満、例えば、1~100mTorr、例えば、50mTorrの圧力を確立するのに十分な工業用真空ポンプでありうる。真空ポンプ24は、チャンバ20を所望の圧力に維持することを可能にし、反応副生成物及び未反応のプロセスガスの除去を可能にする。
【0039】
動作中、リアクタ10は、コーティングのガス状前駆体をチャンバ20に導入することにより、ALD薄膜コーティングプロセスを実行する。ガス状前駆体は、リアクタ内へと交互にスパイクされる。これにより、ALDプロセスを無溶剤プロセスにすることができる。ALDプロセスの半反応は自己制御的であり、堆積のオングストロームレベルでの制御を提供することができる。加えて、ALD反応は、50℃未満、例えば35℃未満などの低温条件で行うことができる。
【0040】
チャンバ20はまた、化学物質送達システム30にも結合される。化学物質送達システム20は、それぞれの送達管34a、34b、34c及び制御可能な弁36a、36b、36cによって真空チャンバ20に結合された3つ以上のガス源32a、32b、32cを含む。化学物質送達システム30は、チャンバ20内へのさまざまなガスの制御可能な流量を提供するために、リストリクター、ガス流コントローラ、圧力変換器、及び超音波流量計の組合せを含むことができる。化学物質送達システム30はまた、さまざまなガスがチャンバ20に流入する前に加熱又は冷却するために、例えば、熱交換器、抵抗加熱器、加熱ランプなどの1つ以上の温度制御構成要素も含むことができる。
図1は、各ガス源についてチャンバに平行に延びる別個のガスラインを示しているが、組み合わされたラインがチャンバ20に到達する前に、2つ以上のガスラインを、例えば1つ以上の三方弁で結合することができる。さらに、
図1には3つのガス源が示されているが、4つのガス源を使用すると、2つの異なる金属酸化物の交互の層を有する積層構造のインシトゥ形成を可能にすることができる。
【0041】
2つのガス源は、コーティングプロセスのための2つの化学的に異なるガス状反応物質をチャンバ20に供給する。適切な反応物質には、次のいずれか又はそれらの組合せが含まれる:モノマー蒸気、金属有機物、金属ハロゲン化物、オゾン又は水蒸気などの酸化剤、及びポリマー又はナノ粒子エアロゾル(乾式又は湿式)。例えば、第1のガス源32aは、ガス状のトリメチルアルミニウム(TMA)又は四塩化チタン(TiCl4)を供給することができるのに対し、第2のガス源32bは、水蒸気を供給することができる。
【0042】
ガス源の1つはパージガスを供給することができる。特に、第3のガス源は、反応物質、コーティング、及び処理される粒子に対して化学的に不活性なガスを供給することができる。例えば、パージガスは、N2、又はアルゴンなどの希ガスでありうる。
【0043】
回転可能なコーティングドラム40は、チャンバ20内に保持される。ドラム40は、チャンバ20の側壁の密封されたポートを通って延びる駆動シャフト42によってモータ44に接続することができる。モータ44は、1~100rpmの速度でドラムを回転させることができる。あるいは、回転ユニオンを介してドラムを真空源に直接接続することもできる。
【0044】
コーティングされる粒子は、粒子床50として示されており、ドラム40の内部容積46内に配置される。ドラム40及びチャンバ20は、粒子がドラム40内に配置され、ドラム40から除去されることを可能にする密閉可能なポート(図示せず)を備えることができる。
【0045】
ドラム40の本体は、多孔質材料、固体金属、及び穿孔金属のうちの1つ又は複数によってもたらされる。ドラム40の円筒形の側壁を通る細孔は、10μmの寸法を有することができる。
【0046】
動作中、ドラム40が回転すると、ガスの1つが化学物質送出システム30からチャンバ20に流入する。コーティングドラムの細孔(1~100μm)、孔(0.1~10mm)、又は大きい開口部の組合せは、前駆体化学物質の迅速な送達と副生成物又は未反応の核種のポンプによる排出を可能にしつつ、コーティングドラム内に粒子を閉じ込める役割をする。ドラム40の細孔によって、ガスは、ドラム40の外部、すなわち、リアクタチャンバ20とドラム40の内部との間を流れることができる。加えて、ドラム40の回転は、粒子を分離して保つために粒子を攪拌し、粒子の大きい表面積が露出されたまま維持されることを確実にする。これにより、粒子表面とプロセスガスとの高速で均一な相互作用が可能になる。
【0047】
幾つかの実装形態では、ドラム40の温度の制御を可能にするために、1つ以上の温度制御構成要素がドラム40に組み入れられている。例えば、抵抗加熱器、熱電冷却器、又は他の構成要素が、ドラム40の側壁の中又は上に存在していてもよい。
【0048】
リアクタシステム10はまた、該リアクタシステム10の動作を制御するために、例えば真空ポンプ24、ガス分配システム30、モータ44、温度制御システムなどのさまざまな制御可能な構成要素に結合されたコントローラ60を含む。コントローラ60はまた、チャンバ20内のガスの圧力の閉ループ制御を提供するために、例えば圧力センサ、流量計などのさまざまなセンサに結合することができる。
【0049】
概して、コントローラ60は、「レシピ」に従ってリアクタシステム10を動作させることができる。該レシピは、時間の関数として各制御可能な要素の動作値を指定する。例えば、レシピは、真空ポンプ24が動作する時間、各ガス源32a、32b、32cの時間及び流量、モータ44の回転速度などを指定することができる。コントローラ60は、レシピをコンピュータ可読データ(例えば、非一時的なコンピュータ可読媒体に保存されている)として受け取ることができる。
【0050】
コントローラ60及び本明細書に記載されるシステムの一部である他の計算装置は、デジタル電子回路、若しくはコンピュータソフトウェア、ファームウェア、又はハードウェアに実装することができる。例えば、コントローラは、例えば非一時的な機械可読記憶媒体などのコンピュータプログラム製品内に保存されたコンピュータプログラムを実行する、プロセッサを含むことができる。このようなコンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、又はコードとしても知られる)は、コンパイル又は翻訳された言語を含む、任意の形式のプログラミング言語で記述することができ、また、独立型プログラムとして、若しくはモジュール、構成要素、サブルーチン、又は計算環境での使用に適している他のユニットとしてなど、任意の形式で展開することができる。幾つかの実装形態では、コントローラ60は、汎用プログラム可能コンピュータである。幾つかの実装形態では、コントローラは、例えばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)などの専用ロジック回路を使用して実装することができる。
【0051】
動作
最初に、粒子はリアクタシステム10のドラム40にロードされる。粒子は、薬物、例えば上述の薬物の1つを含むソリッドコアを有することができる。アクセスポートが密封されると、コントローラ60は、レシピに従ってリアクタシステム10を動作させ、粒子上に薄膜金属酸化物層を形成する。
【0052】
特に、2つの反応ガスがチャンバ20に交互に供給される、反応ガスを供給する各ステップに続いて、前のステップで用いられた反応ガス及び副生成物を追い出すために不活性ガスがチャンバ20に供給されるパージサイクルが行われる。さらには、1つ以上のガス(例えば、反応ガス及び/又は不活性ガス)は、パルスで供給することができ、ここで、チャンバ20は、指定された圧力までガスで満たされ、遅延時間の経過が許され、次のパルスが始まる前に、真空ポンプ24によってチャンバが排気される。
【0053】
特に、コントローラ60は、以下のようにリアクタシステム10を動作させることができる。
【0054】
第1の反応物質半サイクルでは、モータ44がドラム40を回転させて粒子50を攪拌しつつ、
i)ガス分配システム30は、第1の指定された圧力が達成されるまで、第1の反応ガス、例えばTMAを、ガス源32aからチャンバ20に流入させるように動作させる。特定の圧力は、反応ガスの飽和圧力の半分に対し0.1Torrとすることができる。
ii)第1の反応物質の流れが停止され、例えば、コントローラのタイマーで測定して、指定された遅延時間の経過が許される。これにより、第1の反応物質がドラム40内の粒子床を通って流れ、ドラム40内の粒子50の表面と反応することが可能になる。
iii)真空ポンプ50は、例えば1Torr未満、例えば1~100mTorr、例えば50mTorrまで圧力が下がるように、チャンバ20を排気する。
【0055】
これらのステップ(i)~(iii)は、レシピによって設定された回数、例えば、2回から10回、例えば6回繰り返すことができる。
【0056】
次に、第1のパージサイクルでは、モータ44がドラムを回転させて粒子50を攪拌しつつ:
iv)ガス分配システム30は、第2の指定された圧力が達成されるまで、不活性ガス、例えばN2を、ガス源32cからチャンバ20に流入させるように動作させる。第2の指定された圧力は1~100Torrでありうる。
v)不活性ガスの流れが停止され、例えば、コントローラ内のタイマーで測定して、指定された遅延時間の経過が許される。これにより、不活性ガスがドラム40の細孔を通って流れ、粒子50を通じて拡散して、反応ガスと任意の蒸気副生成物を排除することができる。
vi)真空ポンプ50は、例えば1Torr未満、例えば1~500mTorr、例えば50mTorrまで圧力が下がるように、チャンバ20を排気する。
【0057】
これらのステップ(iv)~(vi)は、レシピによって設定された回数、例えば、6回から20回、例えば16回繰り返すことができる。
【0058】
第2の反応物質半サイクルでは、モータ44がドラム40を回転させて粒子50を攪拌しつつ、
vii)ガス分配システム30は、第3の指定された圧力が達成されるまで、第2の反応ガス、例えばH2Oを、ガス源32aからチャンバ20に流入させるように動作させる。第3の圧力は、反応ガスの飽和圧力の半分に対し0.1Torrとすることができる。
viii)第2の反応物質の流れが停止され、例えば、コントローラのタイマーで測定して、指定された遅延時間の経過が許される。これにより、第2の反応物質がドラム40内の細孔を通って流れ、ドラム40内の粒子50の表面と反応することが可能になる。
ix)真空ポンプ50は、例えば1Torr未満、例えば1~500mTorr、例えば50mTorrまで圧力が下がるように、チャンバ20を排気する。
【0059】
これらのステップ(vii)~(ix)は、レシピによって設定された回数、例えば、2回から10回、例えば6回繰り返すことができる。
【0060】
次に、第2のパージサイクルが行われる。この第2のパージサイクルは、第1のパージサイクルと同一とすることができ、あるいは、ステップ(iv)~(vi)の異なる反復回数及び/又は異なる遅延時間及び/又は異なる圧力を有することができる。
【0061】
第1の反応物質半サイクル、第1のパージサイクル、第2の反応物質半サイクル、及び第2のパージサイクルのサイクルは、レシピによって設定された回数、例えば、1回から10回繰り返すことができる。
【0062】
上記のように、コーティングプロセスは、低い処理温度、例えば、50℃未満、例えば35℃以下で行うことができる。特に、粒子は、上記ステップ(i)~(ix)のすべての間、このような温度にとどまるか、又は維持されうる。概して、リアクタチャンバの内部の温度は、ステップ(i)~(ix)の間、35℃を超えない。これは、第1の反応ガス、第2の反応ガス、及び不活性ガスを、それぞれのサイクル中にそのような温度でチャンバに注入することによって達成することができる。加えて、チャンバの物理的構成要素は、必要に応じて、例えば、冷却システム、例えば熱電冷却器を使用して、そのような温度にとどめる又は維持することができる。
【0063】
金属酸化物の1つ以上の層によってカプセル化された薬物を含む医薬組成物を調製するプロセス
1つ以上の金属酸化物材料によって囲まれた薬物含有コアを含む医薬組成物についての2つの例示的な方法が提供される。第1の例示的な方法は、次の一連のステップを含む:(a)薬物を含む粒子をリアクタにロードすること、(b)蒸気又はガス状の金属前駆体をリアクタ内の基質に塗布すること、(c)不活性ガスを使用してリアクタの1つ以上のポンプパージサイクルを実行すること、(d)蒸気又はガス状の酸化剤をリアクタ内の基質に塗布すること、及び(e)不活性ガスを使用してリアクタの1つ以上のポンプパージサイクルを実行すること。本方法を実行している間、粒子の温度は35℃を超えない。
【0064】
第1の例示的な方法の幾つかの実施態様では、一連のステップ(b)~(e)は、コーティングされた粒子のソリッドコアを囲む1つ以上の金属酸化物材料の全体の厚さを増加させるために、任意選択的に1回又は複数回、繰り返される。幾つかの実施態様では、リアクタ圧力は、次のステップ(a)、ステップ(b)、及び/又はステップ(d)を安定化することができる。幾つかの実施態様では、リアクタの内容物は、ステップ(b)、ステップ(c)、及び/又はステップ(e)の前及び/又は最中に攪拌される。幾つかの実施態様では、蒸気又はガス状の内容物のサブセットは、ステップ(c)及び/又はステップ(e)の前にポンプで排出される。
【0065】
第2の例示的な方法は、(a)薬物を含む粒子をリアクタにロードすること、(b)リアクタ圧力を1Torr未満に下げること、(c)リアクタの内容物が所望の含水量になるまでリアクタの内容物を攪拌すること、(d)蒸気又はガス状の金属前駆体を加えることによってリアクタを少なくとも10Torrに加圧すること、(e)リアクタ圧力を安定させること、(f)リアクタの内容物を攪拌すること、(g)蒸気又はガス状の内容物のサブセットをポンプで排出すること、及び基質上又は粒子表面上の露出したヒドロキシル残基と反応する金属前駆体及び金属前駆体の副生成物を含めたリアクタの内容物の分析に基づいてポンプによる排出をいつ停止するかどうかを決定すること、(h)不活性ガスを使用してリアクタの一連のポンプパージサイクルを実行すること、(i)蒸気又はガス状の酸化剤を加えることによってリアクタを少なくとも10Torrに加圧すること、(j)リアクタ圧力を安定させること、(k)リアクタの内容物を攪拌すること、(l)蒸気又はガス状の内容物のサブセットをポンプで排出すること、及び基質上又は粒子表面上の露出したヒドロキシル残基と反応する金属前駆体、該金属前駆体の副生成物、及び未反応の酸化剤を含めたリアクタの内容物の分析に基づいてポンプによる排出をいつ停止するかを決定すること、並びに(m)不活性ガスを使用してリアクタの一連のポンプパージサイクルを実行すること、の一連のステップを含む(例えば、それらからなる)。本方法を実行している間、粒子の温度は35℃を超えない。
【0066】
第2の例示的な方法の幾つかの実施態様では、一連のステップ(b)~(m)は、コーティングされた粒子のソリッドコアを囲む1つ以上の金属酸化物材料の全体の厚さを増加させるために、任意選択的に1回又は複数回、繰り返される。
【0067】
薬学的に許容される添加物、希釈剤、及び担体
薬学的に許容される添加物には、次のものが含まれるが、これらに限定されない:
(1)次を含む、界面活性剤及びポリマー:ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン-ポリビニルアクリレート共重合体、セルロース誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリアクリレート及びポリメタクリレート、尿素、糖類、ポリオール類、カルボマー及びそれらのポリマー、乳化剤、シュガーガム、デンプン、有機酸及びそれらの塩、ビニルピロリドン及び酢酸ビニル;
(2)結合剤、例えば、セルロース、架橋ポリビニルピロリドン、微結晶セルロースなど;
(3)充填剤、例えば、ラクトース一水和物、無水ラクトース、微結晶セルロース、及びさまざまなデンプンなど;
(4)潤滑剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、シリカゲルを含む、圧縮される粉末の流動性に作用する薬剤など;
(5)甘味料、例えば、スクロース、キシリトール、サッカリンナトリウム、シクラメート、アスパルテーム、及びアセスルファムKなどの任意の天然又は人工甘味料;
(6)香味剤;
(7)防腐剤、例えば、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸及びその塩、ブチルパラベンなどのパラヒドロキシ安息香酸の他のエステル類、エチル又はベンジルアルコールなどのアルコール類、フェノールなどのフェノール化合物、若しくは塩化ベンザルコニウムなどの4級化合物など;
(8)バッファー;
(9)希釈剤、例えば、微結晶性セルロース、ラクトース、二塩基性リン酸カルシウム、糖類、及び/又は前述のいずれかの混合物などの薬学的に許容される不活性充填剤など;
(10)湿潤剤、例えば、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、加工デンプン、及びそれらの混合物など;
(11)崩壊剤;例えば、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウムなど;及び
(12)発泡剤、例えば、有機酸(例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、及びアルギン酸、並びに無水物及び酸塩)、又は炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、グリシン炭酸ナトリウム、L-リジン炭酸塩、及びアルギニン炭酸塩)、若しくは重炭酸塩(例えば、重炭酸ナトリウム又は重炭酸カリウム)などの発泡性カップル(effervescent couples)。
【実施例0068】
本明細書に記載の実施例では、以下の材料及び方法を使用した。
【0069】
実施例1:35℃以下のプロセス温度で、ナノメートルレベルの精度で均一かつ薄い酸化アルミニウムコーティング層でカプセル化した薬物を含む粒子の調製
この実施例では、金属酸化物でカプセル化した薬物を調製するために開示された方法の1つが実行され、データが提示される。この実施例では、蒸気又はガス状の金属前駆体はトリメチルアルミニウム(TMA)であり、TMAが粒子上又はコーティングされた粒子の表面上の露出したヒドロキシル基と反応した後に副生成物のガス状メタンが形成され、酸化剤は水蒸気である。
【0070】
方法
簡単に言えば、この方法は次の一連のステップで構成されている:
(a)薬物を含む粒子をリアクタにロードすること;
(b)リアクタ圧力を1Torr未満に下げること;
(c)リアクタ内の水蒸気のレベルを監視するために残留ガス分析(RGA)を実行することにより、リアクタの内容物が所望の含水量になるまでリアクタの内容物を攪拌すること;
(d)蒸気又はガス状のTMAを加えることによってリアクタを少なくとも1Torrに加圧すること;
(e)リアクタ圧力を安定させること;
(f)リアクタの内容物を攪拌すること;
(g)ガス状メタン及び未反応のTMAを含めた蒸気又はガス状の内容物のサブセットをポンプで排出すること、及びリアクタ内のガス状メタン及び未反応のTMAのレベルを監視するためにRGAを実行することによってポンプによる排出をいつ停止するかを決定すること;
(h)窒素ガスを使用してリアクタに一連のポンプパージサイクルを実行すること;
(i)水蒸気を加えることによってリアクタを少なくとも1Torrに加圧すること;
(j)リアクタ圧力を安定させること;
(k)リアクタの内容物を攪拌すること;
(l)水蒸気を含めた蒸気又はガス状の内容物のサブセットをポンプで排出すること、及びリアクタ内の水蒸気のレベルを監視するためにRGAを実行することによってポンプによる排出をいつ停止するかを決定すること;
(m)窒素ガスを使用してリアクタに一連のポンプパージサイクルを実行すること。
【0071】
本方法を実行している間、リアクタの内部温度は35℃を超えなかった。加えて、前記ソリッドコアを囲む酸化アルミニウムの全体の厚さを増加させるために、(b)~(m)のステップを1回より多く繰り返した。
図2は、この方法を実行するための代表的なプロセス条件を含む。
【0072】
結果
図3は、この方法の1サイクルについて、ステップ(d)、(h)、(i)、及び(m)の間に測定する代表的な残留ガス分析トレースを示している。この方法は、1サイクルあたり2から4オングストロームの金属酸化物コーティングの成長率を再現可能に示す。対照的に、成長をALDに制限する別の方法では、1サイクルあたり平均1オングストロームの平均成長しか示さなかった。特定の理論に縛られはしないが、この方法で観察された成長率を所与とすれば、成長はALDとCVDとの組合せによって媒介されうる。
【0073】
実施例2:金属酸化物コーティングによる小分子のカプセル化が構造又は溶解プロファイルを変更するかどうかの決定
金属酸化物コーティングによる小分子のカプセル化が構造又は溶解プロファイルを変更したかどうかを評価するために、小分子クラリスロマイシン、クラリスロマイシン・カルボマー複合体、パゾパニブHCl.パルボシクリブ、及びアモキシシリン・クラブラン酸カリウムを金属酸化物コーティングでカプセル化し、得られた粒子を化学分析に供して、金属酸化物コーティングが構造又は溶解プロファイルを変更したかどうかを決定した。粉末形態の小分子を、以下の表に示される以下の変更を加えた本開示で提供される方法によってカプセル化した。
【0074】
方法
高速液体クロマトグラフィー
アセトニトリルと水の50:50体積:体積の混合液に被分析物を溶解することによって1mg/mLの濃度の試料を調製し、0.45μmフィルターで濾過した。移動相、カラム、及びオーブン温度を含めた分析の正確な条件は、検討する被分析物によって異なる。分析の典型的な例は、アセトニトリル(90:10v/v)と混合した0.05M pH4のリン酸バッファー、Agilent Pursuit XRs 3C-18 3μmカラム、37℃のオーブン温度、流量0.9mL/分、注入量35μL、実行時間5分、214nmのUV検出器で構成される移動相を使用する。
【0075】
質量分析と結合したマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI-MS)
試料は、18:82v/vの比の水-アセトニトリル混合液に溶解することによって調製した。次に、試料をシアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸マトリックスと混合し、MALDIチップにロードした。MSデータ取得はリフレクトロンポジティブモードで実行した。
【0076】
結果
結果が
図4~14に示されている。コーティングされていない対照と比較して、酸化チタン又は酸化アルミニウムのいずれかでコーティングされた小分子クラリスロマイシン及びクラリスロマイシン・カルボマー複合体は、HPLC分析で検出して、構造にほとんど又はまったく変化を示さなかった。コーティングされていない対照と比較して、酸化チタン又は酸化アルミニウムのいずれかでコーティングされた小分子パゾパニブHCl.及びパルボシクリブは、MALDI-MS分析で検出して、構造にほとんど又はまったく変化を示さなかった。コーティングされていない対照と比較して、酸化チタン又は酸化アルミニウムのいずれかでコーティングされた小分子クラリスロマイシン、クラリスロマイシン・カルボマー複合体、及びパルボシクリブ、並びに酸化アルミニウムでコーティングされたパゾパニブHClは、溶解プロファイルにほとんど又はまったく変化を示さなかった。対照的に、酸化チタンでコーティングされた小分子パゾパニブHCl及び酸化チタン又は酸化アルミニウムのいずれかでコーティングされたアモキシシリン・クラブラン酸カリウムは、コーティングされていない対照と比較して、変化した溶解プロファイルを示した。酸化チタンでコーティングされたパゾパニブHClは、コーティングされていない対照と比較して、変化した溶解プロファイル(同様の初期放出及びその後の遅延放出)を示す。酸化チタンでコーティングされたアモキシシリン・クラブラン酸カリウムは、コーティングされていない対照と比較して、変化した溶解プロファイル(初期放出が遅く、その後、30分、飽和せずに速やかに放出)を示す。最後に、酸化アルミニウムでコーティングされたアモキシシリン・クラブラン酸カリウムは、コーティングされていない対照と比較して、変化した溶解プロファイル(初期放出が遅く、その後、速やかに放出)を示す。
【0077】
結論:
この実施例は、酸化チタン又は酸化アルミニウムのいずれかによる5つの小分子のカプセル化が、小分子構造に大幅な減少を与えないが、小分子及び/又は金属酸化物コーティングに応じて、溶解プロファイルにほとんど又はまったく変化をもたらさないか、あるいは有意な変化を与えることを実証している。特定の理論に拘束されるわけではないが、出願人は、全体として、1)溶解プロファイルへの影響が(プロセス条件、API、及び溶解条件に基づいて)同じコーティング材料で大きく変動する可能性があること、及び2)同じ基本材料で作られたコーティングは、溶解プロファイルに本質的に影響を与えない可能性があることは、驚くべきことであるということに注目している。これは、同じ基本材料を使用して、特定の用途に合わせた溶解プロファイルを生成することができる多目的なプロセスを意味する。出願人は、本明細書に記載されるように、熟練した当業者がさまざまな方法又はパラメータを試験して、構造が大幅に縮小せず、かつ、コーティングされていない小分子と比較して溶解プロファイルの変化を示す又は示さない、選択した金属コーティングでコーティングされた小分子を生成することができると結論付けている。
【0078】
実施例3:金属酸化物コーティングによる小分子のカプセル化が水分に曝された非晶質インドメタシンの結晶化を遅らせるかどうかの決定
金属酸化物コーティングによる小分子のカプセル化が構造又は溶解プロファイルを変更したかどうかを評価するために、小分子インドメタシンを金属酸化物コーティングでカプセル化し、得られた粒子を化学分析に供して、金属酸化物コーティングが非晶質インドメタシンの結晶化度を変化させたかどうかを決定した。粉末形態の小分子を、以下の表に示される以下の変更を加えた本開示で提供される方法によってカプセル化した。
【0079】
方法
非晶質インドメタシンの結晶化度の評価
標準的なインドメタシン試料を凍結乾燥して非晶質インドメタシンを調製し、水分に曝す前後の結晶含有量を示差走査熱量測定(DSC)で測定した。結晶化ピーク下の面積を使用して、非晶質材料の結晶化の比熱を決定した。部分的に結晶性の材料の結晶化度パーセントは、結晶化熱を完全に非晶質の材料の結晶化熱で割り、1からその値を差し引いて100を掛けることによって決定した。
【0080】
結果
コーティングされていない対照と比較して、酸化チタン又は酸化アルミニウムのいずれかでコーティングされた小分子インドメタシンは、処理されたままの状態で及び90%相対湿度(RH)への曝露後に、非晶質状態から結晶状態への変換の低下を示した(
図15)。
【0081】
結論:
本実施例は、提供された方法が、具体的には、コーティングされた粒子中の薬物が、処理されたままの状態で及び例えば90%RHなどのストレスへの曝露後に、非晶質状態から結晶状態への変換の低下を示すように、より安定な金属酸化物材料でコーティングされた小分子を生成することができるという指針を提供する。
【0082】
実施例4:提供された方法が、小分子に均一でコンフォーマルな薄い金属酸化物コーティングを可能にするかどうかの決定
提供された方法が、小分子に均一でコンフォーマルな薄い金属酸化物コーティングを可能にするかどうかを評価するため、本開示の方法によってアセトアミノフェンを金属酸化物材料でコーティングし、原子層顕微鏡法及びXPS分析によって分析した。粉末形態の小分子を、本開示に提供される方法でカプセル化した。
【0083】
方法
透過電子顕微鏡法
TEM用の試料を、FEI Strata 400 Dual Beam FIB/SEM上でインシトゥFIBリフトアウト技術を使用して調製した。粉砕する前に、試料を保護カーボン及びe-Pt/I-Ptでキャップした。TEMラメラの厚さは約100nmであった。試料を、明視野(BF)TEMモード及び高解像度((HR)TEMモードで200kVで動作する、FEI Tecnai TF-20 FEG / TEMで画像化した。エネルギー分散分光法(EDS)を使用して、画像の定性元素マップを取得した。
【0084】
XPS分析
X線光電子分光法(XPS)を試料に行い、コーティングの前後の表面化学の詳細を取得した。粉末の試料を接着性の基板に取り付け、機器にロードした。軟X線(1486eV)を使用して試料を励起し、X線の浸透深さは5nmであり、スポットサイズは200μmであった。
【0085】
結果
コーティングされたアセトアミノフェン粒子の集束イオンビーム(FIB)ミリングによって調製された断面の直接TEM画像化は、粒子上の位置にかかわらず、ナノメートルスケールで酸化アルミニウムによる薬物粒子の均一かつコンフォーマルなコーティングを示している(
図16)。エネルギー分散分光法(EDS)は、コーティングが実質的にアルミニウム及び酸素からなることを定性的に証明した(
図17)。
【0086】
結論:
本実施例は、提供された方法がナノメートルレベルの精度で小分子上の均一かつコンフォーマルな薄い金属酸化物コーティングを可能にするというガイダンスを提供する。
【0087】
実施例5.金属酸化物コーティングによる凍結乾燥モノクローナル抗体(mAb)のカプセル化が、mAbの構造、安定性、又は標的ポリペプチドへの結合能力を変化させるかどうかの決定
金属酸化物コーティングによる凍結乾燥mAbのカプセル化が、mAbの構造又は安定性を変化させるかどうかを評価するため、mAbトラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))及びベバシズマブ(アバスチン(登録商標))を金属酸化物コーティングでカプセル化し、得られた粒子を生化学的及び化学的分析に供して、金属酸化物コーティングがmAbの構造、安定性、又は標的ポリペプチドに結合する能力を変化させたかどうかを決定した。2つのmAbsを、以下の変更を伴う本開示で提供される方法によってカプセル化した:(1)ハーセプチン(登録商標)では、コーティングされた粒子を薬学的に許容される希釈剤又は担体と混合する前の連続サイクルを99回行い、蒸気又はガス状の金属前駆体は酸化アルミニウム(Al2O3)であった;(2)アバスチン(登録商標)では、コーティングされた粒子を薬学的に許容される希釈剤又は担体と混合する前の連続サイクルを49回行い、蒸気又はガス状の金属前駆体は酸化チタン(TiO2)であった。
【0088】
方法
質量分析と組み合わせた液体クロマトグラフィー
移動相A(0.1%(v/v)FA)及び10%移動相B(アセトニトリル中、0.1%(v/v)FA)を用いた、Agilent 6230エレクトロスプレーイオン化飛行時間型質量分析計(ESITOF-MS)機器に接続されたAgilent 1260 Infinity Bio-inert Quaternary LCシステムを使用して、AdvanceBio RP mab C4(Agilent Technologies)カラムで逆相クロマトグラフィー(RPC)を行った。試料を、10kDaのMWCOセントリコン(Pall Corporation)を介してバッファー交換し、カラムにロードし、0.5ml/分の流量で10%-65%Bの直線勾配を使用して分離した。MSスペクトルは正イオンモードで較正し、TICは1,000~7000m/zで記録した。キャピラリーガスの温度/電圧(Vcap)をそれぞれ350℃/5,500Vに設定し、フラグメンター電圧(Vfrag)は400Vであった。Agilent MassHunter定性分析及びBioConfirmソフトウェアの一部として最大エントロピー(MaxEnt)アルゴリズムを使用して、MSスペクトルをデコンボリューションした。
【0089】
ペプチドマッピング
移動相A(0.1%(v/v)TFA)及び移動相B(アセトニトリル中、0.1%(v/v)TFA)を用いて、Agilent 6230 ESI-TOF-MS機器に接続されたAgilent 1260 Infinity Bio-inert Quaternary LCシステムを使用して、55℃で動作するAdvanceBioペプチドマッピングC18(Agilent Technologies)カラムで、逆相クロマトグラフィー(RPC)を行った。消化された試料をカラムに注入し、0.3ml/分の流速で5%~65%Bの直線勾配を使用して分離した。MSスペクトルは正イオンモードで較正し、TICは100~3200m/zで記録した。キャピラリーガスの温度/Vcapをそれぞれ300℃/4500Vに設定し、Vfragは300Vであった。Agilent MassHunter定性分析及びBioConfirmソフトウェアのタンパク質分子特徴抽出(MFE)アルゴリズムを使用してMSスペクトルを分析し、可能性のあるペプチドのリストを取得し、in-silicoで消化させたmAbペプチドと照合して、配列包括度を取得した。
【0090】
フーリエ変換赤外分光法(FTIR)
FTIRスペクトルは、減衰全反射(ATR)法を使用して室温で記録した。0.5mg/mlのmAbのFTIR吸光度スペクトルを、500~4000cm-1の範囲で収集した。元のスペクトルの11ポイントのサビツキー・ゴーレイ平滑化を適用することによって、二次微分スペクトルを得た。1600サビツキー・ゴーレイ平滑で700cm-1の範囲の二次微分スペクトルを、レーベンバーグ・マーカートのアルゴリズムを使用した曲線近似法によってデコンボリューションし、α-ヘリックス(1660~1654cm-1)、β-シート(1637~1614cm-1)、ターン(1678~1670cm-1)、ランダムコイル(1648~1638cm-1)及びβ-逆平行(1691~1680cm-1)に対応するピークを調整し、ガウス関数を用いて面積を測定した。次に、所与の配座に割り当てられたすべての構成成分のバンドの面積を合計し、総面積で割った。
【0091】
円偏光二色性(CD)
50nm/分の走査速度で0.1cmの経路長の石英セルを使用して、5nmのスペクトルバンド幅で、25℃で200~250nmの範囲で、遠紫外線CDスペクトルを記録した。試料濃度を0.2mg/mlに維持し、3つのスペクトルを走査し、平均化し、最後にバッファーのベースラインを差し引いた後にプロットした。平均残基楕円率(MRE、deg cm2/dmole)を計算した。
【0092】
蛍光分光法
タンパク質溶液(0.5mg/ml)を295nmで励起することによって、固有の蛍光を測定した(トリプトファンの励起のみ)。発光スペクトルを300~450nmの範囲で記録した。ANS(8-アニリノナフタレン-1-スルホン酸)染料を使用した蛍光分光光度計で、380nmの励起と400~600nmの発光を用いて、試料の外部蛍光強度(0.5mg/ml)を記録した。すべての測定は3回繰り返して行った。各スペクトルは3回の走査の平均を表している。
【0093】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC-HPLC)
サイズ排除クロマトグラフィーは、300mMのNaCl及びpH6.8で0.05%のNaN3のバッファーを用いたDionex Ultimate 3000 UHPLCシステム(Thermo Scientific)を使用して、Superdex200カラムで行った。検出は、280nmでのUV吸光度を監視することによって行った。Chromeleonソフトウェアを使用して、ピーク積分及びピーク面積を決定した。
【0094】
陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)
イオン交換クロマトグラフィーは、Agilent Bio MAb NP5カラムと、300mMのNaCl及びpH6.8で0.05%のNaN3のバッファーとを用いた、Dionex Ultimate 3000 RSLCシステム(Thermo Scientific)を使用して行った。検出は、280nmでのUV吸光度を監視することによって行った。
【0095】
表面プラズモン共鳴(SPR)FcRn結合速度アッセイ
さまざまなmAb試料のヒトFcRn受容体への結合速度論的相互作用は、Biacore X100(商標)(GE Healthcare)にHBS-EPバッファー(GE Healthcare Life Sciences)を用いて表面プラズモン共鳴を使用して測定した。組換えヒトFcRn抗体を固定化し、試料を一連の濃度で注入した。速度定数は、BIA Evaluation2.0.1ソフトウェアを使用した1:1フィットモデルを使用してセンサーグラムから計算した。
【0096】
安定性分析
80℃で10日間にわたる金属酸化物でコーティングされたmAbの構造的完全性及び凝集を決定するために、mAbの高次の構造をフーリエ変換赤外分光分析(FTIR)で測定し、mAbの三次構造を内因性及び外因性蛍光分析によって測定し、サイズ変異体のプロファイルをサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定した。試料は、80℃のドライバスで保管し、試験用に設定された時間にサンプリングした。FTIRスペクトルは、減衰全反射(ATR)法を使用して室温で記録した。0.5mg/mlのmAbのFTIR吸光度スペクトルを、500~4000cm-1の範囲で収集した。元のスペクトルの11ポイントのサビツキー・ゴーレイ平滑化を適用することによって、二次微分スペクトルを得た。1600~1700cm-1の範囲の二次微分スペクトルを、レーベンバーグ・マーカートのアルゴリズムを使用した曲線近似法によってデコンボリューションし、α-ヘリックス(1660~1654cm-1)、β-シート(1637~1614cm-1)、ターン(1678~1670cm-1)、ランダムコイル(1648~1638cm-1)及びβ-逆平行(1691~1680cm-1)に対応するピークを調整し、ガウス関数を用いて面積を測定した。次に、所与の配座に割り当てられたすべての構成成分のバンドの面積を合計し、総面積で割った。タンパク質溶液(0.5mg/ml)を295nmで励起することによって、内因性蛍光を測定した(トリプトファンの励起のみ)。発光スペクトルを300~450nmの範囲で記録した。ANS(8-アニリノナフタレン-1-スルホン酸)染料を使用した蛍光分光光度計で、380nmの励起と400~600nmの発光を用いて、試料の外部蛍光強度(0.5mg/ml)を記録した。すべての測定は3回繰り返して行った。各スペクトルは3回の走査の平均を表している。上述のように、サイズ排除クロマトグラフィーを行った。
【0097】
結果
金属コーティングでカプセル化されたmAbの質量及び配列同一性を確認するために、質量分析と組み合わせた液体クロマトグラフィーを行った。アバスチン(登録商標)の結果が
図18~20に示されている。データは、酸化チタンコーティングが、アバスチン(登録商標)のインタクトなタンパク質質量にほとんど又はまったく影響を及ぼさないことを示唆している。1つの変更を除き、コーティングされたアバスチン(登録商標)の予測される変更は、コーティングされていないアバスチン(登録商標)のものと一致した。ハーセプチン(登録商標)の結果が
図21~23に示されている。データは、酸化アルミニウムコーティングが、コーティングされていないアバスチン(登録商標)と比較して、ハーセプチン(登録商標)のインタクトなタンパク質質量にほとんど又はまったく影響を及ぼさないことを示唆している。
【0098】
金属コーティングでカプセル化されたmAbの配列同一性及び翻訳後修飾を確認するために、ペプチドマッピングを行った。アバスチン(登録商標)の結果が
図24~25に示されている。データは、in-silicoで消化させたアバスチン(登録商標)と比較した場合に、酸化チタンコーティングが、アバスチン(登録商標)の配列同一性にほとんど又はまったく影響を及ぼさないことを示唆している。
【0099】
ハーセプチン(登録商標)の結果が
図26~27に示されている。データは、in-silicoで消化させたハーセプチン(登録商標)と比較した場合に、酸化アルミニウムコーティングが、ハーセプチン(登録商標)の配列同一性にほとんど又はまったく影響を及ぼさないことを示唆している。
【0100】
フーリエ変換赤外(FTIR)分光法及び円偏光二色性(CD)分析を実行して、mAbの二次構造に変化があったかどうかを決定した。蛍光分光分析を行い、mAbの三次構造に変化があったかどうかを決定した。アバスチン(登録商標)の結果が
図28~33に示されている。データは、コーティングされていないアバスチン(登録商標)と比較した場合に、酸化チタンコーティングがアバスチン(登録商標)の二次構造にほとんど又はまったく影響を及ぼさないことを示唆している。ハーセプチン(登録商標)の結果が
図34~38に示されている。データは、FTIRで決定して、コーティングされていないハーセプチン(登録商標)と比較して、酸化アルミニウムコーティングがハーセプチン(登録商標)の二次構造にほとんど又はまったく影響を及ぼさないことを示唆している。データは、遠紫外及び近紫外円偏光二色性分析で検出して、コーティングされていないハーセプチン(登録商標)と比較して、酸化アルミニウムがハーセプチン(登録商標)の三次構造にほとんど又はまったく影響を及ぼさないことを示唆している。
【0101】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を実行して、mAb試料のサイズ変異体に変化があったかどうかを決定した。陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)を実行して、mAb試料の電荷変異体プロファイルに変化があったかどうかを決定した。アバスチン(登録商標)の結果が
図39~40に示されている。データは、酸化チタンコーティングが、コーティングされていないアバスチン(登録商標)と比較して、アバスチン(登録商標)のモノマー及び凝集体のパーセンテージ又は電荷変異種のパーセンテージにほとんど又はまったく影響を及ぼさないことを示唆している。ハーセプチン(登録商標)の結果が
図40~41に示されている。データは、酸化アルミニウムコーティングが、コーティングされていないハーセプチン(登録商標)と比較して、ハーセプチン(登録商標)のモノマー及び凝集体のパーセンテージ又は電荷変異種のパーセンテージにほとんど又はまったく影響を及ぼさないことを示唆している。
【0102】
mAbの機能を決定するために、表面プラズモン共鳴(SPR)によって結合速度を決定した。アバスチン(登録商標)の結果が
図43~44に示されている。データは、酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)が、コーティングされていないアバスチン(登録商標)と比較して、標的のヒトFcRn受容体に対して4倍強力な結合(KDの低減によって反映される)を示したことを示唆している。ハーセプチン(登録商標)の結果が
図45~46に示されている。データは、酸化アルミニウムでコーティングされたハーセプチン(登録商標)が、コーティングされていないハーセプチン(登録商標)と比較して、標的のヒトFcRn受容体と同様の結合(同様のKD値によって反映される)を示したことを示唆している。
【0103】
80℃で10日間にわたる金属酸化物でコーティングされたmAbの構造的完全性及び凝集を決定するために、mAbの二次構造をフーリエ変換赤外分光分析(FTIR)で測定し、mAbの三次構造を内因性及び外因性蛍光分析によって測定し、サイズ変異体のプロファイルをサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定した。アバスチン(登録商標)の結果が
図47~51に示されている。データは、酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)が、コーティングされていないアバスチン(登録商標)と比較して、FTIR及び蛍光分析でそれぞれ検出されたmAbの二次構造又は三次構造のレベルでほとんど又はまったく変化を示さないことを示唆している。データはまた、酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)が、コーティングされていないアバスチン(登録商標)と比較して、SECで決定して、凝集体の蓄積率の低下を示すことを示唆している。ハーセプチン(登録商標)の結果が
図52~56に示されている。データは、酸化チタンでコーティングされたハーセプチン(登録商標)が、コーティングされていないハーセプチン(登録商標)と比較して、FTIR及び蛍光分析でそれぞれ検出されたmAbの二次構造又は三次構造のレベルでほとんど又はまったく変化を示さないことを示唆している。データはまた、酸化チタンでコーティングされたハーセプチン(登録商標)が、コーティングされていないハーセプチン(登録商標)と比較して、SECで決定して、同様の凝集体の蓄積率を示すことを示唆している。
【0104】
結論:
この実施例は、金属コーティングによる2つの異なる凍結乾燥mAbのカプセル化が、mAbの構造、安定性、又は標的ポリペプチド(例えば、ヒトFcRn)に結合する能力に有意な低下をもたらさないことを実証している。注目すべきことに、酸化チタンでコーティングされたハーセプチン(登録商標)は、コーティングされていないアバスチン(登録商標)と比較して、標的のヒトFcRn受容体に対して4倍強力な結合(KDの低減によって反映される)を示した。また、注目すべきは、酸化チタンでコーティングされたアバスチン(登録商標)が、コーティングされていないアバスチン(登録商標)と比較して、SECで決定して、80℃で10日間、凝集体の蓄積率の低下を示すことである。出願人は、当業者が本明細書に記載のさまざまな方法又はパラメータを試験して、mAb構造、安定性、又は標的ポリペプチドに結合する能力が大幅に低下しない、選択した金属コーティングでコーティングされた凍結乾燥mAbを生成することができると結論付けている。
薬物が、小分子、ウイルス粒子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ポリペプチドと脂質を含む組成物、又はポリヌクレオチドと脂質を含む組成物である、請求項1に記載の方法。