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特開2022-106792ホスホジエステラーゼ5活性阻害用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022106792
(43)【公開日】2022-07-20
(54)【発明の名称】ホスホジエステラーゼ5活性阻害用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20220712BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20220712BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220712BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220712BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20220712BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20220712BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20220712BHJP
   A61P 15/10 20060101ALI20220712BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20220712BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/185
A61P43/00 111
A61P11/00
A61P9/12
A61P13/02
A61P13/08
A61P15/10
A23K10/30
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067989
(22)【出願日】2022-04-18
(62)【分割の表示】P 2021002160の分割
【原出願日】2016-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】赤木 淳二
(72)【発明者】
【氏名】立木 賢輔
(57)【要約】      (修正有)
【課題】PDE5の活性を阻害できる新たな組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】キイチゴ属(Rubus)、ザクロ属(Punica)、シモツケソウ属(Filipendula)、ヤマモモ属(Myrica)、エウゲニア属(Eugenia)、サルスベリ属(Lagerstroemia)、モモタマナ属(Terminalia)、アカミノキ属(Haematoxylon)、ソバカズラ属(Fallopia)及びカギカズラ属(Uncaria)からなる群より選択される少なくとも1つの植物の加工物を含有する、ホスホジエステラーゼ5活性阻害用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モモタマナ属(Terminalia)に属する植物の加工物を含有する、ホスホジエステラーゼ5活性阻害用組成物。
【請求項2】
モモタマナ属に属する植物が、モモタマナ(Terminalia catappa)及びセイタカミロバラン(Terminalia bellirica)からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
陰茎勃起機能、下部尿路機能障害、前立腺肥大及び肺高血圧症からなる群より選択される少なくとも1種の予防または改善用である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
食品組成物、医薬組成物または飼料組成物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホジエステラーゼ5活性阻害用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスホジエステラーゼ(phosphodiesterase、PDE)は、サイクリックGMP(cG
MP)やサイクリックAMP(cAMP)を加水分解する酵素であり、哺乳動物では複数のファミリーが存在する。
【0003】
このうち、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)は、主にcGMPの分解に関与する。cGMPは、細胞内セカンドメッセンジャーとして作用し、平滑筋を弛緩させ、血流を増加させる。このため、PDE5の活性を抑制することにより、平滑筋が弛緩し、血流が増加する。
【0004】
この作用を利用した薬剤として、今日、PDE5阻害薬が知られており、代表的なものとしてシルデナフィルクエン酸塩を有効成分とする医薬品等が知られている。PDE5阻害薬は、PDE5の活性を阻害してcGMPの分解を抑制し、局所血流を増加させることにより、陰茎勃起能力の低下、膀胱や前立腺の機能低下、肺高血圧症といった症状の改善を目的として活用されている。
【0005】
また、例えばクロショウガが、PDEの活性を阻害できることが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-224326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、PDE5の活性を阻害できる新たな組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが前記課題に鑑み鋭意研究を重ねたところ、次の植物、すなわち、キイチゴ属(Rubus)、ザクロ属(Punica)、シモツケソウ属(Filipendula)、ヤマモモ属(Myrica)、エウゲニア属(Eugenia)、サルスベリ属(Lagerstroemia)、モモタマナ属(Terminalia)、アカミノキ属(Haematoxylon)、ソバカズラ属(Fallopia)またはカギカズラ属(Uncaria)に属する植物によれば、PDE5の活性を阻害できることを見いだした。
本発明は該知見に基づき更に検討を重ねた結果完成されたものであり、次に掲げるものである。
項1.キイチゴ属(Rubus)、ザクロ属(Punica)、シモツケソウ属(Filipendula)、ヤマモモ属(Myrica)、エウゲニア属(Eugenia)、サルスベリ属(Lagerstroemia)、モモタマナ属(Terminalia)、アカミノキ属(Haematoxylon)、ソバカズラ属(Fallopia)及びカギカズラ属(Uncaria)からなる群より選択される少なくとも1つの植物の加工物を
含有する、ホスホジエステラーゼ5活性阻害用組成物。
項2.キイチゴ属に属する植物が、ヒマラヤブラックベリー(Rubus armeniacus Focke)、セイヨウヤブイチゴ(Rubus fruticosus)及びアメリカイチゴ(Rubus strigosus)か
らなる群より選択される少なくとも1つである、項1に記載の組成物。
項3.ザクロ属に属する植物が、ザクロ(Punica granatum)である、項1に記載の組成
物。
項4.シモツケソウ属に属する植物が、セイヨウナツユキソウ(Filipendula ulmaria)
である、項1に記載の組成物。
項5.ヤマモモ属に属する植物が、シロコヤマモモ(Myrica cerifera)及びヤマモモ(Myrica rubura)からなる群より選択される少なくとも1つである、項1に記載の組成物。項6.エウゲニア属に属する植物が、タチバナアデク(Eugenia uniflora)及びクローブ(Eugenia aromaticum)からなる群より選択される少なくとも1つである、項1に記載の組成物。
項7.サルスベリ属に属する植物が、バナバ(Lagerstroemia speciosa)である、項1に記載の組成物。
項8.モモタマナ属に属する植物が、モモタマナ(Terminalia catappa)及びセイタカミロバラン(Terminalia bellirica)からなる群より選択される少なくとも1つである、項1に記載の組成物。
項9.アカミノキ属に属する植物が、アカミノキ(Haematoxylon campechianum)である
、項1に記載の組成物。
項10.ソバカズラ属に属する植物が、イタドリ(Fallopia japonica)である、項1に
記載の組成物。
項11.カギカズラ属に属する植物が、キャッツクロー(Uncaria guianensis)である、項1に記載の組成物。
項12.陰茎勃起機能、下部尿路機能障害、前立腺肥大及び肺高血圧症からなる群より選択される少なくとも1種の予防または改善用である、項1~11のいずれかに記載の組成物。
項13.食品組成物、医薬組成物または飼料組成物である、項1~12のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、PDE5の活性を阻害できる。このため、本発明の組成物は、cGMPの分解に伴う血流低下に起因する疾患、例えば陰茎勃起機能、下部尿路機能障害、前立腺肥大、肺高血圧症といった疾患の予防または改善を目的として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、キイチゴ属(Rubus)、ザクロ属(Punica)、シモツケソウ属(Filipendula)、ヤマモモ属(Myrica)、エウゲニア属(Eugenia)、サルスベリ属(Lagerstroemia)、モモタマナ属(Terminalia)、アカミノキ属(Haematoxylon)、ソバカズラ属(Fallopia)及びカギカズラ属(Uncaria)からなる群より選択される少なくとも1つの植物の加
工物を含有する、ホスホジエステラーゼ5活性阻害用組成物を提供する。
【0011】
本発明の組成物に有効成分として含まれる前記植物の加工物の原料として、それぞれ、キイチゴ属、ザクロ属、シモツケソウ属、ヤマモモ属、エウゲニア属、サルスベリ属、モモタマナ属、アカミノキ属、ソバカズラ属、カギカズラ属のいずれかに属する植物が挙げられる。
【0012】
キイチゴ属はバラ科に属し、本発明を制限するものではないが、該属に属する植物としてヒマラヤブラックベリー(Rubus armeniacus Focke)、セイヨウヤブイチゴ(Rubus fruticosus)、アメリカイチゴ(Rubus strigosus)等が例示される。
【0013】
ザクロ属はミソハギ科に属し、本発明を制限するものではないが、該属に属する植物としてザクロ(Punica granatum)等が例示される。
【0014】
シモツケソウ属はバラ科に属し、本発明を制限するものではないが、該属に属する植物
としてセイヨウナツユキソウ(Filipendula ulmaria)等が例示される。
【0015】
ヤマモモ属はヤマモモ科に属し、本発明を制限するものではないが、該属に属する植物としてシロコヤマモモ(Myrica cerifera)、ヤマモモ(Myrica rubura)等が例示される。
【0016】
エウゲニア属はフトモモ科に属し、本発明を制限するものではないが、該属に属する植物としてタチバナアデク(Eugenia uniflora)、クローブ(Eugenia aromaticum)等が例示される。
【0017】
サルスベリ属はミソハギ科に属し、本発明を制限するものではないが、該属に属する植物としてバナバ(Lagerstroemia speciosa)等が例示される。
【0018】
モモタマナ属はシクンシ科に属し、本発明を制限するものではないが、該属に属する植物としてモモタマナ(Terminalia catappa)、セイタカミロバラン(Terminalia bellirica)等が例示される。
【0019】
アカミノキ属はマメ科に属し、本発明を制限するものではないが、該属に属する植物としてアカミノキ(Haematoxylon campechianum)等が例示される。
【0020】
ソバカズラ属はタデ科に属し、本発明を制限するものではないが、該属に属する植物としてイタドリ(Fallopia japonica)等が例示される。
【0021】
カギカズラ属はアカネ科に属し、本発明を制限するものではないが、該属に属する植物としてキャッツクロー(Uncaria guianensis)等が例示される。
【0022】
これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
これらの植物であれば使用部位は特に限定されないが、葉、茎、果実、花、芽、枝、幹、樹皮、根、花蕾、種子、種皮等が例示され、各植物に応じて適宜選択すればよい。好ましくは葉、茎、果実、樹皮、根、幹、花蕾等が例示され、より好ましくは、キイチゴ属では葉、果実、ザクロ属では果実、シモツケソウ属では葉、茎、ヤマモモ属では樹皮、エウゲニア属では果実、花蕾、サルスベリ属では葉、モモタマナ属では果実、アカミノキ属では幹、ソバカズラ属では茎、葉、カギカズラ属では根、茎、葉が例示される。使用部位として、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本発明において植物の加工物とは、前記原料となる植物の粉砕物、乾燥物、抽出物等が挙げられる。
【0025】
粉砕物は、ジェットミル等の本分野で公知の粉砕器により前記植物を粉砕したものであれば特に限定されない。
【0026】
乾燥物は、前記植物を乾燥させたものであれば特に限定されず、天日乾燥、遠赤外線照射、乾燥機(熱風乾燥、冷風乾燥、真空凍結乾燥等)等の従来公知の乾燥方法に従って得ることができる。また、乾燥物中の水分量としては、10重量%以下が好ましく、8重量%以下がより好ましい。本発明において乾燥物の形態は問わず、植物体そのものの乾燥物、乾燥物の粉砕物等のいずれでもよい。乾燥粉砕物は、前記粉砕物と同様の方法に従って乾燥物を粉砕することにより得ることができる。また、本発明においては乾燥物として、原料となる植物を発酵処理や酵素処理した後乾燥して得られたものを使用することもできる。
【0027】
抽出物の製造方法(抽出方法)及び抽出条件等は特に限定されず、従来公知の方法に従えばよい。例えば、前記植物をそのまま、必要に応じて裁断、粉砕または乾燥等したのち、搾取または溶媒抽出によって抽出物を得ることができる。溶媒抽出の方法としては、本分野において公知の方法を採用すればよく、例えば水(温水、熱水を含む)抽出、アルコール抽出、超臨界抽出等の従来公知の抽出方法を利用することができる。
【0028】
溶媒抽出を行う場合、溶媒としては例えば水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコールや、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール等のアルコール類(無水、含水の別を問わない);アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルエステル等のエステル類、キシレン、ベンゼン、クロロホルム等が挙げられる。溶媒として好ましくは水、低級アルコール、1,3-ブチレングリコール等であり、より好ましくは水、メタノール、エタノール、1,3-ブチレングリコールであり、更に好ましくは水、メタノール、含水エタノールである。これらの溶媒は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
本発明において、このように溶媒抽出を経て得た抽出物を特に溶媒抽出物と称することができる。更に、本発明を制限するものではないが、前述のように例えば溶媒として水を用いた場合は水抽出物、低級アルコール類を用いた場合は低級アルコール抽出物、エタノールを用いた場合はエタノール抽出物等と称することができる。
【0030】
得られた抽出物は、そのままの状態で使用してもよく、乾燥させて粉末状や顆粒状等の固形の状態で使用してもよい。また、必要に応じて、得られた抽出物に精製、濃縮処理、高活性画分の分離処理等を施してもよい。本発明を制限するものではないが、精製処理としては、濾過、イオン交換樹脂や活性炭カラム等を用いた吸着、脱色といった処理が挙げられる。また、濃縮処理としては、エバポレーター等の常法を利用できる。また、高活性画分の分離処理としては、ゲル濾過、吸着処理、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、HPLC(High performance liquid chromatography)等の公知の分離処理を利用できる。
【0031】
また、例えば、前述のようにして得られた抽出物(更にはその乾燥物、精製処理物、濃縮処理物、高活性画分)を、凍結乾燥処理に供して粉末化する方法、必要に応じてデキストリン、コーンスターチ、アラビアゴム等の賦形剤を添加して、スプレードライ処理により粉末化する方法等の従来公知の方法に従って粉末化し、本発明で用いる抽出物としてもよい。また、該抽出物を、必要に応じて水、エタノール等に溶解して用いてもよい。
【0032】
前記植物の抽出物として好ましくは、原料となる植物(使用部位)を乾燥、破砕及び/または裁断し、好適な溶媒を使用して抽出、濾過して得られる抽出物、また、このようにして得られる抽出物を更に乾燥させることにより得られる抽出物が例示される。本発明を制限するものではなく、各植物または使用部位に応じて当業者が適宜抽出すればよいが、抽出物は、原料となる植物を100gあたり、より好ましくは該植物の乾燥物、破砕物及び/または裁断物を100gあたり、抽出溶媒1~50リットルに浸漬させて、任意の温度(例えば15~90℃)で、必要に応じて攪拌しながら、任意の時間(例えば10分~24時間)抽出を行い、次いで濾過することにより得ることができる。本発明において植物の加工物として好ましくは植物抽出物(その乾燥物等を含む)である。
【0033】
本発明において使用する植物の加工物は市販品でもよく、市販品に対して更に乾燥等の処理を適宜施したものでもよい。
【0034】
このようにして得た植物の加工物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
本発明の組成物中の前記植物の加工物の含有量は、組成物中に前記植物の加工物が含まれていればよく、本発明の効果が得られる限り制限されない。組成物中、前記植物の加工物が、乾燥物換算で、0重量%より多く含まれていることが例示され、好ましくは0重量%より多く100重量%未満であることが例示され、より好ましくは0.001~99重量%が例示される。2種以上の加工物を用いる場合、その総量が該値を充足する。加工物の乾燥物は、加工物を凍結乾燥処理することにより得られる。凍結乾燥処理は、一般的なエバポレーターを用いた減圧濃縮及び真空状態での凍結乾燥により行う。より詳細な処理手順は後述する実施例に従う。
【0036】
また、本発明の組成物において、前記植物の加工物の投与(摂取)量は、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、対象者(対象動物)の体格、年齢、症状、適用形態、使用目的、期待される効果の程度等に応じて適宜設定すればよい。本発明を制限するものではないが、1日投与(摂取)量として、体重60kgの成人を基準として、前記植物の加工物は総量で(乾燥重量換算として)、好ましくは0.001~8000mg、より好ましくは0.01~5000mgが例示される。本発明の組成物は、1日あたり単回投与(摂取)であってもよく複数回投与(摂取)であってもよい。
【0037】
本発明の組成物は、経口、非経口の別を問わない。本発明の組成物の形態も制限されず、目的に応じて適宜設定すればよい。本発明の組成物の形態として、液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤、エキス剤、酒精剤、エリキシル剤等の液状形態、散剤、顆粒剤、細粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセルを含む)、トローチ、チュアブル、ゲル状、クリーム状、ペースト状、ムース状、シート状、液状形態の凍結乾燥物等の半固形または固形形態、この他、エアゾール剤等、貼付剤、ハップ剤、経皮吸収型製剤等の各種形態が例示される。
【0038】
また、例えば本発明の組成物が固形形態である場合、これは水等と混合して使用してもよく、また、本発明の組成物は徐放性の剤形であってもよい。また、例えば錠剤は、必要に応じて、従来公知の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠、あるいは二重錠、多層錠とすることができる。
【0039】
また、本発明の組成物の使用態様も制限されず、目的に応じて適宜設定すればよい。本発明の組成物の使用態様として、食品組成物(飲料を含む、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、サプリメント等を含む)、病者用食品を含む)、医薬組成物、飼料組成物、また、食品組成物、医薬組成物、飼料等への添加剤等として使用することができる。
【0040】
本発明の組成物は、前述の各種形態、使用態様等における従来公知の通常の手順に従い製造すればよく、必要に応じて、薬学的に許容される成分、香粧品科学的に許容される成分、可食性の成分といった任意の成分と混合等して製造すればよい。該任意の成分として、溶剤(水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール等のアルコール類(無水、含水の別を問わない)等)、賦形剤、崩壊剤、希釈剤、滑沢剤、香料、着色料、甘味料、矯味剤、懸濁剤、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、分散剤、緩衝剤、結合剤、浸透促進剤、安定剤、増量剤、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、界面活性剤、コーティング剤、吸収促進剤、吸着剤、充填剤、酸化防止剤、抗炎症剤、清涼剤、皮膜形成剤、ゲル化剤、アミノ酸、ビタミン、酵素、各種栄養成分等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
本発明において、組成物の対象者(対象動物)も制限されないが、ヒト、ヒト以外の哺乳動物が例示される。ヒト以外の哺乳動物としては、ホスホジエステラーゼ5がcGMPの分解促進を図っている動物が挙げられ、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、サル、ブタ、牛、馬等の動物、好ましくはマウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、サル等の動物が例示される。
【0042】
本発明の組成物によれば、前記植物の加工物を有効成分としてホスホジエステラーゼ5(PDE5)の活性を阻害することができる。このことから、本発明は、前記植物の加工物を用いることを特徴とするPDE5活性阻害用組成物の製造方法を提供するといえる。また、本発明は、前記植物の加工物を調製する工程を含有する、PDE5活性阻害用組成物の製造方法を提供するといえる。また、本発明は、前記植物の加工物を用いることを特徴とする、PDE5活性阻害方法を提供するといえる。
【0043】
このように本発明の組成物によれば、PDE5の活性を阻害できる。このことから、本発明によればcGMPの分解を抑制することができ、PDE5の活性や局所血流低下に起因する疾患の予防または改善を目的として本発明の組成物を使用することができる。
【0044】
このため、本発明の組成物は、本発明を制限するものではないが、陰茎勃起機能、下部尿路機能障害、前立腺肥大、肺高血圧症等の予防または改善に有用である。例えば、PDE5阻害作用により平滑筋が弛緩し、これにより陰茎海綿体への血流を増加させることで陰茎勃起機能の改善を図ることができ、泌尿器系への血流を増加させることで下部尿路障害の改善を図ることができ、前立腺や尿道の血流を増加させることで前立腺肥大の緩和を図ることができ、肺組織への血流を増加させることで肺動脈圧の低下を図ることができる。
【0045】
このことから、本発明の組成物はまた、男性機能が気になる対象者、排尿機能が気になる対象者等に好ましく適用することができる。
【0046】
また、本発明の組成物は、PDE5活性阻害薬、陰茎勃起機能(不全)治療薬、下部尿路機能障害治療薬、前立腺肥大治療薬、肺高血圧症治療薬(特に肺動脈性肺高血圧症)等としても使用できる
【実施例0047】
以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0048】
試験例1
1.植物の加工物
表1に示す植物を原料として、各植物の抽出物を準備した。具体的には、実施例1、5、9及び10については次の手順に従い抽出物を調製し、その他の実施例については市販品を用いた。
【0049】
実施例1:ヒマラヤブラックベリー
ヒマラヤブラックベリーの葉の乾燥物50gを破砕し、水を1000 ml添加して80℃、1時間で抽出処理を実施した。得られた抽出物をミラクロス(メルク・ミリポア社製)にて濾過し、不溶性成分を除去した濾液を凍結乾燥することで、ヒマラヤブラックベリー抽出物(抽出乾燥物7.9 g)を得た。
【0050】
実施例2:セイヨウヤブイチゴ
セイヨウヤブイチゴの葉の抽出物(日本新薬社製特注、粉末乾燥物)を用いた。本抽出物は、セイヨウヤブイチゴの葉の乾燥物を破砕し、メタノールを添加して抽出し、得られた抽出物を濾過し、不溶性成分を除去した濾液を凍結乾燥することにより得たものである。
【0051】
実施例3:アメリカイチゴ
アメリカイチゴの葉及び果実の抽出物(日本新薬社製特注、粉末乾燥物)を用いた。本抽出物は、アメリカイチゴの葉及び果実の乾燥物を破砕し、メタノールを添加して抽出し、得られた抽出物を濾過し、不溶性成分を除去した濾液を凍結乾燥することにより得たものである。
【0052】
実施例4:ザクロ
ザクロの果皮の抽出物(商品名ザクロ果皮エキス末、香栄興業製、粉末乾燥物)を用いた。
【0053】
実施例5:セイヨウナツユキソウ
セイヨウナツユキソウの茎及び葉の乾燥物40gを破砕し、水を1000ml添加して80℃、1
時間で抽出処理を実施した。得られた抽出物をミラクロス(メルク・ミリポア社製)にて濾過し、不溶性成分を除去した濾液を凍結乾燥することで、セイヨウナツユキソウ抽出物(抽出乾燥物9.9 g)を得た。
【0054】
実施例6:シロコヤマモモ
シロコヤマモモの樹皮の抽出物(日本新薬社製特注、粉末乾燥物)を用いた。本抽出物は、シロコヤマモモの樹皮の乾燥物を破砕し、メタノールを添加して抽出し、得られた抽出物を濾過し、不溶性成分を除去した濾液を凍結乾燥することにより得たものである。
【0055】
実施例7:ヤマモモ
ヤマモモの樹皮の抽出物(日本新薬社製特注、粉末乾燥物)を用いた。本抽出物は、ヤマモモの樹皮の乾燥物を破砕し、メタノールを添加して抽出し、得られた抽出物を濾過し、不溶性成分を除去した濾液を凍結乾燥することにより得たものである。
【0056】
実施例8:タチバナアデク
タチバナアデクの果実の抽出物(日本新薬社製特注、粉末乾燥物)を用いた。本抽出物は、タチバナアデクの果実の乾燥物を破砕し、メタノールを添加して抽出し、得られた抽出物を濾過し、不溶性成分を除去した濾液を凍結乾燥することにより得たものである。
【0057】
実施例9:クローブ
クローブの花蕾の乾燥物50gを破砕し、水を1000ml添加して80℃、 1時間で抽出処理を実施した。得られた抽出物をミラクロス(メルク・ミリポア社製)にて濾過し、不溶性成分を除去した濾液を凍結乾燥することで、クローブ抽出物(抽出乾燥物10.1 g)を得た。
【0058】
実施例10:バナバ
バナバ葉の乾燥物60gを破砕し、50質量%エタノール(水とエタノールとの質量比1:1)を900ml添加して25℃、12時間で抽出処理を実施した。得られた抽出物をミラクロス
(メルク・ミリポア社製)にて濾過し、不溶性成分を除去した濾液からエタノールを留去した後、凍結乾燥することで、バナバ抽出物(抽出乾燥物8.9 g)を得た。
【0059】
実施例11:モモタマナ
モモタマナの果実の抽出物(日本新薬社製特注、粉末乾燥物)を用いた。本抽出物は、モモタマナの果実の乾燥物を破砕し、メタノールを添加して抽出し、得られた抽出物を濾
過し、不溶性成分を除去した濾液を凍結乾燥することにより得たものである。
【0060】
実施例12:セイタカミロバラン
セイタカミロバランの果実の抽出物(日本新薬社製特注、粉末乾燥物)を用いた。本抽出物は、セイタカミロバランの果実の乾燥物を破砕し、メタノールを添加して抽出し、得られた抽出物を濾過し、不溶性成分を除去した濾液を凍結乾燥することにより得たものである。
【0061】
実施例13:アカミノキ
アカミノキの幹の抽出物(日本新薬社製特注、粉末乾燥物)を用いた。本抽出物は、アカミノキの幹の乾燥物を破砕し、メタノールを添加して抽出し、得られた抽出物を濾過し、不溶性成分を除去した濾液を凍結乾燥することにより得たものである。
【0062】
実施例14:イタドリ
イタドリの茎及び葉の抽出物(日本新薬社製特注、粉末乾燥物)を用いた。本抽出物は、イタドリの茎及び葉の乾燥物を破砕し、メタノールを添加して抽出し、得られた抽出物を濾過し、不溶性成分を除去した濾液を凍結乾燥することにより得たものである。
【0063】
実施例15:キャッツクロー
キャッツクローの根、茎及び葉の抽出物(日本新薬社製特注、粉末乾燥物)を用いた。本抽出物は、キャッツクローの根、茎及び葉の乾燥物を破砕し、メタノールを添加して抽出し、得られた抽出物を濾過し、不溶性成分を除去した濾液を凍結乾燥することにより得たものである。
【0064】
比較例:クロショウガ
クロショウガの根茎の抽出物(商品名黒ショウガエキス-P、オリザ油化製、粉末乾燥物)を用いた。クロショウガは、従来、ホスホジエステラーゼ(PDE)に対して阻害作用を
有していると知られている植物である。
【0065】
2.ホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害活性の測定
前記1.で準備した各抽出物の、PDE5に対する阻害活性を測定した(n=3)。本測定に
おいて、PDE5A Assay Kit (♯60350)(BPSバイオサイエンス社製)、96wellプレート、ピペットマン、PerkinElmer EnVision 2102 Multilabel Reader(パーキンエルマー社製)
を用い、キットに付帯の手順書に従い、阻害活性を測定した。
【0066】
具体的には、希釈調製したFAM-Cyclic-3’, 5’-GMPを25μLずつ各ウェルに添加した。「Blank」に25μLずつPDEバッファーを添加した。次いで、前述のように準備した抽出物600mgとジメチルスルホキシド20 mLとを混合して抽出物含有溶液を得た後、抽出物含有溶
液5μLと滅菌水495μLを混合してサンプル溶液(抽出物濃度300μg/mL)とした。サンプ
ル溶液(「Test」のウェル)またはサンプル溶媒(「Blank」、「Substrate control」、「Positive control」のウェル)を、各ウェルに5μL添加した。次いで、「Blank」と「Substrate control」のウェルに20μLずつPDEアッセイバッファーを添加した。希釈調製したPDE5Aを「Test」、「Positive control」のウェルに20 μLずつ添加した(200 pg/反応ウェル)。 25℃で1時間反応させた。希釈調製したBinding agentを100μLずつ各ウェル
に添加し、25℃で30分間強く振とうしながら反応させた。プレートリーダーで蛍光偏光を測定した(Excitation:475-495 nm、Emission:518-538 nm)。「Blank」値をそれぞれ
の測定値から減じ、蛍光偏光値を算出した。また、IC50測定にはサンプル溶液の濃度を段階的に減少させて阻害率が50%になるサンプル濃度を求めた。
【0067】
3.結果
結果を表1に示す。表1にはIC50値を示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1から明らかなように、クロショウガでは、そのIC50値(μg/mL)は50を上回った。これに対して、実施例1~15に示す植物の抽出物ではいずれも一層優れたPDE5活性阻害作用が認められ、これはクロショウガの阻害作用を大きく上回るものであった。
【0070】
このことから、PDEに対して活性阻害作用を有していることが従来知られている植物で
あるクロショウガよりも、前記植物の加工物によれば、より効果的にPDE5の活性を阻害できることが確認された。
【0071】
試験例2
1.測定手順
前記試験例で準備した実施例1、4、5及び10の抽出物、比較例の抽出物、ならびに対照として水を用いて、ラット組織中の環状グアノシン一リン酸(cGMP)量を測定した。
【0072】
本測定には、SD系雄ラット(体重約250g/匹)、cGMP ELISA kit(ADI-900-014、エンゾライフサイエンス社製)、PerkinElmer EnVision 2102 Multilabel Reader(パーキンエ
ルマー社製)を用いた。
【0073】
具体的には、前記抽出物2gと蒸留水8mLとを混合し、前記抽出物含有投与液(500mg/2mL/kg体重)を各投与の直前に調製した。得られた投与液を、試験開始0時間及び24時間後に、ゾンデでラットの胃内に投与した(n=8)。試験開始25時間後に麻酔下でラットの陰茎
を摘出し、これを液体窒素を用いて凍結保存した。cGMP ELISA kitに記載されている方法に従って、陰茎組織中のcGMP量を測定した。なお、対照として、抽出物含有投与液に代えて蒸留水を用いる以外は、同様にして胃内に投与し、陰茎組織中のcGMP量を測定した。
【0074】
2.結果
結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
表2から明らかなように、クロショウガ投与時のcGMP量は、蒸留水投与時のcGMP量を多少上回る程度であった。これに対して、実施例1、4、5及び10の抽出物投与時のcGMP量は、クロショウガ投与時の2倍程度か2倍を大きく上回った。
【0077】
このように、実施例1、4、5及び10の加工物において得られる値は、クロショウガにおいて得られる値を上回ったことから、実施例1、4、5及び10の加工物によれば、PDE5の活性や局所血流低下に起因する疾患をより効果的に予防または改善できることが確認された。
【0078】
また、前記試験例1の結果から明らかなように、PDE5の活性阻害作用の点で、実施例2、3、6~9及び11~15の加工物はクロショウガを大きく上回っており、このことから、実施例2、3、6~9及び11~15の加工物も、PDE5活性や局所血流低下に起因する疾患をより効果的に予防または改善できることが確認された。