(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107247
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】新規食品製造用ミックス、及び新規食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 35/00 20160101AFI20220713BHJP
A21D 10/00 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
A23L35/00
A21D10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002082
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154597
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】間平 由梨佳
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 孝平
(72)【発明者】
【氏名】水島 徳大
【テーマコード(参考)】
4B032
4B036
【Fターム(参考)】
4B032DB35
4B032DB40
4B032DE06
4B032DG02
4B032DG07
4B032DG08
4B032DK15
4B032DK18
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4B036LK01
4B036LK06
4B036LP02
(57)【要約】
【課題】餃子皮を用いずに焼き餃子のような食感を有する新規食品を提供する。
【解決手段】餃子皮を用いずに焼き餃子のような食感を有する新規食品の製造に用いるミックスであって、前記製造が、前記ミックスと水を含むバッター材料を混合してバッターを調製する工程、前記バッターと具材を混合して生地を調製する工程、及び前記生地を焼成する工程を含む製造方法で行われ、米粉、澱粉、及びコーンフラワーを含み、小麦粉の含有量が、前記ミックスの総質量に基づいて、25質量%以下であることを特徴とする新規食品製造用ミックス、並びに本発明のミックスを用いる新規食品の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
餃子皮を用いずに焼き餃子のような食感を有する新規食品の製造に用いるミックスであって、
前記製造が、前記ミックスと水を含むバッター材料を混合してバッターを調製する工程、
前記バッターと具材を混合して生地を調製する工程、及び
前記生地を焼成する工程を含む製造方法で行われ、
米粉、澱粉、及びコーンフラワーを含み、
小麦粉の含有量が、前記ミックスの総質量に基づいて、25質量%以下であることを特徴とする新規食品製造用ミックス。
【請求項2】
前記米粉の含有量が、前記ミックスの総質量に基づいて、5~70質量%である請求項1に記載の新規食品製造用ミックス。
【請求項3】
前記澱粉の含有量が、前記ミックスの総質量に基づいて、5~80質量%である請求項1又は2に記載の新規食品製造用ミックス。
【請求項4】
前記澱粉として、リン酸架橋澱粉を、前記ミックスの総質量に基づいて、3~30質量%含有する請求項1~3のいずれか1項に記載の新規食品製造用ミックス。
【請求項5】
前記リン酸架橋澱粉が、難消化性澱粉である請求項4に記載の新規食品製造用ミックス。
【請求項6】
前記コーンフラワーの含有量が、前記ミックスの総質量に基づいて、3~30質量%である請求項1~5のいずれか1項に記載の新規食品製造用ミックス。
【請求項7】
粉末油脂をさらに含む請求項1~6のいずれか1項に記載の新規食品製造用ミックス。
【請求項8】
餃子皮を用いずに焼き餃子のような食感を有する新規食品を製造する方法であって、
ミックスと水を含むバッター材料を混合してバッターを調製する工程、
前記バッターと具材を混合して生地を調製する工程、及び
前記生地を焼成する工程を含む製造方法であり、
前記ミックスが、請求項1~7のいずれか1項に記載の新規食品製造用ミックスである新規食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、餃子皮を用いずに焼き餃子のような食感を有する新規食品の製造に用いるミックス、及びそれを用いる新規食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に焼き餃子は、必要に応じて細断した野菜類、畜肉類、魚介類、調味料等からなる具材(餡)を、餃子皮で包む工程(本明細書において、「包餡工程」と称する)を行った後、蒸し焼き調理して製造される。しかしながら、例えば、家庭内で、焼き餃子を作ることは、餃子皮を別途用意する必要がある上、包餡工程に技術を必要とし、蒸し焼きのために水を加えたり、蒸し焼き工程の管理が必要であったり、手間が掛かるため敬遠される場合がある。
【0003】
包餡工程を簡略化する焼き餃子の製造方法として、非特許文献1及び非特許文献2では、餃子皮をフライパンに直接敷き詰めるように並べ、その上に具材を置き、さらに餃子皮を具材の全面に重ね、蒸し焼きにする方法が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】オレンジページデイリー「包まず、刻まず、重ねるだけ!BIGな[ずぼら餃子]をおうちで作ろう」https://www.orangepage.net/daily/3234
【非特許文献2】クックパッド「簡単!包まないジャンボ餃子」https://cookpad.com/recipe/5993412
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1及び非特許文献2に記載された方法では、結局、餃子皮を別途用意する必要がある上、具材がぽろぽろと落ちやすい、餃子らしい食感ではない等、品質面に不十分な点があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、餃子皮を用いずに焼き餃子のような食感を有する新規食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、餃子皮を用いずに焼き餃子のような食感を得る方法について種々検討した結果、所定の配合のミックスを用いて調製したバッターと具材を混合して焼成することで、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
すなわち、上記目的は、餃子皮を用いずに焼き餃子のような食感を有する新規食品の製造に用いるミックスであって、前記製造が、前記ミックスと水を含むバッター材料を混合してバッターを調製する工程、前記バッターと具材を混合して生地を調製する工程、及び前記生地を焼成する工程を含む製造方法で行われ、米粉、澱粉、及びコーンフラワーを含み、小麦粉の含有量が、前記ミックスの総質量に基づいて、25質量%以下であることを特徴とする新規食品製造用ミックスによって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、餃子皮を用いずに焼き餃子のような食感を有する新規食品を容易に製造できるミックス、及びそれを用いる新規食品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[新規食品製造用ミックス]
本発明の新規食品製造用ミックスは、餃子皮を用いずに焼き餃子のような食感を有する新規食品の製造に用いるミックスであって、前記製造が、前記ミックスと水を含むバッター材料を混合してバッターを調製する工程、前記バッターと具材を混合して生地を調製する工程、及び前記生地を焼成する工程を含む製造方法で行われ、米粉、澱粉、及びコーンフラワーを含み、小麦粉の含有量が、前記ミックスの総質量に基づいて、25質量%以下であることを特徴とする。本発明のミックスを用いて調製したバッターと具材を混合して調製した生地を焼成することで、表面はパリッとした焼き餃子の皮のような食感を有し、内部は具材に一体感がある焼き餃子の餡のようなジューシーな食感を有し、焼き餃子のような食感を有する新規食品を製造することができる。これは、本発明のミックスの配合が、生地を調製する工程では、具材がバッターを結着剤として焼き餃子の餡のように一体化し、生地を焼成する工程では、生地表面のバッターの水分が抜け、具材の外側で焼き餃子の皮のように焼成されるように設計されているためである。
【0011】
本発明のミックスの配合は、上記規定を満たし、上述の工程で焼き餃子のような食感を有する新規食品を製造できれば、特に制限はない。本発明のミックスにおいては、上記規定の範囲で、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、全粒粉、デュラム小麦粉、加熱粉、油脂加工小麦粉等の小麦粉を含んでいてもよいが、小麦粉の含有量が多いと、グルテンの形成により、生地を焼成する工程において、バッターの水分が抜け難くなり、焼き餃子の皮のような食感が得難くなったり、焼成後に具材よりも生地の存在感が大きくなり、具材の一体感及び餃子の餡のようなジューシー感が得難くなったりする場合がある。本発明のミックスの小麦粉の含有量は、前記ミックスの総質量に基づいて、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。本発明のミックスは、小麦粉を含まないグルテンフリーミックスとすることができるので、これを用いてグルテンフリー新規食品を製造することができる。
【0012】
本発明のミックスにおいては、前記米粉を含むことにより、新規食品の表面の食感を、パリッとした焼き餃子の皮のような食感にすることができる。前記米粉の含有量は、前記ミックスの総質量に基づいて、好ましくは5~70質量%、より好ましくは7.5~60質量%、さらに好ましくは10~50質量%、特に好ましくは15~30質量%である。本発明において、前記米粉は、原料米(うるち米(ジャポニカ米、インディカ米、ジャバニカ米、低アミロース米、高アミロース米、超硬質米等を含む)、もち米等)の玄米を必要に応じて精米した生米を公知の方法で粉砕したものである。
【0013】
本発明のミックスにおいては、前記澱粉を含むことにより、新規食品の表面の食感を、さらにパリッとした焼き餃子の皮のような食感にすることができる。前記澱粉の含有量は、前記ミックスの総質量に基づいて、好ましくは5~80質量%、より好ましくは30~70質量%、さらに好ましくは35~65質量%、特に好ましくは40~60質量%である。本発明において、前記澱粉は、特に制限はなく、例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、モチ米澱粉等、これらの澱粉に物理的、化学的な加工処理を単独又は複数組み合わせて施した加工澱粉等が挙げられる。前記加工処理としては、リン酸架橋、アジピン酸架橋等の架橋処理;焙焼;α化;酵素処理;酸処理;酸化処理;アルカリ処理;アセチル化等のエステル化処理;ヒドロキシプロピル化等のエーテル化処理等の物理的又は化学的加工処理が挙げられる。加工澱粉としては、エステル化処理及びエーテル化処理以外の加工澱粉が好ましい。前記澱粉は、消化酵素の消化作用に抵抗性を有するように物理的及び/又は化学的(酵素処理も含む)に加工を施した難消化性澱粉であってもよい。本発明のミックスにおいては、これらの澱粉を単独又は複数組み合わせて用いることができる。本発明のミックスは、前記澱粉として、リン酸架橋澱粉を含むことが好ましい。これにより、新規食品の表面の食感を、よりパリッとした焼き餃子の皮のような食感にできる。前記リン酸架橋澱粉の含有量は、前記ミックスの総質量に基づいて、好ましくは3~30質量%、より好ましくは5~25質量%、さらに好ましくは10~20質量%である。前記リン酸架橋澱粉は、リン酸架橋以外の加工処理が施されていてもよい。本発明においては、前記リン酸架橋澱粉は、難消化性澱粉であることが好ましい。
【0014】
本発明のミックスにおいては、前記コーンフラワーを含むことにより、新規食品の内部の食感を、具材に一体感がある焼き餃子の餡のようなジューシーな食感にすることができる。本発明において、前記コーンフラワーは、トウモロコシを粉にしたものを称する。前記コーンフラワーはその粒径や製造方法によって、コーングリッツ、コーンミール、コーンパウダー等と称されることもある。本発明においては、平均粒径が500μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。また、トウモロコシの胚乳部を粉にしたコーンフラワーであることが好ましい。前記コーンフラワーの含有量は、前記ミックスの総質量に基づいて、好ましくは3~30質量%、より好ましくは5~25質量%、さらに好ましくは5~20質量%である。
【0015】
本発明のミックスにおいては、粉末油脂をさらに含むことが好ましい。これにより、新規食品の内部の食感を、さらに具材に一体感がある焼き餃子の餡のようなジューシーな食感にすることができる。本発明において、前記粉末油脂は、食用油脂を含む粉末であり、親油性タイプでも親水性タイプでもよい。一般に、親油性タイプは、高融点油脂を噴霧冷却や冷却粉砕して粉末化したものであり、親水性タイプは、例えば、食用油脂(植物性油脂、動物性油脂、及びこれらを加工処理した加工油脂を含む)と、必要に応じて糖質、たん白質等の賦形剤、乳化剤等から調製した水中油滴型(O/W型)乳化液を噴霧乾燥して粉末化したものである。前記粉末油脂の含有量は、前記ミックスの総質量に基づいて、好ましくは2~15質量%、より好ましくは2~10質量%、さらに好ましくは3~8質量%である。
【0016】
本発明のミックスは、本発明の効果を損なわない限り、上記材料以外の材料が含まれていてもよい。そのような材料としては、例えば、大麦粉、大豆粉、そば粉、ライ麦粉、ホワイトソルガム粉等の穀粉、及びこれらの穀粉を加熱処理した加熱処理穀粉等の穀粉類;デキストリン、オリゴ糖、ぶどう糖、ショ糖、マルトース等の糖質類;植物性油脂、動物性油脂、加工油脂等の粉末油脂以外の油脂類;卵白粉、卵黄粉、全卵粉、小麦たん白、乳たん白、大豆たん白等のたん白素材;重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム等のガス発生剤、及び酒石酸、酒石酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム等の酸性剤を含むベーキングパウダー等の膨張剤;カードラン、キサンタンガム、グアガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、及びカラギーナン等の増粘剤;食塩、グルタミン酸ナトリウム、たん白加水分解物、粉末醤油等の調味料;酵母エキス、畜肉又は魚介由来エキス等のエキス類;アラニン、グリシン、リジン等のアミノ酸;グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤;その他、かぼちゃ粉、色素、香料、香辛料、酵素、塩類、種々の品質改良剤等が挙げられる。
【0017】
本発明において、バッターを調製する工程で用いられるバッター材料は、本発明の効果を損なわない限り、前記ミックス及び水以外の材料が含まれていてもよい。そのような材料としては、だし汁、酒類、醤油、食用酢、食用油脂、牛乳、豆乳、卵等の液状材料、上述のミックスの材料として記載した水に可溶又は分散可能な材料等が挙げられる。表面のパリッとした食感、内部のジューシーな食感をより際立たせるためには、バッター調製工程では、卵を使用しないことが好ましい。また、バッターを調製する工程で用いられる水分の量については、本発明の新規食品を製造可能であれば、特に制限はない。前記ミックス100質量部に対して、80~120質量部が好ましい。
【0018】
本発明において、生地を調製する工程で用いられる具材は、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はない。例えば、粗く若しくは細かく刻んだキャベツ、ネギ、にら、白菜、玉ねぎ、ニンニク、ニンジン等の野菜類、大豆、小豆、緑豆等の豆類、牛肉、豚肉、鶏肉等の畜肉類、エビ、帆立貝等の魚介類、鶏卵等の卵類、チーズ等の乳製品、粒状大豆たん白等の大豆加工品、リンゴ等の果実類等が挙げられる。本発明において、前記具材は、バッターと具材を混合することで均一な生地が調製されるように、一般に焼き餃子に用いられる材料、例えば、細断した野菜類、畜肉類や魚介類のひき肉類、ひき肉類と同等の大きさの粒状大豆たん白等が好ましい。また、生地を調製する工程で用いられる前記具材の量についても、本発明の新規食品を製造可能であれば、特に制限はない。上述の食感を考慮すると、前記ミックス100質量部に対して、具材の合計として130~250質量部が好ましく、140~210質量部がより好ましい。
【0019】
本発明において、生地を焼成する工程は、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はない。一般に、前記生地を、鉄板、フライパン、ホットプレート等の焼成器具に流し入れ、適切な温度で焼成する。焼成時は、熱媒体として食用油脂を用いることが好ましく、蓋をする等により蒸し焼きにすることが好ましい。焼成温度は、180~200℃が好ましく、両方の表面の食感をパリッとした焼き餃子の皮のような食感にするため、両面を焼成することが好ましい。焼き上げる直前に、食用油脂を回しかけて焼成することがさらに好ましい。
【0020】
[新規食品の製造方法]
本発明の新規食品製造方法は、餃子皮を用いずに焼き餃子のような食感を有する新規食品を製造する方法であって、ミックスと水を含むバッター材料を混合してバッターを調製する工程、前記バッターと具材を混合して生地を調製する工程、及び前記生地を焼成する工程を含む製造方法であり、前記ミックスが、本発明の新規食品製造用ミックスであることを特徴とする。上述の通り、本発明のミックスを用いて調製したバッターと具材を混合して調製した生地を焼成することで、表面はパリッとした焼き餃子の皮のような食感を有し、内部は具材に一体感がある焼き餃子の餡のようなジューシーな食感を有し、焼き餃子のような食感を有する新規食品を製造することができる。本発明の製造方法の好ましい態様は、上述の本発明のミックスの場合と同様である。
【実施例0021】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
1.新規食品製造用ミックスの調製
表1に示した配合で、各材料を混合し、各実施例及び各比較例の新規食品製造用ミックスを調製した。なお、調味料・香辛料には、砂糖、食塩が含まれる。
2.新規食品の製造
(1)ボウルに水120g(実施例12は水96g、実施例13は水132g)に表1に示した各ミックス120gを入れ、泡立て器で混合し、バッターを調製した。
(2)(1)で調製したバッターに具材((豚ひき肉100g(実施例16は、代わりに豚こま肉100g)、細かく刻んだキャベツ100g及びニラ30g(実施例14は、豚ひき肉90g及び細かく刻んだキャベツ80g、実施例15は、豚ひき肉130g、細かく刻んだキャベツ130g及びにら40g))を加えてスプーンで混合し、生地を調製した。
(3)200℃に加熱したホットプレートに油をひき、(2)で調製した生地を全量流し入れて蓋をして6分間焼成した後、裏返して蓋をして6分間焼成し、再度裏返して生地の周りに油を回しかけた後、さらに5分間焼成した。なお、実施例11では、生地を焼成する際に、蓋を使用せずに、上記と同様な時間焼成した。また、比較例5では、(2)の生地を調製する工程を行わず、(1)で調製したバッターを200℃に加熱したホットプレートに流し入れた後、丸く伸ばし広げ、(2)で用いた具材を生地の上に載せ、蓋をして4分間焼成し、裏返して蓋をして8分間焼成した。
3.新規食品の評価
3.で製造した新規食品を、以下の基準で、表面の食感、及び内部の食感について評価した。評価は、専門パネル10名で行い、評価結果は、評価点の平均値で示した。
(1)表面の食感
5:パリッとした焼き餃子の皮のような食感が強く感じられて非常に良い
4:パリッとした焼き餃子の皮のような食感が感じられて良い
3:パリッとした焼き餃子の皮のような食感がやや感じられて良い
2:パリッとした焼き餃子の皮のような食感がほとんど感じられない
1:パリッとした焼き餃子の皮のような食感が全く感じられない
(2)内部の食感
5:具材に一体感がある焼き餃子の餡のようなジューシーな食感が強く感じられて非常に良い
4:具材に一体感がある焼き餃子の餡のようなジューシーな食感が感じられて良い
3:具材に一体感がある焼き餃子の餡のようなジューシーな食感がやや感じられて良い
2:具材に一体感がある焼き餃子の餡のようなジューシーな食感がほとんど感じられない
1:具材に一体感がある焼き餃子の餡のようなジューシーな食感が全く感じられない
評価結果を表1及び表2に示した。
【0022】
【0023】
表1に示した通り、米粉、澱粉、及びコーンフラワーを含み、小麦粉をミックスの総質量に基づいて、0質量%、及び20質量%含む実施例1~9のミックスを用いて、前記ミックスと水を含むバッター材料を混合してバッターを調製する工程(1)、前記バッターと具材を混合して生地を調製する工程(2)、及び前記生地を焼成する工程(3)の製造方法によって得られた食品は、表面の食感は、パリッとした焼き餃子の皮のような食感を有し、内部の食感は、具材に一体感がある焼き餃子の餡のようなジューシーな食感を有していた。一方、澱粉を含むが、米粉、コーンフラワーを含まず、小麦粉をミックスの総質量に基づいて、80質量部含む比較例1のミックスを用いて得られた食品は、表面の食感は、パリッとした焼き餃子の皮のような食感がやや感じられるものの、内部の食感は、具材に一体感がある焼き餃子の餡のようなジューシーな食感がほとんど感じられなかった。また、澱粉及びコーンフラワーを含むが、米粉を含まない比較例2、米粉及びコーンフラワーを含むが、澱粉を含まない比較例3のミックスを用いた食品は、具材に一体感がある焼き餃子の餡のようなジューシーな食感が感じられるものの、表面の食感は、パリッとした焼き餃子の皮のような食感はあまり感じられなかった。さらに、米粉及び澱粉を含むが、コーンフラワーを含まない比較例4のミックスを用いた食品は、表面の食感は、パリッとした焼き餃子の皮のような食感が感じられるものの、内部の食感は、具材に一体感がある焼き餃子の餡のようなジューシーな食感がほとんど感じられなかった。したがって、米粉、澱粉、及びコーンフラワーを含み、小麦粉の含有量が、ミックスの総質量に基づいて、25質量%以下であるミックスを用いて、上記工程(1)~工程(3)を含む製造方法を行うことで、餃子の皮を用いずに焼き餃子のような食感を有する新規食品を製造できることが示唆された。
【0024】
【0025】
表2では、バッターに使用する水、生地に使用する具材の量や内容、及び製造方法の影響について調べた。表2に示した通り、製造方法において、工程(3)の生地の焼成において蓋を使用しても使用しなくても良好な評価が得られた。各実施例を比較すると、蓋を使用して焼成を行った実施例10の方が、蓋を使用しないで焼成を行った実施例11よりも表面の食感及び内部の食感の評価が高かった。これは、蓋をして焼成すると、生地が蒸し焼きされるため、表面も内部も澱粉の糊化が進み易く、よりパリッとした表面の食感とジューシーな内部の食感が得易くなるためと考えられる。また、バッターに使用する水の量については、バッターの調製において、ミックス100質量部に対する水の量が、80質量部や110質量部であっても良好な評価が得られた。各実施例を比較すると、バッターにおける水の量がミックス100質量部に対して100質量部の実施例10の方が、80質量部の実施例12及び110質量部の実施例13よりも表面の食感及び内部の食感の評価が高かった。これは、ミックス100質量部に対する水の量が少なく、バッターの粘度が高いと、内部の食感は生地の存在感が大きくなり易く、ミックス100質量部に対する水の量が多く、バッターの粘度が低いと、表面の皮張りが薄くなり、パリッとした食感が得難くなるためと考えられる。一方、生地の調製における具材の量としては、ミックス100質量部に対する具材の量が142~250質量部の範囲で良好な評価が得られた。各実施例を比較すると、ミックス100質量部に対する具材の量が192質量部の実施例10の方が、142質量部の実施例14よりも内部の食感の評価が高かった。これは、具材の量が少ないと、表面の皮張りは厚めになり良好であるが、内部の食感は、生地の存在感が大きくなり易いためと考えられる。また、ミックス100質量部に対する具材の量が192質量部の実施例10の方が、250質量部の実施例15よりも表面も内部も食感の評価が高かった。これは、具材の量が多いと、表面の皮張りが薄くなり、内部の食感の一体感がやや少なくなるためと考えられる。なお、具材の肉として豚こま肉を用いた実施例16は、豚ひき肉を用いた実施例10と比較して表面の食感、及び内部の食感の評価が低く、具材としては、ひき肉等の一般に焼き餃子に用いられる材料が好ましいことが示唆された。また、同様なミックスを用いてバッターを調製しても、バッターと具材と混合して生地を調製する工程(2)を行わずに、バッターのみを焼成してから具材を載せて焼成した比較例5は、表面の食感は、パリッとした焼き餃子の皮のような食感が感じられるものの、内部の食感は、具材に一体感がある焼き餃子の餡のようなジューシーな食感がほとんど感じられなかった。したがって、バッターと具材を混合して生地を調製する工程を行うことで、本発明の新規食品を製造できることが示された。
【0026】
以上により、本発明のミックスを用いて、前記ミックスと水を含むバッター材料を混合してバッターを調製する工程、前記バッターと具材を混合して生地を調製する工程、及び前記生地を焼成する工程を含む製造方法を行うことで、餃子皮を用いずに焼き餃子のような食感を有する新規食品を製造できることが示された。
【0027】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。