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特開2022-10746タッチパネル用電極部材、タッチパネルおよび画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010746
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】タッチパネル用電極部材、タッチパネルおよび画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20220107BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G06F3/041 490
G06F3/044 127
G06F3/044 129
G06F3/044 122
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111454
(22)【出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】大野 貴広
(57)【要約】
【課題】画像表示装置に使用した際のモアレの発生を抑制することができるタッチパネル用電極部材、タッチパネルおよび画像表示装置を提供する。
【解決手段】タッチパネル用電極部材は、平面視において、第1方向(D1)に延びる複数の第1金属細線(MW1、MW3)と第2方向に延びる複数の第2金属細線(MW2、MW4)とが交差することにより敷き詰められた複数の単位メッシュパターン(MP3)を有し、第1方向(D1)に隣接する2つの単位メッシュパターン(MP3)のそれぞれの中心点(C1、C2)を結ぶ直線(L1)は、第1方向(D1)に対して交差する方向(D3)に延び、第2方向に隣接する2つの単位メッシュパターン(MP3)のそれぞれの中心点を結ぶ直線は、第2方向に対して交差する方向に延びている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視において、それぞれ第1方向に延びる複数の第1金属細線とそれぞれ前記第1方向と交差する第2方向に延びる複数の第2金属細線とが交差することにより敷き詰められた複数の単位メッシュパターンを有するタッチパネル用電極部材であって、
前記第1方向に隣接する2つの単位メッシュパターンのそれぞれの中心点を結ぶ直線は、前記第1方向に対して交差する方向に延び、
前記第2方向に隣接する2つの単位メッシュパターンのそれぞれの中心点を結ぶ直線は、前記第2方向に対して交差する方向に延びているタッチパネル用電極部材。
【請求項2】
前記第1方向に隣接する2つの単位メッシュパターンのそれぞれの中心点を結ぶ前記直線は、前記第1方向に対して、0.1度以上且つ2.9度以下の角度により交差し、
前記第2方向に隣接する2つの単位メッシュパターンのそれぞれの中心点を結ぶ前記直線は、前記第2方向に対して、0.1度以上且つ2.9度以下の角度により交差する請求項1に記載のタッチパネル用電極部材。
【請求項3】
前記単位メッシュパターンは、菱形の形状を有する請求項1または2に記載のタッチパネル用電極部材。
【請求項4】
前記単位メッシュパターンの1辺の長さは、150μm以上350μm以下である請求項3に記載のタッチパネル用電極部材。
【請求項5】
前記第1金属細線および前記第2金属細線は、1μm以上10μm以下の線幅を有する請求項1~4のいずれか一項に記載のタッチパネル用電極部材。
【請求項6】
前記第1金属細線および前記第2金属細線は、銅から形成されている請求項1~5のいずれか一項に記載のタッチパネル用電極部材。
【請求項7】
透明絶縁部材をさらに備え、
前記第1金属細線および前記第2金属細線は、前記透明絶縁部材の両面上にそれぞれ配置されている請求項1~6のいずれか一項に記載のタッチパネル用電極部材。
【請求項8】
前記透明絶縁部材は、樹脂基板からなる請求項7に記載のタッチパネル用電極部材。
【請求項9】
樹脂基板をさらに備え、
前記第1金属細線、前記第2金属細線および前記透明絶縁部材は、前記樹脂基板の一方の表面上に配置されている請求項7に記載のタッチパネル用電極部材。
【請求項10】
ガラス基板をさらに備え、
前記第1金属細線、前記第2金属細線および前記透明絶縁部材は、前記ガラス基板の一方の表面上に配置されている請求項7に記載のタッチパネル用電極部材。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のタッチパネル用電極部材を含むタッチパネル。
【請求項12】
請求項11に記載のタッチパネルを含む画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タッチセンサまたはタッチパネルの電極として利用されるタッチパネル用電極部材に関する。
また、この発明は、タッチパネル用電極部材を含むタッチパネルにも関している。
また、この発明は、タッチパネルを含む画像表示装置にも関している。
【背景技術】
【0002】
近年、タブレット型コンピュータおよびスマートフォン等の携帯情報機器を始めとした各種の電子機器において、液晶表示装置等の表示装置と組み合わせて用いられ、指、スタイラスペン等を画面に接触または近接させることにより電子機器への入力操作を行うタッチパネルの普及が進んでいる。
【0003】
タッチパネルには、透明基板上に、指、スタイラスペン等の接触または近接によるタッチ操作を検出するための検出部が形成された導電性部材が用いられる。
検出部は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電性酸化物で形成されるが、透明導電性酸化物以外に金属でも形成される。金属は上述の透明導電性酸化物に比べて、パターニングがしやすく、屈曲性に優れ、抵抗がより低い等の利点があるため、タッチパネル等において銅または銀等の金属が導電性細線に用いられている。
【0004】
特許文献1には、透明基板上に複数の金属細線からなる検出電極が配置されたタッチパネルが記載されている。この検出電極は、第1方向に沿って延びる複数の第1金属細線と、第1方向とは異なる第2方向に沿って延びる複数の第2金属細線を有しており、複数の第1金属細線と複数の第2金属細線により、菱形の複数のメッシュパターンが形成されている。さらに、複数の第1金属細線は、第2金属細線との交点の両側において第2方向にズレるように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0216783号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、金属細線からなる複数の規則的なメッシュパターンを有するタッチパネルは、画像を表示するための液晶ディスプレイ等の上に配置されて画像表示装置として使用された場合に、複数の規則的なメッシュパターンと液晶ディスプレイ等の画素パターンとが互いに干渉することにより、いわゆるモアレが目立って視認されてしまうことがあった。
【0007】
特許文献1のタッチパネルでは、複数の第1金属細線が、複数の第2金属細線が延びる方向である第2方向においてズレながら配置されているため、検出電極の複数のメッシュパターンの配列に不規則性が付与され、モアレが低減されることが期待される。しかしながら、複数の第2金属細線については、複数の第1金属細線が延びる方向である第1方向において等間隔で配置されているため、複数のメッシュパターンは、第2方向に沿って規則正しく配列されており、依然として、検出電極の複数のメッシュパターンと液晶ディスプレイ等の画素パターンとが干渉しやすかった。そのため、特許文献1のタッチパネルを画像表示装置に使用した際にモアレが目立って視認されてしまうことがあり、改良の余地があった。
【0008】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、画像表示装置に使用した際のモアレの発生を抑制することができるタッチパネル用電極部材を提供することを目的とする。
また、この発明は、このようなタッチパネル用電極部材を用いたタッチパネルを提供することも目的とする。
また、この発明は、このようなタッチパネルを用いた画像表示装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るタッチパネル用電極部材は、平面視において、それぞれ第1方向に延びる複数の第1金属細線とそれぞれ第1方向と交差する第2方向に延びる複数の第2金属細線とが交差することにより敷き詰められた複数の単位メッシュパターンを有するタッチパネル用電極部材であって、第1方向に隣接する2つの単位メッシュパターンのそれぞれの中心点を結ぶ直線は、第1方向に対して交差する方向に延び、第2方向に隣接する2つの単位メッシュパターンのそれぞれの中心点を結ぶ直線は、第2方向に対して交差する方向に延びていることを特徴とする。
【0010】
第1方向に隣接する2つの単位メッシュパターンのそれぞれの中心点を結ぶ直線は、第1方向に対して、0.1度以上且つ2.9度以下の角度により交差し、第2方向に隣接する2つの単位メッシュパターンのそれぞれの中心点を結ぶ直線は、第2方向に対して、0.1度以上且つ2.9度以下の角度により交差することが好ましい。
【0011】
また、単位メッシュパターンは、菱形の形状を有することが好ましい。
この場合に、単位メッシュパターンの1辺の長さは、150μm以上350μm以下であることが好ましい。
第1金属細線および第2金属細線は、1μm以上10μm以下の線幅を有することが好ましい。
また、第1金属細線および前第2金属細線は、銅から形成されていることが好ましい。
【0012】
タッチパネル用電極部材は、透明絶縁部材をさらに備えることができ、この場合に、第1金属細線および第2金属細線は、透明絶縁部材の両面上にそれぞれ配置されることができる。
この場合に、透明絶縁部材は、樹脂基板からなることができる。
【0013】
また、タッチパネル用電極部材は、樹脂基板をさらに備えることもでき、この場合に、第1金属細線、第2金属細線および透明絶縁部材は、樹脂基板の一方の表面上に配置されることができる。
また、タッチパネル用電極部材は、ガラス基板をさらに備えることもでき、この場合に、第1金属細線、第2金属細線および透明絶縁部材は、ガラス基板の一方の表面上に配置されることができる。
【0014】
本発明に係るタッチパネルは、上記のタッチパネル用電極部材を含むことを特徴とする。
本発明に係る画像表示装置は、上記のタッチパネルを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、第1方向に隣接する2つの単位メッシュパターンのそれぞれの中心点を結ぶ直線は、第1方向に対して交差する方向に延び、第2方向に隣接する2つの単位メッシュパターンのそれぞれの中心点を結ぶ直線は、第2方向に対して交差する方向に延びているため、画像表示装置に使用した際のモアレの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の実施の形態1におけるタッチパネルの部分断面図である。
図2】実施の形態1に係るタッチパネル用電極部材の平面図である。
図3】実施の形態1における第1電極の部分拡大平面図である。
図4】実施の形態1における第2電極の部分拡大平面図である。
図5】実施の形態1に係るタッチパネル用電極部材の部分拡大平面図である。
図6】第1方向に隣接する2つの第3単位メッシュパターンの部分拡大平面図である。
図7】第2方向に隣接する2つの第3単位メッシュパターンの部分拡大平面図である。
図8】実施の形態1における画像表示装置の部分断面図である。
図9】実施の形態2におけるタッチパネルの部分断面図である。
図10】実施の形態3に係るタッチパネル用電極部材の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、添付の図面に示す好適な実施の形態に基づいて、この発明に係るタッチパネル用電極部材、タッチパネル、画像表示装置を詳細に説明する。
なお、以下において、数値範囲を示す表記「~」は、両側に記載された数値を含むものとする。例えば、「sが数値t1~数値t2である」とは、sの範囲は数値t1と数値t2を含む範囲であり、数学記号で示せばt1≦s≦t2である。
「直交」および「平行」等を含め角度は、特に記載がなければ、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。
「透明」とは、光透過率が、波長400nm~800nmの可視光波長域において、少なくとも40%以上のことであり、好ましくは75%以上であり、より好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上のことである。光透過率は、JIS K 7375:2008に規定される「プラスチック--全光線透過率および全光線反射率の求め方」を用いて測定されるものである。
【0018】
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1におけるタッチパネル1の構成を示す。
タッチパネル1は、表面1Aと裏面1Bを有しており、裏面1B側に液晶ディスプレイ等を有する図示しない表示モジュールが配置された状態で使用される。タッチパネル1の表面1Aは、タッチ検出面であり、タッチパネル1の操作者が、タッチパネル1を通して表示モジュールに表示された画像を観察する視認側となる。
タッチパネル1は、表面1A側に配置された透明な絶縁性のカバーパネル2を有し、表面1Aとは反対側のカバーパネル2の面上にタッチパネル用電極部材3が透明な接着剤4により接合されている。
【0019】
タッチパネル用電極部材3は、透明絶縁基板5と、透明絶縁基板5上に形成され且つパターニングされた第2電極層6Bと、第2電極層6B上に形成された透明絶縁部材7Bと、透明絶縁部材7Bを介して第2電極層6Bと重なるように配置され且つパターニングされた第1電極層6Aを有している。透明絶縁基板5としては、樹脂基板またはガラス基板等が用いられる。透明絶縁部材7Bは、第1電極層6Aと第2電極層6Bとを互いに電気的に絶縁させる絶縁層として機能している。また、図1に示すように、平坦化またはパターニングされた第1電極層6Aを保護する目的で、第1電極層6Aを覆うように透明絶縁部材7Aが配置されていてもよい。
【0020】
図2に、タッチパネル用電極部材3の平面図を示す。タッチパネル用電極部材3には、指およびスタイラスペン等によるタッチ操作を検出するための透過領域S1と、タッチパネル用電極部材3を、図示しない表示モジュールに接続される周辺配線等を配置するための、透過領域S1の外側の領域である周辺領域S2が区画されている。なお、図2では、タッチパネル用電極部材3の構成を明確に示すため、透明絶縁部材7Aを省略している。
【0021】
第1電極層6Aと第2電極層6Bには、タッチ操作を検出するための電極およびそれに接続される周辺配線等がパターニングされている。第1電極層6Aと第2電極層6Bのうち、カバーパネル2側に位置する、すなわち、視認側に位置する第1電極層6Aは、それぞれ一定の方向に沿って延び且つそれに直交する方向に間隔を隔てて配列された複数の第1電極11を有している。これらの複数の第1電極11は、それぞれ、端部に第1パッド12を有している。
【0022】
また、第1電極層6Aは、複数の第1電極11の複数の第1パッド12から引き出された複数の第1周辺配線13と、複数の第1周辺配線13のそれぞれに接続される複数の第1外部接続端子14を有している。
【0023】
図示しない表示モジュール側に位置する第2電極層6Bは、複数の第1電極11が延びる方向に対して直交する方向に沿って延び且つそれに直交する方向すなわち複数の第1電極11が延びる方向に間隔を隔てて配列された複数の第2電極21を有している。これらの複数の第2電極21は、それぞれ、端部に第2パッド22を有している。
【0024】
また、第2電極層6Bは、複数の第2電極21の複数の第2パッド22から引き出された複数の第2周辺配線23と、複数の第2周辺配線23のそれぞれに接続される複数の第2外部接続端子24を有している。
【0025】
ここで、第1電極層6Aの複数の第1電極11および第2電極層6Bの複数の第2電極21は、タッチパネル用電極部材3に区画された透過領域S1に配置されている。
また、第1電極層6Aの複数の第1パッド12、複数の第1周辺配線13、複数の第1外部接続端子14、第2電極層6Bの複数の第2パッド22、複数の第2周辺配線23、複数の第2外部接続端子24は、タッチパネル用電極部材3に区画された周辺領域S2に配置されている。
【0026】
図3に、第1電極11と第2電極21とが互いに重なる交差領域Rにおける、第1電極11の部分拡大平面図を示す。
第1電極11は、平面視において、第1方向D1に沿って延びる複数の第1金属細線MW1と、第1方向D1と交差する第2方向D2に沿って延びる複数の第2金属細線MW2を有している。複数の第1金属細線MW1は、それぞれ、第1方向D1に沿って延び、順次、第1屈曲部BP1を介して第1方向D1とは異なる一定の方向に変位しながら、隣接する第1金属細線MW1に連結されている。
一方、複数の第2金属細線MW2は、それぞれ、第2方向D2に沿って延び、順次、第2屈曲部BP2を介して第2方向D2とは異なる一定の方向に変位しながら、隣接する第2金属細線MW2に連結されている。
【0027】
第1屈曲部BP1と第2屈曲部BP2が交点CP1で重なって一体となることにより、複数の第1金属細線MW1と、複数の第2金属細線MW2とが交点CP1で交差して互いに電気的に導通し、4つの交点CP1により囲まれて概ね菱形の形状を有する複数の第1単位メッシュパターンMP1が形成されている。
【0028】
第1単位メッシュパターンMP1は、第1方向D1に直交する方向に対向する2つの第1辺部材SP1と、第2方向D2に直交する方向に対向する2つの第2辺部材SP2とを有しており、これら2つの第1辺部材SP1と2つの第2辺部材SP2は、4つの交点CP1においてそれぞれ互いに接続されている。
それぞれの第1辺部材SP1は、互いに隣接し且つ第1屈曲部BP1を介して連結された2本の第1金属細線MW1を有し、それぞれの第2辺部材SP2は、互いに隣接し且つ第2屈曲部BP2を介して連結された2本の第2金属細線MW2を有している。
【0029】
図4に、交差領域Rにおける第2電極21の部分拡大平面図を示す。
第2電極21は、平面視において、第1方向D1に沿って延びる複数の第1金属細線MW3と、第2方向D2に沿って延びる複数の第2金属細線MW4を有している。第1金属細線MW3および第2金属細線MW4は、図4において分かりやすくするために点線で描かれているが、実際には、第1電極11における第1金属細線MW1および第2金属細線MW2と同様に連続した金属細線で構成されている。複数の第1金属細線MW3は、それぞれ、第1方向D1に沿って延び、順次、第1屈曲部BP3を介して第1方向D1とは異なる一定の方向に変位しながら、隣接する第1金属細線MW3に連結されている。
一方、複数の第2金属細線MW4は、それぞれ、第2方向D2に沿って延び、順次、第2屈曲部BP2を介して第2方向D2とは異なる一定の方向に変位しながら、隣接する第2金属細線MW4に連結されている。
【0030】
第1屈曲部BP3と第2屈曲部BP4が交点CP2で重なって一体となることにより、複数の第1金属細線MW3と、複数の第2金属細線MW4とが交点CP2で交差して互いに電気的に導通し、4つの交点CP2により囲まれて概ね菱形の形状を有する複数の第2単位メッシュパターンMP2が形成されている。
【0031】
第2単位メッシュパターンMP2は、第1方向D1に直交する方向に対向する2つの第1辺部材SP3と、第2方向D2に直交する方向に対向する2つの第2辺部材SP4とを有しており、これら2つの第1辺部材SP3と2つの第2辺部材SP4は、4つの交点CP2においてそれぞれ互いに接続されている。
それぞれの第1辺部材SP3は、互いに隣接し且つ第1屈曲部BP3を介して連結された2本の第1金属細線MW3を有し、それぞれの第2辺部材SP4は、互いに隣接し且つ第2屈曲部BP2を介して連結された2本の第2金属細線MW4を有している。
【0032】
図5に、交差領域Rにおけるタッチパネル用電極部材3の部分拡大平面図を示す。
タッチパネル用電極部材3において、第1電極11と第2電極21とが互いに組み合わされて、複数の第3単位メッシュパターンMP3が形成される。図5において、第2電極21は、分かりやすくするために点線で描かれているが、第1電極11と同様に、実際には連続した金属細線で構成されている。
【0033】
ここで、実施の形態1の一例として図5では、第1単位メッシュパターンMP1と第2単位メッシュパターンMP2は、互いに同一の形状を有し、第1単位メッシュパターンMP1における交点CP1が第2単位メッシュパターンMP2の重心に重なるように、また、第2単位メッシュパターンMP2における交点CP2が第1単位メッシュパターンMP1の重心に重なるように、第1単位メッシュパターンMP1と第2単位メッシュパターンMP2が互いにズレて配置されている。
【0034】
これにより、第1電極11における第1屈曲部BP1と第2電極21における第2屈曲部BP4が互いに重なり、第1電極11における第2屈曲部BP2と第2電極21における第1屈曲部BP3が互いに重なっている。また、第1電極11の第1金属細線MW1と第2電極21の第2金属細線MW4が交点CP3で重なり、第1電極11の第2金属細線MW2と第2電極21の第1金属細線MW3が交点CP4で互いに重なっている。
【0035】
このようにして第1単位メッシュパターンMP1と第2単位メッシュパターンMP2が交点CP3、CP4で互いに重なるため、第3単位メッシュパターンMP3は、第1電極11の第1金属細線MW1および第2金属細線MW2と第2電極21の第1金属細線MW3および第2金属細線MW4からなり、且つ、第1電極11における交点CP1と、第2電極21における交点CP2と、第1電極11と第2電極21が互いに重なることで形成される2つの交点CP3、CP4により囲まれた、菱形の形状を有している。また、交点CP1~CP4は、それぞれ菱形の4つの頂点の位置に配置されている。図5の例では、第3単位メッシュパターンMP3は、第1単位メッシュパターンMP1と第2単位メッシュパターンMP2のおよそ1/4の面積を有している。
【0036】
図6に、第1方向D1に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3の部分拡大平面図を示す。
第1方向D1に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C1およびC2を結ぶ直線L1は、第1方向D1と交差角度B1で交差する方向D3に沿って延びている。ここで、第3単位メッシュパターンMP3の中心点C1、C2は、例えば、第3単位メッシュパターンMP3の4辺に対応する第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4のうち、互いに対向する第1金属細線MW1およびMW3の中点同士を結ぶ線分と、互いに対向する第2金属細線MW2およびMW4の中点同士を結ぶ線分との交点として、それぞれ定義されることができる。
【0037】
このように、第1方向D1に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3の中心点C1およびC2を結ぶ直線L1が第1方向D1と交差する方向D3に沿って延びているため、例えば図6に示すように、第1方向D1に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3は、第1方向D1とは異なる方向において互いに一定距離だけズレて配置されている。
【0038】
また、第1電極11の第1金属細線MW1および第2金属細線MW2と、第2電極21の第1金属細線MW3および第2金属細線MW4は、線幅Wを有している。この線幅Wは、タッチパネル用電極部材3の観察者に第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4を視認されにくくする観点から、1μm以上10μm以下であることが好ましい。
また、第3単位メッシュパターンMP3の4辺に対応する第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4の長さK1は、タッチパネル用電極部材3の観察者に第3単位メッシュパターンMP3を視認されにくくする観点から、150μm以上350μm以下であることが好ましい。
なお、第1金属細線MW1、MW3と第2金属細線MW2、MW4の線幅Wおよび長さK1は、いずれも、光学顕微鏡(キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX-7000)を用いて測定した値を用いる。
【0039】
図7に、第2方向D2に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3の部分拡大平面図を示す。
第2方向D2に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C3およびC4を結ぶ直線L3は、第2方向D2と交差角度B2で交差する方向D4に沿って延びている。ここで、第3単位メッシュパターンMP3の中心点C3、C4は、中心点C1、C2と同様にして、第3単位メッシュパターンMP3の4辺に対応する第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4のうち、互いに対向する第1金属細線MW1およびMW3の中点同士を結ぶ線分と、互いに対向する第2金属細線MW2およびMW4の中点同士を結ぶ線分との交点として、それぞれ定義されることができる。
【0040】
このように、第2方向D2に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3の中心点C3およびC4を結ぶ直線L3が第2方向D2と交差する方向D4に沿って延びているため、例えば図7に示すように、第2方向D2に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3は、第1方向D1とは異なる方向において互いに一定距離だけズレて配置されている。
【0041】
したがって、実施の形態1のタッチパネル用電極部材3において、複数の第3単位メッシュパターンMP3は、第1方向D1および第2方向D2に沿って配列されるのではなく、その配置に不規則性を有している。
【0042】
ここで、実施の形態1のタッチパネル用電極部材3を備えたタッチパネル1が、例えば、図8に示すように、画像を表示するための表示モジュール8上に配置されることにより、画像表示装置9が構成される。図8において、表示モジュール8は、透明な接着剤4Aによりタッチパネル1の裏面1Bに接着されている。また、表示モジュール8は、詳細には図示しないが、液晶ディスプレイ等の表示画面と、表示画面における画像の表示等を制御するためのコントローラ等を含んでいる。画像表示装置9の操作者は、表示モジュール8に表示される画像を、タッチパネル1を通して視認し、視認された画像に基づいてタッチパネル1を介してタッチ操作を行う。
【0043】
一般的に、このような画像表示装置では、表示モジュールの画素パターンとタッチパネルのセンサを構成する金属細線により形成される複数のメッシュパターンとの干渉により、モアレが発生することがある。従来の技術では、例えば、複数のメッシュパターンのサイズを小さくすることによりモアレを低減していたが、メッシュパターンのサイズを小さくするほど、センサ内の寄生容量が増大し、タッチ操作に対する感度が低下してしまう傾向があった。
【0044】
実施の形態1のタッチパネル用電極部材3では、第1方向D1に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3の中心点C1およびC2を結ぶ直線L1が第1方向D1と交差する方向D3に沿って延び、第2方向D2に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3の中心点C3およびC4を結ぶ直線L3が第2方向D2と交差する方向D3に沿って延びているため、複数の第3単位メッシュパターンMP3の配置は、不規則性を有している。この不規則性により、例えば、第1電極11における複数の第1単位メッシュパターンMP1および第2電極21における複数の第2単位メッシュパターンMP2のサイズを小さくしなくても、タッチパネル用電極部材3が画像表示装置9に使用される際に発生するモアレを低減することができる。
【0045】
なお、モアレを低減する観点から、第1方向D1に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C1およびC2を結ぶ直線L1と第1方向D1との交差角度B1は、0.1度以上且つ2.9度以下であることが好ましい。また、同様の観点から、第2方向D2に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C3およびC4を結ぶ直線L3と第2方向D2との交差角度B2は、0.1度以上且つ2.9度以下であることが好ましい。ここで、交差角度B1、B2は、光学顕微鏡(キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX-7000)を用いて測定した値を用いる。
【0046】
また、図3に示すように、第1電極11は、連続した第1金属細線MW1および連続した第2金属細線MW2により構成されているが、第1電極11が延びる方向において第1電極11の両端部が互いに電気的に導通していれば、第1金属細線MW1および第2金属細線MW2は、第2電極21の第1金属細線MW3および第2金属細線MW4に重なる位置において、断線部を有することができる。これにより、第1電極11の第1金属細線MW1および第2金属細線MW2と、第2電極21の第1金属細線MW3および第2金属細線MW4との交差部分を視認されにくくすることができる。
【0047】
また、同様の理由から、第2電極21が延びる方向において、第2電極21の両端部が互いに電気的に導通していれば、第2電極21の第1金属細線MW3および第2金属細線MW4は、第1電極11の第1金属細線MW1および第2金属細線MW2に重なる位置において、断線部を有することができる。
【0048】
実施の形態2
実施の形態1において、第1電極層6Aと第2電極層6Bは、いずれも透明絶縁基板5に対して視認側すなわちカバーパネル2側に配置されているが、第1電極層6Aと第2電極層6Bの配置位置は、これに限定されない。
【0049】
図9に本発明の実施の形態3におけるタッチパネル41の構成を示す。
タッチパネル41は、表面41Aと裏面41Bを有しており、裏面41B側に表示モジュール8が配置された状態で使用される。タッチパネル41の表面41Aは、タッチ検出面であり、タッチパネル41の観察者にとっては視認側となる。
【0050】
図9に示すように、タッチパネル41は、視認側に配置されたカバーパネル2と、視認側とは反対側において、接着剤によりカバーパネル2に接合されたタッチパネル用電極部材42とを有している。タッチパネル用電極部材42は、透明絶縁部材43と、透明絶縁部材43の視認側の面43Aに形成された第1電極層6Aと、透明絶縁部材43の面43Aとは反対側の面43Bに形成された第2電極層6Bを有している。透明絶縁部材43は、第1電極層6Aおよび第2電極層6Bを支持する基板として機能しており、透明絶縁部材43としては、樹脂基板またはガラス基板等が用いられる。また、図9に示すように、平坦化および第1電極層6Aを保護する目的で第1電極層6A上に透明絶縁部材7Aが配置されていてもよい。また、第2電極層6Bを保護する目的で第2電極層6B上に透明絶縁部材7Bが配置されていてもよい。
【0051】
このように、透明絶縁部材43の一方の面43A側に第1電極層6Aが配置され、透明絶縁部材43の他方の面43B側に第2電極層6Bが配置されている場合であっても、実施の形態1のタッチパネル用電極部材3のように、透明絶縁基板5の一方の面側に第1電極層6Aと第2電極層6Bの双方が配置されている場合と同様にして、タッチパネル用電極部材3が画像表示装置9に使用される際に発生するモアレを低減することができる。
【0052】
実施の形態3
実施の形態1のタッチパネル用電極部材3において、第1電極層6Aと第2電極層6Bは、透明絶縁基板5に支持されているが、第1電極層6Aと第2電極層6Bがカバーパネル2に支持されるようにタッチパネル用電極部材が構成されていてもよい。
【0053】
図10に、本発明の実施の形態4に係るタッチパネル用電極部材51の構成を示す。
タッチパネル用電極部材51は、表面51Aと裏面51Bを有しており、裏面51B側に表示モジュール8が配置された状態で使用される。タッチパネル用電極部材51の表面51Aは、タッチ検出面であり、タッチパネル用電極部材51の観察者にとっては視認側となる。
【0054】
図10に示すように、タッチパネル用電極部材51は、カバーパネル2と、カバーパネル2の視認側とは反対側の面2B上に形成された第1電極層6Aと、第1電極層6A上に形成された透明絶縁部材7Aと、透明絶縁部材7A上に形成された第2電極層6Bと、第2電極層6B上に形成された透明絶縁部材7Bとを有している。また、カバーパネル2の視認側の面2Aは外部に開放されている。このように、実施の形態4におけるカバーパネル2は、第1電極層6Aを支持する基板として機能しており、カバーパネル2として、例えば、ガラス基板等が用いられる。タッチパネル用電極部材51は、カバーパネル2を有しており、タッチパネルとして使用されることができる。
【0055】
このように、透明絶縁基板5を有さずに、カバーパネル2上に第1電極層6Aが形成されている場合であっても、実施の形態1のタッチパネル用電極部材3のように、透明絶縁基板5の一方の面側に第1電極層6Aと第2電極層6Bの双方が配置されている場合と同様にして、タッチパネル用電極部材3が画像表示装置9に使用される際に発生するモアレを低減することができる。
【0056】
以下、実施の形態1のタッチパネル用電極部材3を構成する各部材について説明する。なお、実施の形態2のタッチパネル用電極部材42、実施の形態3のタッチパネル用電極部材51を構成する各部材についても、実施の形態1のタッチパネル用電極部材3を構成する各部材に準ずるものとする。
【0057】
<透明絶縁部材>
透明絶縁部材7Aおよび7Bを構成する材料は、透明で電気絶縁性を有し、第1電極層6Aと第2電極層6Bとを絶縁することができれば、特に限定されるものではないが、例えば、絶縁層また後述する透明絶縁基板が用いられる。絶縁層を構成する材料として、例えば、二酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミ等の無機膜、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等を使用することができる。絶縁層としては、有機膜であることが好ましく、特にアクリル樹脂が好ましい。透明絶縁部材の厚みは、例えば、0.05μm~700.00μmが好ましく、0.10μm~100.00μmがより好ましい。特に透明絶縁部材が有機膜の絶縁層の場合、厚みは、1.00μm~10.00μmが好ましく、1.00μm~3.00μmであることがより好ましい。
【0058】
<透明絶縁基板>
透明絶縁基板5は、透明で電気絶縁性を有し、第1電極層6Aおよび第2電極層6Bを支持することができれば、特に限定されるものではないが、例えば、樹脂基板またはガラス基板等が用いられる。より具体的に、透明絶縁基板5を構成する材料として、例えば、ガラス、強化ガラス、無アルカリガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET:polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(PEN:polyethylene naphthalate)、シクロオレフィンポリマー(COP:cyclo-olefin polymer)、環状オレフィン・コポリマー(COC:cyclic olefin copolymer)、ポリカーボネート(PC:polycarbonate)、アクリル樹脂、ポリエチレン(PE:polyethylene)、ポリプロピレン(PP:polypropylene)、ポリスチレン(PS:polystylene)、ポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC:polyvinylidene chloride)、トリアセチルセルロース(TAC:cellulose triacetate)等を使用することができる。透明絶縁基板5の厚みは、例えば、20μm~1100μmが好ましく、20μm~500μmがより好ましい。特に、PETのような有機樹脂基板の場合は、厚み20μm~200μmであることが好ましく、30μm~100μmであることがより好ましい。
【0059】
透明絶縁基板5の全光線透過率は、40%~100%であることが好ましい。全光透過率は、例えば、JIS K 7375:2008に規定される「プラスチック--全光線透過率および全光線反射率の求め方」を用いて測定されるものである。
【0060】
透明絶縁基板5の好適態様の1つとしては、大気圧プラズマ処理、コロナ放電処理および紫外線照射処理からなる群から選択される少なくとも1つの処理が施された処理済基板が挙げられる。上述の処理が施されることにより、処理された透明絶縁基板5の表面にOH基等の親水性基が導入され、透明絶縁基板5と、第1電極層6Aとの密着性が向上する。また、上述の処理の中でも、第1電極層6Aおよび第2電極層6Bとの密着性がより向上する点で、大気圧プラズマ処理が好ましい。
【0061】
<下塗り層>
透明絶縁基板5と第2電極層6Bとの密着性を向上させるために、透明絶縁基板5と第2電極層6Bとの間に下塗り層を配置することもできる。この下塗り層は、高分子を含んでおり、透明絶縁基板5と第2電極層6Bとの密着性がより向上する。
【0062】
下塗り層の形成方法は特に限定されるものではないが、例えば、高分子を含む下塗り層形成用組成物を基板上に塗布して、必要に応じて加熱処理を施す方法が挙げられる。また、高分子を含む下塗り層形成用組成物として、ゼラチン、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、無機または高分子の微粒子を含むアクリル・スチレン系ラテックス等を使用してもよい。
【0063】
なお、必要に応じて、タッチパネル用電極部材3は、透明絶縁基板5と第2電極層6Bとの間に、他の層として、上述の下塗り層以外に、例えば、屈折率調整層を備えていてもよい。屈折率調整層として、例えば、屈折率を調整する酸化ジルコニウム等の金属酸化物の粒子が添加された有機層が使用できる。
【0064】
<金属細線>
第1電極11の第1金属細線MW1および第2金属細線MW2と、第2電極21の第1金属細線MW3および第2金属細線MW4の厚みは、特に限定されるものではないが、0.01μm~10.00μmが好ましく、2.00μm以下であることがより好ましく、0.02μm~1.00μmであることが特に好ましく、0.02μm~0.60μmであることが最も好ましい。これにより、第1電極11および第2電極21の耐久性の向上を比較的容易に実現することができる。
【0065】
第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4は、金属または合金を形成材料とし、例えば、銅、アルミニウムまたは銀から形成することができる。第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4には、銅が含まれることが好ましいが、銅以外の金属、例えば、金、銀等が含まれていてもよい。また、第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4は、メッシュパターンの形成に好適な、金属銀およびゼラチンまたはアクリル・スチレン系ラテックス等の高分子バインダーが含有されたものでもよい。その他の好ましいものとして、アルミニウム、銀、モリブデン、チタンの金属およびその合金である。また、これらの積層構造であってもよく、例えば、モリブデン/銅/モリブデン、モリブデン/アルミニウム/モリブデン等の積層構造の金属細線が使用できる。
【0066】
さらに、第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4は、例えば、金属酸化物粒子、銀ペーストおよびは銅ペースト等の金属ペースト、並びに銀ナノワイヤおよび銅ナノワイヤ等の金属ナノワイヤ粒子を含むものであってもよい。
第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4の視認性を向上させるために、少なくとも第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4の視認側に黒化層を形成してもよい。黒化層としては、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属硫化物等が使用され、代表的には、酸窒化銅、窒化銅、酸化銅、酸化モリブデン等が使用できる。
【0067】
次に、第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4の形成方法について説明する。これらの第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4の形成方法として、例えば、スパッタ法、めっき法、銀塩法および印刷法等が適宜利用可能である。
スパッタ法による第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4の形成方法について説明する。まず、スパッタにより、銅箔層を形成し、フォトリソグラフィー法により銅箔層から銅配線を形成することにより、第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4を形成することができる。なお、スパッタの代わりに、いわゆる蒸着により銅箔層を形成することもできる。銅箔層は、スパッタ銅箔または蒸着銅箔以外にも、電解銅箔が利用可能である。より具体的には、特開2014-29614号公報に記載の銅配線を形成する工程を利用することができる。
【0068】
めっき法による第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4の形成方法について説明する。例えば、第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4は、無電解めっき下地層に無電解めっきを施すことにより下地層上に形成される金属めっき膜を用いて構成することができる。この場合、第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4は、少なくとも金属微粒子を含有する触媒インクを基材上にパターン状に形成した後に、基材を無電解めっき浴に浸漬し、金属めっき膜を形成することにより形成される。より具体的には、特開2014-159620号公報に記載の金属被膜基材の製造方法を利用することができる。
【0069】
また、第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4は、少なくとも金属触媒前駆体と相互作用し得る官能基を有する樹脂組成物を基材上にパターン状に形成した後、触媒または触媒前駆体を付与し、基材を無電解めっき浴に浸漬し、金属めっき膜を形成することにより形成される。より具体的には、特開2012-144761号公報に記載の金属被膜基材の製造方法を応用することができる。
【0070】
銀塩法による第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4の形成方法について説明する。まず、ハロゲン化銀が含まれる銀塩乳剤層に、第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4となる露光パターンを用いて露光処理を施し、その後現像処理を行うことで、第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4を形成することができる。より具体的には、特開2012-6377号公報、特開2014-112512号公報、特開2014-209332号公報、特開2015-22397号公報、特開2016-192200号公報および国際公開第2016/157585号に記載の金属細線の製造方法を利用することができる。
【0071】
印刷法による第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4の形成方法について説明する。まず、導電性粉末を含有する導電性ペーストを第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4と同じパターンとなるように基板に塗布し、その後、加熱処理を施すことにより第1金属細線MW1、MW3および第2金属細線MW2、MW4を形成することができる。導電性ペーストを用いたパターン形成は、例えば、インクジェット法またはスクリーン印刷法によりなされる。導電性ペーストとしては、より具体的には、特開2011-28985号公報に記載の導電性ペーストを利用することができる。
【0072】
<カバーパネル>
カバーパネル2の材質としては、強化ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA:polymethyl methacrylate)等を使用することができ、カバーパネル2の厚みは0.1mm~1.5mmが好ましい。
<接着剤>
カバーパネル2とタッチパネル用電極部材3とを互いに接着させる接着剤4としては、光学透明粘着シート(OCA:Optical Clear Adhesive)または光学透明粘着樹脂(OCR:Optical Clear Resin)を使用することができ、好ましい膜厚は、10μm以上200μm以下である。光学透明粘着シートとしては、例えば、3M社製の8146シリーズの使用が可能である。
【実施例0073】
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順は、本発明の主旨を逸脱しない限り適宜変更することができ、本発明の範囲は、以下の実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0074】
<実施例1>
まず、透明絶縁基板として、厚み100.0μmのPETフィルムを準備した。
【0075】
次に、PETフィルム上にアクリル樹脂で下塗り層を形成した。下塗り層の厚みは10.0μmであった。
【0076】
次に、下塗り層上にパターニングされた第2電極層を構成した。まず、下塗り層上に、モリブデンを厚み20nm、銅を厚み300nm、モリブデンを20nmとなるよう、順次スパッタにて成膜して金属層を得た。
【0077】
次に、上記金属層上にレジスト組成物を塗布し、プリベークし、その後、パターン露光してアルカリ現像した。その後、ポストベークして、図2に示す複数の第2電極21、複数の第2パッド22、複数の第2周辺配線23、複数の第2外部接続端子24に対応するパターンを有するレジスト膜を形成した。その後、次に、リン酸二水素アンモニウム10質量%、酢酸アンモニウム10質量%、過酸化水素6質量%、および、残部が水で調合されたエッチング液(pH(水素イオン指数)5.23)を用いて、上記金属層をエッチングし、その後、レジスト膜を剥離液で剥離した。これにより、パターニングされた第2電極層を形成した。
【0078】
形成された第2電極層は、図5に示す複数の第2単位メッシュパターンMP2を有していた。また、第2電極層における第2電極21の第1金属細線MW3および第2金属細線MW4の線幅は5.0μm、厚みは0.34μmであった。
【0079】
次に、第2電極層を覆うように、アクリル樹脂からなる厚み3.0μmの透明絶縁部材を形成した。次に、この透明絶縁部材上にスパッタ法を用いて、モリブデン/銅/モリブデンからなる金属層を形成した。次に、レジスト塗布、パターン露光、現像、エッチング、および、レジスト剥離の工程を行うことにより、図2に示す第1電極11、第1パッド12、第1周辺配線13、第1外部接続端子14を有するパターニングされた第1電極層を形成した。
【0080】
形成された第1電極層は、図3に示す複数の第1単位メッシュパターンMP1を有していた。また、第1電極層における第1電極11の第1金属細線MW1および第2金属細線MW2の線幅は5.0μm、厚みは0.34μmであった。
【0081】
最後に、第1電極層を保護する目的で、第1電極層を覆うように、アクリル樹脂からなる厚み3.0μmの透明絶縁部材を形成した。このようにして、実施例1のタッチパネル用電極部材を得た。
なお、第1周辺配線13、第1外部接続端子14、第2周辺配線23、第2外部接続端子24を覆い隠すために、第1電極層を覆う透明絶縁部材上の周辺領域に対応する部分に、厚み1.5μmの不透明な加飾層を形成してもよい。
【0082】
このようにして得られたタッチパネル用電極部材は、図7に示す複数の第3単位メッシュパターンMP3を有しており、第1方向D1に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C1およびC2を結ぶ直線L1と第1方向D1との交差角度B1、および、第2方向D2に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C3およびC4を結ぶ直線L3と第2方向D2との交差角度B2は、1.4度であった。
【0083】
<実施例2>
交点CP1、CP2およびCP3のサイズを実施例1よりも大きくすることにより、第1方向D1に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C1およびC2を結ぶ直線L1と第1方向D1との交差角度B1、および、第2方向D2に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C3およびC4を結ぶ直線L3と第2方向D2との交差角度B2を2.9度とした以外は、実施例1と同様に、実施例2のタッチパネル用電極部材を作製した。
【0084】
<実施例3>
交点CP1、CP2およびCP3のサイズを実施例1よりも大きくすることにより、第1方向D1に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C1およびC2を結ぶ直線L1と第1方向D1との交差角度B1、および、第2方向D2に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C3およびC4を結ぶ直線L3と第2方向D2との交差角度B2を2.7度とした以外は、実施例1と同様に、実施例2のタッチパネル用電極部材を作製した。
【0085】
<実施例4>
交点CP1、CP2およびCP3のサイズを実施例1よりも大きくすることにより、第1方向D1に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C1およびC2を結ぶ直線L1と第1方向D1との交差角度B1、および、第2方向D2に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C3およびC4を結ぶ直線L3と第2方向D2との交差角度B2を2.2度とした以外は、実施例1と同様に、実施例2のタッチパネル用電極部材を作製した。
【0086】
<実施例5>
交点CP1、CP2およびCP3のサイズを実施例1よりも小さくすることにより、第1方向D1に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C1およびC2を結ぶ直線L1と第1方向D1との交差角度B1、および、第2方向D2に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C3およびC4を結ぶ直線L3と第2方向D2との交差角度B2を0.7度とした以外は、実施例1と同様に、実施例2のタッチパネル用電極部材を作製した。
【0087】
<実施例6>
交点CP1、CP2およびCP3のサイズを実施例1よりも小さくすることにより、第1方向D1に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C1およびC2を結ぶ直線L1と第1方向D1との交差角度B1、および、第2方向D2に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C3およびC4を結ぶ直線L3と第2方向D2との交差角度B2を0.3度とした以外は、実施例1と同様に、実施例2のタッチパネル用電極部材を作製した。
【0088】
<実施例7>
交点CP1、CP2およびCP3のサイズを実施例1よりも小さくすることにより、第1方向D1に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C1およびC2を結ぶ直線L1と第1方向D1との交差角度B1、および、第2方向D2に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C3およびC4を結ぶ直線L3と第2方向D2との交差角度B2を0.1度とした以外は、実施例1と同様に、実施例2のタッチパネル用電極部材を作製した。
【0089】
<実施例8>
交点CP1、CP2およびCP3のサイズを実施例1よりも大きくすることにより、第1方向D1に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C1およびC2を結ぶ直線L1と第1方向D1との交差角度B1、および、第2方向D2に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C3およびC4を結ぶ直線L3と第2方向D2との交差角度B2を3.0度とした以外は、実施例1と同様に、実施例8のタッチパネル用電極部材を作製した。
【0090】
<比較例1>
複数の第3単位メッシュパターンMP3が第1方向D1および第2方向D2に沿って規則正しく配列する以外は、実施例1と同様に、比較例1のタッチパネル用電極部材を作製した。比較例1では、第1方向D1に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C1およびC2を結ぶ直線L1と第1方向D1との交差角度B1、および、第2方向D2に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C3およびC4を結ぶ直線L3と第2方向D2との交差角度B2は、いずれも0.0度である。
【0091】
このようにして作製した実施例1~実施例8および比較例1のタッチパネル用電極部材に対して以下に説明するモアレ評価を行った。
<モアレ評価>
液晶ディスプレイと、その液晶ディスプレイにおける画像の表示を制御するためのコントローラとを備えた液晶表示モジュール上に、実施例1~実施例8および比較例1のタッチパネル用電極部材を配置した。次に、液晶表示モジュールにおける液晶ディスプレイの全面を緑色に点灯させた状態で、モアレ評価の評価者が液晶表示モジュール上に配置されたタッチパネル用電極部材を観察して、モアレが視認されるか否かを評価した。評価者は20人であり、モアレ評価の基準は、以下の通りとした。
「A」:20人中、1人もモアレを認識しなかった。
「B」:20人中、1人以上、3人以下がモアレを認識した。
「C」:20人中、4人以上、7人以下がモアレを認識した。
「D」:20人中、8人以上、9人以下がモアレを認識した。
「E」:20人中、10人以上がモアレを認識した。
なお、評価「E」は、実用上問題があるレベルであり、評価「D」以上が実用上問題がないレベル、評価「C」はより良いレベル、評価「B」は優れたレベル、評価「A」はとても優れたレベルである。
【0092】
実施例1~実施例8、比較例1に対するモアレ評価の結果を、表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
表1に示すように、実施例1~実施例8は、モアレ評価がいずれも「C」以上であり、実用上問題がないレベルにまでモアレを低減することができた。具体的には、実施例1、4および5は、モアレ評価が「A」で特に優れ、実施例3および実施例6はモアレ評価が「B」であり、実施例2および7はモアレ評価が「C」であり、実施例8はモアレ評価が「D」であった。
【0095】
また、比較例1は、モアレ評価が「E」であった。
比較例1のタッチパネル用電極部材は、複数の第3単位メッシュパターンMP3が第1方向D1および第2方向D2に沿って規則正しく配列されているため、複数の第3単位メッシュパターンMP3と液晶表示モジュールの規則正しい画素パターンとが互いに干渉しやすく、モアレが視認されやすいと考えられる。
【0096】
モアレ評価の結果から、第1方向D1に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C1およびC2を結ぶ直線L1と第1方向D1との交差角度B1、および、第2方向D2に隣接する2つの第3単位メッシュパターンMP3のそれぞれの中心点C3およびC4を結ぶ直線L3と第2方向D2との交差角度B2が、0.1度以上2.9度以下であることが好ましく、0.3度以上2.7度以下であることがより好ましく、0.7度以上2.2度以下であることがさらに好ましい。交差角度B1、B2がこれらの範囲にあることにより、モアレが視認されにくくなることがわかる。
【符号の説明】
【0097】
1 タッチパネル、1A、41A,51A 表面、1B,41B, 裏面、2 カバーパネル、2A,2B,43A,43B 面、3,42 タッチパネル用電極部材、4,4A 接着剤、5 透明絶縁基板、6A 第1電極層、6B 第2電極層、7A,7B、43 透明絶縁部材、8 表示モジュール、9 画像表示装置、11 第1電極、12 第1パッド、13 第1周辺配線、14 第1外部接続端子、21 第2電極、22 第2パッド、23 第2周辺配線、24 第2外部接続端子、B1,B2 交差角度、BP1,BP3 第1屈曲部、BP2,BP4 第2屈曲部、C1,C2,C3,C4 中心点、CP1,CP2,CP3 交点、D1 第1方向、D2 第2方向、D3,D4 方向、K1 長さ、L1,L2,L3,L4 直線、MP1 第1単位メッシュパターン、MP2 第2単位メッシュパターン、MP3 第3単位メッシュパターン、MW1,MW3 第1金属細線、MW2,MW4 第2金属細線、R 交差領域、S1 透過領域、S2 周辺領域、SP1,SP3 第1辺部材、SP2,SP4 第2辺部材、W 線幅。
図1
図2
図3
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図10