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特開2022-107506異種溶媒による電位差を用いた発電システム、異種溶媒による電位差を用いた発電方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107506
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】異種溶媒による電位差を用いた発電システム、異種溶媒による電位差を用いた発電方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20220713BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20220713BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20220713BHJP
【FI】
H01M8/18
H02N11/00 Z
H01M8/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178995
(22)【出願日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2021002412
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】松井 陽平
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 誠
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA10
5H126BB10
5H126EE31
5H126GG11
5H126GG17
5H126JJ08
5H126RR00
5H126RR03
5H127AA10
5H127AC04
5H127BA01
5H127BA57
5H127BB03
5H127BB12
5H127BB37
(57)【要約】
【課題】電力の安定供給と二酸化炭素排出量の削減とを両立させる。
【解決手段】負電極3と正電極4の電解液の溶媒の組成差により形成される電位差を用いて発電を行い、負電極3と正電極4の電解液の溶媒を管理することで、二酸化炭素の排出を無くして発電を維持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の溶媒の電解液が収容され、一方の電極を有し活物質が電極反応する第1槽と、
前記第1槽に収容された電解液と異なる、第2の溶媒の電解液が収容され、他方の電極を有し、活物質が電極反応する第2槽とを備えた
ことを特徴とする異種溶媒による電位差を用いた発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、
前記第1槽での活物質による電極反応、前記第2槽での活物質による電極反応が、同一の酸化還元対による逆反応である
ことを特徴とする異種溶媒による電位差を用いた発電システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、
前記第1の溶媒と前記第2の溶媒が、同じ物質を少なくとも1種類含む
ことを特徴とする異種溶媒による電位差を用いた発電システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、
前記第1の溶媒、前記第2の溶媒の物質は、水、エタノール、メタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アセトン、ピリジン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、炭酸プロピレン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドンの少なくとも一つを含む
ことを特徴とする異種溶媒による電位差を用いた発電システム。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、
前記第1の溶媒、前記第2の溶媒の少なくともいずれかに、1atmで融点が200℃以下の塩が用いられる
ことを特徴とする異種溶媒による電位差を用いた発電システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、
前記第1槽、前記第2槽の内部に、外部から電解液を供給し、活物質が電極反応した後の電解液を前記第1槽、前記第2槽の外部に排出する、供給排出手段を備えた
ことを特徴とする異種溶媒による電位差を用いた発電システム。
【請求項7】
請求項6に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、
前記第1の溶媒、前記第2の溶媒は、溶媒A及び溶媒Bの混合物であり、
前記第1の溶媒は、前記第2の溶媒より多量の溶媒Bを含み、
前記供給排出手段は、
前記溶媒A及び前記溶媒Bからなる前記第1の溶媒の電解液を外部から前記第1槽に供給し、活物質が電極反応した後の電解液を前記第1槽から排出し、排出された電解液から一部もしくは全部の前記溶媒Bを分離回収し、一部もしくは全部の前記溶媒Bが分離された後の電解液を前記第2槽に供給し、活物質が前記第1槽での前記電極反応と逆の電極反応をした後の電解液を外部に排出し、排出された電解液に対し分離回収した前記溶媒Bを再混合し、前記溶媒Bが再混合された後の電解液を前記第1槽に供給する
ことを特徴とする異種溶媒による電位差を用いた発電システム。
【請求項8】
請求項7に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、
前記第1槽から排出された電解液から前記溶媒Bを分離回収し、前記溶媒Bが分離された後の電解液を前記第2槽に供給する手段として、第2の電解液再生手段を有し、
前記第2槽から排出された電解液に対し、前記第1槽から排出された電解液から分離回収した前記溶媒Bを再混合し、前記溶媒Bが再混合された後の電解液を前記第1槽に供給する手段として、第1の電解液再生手段を有する
ことを特徴とする異種溶媒による電位差を用いた発電システム。
【請求項9】
請求項8に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、
前記第1の電解液再生手段、前記第2の電解液再生手段における前記溶媒Bの分離、前記溶媒Bの再混合は、熱エネルギーを用いた手段で構成される
ことを特徴とする異種溶媒による電位差を用いた発電システム。
【請求項10】
請求項9に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、
前記熱エネルギーを用いた手段は、
前記第1槽から排出された電解液を加熱して前記溶媒Bを蒸発させると共に、前記溶媒Bが分離された後の電解液を前記第2槽に供給する蒸発手段と、
前記蒸発手段で蒸発させた前記溶媒Bを凝縮し、前記第2槽から排出された電解液に対し前記溶媒Bを再混合して前記第1槽に供給する凝縮手段とを有する
ことを特徴とする異種溶媒による電位差を用いた発電システム。
【請求項11】
請求項9もしくは請求項10に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、
前記供給排出手段における電解液の流路の内部の圧力を調整する内圧調整手段を備えた
ことを特徴とする異種溶媒による電位差を用いた発電システム。
【請求項12】
請求項8に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、
前記第1の電解液再生手段、前記第2の電解液再生手段における前記溶媒Bの分離、前記溶媒Bの再混合は、機械的エネルギーを用いた手段で構成される
ことを特徴とする異種溶媒による電位差を用いた発電システム。
【請求項13】
請求項12に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、
前記機械的エネルギーを用いた手段は、
前記第1槽から排出された電解液を加圧すると共に分離手段を透過させて前記溶媒Bを分離し、前記溶媒Bが分離された後の電解液を前記第2槽に供給する分離供給手段と、
前記第2槽から排出された電解液に対し前記分離手段を透過した前記溶媒Bを再混合して前記第1槽に供給する混合供給手段とを有する
ことを特徴とする異種溶媒による電位差を用いた発電システム。
【請求項14】
正極・負極間の電解液の溶媒の組成差により形成される電位差を用いて発電を行うことを特徴とする異種溶媒による電位差を用いた発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極間の溶媒組成差によって形成される電位差を用いることを特徴とする異種溶媒による電位差を用いた発電システム、異種溶媒による電位差を用いた発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素排出量の削減は地球規模で取り組むべき課題であり、発電の分野では、化石燃料依存からの脱却が求められるようになってきている。例えば、再生可能エネルギー発電設備や地熱などの熱エネルギーを用いた発電設備を併用する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
再生可能エネルギー発電設備等を併用することで、二酸化炭素の排出量が削減される状況になってきている。発電の分野では、電力の安定供給と二酸化炭素排出量の削減とを両立させることが課題として取り上げられているのが実情であり、化石燃料に依存せずに安定して電力供給ができる技術の構築が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-167798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、電力の安定供給と二酸化炭素排出量の削減とを両立させることができる、電極間の溶媒組成差を利用した発電システム、発電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の異種溶媒による電位差を用いた発電システムは、第1の溶媒の電解液が収容され、一方の電極を有し活物質が電極反応する第1槽と、前記第1槽に収容された電解液と異なる、第2の溶媒の電解液が収容され、他方の電極を有し、活物質が電極反応する第2槽とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項1に係る本発明では、電極反応する活物質に応じて、第1槽の電解液である第1の溶媒と、第2槽の電解液である第2の溶媒をそれぞれ選定することで、第1の溶媒、第2の溶媒が同一の組成である場合と比較して、電極間に形成される電位差を大きくすることが可能となる。また、第1槽、第2槽の間は、第1槽の電解液と第2槽の電解液の混合の抑制、イオン伝導性の確保の両立を目的とし、固体電解質、ゲル状の電解質、多孔体等で仕切ることができる。
【0008】
第1の溶媒、第2の溶媒は、それぞれが単一の物質からなる溶媒であっても良く、それぞれが複数の物質で構成される混合溶媒であっても良い。また、前記第1槽、第2槽での電極反応は、異なる酸化還元対による反応であっても、同一の酸化還元対による逆反応であっても良い。
【0009】
そして、請求項2に係る本発明の異種溶媒による電位差を用いた発電システムは、請求項1に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、前記第1槽での活物質による電極反応、前記第2槽での活物質による電極反応が、同一の酸化還元対による逆反応であることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る本発明では、第1槽での電極反応、第2槽での電極反応が同一の酸化還元対による逆反応である。例えば、ヘキサシアノ鉄(II)酸イオン([Fe(CN)6]4-)、ヘキサシアノ鉄(III)酸イオン([Fe(CN)]3-)を活物質として用いること
ができる。
【0011】
また、請求項3に係る本発明の異種溶媒による電位差を用いた発電システムは、請求項1または請求項2に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、前記第1の溶媒と前記第2の溶媒が、同じ物質を少なくとも1種類含むことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る本発明では、第1の溶媒として溶媒Aと溶媒Bの混合溶媒、第2の溶媒として溶媒Aを用いる場合が考えられる。また、第1の溶媒及び第2の溶媒がいずれも溶媒Aと溶媒Bの混合溶媒であり、溶媒Aと溶媒Bの混合割合が第1の溶媒と第2の溶媒とで異なる場合が考えられる。例えば、溶媒Aとして水を用いることができ、溶媒Bとしてアセトンを用いることができる。
【0013】
また、請求項4に係る本発明の異種溶媒による電位差を用いた発電システムは、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、前記第1の溶媒、前記第2の溶媒の物質は、水、エタノール、メタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アセトン、ピリジン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、炭酸プロピレン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドンの少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る本発明では、電気化学デバイスにおいて、電極反応する活物質の種類に応じて、第1の溶媒、第2の溶媒を特定して適宜選択することができる。
【0015】
また、請求項5に係る本発明の異種溶媒による電位差を用いた発電システムは、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、前記第1の溶媒、前記第2の溶媒の少なくともいずれかに、1atmで融点が200℃以下の塩が用いられることを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る本発明では、電極反応する活物質の種類に応じて、第1の溶媒、第2の溶媒を構成する物質として、適宜、1atmで融点が200℃以下の塩を用いることができる。
【0017】
また、請求項6に係る本発明の異種溶媒による電位差を用いた発電システムは、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、前記第1槽、前記第2槽の内部に、外部から電解液を供給し、(一部もしくは全部の)活物質が電極反応した後の電解液を前記第1槽、前記第2槽の外部に排出する、供給排出手段を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項6に係る本発明では、外部から未使用の電解液が連続的に供給されることで、第1槽と第2槽の溶媒の組成差が保持されることで、発電システムの電位差が保持され、連続的に発電を行うことができる。
【0019】
また、請求項7に係る本発明の異種溶媒による電位差を用いた発電システムは、請求項6に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、前記第1の溶媒、前記第2の溶媒は、溶媒A及び溶媒Bの混合物であり、前記第1の溶媒は、前記第2の溶媒より多量の溶媒Bを含み、前記供給排出手段は、前記溶媒A及び前記溶媒Bからなる前記第1の溶媒の電解液を外部から前記第1槽に供給し、活物質が電極反応した後の電解液を前記第1槽から排出し、排出された電解液から一部もしくは全部の前記溶媒Bを分離回収し、一部もしくは全部の前記溶媒Bが分離された後の電解液を前記第2槽に供給し、活物質が前記第1槽での前記電極反応と逆の電極反応をした後の電解液を外部に排出し、排出された電解液に対し分離回収した前記溶媒Bを再混合し、前記溶媒Bが再混合された後の電解液を前記第1槽に供給することを特徴とする。
【0020】
請求項7に係る本発明では、供給排出手段として、一方の電極での反応で使用した電解液を他方の電極での反応で再使用できるようにする電解液再生手段を備えている。具体的には、第1槽での電極反応に使用した後の電解液が、溶媒Bの一部もしくは全部を分離した後に第2槽での電極反応に使用される。また、第2槽での電極反応に使用された後の電解液が、溶媒Bを再混合した後に第1槽での電極反応に再び使用される。溶媒Bの分離は、例えば、電解液を溶媒Bの沸点以上に昇温するために必要な熱エネルギー、溶媒Bの気化に必要な熱エネルギーを外部から投入することで行うことができる。また、電解液を加圧すると共に圧力差により溶媒Bを分離する機械的エネルギーを外部から投入することで行うことができる。
【0021】
即ち、請求項7に係る異種溶媒による電位差を用いた発電システムでは、第2槽での電極反応は第1槽での電極反応の逆反応であるため、全体として化学物質の消費がなく、閉じた流路の中を電解液が循環しながら、連続的に発電が行われる。また、溶媒Bの分離や再混合を終えた状態で電解液を保管しておくことで、エネルギーの貯蔵を行うこともできるため、発電量を要求に応じて制御することができる。
【0022】
本発電システムは、溶媒Bの分離に必要な熱エネルギーや機械的エネルギーを投入することで可能となる。したがって、熱エネルギーの投入においては廃熱、地熱、温泉熱、太陽熱などの熱源を利用し、機械的エネルギーの投入においては、風力・水力・波力・潮力などの再生可能エネルギーを利用することで、二酸化炭素を排出することなく電力の安定供給が可能となる。
【0023】
また、請求項8に係る本発明の異種溶媒による電位差を用いた発電システムは、請求項7に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、前記第1槽から排出された電解液から前記溶媒Bを分離回収し、前記溶媒Bが分離された後の電解液を前記第2槽に供給する手段として、第2の電解液再生手段を有し、前記第2槽から排出された電解液に対し、前記第1槽から排出された電解液から分離回収した前記溶媒Bを再混合し、前記溶媒Bが再混合された後の電解液を前記第1槽に供給する手段として、第1の電解液再生手段を有することを特徴とする。
【0024】
請求項8に係る本発明では、第2の電解液再生手段により、第1槽から排出された電解液から溶媒Bが分離回収され、溶媒Bが分離された後の電解液が第2槽に供給される。そして、第1の電解液再生手段により、第2槽から排出された電解液に対し、第1槽から排出された電解液から分離回収した溶媒Bが再混合され、溶媒Bが再混合された後の電解液が第1槽に供給される。
【0025】
また、請求項9に係る本発明の異種溶媒による電位差を用いた発電システム。は、請求項8に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、前記第1の電解液再生手段、前記第2の電解液再生手段における前記溶媒Bの分離、前記溶媒Bの再混合は、熱エネルギーを用いた手段で構成されることを特徴とする。
【0026】
請求項9に係る本発明では、熱エネルギーを用いて、溶媒Bの分離、溶媒Bの再混合を行うことができる。
【0027】
また、請求項10に係る本発明の異種溶媒による電位差を用いた発電システムは、請求項9に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、前記熱エネルギーを用いた手段は、前記第1槽から排出された電解液を加熱して前記溶媒Bを蒸発させると共に、前記溶媒Bが分離された後の電解液を前記第2槽に供給する蒸発手段と、前記蒸発手段で蒸発させた前記溶媒Bを凝縮し、前記第2槽から排出された電解液に対し前記溶媒Bを再混合して前記第1槽に供給する凝縮手段とを有することを特徴とする。
【0028】
請求項10に係る本発明では、蒸発手段により、第1槽から排出された電解液が加熱されて溶媒Bが蒸発して分離され、溶媒Bが分離された後の電解液が第2槽に供給される。凝縮手段により、蒸発させた溶媒Bが凝縮され、第2槽から排出された電解液に対し、凝縮された溶媒Bが再混合され第1槽に供給される。
【0029】
また、請求項11に係る本発明の異種溶媒による電位差を用いた発電システムは、請求項9もしくは請求項10に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、前記供給排出手段における電解液の流路の内部の圧力を調整する内圧調整手段を備えたことを特徴とする。
【0030】
請求項11に係る本発明では、内圧調整手段により電解液を加圧、もしくは、減圧して溶媒の沸点を調節することができ、供給排出手段としての電解液再生手段に広い温度範囲の熱源を利用することができる。
【0031】
また、請求項12に係る本発明の異種溶媒による電位差を用いた発電システムは、請求項8に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、前記第1の電解液再生手段、前記第2の電解液再生手段における前記溶媒Bの分離、前記溶媒Bの再混合は、機械的エネルギーを用いた手段で構成されることを特徴とする。
【0032】
請求項12に係る本発明では、機械的エネルギーを用いて、溶媒Bの分離、溶媒Bの再混合を行うことができる。
【0033】
また、請求項13に係る本発明の異種溶媒による電位差を用いた発電システムは、請求項12に記載の異種溶媒による電位差を用いた発電システムにおいて、前記機械的エネルギーを用いた手段は、前記第1槽から排出された電解液を加圧すると共に分離手段を透過させて前記溶媒Bを分離し、前記溶媒Bが分離された後の電解液を前記第2槽に供給する分離供給手段と、前記第2槽から排出された電解液に対し前記分離手段を透過した前記溶媒Bを再混合して前記第1槽に供給する混合供給手段とを有することを特徴とする。
【0034】
請求項13に係る本発明では、分離供給手段により、第1槽から排出された電解液が加圧される共に分離手段に透過されて溶媒Bが分離され、溶媒Bが分離された後の電解液が(減圧されて)第2槽に供給される。そして、混合供給手段により、第2槽から排出された電解液に対し分離手段に透過された溶媒Bが再混合されて第1槽に供給される。
【0035】
上記目的を達成するための請求項14に係る本発明の異種溶媒による電位差を用いた発電方法は、正極・負極間の電解液の溶媒の組成差により形成される電位差を用いて発電を行うことを特徴とする。
【0036】
請求項14に係る本発明では、正極・負極間の電解液の溶媒の組成差により形成される電位差により発電を行うので、電力の安定供給と二酸化炭素排出量の削減とを両立させることが可能になる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の電位差を用いた発電システム、及び、異種溶媒による電位差を用いた発電方法は、電力の安定供給と二酸化炭素排出量の削減とを両立させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の発電システムの概念図である。
図2】第1槽の電解液の溶媒和構造の概念図である。
図3】第2槽の電解液の溶媒和構造の概念図である。
図4】溶媒及び活物質の分子構造の概念図である。
図5】溶媒及び活物質を表した本発明の発電システムの概念図である。
図6】起電力と溶媒Bの関係を表すグラフである。
図7】本発明の第1実施例に係る発電システムの全体構成図である。
図8】本発明の第2実施例に係る発電システムの全体構成図である。
図9】電圧の経時変化を表すグラフである。
図10】本発明の第3実施例に係る発電システムの全体構成図である。
図11】本発明の第4実施例に係る発電システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1から図6に基づいて本発明の電位差を用いた発電システムの実施の態様例を説明する。
【0040】
図1には本発明の発電システムを概念的に表した全体の構成、図2には第1槽の電解液の溶媒和構造の状態を説明する概念、図3には第2槽の電解液の溶媒和構造の状態を説明する概念、図4(a)には活物質であるヘキサシアノ鉄(II)酸イオン[Fe(CN)]4-またはヘキサシアノ鉄(III)酸イオン[Fe(CN)]3-の分子構造の概念、図4(b)には溶媒A(第1の溶媒、第2の溶媒)の一例である水(HO)の分子構造の概念、図4(c)には溶媒B(第1の溶媒)の一例であるアセトン[(CHCO]の分子構造の概念を示してある。また、図5には溶媒及び活物質を表した本発明の発電システムを概念的に表した全体の構成、図6には起電力と溶媒Bの関係を表すグラフを示してある。
【0041】
図1に示すように、第1の活物質(活物質)であるヘキサシアノ鉄(II)酸イオン[Fe(CN)]4-と溶媒A(水(HO))及び溶媒B(アセトン[(CHCO])を混合した第1の溶媒が収容される第1槽1を備えている。また、第2の活物質(活物質)であるヘキサシアノ鉄(III)酸イオン[Fe(CN)]3-と溶媒A(水(HO))からなる第2の溶媒が収容される第2槽2を備えている。第1槽1と第2槽2は、例えば、固体電解質、ゲル状の電解質、多孔体等の仕切り部材で仕切られている。
【0042】
尚、第2の溶媒は溶媒Aと溶媒Bとからなるが、溶媒Bはわずかであるため、以下、第2の溶媒は溶媒Aからなると記載する。つまり、第1の溶媒は、第2の溶媒より多量の溶媒Bを含み、溶媒Aと溶媒Bを混合したものとなっている。
【0043】
第1槽1には一方の電極として負極の電極(負電極)3が設けられ、第2槽2には他方の電極として正極の電極(正電極)4が設けられている。負電極3と正電極4は電力回路(外部回路)5に接続され、電力回路5には、第1槽1の第1の溶媒(溶媒A+溶媒B)、及び、第2槽2の第2の溶媒(溶媒A)の組成差により形成された電位差によって電流が流れる。
【0044】
尚、活物質である第1の活物質、第2の活物質は、同一の酸化還元対でも異なる酸化還元対でも適用することができる。また、第1槽1の電極と第2槽2の電極とでは、どちらが正電極(負電極)になるかは、活物質の種類、溶媒A、溶媒Bの種類などにより異なる。
【0045】
ヘキサシアノ鉄(II)酸イオン[Fe(CN)]4-またはヘキサシアノ鉄(III)酸イオン[Fe(CN)]3-を有する、溶媒A(水(HO))からなる第2の電解液(電解液Y)の状況、即ち、溶媒A(水(HO))からなる第2の溶媒に溶解したヘキサシアノ鉄(II)酸イオン[Fe(CN)]4-またはヘキサシアノ鉄(III)酸イオン[Fe(CN)]3-の溶媒和構造は、図3に示すようになっている。尚、図3に示した溶媒和構造はイメージであり、溶媒分子(水)の相互の位置関係、数、向きは任意の状態となる。
【0046】
尚、ヘキサシアノ鉄(II)酸イオン[Fe(CN)]4-またはヘキサシアノ鉄(III)酸イオン[Fe(CN)]3-の分子構造は図4(a)に示した通りであり、水(HO)の分子構造は図4(b)に示した通りであり、アセトン[(CHCO]の分子構造は図4(c)に示した通りである。
【0047】
つまり、負の電荷を有するヘキサシアノ鉄酸イオン([Fe(CN)]4-、[Fe(CN)]3-は、電子受容性が強い水(HO)の分子と強く作用し、安定した溶媒和構造を形成する。
【0048】
ヘキサシアノ鉄(II)酸イオン[Fe(CN)]4-またはヘキサシアノ鉄(III)酸イオン[Fe(CN)]3-を有する、溶媒A(水(HO))及び溶媒B(アセトン[(CHCO])を混合した第1の電解液(電解液X)の状況、即ち、溶媒A(水(HO))及び溶媒B(アセトン[(CHCO])を混合した第1の溶媒に溶解したヘキサシアノ鉄(II)酸イオン[Fe(CN)]4-またはヘキサシアノ鉄(III)酸イオン[Fe(CN)]3-の溶媒和構造は、図2に示すようになっている。尚、図2に示した溶媒和構造はイメージであり、溶媒分子(水、アセトン)の相互の位置関係、数、向きは任意の状態となる。
【0049】
つまり、異なる溶媒の混合により、水(HO)の分子による安定な溶媒和構造が変化する。例えば、水(HO)よりも電子受容性が弱いアセトン[(CHCO]を混合した場合、電荷量が大きいヘキサシアノ鉄(II)酸イオン([Fe(CN)]4-が相対的に大きな影響を受けて不安定化する。
【0050】
図1図5に示すように、第1槽1でヘキサシアノ鉄(II)酸イオン[Fe(CN)]4-が酸化反応し、ヘキサシアノ鉄(III)酸イオン[Fe(CN)]3-となる。第2槽2でヘキサシアノ鉄(III)酸イオン[Fe(CN)]3-が還元反応し、ヘキサシアノ鉄(II)酸イオン[Fe(CN)]4-となる。マイナスの電子(e-)が負電極3から正電極4に移動することで、電力回路5に電流が流れる。
【0051】
つまり、負電極3と正電極4の間で形成される電位差を用いて発電が行われる。組成が異なる第1の溶媒(溶媒Aと溶媒Bの混合物)、及び、第2の溶媒(溶媒A)を用いているので、溶媒の組成差により大きな電位差を形成させて、電力回路5で電力を生じさせることができる。
【0052】
図6に示すように、溶媒A(水(HO))及び溶媒B(アセトン[(CHCO])を混合した電解液Xにおいて、溶媒B(アセトン[(CHCO])の物質量を多くすることで、起電力が高くなることが確認されている。したがって、溶媒B(アセトン[(CHCO])の量を適宜選定することで、任意の(所望の)起電力を生じさせることができる。
【0053】
このため、活物質(ヘキサシアノ鉄(II)酸イオン[Fe(CN)]4-、ヘキサシアノ鉄(III)酸イオン[Fe(CN)]3-)を有する第1の溶媒、第2の溶媒を管理することで、二酸化炭素の排出を無くして発電を維持することができる。上述した発電システムにより、電力の安定供給と二酸化炭素排出量の削減とを両立させることが可能になる。
【0054】
尚、第1の溶媒、第2の溶媒としては、水、エタノール、メタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アセトン、ピリジン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、炭酸プロピレン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドンの少なくとも一つを含むように選択することができる。
【0055】
また、第1の溶媒、第2の溶媒を構成する物質として、適宜、1atmで融点が200℃以下の塩を用いることができる。
【0056】
図7に基づいて本発明の第1実施例を説明する。図7には本発明の第1実施例に係る発電システムの全体構成を示してある。尚、図1に示した発電システムと同一の構成部材には同一の符号を付してある。
【0057】
図7に示した発電システムは、第1槽1に溶媒と反応前の活物質からなる電解液Xが収容され、第2槽2に溶媒と反応前の活物質からなる電解液Yが収容されている。
【0058】
第1槽1には、第1タンク11からポンプ12を介して反応前の活物質を有する電解液Xが供給され、反応後の電解液Xは第1回収タンク13に収容される。一方、第2槽2には、第2タンク15からポンプ16を介して反応前の活物質を有する電解液Yが供給され、反応後の電解液Yは第2回収タンク17に収容される。図中の符号で19は、第1タンク11、第2タンク15の内部の電解液の温度を検出する温度検出手段である。
【0059】
上述した実施例の発電システムでは、負電極3、正電極4で電極反応する活物質と第1の溶媒(電解液X)、活物質と第2の溶媒(電解液Y)は、起電力が大きくなるように(所望の電位差が得られるように)適宜選定される。必ずしも、負電極3、正電極4の電極反応が同一の酸化還元対による逆反応でなくてもよい。
【0060】
図8図9に基づいて本発明の第2実施例を説明する。図8には本発明の第2実施例に係る発電システムの全体構成、図9には電圧の経時変化を示してある。尚、図1に示した発電システムと同一の構成部材には同一の符号を付してある。図8に示した発電システムは、第1槽1、第2槽2に収容される電解液の溶媒は図1に示した発電システムと同一であり、活物質も図1に示した発電システムと同一である。
【0061】
図8に示すように、活物質であるヘキサシアノ鉄(II)酸イオン[Fe(CN)]4-を有する溶媒A(水(HO))及び溶媒B(アセトン[(CHCO])を混合した電解液Xが収容される第1槽1を備えている。また、活物質であるヘキサシアノ鉄(III)酸イオン[Fe(CN)]3-を有する溶媒A(水(HO))からなる電解液Yが収容される第2槽2を備えている。
【0062】
尚、活物質であるヘキサシアノ鉄(II)酸イオン[Fe(CN)]4-、ヘキサシアノ鉄(III)酸イオン[Fe(CN)]3-の全てが反応できないこともあるので、電解液Xには[Fe(CN)]3-が一部含まれることもあり、電解液Yには[Fe(CN)]4-が一部含まれることもある。また、後述する供給排出手段における溶媒Bの分離過程で、全ての溶媒Bを分離できないこともあるので、電解液Yには溶媒Bが一部含まれることもある。
【0063】
第1槽1には負極の電極(負電極)3が設けられ、第2槽2には正極の電極(正電極)4が設けられている。負電極3と正電極4は電力回路(外部回路)5に接続され、電力回路5には、第1槽1の第1の溶媒(溶媒A+溶媒B)、及び、第2槽2の第2の溶媒(溶媒A)の組成差により生じる電位差によって電流が流れる。
【0064】
溶媒A、及び、溶媒Bからなる電解液Xの活物質が電極反応を終えた後、第1槽1から電解液Xを抽出し、溶媒Bを分離する分離手段としての蒸発器21が備えられている。蒸発器21には、溶媒A、及び、溶媒Bからなる電解液Xを加熱する高温熱交換器22が設けられ、蒸発器21では、高温熱源と熱交換される高温熱交換器22の加熱により電解液Xから溶媒Bを蒸発させて溶媒Bが分離される(熱エネルギーを用いた手段)。蒸発器21で溶媒Bが分離された電解液Xはポンプ23により、電解液Yとして第2槽2に投入される(供給排出手段:第2の電解液再生手段)。
【0065】
図中の符号で、24は蒸発器21の流入側で電解液Xを加熱する熱交換器(高温熱源との熱交換器)、25は蒸発器21の流入側の電解液Xの温度を検出する温度検出手段、26は第2槽2に投入される電解液Yの圧力を検出する圧力検出手段、27は第2槽2に投入される電解液Yの温度を検出する温度検出手段である。
【0066】
蒸発器21で分離された溶媒Bを凝縮する凝縮器31が備えられ、凝縮器31では、蒸発器21で分離された溶媒Bが低温熱源の熱交換器32で熱交換されて凝縮される。一方、第2槽2から反応後の電解液Yが排出された後に送られるミキサー33が備えられ、ミキサー33には凝縮器31で凝縮された溶媒Bが送られる。ミキサー33では、反応後の電解液Yと凝縮器31で凝縮された溶媒Bが混合され(電解液Xとされ)、第1槽1に投入される(供給排出手段:第1の電解液再生手段)。
【0067】
蒸発器21で分離された溶媒Bを凝縮器31に送る流路34には温度検出手段35、圧力検出手段36、リリーフ弁37が設けられている。また、凝縮器31には凝縮された溶媒Bの温度を検出する温度検出手段38が設けられている。また、第2槽2から抽出された反応後の電解液Yは低温熱源の熱交換器39で熱交換されてミキサー33に送られる。凝縮器31で凝縮された溶媒Bはポンプ41でミキサー33に送られ、第2槽2からの反応後の電解液Yと混合されてポンプ42で第1槽1に送られる(供給排出手段)。
【0068】
図中の符号で45はミキサー33に送られる溶媒Bの圧力を検出する圧力検出手段、46は溶媒Bの温度を検出する温度検出手段である。また、図中の符号で47は第2槽2からミキサー33に送られる反応後の電解液Yの温度を検出する温度検出手段である。また、図中の符号で48はミキサー33から第1槽1に送られる電解液X(溶媒A+溶媒B)の圧力を検出する圧力検出手段、49は電解液X(溶媒A+溶媒B)の温度を検出する温度検出手段である。
【0069】
上記構成の発電システムでは、第1槽1でヘキサシアノ鉄(II)酸イオン[Fe(CN)]4-が酸化反応し、ヘキサシアノ鉄(III)酸イオン[Fe(CN)]3-となる。また、第2槽2でヘキサシアノ鉄(III)酸イオン[Fe(CN)]3-が還元反応し、ヘキサシアノ鉄(II)酸イオン[Fe(CN)]4-となる。マイナスの電子(e-)が第1槽1から第2槽2に移動することで、電力回路5に電流が流れる。
【0070】
つまり、正極と負極の反応は同一の酸化還元対(ヘキサシアノ鉄(II)酸イオン[Fe(CN)]4-、ヘキサシアノ鉄(III)酸イオン[Fe(CN)]3-)の逆反応であり、電極間の溶媒の組成差に起因する活物質-溶媒間相互作用の違いにより電位差が生じ、各々の電極において酸化もしくは還元反応が進行する。
【0071】
第1槽1から溶媒A、及び、溶媒Bからなる反応後の電解液Xが抽出され、蒸発器21で溶媒Bが分離される。蒸発器21で溶媒Bが分離された電解液Xは、ポンプ23により、電解液Yとして第2槽2に投入される(供給排出手段:第2の電解液再生手段)。
【0072】
第2槽2から反応後の電解液Yが抽出され、ミキサー33に送られる。ミキサー33には、蒸発器21で蒸発されて凝縮器31で凝縮された溶媒Bが送られ、ミキサー33では、電解液Yと溶媒Bが混合されて電解液Xとされる。ミキサー33からの電解液Xは第1槽1に送られる(供給排出手段:第1の電解液再生手段)。
【0073】
熱エネルギーを活用して、電極反応後の電解液Xから溶媒Bを気化・分離し、電解液Yとして第2槽2に送液し、電極反応後の電解液Yに混合することで、電解液Xとして第1槽1に再度送液される。
【0074】
このため、全体として化学物質の消費がなく、溶媒Bを気化できる高温熱交換器22(高温熱源)、及び、凝縮できる熱交換器32(低温熱源)を用いることで、熱機関と同じように動作させることができ、連続的に発電を実施することが可能になる。溶媒Bとして、比較的沸点が低い物質を用いることで、100℃程度の熱源も上記高温熱源として利用することが可能となる。比較的沸点が低い物質として、例えば、アセトンが挙げられる。
【0075】
つまり、産業廃熱や地熱・温泉熱等、十分に有効利用できていない状態であった、100℃以下程度の熱源の有効利用が飛躍的に進展することになる。また、発電を行う第1槽1、第2槽2、負電極3、正電極4を有する設備と、熱回収を行って電解液を再生・循環させる設備が分かれているため、設計の自由度が高く大型発電システムへの応用が容易に可能になる。また、溶媒Bの分離や再混合を終えた状態で、電解液を保管しておくことで、エネルギーの貯蔵を行うこともでき、要求に応じた発電量に制御することができる。
【0076】
上述した発電システムは、二酸化炭素の排出を無くして発電を維持することができ、電力の安定供給と二酸化炭素排出量の削減とを両立させることが可能になる。
【0077】
上記実施例では、第1の電解液再生手段、第2の電解液再生手段により、電解液が再生される。図9に基づいて、電解液を再生した時の電圧の経時変化の一例を説明する。図9に示すように、反応が進むにつれ電圧(V)が低下し、時刻t1で電圧のしきい値V1に達する。電圧がしきい値V1に達した際に、反応後の電解液Xが蒸発器21に送られると共に、反応後の電解液Yがミキサー33に送られる。
【0078】
蒸発器21で溶媒Bが分離されてミキサー33に送られ、電解液X(溶媒A+溶媒B)が再生されて第1槽1に反応前の活物質を有する電解液Xが供給される(時刻t1から時刻t2)。蒸発器21で溶媒Bが分離された後の溶媒Aが、反応前の活物質を有する電解液Yとして第2槽2に供給される(時刻t1から時刻t2)。
【0079】
これにより、図9に示すように、時刻t2で電圧が十分に回復し、時刻t3まで所望の電圧(しきい値V1以上の起電力)が維持される。
【0080】
尚、図9では、反応に伴う放電の後に再生を実施した経時変化の一例を示したが、反応に伴う放電を実施しながら(放電と並行して)で、再生を実施することも可能である。
【0081】
図10に基づいて本発明の第3実施例を説明する。図10には本発明の第3実施例に係る電位差を用いた発電システムの全体構成を示してある。尚、図8に示した発電システムと同一の構成部材には同一の符号を付してある。
【0082】
図10に示した発電システムは、図8に示した第2実施例の発電システムに対し、流路34内(供給排出手段の閉じた流路)の圧力を調整する調圧部52(内圧調整手段)を設けた構成となっている。
【0083】
図に示すように、リリーフ弁37の上流側の流路34には三方弁51が設けられ、三方弁51には流路34内の圧力を調整する調圧部52(内圧調整手段)が接続されている。調圧部52は、例えば、シリンダ、ポンプ等が用いられ、流路34内(溶媒B)を加圧、もしくは、減圧する機器が適用される。
【0084】
調圧部52により流路34の内部(溶媒B)が加圧、もしくは、減圧される。これにより、溶媒Bの沸点を調節することができ、高温熱交換器22の熱源として、溶媒Bの調節後の沸点に対応する温度の熱源を適用することができる。また、高温熱交換器22の熱源の温度に合わせて、溶媒Bの沸点を制御することができる。従って、広い範囲の熱源を有効利用することが可能になる。
【0085】
図11に基づいて本発明の第4実施例を説明する。図11には本発明の第4実施例に係る発電システムの全体構成を示してある。尚、図1に示した発電システムと同一の構成部材には同一の符号を付してある。図11に示した発電システムは、第1槽1、第2槽2に収容される電解液の溶媒は図1に示した発電システムと同一であり、活物質も図1に示した発電システムと同一である。
【0086】
第4実施例は、第1の電解液再生手段、第2の電解液再生手段における溶媒Bの分離、溶媒Bの再混合は、機械的エネルギーを用いた手段により構成される。第4実施例は、第1槽1から排出された電解液Xを加圧すると共に分離手段(透過膜)を透過させて溶媒Bを分離し、溶媒Bが分離された後の電解液Yを第2槽2に(減圧して)供給する分離供給手段と、前記第2槽2から排出された電解液Yに対し分離手段を透過した低圧側の溶媒Bを再混合して第1槽1に供給する混合供給手段とを有している。
【0087】
図11に示すように、溶媒A及び溶媒Bを混合した電解液Xが収容される第1槽1を備えている。また、溶媒Aからなる電解液Yが収容される第2槽2を備えている。第1槽1には負極の電極(負電極)3が設けられ、第2槽2には正極の電極(正電極)4が設けられている。負電極3と正電極4は電力回路(外部回路)5に接続され、電力回路5には、第1槽1の第1の溶媒(溶媒A+溶媒B)、及び、第2槽2の第2の溶媒(溶媒A)の組成差により生じる電位差によって電流が流れる。
【0088】
溶媒A、及び、溶媒Bからなる電解液Xの活物質が電極反応を終えた後、第1槽1から電解液Xを抽出し、溶媒Bを分離する分離手段が備えられている。分離手段は、機械的エネルギーを用いた手段であり、第1槽1から抽出された電解液Xを加圧する圧縮手段61を備えている。圧縮手段61は、風力・水力・波力・潮力などの再生可能エネルギーにより駆動される。
【0089】
圧縮された電解液Xは分離槽62の高圧側の部屋62aに送られる。分離槽62には、溶媒Bだけを透過する透過膜63を介して低圧側の部屋62bが備えられている。圧縮された電解液Xが高圧側の部屋62aに送られることで、溶媒Bだけが透過膜63を透過し、溶媒Bが低圧側の部屋62bに送られて分離される(分離供給手段)。
【0090】
高圧側の部屋62aの電解液(溶媒Bが分離された電解液:電解液Y)は、減圧手段70で減圧されてポンプ23により、電解液Yとして第2槽2に投入される(供給排出手段:第2の電解液再生手段)。
【0091】
図中の符号で、64は圧縮手段61の流入側の電解液Xの温度を検出する温度検出手段、65は圧縮手段61の流入側の電解液Xの圧力を検出する圧力検出手段、66は圧縮手段61の流出側の電解液Xの温度を検出する温度検出手段、67は圧縮手段61の流出側の電解液Xの圧力を検出する圧力検出手段、68はリリーフ弁である。
【0092】
低圧側の部屋62bには、ポンプ69を介して第2槽2から排出された電解液Yが供給され、透過膜63を透過した溶媒Bが再混合される(混合供給手段)。溶媒Bが再混合されて電解液Xとされ、ポンプ42で第1槽1に送られる(供給排出手段:第1の電解液再生手段)。
【0093】
図中の符号で、71はポンプ69の流出側の電解液Yの温度を検出する温度検出手段、72はポンプ69の流出側の電解液Yの圧力を検出する圧力検出手段である。
【0094】
また、図中の符号で、75は反応後の電解液Xを貯留する貯留タンク、76は反応後の電解液Yを貯留する貯留タンク、77は再生後の電解液Xを貯留する貯留タンク、78は再生後の電解液Yを貯留する貯留タンクである。
【0095】
貯留タンク75、76に反応後の電解液を貯留することで、再生可能エネルギーにより駆動される圧縮手段61の出力変動に対して、分離槽62に送る反応後の電解液の送給を調整することができる。また、貯留タンク77、78に再生後の電解液を貯留することで、電力需要の変動に応じた出力調整を行うことができる。
【0096】
第1槽1から溶媒A、及び、溶媒Bからなる反応後の電解液Xが抽出され、圧縮手段61で加圧されて分離槽62に送られ、分離槽62で溶媒Bが分離される。溶媒Bが分離された電解液Xは、減圧手段70により減圧されて第2槽2に投入される。第2槽2から反応後の電解液Yが抽出され、分離槽62の低圧側の部屋62bに送られ溶媒Bに混合されて電解液Xとされ、電解液Xは第1槽1に送られる。機械的エネルギーを活用して、電極反応後の電解液Xから溶媒Bを分離し、溶媒Bを分離した電解液を電解液Yとして第2槽2に送液し、電極反応後の電解液Yに対し、分離された溶媒Bを混合することで、電解液は電解液Xとして第1槽1に再度送液される。
【0097】
このため、全体として化学物質の消費がなく、例えば、水力、風力、波力、潮力などの機械的な再生可能エネルギーを用いて、熱エネルギーを用いた場合と同じように、連続的に発電を実施することが可能になる。
【0098】
上述した発電システムは、二酸化炭素の排出を無くして発電を維持することができ、電力の安定供給と二酸化炭素排出量の削減とを両立させることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、二酸化炭素を排出せずに電力の安定供給が可能な発電システム、発電方法の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 第1槽
2 第2槽
3 負電極
4 正電極
5 電力回路
11 第1タンク
12、16、23、41、42、69 ポンプ
13 第1回収タンク
15 第2タンク
17 第2回収タンク
19、25、27、35、38、46、47、49、64、66、71 温度検出手段
21 蒸発器
22、24 高温熱交換器
32、39 熱交換器
26、36、45、48、65、67、72 圧力検出手段
31 凝縮器
33 ミキサー
34 流路
37、68 リリーフ弁
51 三方弁
52 調圧部
61 圧縮手段
62 分離槽
63 透過膜
70 減圧手段
75、76、77、78 貯留タンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11