IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JNC株式会社の特許一覧

特開2022-107975重合性化合物、電子部品用組成物、電子部品用材料
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107975
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】重合性化合物、電子部品用組成物、電子部品用材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/22 20060101AFI20220715BHJP
   C08G 59/30 20060101ALI20220715BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20220715BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20220715BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20220715BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20220715BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20220715BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20220715BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220715BHJP
   C07D 303/30 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C08G59/22
C08G59/30
C08G59/50
C08G59/62
C08G59/40
C08K3/22
C08K3/28
C08K3/00
C08L63/00
C07D303/30 CSP
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002711
(22)【出願日】2021-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田口 晃史
(72)【発明者】
【氏名】田村 典央
【テーマコード(参考)】
4C048
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4C048AA01
4C048BB10
4C048CC02
4C048CC03
4C048UU10
4C048XX01
4C048XX04
4J002CC032
4J002CC062
4J002CC072
4J002CD031
4J002DA017
4J002DA027
4J002DA077
4J002DA087
4J002DA097
4J002DA107
4J002DA117
4J002DD077
4J002DE077
4J002DE087
4J002DE107
4J002DE137
4J002DE147
4J002DE167
4J002DF017
4J002DJ007
4J002DK007
4J002EC049
4J002ED029
4J002ED039
4J002EF006
4J002EF126
4J002EH026
4J002EJ036
4J002EN036
4J002EN046
4J002EN066
4J002EN076
4J002EU110
4J002EU186
4J002EV016
4J002EV216
4J002FB097
4J002FD017
4J002FD030
4J002FD039
4J002FD090
4J002FD099
4J002FD150
4J002GQ00
4J002GQ05
4J036AC06
4J036DB05
4J036DB11
4J036DC03
4J036DC04
4J036DC06
4J036DC10
4J036DC15
4J036DC16
4J036DC17
4J036DC32
4J036DD02
4J036FA01
4J036FA03
4J036FA04
4J036FB08
4J036JA07
(57)【要約】
【課題】100~150℃で液晶相を発現するターフェニル骨格を有する液晶性エポキシ化合物を提供する事である。
【解決手段】式(1)で表される化合物。式(1)中、Repは独立して、オキシラニルを有する炭素数3~12の基であり、Xは独立して、単結合、または-C≡C-であり、Yは独立して、-CH-、または-O-であり、Rは独立して、水素、フッ素、炭素数1~5のアルキル、または炭素数1~5のアルコキシであり、このときRの少なくとも1つはフッ素であり、nは0~2の整数である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるエポキシ化合物。
式(1)中、Repは独立して、オキシラニルを有する炭素数3~12の基であり、Xは独立して、単結合、または-C≡C-であり、Yは独立して、-CH-、または-O-であり、Rは独立して、水素、フッ素、炭素数1~5のアルキル、または炭素数1~5のアルコキシであり、このときRの少なくとも1つはフッ素であり、nは0~2の整数である。
【請求項2】
式(1)で表される化合物において、Yは独立して、-CH-、または-O-であり、Yの少なくとも一方は-CH-である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(1)で表される化合物において、Xは単結合であり、Rは独立して、水素またはフッ素であり、このときRの1つはフッ素であり、その他は水素であり、nは1である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物を含む組成物。
【請求項5】
硬化剤を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
硬化剤が、芳香族1級アミン、脂肪族1級アミン、または2級アミノを分子骨格に2つ以上持つ芳香族または脂肪族アミンである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
硬化剤が、式(2-1)または(2-2)で表される少なくとも1つの化合物である、請求項6に記載の組成物。
20-X20-(B-X20)n20-Y20 (2-1)
-X20-Y20 (2-2)
式(2-1)および(2-2)中、
Bは、独立して、単結合、シクロヘキシレン、フェニレン、またはナフタレンであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
は、水素、シクロヘキシル、フェニル、またはナフチルであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
20は、独立して、単結合、-O-、-NH-、-S-、-SO-、-CO-、または炭素数1~12のアルキレンであり、
20は、独立して、アミノ、炭素数1~10のアルキルアミノ、水酸基、またはカルボキシであり、Y20の少なくとも1つはアミノ、または炭素数1~10のアルキルアミノであり、
n20は、0~7の整数である。
【請求項8】
硬化剤が、分子骨格にOHを2つ以上持つフェノール、またはその短鎖エステルである、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
硬化剤が、式(3-1)~(3-7)で表される少なくとも1つの化合物、またはその短鎖エステルである、請求項8に記載の組成物。



式(3-1)中、
環Cは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、または9,9‐ジフェニルフルオレンであり、これら環Cにおいて、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキル、または炭素数1~3のアルコキシで置き換えられてもよく;
n31は2~4の整数である。
式(3-2)中、
n32は0~2の整数であり、R30は独立して、水素または式(I)で表される基であり、これらR30の少なくとも1つは式(I)で表される基であり、
30は独立して、単結合、炭素数1~12のアルキレン、-CHO-、-CH=CH-、または-C≡C-である;
式(I)中、R33は独立して、水素または炭素数1~12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
式(3-3)中
n33およびn34は独立して、1~3の整数であり;
30は、単結合、炭素数1~10のアルキレン、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-O-、-S-、または-SO-を表し、
ベンゼン環上の、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキルで置き換えられてもよい。
式(3-4)~(3-7)中、
n35は1~5000の整数であり、n36およびn37は独立して、0または1を表し、n35が2以上の場合、繰り返し毎に異なってもよく、
31およびR32は独立して、1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、またはシクロペンタジエニレンを表し、
30は独立して、単結合、-CH(CH)-、または-C(CH-を表す。
またこれら式(3-4)~(3-7)中の芳香環上の水素はメチルで置き換えられてもよい。
【請求項10】
硬化剤が、シアネートエステルを含む化合物である、請求項5に記載の組成物。
【請求項11】
硬化剤が、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸無水物、またはチオールを含む化合物である、請求項5に記載の組成物。
【請求項12】
無機フィラーをさらに含む請求項5から11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
無機フィラーが酸化アルミニウムまたは窒化ホウ素である請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項4から13のいずれか1項に記載の組成物から形成された硬化物。
【請求項15】
請求項4から13のいずれか1項に記載の組成物を硬化させた放熱材料。
【請求項16】
請求項14に記載の硬化物を用いた電子部品用材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の内部に生じた熱を効率よく伝導する放熱部材用組成物、およびこれに用いられる液晶性を有する重合性化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車や電気自動車などの電力制御用の半導体素子や、高速コンピューター用のCPUなどにおいて、内部の半導体の温度が高くなり過ぎないように、パッケージ材料の高熱伝導化が望まれている。すなわち半導体チップから発生した熱を効果的に外部に放出させる能力が重要になっている。
【0003】
このような放熱問題を解決する方法は、発熱部位に高熱伝導性材料(放熱部材)を接触させて熱を外部に導き、放熱する方法が挙げられる。熱伝導性が高い材料は、金属や金属酸化物などの無機材料が挙げられる。しかし、このような無機材料は、加工性や絶縁性などに問題があり、単独で半導体パッケージの充填材に使用することは非常に難しい。そのため、これら無機材料と樹脂を複合化し、高熱伝導化した放熱部材の開発が行われている。
【0004】
複合材の高熱伝導化は、一般的に、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの汎用樹脂に、金属充填材などの無機充填材を多量に添加することにより行われてきた。しかし、無機充填材の熱伝導率は物質固有の値であり上限が決まっている。そのため、樹脂の熱伝導率を向上させることで、複合材の高熱伝導化を行う方法が広く試みられている。これを実際に行う手段は、例えば、液晶性を有するオキシラン化合物を用いる方法が知られている。
【0005】
特許文献1には、グリシジルオキシを2つ有するターフェニル化合物が開示されている。また特許文献2には、グリシジルオキシを3つ有するターフェニル化合物が開示されている。しかしながら該特許文献に開示されている化合物は、液晶温度が無く、融点も117℃以上の高い温度であった。特許文献3にはエステル結合を持つメソゲン骨格を有する液晶性エポキシ化合物が開示されている。しかしながら、該当文献に開示されている化合物は200℃以上だと分解してしまうことが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/61473号
【特許文献2】国際公開第2016/6649号
【特許文献3】特開2013-032340号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、100~150℃で液晶相を発現するターフェニル骨格を有する液晶性エポキシ化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以下の式(1)で表される化合物が、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
式(1)中、Repは独立して、オキシラニルを有する炭素数3~12の基であり、Xは独立して、単結合、または-C≡C-であり、Yは独立して、-CH-、または-O-であり、Rは独立して、水素、フッ素、炭素数1~5のアルキル、または炭素数1~5のアルコキシであり、このときRの少なくとも1つはフッ素であり、nは0~2の整数である。
【発明の効果】
【0009】
式(1)で表される化合物を原料とした組成物は、それ自体または該組成物を硬化する際に、液晶性を発現し易い。そのため、硬化物は高い熱伝導性を持つ。また式(1)で表される化合物を原料とした組成物は、ペースト化しやすい。そこで、基板の表面に追従できる密着性の高い放熱材料として、好適に使用する事が出来る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。また、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
【0011】
本発明は下記の項などである。
[1] 式(1)で表される構造のエポキシ化合物。

式(1)中、Repは独立して、オキシラニルを有する炭素数3~12の基であり、Xは独立して、単結合、または-C≡C-であり、Yは独立して、-CH-、または-O-であり、
は独立して、水素、フッ素、炭素数1~5のアルキル、または炭素数1~5のアルコキシであり、このときRの少なくとも1つはフッ素であり、nは0~2の整数である。
【0012】
[2]式(1)で表される化合物において、Yは独立して、-CH-、または-O-であり、Yの少なくとも一方は-CH-である[1]に記載の化合物。
【0013】
[3] 式(1)で表される化合物において、Xは単結合であり、Rは独立して水素またはフッ素であり、このときRの1つはフッ素であり、その他は水素であり、nは1である、項[1]または[2]に記載の化合物。
【0014】
[4] 項[1]から[3]のいずれか1項に記載の化合物を含む組成物。
【0015】
[5] 硬化剤を含む、項[4]に記載の組成物。
【0016】
[6] 硬化剤が、芳香族1級アミン、脂肪族1級アミン、または2級アミノを分子骨格に2つ以上持つ芳香族または脂肪族アミンである項[5]に記載の組成物。
【0017】
[7] 硬化剤が、下記式(2-1)または(2-2)で表される少なくとも1つの化合物である、項[6]に記載の組成物。
20-X20-(B-X20)n20-Y20 (2-1)
-X20-Y20 (2-2)
前記式(2-1)および(2-2)中、
Bは、独立して、単結合、シクロヘキシレン、フェニレン、またはナフタレンであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
は、水素、シクロヘキシル、フェニル、またはナフチルであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
20は、独立して、単結合、-O-、-NH-、-S-、-SO-、-CO-、または炭素数1~12のアルキレンであり、
20は、独立して、アミノ、炭素数1~10のアルキルアミノ、水酸基、またはカルボキシであり、Y20の少なくとも1つはアミノ、または炭素数1~10のアルキルアミノであり、
20は、0~7の整数である。
【0018】
[8] 硬化剤が、分子骨格にOHを2つ以上持つフェノール、またはその短鎖エステルである、項[5]に記載の組成物。
【0019】
[9] 前記硬化剤が、下記式(3-1)~(3-7)の少なくとも1つの化合物、またはその短鎖エステルである、項[8]に記載の組成物。



上記式(3-1)中、
環Cは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、または9,9‐ジフェニルフルオレンであり、これら環Cにおいて、少なくとも一つの水素は、炭素数1~3のアルキル、炭素数1~3のアルコキシで置き換えられてもよく;
n31は2以上4以下の整数である。
上記式(3-2)中、
n32は0~2の整数であり、R30は独立して、水素または以下の式(I)で表される基であり、これらR30の少なくとも一つは以下の式(I)で表される基であり、
30は独立して、単結合、炭素数1~12のアルキレン、-CHO-、-CH=CH-、または-C≡C-である;
式(I)中、R33は独立して、水素または炭素数1~12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
式(3-3)中
n33およびn34は独立して、1~3の整数であり;
30は、単結合、炭素数1~10のアルキレン、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-O-、-S-、または-SO-を表し、
ベンゼン環上の、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキルで置き換えられてもよい。
上記式(3-4)~式(3-7)中、
n35は1~5000の整数であり、n36およびn37は独立して、0または1を表し、n35が2以上の場合、繰り返し毎に異なってもよく、
31およびR32は独立して、1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、またはシクロペンタジエニレンを表し、
30は独立して、単結合、-CH(CH)-、または-C(CH-を表す。
またこれら式(3-4)~式(3-7)中の芳香環上の水素はメチルに置き換えられてもよい。
【0020】
[10] 硬化剤が、シアネートエステルを含む化合物である、項[5]に記載の組成物。
【0021】
[11] 硬化剤が、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸無水物、またはチオールを含む化合物である、項[5]に記載の組成物。
【0022】
[12] 無機フィラーをさらに含む項[5]から[11]のいずれか1項に記載の組成物。
【0023】
[13] 無機フィラーが酸化アルミニウムまたは窒化ホウ素である項[12]に記載の組成物。
【0024】
[14] 項[4]から[13]のいずれか1項に記載の組成物から形成された硬化物。
【0025】
[15] 項[4]から[13]のいずれか1項に記載の組成物を硬化させた放熱材料。
【0026】
[16] 項[14]に記載の硬化物を用いた電子部品用材料。
【0027】
「環の少なくとも1つの水素は、又は炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく」の句は、例えば1,4-フェニレンの2,3,5,6位の水素の少なくとも1つがフッ素やメチル等の置換基で置き換えられた場合の態様を意味する。
「化合物(1)」は、式(1)で表される化合物を意味し、また、式(1)で表される化合物の少なくとも1種を意味することもある。
【0028】
本発明組成物の液晶相の温度域を広くさせ、熱伝導率を大きく向上させるためには、式(1)において、Rとして、少なくとも1つのフッ素を選択する事が好ましい。具体的には、以下のような式(1-1)~式(1-3)で表す事が出来る化合物であることが望ましい。

【0029】
は、3つのベンゼン環のどの位置に置き換えられてもよい。このとき、組成物の液晶性を大きく向上させ、熱伝導率を大きく向上させるためには、-Repの隣接位以外に位置させる事が好ましい。
【0030】
本発明の組成物は、本発明重合性化合物、硬化剤、および必要に応じて添加される硬化促進剤を含む事を特徴とする。このような本発明の組成物は液晶性を呈し易い。さらにこの状態を保ったまま硬化させる事により、硬化物中の分子骨格同士の絡みが緩和される。結果として、熱を効率よく伝導させる材料を与える。
【0031】
本発明の組成物は、上記式(1)で表される化合物を含む事を特徴とする。式(1)の化合物は1種または複数を使用してもよい。組成物の液晶性を喪失させない限りにおいては、その他の公知のオキシラニル化合物を併用する事が出来る。このような化合物は、以下のような式(o-1)~式(o-5)で表される液晶性オキシラニル化合物を好ましく用いる事が出来る。
【0032】

また上記以外のオキシラニル化合物は、以下の式(o-7)~式(o-21)で表される非液晶性オキシラニル化合物が好ましく用いられる。
【0033】

式(o-12)において、Z10は単結合、-CH-、-O-、-S-、-CH(CH)-、-C(CH-、-SO-、または-C(CF-を表す。
【0034】

式(o-13)および式(o-14)において、Z11は>CH-または>C(CH)-を表す。
【0035】
【0036】
また上記以外のオキシラニル化合物は、以下の式(o-23)~式(o-27)で表される構造の樹脂も好ましく用いられる。

【0037】
式(o-23)中、Z12およびZ13は独立して、単結合、-CH-、-O-、-S-、-CH(CH)-、-C(CH-、-SO-、または-C(CF-を表し、n21は1~5000の整数を表し、
式(o-24)および式(o-25)中、n21は1~5000の整数を表し、n22およびn23は独立して、0または1を表し、n21が2以上の場合、n22およびn23は繰り返し毎に異なってもよく、
式(o-25)中、R10およびR11は独立して、1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、またはシクロペンタジエニレンを表し、
またこれら式(o-24)~式(o-25)中の芳香環上の水素はメチルで置き換えられてもよい。
【0038】

【0039】
式(o-26)および式(o-27)中、n21は1~5000の整数を表す。式(o-27)中、Z14は独立して、単結合、-CH(CH)-、-C(CH-を表す。
またこれら式(o-26)および式(o-27)中の芳香環上の水素はメチルで置き換えられてもよい。
【0040】
式(1)の化合物に対する、このような公知のオキシラニル化合物の含有量は、組成物またはその硬化物が所望の特性を発現する限りにおいて、特に制限は無い。すなわちオキシラニル化合物の全重量に対し、0.1重量%~99.9重量%の間で使用する事が出来る。このとき本発明の効果を発現させるためには、0.1重量%~90重量%の間で使用する事が好ましく、0.1重量%~80重量%の間で使用する事がさらに好ましい。
【0041】
[硬化剤]
本発明の組成物において、硬化剤は、全ての公知のアミン、フェノール、シアネートエステル、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸無水物、またはチオールなどの化合物を使用する事が出来る。
【0042】
硬化剤が、芳香族1級アミン、脂肪族1級アミン、または2級アミノを分子骨格に2つ以上持つ芳香族または脂肪族アミンであることが好ましい。これらのアミン系硬化剤は、組成物の液晶性を大きく損なう事がなく、容易に入手出来る事から、下記式(2-1)または(2-2)で表される少なくとも1つの化合物である事が好ましい。
20-X20-(B-X20)n20-Y20 (2-1)
-X20-Y20 (2-2)
前記式(2-1)および(2-2)中、
Bは、独立して、単結合、シクロヘキシレン、フェニレン、またはナフタレンであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
は、水素、シクロヘキシル、フェニル、またはナフチルであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
20は、独立して、単結合、-O-、-NH-、-S-、-SO-、-CO-、または炭素数1~12のアルキレンであり、
20は、独立して、アミノ、炭素数1~10のアルキルアミノ、水酸基、またはカルボキシであり、Y20の少なくとも1つはアミノ、または炭素数1~10のアルキルアミノであり、
20は、0~7の整数である。
【0043】
このような式(2-1)で表される化合物は、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、p-キシレンジアミン、m-キシレンジアミンなどの炭素数2~12の脂肪族多価アミン、p-フェニレンジアミン、N-メチル-p-フェニレンジアミン、N-エチル-p-フェニレンジアミン、N-プロピル-p-フェニレンジアミン、N-ブチル-p-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、m-フェニレンジアミン、N-メチル-m-フェニレンジアミン、N-エチル-m-フェニレンジアミン、N-プロピル-m-フェニレンジアミン、N-ブチル-m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、o-フェニレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4-アミノフェニル)フェニルメタン、m-トリジン、o-トリジンなどの芳香族多価アミン、1,4-シクロヘキシルジアミン、1,3-シクロヘキシルジアミン、1,2-シクロヘキシルジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどの、脂環式多価アミンが挙げられる。
【0044】
これらの中でも、組成物にした際の相溶性がよく、保存安定性に優れる事から、p-フェニレンジアミン、N-メチル-p-フェニレンジアミン、N-エチル-p-フェニレンジアミン、N-プロピル-p-フェニレンジアミン、N-ブチル-p-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、m-フェニレンジアミン、N-メチル-m-フェニレンジアミン、N-エチル-m-フェニレンジアミン、N-プロピル-m-フェニレンジアミン、N-ブチル-m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、および4,4’-ジアミノジフェニルスルホンが特に好適である。
【0045】
式(2-2)で表される化合物は、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ドデシルアミンなどの炭素数2~12の脂肪族アミン、アニリン、o-トルイジン、m-トルイジン、p-トルイジン、2,3-ジメチルアニリン、2,4-ジメチルアニリン、2,6-ジメチルアニリン、2,4,6-トリメチルアニリン、2-エチルアニリン、1-ナフチルアミン、1-アミノ-2-メチルナフタレンなどの芳香族アミン、シクロヘキシルアミン、2-メチルシクロヘキシルアミンなどの脂環式アミンが挙げられる。これらの中でも、組成物にした際の相溶性がよく、保存安定性に優れる事から、アニリン、o-トルイジン、m-トルイジン、p-トルイジン、2,3-ジメチルアニリン、2,4-ジメチルアニリン、2,6-ジメチルアニリン、2,4,6-トリメチルアニリン、2-エチルアニリンが特に好適である。
【0046】
フェノール系硬化剤は、組成物の液晶性を大きく損なう事がなく、容易に入手出来る事から、下記式(3-1)~(3-7)で表される少なくとも1つの化合物である事が好ましい。


【0047】
上記式(3-1)中、
環Cは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、または9,9‐ジフェニルフルオレンであり、これら環Cにおいて、少なくとも一つの水素は、炭素数1~3のアルキル、炭素数1~3のアルコキシで置き換えられてもよく;
n31は2以上4以下の整数である。
上記式(3-2)中、
n32は0~2の整数であり、R30は独立して、水素または以下の式(I)で表される基であり、これらR30の少なくとも一つは以下の式(I)で表される基であり、
30は独立して、単結合、炭素数1~12のアルキレン、-CHO-、-CH=CH-、または-C≡C-である;
式(I)中、R33は独立して、水素または炭素数1~12のアルキルであり、*は芳香環への結合位置を表す。
式(3-3)中
n33およびn34は独立して、1~3の整数であり;
30は、単結合、炭素数1~10のアルキレン、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-O-、-S-、または-SO-を表し、
ベンゼン環上の、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキルで置き換えられてもよい。
上記式(3-4)~式(3-7)中、
n35は1~5000の整数であり、n36およびn37は独立して、0または1を表し、n35が2以上の場合、繰り返し毎に異なってもよく、
31およびR32は独立して、1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、またはシクロペンタジエニレンを表し、
30は独立して、単結合、-CH(CH)-、または-C(CH-を表す。
またこれら式(3-4)~式(3-7)中の芳香環上の水素はメチルに置き換えられてもよい。
【0048】
これらのフェノール系硬化剤は、該フェノールのOHが、短鎖のカルボン酸と脱水反応した、エステルでも良い。短鎖のカルボン酸とは、炭素数2から7のカルボン酸であり、分岐構造や芳香環を含んでも良い。これらの短鎖のカルボン酸において、コストや硬化物の耐熱性の観点から、酢酸エステルである事が、特に好ましい。
【0049】
本発明硬化物の、基板に対する高い密着性を維持するため、上記エステルとしたフェノール系硬化剤を使用する際は、エステルとしていないフェノール系硬化剤と併用して使用する事が、好ましい。フェノール系硬化剤とエステルとしたフェノール系硬化剤の混合比は、硬化剤の全量を100%として、それぞれ99:1から1:99の間で、調整できる。このとき、基板に対する密着性を維持するため、それぞれ99:1から20:80の間を選択する事が好ましく、99:1から30:70の間を選択する事がより好ましい。また硬化物の誘電率を低下させるためには、それぞれ50:50から1:99の間を選択する事が好ましく、40:60から1:99の間を選択する事がより好ましい。
【0050】
本発明組成物の液晶性を損なう事がなく、本発明硬化物の耐熱性を向上させられる事から、式(3-1)~(3-7)で表されるフェノール系硬化剤において、式(3-2)で表される硬化剤を選択する事が、最も好ましい。
【0051】
好ましいカルボキシ含有硬化剤は、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノン-4,4’-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0052】
本発明組成物において、式(1)の化合物と硬化剤の比は、特に制限は無い。このとき耐熱性を向上させるため反応を効率的に進めるために、式(1)の化合物と硬化剤との反応基を当量とする事が好ましい。例えば、オキシラニル:アミンの場合は2:1、オキシラニル:フェノールの場合は、1:1である。
【0053】
[硬化促進剤]
本発明組成物において、特にフェノール系の硬化剤を使用する場合、耐熱性を向上させるため反応を効率的に進めるために、硬化促進剤を組成物に添加する事が好ましい。このような硬化促進剤として、2-エチル-4-メチル-1H-イミダゾール、2-フェニル-4-メチル-1H-イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、および1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール系硬化促進剤、トリフェニルフォスフィンなどのリン系硬化促進剤、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、などのアミン系硬化促進剤などが挙げられる。このような硬化促進剤のうち、硬化温度が200℃以下であり硬化が速いことから、イミダゾール系の硬化促進剤を使用する事が好ましい。
【0054】
本発明の組成物における硬化促進剤の濃度は、耐熱性を向上させるため反応を効率的に進めるために、本発明重合性化合物の重量に対し、0.1重量%以上である事が好ましく、0.5重量%以上である事がさらに好ましい。また硬化促進剤の昇華などによる信頼性などの悪化を避けるために、本発明重合性化合物の重量に対し、5重量%以下である事が好ましく、3重量%以下である事がさらに好ましい。
【0055】
[無機フィラー]
本発明の電子部品用組成物は、無機フィラーを含有してもよい。
電子部品用組成物が含有する無機フィラーは、高熱伝導性の充填材として、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素などの窒化物が挙げられる。ダイアモンド、黒鉛、炭化珪素、珪素、ベリリア、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化珪素、酸化銅、酸化チタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化錫、酸化ホルミニウム、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化カルシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、金、銀、銅、白金、鉄、錫、鉛、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、モリブデン、ステンレスなどの無機充填材や金属充填材であってもよい。好ましくは、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムである。窒化ホウ素、窒化アルミニウムは平面方向の熱伝導率が非常に高く、誘電率が低く、絶縁性が高いため好ましい。特に六方晶系の窒化ホウ素(h-BN)や窒化アルミニウムが好ましい。
【0056】
無機フィラーの形状は、球状、無定形、繊維状、棒状、筒状、板状、四脚状などが挙げられる。無機フィラーの種類、形状、大きさ、添加量などは、目的に応じて適宜選択できる。例えば、電子部品用組成物から形成された硬化物(電子部品用材料)が絶縁性を必要とする場合、所望の絶縁性が保たれれば導電性を有する無機フィラーであっても構わない。
【0057】
無機フィラーの平均粒径は、例えば、0.1~200μmであることが好ましい。より好ましくは、1~100μmである。0.1μm以上であると熱伝導率がよく、200μm以下であると充填率を上げられる。なお、本明細書において平均粒径とは、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定に基づく。すなわち、フランホーファー回折理論及びミーの散乱理論による解析を利用して、湿式法により、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量(体積基準)となる径をメジアン径とした。
【0058】
無機フィラーの添加量は、例えば、放熱部材に用いる場合は、20~95重量%であることが好ましい。より好ましくは、50~95重量%である。20重量%以上であると熱伝導率が高くなり好ましい。95重量%以下であると放熱部材が脆くならず好ましい。
【0059】
無機フィラーは、未修飾のものをそのまま使用してもよい。又は、その表面をカップリング剤で処理したものを用いてもよい。例えば、窒化ホウ素(h-BN)をシランカップリング剤で処理する。窒化ホウ素の場合は粒子の平面に反応基がないため、その周囲のみにシランカップリング剤が結合する。カップリング剤で処理された窒化ホウ素は、電子部品用組成物中の重合性化合物との結合を形成でき、この結合は熱伝導に寄与すると考えられる。そのため、カップリング剤は、オキシラニル、オキセタニル、又は硬化剤の有する基と反応するものが好ましい。例えば、アミン系、又はオキシラニル、オキセタニルを有するものが好ましい。具体的には、JNC(株)製では、サイラエースS310,S320,S330,S360,S510,S530(商品名)などが挙げられる。
【0060】
無機フィラーは、カップリング剤で処理した後さらにオキシラニルなどの重合性の基を持つ化合物(重合性化合物)で表面修飾したものを用いてもよい。例えば、シランカップリング剤で処理された窒化ホウ素(h-BN)を重合性化合物で表面修飾する。重合性化合物で表面修飾された窒化ホウ素が、電子部品用組成物中の重合性化合物や硬化剤と結合を形成できると、この結合は熱伝導に寄与すると考えられる。例えば、重合性化合物は、式(1)で示す本発明重合性化合物であってもよく、それ以外の重合性化合物であってもよい。
【0061】
[その他の構成要素]
本発明の組成物において、含有する事の出来るその他の構成要素は、特に限定されない。例えば式(1)以外の重合性化合物、非重合性化合物、重合開始剤、及び溶媒などが挙げられる。
【0062】
オキシラニル以外の重合性基を持つ重合性化合物は、本発明の電子材料の特性を低下させない限りにおいて、特に制限は無く、公知の重合性化合物を使用する事が出来る。その中でも、アクリル化合物やスチレン系化合物などのラジカル重合する化合物が好ましく使用出来、液晶性を持つようなこれら化合物が、より好適に使用する事が出来る。
【0063】
重合開始剤は、例えば熱重合開始剤、光カチオン重合開始剤、および光アニオン重合開始剤などが挙げられる。熱カチオン重合開始剤はスルホニウム塩系、三フッ化ホウ素-アミン錯体、ジシアンアジド、有機酸ヒドラジド、トルエンスルホン酸エステルなどが挙げられる。また光カチオン開始剤は、スルホニウム塩系、ヨードニウム塩系、非イオン系などが知られている。さらに光アニオン開始剤は、オキシム系、カーバメート系、グアニジウム-カルボン酸塩系、ニフェジピン系などが知られている。
【0064】
本発明組成物に、アクリル化合物やスチレン系化合物などのラジカル重合する化合物を含む場合は、ラジカル重合開始剤を使用してもよい。
【0065】
本発明組成物に、アクリル化合物やスチレン系化合物などのラジカル重合する化合物を含む場合は、ラジカル重合開始剤を使用してもよい。
【0066】
本発明の組成物は溶媒を含有してもよい。該組成物の重合は溶媒中で行っても、無溶媒で行ってもよい。好ましい溶媒は、例えば、1,4-ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2-エチルヘキサノール、1-プロパノール、イソブチルアルコール、n-ブタノール、2-ペンタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールが挙げられる。溶媒は1種で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0067】
本発明の組成物は高い重合性を有するので、取扱いを容易にするために、安定剤を添加してもよい。このような安定剤は、公知のものを制限なく使用できる。例えば、ハイドロキノン、4-エトキシフェノール、及び3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)などが挙げられる。
【0068】
さらに、電子部品用組成物の粘度や色を調整するために添加剤(酸化物等)を添加してもよい。例えば、白色にするための酸化チタン、黒色にするためのカーボンブラック、粘度を調整するためのシリカの微粉末を挙げることができる。また、機械的強度をさらに増すために、例えば、ガラスやカーボンファイバーなどの無機繊維やそれらのクロス、または、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドなどの合成繊維、または超分子などを添加してもよい。
【0069】
[電子部品用材料]
本発明の電子部品用材料は、上記第2の実施の形態に係る電子部品用組成物を硬化させた硬化物を用途に応じて成形したものである。例えば、本発明の電子部品用材料を放熱部材として利用できる。
電子部品用材料は、本発明の組成物を重合(硬化)させることによって得られる重合体からなる。この重合体は、高い熱伝導性を有するとともに、化学的安定性、耐熱性、硬度及び機械的強度などに優れている。なお、前記機械的強度とは、ヤング率、引っ張り強度、引き裂き強度、曲げ強度、曲げ弾性率、衝撃強度などである。
【0070】
本発明の組成物は、熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂は、原料となる組成物を加熱する事で、組成物に含まれるモノマーを高分子化させ、さらに三次元架橋させる事等により、硬化する。この際の加熱温度は、本発明の組成物が液晶相を示す温度範囲である事が好ましい。また本発明の組成物は、硬化をある程度進める事により、液晶温度範囲が上昇する場合もある。このような場合は、上昇した液晶温度範囲において硬化させてもよい。
【0071】
硬化させる温度は、一定であってもよく、段階的に上昇または降下させてもよい。後者の場合、最初の硬化温度は、材料の放熱特性を向上させるため、組成物またはその硬化物が液晶相を示す温度が好ましい。また耐熱性を向上させるため、最初の硬化温度より高い温度で加熱する事が好ましい。
【0072】
熱重合による硬化温度は、室温~350℃、好ましくは室温~250℃、より好ましくは50℃~200℃の範囲である。硬化時間は、5秒~24時間、好ましくは1分~8時間、より好ましくは5分~5時間の範囲である。重合後は、応力ひずみなどを抑制するために徐冷が好ましい。また、再加熱処理を行い、ひずみなどを緩和させてもよい。
【0073】
より架橋させるために架橋剤を添加してもよい。これにより、耐薬品性及び耐熱性に極めて優れた重合体(硬化物)を得られる。このような架橋剤は、公知のものを制限なく使用できるが、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)が挙げられる。
【0074】
本発明の電子部品用材料は、シート、フィルム、薄膜、繊維、または成形体などの形状で使用できる。好ましい形状は、フィルム及び薄膜である。フィルム及び薄膜は、電子部品用組成物を基板に塗布した状態又は基板で挟んだ状態で重合させることによって得られる。また、溶媒を含有する電子部品用組成物を、基板に塗布し溶媒を除去することによっても得られる。さらに、フィルムについては、重合体をプレス成形することによっても得られる。なお、本明細書におけるシートの膜厚は1mm以上であり、フィルムの膜厚は5μm以上、好ましくは10~900μmであり、より好ましくは20~800μmであり、薄膜の膜厚は5μm未満である。膜厚は用途に応じて適宜変更すればよい。
【0075】
本発明の電子部品用材料は、高熱伝導性に加え、化学的安定性、耐熱性、硬度及び機械的強度などの優れた特性をも有する。よって、放熱板、放熱シート、放熱フィルム、放熱塗膜、放熱接着材、または放熱成形品などに有用である。
【0076】
本発明の重合性化合物から形成された電子部品用材料を上記では放熱材料として用いることを説明したが、電子部品用材料の用途は放熱材料に限られない。例えば、封止材や接着材料として用いてもよい。
【0077】
[電子部品用組成物の製造方法]
無機フィラーにカップリング処理を施す場合の製造方法を以下に説明する。カップリング処理は公知の方法を用いることができる。
一例として、まず無機フィラー粒子とカップリング剤を溶媒に加える。スターラー等を用いて撹拌したのち、放置する。溶媒乾燥後に真空乾燥機等を用いて真空条件下で加熱処理をする。この無機フィラー粒子に溶媒を加えて、超音波処理により粉砕する。遠心分離機を用いてこの溶液を分離精製する。上澄みを捨てたのち、溶媒を加えて同様の操作を数回行う。オーブンを用いて精製後の無機フィラー粒子を乾燥させる。
次にカップリング処理された無機フィラー粒子と重合性化合物を、メノウ乳鉢等を用いて混合したのち、2軸ロール等を用いて混練する。その後、超音波処理及び遠心分離によって分離精製する。
さらにアミン系硬化剤を加え、メノウ乳鉢等を用いて混合したのち、2軸ロール等を用いて混練する。これにより、溶媒を含有しない電子部品用組成物を得られる。
【0078】
[電子部品用材料の製造方法]
溶媒を含有しない電子部品用組成物を用いて、電子部品用材料としてのフィルムを製造する方法を以下に説明する。
溶媒を含有しない電子部品用組成物を、圧縮成形機を用いて加熱板中にはさみ、圧縮成形する。重合性化合物が所定の温度、時間で重合し重合体を形成する。さらに適切な時間、温度で後硬化を施してもよい。なお、圧縮成形時の圧力は、50~500kgf/cm2が好ましく、より好ましくは70~250kgf/cm2である。硬化時の圧力は基本的には高い方が好ましい。しかし、金型の流動性や、目的とする物性(どちら向きの熱伝導率を重視するかなど)によって適宜変更し、適切な圧力を加えることが好ましい。
なお、電子部品用組成物は一部を硬化させた状態(半硬化状態)とすると、扱い易さをより向上させられる。例えば、半硬化状態の組成物をシート状に形成し、好みの形に切り取り、これを好適な部材と部材の間に配置し貼りあわせることが可能となる。
【0079】
溶媒を含有する電子部品用組成物を用いて、電子部品用材料としてのフィルムを製造する方法を以下に説明する。
基板上に電子部品用組成物を塗布し、溶媒を乾燥除去して膜厚の均一な塗膜層を形成する。塗布方法は、例えば、スピンコート、ロールコート、カテンコート、フローコート、プリント、マイクログラビアコート、グラビアコート、ワイヤーバーコート、デップコート、スプレーコート、メニスカスコート法などが挙げられる。
溶媒の乾燥除去は、例えば、室温での風乾、ホットプレートでの乾燥、乾燥炉での乾燥、温風や熱風の吹き付けなどにより行うことができる。溶媒除去の条件は特に限定されず、溶媒がおおむね除去され、塗膜層の流動性がなくなるまで乾燥すればよい。
【0080】
[電子部品]
電子部品は、例えば発熱部を有する電子デバイスが挙げられる。本発明の電子部品用材料を放熱部材として用いる場合は、放熱部材を前記発熱部に接触するように電子デバイスに配置する。放熱部材の形状は、放熱板、放熱シート、放熱フィルム、放熱接着材、放熱成形品などのいずれであってもよい。このように、放熱部材により電子デバイスに生じた熱を放熱させ、熱による故障を回避することで、電子デバイスを備える電子機器の寿命を延ばせる。
電子デバイスは、半導体素子を挙げることができる。放熱部材は、高熱伝導性に加えて、高耐熱性、高絶縁性を有する。そのため、半導体素子の中でも高電力のためより効率的な放熱機構を必要とする絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBT)に特に有効である。IGBTは半導体素子のひとつで、MOSFETをゲート部に組み込んだバイポーラトランジスタであり、電力制御の用途で使用される。IGBTを備えた電子機器には、大電力インバータの主変換素子、無停電電源装置、交流電動機の可変電圧可変周波数制御装置、鉄道車両の制御装置、ハイブリッドカー、エレクトリックカーなどの電動輸送機器、IH調理器などを挙げることができる。
【0081】
[式(1)で表される化合物の合成方法]
式(1)の化合物は、有機合成化学における公知の手法を組合せることにより合成できる。出発物質に目的の重合性基及び環構造を導入する方法は、例えば、ホーベン-ワイル(Houben-Weyl, Methods of Organic Chemistry, Georg Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・シンセシーズ(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc.)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載されている。また、特開2006-265527号公報を参照してもよい。
【実施例0082】
以下に、本発明に対して実施例を用いて詳細に説明する。しかし本発明は、以下の実施例に記載された内容に限定されるものではない。なお温度の記載がない場合は、23℃で測定を行った。
【0083】
[NMR測定]
NMRは、VARIAN社製のVARIAN NMR SYSTEMで計測した。H-NMR測定での磁場強度は500MHzであり、試料はCDClなどの重水素化溶媒に溶解させ、測定は室温で行った。この際、積算回数は8回である。内部標準は、テトラメチルシランである。NMRの符号のうち、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、mはマルチプレット、brはブロードを意味する。
【0084】
[式(1)の化合物の相転移点測定および液晶相の同定]
ホットステージ(メトラー トレド社製)付き偏光顕微鏡(ニコン社製)および示差走査熱量計(Perkin Elmer社製、Diamond DSC)を用いて行った。偏光顕微鏡測定は、クロスニコル下で観察した。昇温速度はどちらも3℃/minで測定した。Cは結晶、Nはネマチック相、Iは等方性液体を示し、()はモノトロピック液晶相を示す。
【0085】
[組成物の液晶性の確認]
組成物をガラスプレートに挟み、該組成物を一度溶融させてから急冷し、ガラスの間にまんべんなく密着させた。得られたサンプルを5℃/minの昇温速度で、200℃まで加熱後、室温まで急冷した。該サンプルは上記偏光顕微鏡を用い、クロスニコル下で観察した。接眼および対物レンズの倍率は、それぞれ10x10倍であった。散乱現象による光抜けが、目視で観察領域の半分以上にみられる場合、液晶性があると判断した。
【0086】
[熱分解性の確認]
アルミパンに入れた化合物をリガク製DSC型高感度示差走査熱量計Thermo Plus EVO2 DSC-8231を用いて5℃/分の昇温速度で200℃まで加熱した。その後、化合物を室温まで冷まして取り出し、このサンプルのH-NMRを測定した。加熱前後のスペクトルを比較し、熱分解性を確認した。○は分解物が観察されず、×は分解物が観察されたことを示す。
【0087】
[エポキシ化合物]
式(1)で表されるエポキシ化合物として、下記式(1-1-1)~(1-2-1)を実施例に使用した。これらの化合物は以下に記載の通り合成した。また比較化合物として、式(ref.1)および式(ref.2)で表される化合物も用いた。さらに上記式(o-1)の化合物も使用した。ref.1およびref.2で表される化合物は、それぞれ特許文献2および特許文献1に従い、(o-1)は特許文献3に従い、合成した。
【0088】
【0089】
[実施例1] 式(1-1-1)で表される化合物の合成

【0090】
市販の2,5-ジブロモフロオロベンゼン2.04g(8.03mmol)、4-(3-ブテニル)フェニルボロン酸4.11g(23.3mmol)、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム(0)0.400g(0.350mmol)、およびNaCO3.33g(31.4mmol)の混合物を、トルエン(15ml)と水(5ml)の混合溶媒中、窒素気流下、3時間還流した。4-(3-ブテニル)フェニルボロン酸は、特開2014-31322号公報に従い合成した。反応終了後、反応液を冷却し、純水及びトルエン各100mlを加えた。有機層を分離後、同量の純水で2回、飽和食塩水で1回洗浄し、MgSOで乾燥した。ろ過及び溶剤を減圧留去後、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘプタン)で精製することにより、化合物(1-1-1a)を得た。収量1.68g(収率59%)。
【0091】
化合物(1-1-1a)1.68g(4.71mmol)のCHCl(20ml)溶液に、3-クロロ過安息香酸2.50g(65%、9.43mmol)を、10℃以下で加え、そのまま室温で一晩撹拌した。反応液を氷浴で冷却後、チオ硫酸ナトリウム5水和物の10%水溶液(10ml)および10%重曹水溶液(10ml)を加え、室温で30分撹拌した。この反応液から有機層を分離し、10%重曹水溶液(10ml)および純水(10ml)で洗浄した。有機層を分離後、MgSOで乾燥した。ろ過および溶剤を減圧留去後、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/酢酸エチル=40/1)および再結晶(トルエン・エタノール)で精製することにより、化合物(1-1-1)を得た。収量1.36g(収率74%)。
【0092】
H-NMR(ppm,CDCl);7.57-7.48(m,5H),7.42(dd,1H,J=9.50Hz,J=8.00Hz),7.36(dd,1H,J=13.5Hz,J=12.0Hz),7.30(d,1H,J=8.00Hz)3.02-2.98(m,2H),2.91-2.78(m,6H),2.53-2.51(m,2H),1.98-1.83(m,4H).
【0093】
[実施例2] 式(1-2-1)で表される化合物の合成
特開2014-224237に従って合成した、式(1-2-1a)で表される化合物0.67g(2.4mmol)、エピブロモヒドリン3.3g(24mmol)、およびKCO1.7g(12mmol)の混合物を、メチルエチルケトン(10ml)中、12時間還流した。反応液を冷却後、トルエン(20ml)および純水(10ml)を加えた。有機層を分離後、MgSOで乾燥した。ろ過および溶剤を減圧留去後、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/酢酸エチル=40/1)および再結晶(トルエン)で精製することにより、化合物(1-2-1)を得た。収量0.45g(収率48%)。
【0094】
H-NMR(ppm,CDCl);7.57-7.52(m,4H),7.45(t,1H,J=8.50Hz),7.38(dd,1H,J=9.5Hz,J=1.5Hz),7.33(dd,1H,J=12.0,1.50Hz),7.01(AA’BB’,4H),4.31-4.26,4.04-4.02,3.41-3.39,2.94-2.92,2.81-2.78(m,10H).
【0095】
合成した化合物および比較化合物の転移点および熱分解性を、以下の表1に示す。
表1.化合物の液晶性と転移点

【0096】
上記実施例と比較例に示したように、本発明化合物は、一般的なエポキシ樹脂の熱硬化条件である、80~200℃の温度範囲に液晶相を発現することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の技術は、半導体素子のパッケージ用材料に好適に使用する事が出来る。また接着剤などその他のエポキシ樹脂に対する代替用途にも、使用する事が出来る。