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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108038
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】ガス分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20220715BHJP
   G01N 21/61 20060101ALI20220715BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
G01N21/3504
G01N21/61
G01N21/03 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002832
(22)【出願日】2021-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100094145
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 由己男
(72)【発明者】
【氏名】米谷 康弘
(72)【発明者】
【氏名】井ノ上 哲志
(72)【発明者】
【氏名】生田 卓司
(72)【発明者】
【氏名】阪倉 誠司
【テーマコード(参考)】
2G057
2G059
【Fターム(参考)】
2G057AA01
2G057AB02
2G057AB06
2G057AC03
2G057BA05
2G057DB02
2G057DC06
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC04
2G059CC05
2G059CC06
2G059CC10
2G059CC13
2G059DD12
2G059EE01
2G059EE11
2G059HH01
2G059JJ03
2G059JJ22
2G059KK02
2G059KK03
2G059LL01
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】分析装置をコンパクトにし保守作業量の増加を抑制する。
【解決手段】分析装置100、200は、光源3と、第1ニューマチック検出器53と、第2ニューマチック検出器55と、第3ニューマチック検出器57と、演算部7と、を備える。光源3は、測定光Lmを出力する。第1ニューマチック検出器53は、第1成分ガスGs1により吸収された測定光Lmの強度を測定する。第2ニューマチック検出器55は、第2成分ガスGs2により吸収された測定光Lmの強度を測定する。第3ニューマチック検出器57は、第1成分ガスGs1及び第2成分ガスGs2と光吸収特性が少なくとも一部重複する第3成分ガスGs3により吸収された測定光Lmの強度を、第1通過測定光Lm1の強度として測定する。演算部7は、第1通過測定光Lm1の強度に基づいて、第3成分ガスGs3に関する情報を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルガスに含まれる成分を分析する装置であって、
前記サンプルガスを内部に導入する測定セルと、
前記測定セルの内部に測定光を放射する光源と、
前記サンプルガスに含まれる第1成分ガスが前記測定セルの内部で吸収した前記測定光の強度を測定する第1ニューマチック検出器と、
前記サンプルガスに含まれる第2成分ガスが前記測定セルの内部で吸収した前記測定光の強度を測定する第2ニューマチック検出器と、
前記サンプルガスに含まれかつ前記第1成分ガス及び前記第2成分ガスと前記測定光の光吸収特性が少なくとも一部重複する第3成分ガスが前記測定セルの内部で吸収した前記測定光の強度を、前記第2ニューマチック検出器を通過後の前記測定光である第1通過測定光の強度として測定する第3ニューマチック検出器と、
前記第3ニューマチック検出器にて測定された前記第1通過測定光の強度に基づいて、前記第3成分ガスに関する情報を算出する演算部と、
を備える、ガス分析装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記第1ニューマチック検出器にて測定された前記測定光の強度と、前記第3ニューマチック検出器にて測定された前記第1通過測定光の強度とに基づいて、前記第1成分ガスに関する情報を算出する、請求項1に記載のガス分析装置。
【請求項3】
前記第1ニューマチック検出器は、前記第1成分ガスが封入され前記測定光が通過する第1封入セルを有する、請求項1又は2に記載のガス分析装置。
【請求項4】
前記第2ニューマチック検出器は、前記第2成分ガスが封入され前記測定光が通過する第2封入セルを有する、請求項1~3のいずれかに記載のガス分析装置。
【請求項5】
前記第3ニューマチック検出器は、前記第2成分ガスが封入された第3封入セルを有する、請求項4に記載のガス分析装置。
【請求項6】
前記第2封入セル内の前記第2成分ガスの濃度は、前記第3封入セル内の前記第2成分ガスの濃度の半分以下である、請求項5に記載のガス分析装置。
【請求項7】
前記第1成分ガスは二酸化硫黄であり、前記第2成分ガスは窒素酸化物であり、前記第3成分ガスは水蒸気である、請求項1~6のいずれかに記載のガス分析装置。
【請求項8】
前記サンプルガスに含まれかつ前記第1成分ガスと前記測定光の光吸収特性が少なくとも一部重複する第4成分ガスにより吸収された前記測定光の強度を、前記第1ニューマチック検出器を通過後の前記測定光である第2通過測定光の強度として測定する第4ニューマチック検出器をさらに備える、請求項1~7のいずれかに記載のガス分析装置。
【請求項9】
前記演算部は、前記第1ニューマチック検出器にて測定された前記測定光の強度と、前記第2ニューマチック検出器にて測定された前記測定光の強度と、前記第3ニューマチック検出器にて測定された前記第1通過測定光の強度と、前記第4ニューマチック検出器にて測定された前記第2通過測定光の強度と、に基づいて前記第1成分ガスに関する情報を算出する、請求項8に記載のガス分析装置。
【請求項10】
前記第4成分ガスはメタンである、請求項8又は9に記載のガス分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルガスに含まれる成分を分析するガス分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の箇所(例えば、煙道など)からサンプリングされるサンプルガス(例えば、排気ガス)に含まれる所定の成分(例えば、硫黄酸化物(SO)、窒素酸化物(NO))を分析する装置として、当該成分の光吸収特性(例えば、赤外光の吸収特性)を利用するものが知られている。例えば、当該成分の赤外光の吸収特性をニューマチック検出器と呼ばれるセンサにて検出する分析装置が知られている。
【0003】
上記のサンプルガスは、一般的には、分析対象となる成分(分析対象成分と呼ぶ)以外にも、光を吸収する他の成分を含んでいる。サンプルガスによっては、分析対象成分の光吸収特性(例えば、吸収波長域)と分析対象以外の成分の光吸収特性とが重複することがある。これらの成分は干渉成分と呼ばれ、分析対象成分の分析結果に影響(干渉影響と呼ぶ)を及ぼす。
【0004】
上記の光吸収特性の重複の影響を減少することを目的として、分析対象成分の光吸収特性を検出するニューマチック検出器に加えて、干渉成分の光吸収特性を検出するニューマチック検出器を設けている分析装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
この分析装置は、分析対象成分の光吸収特性を検出するニューマチック検出器により得られた検出結果と、干渉成分の光吸収特性を検出するニューマチック検出器により得られた検出結果との差分に基づいて、分析対象成分を精度よく分析できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-68164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、上記のような光吸収特性をニューマチック検出器にて検出する分析装置により、サンプルガスに含まれる複数の分析対象成分を分析することが試みられている。複数の分析対象成分を分析する場合であっても、分析対象成分毎に、当該分析対象成分の光吸収特性と、当該分析対象成分に対する干渉成分の光吸収特性と、を検出する必要がある。その一方で、分析対象成分が増加しても、分析装置をなるべくコンパクトにし、分析装置の保守作業量の増加をできうる限り抑制したいとの要望がある。
【0007】
本発明の目的は、光吸収特性を測定するニューマチック検出器を用いて複数の分析対象成分を分析する分析装置において、分析装置をできうる限りコンパクトにし、分析装置の保守作業量の増加を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係るガス分析装置は、サンプルガスに含まれる成分を分析する装置である。分析装置は、測定セルと、光源と、第1ニューマチック検出器と、第2ニューマチック検出器と、第3ニューマチック検出器と、演算部と、を備える。
測定セルは、内部にサンプルガスを導入する。光源は、測定セルの内部に測定光を放射する。第1ニューマチック検出器は、サンプルガスに含まれる第1成分ガスが測定セルの内部で吸収した測定光の強度を測定する。第2ニューマチック検出器は、サンプルガスに含まれる第2成分ガスが測定セルの内部で吸収した測定光の強度を測定する。第3ニューマチック検出器は、サンプルガスに含まれかつ第1成分ガス及び第2成分ガスと測定光の光吸収特性が少なくとも一部重複する第3成分ガスが測定セルの内部で吸収した測定光の強度を、第2ニューマチック検出器を通過後の測定光である第1通過測定光の強度として測定する。演算部は、第3ニューマチック検出器にて測定された第1通過測定光の強度に基づいて、第3成分ガスに関する情報を算出する。
これにより、第1成分ガスと第2成分ガスとに対して光吸収特性が少なくとも一部重複する、すなわち、これら成分ガスと干渉する第3成分ガスの測定光の吸収量を、1つのニューマチック検出器にて測定できる。その結果、分析装置をコンパクトにできる。
【0009】
演算部は、第1ニューマチック検出器にて測定された測定光の強度と、第3ニューマチック検出器にて測定された第1通過測定光の強度とに基づいて、第1成分ガスに関する情報を算出してもよい。これにより、演算部は、第3成分ガスと干渉する第1成分ガスに関する情報を精度よく算出できる。
【0010】
第1ニューマチック検出器は、第1成分ガスが封入され測定光が通過する第1封入セルを有してもよい。これにより、第1成分ガスにより吸収された測定光の強度を精度よく測定できる。
【0011】
第2ニューマチック検出器は、第2成分ガスが封入され測定光が通過する第2封入セルを有してもよい。これにより、第2成分ガスにより吸収された測定光の強度を精度よく測定できる。
【0012】
第3ニューマチック検出器は、第2成分ガスが封入された第3封入セルを有してもよい。これにより、第3成分ガスと干渉する第2成分ガスにより吸収された測定光の強度から、第3成分ガスにより吸収された測定光の強度を測定できる。
【0013】
第2封入セル内の第2成分ガスの濃度は、第3封入セル内の第2成分ガスの濃度の半分以下であってもよい。これにより、第3成分ガスにより吸収された測定光の強度を、第3ニューマチック検出器で精度よく測定できる。
【0014】
第1成分ガスは二酸化硫黄であり、第2成分ガスは窒素酸化物であり、第3成分ガスは水蒸気であってもよい。これにより、1つのニューマチック検出器にて測定された測定光の強度に基づいて、サンプルガスに含まれる水蒸気に関する情報を算出できる。
【0015】
上記のガス分析装置は、第4ニューマチック検出器を備えてもよい。第4ニューマチック検出器は、サンプルガスに含まれかつ第1成分ガスと測定光の光吸収特性が少なくとも一部重複する第4成分ガスにより吸収された測定光の強度を、第1ニューマチック検出器を通過後の測定光である第2通過測定光の強度として測定する。
これにより、第1成分ガスと干渉する第4成分ガスにより吸収される測定光の強度を測定できる。
【0016】
演算部は、第1ニューマチック検出器にて測定された測定光の強度と、第3ニューマチック検出器にて測定された第1通過測定光の強度と、第4ニューマチック検出器にて測定された第2通過測定光の強度と、に基づいて第1成分ガスに関する情報を算出してもよい。
これにより、第1成分ガスと干渉する第3成分ガス及び第4成分ガスによる測定光の吸収量を考慮して、第1成分ガスに関する情報を精度よく算出できる。
【0017】
第4成分ガスはメタンであってもよい。これにより、第1成分ガスと干渉するメタンの測定光の吸収量を考慮して、第1成分ガスに関する情報を精度よく算出できる。
【発明の効果】
【0018】
上記の分析装置は、分析対象成分毎に干渉成分の光吸収特性を検出するニューマチック検出器を設ける必要がないので、コンパクトとできる。また、分析装置の保守作業を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】分析装置の構成を示す図。
図2】各成分ガスの光吸収特性の一例を示す図。
図3】成分ガスの分析動作を示すフローチャート。
図4】信号値Sig(Gs2)を用いて算出した濃度を第5信号値から算出される補正量により補正して算出した窒素酸化物の濃度の経時変化と、実際の窒素酸化物の濃度の経時変化と、の一例を示す図。
図5】信号値Sig(Gs2)を用いて算出した濃度の経時変化と、実際の窒素酸化物の濃度の経時変化と、の一例を示す図。
図6】サンプリングユニットと分析装置の接続関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.第1実施形態
(1)分析装置の構成
以下、図1を用いて、第1実施形態に係る分析装置100の構成を説明する。図1は、分析装置の構成を示す図である。分析装置100は、例えば、大気、煙道を流れる排ガス、各種プロセスにて発生するプロセスガス、ごみなどの燃焼により生じる排ガス、ボイラの燃焼にて発生する排ガス、ガスボンベに充填されたガスなどのサンプルガスGsに含まれる成分ガスを、当該成分ガスの光吸収特性を用いて分析する装置である。具体的には、分析装置100は、ニューマチック検出器を用いて成分ガスにより吸収された赤外光の強度を測定し、サンプルガスGs中の成分ガスの含有量に関する情報(例えば、濃度)を測定する装置である。
【0021】
第1実施形態に係る分析装置100にて分析可能な成分ガスとしては、例えば、二酸化硫黄(SO)、窒素酸化物(NO)ガス(例えば、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(NO)など)がある。その他、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、炭化水素ガス(例えば、メタン(CH)、プロパン(C)など)、などがある。
【0022】
また、第1実施形態に係る分析装置100は、サンプルガスGsに含まれる複数種類の成分ガスを分析可能である。以下に説明する分析装置100は、サンプルガスGsに含まれる第1成分ガスGs1及び第2成分ガスGs2の2種類を分析対象とする。以下の例では、第1成分ガスGs1を二酸化硫黄(SO)とし、第2成分ガスGs2を一酸化窒素(NO)とする。
【0023】
なお、第2成分ガスGs2を一酸化窒素以外の窒素酸化物(NO)とすることもできる。この場合、サンプルガスGsに含まれる窒素酸化物(第2成分ガスGs2)は、NOxコンバータ(図示せず)を用いて一酸化窒素に変換されてもよい。
【0024】
以下、分析装置100の具体的構成について説明していく。図1に示すように、分析装置は、測定セル1と、光源3と、センサ部5と、演算部7と、を主に備える。
測定セル1は、内部にサンプルガスGsを導入可能な中空部材である。測定セル1は、サンプルガスGsを内部に導入するための導入口1aと、その内部に導入したサンプルガスGsを外部に排出する排出口1bと、を有する。測定セル1の両端には赤外透過窓(例えばフッ化カルシウム結晶窓)が装着され、シール構造となっている。なお、サンプルガスGsを導入する中空部材の内部の空間を、測定空間Spと呼ぶ。
【0025】
上記の測定セル1では、例えば、排出口1bに接続されたポンプ(図示せず)により測定空間Spを吸引することにより、導入口1aが接続された箇所(例えば、煙道など)に存在するサンプルガスGsを測定空間Spに導入できる。その他、導入口1aが接続された箇所の圧力により、サンプルガスGsを測定空間Spに導入することもできる。この場合、排出口1bからのガスの吸引は、特に必要ない。
【0026】
上記のように、測定セル1の長さ方向の両端には赤外透過窓が装着されているので、光源3から放射された測定光Lmは測定空間Spを通過可能となっている。その他、例えば、測定セル1の長さ方向に光学フィルタを設けるなどして、測定光Lmのうち、成分ガスが吸収できる波長範囲の光のみを、測定空間Spに通過可能となっていてもよい。
【0027】
光源3は、測定セル1の長さ方向の一端に設けられる。光源3は、第1成分ガスGs1及び第2成分ガスGs2が吸収できる波長範囲の光を少なくとも含む測定光Lmを、測定セル1の測定空間Spに放射する。上記にて示した分析装置100で分析可能な成分ガスは、赤外波長領域の光を吸収する。従って、本実施形態で用いられる測定光Lmは赤外光である。また、光源3は、赤外光を放射できる光源であれば任意の光源を使用できる。
【0028】
センサ部5は、測定セル1の長さ方向の光源3が設けられた側とは反対側に設けられる。センサ部5は、測定空間Spを通過した測定光Lmの強度を測定する。センサ部5の詳細は後述する。
【0029】
演算部7は、CPU、記憶装置(RAM、ROMなど)、各種インターフェース(例えば、D/A変換器、A/D変換器など)にて構成されるコンピュータシステムである。演算部7は、分析装置100における各種の情報処理を行う。具体的には、演算部7は、センサ部5にて測定された測定光Lmの強度に関する電気信号を情報処理し、第1成分ガスGs1及び第2成分ガスGs2による測定光Lmの吸収量を算出する。演算部7は、当該吸収量に基づいて、第1成分ガスGs1及び第2成分ガスGs2の含有量に関する情報を算出する。また、演算部7は、分析装置100の各構成要素を制御する機能も有する。
【0030】
演算部7において実行される各種の情報処理の一部又は全部は、演算部7を構成するコンピュータシステムの記憶装置に記憶されたプログラムにより実現されてもよい。演算部7は、上記の各種の情報処理の一部又は全部をハードウェア的に実現してもよい。
また、演算部7は、CPU、記憶装置、各種インターフェース、及び、演算部7の上表処理の一部又は全部を実現する回路等を1つのチップに形成したSoC(System on Chip)であってもよい。
【0031】
図1に示すように、本実施形態の分析装置100は、集光部材9をさらに備えている。集光部材9は、赤外光を反射する素材からなり、その内壁がテーパー形状であり、かつ、当該テーパー形状の内壁の表面は測定光Lmが反射可能に表面処理(例えば、鏡面処理など)されている。また、集光部材9のテーパー形状の内壁の途中に光経路91が設けられている。集光部材9は、テーバー形状の内壁表面において反射された測定光Lmを、光経路91に導入する。
【0032】
図1に示すように、光経路91の出口は導入口1aの表面に接触している。また、導入口1aの反対側の表面には、光経路91の出口に正対するように、フィルタFを介して、光検出器93が設けられている。なお、導入口1aは、所定のセル長を有するセル構造となっている。導入口1aの両端には、光経路91を通過した測定光Lmが光検出器93に導入されるよう、光学窓Wが設けられる。
【0033】
光検出器93は、光経路91の出口から排出口1bの内部及びフィルタFを通過した測定光Lmの強度を測定する。光検出器93は、例えば、焦電センサである。フィルタFは、測定光Lmのうち、サンプルガスGsに含まれる第5成分ガスGs5により吸収される波長範囲の成分のみを通過させる光学フィルタである。
【0034】
上記構成により、光検出器93は、導入口1aの内部を通過中にサンプルガスGsに含まれる第5成分ガスGs5が吸収した測定光Lmの強度を測定できる。第5成分ガスGs5は、例えば、第2成分ガスGs2(一酸化窒素)に対して干渉成分(第2成分ガスGs2の光吸収特性と第5成分ガスの光吸収特性の少なくとも一部が重複する)となる二酸化炭素(CO)である。
【0035】
なお、分析装置100において第5成分ガスGs5を測定する必要がない場合などには、上記の集光部材9、光経路91、及び、光検出器93は設けられていなくてもよい。
【0036】
(2)センサ部の構成
次に、図1を用いて、分析装置100に備わるセンサ部5の具体的構成を説明する。センサ部5は、測定光Lmが測定セル1を通過する間に、サンプルガスGsに含まれる成分(第1成分ガスGs1、第2成分ガスGs2など)が吸収した後の測定光Lmの強度(すなわち、測定光Lmの吸収量)を測定する。後述するように、本実施形態のセンサ部5は、ニューマチック検出器により構成されている。
ニューマチック検出器は、分析対象、又は、それと光吸収特性が同一又は類似した成分を封入したセル(封入セルと呼ぶ)を有している。ニューマチック検出器は、封入セル内を通過する間に測定光Lmが封入セル内の成分により吸収されて発生する物理量(例えば、発熱による膨張量)に関する信号を取得することで、検出器に入射した測定光Lmの強度を測定するセンサである。このような構成により、ニューマチック検出器は、分析対象に対して高い選択性を有する。
【0037】
図1に示すように、センサ部5は、光分岐部材51と、第1ニューマチック検出器53と、第2ニューマチック検出器55と、を有する。
光分岐部材51は、測定セル1を通過後の測定光Lmを、第1ニューマチック検出器53が配置された方向(図1の例では、測定セル1の長さ方向と垂直な方向)と、第2ニューマチック検出器55が配置された方向(図1の例では、測定セル1の長さ方向)と、に分岐する。光分岐部材51は、例えば、ハーフミラーなどの、光を複数の方向に伝搬させるための部材である。
【0038】
第1ニューマチック検出器53は、光分岐部材51から見て測定セル1の長さ方向とは垂直な方向において、光分岐部材51から所定の距離だけ離れて配置されている。第1ニューマチック検出器53は、第1成分ガスGs1(本実施形態では、二酸化硫黄)を封入した第1封入セル53aを有する。本実施形態においては、第1封入セル53aには、不活性ガス(例えば、アルゴン(Ar)ガス)に数%の第1成分ガスGs1(二酸化硫黄)が混合したガスが封入されている。
第1封入セル53aは測定光Lmを透過する材料(光学窓)にて形成されており、光分岐部材51からの測定光Lmは、第1封入セル53aの内部に入射し、当該内部を通過した後に第1封入セル53aから出射する。従って、第1ニューマチック検出器53の後にセンサが配置されていれば、そのセンサにも測定光Lmが入射する。
【0039】
上記の構成を有する第1ニューマチック検出器53は、測定セル1を通過後の測定光Lmのうち、第1成分ガスGs1により吸収された波長範囲の測定光Lmの強度を測定できる。
【0040】
なお、本実施形態の分析装置100においては、光分岐部材51と第1ニューマチック検出器53との間に、第1フィルタF1が設けられている。第1フィルタF1は、測定光Lmのうち、第1成分ガスGs1により吸収される波長範囲の光を通過させる光学フィルタである。
これにより、第1ニューマチック検出器53においては、測定光Lmのうち第1成分ガスGs1により吸収される波長範囲の光が第1封入セル53aに入射される。その結果、第1ニューマチック検出器53は、第1成分ガスGs1により吸収された測定光Lmの強度を精度よく測定できる。
【0041】
第2ニューマチック検出器55は、光分岐部材51から見て測定セル1の長さ方向において、光分岐部材51から所定の距離だけ離れて配置されている。第2ニューマチック検出器55は、第2成分ガスGs2(本実施形態では、一酸化窒素)を封入した第2封入セル55aを有する。本実施形態においては、第2封入セル55aには、不活性ガス(例えば、アルゴン(Ar)ガス)に十数%の第2成分ガスGs2(一酸化窒素)が混合したガスが封入されている。
第2封入セル55aは測定光Lmを透過する材料(光学窓)にて形成されており、光分岐部材51からの測定光Lmは、第2封入セル55aの内部に入射し、当該内部を通過した後に第2封入セル55aから出射する。従って、第2ニューマチック検出器55の後にセンサが配置されていれば、そのセンサにも測定光Lmが入射する。
【0042】
上記の構成を有する第2ニューマチック検出器55は、測定セル1を通過後の測定光Lmのうち、第2成分ガスGs2により吸収された波長範囲の測定光Lmの強度を測定できる。
【0043】
なお、本実施形態の分析装置100においては、光分岐部材51と第2ニューマチック検出器55との間に、第2フィルタF2が設けられている。第2フィルタF2は、測定光Lmのうち、第2成分ガスGs2により吸収される波長範囲の光を通過させる光学フィルタである。
これにより、第2ニューマチック検出器55においては、測定光Lmのうち第2成分ガスGs2により吸収される波長範囲の光が第2封入セル55aに入射される。その結果、第2ニューマチック検出器55は、第2成分ガスGs2により吸収された測定光Lmの強度を精度よく測定できる。
【0044】
上記のニューマチック検出器による測定光Lmの強度の測定結果は、検出器の構成上、分析対象の成分ガスによる測定光Lmの吸収だけでなく、他の成分(干渉成分とも呼ばれる)による測定光Lmの吸収にも影響を受ける。この現象は、干渉成分の光吸収特性(光吸収の波長範囲)の少なくとも一部が、分析対象の成分ガスの光吸収特性の少なくとも一部と重複することにより発生する。
【0045】
例えば、図2に示すように、第1成分ガスGs1である二酸化硫黄(SO)の光(赤外光)の吸収波長範囲は7~8μmであるが、この波長範囲の赤外光は、水蒸気(HO)(第3成分ガスGs3)、及び、メタン(CH)(第4成分ガスGs4)によっても吸収される。図2は、各成分ガスの光吸収特性の一例を示す図である。
また、第2成分ガスGs2である一酸化窒素(NO)の光の吸収波長範囲は5~6μmであるが、この波長範囲の赤外光は水蒸気(HO)(第3成分ガスGs3)によっても吸収される。
【0046】
このように、第1成分ガスGs1の吸収波長範囲は、第3成分ガスGs3(水蒸気)及び第4成分ガスGs4(メタン(CH))の吸収波長範囲の一部と重複しているので、第1ニューマチック検出器53の測定光Lmの測定結果は、第1成分ガスGs1による測定光Lmの吸収のみでなく、第3成分ガスGs3(水蒸気)及び第4成分ガスGs4による吸収の影響も受ける。
また、第2成分ガスGs2の吸収波長範囲は、第3成分ガスGs3(水蒸気)の吸収波長範囲の一部と重複しているので、第2ニューマチック検出器55の測定光Lmの測定結果は、第2成分ガスGs2による測定光Lmの吸収のみでなく、第3成分ガスGs3(水蒸気)による吸収の影響も受ける。
【0047】
煙道などからサンプリングしたサンプルガスGsには、二酸化硫黄、一酸化窒素などの窒素酸化物(NO)以外にも、これらの成分ガスに対して干渉成分となりうる物質(水蒸気、メタンなど)が含まれることがある。
従って、本実施形態のセンサ部5は、図1に示すように、第1ニューマチック検出器53及び第2ニューマチック検出器55に加えて、干渉成分である第3成分ガスGs3の影響を検出する第3ニューマチック検出器57と、干渉成分である第4成分ガスGs4の影響を検出する第4ニューマチック検出器59と、をさらに有する。なお、本実施形態において、第3成分ガスGs3は水蒸気であり、第4成分ガスGs4はメタンである。
【0048】
第3ニューマチック検出器57は、測定光Lmの伝搬方向に対して、第2ニューマチック検出器55の後方に配置されている。すなわち、第3ニューマチック検出器57は、第2ニューマチック検出器55の第2封入セル55aから出射した測定光Lm(第1通過測定光Lm1と呼ぶ)を入力とする。
【0049】
第3ニューマチック検出器57は、第2成分ガスGs2を任意の濃度で封入した第3封入セル57aを有する。図2に示すように、一酸化窒素の光吸収特性は、水蒸気(第3成分ガスGs3)の光吸収特性と重複しているので、第2成分ガスGs2を任意の濃度で第3封入セル57aに封入することにより、第3成分ガスGs3(水蒸気)による測定光Lmの吸収を検出できる。
【0050】
第3封入セル57aは測定光Lmを透過する材料(光学窓)にて形成されており、第2ニューマチック検出器55から出射される第1通過測定光Lm1は、第3封入セル57aの内部に入射し、当該内部を伝搬する。その間に、第1通過測定光Lm1は、第3封入セル57aに封入された第2成分ガスGs2によって吸収される。
第1通過測定光Lm1は、測定セル1及び第2ニューマチック検出器55を通過した測定光Lmである。従って、上記の構成を有する第3ニューマチック検出器57は、測定セル1を通過後の測定光Lmのうち第3成分ガスGs3により吸収された波長範囲の測定光Lmの強度を、第1通過測定光Lm1の強度として測定できる。
【0051】
なお、本実施形態においては、第3封入セル57aには、95%~100%の第2成分ガスGs2が封入されている。その一方で、第2封入セル55aに封入された第2成分ガスGs2の濃度は十数%(例えば、12%)程度である。すなわち、第2封入セル55a内の第2成分ガスGs2の濃度は、第3封入セル57a内の第2成分ガスGs2の濃度の約1/8である。
第2封入セル55a内の第2成分ガスGs2の濃度が、第3封入セル57a内の第2成分ガスGs2の濃度の半分以下であれば、第2封入セル55a及び第3封入セル57aに封入する第2成分ガスGs2の濃度は任意とできる。
【0052】
このように、第2封入セル55a内の第2成分ガスGs2の濃度を低くし、第3封入セル57a内の第2成分ガスGs2の濃度を高くすることで、第2ニューマチック検出器55による第2成分ガスGs2の検出感度を確保しつつ、第2封入セル55aにおける測定光Lmの吸収を抑制して第1通過測定光Lm1の強度を十分な大きさに維持できる。その結果、第3ニューマチック検出器57は、サンプルガスGsに含まれる第3成分ガスGs3により吸収された測定光Lmの強度を精度よく測定できる。
【0053】
第4ニューマチック検出器59は、測定光Lmの伝搬方向に対して、第1ニューマチック検出器53の後方に配置されている。すなわち、第4ニューマチック検出器59は、第1ニューマチック検出器53の第1封入セル53aから出射した測定光Lm(第2通過測定光Lm2と呼ぶ)を入力とする。第4ニューマチック検出器59は、第4成分ガスGs4(メタン)を封入した第4封入セル59aを有する。
【0054】
また、第4封入セル59aは測定光Lmを透過する材料(光学窓)にて形成されており、第1ニューマチック検出器53から出射される第2通過測定光Lm2は、第4封入セル59aの内部に入射し、当該内部を伝搬する。その間に、第2通過測定光Lm2は、第4封入セル59aに封入された第4成分ガスGs4によって吸収される。
第2通過測定光Lm2は、測定セル1及び第1ニューマチック検出器53を通過した測定光Lmである。従って、上記の構成を有する第4ニューマチック検出器59は、測定セル1を通過後の測定光Lmのうち第4成分ガスGs4により吸収された波長範囲の測定光Lmの強度を、第2通過測定光Lm2の強度として測定できる。
【0055】
なお、本実施形態においては、第4封入セル59aには、ほぼ100%の第4成分ガスGs4が封入されている。その一方で、第1封入セル53aに封入された第1成分ガスGs1の濃度は数%(例えば、5%)程度である。すなわち、第1封入セル53a内の第2成分ガスGs2の濃度は、第4封入セル59a内の第4成分ガスGs4の濃度の約1/20である。
なお、第1封入セル53a内の第1成分ガスGs1の濃度と、第4封入セル59a内の第4成分ガスGs4の濃度とは、各検出器での検出感度等を考慮して適宜決定できる。
【0056】
このように、第1封入セル53a内の第1成分ガスGs1の濃度を低くし、第4封入セル59a内の第4成分ガスGs4の濃度を高くすることで、第1ニューマチック検出器53による第1成分ガスGs1の検出感度を確保しつつ、第1封入セル53aにおける測定光Lmの吸収を抑制して第2通過測定光Lm2の強度を十分な大きさに維持できる。その結果、第4ニューマチック検出器59は、サンプルガスGsに含まれる第4成分ガスGs4により吸収された測定光Lmの強度を精度よく測定できる。
【0057】
(3)分析装置を用いた成分ガスの分析動作
以下、図3を用いて、上記の構成を有する分析装置100を用いた成分ガスの分析動作を説明する。図3は、成分ガスの分析動作を示すフローチャートである。分析装置100は、最初に、サンプルガスGsを測定セル1に導入する。その後、ステップS1で、光源3が測定光Lmを測定セル1に向けて出力する。
【0058】
次いで、ステップS2で、第1ニューマチック検出器53及び第2ニューマチック検出器55が、測定セル1の測定空間Spを通過した測定光Lmを検出し、検出した測定光Lmの強度に応じた信号を出力する。第3ニューマチック検出器57が、第2封入セル55aを通過後の第1通過測定光Lm1を検出し、検出した第1通過測定光Lm1の強度に応じた信号を出力する。第4ニューマチック検出器59が、第1封入セル53aを通過後の第2通過測定光Lm2を検出し、検出した第2通過測定光Lm2の強度に応じた信号を出力する。さらに、光検出器93が、集光部材9により光経路91に入射した測定光Lmの強度に応じた信号を出力する。
【0059】
演算部7は、第1ニューマチック検出器53~第4ニューマチック検出器59、及び、光検出器93から、これら検出器が出力した信号を入力する。以下、第1ニューマチック検出器53が出力した信号の値(信号値)を第1信号値Sig1、第2ニューマチック検出器55が出力した信号値を第2信号値Sig2、第3ニューマチック検出器57が出力した信号値を第3信号値Sig3、第4ニューマチック検出器59が出力した信号値を第4信号値Sig4、光検出器93が出力した信号値を第5信号値Sig5、とする。
【0060】
検出器から信号を入力後、演算部7は、これらの信号を用いて、第1成分ガスGs1及び第2成分ガスGs2の分析を行う。具体的には、演算部7は、上記信号を用いて、サンプルガスGs内の第1成分ガスGs1及び第2成分ガスGs2の含有量に関する情報(例えば、濃度)を算出する。
具体的には、演算部7は、第1ニューマチック検出器53にて測定された測定光Lmの強度と、第2ニューマチック検出器55にて測定された測定光Lmの強度と、第3ニューマチック検出器57にて測定された第1通過測定光Lm1の強度と、第4ニューマチック検出器59にて測定された第2通過測定光Lm2の強度と、に基づいて、第1成分ガスGs1の含有量に関する情報を算出する。
【0061】
より具体的には、演算部7は、以下のように、まず、第3ニューマチック検出器57から入力した第3信号値Sig3と第2ニューマチック検出器55から入力した第2信号値Sig2に係数k3を乗じた値との差分(第1差分値と呼ぶ)を算出する。次に、第1ニューマチック検出器53から入力した第1信号値Sig1と第1差分値に係数k1を乗じた値との差分(第2差分値と呼ぶ)を算出する。さらに、第2差分値から第4信号値Sig4に係数k3を乗じた値を差し引いて、第1成分ガスGs1の含有量を算出するための信号値(Sig(Gs1)と呼ぶ)を算出する。
Sig(Gs1)={Sig1-k1*(Sig3-k3*Sig2)}-k2*Sig4
【0062】
他の実施形態として、以下に示すように、まず、第1信号値Sig1と第4信号値Sig4に係数k2’を乗じた値との差分(第3差分値と呼ぶ)を算出する。また、第3信号値Sig3と第2信号値Sig2に係数k3’を乗じた値との差分(第4差分値と呼ぶ)を算出する。さらに、第3差分値から、第4差分値に係数k1’を乗じた値を差し引いて、信号値Sig(Gs1)を算出することもできる。この場合、係数k1’は係数k1とは異なっており、係数k2’は係数k2とは異なっており、係数k3’は係数k3とは異なっていてもよい。
Sig(Gs1)=(Sig1-k2’*Sig4)-k1’*(Sig3-k3’*Sig2)
【0063】
一方、演算部7は、第2ニューマチック検出器55にて測定された測定光Lmの強度と、第3ニューマチック検出器57にて測定された第1通過測定光Lm1の強度と、光検出器93にて測定された測定光Lmの強度と、に基づいて、第2成分ガスGs2の含有量に関する情報を算出する。
具体的には、演算部7は、以下のように、第2ニューマチック検出器55から入力した第2信号値Sig2と第3ニューマチック検出器57から入力した第3信号値Sig3に係数k4を乗じた値との差分を算出後、当該差分から光検出器93から入力した第5信号値Sig5に係数k5を乗じた値を差し引いて、第2成分ガスGs2の含有量を算出するための信号値(Sig(Gs2)と呼ぶ)を算出する。
Sig(Gs2)=(Sig2-k4*Sig3)-k5*Sig5
【0064】
他の実施形態として、以下に示すように、第2ニューマチック検出器55から入力した第2信号値Sig2と光検出器93から入力した第5信号値Sig5に係数k5’を乗じた値との差分を算出後に、当該差分から第3ニューマチック検出器57から入力した第3信号値Sig3に係数k4’を乗じた値を差し引いて、信号値Sig(Gs2)を算出することもできる。この場合、係数k4’は係数k4とは異なっており、係数k5’は係数k5とは異なっていてもよい。
Sig(Gs2)=(Sig2-k5’*Sig5)-k4’*Sig3
【0065】
上記のように、本実施形態の分析装置100では、第3ニューマチック検出器57にて測定された第1通過測定光Lm1の強度に基づいて、第3成分ガスGs3に関する情報(本実施形態では、第1成分ガスGs1の検出結果に対する第3成分ガスGs3の影響、第2成分ガスGs2の検出結果に対する第3成分ガスGs3の影響)を決定している。
すなわち、分析装置100では、分析対象である複数の成分ガスに対して共通する干渉成分に関する情報を、1つのニューマチック検出器による測定光Lmの測定結果を用いて算出している。これにより、分析装置100に設ける検出器数を最小限にして、分析装置100をコンパクトにできる。また、分析装置100に設ける検出器数を少なくすることで、分析装置100の保守作業量を少なくできる。
【0066】
2.第2実施形態
上記の第1実施形態においては、第3成分ガスGs3に関する情報は、サンプルガスGsに含まれる第1成分ガスGs1及び第2成分ガスGs2の含有量に関する情報を算出する際の干渉成分に関する情報として用いられていた。
しかし、これに限られず、第2実施形態に係る分析装置200は、サンプルガスGsに含まれる第3成分ガスGs3の含有量に関する情報を取得できる。例えば、分析装置200において、第1成分ガスGs1、第2成分ガスGs2、及び/又は、第4成分ガスGs4を、第3成分ガスGs3に対する干渉成分とすることで、第3成分ガスGs3の含有量に関する情報を算出できる。
【0067】
例えば、演算部7は、第1ニューマチック検出器53から入力した第1信号値Sig1、第2ニューマチック検出器55から入力した第2信号値Sig2、及び/又は、第4ニューマチック検出器59から入力した第4信号値Sig4を用いて、第3成分ガスGs3の測定結果に対する干渉成分の影響(f(Sig1,Sig2,Sig4)と呼ぶ、f(x):xの関数を意味する)を算出する。
次に、演算部7は、第3ニューマチック検出器57から入力した第3信号値Sig3から、上記干渉成分の影響f(Sig1,Sig2,Sig4)を差し引くことで、第3成分ガスGs3の含有量に関する情報を算出できる。
【0068】
なお、第2実施形態に係る分析装置200の構成及び機能は、演算部7が第3成分ガスGs3の含有量に関する情報を算出することを除いて、第1実施形態に係る分析装置100と同一である。従って、ここでは、分析装置200の他の構成及び機能の説明を省略する。
【0069】
3.第3実施形態
上記の実施形態においては、第1信号値Sig1~第3信号値Sig3から干渉成分による信号値を差し引いて算出した新たな信号値に基づいて第1成分ガスGs1~第3成分ガスGs3の分析を行っていた。しかし、これに限られず、この新たな信号値に基づく分析結果をさらに補正することもできる。
例えば、液化天然ガス(LNG)を燃焼させて出力を得るガスタービンから発生する窒素酸化物(NO)(第2成分ガスGs2)の濃度を分析装置100により算出する場合に、信号値Sig(Gs2)を用いて算出した窒素酸化物の濃度を、他の成分の測定結果を用いて補正できる。
【0070】
ガスタービンから発生する窒素酸化物の濃度を上記の信号値Sig(Gs2)を用いて算出したところ、算出された窒素酸化物の濃度が実際の濃度よりも大きな値となることがあった。信号値Sig(Gs2)を用いて算出した濃度と実際の濃度との乖離は、特に、ガスタービンが低負荷運転しているときに顕著となっていた。
【0071】
上記の乖離が発生する原因を調査したところ、上記の乖離は、低負荷運転時のガスタービンにおける液化天然ガスの不完全燃焼により一酸化炭素及び未燃の炭化水素が想定よりも高濃度(例えば、数千ppmオーダー)で生成されているときに発生していることが判明した。すなわち、不完全燃焼により生じた高濃度の一酸化炭素及び未燃の炭化水素が分析結果の乖離の原因であると考えられた。なお、通常運転時には不完全燃焼が発生していないと考えられ、これらの成分の発生は少なかった。
また、ガスタービンから発生する二酸化炭素の量は、低負荷運転時の不完全燃焼により一酸化炭素及び未燃の炭化水素が想定よりも高濃度で発生するときに、不完全燃焼が生じていない通常運転時よりも小さくなることが判明した。このことから、一酸化炭素及び未燃の炭化水素の発生量と二酸化炭素の発生量との間には相関があると考えられた。
【0072】
従って、第3実施形態においては、二酸化炭素の発生量と一酸化炭素及び未燃の炭化水素の発生量との間に相関があることを利用して、上記のSig(Gs2)から算出される濃度を、光検出器93から入力した第5信号値Sig5を用いて算出された二酸化炭素の濃度により補正して、窒素酸化物の濃度を算出する。
具体的には、以下の式を用いて窒素酸化物の濃度を算出する。以下の式において、Conc(NO)は窒素酸化物の濃度、Conc(Sig(Gs2))は信号値Sig(Gs2)から算出される濃度、Conc(Sig5)は第5信号値Sig5から算出される二酸化炭素の濃度、f(Conc(Sig5))は窒素酸化物の濃度の補正量であり、第5信号値Sig5から算出される二酸化炭素の濃度の関数である。
Conc(NO)=Conc(Sig(Gs2))-f(Conc(Sig5))
【0073】
窒素酸化物の濃度の補正量を表す関数f(Conc(Sig5))は、例えば、最小二乗法を用いて、ガスタービンから発生する二酸化炭素の濃度と、実際の窒素酸化物の濃度と信号値Sig(Gs2)から算出される濃度との差分との関係を表すデータの近似式として算出できる。
なお、実際の窒素酸化物の濃度は、窒素酸化物以外の成分の存在が窒素酸化物の濃度の測定値にほとんど影響を与えない分析装置(例えば、化学発光法(CLA)を用いた窒素酸化物の分析装置)を用いて取得できる。
【0074】
信号値Sig(Gs2)を用いて算出した濃度を、第5信号値Sig5から算出される二酸化炭素の濃度の関数である補正量により補正することで、図4に示すように、算出された窒素酸化物の濃度(図4では実線で示すグラフ)は、実際の窒素酸化物の濃度(図4では破線で示すグラフ)と、ガスタービンの運転の全期間において(すなわち、不完全燃焼が生じているか否かにかかわらず)よく一致している。なお、図4において、一点鎖線で示すグラフは、二酸化炭素の濃度を示す。
図4は、信号値Sig(Gs2)を用いて算出した濃度を第5信号値から算出される補正量により補正して算出した窒素酸化物の濃度の経時変化と、実際の窒素酸化物の濃度の経時変化と、の一例を示す図である。
【0075】
一方、比較例として、信号値Sig(Gs2)を用いて算出した濃度を補正しない場合には、図5に示すように、算出された窒素酸化物の濃度(図5では実線で示すグラフ)は、特に、二酸化炭素の濃度が小さい期間、すなわち、ガスタービンが低負荷で運転されることで不完全燃焼が生じ一酸化炭素及び未燃の炭化水素が高濃度で発生している期間において、実際の窒素酸化物の濃度から乖離している。すなわち、ガスタービンで不完全燃焼が生じているか否かにより、窒素酸化物の濃度測定結果が影響を受けている。
図5は、信号値Sig(Gs2)を用いて算出した濃度の経時変化と、実際の窒素酸化物の濃度の経時変化と、の一例を示す図である。
【0076】
3.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(A)分析装置100、200は、サンプルガスGsに含まれる2種類以上のガスを分析対象とできる。この場合、上記にて説明したように、分析装置には各分析対象に対してニューマチック検出器を設けるが、複数の分析対象についての共通の干渉成分の影響は、共通のニューマチック検出器により測定できる。
【0077】
(B)ニューマチック検出器の封入セルに高濃度のガスが封入されている場合(第1実施形態及び第2実施形態では、第4ニューマチック検出器59)、演算部7は、当該ニューマチック検出器から出力される信号のリニアライズ処理を実行してもよい。
(C)光分岐部材51の代わりに、集光部材9のような内部がテーパー状である部材を設けることで、測定光Lmを第1ニューマチック検出器53に向けて伝搬させるようにしてもよい。
【0078】
(D)分析装置100、200は、比較セルと光断続機構とを備えてもよい。比較セルは、窒素などの測定光Lmを吸収しないガスを封入したセルである。光断続機構は、測定光Lmを測定セル1と比較セルに同時に導入するかしないかを切り替える機構である。このような光断続機構としては、例えば、測定セル1用の点灯光源と、比較セル用の点灯光源と、チョッパーと、を組み合わせた機構、測定セル1用の点滅光源と比較セル用の点滅光源とを組み合わせた機構が挙げられる。上記光源は、測定セル1と比較セルに同時に測定光Lmを導入できる1つの光源であってもよい。その他、光断続機構は、測定セル1と比較セルに交互に測定光Lmを導入する機構であってもよい。
この場合、演算部7は、測定セル1を通過した測定光Lmの強度と、比較セルを通過した測定光Lmの強度と、の差分に基づいて分析対象の成分ガスを分析する。これにより、測定セル1を通過後の測定光Lmの測定結果に含まれるバックグラウンド成分を差し引いて、より精度よく分析ガスを分析できる。
【0079】
(E)分析装置100、200(の導入口1a)は、図6に示すように、煙道又は配管などからサンプルガスGsを含むガスをサンプリングして、分析装置100の測定空間Sp(すなわち、測定セル1)に導入するサンプリングユニット101に接続されてもよい。図6は、サンプリングユニットと分析装置の接続関係を示す図である。
サンプリングユニット101は、例えば、煙道又は配管などを流れるガスをサンプリングするプローブ1011と、サンプリングしたガスに含まれるダストなどを捕集する捕集フィルタ1013と、サンプリングしたガスを前処理する前処理装置1015(例えば、電気冷却器と、ドレンセパレータと、チューブポンプと、硫酸ミスト、塩分などを除去するミストキャッチャと、窒素酸化物(NO)を一酸化窒素に還元するNOxコンバータと、により構成される)と、により構成される。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、サンプルガスに含まれる複数の成分を分析するガス分析装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0081】
100、200 分析装置
1 測定セル
1a 導入口
1b 排出口
3 光源
5 センサ部
51 光分岐部材
53 第1ニューマチック検出器
53a 第1封入セル
55 第2ニューマチック検出器
55a 第2封入セル
57 第3ニューマチック検出器
57a 第3封入セル
59 第4ニューマチック検出器
59a 第4封入セル
F1 第1フィルタ
F2 第2フィルタ
7 演算部
9 集光部材
91 光経路
93 光検出器
F フィルタ
W 光学窓
101 サンプリングユニット
1011 プローブ
1013 捕集フィルタ
1015 前処理装置
Gs サンプルガス
Gs1 第1成分ガス
Gs2 第2成分ガス
Gs3 第3成分ガス
Gs4 第4成分ガス
Gs5 第5成分ガス
Lm 測定光
Lm1 第1通過測定光
Lm2 第2通過測定光
Sp 測定空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6