(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108634
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】符号化装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 19/117 20140101AFI20220719BHJP
H04N 19/176 20140101ALI20220719BHJP
H04N 19/136 20140101ALI20220719BHJP
H04N 19/196 20140101ALI20220719BHJP
【FI】
H04N19/117
H04N19/176
H04N19/136
H04N19/196
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003740
(22)【出願日】2021-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(71)【出願人】
【識別番号】591053926
【氏名又は名称】一般財団法人NHKエンジニアリングシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】松尾 康孝
【テーマコード(参考)】
5C159
【Fターム(参考)】
5C159KK01
5C159MA04
5C159MA05
5C159MA21
5C159MC11
5C159ME01
5C159PP04
5C159TA69
5C159TB08
5C159TC03
5C159TC04
5C159TC06
5C159TD04
5C159UA02
5C159UA05
5C159UA12
5C159UA14
5C159UA16
(57)【要約】
【課題】符号化効率を向上させる。
【解決手段】符号化装置1は、画像の周波数成分を変化させるフィルタを生成し、原画像の分割ブロックを符号化した後に復号した復号済ユニットにフィルタを適用して2次ユニットを生成する画像処理部10と、復号済ユニット及び2次ユニットを参照して画面内予測を行う画面内予測部21と、復号済ユニット及び2次ユニットを参照して画面間予測を行う画面間予測部22と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像を符号化する符号化装置であって、
画像の周波数成分を変化させるフィルタを生成するフィルタ生成部と、
前記原画像の分割ブロックを符号化した後に復号した復号済ユニットに、前記フィルタを適用して2次ユニットを生成する2次ユニット生成部と、
前記復号済ユニット及び前記2次ユニットを参照して画面内予測を行う画面内予測部と、
前記復号済ユニット及び前記2次ユニットを参照して画面間予測を行う画面間予測部と、
を備える符号化装置。
【請求項2】
前記フィルタ生成部は、画像の高周波成分をぼかすフィルタ及び画像の高周波成分を鮮鋭化するフィルタを生成する、請求項1に記載の符号化装置。
【請求項3】
前記復号済ユニットにおける空間高周波パワーのばらつき及び大きさを求める空間高周波パワー解析部を備え、
前記フィルタ生成部は、前記空間高周波パワーのばらつきが大きいほど前記フィルタの種類を多くし、前記空間高周波パワーの大きさが大きいほどフィルタ係数の最大値と最小値の差を大きくする、請求項1又は2に記載の符号化装置。
【請求項4】
前記空間高周波パワー解析部は、前記復号済ユニットに対して直交変換を行って各要素のパワーを求め、周波数が閾値を超える高周波領域の要素のパワーの合計を前記復号済ユニットの空間高周波パワーとする、請求項3に記載の符号化装置。
【請求項5】
前記復号済ユニット及び前記原画像の差分信号のパワーを示す残差信号パワーのばらつき及び大きさを求める残差信号パワー解析部を備え、
前記フィルタ生成部は、前記残差信号パワーのばらつきが大きいほど前記フィルタの種類を多くし、前記残差信号パワーの大きさが大きいほどフィルタ係数の最大値と最小値の差を大きくする、請求項1又は2に記載の符号化装置。
【請求項6】
前記復号済ユニットを生成する際に用いられた量子化パラメータのばらつき及び大きさを求める符号化品質解析部を備え、
前記フィルタ生成部は、前記量子化パラメータのばらつきが大きいほど前記フィルタの種類を多くし、前記量子化パラメータの大きさが大きいほどフィルタ係数の最大値と最小値の差を大きくする、請求項1又は2に記載の符号化装置。
【請求項7】
前記復号済ユニット及び前記原画像の差分信号のパワーを示す残差信号パワーのばらつき及び大きさを求める残差信号パワー解析部と、
前記復号済ユニットを生成する際に用いられた量子化パラメータのばらつき及び大きさを求める符号化品質解析部と、を備え、
前記フィルタ生成部は、前記空間高周波パワー、前記残差信号パワー、又は前記量子化パラメータのばらつきが大きいほど前記フィルタの種類を多くし、前記空間高周波パワー、前記残差信号パワー、又は前記量子化パラメータの大きさが大きいほどフィルタ係数の最大値と最小値の差を大きくする、請求項3又は4に記載の符号化装置。
【請求項8】
前記2次ユニット生成部は、前記復号済ユニットに対して直交変換を行って直交変換係数を生成し、前記フィルタを前記復号済ユニットのサイズに変換した行列を前記直交変換係数に乗算してフィルタ済直交変換係数を生成し、該フィルタ済直交変換係数に対して逆直交変換を行って前記2次ユニットを生成する、請求項1から7のいずれか一項に記載の符号化装置。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1から8のいずれか一項に記載の符号化装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、符号化装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
H.265/HEVC(High Efficiency Video Coding)、H.266/VVC(Versatile Video Coding)などでは、画素相関を利用して動画像符号化を行うことが知られている(例えば、非特許文献1参照)。画面内予測では、予測対象ユニットの上側や左側の復号済ユニットに属する周辺画素を用いて予測を行う。また画面間予測では、予測対象ユニットの前後フレームの復号済ユニットを用いて予測を行う。一般に、予測対象ユニットとその上側や左側の復号済ユニットに属する周辺画素が同一オブジェクトである場合や、予測対象ユニットとその前後フレームの復号済ユニットが同一オブジェクトである場合は、同一オブジェクト間の画素相関は高いと考えられるため、画面内・画面間予測を高精度に行うことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】大久保榮監修、「インプレス標準教科書シリーズ H.265/HEVC教科書」、株式会社インプレスジャパン、2013年10月21日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の符号化技術において、符号化難易度が非常に高い動画像を符号化した場合、復号済ユニットにぼやけやブロック歪などのアーティファクトが生じやすくなり、符号化効率が低下しやすいという課題がある。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、符号化効率を向上させることが可能な符号化装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る符号化装置は、原画像を符号化する符号化装置であって、画像の周波数成分を変化させるフィルタを生成するフィルタ生成部と、前記原画像の分割ブロックを符号化した後に復号した復号済ユニットに、前記フィルタを適用して2次ユニットを生成する2次ユニット生成部と、前記復号済ユニット及び前記2次ユニットを参照して画面内予測を行う画面内予測部と、前記復号済ユニット及び前記2次ユニットを参照して画面間予測を行う画面間予測部と、を備える。
【0007】
さらに、一実施形態において、前記フィルタ生成部は、画像の高周波成分をぼかすフィルタ及び画像の高周波成分を鮮鋭化するフィルタを生成するようにしてもよい。
【0008】
さらに、一実施形態において、前記復号済ユニットにおける空間高周波パワーのばらつき及び大きさを求める空間高周波パワー解析部を備え、前記フィルタ生成部は、前記空間高周波パワーのばらつきが大きいほど前記フィルタの種類を多くし、前記空間高周波パワーの大きさが大きいほどフィルタ係数の最大値と最小値の差を大きくするようにしてもよい。
【0009】
さらに、一実施形態において、前記空間高周波パワー解析部は、前記復号済ユニットに対して直交変換を行って各要素のパワーを求め、周波数が閾値を超える高周波領域の要素のパワーの合計を前記復号済ユニットの空間高周波パワーとするようにしてもよい。
【0010】
さらに、一実施形態において、前記復号済ユニット及び前記原画像の差分信号のパワーを示す残差信号パワーのばらつき及び大きさを求める残差信号パワー解析部を備え、前記フィルタ生成部は、前記残差信号パワーのばらつきが大きいほど前記フィルタの種類を多くし、前記残差信号パワーの大きさが大きいほどフィルタ係数の最大値と最小値の差を大きくするようにしてもよい。
【0011】
さらに、一実施形態において、前記復号済ユニットを生成する際に用いられた量子化パラメータのばらつき及び大きさを求める符号化品質解析部を備え、前記フィルタ生成部は、前記量子化パラメータのばらつきが大きいほど前記フィルタの種類を多くし、前記量子化パラメータの大きさが大きいほどフィルタ係数の最大値と最小値の差を大きくするようにしてもよい。
【0012】
さらに、一実施形態において、前記復号済ユニット及び前記原画像の差分信号のパワーを示す残差信号パワーのばらつき及び大きさを求める残差信号パワー解析部と、前記復号済ユニットを生成する際に用いられた量子化パラメータのばらつき及び大きさを求める符号化品質解析部と、を備え、前記フィルタ生成部は、前記空間高周波パワー、前記残差信号パワー、又は前記量子化パラメータのばらつきが大きいほど前記フィルタの種類を多くし、前記空間高周波パワー、前記残差信号パワー、又は前記量子化パラメータの大きさが大きいほどフィルタ係数の最大値と最小値の差を大きくするようにしてもよい。
【0013】
さらに、一実施形態において、前記2次ユニット生成部は、前記復号済ユニットに対して直交変換を行って直交変換係数を生成し、前記フィルタを前記復号済ユニットのサイズに変換した行列を前記直交変換係数に乗算してフィルタ済直交変換係数を生成し、該フィルタ済直交変換係数に対して逆直交変換を行って前記2次ユニットを生成するようにしてもよい。
【0014】
また、一実施形態係るプログラムは、コンピュータを、上記符号化装置として機能させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、画像の圧縮符号化効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る符号化装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る符号化装置における画像処理部の構成例を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る符号化装置における空間高周波パワー解析部の処理の一例を説明する図である。
【
図4】一実施形態に係る符号化装置における2次ユニット生成部の処理の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、一実施形態に係る符号化装置の構成例を示すブロック図である。
図1に示す符号化装置1は、画像処理部10と、ブロック分割部11と、減算部12と、変換部13と、ビジュアルアクティビティ算出部14と、QP決定部15と、量子化部16と、逆量子化部17と、逆変換部18と、加算部19と、フレームメモリ20と、画面内予測部21と、画面間予測部22と、切替部23と、エントロピー符号化部24と、を備える。
【0019】
ブロック分割部11は、入力画像(原画像)を分割した分割ブロックを符号ユニット(CU:Coding Unit)として生成し、減算部12、ビジュアルアクティビティ算出部14、及び画面間予測部22に出力する。
【0020】
減算部12は、ブロック分割部11から入力した符号化ユニットの各画素値から、後述する画面内予測部21又は画面間予測部22から入力した予測ユニットの各画素値を減算して、符号化ユニットと予測ユニットと画素値の差分を示す残差信号を生成し、変換部13に出力する。
【0021】
変換部13は、減算部12から入力した残差信号を更に変換ユニット(TU:Transform Unit)に分割して、TUごとに直交変換などの変換処理を行って変換係数を算出し、量子化部16に出力する。
【0022】
ビジュアルアクティビティ算出部14は、ブロック分割部11から入力した符号化ユニットのビジュアルアクティビティを算出し、QP決定部15に出力する。符号化ユニットが高い周波数成分を多く含む場合にはビジュアルアクティビティは大きくなり、符号ユニットが高い周波数成分を多く含まない場合にはビジュアルアクティビティは小さくなる。
【0023】
QP決定部15は、ビジュアルアクティビティ算出部14から入力したビジュアルアクティビティに基づいて量子化パラメータ(QP値)を決定し、量子化部16及び画像処理部10に出力する。
【0024】
量子化部16は、変換部13から入力した変換係数を、QP決定部15から入力したQP値に対応する量子化ステップで除算して量子化することにより量子化係数を生成し、逆量子化部17及びエントロピー符号化部24に出力する。
【0025】
逆量子化部17は、量子化部16から入力した量子化係数に対して、量子化ステップを乗ずることにより変換係数を復元し、逆変換部18に出力する。
【0026】
逆変換部18は、逆量子化部17から入力した変換係数に対して、逆変換処理(変換部13で行った変換を元に戻す処理)を行って残差信号を復元し、加算部19に出力する。例えば、変換部13が離散コサイン変換を行った場合には、逆変換部18は逆離散コサイン変換を行う。
【0027】
加算部19は、逆変換部18から入力した残差信号と、切替部23から入力した予測ユニットとを加算して復号済ユニットを生成し、フレームメモリ20及び画面内予測部21に出力する。
【0028】
フレームメモリ20は、加算部19から入力した復号済ユニットを記憶する。
【0029】
逆量子化部17、逆変換部18、及び加算部19により、局所復号部を構成する。すなわち、局所復号部は、量子化係数に対して量子化ステップを乗じて変換係数を復元し、該変換係数に対して逆変換処理を行って残差信号を復元し、該残差信号と予測ユニットとを加算して復号済ユニットを生成する。
【0030】
画像処理部10は、加算部19及びフレームメモリ20から入力した復号済ユニット(すなわち、画面内予測及び画面間予測に用いられる復号済ユニット)に対して画像処理を行って2次ユニットを生成し、画面内予測部21及び画面間予測部22に出力する。画像処理部10の詳細については後述する。
【0031】
画面内予測部21は、画像処理部10から入力した2次ユニット、及び加算部19から入力した復号済ユニットを参照して、予測ユニット(PU:Prediction Unit)ごとに画面内予測(イントラ予測)を行って画面内予測画像を生成し、切替部23に出力する。従来の符号化装置では復号済ユニットのみを参照して画面内予測を行うところ、符号化装置1では復号済ユニットに加えて2次ユニットも参照して画面内予測を行う点が相違する。
【0032】
画面間予測部22は、ブロック分割部11から入力した符号化ユニットを予測ユニットに分割する。そして、画面間予測部22は、画像処理部10から入力した2次ユニット、及びフレームメモリ20から入力した復号済ユニットを参照して、予測ユニットごとにブロックマッチングなどの手法により動きベクトルを生成する。画面間予測部22は、予測ユニットごとに動きベクトルに基づいて動き補償予測を行って画面間予測画像を生成し、切替部23に出力する。従来の符号化装置では復号済ユニットのみを参照して画面間予測を行うところ、符号化装置1では復号済ユニットに加えて2次ユニットも参照して画面間予測を行う点が相違する。
【0033】
切替部23は、画面内予測部21から入力された画面内予測画像と、画面間予測部22から入力された画面間予測画像とを切替えて予測画像とし、減算部12及び加算部19に出力する。
【0034】
エントロピー符号化部24は、量子化部16から入力された量子化係数、画面内予測部21から入力された予測モード情報、画面間予測部22から入力された動きベクトル情報などに対してエントロピー符号化を行い、データ圧縮を行ってビットストリームを生成し、符号化装置1の外部に出力する。エントロピー符号化は、0次指数ゴロム符号やコンテキスト適応型2値算術符号(CABAC:Context-based Adaptive Binary Arithmetic Coding)など、任意のエントロピー符号化方式を用いることができる。
【0035】
<画像処理部>
次に、画像処理部10の処理について説明する。
図2は、画像処理部10の構成例を示すブロック図である。
図2に示す画像処理部10は、空間高周波パワー解析部101と、残差信号パワー解析部102と、符号化品質解析部103と、フィルタ生成部104と、2次ユニット生成部105と、を備える。画像処理部10は、空間高周波パワー解析部101、残差信号パワー解析部102、及び符号化品質解析部103のうち、少なくとも一つを備えていればよい。画像処理部10が入力(取得)する復号済ユニットは、原画像の分割ブロックを符号化した後に復号された、画面内予測及び画面間予測に用いられる復号済ユニットである。
【0036】
空間高周波パワー解析部101は、加算部19及びフレームメモリ20から入力した復号済ユニットにおける空間高周波パワーのばらつき及び大きさを求め、フィルタ生成部104に出力する。例えば、空間高周波パワー解析部101は、ばらつきとして標準偏差値を求め、大きさとして代表値(例えば最大値)を求める。
【0037】
空間高周波パワー解析部101は、復号済ユニットに対して直交変換を行って各要素のパワーを求め、周波数が閾値を超える高周波領域の要素のパワーの合計を復号済ユニットの空間高周波パワーとする。なお、空間高周波パワー解析部101は、復号済ユニットをブロック領域に分割して、各ブロックに対して直交変換を適用して処理してもよい。
【0038】
図3を参照して、空間高周波パワー解析部101による空間高周波パワーの算出方法について具体的に説明する。
図3は、空間高周波パワー解析部101による空間高周波パワーの算出方法の一例を説明する図である。なお
図3は、画面内予測を行う際の復号済ユニットを示している。空間高周波パワー解析部101は、各復号済ユニットに対して同じ処理を行うが、
図3では復号済ユニットU-1に対する処理を図示している。空間高周波パワー解析部101は、復号済ユニットU-1をブロック領域(ブロック1,2,・・・)に分割して、Type-II DCTなどの直交変換を適用後、全ブロックの要素位置ごとのパワーの平均値を求める。
【0039】
次に、空間高周波パワー解析部101は、全ブロックの要素位置毎のパワーの平均値をジグザグスキャンなどで1次元のデータ列にし、閾値αよりも高い要素のパワーの合計を復号済ユニットU-1の空間高周波パワーとする。閾値αは、例えばブロックの要素数の半分の値である。空間高周波パワー解析部101は、全ての復号済ユニット(復号済ユニットU-2,U-3,・・・)で同様に空間高周波パワーを求めた後、それらのばらつき及び大きさを算出する。
【0040】
残差信号パワー解析部102は、加算部19及びフレームメモリ20から入力した復号済ユニットと、ブロック分割部11から入力した符号化ユニット(すなわち、原画像)との差分信号のパワーを示す残差信号パワーのばらつき及び大きさを求め、フィルタ生成部104に出力する。例えば、残差信号パワー解析部102は、ばらつきとして標準偏差値を求め、大きさとして代表値(例えば最大値)を求める。
【0041】
符号化品質解析部103は、加算部19及びフレームメモリ20から入力した復号済ユニットについて、該復号済ユニットを生成する際に用いられたQP値を、ビジュアルアクティビティ算出部14及びQP決定部15と同様の処理を行って求める。あるいは、符号化品質解析部103は、画面内予測及び画面間予測に用いられる復号済ユニットを生成する際に用いられたQP値を、QP決定部15から入力する。そして、符号化品質解析部103は、QP値のばらつき及び大きさを求め、フィルタ生成部104に出力する。例えば、符号化品質解析部103は、ばらつきとして標準偏差値を求め、大きさとして代表値(例えば最大値)を求める。
【0042】
フィルタ生成部104は、画像の周波数成分を変化させるフィルタを複数生成し、2次ユニット生成部105に出力する。本実施形態では、フィルタ生成部104は、画像の高周波成分(閾値を超える周波数成分)をぼかすフィルタ、及び画像の高周波成分(閾値を超える周波数成分)を鮮鋭化するフィルタを、それぞれ複数種類生成する。画像の高周波成分は任意に設定することができ、例えば、水平方向及び垂直方向の周波数が最大周波数(ナイキスト周波数)の50%以上の成分と設定することができる。フィルタ生成部104は、符号化装置1に入力される画像の種類に応じて、画像の高周波成分をぼかすフィルタ及び鮮鋭化するフィルタのいずれか一方のみを生成してもよい。
【0043】
画像処理部10が空間高周波パワー解析部101を備える場合には、フィルタ生成部104は、空間高周波パワー解析部101から空間高周波パワーのばらつき及び大きさを入力する。空間高周波パワーのばらつきや大きさが大きいほど符号化が困難であり、符号化効率が悪くなると考えられる。そこで、フィルタ生成部104は、空間高周波パワーのばらつきが大きいほどフィルタの種類を多くする。また、フィルタ生成部104は、空間高周波パワーの大きさが大きいほど、複数種類のフィルタにおけるフィルタ係数の最大値と最小値の差を大きくする。すなわち、フィルタ生成部104は、空間高周波パワーの大きさが大きいほど、複数種類のフィルタを用いてフィルタ処理を行った際の画像の周波数成分の変化量が大きくなるように係数を設定する。
【0044】
フィルタ生成部104は、フィルタの種類及びフィルタ係数の設定に関するテーブルを、あらかじめ保持、又は取得する。表1に、空間高周波パワーの標準偏差値と最大値に対する、フィルタの種類及びフィルタ係数の設定例を示す。なお、この設定値は一例であり、適宜実験的に求めて設定可能である。ここで、フィルタ係数の±Nは、1.0を中心に+Nした値を最大値とし、1.0を中心に-Nした値を最小値とすることを意味する。
【0045】
【0046】
例えば、フィルタの種類数が9、フィルタ係数が±0.3である場合、フィルタ係数をプラスマイナス各方向に4分割し、{0.700,0.775,0.850,0.925,1.000,1.075,1.150,1.225,1.300}を各フィルタの高周波領域の係数とする。例えば、フィルタを4行4列の行列とし、右下の2行2列の行列を高周波領域とした場合、フィルタ係数を
【数1】
としたフィルタを適用することにより、水平方向及び垂直方向の周波数が最大周波数の50%以上の高周波成分をぼかすことができる。また、フィルタ係数を
【数2】
としたフィルタを適用することにより水平方向及び垂直方向の周波数が最大周波数の50%以上の高周波成分を鮮鋭化することができる。
【0047】
画像処理部10が残差信号パワー解析部102を備える場合には、フィルタ生成部104は、残差信号パワー解析部102から残差信号パワーのばらつき及び大きさを入力する。残差信号パワーのばらつきや大きさが大きいほど符号化が困難であり、符号化効率が悪くなると考えられる。そこで、フィルタ生成部104は、残差信号パワーのばらつきが大きいほどフィルタの種類を多くする。また、フィルタ生成部104は、残差信号パワーの大きさが大きいほど、複数種類のフィルタにおけるフィルタ係数の最大値と最小値の差を大きくする。すなわち、フィルタ生成部104は、残差信号パワーの大きさが大きいほど、複数種類のフィルタを用いてフィルタ処理を行った際の画像の周波数成分の変化量が大きくなるように係数を設定する。
【0048】
表2に、残差信号パワーの標準偏差値と最大値に対する、フィルタの種類及びフィルタ係数の設定例を示す。なお、この設定値は一例であり、適宜実験的に求めて設定可能である。ここで、フィルタ係数の±Nは、1.0を中心に+Nした値を最大値とし、1.0を中心に-Nした値を最小値とすることを意味する。
【0049】
【0050】
画像処理部10が符号化品質解析部103を備える場合には、フィルタ生成部104は、符号化品質解析部103からQP値のばらつき及び大きさを入力する。QP値のばらつきや大きさが大きいほど符号化が困難であり、符号化効率が悪くなると考えられる。そこで、フィルタ生成部104は、QP値のばらつきが大きいほどフィルタの種類を多くする。また、フィルタ生成部104は、QP値の大きさが大きいほど、複数種類のフィルタにおけるフィルタ係数の最大値と最小値の差を大きくする。すなわち、フィルタ生成部104は、QP値の大きさが大きいほど、複数種類のフィルタを用いてフィルタ処理を行った際の画像の周波数成分の変化量が大きくなるように係数を設定する。
【0051】
表3に、QP値の標準偏差値と最大値に対する、フィルタの種類及びフィルタ係数の設定例を示す。なお、この設定値は一例であり、適宜実験的に求めて設定可能である。ここで、フィルタ係数の±Nは、1.0を中心に+Nした値を最大値とし、1.0を中心に-Nした値を最小値とすることを意味する。
【0052】
【0053】
画像処理部10は、空間高周波パワー解析部101、残差信号パワー解析部102、及び符号化品質解析部103のうち、2つ以上を備える場合には、フィルタ生成部104は、各テーブルから求まるフィルタの種類数のうち最も多いものを採用し、各テーブルから求まるフィルタ係数の変化量のうち最も大きいものを採用する。例えば、画像処理部10が、空間高周波パワー解析部101、残差信号パワー解析部102、及び符号化品質解析部103を全て備える場合において、フィルタの種類数がそれぞれ{3、5、9}であり、フィルタ係数の変化量がそれぞれ{±0.3、±0.1、±0.2}である場合は、フィルタの種類数を9とし、フィルタ係数の変化量を±0.3とする。
【0054】
なお、上記ではフィルタ係数の値を1.0±Nとしたが、フィルタ係数の値を1.0-N1から1.0+N2(N1≠N2)までとしてもよい。また、N1=0であってもよいし、N2=0であってもよい。
【0055】
2次ユニット生成部105は、加算部19及びフレームメモリ20から入力した復号済ユニット(すなわち、原画像の分割ブロックを符号化した後に復号した復号済ユニット)に、フィルタ生成部104から入力したフィルタを適用して2次ユニットを生成し、画面内予測部21及び画面間予測部22に出力する。
【0056】
図4を参照して、2次ユニット生成部105による2次ユニットの算出方法について具体的に説明する。
図4は、2次ユニット生成部105による2次ユニットの算出方法の一例を説明する図である。2次ユニット生成部105は、復号済ユニットU1をブロック領域に分割し、各ブロックに Type-II DCT などの直交変換を行って直交変換係数C1を生成する(ステップS1)。
【0057】
復号済ユニットのサイズは、32×32、16×16、8×8、4×4など複数種類あるため、フィルタ生成部104が生成するフィルタF1のサイズを復号済ユニットの最小単位である4×4とし、2次ユニット生成部105は、フィルタF1を復号済ユニットU1のサイズに拡大した乗算用フィルタF2を生成するようにしてもよい(ステップS2)。フィルタF1の拡大には、ニアレストネイバー法、バイリニア法、バイキュービック法などの任意の手法を用いることができる。
【0058】
そして、2次ユニット生成部105は、直交変換係数C1に乗算用フィルタF2を乗算し、フィルタ済直交変換係数C2を生成する(ステップS3)。
【0059】
最後に、2次ユニット生成部105は、フィルタ済直交変換係数C2に対して逆直交変換を行って2次ユニットU2を生成する(ステップS4)。
【0060】
このように、
図4に示す例では、2次ユニット生成部105は、復号済ユニットに対して直交変換を行って直交変換係数を生成し、フィルタを復号済ユニットのサイズに変換した行列を直交変換係数に乗算してフィルタ済直交変換係数を生成し、該フィルタ済直交変換係数に対して逆直交変換を行って2次ユニットを生成する。2次ユニット生成部105は、以上の処理を、フィルタ生成部104から入力した全種類のフィルタを用いて全ての復号済ユニットに適用し、複数の2次ユニットを生成する。
【0061】
本実施形態では、画像処理部10は、復号済ユニットに対して画像処理を行って2次ユニットを生成するが、さらに予測対象ユニットに対しても同様に画像処理を行って2次ユニットを生成するようにしてもよい。
【0062】
(プログラム)
上述した符号化装置1として機能させるために、プログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッドなどであってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。
【0063】
コンピュータは、プロセッサと、記憶部と、入力部と、出力部と、通信インターフェースとを備える。プロセッサは、具体的にはCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)などであり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。プロセッサは、記憶部からプログラムを読み出して実行することで、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
【0064】
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性(non-transitory)の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリなどであってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0065】
以上説明したように、本発明に係る符号化装置1又はプログラムは、画像の周波数成分を変化させるフィルタを生成し、復号済ユニットにフィルタを適用して2次ユニットを生成する。そして、復号済ユニット及び2次ユニットを参照して画面内予測を行い、復号済ユニット及び2次ユニットを参照して画面間予測を行う。このため、従来の符号化方法よりも画面内予測及び画面間予測において参照するユニット数が増加するため、符号化の精度が向上し、符号化効率を向上させることが可能となる。
【0066】
フィルタは、画像の高周波成分をぼかすフィルタ及び画像の高周波成分を鮮鋭化するフィルタとすることが望ましい。画面内又は画面間で相関性の低い画像を符号化する場合でも、復号済みユニットにフィルタを適用してぼかすことにより、2次ユニットと予測ユニットとの相関性が向上することが期待される。また、予測ユニットの原画像が復号済みユニットよりも鮮鋭な画像である場合には、復号済みユニットにフィルタを適用して鮮鋭化することにより、2次ユニットと予測ユニットとの相関性が向上することが期待される。
【0067】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを統合したり、1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 符号化装置
10 画像処理部
11 ブロック分割部
12 減算部
13 変換部
14 ビジュアルアクティビティ算出部
15 QP決定部
16 量子化部
17 逆量子化部
18 逆変換部
19 加算部
20 フレームメモリ
21 画面内予測部
22 画面間予測部
23 切替部
24 エントロピー符号化部
101 空間高周波パワー解析部
102 残差信号パワー解析部
103 符号化品質解析部
104 フィルタ生成部
105 2次ユニット生成部