(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108637
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/38 20060101AFI20220719BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20220719BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
H05K3/38 A
H05K3/34 501D
H01L23/12 N
H01L23/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003743
(22)【出願日】2021-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 輝
(72)【発明者】
【氏名】春日 崇志
【テーマコード(参考)】
5E319
5E343
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AB10
5E319AC02
5E319AC11
5E319BB01
5E319CC22
5E319GG20
5E343AA02
5E343AA15
5E343AA16
5E343AA17
5E343AA18
5E343AA36
5E343BB16
5E343BB24
5E343BB52
5E343DD25
5E343DD33
5E343DD43
5E343ER16
5E343ER18
5E343ER26
5E343GG04
(57)【要約】
【課題】接続信頼性を向上すること。
【解決手段】配線基板は、配線層と、前記配線層上に積層される絶縁層と、前記絶縁層を前記配線層まで貫通する開口部と、前記絶縁層の開口部に形成される導体膜とを有し、前記絶縁層の表面は、前記導体膜から露出する平滑部と、前記導体膜に被覆される前記開口部の内壁面を含み、前記平滑部よりも表面粗度が大きい粗化部とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線層と、
前記配線層上に積層される絶縁層と、
前記絶縁層を前記配線層まで貫通する開口部と、
前記絶縁層の開口部に形成される導体膜とを有し、
前記絶縁層の表面は、
前記導体膜から露出する平滑部と、
前記導体膜に被覆される前記開口部の内壁面を含み、前記平滑部よりも表面粗度が大きい粗化部と
を有することを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記導体膜は、
前記開口部の内壁面と、前記開口部から露出する前記配線層の表面とを被覆する第1の導体膜と、
前記第1の導体膜上に積層される第2の導体膜と
を有することを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項3】
前記第1の導体膜の側面は、
前記第2の導体膜の側面よりも内方に位置することを特徴とする請求項2記載の配線基板。
【請求項4】
前記粗化部は、
前記平滑部の表面粗度の1.5~50倍の大きさの表面粗度を有することを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項5】
前記粗化部は、
前記開口部周囲の前記絶縁層の表面と、前記開口部の内壁とに設けられ、
前記導体膜に被覆される
ことを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項6】
前記導体膜は、
前記配線層に接続するとともに前記絶縁層の開口部から突出し、接続端子を形成することを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項7】
前記導体膜は、
前記絶縁層上に形成される他の配線層と前記配線層とを接続するビアを形成することを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項8】
配線層上に絶縁層を積層する工程と、
前記絶縁層に、前記配線層まで貫通する開口部を形成する工程と、
前記開口部の内壁面を含む前記絶縁層の表面の一部を粗化する工程と、
前記絶縁層の表面に導体膜を形成する工程と、
前記導体膜の不要部分をエッチングにより除去する工程と
を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記開口部を形成する工程は、
前記絶縁層にレーザを照射することにより前記開口部を形成するとともに、前記開口部の内壁面を含む前記絶縁層の表面の一部を変質させ、
前記粗化する工程は、
薬液を用いるデスミア処理により、変質した前記絶縁層の表面の一部を粗化する
ことを特徴とする請求項8記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記粗化する工程は、
前記一部を除く前記絶縁層の表面にマスクを形成する工程と、
プラズマを用いるドライデスミア処理により前記絶縁層の表面を微小エッチングして、前記一部を粗化する工程と、
前記マスクを除去する工程と
を有することを特徴とする請求項8記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば半導体チップが搭載される配線基板には、例えばセミアディティブ法を利用して形成される多層配線構造を有するものがある。具体的には、絶縁層上に無電解めっき及び電解めっきにより配線層が形成され、さらにこの配線層を被覆する絶縁層が形成される。このように、絶縁層及び配線層の積層を繰り返すことにより、多層配線構造を有する配線基板が形成される。
【0003】
このような配線基板では、必要に応じて絶縁層を貫通するビアが設けられ、異なる配線層の配線パターンが電気的に接続される。また、多層配線構造の最外層にある配線層は、絶縁性のソルダーレジスト層によって被覆される。そして、必要に応じてソルダーレジスト層を貫通する接続端子が設けられることにより、最外層にある配線層とソルダーレジスト層上に搭載される半導体チップなどの電子部品とが電気的に接続可能となっている。
【0004】
これらのビアや接続端子は、絶縁層又はソルダーレジスト層に開口部を形成し、この開口部の内壁面を含む絶縁層又はソルダーレジスト層の表面に無電解めっきによってシード層を形成し、シード層上に電解めっきを施すことにより形成される。電解めっきは、ビアや接続端子が形成される部分以外を例えばドライフィルムレジスト(DFR)によってマスクすることによって行われる。電解めっきが施された後、DFRは除去され、不要部分に露出するシード層は、エッチングによって除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-125709号公報
【特許文献2】特開2019-186243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した配線基板においては、ビア及び接続端子の接続信頼性が十分ではないという問題がある。具体的には、不要部分のシード層がエッチングにより除去される際、サイドエッチングによってビア及び接続端子の基部のシード層が側方からエッチングされ、アンダーカットが発生する。これは、シード層のエッチングに用いられるエッチング液が等方性であり、不要部分のシード層が厚さ方向にエッチングされると同時に、面に沿った方向にもエッチングされ、ビア及び接続端子の根本付近が側方から溶解されるためである。
【0007】
アンダーカットの量は、エッチング時間によって変化するため、エッチング時間を短くしてアンダーカットを小さくすることも考えられる。しかし、この場合、不要部分のシード層が十分に除去されず、配線パターンのショートが発生する恐れがある。したがって、エッチング時間は、不要部分のシード層を厚さ方向にすべて除去するための時間よりも長くして、配線パターンのショートを確実に防止するのが一般的である。結果として、サイドエッチングが増加し、アンダーカットが大きくなる。
【0008】
そして、アンダーカットが大きくなるとビア及び接続端子の可動域が大きくなり、ビア及び接続端子と配線層との電気的接続が不安定になる。すなわち、配線基板の配線層との接続信頼性が低下してしまう。
【0009】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、接続信頼性を向上することができる配線基板及び配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願が開示する配線基板は、1つの態様において、配線層と、前記配線層上に積層される絶縁層と、前記絶縁層を前記配線層まで貫通する開口部と、前記絶縁層の開口部に形成される導体膜とを有し、前記絶縁層の表面は、前記導体膜から露出する平滑部と、前記導体膜に被覆される前記開口部の内壁面を含み、前記平滑部よりも表面粗度が大きい粗化部とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本願が開示する配線基板及び配線基板の製造方法の1つの態様によれば、接続信頼性を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施の形態に係る配線基板の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、接続端子の一部を拡大して示す図である。
【
図4】
図4は、一実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示すフロー図である。
【
図5】
図5は、コア基板形成工程の具体例を示す図である。
【
図6】
図6は、絶縁層形成工程の具体例を示す図である。
【
図7】
図7は、開口部形成工程の具体例を示す図である。
【
図8】
図8は、配線層形成工程の具体例を示す図である。
【
図9】
図9は、多層配線構造の具体例を示す図である。
【
図10】
図10は、ソルダーレジスト層形成工程の具体例を示す図である。
【
図11】
図11は、接続端子形成工程の具体例を示す図である。
【
図12】
図12は、半導体チップ搭載工程の具体例を示す図である。
【
図14】
図14は、ソルダーレジスト層の一部を拡大して示す図である。
【
図16】
図16は、デスミア処理工程の具体例を示す図である。
【
図17】
図17は、無電解めっき工程の具体例を示す図である。
【
図19】
図19は、DFR層形成工程の具体例を示す図である。
【
図21】
図21は、DFR層除去工程の具体例を示す図である。
【
図24】
図24は、ドライデスミア処理工程の具体例を示す図である。
【
図25】
図25は、マスク除去処理工程の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本願が開示する配線基板及び配線基板の製造方法の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
図1は、一実施の形態に係る配線基板100の構成を示す図である。
図1においては、配線基板100の断面を模式的に示している。
図1に示す配線基板100は、例えば半導体チップを搭載する半導体装置の基板として利用することが可能である。
【0015】
配線基板100は、積層構造となっており、コア基板110、多層配線構造120及びソルダーレジスト層130、140を有する。以下においては、
図1に示すように、ソルダーレジスト層140が最下層であり、ソルダーレジスト層130が最上層であるものとして説明するが、配線基板100は、例えば上下反転して用いられても良く、任意の姿勢で用いられて良い。
【0016】
コア基板110は、板状の絶縁体である基材111の両面に、金属のめっきにより配線層113が形成されたものである。両面の配線層113は、必要に応じて基材111を貫通する貫通配線112によって接続される。
【0017】
多層配線構造120は、絶縁性の絶縁層121と導電性の配線層122とを備える層が積層されたものである。絶縁層121は、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びシアネート樹脂等の耐熱性を有し、非感光性及び熱硬化性の絶縁樹脂を用いて形成される。また、配線層122は、例えば銅や銅合金などの金属を用いて形成される。
図1においては、コア基板110の上方の多層配線構造120内に2層が積層され、コア基板110の下方の多層配線構造120内に2層が積層されているが、積層される層の数は1層又は3層以上であっても良い。絶縁層121を介して隣接する配線層113、122は、必要に応じて絶縁層121を貫通するビア123によって接続される。絶縁層121が非感光性の熱硬化性樹脂を用いて形成されるため、ビア123を形成するための開口部をレーザ加工により形成することが可能である。そして、後述するように、ビア123が形成される開口部の内壁面及びビア123の付近においては、絶縁層121の表面が粗化されている。
【0018】
ソルダーレジスト層130は、多層配線構造120の最上層の配線層122を被覆し、配線を保護する層である。ソルダーレジスト層130は、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びシアネート樹脂等の耐熱性を有し、非感光性及び熱硬化性の絶縁樹脂からなる層であり、絶縁層の1つである。
【0019】
配線基板100のソルダーレジスト層130側は、例えば半導体チップなどの電子部品が搭載される面である。半導体チップが搭載される位置においては、ソルダーレジスト層130に開口部131が形成される。ソルダーレジスト層130は、非感光性の熱硬化性樹脂を用いて形成されるため、レーザ加工により開口部131を形成することが可能である。そして、開口部131には、多層配線構造120の配線層122と半導体チップの電極とを接続する接続端子150が形成される。後述するように、開口部131の内壁面及び接続端子150の付近においては、ソルダーレジスト層130の表面が粗化されている。
【0020】
ソルダーレジスト層140は、ソルダーレジスト層130と同様に、多層配線構造120の表面の配線層122を被覆し、配線を保護する層である。ソルダーレジスト層140は、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びシアネート樹脂等の耐熱性を有し、非感光性及び熱硬化性の絶縁樹脂からなる層であり、絶縁層の1つである。
【0021】
配線基板100のソルダーレジスト層140側は、外部の部品や機器などに接続される面である。外部の部品や機器と電気的に接続する外部接続端子が形成される位置においては、ソルダーレジスト層140に開口部141が形成され、開口部141から多層配線構造120の配線層122が露出する。開口部141には、例えばはんだボールなどの外部接続端子が形成される。ソルダーレジスト層140は、非感光性の熱硬化性樹脂を用いて形成されるため、レーザ加工により開口部141を形成することが可能である。
【0022】
図2は、
図1のAの部分を拡大して示す図である。同図においては、接続端子150とソルダーレジスト層130との境界付近が拡大して示されている。
【0023】
図2に示すように、接続端子150は、無電解めっきによって形成される無電解めっき膜であるシード層151と、シード層151上に電解めっきによって形成される電解めっき膜であるポスト152とを有する。また、接続端子150が形成される位置付近においては、ソルダーレジスト層130の表面が粗化され粗化部130aが形成されている。他の位置においては、ソルダーレジスト層130の表面は平滑であり平滑部130bとなっている。接続端子150を形成するシード層151は、無電解めっきによって粗化部130aに形成されている。粗化部130aは、平滑部130bと比較して、ソルダーレジスト層130の表面に平行な方向の単位長さ当たりの沿面距離が長いため、シード層151のサイドエッチング量が小さくなり、ポスト152の周囲におけるアンダーカットも小さくなる。
【0024】
すなわち、不要部分のシード層は、平滑部130bに形成されており、このシード層がエッチングによって除去される際、接続端子150を形成するシード層151がサイドエッチングされる。このとき、シード層151が形成される粗化部130aの沿面距離が長いため、ソルダーレジスト層130の表面に平行な方向のサイドエッチングの進行は比較的遅く、ポスト152の下部及びシード層151が溶解される量は少なくて済む。結果として、接続端子150のアンダーカットが小さく、接続端子150と配線層122との接続信頼性を向上することができる。
【0025】
なお、ここでは、接続端子150の構造について説明したが、絶縁層121を貫通するビア123及び周辺の配線層122も接続端子150と同様に、シード層と電解めっき層からなる。具体的には、例えば
図3に示すように、ビア123が形成される位置において、配線層122は、シード層122aと電解めっき層122bとからなる。ビア123は、絶縁層121の開口部内においてシード層122a上に電解めっきが充填されることにより形成されている。このような配線層122及びビア123は、例えばセミアディティブ法により形成される。
【0026】
そして、ビア123が形成される位置付近においては、絶縁層121の表面に粗化部が形成されている。すなわち、ビア123が形成される絶縁層121の開口部の内壁面付近が粗化され、シード層122aは、粗化部を被覆するように形成される。ビア123は、このシード層122aに電解めっきが施されて形成されるため、ビア123のアンダーカットを小さくして、ビア123と配線層113(又は下層の配線層122)との接続信頼性を向上することができる。
【0027】
次いで、上記のように構成された配線基板100を有する半導体装置の製造方法について、具体的に例を挙げながら、
図4のフロー図を参照して説明する。
【0028】
まず、配線基板100の支持部材となるコア基板110が形成される(ステップS101)。具体的には、例えば
図5に示すように、板状の絶縁体である基材111に、基材111を貫通する貫通配線112が形成されるとともに、基材111の両面に例えば銅や銅合金などの金属の配線層113が例えば銅箔又は銅めっきにより形成される。基材111の両面の配線層113は、必要に応じて、例えば銅や銅合金などの金属のめっきによって形成された貫通配線112によって接続されている。基材111としては、例えばガラス織布等の補強材にエポキシ樹脂等の絶縁樹脂を含浸させたものを用いることが可能である。補強材としては、ガラス織布の他にも、ガラス不織布、アラミド織布又はアラミド不織布などを用いることができる。また、絶縁樹脂としては、エポキシ樹脂の他にも、ポリイミド樹脂又はシアネート樹脂などを用いることができる。
【0029】
そして、コア基板110の上面及び下面にビルドアップ法によって多層配線構造120が形成される。具体的には、例えば
図6に示すように、まずコア基板110の上面及び下面に絶縁層121が形成される(ステップS102)。すなわち、コア基板110の配線層113に、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びシアネート樹脂等の耐熱性を有し、非感光性及び熱硬化性の樹脂からなる絶縁層121が積層される。
【0030】
絶縁層121のビア123が形成される位置には、開口部が形成される(ステップS103)。すなわち、例えば
図7に示すように、絶縁層121を貫通し、底面に配線層113を露出させる開口部121aが形成される。このとき、絶縁層121が非感光性樹脂によって形成されているため、レーザ加工によって開口部121aが形成される。レーザ加工には、例えばCO
2レーザ又はUVレーザなどが用いられ、絶縁層121の表面温度が少なくとも絶縁層121を構成する樹脂のガラス転移温度以上となるように絶縁層121の表面にレーザが照射される。つまり、開口部121aが形成される際には、開口部121aの内壁面及び周辺に絶縁層121の材料を変質させるエネルギーを有するレーザが照射され、開口部121aの内壁面及び周辺が脆化する。
【0031】
絶縁層121に開口部121aが形成されると、樹脂残渣を除去するためにデスミア処理が行われる。すなわち、例えば過マンガン酸カリウム溶液を用いて、開口部121a内及び周辺に残留する樹脂残渣が除去される。このとき、開口部121aの内壁面及び周辺が脆化しているため、これらの部分がデスミア処理に用いられる薬液に浸漬されると、絶縁層121の表面が粗化されて表面粗度が大きくなる。開口部121aの内壁面及び周辺の表面粗度は、レーザ照射によって脆化されていない部分の表面粗度と比較して、例えば3~10倍程度の大きさとなる。
【0032】
そして、開口部121aが形成された絶縁層121上に配線層122が形成される(ステップS104)。配線層122は、例えばセミアディティブ法により形成される。この場合、開口部121aの内壁面を含む絶縁層121の表面に、例えば無電解銅めっきによってシード層を形成する。次いで、シード層上に配線パターン形成部分に開口を設けためっきレジスト層を形成する。次いで、めっきレジスト層の開口から露出するシード層上に例えば電解銅めっきを施し、電解めっき層を形成する。次いで、めっきレジスト層を除去する。この後、電解めっき層から露出するシード層をエッチングで除去することにより、所望の配線パターンを有する配線層122が形成される。
【0033】
このとき、例えば
図8に示すように、絶縁層121の開口部121aには、電解銅めっきが充填されることで絶縁層121を貫通するビア123が形成され、コア基板110の配線層113と配線層122とが電気的に接続される。また、電解銅めっきによって配線パターンが形成された後、配線パターンが形成されない不要部分のシード層がエッチングによって除去されるが、ビア123の周辺では絶縁層121の表面が粗化されているため、ビア123を形成するシード層のサイドエッチング量は小さい。このため、ビア123の周囲におけるアンダーカットが小さくなり、ビア123による接続信頼性を向上することができる。なお、シード層は、銅等の金属のスパッタにより形成しても良い。無電解めっきやスパッタによるシード層や、電解めっき層が、導体膜の一例である。
【0034】
以上のような絶縁層121形成、開口部121a形成及び配線層122形成が所望回数繰り返されることにより、絶縁層121及び配線層122が順次積層され、多層配線構造120が形成される。以下では、例えば
図9に示すように、コア基板110の上下面にそれぞれ2層の絶縁層121及び配線層122が形成されるものとして説明を続ける。
図9に示す各ビア123の周辺では、絶縁層121の表面が粗化されているため、ビア123の周囲におけるアンダーカットが小さく接続信頼性が向上している。
【0035】
ビルドアップ法によって多層配線構造120が形成されると、多層配線構造120の表面の配線層122がソルダーレジスト層130、140によって被覆される(ステップS105)。すなわち、コア基板110の上面に積層された多層配線構造120の表面の配線層122がソルダーレジスト層130によって被覆され、コア基板110の下面に積層された多層配線構造120の表面の配線層122がソルダーレジスト層140によって被覆される。ソルダーレジスト層130、140は、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びシアネート樹脂等の耐熱性を有し、非感光性及び熱硬化性の樹脂を材料として形成される。
【0036】
そして、例えば
図10に示すように、半導体チップが搭載される側のソルダーレジスト層130には、半導体チップとの接続端子150が設けられる位置に開口部131が形成される(ステップS106)。開口部131の底面には、多層配線構造120の最上層の配線層122が露出する。一方、外部の部品や機器と接続される側のソルダーレジスト層140には、外部接続端子が設けられる位置に開口部141が形成される。開口部141の底面には、多層配線構造120の最下層の配線層122が露出する。
【0037】
ソルダーレジスト層130、140が非感光性樹脂によって形成されているため、開口部131、141は、レーザ加工によって形成される。レーザ加工には、例えばCO2レーザ又はUVレーザなどが用いられ、ソルダーレジスト層130、140の表面温度が少なくともソルダーレジスト層130、140を構成する樹脂のガラス転移温度以上となるようにソルダーレジスト層130、140の表面にレーザが照射される。つまり、開口部131、141が形成される際には、開口部131、141の内壁面及び周辺にソルダーレジスト層130、140の材料を変質させるエネルギーを有するレーザが照射され、開口部131、141の内壁面及び周辺が脆化する。
【0038】
ソルダーレジスト層130、140に開口部131、141が形成されると、樹脂残渣を除去するためにデスミア処理が行われる。すなわち、例えば過マンガン酸カリウム溶液を用いて、開口部131、141内及び周辺に残留する樹脂残渣が除去される。このとき、開口部131、141の内壁面及び周辺が脆化しているため、これらの部分がデスミア処理に用いられる薬液に浸漬されると、ソルダーレジスト層130、140の表面が粗化されて表面粗度が大きくなる。開口部131、141の内壁面及び周辺の表面粗度は、レーザ照射によって脆化されていない部分の表面粗度と比較して、例えば3~10倍程度の大きさとなる。
【0039】
そして、ソルダーレジスト層130の開口部131に接続端子150が形成される(ステップS107)。すなわち、ソルダーレジスト層130の表面に、例えば無電解銅めっきによってシード層が形成され、開口部131の位置においてシード層上に例えば電解銅めっきが施されることにより、シード層151とポスト152からなる接続端子150が形成される。接続端子150は、例えば
図11に示すように、ソルダーレジスト層130の開口部131の位置において、多層配線構造120の最上層の配線層122に接続する。なお、シード層は、銅等の金属のスパッタにより形成しても良い。無電解めっきやスパッタによるシード層や、電解めっき層が、導体膜の一例である。
【0040】
接続端子150の形成時には、シード層151上に電解銅めっきによってポスト152が形成された後、不要部分のシード層がエッチングによって除去されるが、開口部131の周辺ではソルダーレジスト層130の表面が粗化されているため、シード層151のサイドエッチング量は小さい。このため、接続端子150の周囲におけるアンダーカットが小さくなり、接続端子150による接続信頼性を向上することができる。なお、接続端子150の形成については、後に詳述する。
【0041】
接続端子150が形成されることにより、配線基板100が完成する。そして、配線基板100のソルダーレジスト層130側には半導体チップが搭載され(ステップS108)、接続端子150と半導体チップの電極とが接続される。
【0042】
具体的には、例えば
図12に示すように、半導体チップ180が接続端子150の上方に搭載される。半導体チップ180は、電極181が例えばはんだなどによって接続端子150に接合されるとともに、電極181と接続端子150との接合部がアンダーフィル樹脂182によって封止されることにより、配線基板100に実装される。次いで、ソルダーレジスト層140の開口部141に、はんだボール170などの外部接続端子が形成される(ステップ109)。なお、上述した半導体チップ180を搭載する工程と外部接続端子を形成する工程とは順序が逆であっても良い。また、はんだボール170を設けずに、ソルダーレジスト層140の開口部141から露出する配線層122部分を外部接続端子としても良い。
【0043】
次に、接続端子150の形成工程について、より具体的に
図13に示すフロー図を参照しながら説明する。ここでは、例えば
図14に示すように、多層配線構造120の最上層の配線層122を被覆するソルダーレジスト層130に接続端子150を形成する方法について説明する。ただし、同様の方法は、絶縁層121にビア123を形成する場合にも適用することが可能である。
【0044】
非感光性の絶縁樹脂を用いてソルダーレジスト層130が形成されると、ソルダーレジスト層130に開口部131が形成される(ステップS201)。具体的には、例えば
図15に示すように、配線層122の配線パターンが配置される位置において、例えばCO
2レーザやUVレーザなどのレーザが照射されることにより、ソルダーレジスト層130に開口部131が形成される。このとき、ソルダーレジスト層130の表面温度が少なくともソルダーレジスト層130を構成する樹脂のガラス転移温度以上となるように、比較的高エネルギーのレーザが照射されるため、開口部131の内壁面131a及びその周辺の樹脂が変質し脆化する。
図15においては、樹脂が変質する部分を太線で示している。
【0045】
そして、開口部131の底面や内壁面131a及びその周辺に残留する樹脂残渣を除去するため、デスミア処理が行われる(ステップS202)。すなわち、例えば過マンガン酸カリウム溶液などの薬液によって開口部131内及びその周辺が洗浄される。開口部131の内壁面131a及びその周辺は、レーザ照射によって脆化しているため、例えば
図16に示すように、薬液に浸漬されると粗化される。つまり、開口部131の周辺においては、ソルダーレジスト層130の表面に粗化部130aが形成され、その他の平滑部130bと比較すると、表面粗度が大きくなる。
【0046】
具体的には、平滑部130bの表面粗度を表す算術平均粗さRaは、例えば60~100nm程度であるのに対し、粗化部130a算術平均粗さRaは、例えば300~600nm程度である。したがって、粗化部130aの表面粗度は、平滑部130bの表面粗度と比較して、例えば3~10倍程度の大きさとなる。このような粗化部130a及び平滑部130bの表面粗度の比率は一例であるが、粗化部130aの表面粗度は、平滑部130bの表面粗度の1.5~50倍程度の範囲にあるのが好ましい。粗化部130aの表面粗度が大きくなることにより、粗化部130aにおいては、ソルダーレジスト層130の表面に平行な方向の単位長さ当たりの沿面距離が長くなる。すなわち、粗化部130aにおける単位長さ当たりの沿面距離は、平滑部130bにおける単位長さ当たりの沿面距離の例えば3~10倍となる。
【0047】
このようにして開口部131の周辺に粗化部130aが形成されると、無電解めっきによってシード層151が形成される(ステップS203)。具体的には、例えば
図17に示すように、粗化部130a及び平滑部130bを含むソルダーレジスト層130の表面に例えば無電解銅めっきが施されることにより、シード層151が形成される。シード層151の厚さは、例えば0.5~1.5μm程度である。
【0048】
シード層151は、配線層122の上面、粗化部130a及び平滑部130bを被覆する。このシード層151を上方から見る場合の外観は、例えば
図18に示すようになっている。すなわち、中央の配線層122の上面を被覆する部分の周囲には、開口部131の内壁面を含む粗化部130aを被覆する部分が広がり、さらにその周囲には、平滑部130bを被覆する部分が広がっている。なお、シード層151は、銅等の金属のスパッタにより形成しても良い。
【0049】
シード層151が形成されると、電解めっきのマスクとなるドライフィルムレジスト(DFR)層が形成される(ステップS204)。すなわち、シード層151上にDFRが積層され、接続端子150の位置に応じた露光及び現像が行われることにより、例えば
図19に示すように、接続端子150が形成される位置を除く部分のシード層151上にDFR210が形成される。
【0050】
そして、電解めっきが施されることによって、シード層151上にポスト152が形成される(ステップS205)。具体的には、例えば硫酸銅めっき液を用いて電解銅めっきが施されることにより、DFR210が形成されていない部分に銅が析出し、例えば
図20に示すように、シード層151上にポスト152が形成される。この際、開口部131内は電解めっきにより充填される。
【0051】
ポスト152が形成されると、DFR210が除去される(ステップS206)。DFR210の除去には、例えば苛性ソーダやアミン系のアルカリ剥離液が用いられる。DFR210の除去により、例えば
図21に示すように、ポスト152がソルダーレジスト層130から突出し、シード層151を介して配線層122に接続する状態となる。この段階では、シード層151が全面に残存しており、ポスト152が他のポストと短絡しているため、ポスト152と重ならない不要部分のシード層151を除去する必要がある。
【0052】
そこで、ポスト152をマスクとしてシード層151のエッチングが行われる(ステップS207)。具体的には、ソルダーレジスト層130の上面に形成されたシード層151が例えば銅を選択的に溶解するエッチング液に浸漬され、例えば
図22に示すように、ポスト152と重ならない不要部分のシード層151が除去される。これにより、配線層122に接続し、シード層151とポスト152からなる接続端子150が形成される。
【0053】
シード層151のエッチングにおいては、不要部分のシード層151が溶解されると同時に、サイドエッチングが進行してポスト152と重なるシード層151が側方から溶解される。しかし、ポスト152と重なる領域において、シード層151は、ソルダーレジスト層130の表面の粗化部130aに形成されているため、サイドエッチングの進行は比較的遅い。すなわち、粗化部130aの沿面距離が長いため、粗化部130a上のシード層151へのエッチング液の進入が阻害され、シード層151のサイドエッチング量は小さくなる。この結果、ポスト152と重なるシード層151が溶解される量は少なくて済み、接続端子150のアンダーカットが小さくなる。このため、接続端子150は、ソルダーレジスト層130の表面に確実に固定され、接続端子150と配線層122との接続信頼性を向上することができる。
【0054】
以上のように、本実施の形態によれば、樹脂から形成される絶縁層にレーザ加工によって開口部を形成する際に、レーザ照射によって開口部周辺の樹脂を変質させ、デスミア処理によって樹脂残渣を除去する際に、変質した開口部周辺を粗化させる。そして、開口部周辺を含む絶縁層の表面にシード層を形成し、シード層上に電解めっきを施して接続端子又はビアを形成し、不要部分のシード層をエッチングにより除去する。このため、不要部分のシード層がエッチングされる際、粗化された開口部周辺へのエッチング液の進入が阻害され、電解めっきと重なる部分のシード層のサイドエッチング量を小さくすることができる。結果として、接続端子又はビアを確実に絶縁層の表面に固定し、接続端子又はビアの接続信頼性を向上することができる。
【0055】
なお、上記一実施の形態においては、レーザ照射によって絶縁層の開口部周辺の樹脂を変質させ、変質した開口部周辺のデスミア処理によって絶縁層の表面を粗化するものとした。しかしながら、絶縁層の表面を粗化する方法は、上記の方法に限定されない。例えば、絶縁層に開口部を形成した後、開口部周辺以外の平滑部とする部分を例えばDFRなどによってマスクし、マスクされない開口部周辺に例えばドライデスミア処理を施すことにより、開口部周辺を粗化しても良い。
【0056】
この場合、例えば絶縁樹脂を用いてソルダーレジスト層130が形成されると、ソルダーレジスト層130に開口部131が形成され、開口部131の周辺に例えばDFRによってマスクが形成される。すなわち、例えば
図23に示すように、開口部131の内壁面131a及びその周辺を除くソルダーレジスト層130の表面が、DFR220によってマスクされる。
【0057】
そして、開口部131の底面や内壁面131a及びその周辺に残留する樹脂残渣を除去するため、ドライデスミア処理が行われる。ドライデスミア処理は、プラズマ処理の一種であり、例えばCF
4(四フッ化炭素)ガスを用いることにより、絶縁層の表面の樹脂を微小エッチングするものである。このため、ドライデスミア処理によって、例えば
図24に示すように、DFR220から露出する開口部131の内壁面131a及びその周辺において、ソルダーレジスト層130の表面が粗化される。
【0058】
その後、例えば
図25に示すように、DFR220によるマスクが除去されると、ソルダーレジスト層130の表面には、粗化部130aと平滑部130bとが形成されることになる。つまり、開口部131の周辺においては、ソルダーレジスト層130の表面に粗化部130aが形成され、その他の平滑部130bと比較すると、表面粗度が大きくなる。
【0059】
このような方法によれば、DFRによるマスク及びマスクの除去という工程が増加するものの、露光及び現像により絶縁層に開口部を形成する場合でも、開口部周辺を粗化することが可能となり、絶縁層の材料として感光性の樹脂を用いることができる。
【0060】
また、上記一実施の形態においては、接続端子150がシード層151及びポスト152からなるものとしたが、接続端子150の上面に、例えばニッケル/パラジウム/金めっき等の表面処理層が形成されても良い。接続端子150の上面に表面処理層が形成されることにより、例えば半導体チップ180の電極181がはんだによって接続端子150に接合される際、はんだの濡れ性を向上することができる。
【0061】
また、上記一実施の形態においては、コア基板110上にビルドアップ法で多層配線構造120を形成した配線基板100を例に説明した。しかし、本発明は、コア基板110を有さない、コアレス配線基板に適用しても良い。
【符号の説明】
【0062】
110 コア基板
111 基材
112 貫通配線
113、122 配線層
120 多層配線構造
121 絶縁層
121a、131、141 開口部
123 ビア
130、140 ソルダーレジスト層
130a 粗化部
130b 平滑部
150 接続端子
151 シード層
152 ポスト
180 半導体チップ