(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108852
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】ヒドロキシ基含有ポリマーを含む金属表面塗布膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
C23C 26/00 20060101AFI20220720BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20220720BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
C23C26/00 A
H05K3/28 C
H01L23/12 501P
H01L23/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004029
(22)【出願日】2021-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】岸岡 高広
【テーマコード(参考)】
4K044
5E314
【Fターム(参考)】
4K044AA06
4K044AB10
4K044BA21
4K044BB01
4K044BB03
4K044BC02
4K044BC04
4K044CA53
5E314AA24
5E314BB02
5E314CC01
5E314CC04
5E314DD06
5E314FF01
5E314FF03
5E314FF04
5E314FF05
5E314GG05
5E314GG11
5E314GG26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特に半導体後工程における再配線形成工程において有用である、金属表面塗布膜形成組成物、それらを用いた配線基板、半導体装置、それらの製造方法を提供する。
【解決手段】フェノール性ヒドロキシ基を含むポリマー又は化合物、及び有機溶剤を含む金属表面塗布膜形成組成物である。前記ポリマー又は化合物が、式(I):
(式中、R
0は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1~10のアルキル基又はそれらの組み合わせを表し、nは0~4の整数を表し、*は、前記ポリマー又は化合物の残基との結合部位を表す。)で表される部分構造を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール性ヒドロキシ基を含むポリマー又は化合物、及び有機溶剤を含む、金属表面塗布膜形成組成物。
【請求項2】
前記ポリマー又は化合物が、式(I):
【化1】
(式中、R
0は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1~10のアルキル基又はそれらの組み合わせを表し、
又はR
0はヒドロキシ基を有してもよい炭素原子数3~4のアルキレン若しくはアルケニレン基であって、式中のベンゼン環の2個の炭素原子に結合して環を形成していてもよく、
nは0~4の整数を表し、*は、前記ポリマー又は化合物の残基との結合部位を表す。)で表される部分構造を含む、請求項1に記載の金属表面塗布膜形成組成物。
【請求項3】
前記式(I)において、ヒドロキシ基を表すR0がOH基に対してオルト位に存在する、請求項1又は2に記載の金属表面塗布膜形成組成物。
【請求項4】
前記ポリマーが、ノボラック樹脂又はビニル重合ポリマーを含む、請求項1~3の何れか1項に記載の金属表面塗布膜形成組成物。
【請求項5】
前記式(I)において、nが1又は2を表す、請求項4に記載の金属表面塗布膜形成組成物。
【請求項6】
バインダー、架橋剤、及び添加剤からなる群より選択される少なくとも一種をさらに含む、請求項1~5の何れか1項に記載の金属表面塗布膜形成組成物。
【請求項7】
金属表面に塗布膜を形成するための、請求項1~6の何れか1項に記載の金属表面塗布膜形成組成物の使用。
【請求項8】
銅又はアルミニウムを含む金属表面に塗布膜を形成するための、請求項1~6の何れか1項に記載の金属表面塗布膜形成組成物の使用。
【請求項9】
半導体再配線、プリント配線及び半田バンプからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む金属表面に塗布膜を形成するための、請求項1~6の何れか1項に記載の金属表面塗布膜形成組成物の使用。
【請求項10】
請求項1~6の何れか1項に記載の金属表面塗布膜形成組成物からなる塗布膜の焼成物である、金属表面塗布膜。
【請求項11】
金属表面の酸化抑制膜である、請求項10に記載の金属表面塗布膜。
【請求項12】
基材と、
前記基材の上に形成された配線であって、金属表面を有する配線と、
前記配線の金属表面の少なくとも一部に請求項10又は11に記載の金属表面塗布膜を備える、配線基板。
【請求項13】
前記配線の金属表面は側面と上面とを有し、
前記側面と前記上面の各々に前記金属表面塗布膜が形成された、請求項12に記載の配線基板。
【請求項14】
前記配線又は金属表面塗布膜が絶縁膜で被覆された、請求項12又は13に記載の配線基板。
【請求項15】
前記金属表面塗布膜が前記配線の金属表面と前記絶縁膜との密着性向上膜である、請求項14に記載の配線基板。
【請求項16】
前記金属表面塗布膜が前記配線の金属表面の酸化抑制膜である、請求項12~15の何れか1項に記載の配線基板。
【請求項17】
基材の上に、金属表面を有する配線を形成する工程と、前記配線に、請求項1~6の何れか1項に記載の金属表面塗布膜形成組成物を塗布し、前記配線の金属表面の少なくとも一部に金属表面塗布膜を形成する工程を含む、配線基板の製造方法。
【請求項18】
請求項12~16の何れか1項に記載の配線基板を100℃~300℃で加熱する工程を含む、配線基板の製造方法。
【請求項19】
前記配線の金属表面が、前記加熱工程後に、厚さ100nm以下の酸化金属層を有する、請求項18に記載の配線基板の製造方法。
【請求項20】
前記金属表面塗布膜が前記配線の金属表面の酸化抑制膜である、請求項17~19の何れか1項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項21】
請求項12~16の何れか1項に記載の配線基板が設けられた半導体素子を含む、半導体装置。
【請求項22】
請求項17~20の何れか1項に記載の方法で製造された配線基板を半導体素子に設ける工程を含む、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属表面塗布膜形成組成物、特に半導体後工程における再配線形成工程において有用である、金属表面塗布膜形成組成物(半導体用再配線の酸化抑制膜形成組成物、金属の酸化抑制膜形成組成物、半導体用再配線と層間絶縁膜との密着性向上膜形成組成物及び金属マイグレーション抑制膜)、それらを用いた配線基板、半導体装置、それらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体チップの特性向上に伴い、様々な配線基板が使用されている。これらの配線基板は、電気伝導率が高くデバイスの高速化に有利な銅やアルミニウム配線を基材の上に形成することで作製されることが多い。
但し、銅やアルミニウム配線は形成するのが容易であるものの、配線基板の製造途中でその表層部分が酸化することがある。その場合には酸化により高抵抗化した銅やアルミニウム配線の表層部分を硫酸等でエッチングして除去することになるが、銅やアルミニウム配線が微細な場合には銅配線の大部分がエッチングで除去されてしまうため、銅やアルミニウム配線の微細化が難しくなってしまう問題があった。
更に、製品化された後に使用環境によって銅やアルミニウム配線が酸化し、これによりデバイスの電気性能が損なわれるという問題も発生していた。
特許文献1には、基材の上に形成された銅を含む配線と、前記配線の表面に形成された酸化チタンと酸化ジルコニウムのいずれかの重合体を含む、銅の酸化を防ぐ重合膜が開示されている。特許文献2には、ポリオキシアルキレン型ノニオン性界面活性剤及びリン酸エステル型アニオン性界面活性剤から選ばれた少なくとも一種の界面活性剤を含有する、表面処理後に熱が加わった場合に形成される酸化被膜が、良好な密着性を有する銅系材料用表面処理剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-021771号公報
【特許文献2】特開平11-310883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、金属表面塗布膜形成組成物、特に半導体後工程における再配線形成工程において有用である、金属表面塗布膜形成組成物(半導体用再配線の酸化抑制膜形成組成物、金属の酸化抑制膜形成組成物、半導体用再配線と層間絶縁膜との密着性向上膜形成組成物及び金属マイグレーション抑制膜)、それらを用いた配線基板、半導体装置、それらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下を包含する。
[1]
フェノール性ヒドロキシ基を含むポリマー又は化合物、及び有機溶剤を含む、金属表面塗布膜形成組成物。
[2]
前記ポリマー又は化合物が、式(I):
【化1】
(式中、R
0は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1~10のアルキル基又はそれらの組み合わせを表し、
又はR
0はヒドロキシ基を有してもよい炭素原子数3~4のアルキレン若しくはアルケニレン基であって、式中のベンゼン環の2個の炭素原子に結合して環を形成していてもよく、
nは0~4の整数を表し、*は、前記ポリマー又は化合物の残基との結合部位を表す。)で表される部分構造を含む、[1]に記載の金属表面塗布膜形成組成物。
[3]
前記式(I)において、ヒドロキシ基を表すR
0がOH基に対してオルト位に存在する、[1]又は[2]に記載の金属表面塗布膜形成組成物。
[4]
前記ポリマーが、ノボラック樹脂又はビニル重合ポリマーを含む、[1]~[3]の何れか1項に記載の金属表面塗布膜形成組成物。
[5]
前記式(I)において、nが1又は2を表す、[4]に記載の金属表面塗布膜形成組成物。
[6]
バインダー、架橋剤、及び添加剤からなる群より選択される少なくとも一種をさらに含む、[1]~[5]の何れか1項に記載の金属表面塗布膜形成組成物。
[7]
金属表面に塗布膜を形成するための、[1]~[6]の何れか1項に記載の金属表面塗布膜形成組成物の使用。
[8]
銅又はアルミニウムを含む金属表面に塗布膜を形成するための、[1]~[6]の何れか1項に記載の金属表面塗布膜形成組成物の使用。
[9]
半導体再配線、プリント配線及び半田バンプからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む金属表面に塗布膜を形成するための、[1]~[6]の何れか1項に記載の金属表面塗布膜形成組成物の使用。
[10]
[1]~[6]の何れか1項に記載の金属表面塗布膜形成組成物からなる塗布膜の焼成物である、金属表面塗布膜。
[11]
金属表面の酸化抑制膜である、[10]に記載の金属表面塗布膜。
[12]
基材と、
前記基材の上に形成された配線であって、金属表面を有する配線と、
前記配線の金属表面の少なくともの一部に[10]又は[11]に記載の金属表面塗布膜を備える、配線基板。
[13]
前記配線の金属表面は側面と上面とを有し、
前記側面と前記上面の各々に前記金属表面塗布膜が形成された、[12]に記載の配線基板。
[14]
前記配線又は金属表面塗布膜が絶縁膜で被覆された、[12]又は[13]に記載の配線基板。
[15]
前記金属表面塗布膜が前記配線の金属表面と前記絶縁膜との密着性向上膜である、[14]に記載の配線基板。
[16]
前記金属表面塗布膜が前記配線の金属表面の酸化抑制膜である、[12]~[15]の何れか1項に記載の配線基板。
[17]
基材の上に、金属表面を有する配線を形成する工程と、前記配線に、[1]~[6]の何れか1項に記載の金属表面塗布膜形成組成物を塗布し、前記配線の金属表面の少なくとも一部に金属表面塗布膜を形成する工程を含む、配線基板の製造方法。
[18]
[12]~[16]の何れか1項に記載の配線基板を100℃~300℃で加熱する工程を含む、配線基板の製造方法。
[19]
前記配線の金属表面が、前記加熱工程後に、厚さ100nm以下の酸化金属層を有する、[18]に記載の配線基板の製造方法。
[20]
前記金属表面塗布膜が前記配線の金属表面の酸化抑制膜である、[17]~[19]の何れか1項に記載の配線基板の製造方法。
[21]
[12]~[16]の何れか1項に記載の配線基板が設けられた半導体素子を含む、半導体装置。
[22]
[17]~[20]の何れか1項に記載の方法で製造された配線基板を半導体素子に設ける工程を含む、半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の金属表面塗布膜形成組成物は、例えば再配線形成後の表面に塗布、焼成するだけの簡易なプロセスで、表面金属の酸化を防止し、且つその後の絶縁膜埋め込み後に該半導体用再配線と層間絶縁膜との密着性を向上することができるため、該半導体用再配線と層間絶縁膜との間の界面剥離(デラミネーション)や、金属(特に銅)のマイグレーションを防止、抑制出来るため、本発明の金属表面塗布膜形成組成物を用いて製造された半導体チップの電気特性の信頼性(長期に渡る性能安定性)が向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】実施例の基板の側面部のFE-SEM写真(拡大図)である。
【
図3】実施例1で作成した、高温保持後の基板の側面部のFE-SEM写真(拡大図)である。
【
図4】実施例1で作成した、高温保持後の基板の側面部のFE-SEM写真である。
【
図5】比較例1で作成した、高温保持後の基板の側面部のFE-SEM写真(拡大図)である。
【
図6】比較例1で作成した、高温保持後の基板の側面部のFE-SEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<金属表面塗布膜形成組成物>
本発明の金属表面塗布膜形成組成物は、フェノール性ヒドロキシ基を含むポリマー又は化合物、及び有機溶剤を含む。フェノール性ヒドロキシ基とは、ベンゼン環に直接結合しているヒドロキシ基をいう。
【0009】
前記ポリマー又は化合物が、式(I):
【化2】
(式中、R
0は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1~10のアルキル基又はそれらの組み合わせを表し、
又はR
0はヒドロキシ基を有してもよい炭素原子数3~4のアルキレン若しくはアルケニレン基であって、式中のベンゼン環の2個の炭素原子に結合して環を形成していてもよく、
nは0~4、好ましくは1又は2の整数を表し、*は、前記ポリマー又は化合物の残基との結合部位を表す。)で表される部分構造を含んでよい。
【0010】
前記炭素原子数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基及びデシル基が挙げられる。
【0011】
前記式(I)中に存在する2つ以上のヒドロキシ基が、オルト位に存在してよい。この場合、式(I)のR0が少なくとも1つのヒドロキシを含む。好ましくは1つのヒドロキシ基を含む。例えば、前記式(I)において、ヒドロキシ基を表すR0がOH基に対してオルト位に存在してもよい。
【0012】
<ポリマー>
前記ポリマーは、上記式(I)で表される部分構造をポリマー側鎖又は末端に有し、本発明の効果を奏するポリマーであれば制限は無く、公知のポリマーを使用することが出来る。ポリマーの残基としては、オレフィンが反応したビニル重合ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、(メタ)アクリレート化合物を重合させた(メタ)アクリルポリマーが挙げられる。ビニル重合ポリマーとしてはビニルカテコールが重合したポリビニルカテコール、ヒドロキシスチレンが重合したポリヒドロキシスチレンが挙げられる。又は上記ポリマーとしてはノボラック樹脂が挙げられる。ノボラック樹脂とは、フェノール又はクレゾールと、アルデヒドとを公知の方法で縮合して合成したフェノールノボラック又はクレゾールノボラックが挙げられる。
【0013】
前記部分構造は、ポリマーの一分子当たり1個以上含まれていればよい。前記部分構造が、ポリマーの単位構造当たり1個以上含まれていることが好ましく、ポリマーの単位構造当たり1個含まれていることがより好ましい。
【0014】
上記ポリマーの重量平均分子量は特に限定されないが、例えば500~500,000である。500未満であると、塗布・形成した金属表面塗布膜が、不均一(膜ができない部分ができる)になる可能性が高くなり、500,000を超えると、金属表面塗布膜形成組成物の粘度が高くなり、均一な膜厚での塗布が難しくなる恐れがある。
【0015】
<化合物>
上記化合物は、上記式(I)で表される部分構造を含み、本願の効果を奏する化合物であれば特に制限は無い。前記部分構造は、化合物の一分子当たり1個以上含まれていればよい。具体例としてはタンニン酸が挙げられる。なお、化合物の残基に特に制限はなく、各種官能基及び/又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基のほか、水素原子、官能基自体(例えば、カルボキシ基)でもよい。化合物の残基は、*で表される結合部位を包含して、上記式(I)で表される部分構造と縮合して多環構造(例えば、ナフタレン環)を形成してもよい。
【0016】
また国際公開2018/052130号公報に記載の、下記式(1a)もしくは式(1b)で表される化合物、又は下記式(2)で表される置換基を有する化合物であってよい。前記化合物の分子量は、例えば300以上800未満、もしくは重量平均分子量300以上800未満である。
【化3】
(式中、R
1は炭素原子数1~10のアルキレン基もしくは炭素原子数2~10のアルケニレン基又は直接結合を表し、kは0又は1を表し、mは1~3の整数を表し、nは2~4の整数を表す。)
【0017】
上記炭素原子数1~10のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、シクロプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、s-ブチレン基、t-ブチレン基、シクロブチレン基、1-メチル-シクロプロピレン基、2-メチル-シクロプロピレン基、n-ペンチレン基、1-メチル-n-ブチレン基、2-メチル-n-ブチレン基、3-メチル-n-ブチレン基、1,1-ジメチル-n-プロピレン基、1,2-ジメチル-n-プロピレン基、2,2-ジメチル-n-プロピレン、1-エチル-n-プロピレン基、シクロペンチレン基、1-メチル-シクロブチレン基、2-メチル-シクロブチレン基、3-メチル-シクロブチレン基、1,2-ジメチル-シクロプロピレン基、2,3-ジメチル-シクロプロピレン基、1-エチル-シクロプロピレン基、2-エチル-シクロプロピレン基、n-ヘキシレン基、1-メチル-n-ペンチレン基、2-メチル-n-ペンチレン基、3-メチル-n-ペンチレン基、4-メチル-n-ペンチレン基、1,1-ジメチル-n-ブチレン基、1,2-ジメチル-n-ブチレン基、1,3-ジメチル-n-ブチレン基、2,2-ジメチル-n-ブチレン基、2,3-ジメチル-n-ブチレン基、3,3-ジメチル-n-ブチレン基、1-エチル-n-ブチレン基、2-エチル-n-ブチレン基、1,1,2-トリメチル-n-プロピレン基、1,2,2-トリメチル-n-プロピレン基、1-エチル-1-メチル-n-プロピレン基、1-エチル-2-メチル-n-プロピレン基、シクロヘキシレン基、1-メチル-シクロペンチレン基、2-メチル-シクロペンチレン基、3-メチル-シクロペンチレン基、1-エチル-シクロブチレン基、2-エチル-シクロブチレン基、3-エチル-シクロブチレン基、1,2-ジメチル-シクロブチレン基、1,3-ジメチル-シクロブチレン基、2,2-ジメチル-シクロブチレン基、2,3-ジメチル-シクロブチレン基、2,4-ジメチル-シクロブチレン基、3,3-ジメチル-シクロブチレン基、1-n-プロピル-シクロプロピレン基、2-n-プロピル-シクロプロピレン基、1-イソプロピル-シクロプロピレン基、2-イソプロピル-シクロプロピレン基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピレン基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピレン基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピレン基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-3-メチル-シクロプロピレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基又はn-デカニレン基が挙げられる。
【0018】
炭素原子数2~10のアルケニレン基としては、上記炭素原子数2~10のアルキレン基の1つ以上の炭素-炭素結合が、2重結合になっている基を言う。
【0019】
[式(1a)又は式(1b)で表される化合物]
前記式(1a)で表される化合物として、例えば下記式(1a-1)~式(1a-13)で表される化合物が挙げられる。また周辺化合物として、式(1a-14)~式(1a-19)が挙げられる。
【化4】
【0020】
前記式(1b)で表される化合物として、例えば下記式(1b-1)~式(1b-25)で表される化合物が挙げられる。また、周辺化合物として、下記式(1b-26)~式(1b-31)で表される化合物が挙げられる。
【化5】
【0021】
[式(2)で表される置換基を有する化合物]
前記式(2)で表される置換基として例えば下記式(2-1)~式(2-13)が挙げられる。周辺化合物として、式(2-14)で表される化合物が挙げられる。当該式(2)で表される置換基を有する化合物は、単量体、二量体、三量体、オリゴマーいずれでもよく、例えば下記式(2a-1)及び式(2a-3)で表される化合物が挙げられる。周辺化合物として下記式(2a-2)で表される化合物が挙げられる。
【化6】
【化7】
【0022】
国際公開2018/052130号公報の全開示は本願に援用される。
【0023】
<有機溶剤>
本発明の金属表面塗布膜形成組成物は、有機溶剤を含む。本有機溶媒は、前記ポリマー又は化合物を溶解できるものであれば特に制限は無いが、具体的には、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、メチルラクテート、エチルラクテート、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン、p-メンタン、n-デカン等が挙げられ、これらは単独又は2種以上の組合せで用いることができる。
【0024】
また、本発明に係る金属表面塗布膜形成組成物の有機溶剤としては、いわゆる半導体リソグラフィー工程に一般的に使用される有機溶剤であってもよい。具体例としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘプタノン、4-メチル-2-ペンタノール、2―ヒドロキシイソ酪酸メチル、2―ヒドロキシイソ酪酸エチル、エトキシ酢酸エチル、酢酸2-ヒドロキシエチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、2-ヘプタノン、メトキシシクロペンタン、アニソールが挙げられる。これらの溶剤も、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
本発明に係る金属表面塗布膜組成物は、慣用の方法により、前記フェノール性ヒドロキシ基を含むポリマー又は化合物を有機溶剤に溶解することにより得ることができる。
【0026】
前記金属表面塗布膜組成物中の固形分(溶媒を除いた成分(ポリマー、化合物、架橋剤等))の含有量は、通常0.01質量%~10質量%である。
【0027】
さらに、本発明の金属表面塗布膜形成組成物は、バインダー、架橋剤、及び添加剤からなる群より選択される少なくとも一種を含んでよい。
【0028】
<バインダー>
本発明の金属表面塗布膜形成組成物は、バインダーを含んでもよい。具体例としては(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン誘導体、ポリヒドロキシスチレン誘導体、フェノールノボラック、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミック酸エステル、ポリアミック酸、ポリイミド、ビスマレイミド、ポリスルホン、PEEK、アミノ樹脂などがあげられる。
【0029】
本発明のバインダーとしては、WO2020/080207に記載の、以下の単位構造を有する樹脂を含むことが好ましい。
【0030】
(A)下記一般式(1):
【化8】
[式(1)中、X
1は、4価の有機基であり、Y
1は、2価の有機基であり、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、1価の有機基である。]で表される単位構造を有するポリイミド前駆体。
【0031】
上記X1及びY1の詳細については後述する。
【0032】
また下記の単位構造を有する樹脂であってもよい。
【0033】
【0034】
<架橋剤>
本発明の金属表面塗布膜形成組成物は、架橋剤を含んでもよい。具体例としてはエポキシ化合物、エポキシ樹脂、アミノプラスト架橋剤、(ブロック化)イソシアネート、多官能(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0035】
本発明に用いられるエポキシ化合物として、下記式(A-1)~(A-15)を例示することができる。
【0036】
【0037】
【0038】
式(A-1)は日産化学(株)製、商品名TEPIC-G、TEPIC-S、TEPIC-SS、TEPIC-HP、TEPIC-L(いずれも1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌル酸)として入手することができる。
【0039】
式(A-2)は日産化学(株)製、商品名TEPIC-VLとして入手することができる。
【0040】
式(A-3)は日産化学(株)製、商品名TEPIC-FLとして入手することができる。
【0041】
式(A-4)は日産化学(株)製、商品名TEPIC-UCとして入手することができる。
【0042】
式(A-5)はナガセケムテック(株)製、商品名デナコールEX-411として入手することができる。
【0043】
式(A-6)はナガセケムテック(株)製、商品名デナコールEX-521として入手することができる。
【0044】
式(A-7)は三菱ガス化学(株)製、商品名TETRAD-Xとして入手することができる。
【0045】
式(A-8)は昭和電工(株)製、商品名BATGとして入手することができる。
【0046】
式(A-9)は日鉄ケミカル&マテリアル(株)製、商品名YH-434Lとして入手することができる。
【0047】
式(A-10)は旭有機材工業(株)製、商品名TEP-Gとして入手することができる。
【0048】
式(A-11)はDIC(株)製、商品名EPICLON HP-4700として入手することができる。
【0049】
式(A-12)は(株)ダイセル製、商品名エポリード GT401として入手することができる。尚、a、b、c、dはそれぞれ0又は1であり、a+b+c+d=1である。
【0050】
この他、エポキシ基を有する化合物としては、アミノ基を有するエポキシ樹脂としてはYH-434(日鉄ケミカル&マテリアル(株)製、商品名)、シクロヘキセンオキサイド構造を有するエポキシ樹脂としては、エポリードGT-401、同GT-403、同GT-301、同GT-302、セロキサイド2021、セロキサイド3000(ダイセル化学(株)製、商品名)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、エピコート1001、同1002、同1003、同1004、同1007、同1009、同1010、同828(以上、油化シェルエポキシ(株)製、商品名)等を、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、エピコート807(油化シェルエポキシ(株)製、商品名)等を、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、エピコート152、同154(以上、油化シェルエポキシ(株)製、商品名)、EPPN201、同202(以上、日本化薬(株)製、商品名)等を、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、EOCN-102、EOCN-103S、EOCN-104S、EOCN-1020、EOCN-1025、EOCN-1027(以上、日本化薬(株)製、商品名)、エピコート180S75(油化シェルエポキシ(株)製、商品名)等を、脂環式エポキシ樹脂としては、デナコールEX-252(ナガセケムテックス(株)製、商品名)、CY175、CY177、CY179(以上、CIBA-GEIGY A.G製、商品名)、アラルダイトCY-182、同CY-192、同CY-184(以上、CIBA-GEIGY A.G製、商品名)、エピクロン200、同400(以上、大日本インキ工業(株)製、商品名)、エピコート871、同872(以上、油化シェルエポキシ(株)製、商品名)、ED-5661、ED-5662(以上、セラニーズコーティング(株)製、商品名)等を、脂肪族ポリグリシジルエーテルとしては、デナコールEX-611、同EX-612、同EX-614、同EX-622、同EX-411、同EX-512、同EX-522、同EX-421、同EX-313、同EX-314、同EX-321(ナガセケムテックス(株)製、商品名)等を挙げることができる。
【0051】
上記架橋剤のポリマーに対する添加量は、例えば5~50質量%である。
【0052】
<添加剤>
本発明の金属表面塗布膜形成組成物は、添加剤を含んでもよい。具体例としては滑剤、充填剤、可塑剤、酸化抑制剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、防黴剤、硬化促進剤などの添加剤を用途、目的に応じて適量配合してもよい。添加剤を含む場合、添加剤の含有量は、上記組成物の全量100質量%に対して、0.01質量%~20質量%であることが好ましい。
【0053】
<金属>
本発明でいう金属は、特に制限は無い。具体例としては鉄、銅、スズ及びアルミニウムが挙げられるが、本発明は特に銅及びアルミニウムに対して優れた特性を発揮する。すなわち、銅又はアルミニウムを含む金属であれば、本発明の金属表面塗布膜は、銅の表面での酸化銅の生成を抑制でき、アルミニウムの表面での酸化アルミニウムの生成を抑制できる。
【0054】
本発明の金属表面塗布膜による金属の酸化抑制能の評価方法としては、実施例に記載の、金属配線、例えば銅配線を形成した配線基板の酸化処理試験後、FE-SEMの目視による観察により、酸化金属膜発生の有無を観察することにより確認することができる。
【0055】
前記金属が、半導体再配線、プリント配線及び半田バンプからなる群より選ばれる少なくとも一種を形成する材料であってよい。
【0056】
<金属表面塗布膜形成組成物>
前記金属表面塗布膜形成組成物を、金属表面に公知の方法で塗布、次いで焼成を行うことで、金属表面塗布膜が形成できる。塗布方法としては特に制限は無く、通常のスピンコート、ディップコート、溶媒キャスト法等の塗布法が用いられる。次いで通常大気下での焼成工程(焼成温度100~300℃、焼成時間10秒~1時間)を経て、膜厚1nm~500nmの塗布膜が形成できる。
【0057】
<配線基板、配線基板の製造方法>
本発明でいう配線基板を製造するための「基材」とは、後述する金属配線、絶縁膜(感光性、非感光性)層を支えるための基材である。材質としては金属、樹脂等特に制限は無いが、例えばシリコン、ガラスからなる基材が挙げられる。上記金属配線層、絶縁膜層の形状を維持する強度を有すること、加熱工程を含む場合は、100℃~400℃の加熱工程を経ても変形しない耐熱性を有することが好ましい。基材の形状としては平面状、角を有するもの、曲面状、凹凸を有するもの、窪みを有するもの等特に限定されないが、通常平板状である。
【0058】
本発明の配線基板は、上述の基材と、前記基板の上に形成された金属表面を含む配線と、前記配線の表面の少なくとも一部に上述の金属表面塗布膜を備える配線基板、である。上記金属配線は、鋳型を作った後めっき工程で金属を埋め込む等の公知の方法で製造できる。上記金属配線は例えば1μm~20μm程度の高さ、幅を有するラインアンドスペース形状を有するものであってよい。
【0059】
公知の方法で作られた金属配線の上に、前記金属表面塗布膜形成組成物を上述の方法で塗布、焼成することにより、前記配線の表面の少なくとも一部に上述の金属表面塗布膜を備える配線基板が製造できるが、配線の露出部分全面にわたって上述の金属表面塗布膜が形成されていることが望ましい。いわゆる上記基材上に形成された配線は、通常矩形状をしており、側面と上面とを有する。この側面と上面側の配線の露出部分が次の加熱工程等を経て酸化されやすいため、本発明の金属表面塗布膜を側面と上面との各々の少なくとも一部に上記金属表面塗布膜が形成されていることが好ましく、側面と上面との各々の全面にわたって形成されていることがさらに好ましい。上記金属表面塗布膜形成組成物から作られる金属表面塗布膜は、膜厚が前述のように薄いため、金属表面に対しほぼ均一の膜厚(例えば1nm~200nm、1nm~500nm)である。このような薄膜でありながら、本発明の金属表面塗布膜は金属の酸化抑制能に優れる。
【0060】
上記配線が、さらに絶縁膜(感光性、非感光性)で被覆されたものであってよい。上記被覆する方法は、公知の方法によってよく、例えば絶縁膜形成組成物を上記金属表面塗布膜を設けた配線基板上に塗布焼成することにより被覆することができる。
【0061】
上記のように作製された基板を100℃~300℃で加熱する工程に付してもよい。加熱工程は、例えば半導体素子に使用される配線基板としての信頼性試験で適用される場合がある。通常大気下、125℃~150℃、1~1000時間で実施されるが、いわゆる温度85℃/湿度85%(85/85試験)のような高湿条件下で実施されてもよい。
【0062】
上記加熱試験後の、配線表面の酸化金属層の厚さが1μm(1000nm)以下であることが好ましく、900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、500nm以下、400nm以下、300nm以下、200nm以下、100nm以下、90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、10nm以下、8nm以下、5nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下、0nm(酸化膜が観察されない)であることが好ましい。
【0063】
<絶縁膜、感光性絶縁膜>
本発明でいう絶縁膜、感光性絶縁膜は公知のものを使用してよいが、例えば上記の金属配線間を電気的に絶縁するために、後から形成される場合もあるため、上記金属配線間を隙間なく埋め込むことができる塗布型又は非塗布型(蒸着工程(CVD)等)で製造できる絶縁膜であることが好ましいが、製造プロセスの効率の観点から塗布型の感光性絶縁膜形成組成物が用いられる場合が多い。絶縁膜は、金属配線間の導通を防ぐために形成されるものであり、通常低誘電率(例えば2.0~3.5)、より微細な金属配線が必要な、最先端の半導体素子用としては、低誘電正接(例えば0.01以下)を有する絶縁膜が用いられる。形状加工性の容易さから、リソグラフィー工程により形状加工が可能な、感光性絶縁膜であることが好ましい。
【0064】
塗布型の絶縁膜としては、公知のポリイミド、ポリアリールエーテル、ポリベンゾオキサゾール等を含む樹脂を含む絶縁膜形成組成物(半導体素子製造に用いる再配線用絶縁膜形成組成物等)を用いて製造できる。
【0065】
具体的には、WO2019/044874、WO2019/139028及びWO2020/080206に記載の感光性絶縁膜形成組成物が挙げられる。
【0066】
本発明でいう感光性絶縁膜は、例えばWO2020/080207に記載の、以下の構造を有する樹脂を含む、感光性絶縁膜組成物であることが好ましい。
【0067】
(A)下記一般式(1):
【化12】
[式中、X
1は、4価の有機基であり、Y
1は、2価の有機基であり、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、1価の有機基である。]で表される単位構造を有するポリイミド前駆体、及び
(B)下記一般式(20):
【化13】
[式中、R
23は水素原子又はメチル基を表し、R
24は、置換基を有してもよく、酸素原子によって中断されていてもよい炭素原子数1乃至5のアルキレン基を表し、R
25は、イソシアネート基又はブロックイソシアネート基を表す。]
で表されるイソシアネート化合物、を含む感光性樹脂組成物、である。
【0068】
さらに(C)下記一般式(30):
【化14】
[式中、Z
1及びZ
2は、それぞれ独立に、
水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、シアノ基、ホルミル基、ハロホルミル基、スルホ基、ニトロ基、ニトロソ基、オキソ基、チオキシ基、
置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル、アルコキシ、もしくはアルキルスルファニル基、
置換されていてもよい炭素原子数2~10のアルケニル、アルキニル、もしくはアルコキシカルボニル基、又は
置換されていてもよいアミノ、イミノ、もしくはカルバモイル基を表し、
Z
1及びZ
2は、相互に結合して、ヘテロ原子を含んでもよく、置換基を有していてもよく、縮合していてもよい環を形成してもよく、当該環が芳香族環であるとき、
【化15】
はHOOCがCOOHに対してオルト位にある共役二重結合を示し、当該環が芳香族環であるとき以外の場合、
【化16】
はHOOCとCOOHについてのシス型二重結合を示す。]
で表されるカルボン酸化合物又はその無水物、を含む感光性樹脂組成物であってよい。
【0069】
上記一般式(1)中、X1は、4価の有機基であれば特に限定されないが、耐熱性と感光特性とを両立するという観点で、好ましくは、炭素原子数6~40の4価の有機基であり、より好ましくは、-COOR1基及び-COOR2基と-CONH-基とが互いにオルト位置にある芳香族基、又は脂環式脂肪族基である。また、X1で表される4価の有機基は、芳香族環を含有する炭素原子数6~40の有機基であることがより好ましい。
【0070】
さらに好ましくは、X1は、下記式(5)又は下記式(5-1)~(5-7)で表される4価の有機基である。
【0071】
【0072】
また、X1の構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。
【0073】
上記一般式(1)中、Y1は、炭素原子数6~40の2価の有機基であれば限定されないが、耐熱性と感光特性とを両立するという観点で、置換されていてもよい芳香族環又は脂肪族環を1~4個有する環状有機基、又は環状構造を持たない脂肪族基又はシロキサン基であることが好ましい。より好ましくは、Y1は、下記一般式(6)、下記一般式(7)又は下記式(8)で表される構造である。
【0074】
【化20】
【化21】
(式中、Aは、それぞれ独立に、メチル基(-CH
3)、エチル基(-C
2H
5)、プロピル基(-C
3H
7)又はブチル基(-C
4H
9)を表す。}
【化22】
【0075】
また、Y1の構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。
【0076】
上記一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、1価の有機基であれば特に限定されない。例えば、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~30、又は炭素原子数5~22の1価の脂肪族基、環状脂肪族基、芳香族基と脂肪族基とが結合した基、若しくはそれらの基がハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、メトキシ基、アセトキシ基などで置換された基とすることができる。ハロゲン原子としては、F、Cl、Br、Iが典型的である。
【0077】
WO2020/080207公報に記載の全開示は、本発明に参照として援用される。
【0078】
<金属表面の酸化抑制膜形成組成物>
本発明の金属表面塗布膜形成組成物は、金属表面の酸化抑制膜形成組成物として使用することができる。金属表面の酸化抑制については、上述の通りである。
【0079】
<密着性向上膜形成組成物>
本発明の金属表面塗布膜形成組成物は、半導体用再配線と層間絶縁膜との密着性向上膜形成組成物としても使用することができる。
【0080】
本発明の金属表面塗布膜形成組成物は、半導体再配線の金属配線に塗布して金属表面塗布膜を形成することにより、半導体用再配線と層間絶縁膜との間の密着性が向上し、上記配線と層間絶縁膜との間の隙間の発生を抑制できる。この隙間は、上記の信頼性試験における加熱工程を経て発生する場合がある。通常、層間絶縁膜は有機物、配線は金属のため、密着性が低下しやすい。本発明の密着性向上膜形成組成物を上記金属配線上に塗布、焼成することで、配線上に密着性向上膜を表面の少なくとも一部に形成することで、層間絶縁膜と金属配線との間の密着性を向上させることができるが、配線上に金属表面塗布膜を全面にわたって形成することが、層間絶縁膜と金属配線との間の密着性を向上の観点から好ましい。
【0081】
本発明の配線基板は、基材と、前記基材の上に形成された配線と、
前記配線の表面の少なくとも一部に、半導体用再配線と層間絶縁膜との密着性向上膜を備える。前記再配線の前記表面は側面と上面とを有し、前記側面と前記上面の各々の少なくとも一部に前記金属表面塗布膜が形成された配線基板であることが好ましいが、側面と上面との各々の全面にわたって形成されていることが密着性の観点からさらに好ましい。再配線の側面と上面に関する説明は上述の通りである。
【0082】
前記再配線が、前記絶縁膜で被覆された配線基板であってよい。
【0083】
本発明の配線基板の製造方法は、上記基材の上に、上述のように配線を形成する工程と、前記配線の表面に、上述のように半導体用再配線と層間絶縁膜との金属表面塗布膜形成組成物を塗布し、金属表面塗布膜を形成する工程を含む。
【0084】
本発明の配線基板の製造方法は、上記配線基板を100℃~300℃で加熱する工程を含み、前記再配線表面と、絶縁膜との接触界面剥離が起こらない方法である。接触界面剥離が起こらないとは、例えば実施例に記載のFE-SEMによる基板の断面観察により、金属(再配線)表面と、絶縁膜との接触界面において、目視上隙間が発生していないことを言う。
【0085】
<金属マイグレーション抑制膜形成組成物>
本発明の金属表面塗布膜形成組成物は、金属マイグレーション抑制膜としても使用することができる。金属マイグレーションとは、配線や電極として使用した金属が絶縁物の上を移動し(マイグレーション現象)、電極間の絶縁抵抗値の低下を招くことをいう。最終的には短絡が発生し、電子部品不良の原因となる。本発明の金属表面塗布膜形成組成物を金属表面に塗布し金属表面塗布膜を形成することで、上記マイグレーションを防止又は抑制することができる。
【0086】
<半導体装置、半導体装置の製造方法>
本発明の半導体装置は、半導体素子と、該半導体素子の上部又は下部に設けられた上記配線基板を備える半導体装置である。
【0087】
実施の形態では、上述した感光性絶縁膜を用いた公知の硬化レリーフパターンの製造方法により得られる硬化レリーフパターンを有して成る、半導体装置も提供される。したがって、半導体素子である基板と、上述した硬化レリーフパターン製造方法により該基板上に形成された絶縁膜の硬化レリーフパターンとを有する半導体装置が提供されることができる。また、本発明は、基板として半導体素子を用い、上述した硬化レリーフパターンの製造方法を工程の一部として含む半導体装置の製造方法にも適用できる。本発明の半導体装置は、上記硬化レリーフパターン製造方法で形成される硬化レリーフパターンを、表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、又はバンプ構造を有する半導体装置の保護膜等として形成し、既知の半導体装置の製造方法と組合せることで製造することができる。
【実施例0088】
本明細書の下記合成例に示す重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、本明細書ではGPCと略称する。)による測定結果である。測定には東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8320GPC)を用い、測定条件等は次のとおりである。
GPCカラム:KD-803,KD-805(Shodex製)
カラム温度:50℃
溶媒:N,N-ジメチルホルムアミド(関東化学株式会社,特級),臭化リチウム一水和物(関東化学株式会社,鹿特級)(30mM)/リン酸(Aldrich)(30mM)/テトラヒドロフラン(関東化学株式会社,特級)(1%)
流量:1.0mL/分
標準試料:ポリスチレン(ジーエルサイエンス製)
【0089】
<製造例1> ジカルボン酸ジエステル(1)の合成
4,4’-ビフタル酸二無水物(東京化成工業株式会社)200.00g(0.68mol)を2リットル容量の四口フラスコに入れ、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(Aldrich)176.92g(1.366mol)とヒドロキノン(東京化成工業株式会社)0.74g(0.007mol)とγ―ブチロラクトン(関東化学,鹿特級)600gを入れて23℃で攪拌し、ピリジン(関東化学,脱水)108.63g(1.36mol)を加えた後に50℃まで昇温し、50℃で2時間撹拌することで、下記式(1)で表される化合物を含む溶液を得た。
【化23】
【0090】
<製造例2> ポリイミド前駆体としてのポリマー(2)の合成
製造例1で調製した溶液82.46gとγ―ブチロラクトン19.45gを500ミリリットル容量の四口フラスコに入れ、約5℃において、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC,東京化成工業株式会社)13.13gをγ-ブチロラクトン30gに溶解した溶液を攪拌しながら0.5時間かけてフラスコ内に滴下し、滴下後、0.5時間撹拌した。続いて2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(東京化成工業株式会社)19.68gをN-メチル-2-ピロリジノン(関東化学,鹿特級)30gに溶解したものを攪拌しながら2時間かけて滴下した。その後、約25℃に昇温し、6時間攪拌した後、エタノール(関東化学,特級)4.5gを加えて1時間攪拌した
【0091】
得られた反応混合物を1,500gのメタノール(関東化学,特級)に加えて粗ポリマーから成る沈殿物を生成した。上澄み液をデカンテーションして粗ポリマーを分離し、N-メチル-2-ピロリジノン150.0gに溶解して粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液を2,250gの水に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾別した後、メタノール600gで二回洗浄し、真空乾燥して粉状のポリマー(2)を得た。ポリマー(2)の分子量をGPC(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は8,016であった。収率は73.6%であった。この反応生成物は、下記式(2)で表される繰り返し単位構造を有する。
【化24】
【0092】
<製造例3>
製造例2で得られたポリマー28.5714g、IRGACURE[登録商標]OXE01(BASF社製、光重合開始剤)1.71g、AOI-BM(昭和電工株式会社製、2-(O-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチルアクリレート)8.57g、KBM-5103(信越化学工業株式会社製、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)0.43g、IRGANOX[登録商標]3114(BASF社製、ヒンダードフェノール系酸化抑制剤)0.43g、及びフタル酸(東京化成工業株式会社製)0.28gを、シクロヘキサノン48.00g、エチルラクテート12.00gに溶解させ、組成物を調製した。その後、孔径5μmのポリプロピレン製マイクロフィルターを用いてろ過して、ネガ型感光性樹脂組成物を調製した。
【0093】
<製造例4> (4-メチルカテコールノボラックの合成)
4-メチルカテコール25g、パラホルムアルデヒド6.3g、メタンスルホン酸5.8gをプロピレングリコールモノメチルエーテル86.5g中に溶解させ、100℃窒素中で24時間加熱重合させ粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液をメタノール/水混合溶媒(容積比1/4)に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾別した後、メタノール/水混合溶媒(容積比1/4)で二回洗浄し、真空乾燥して粉状のポリマーを得た。ポリマーの分子量をGPC(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は24,000であった。この反応生成物は、下記式で表される繰り返し単位構造を有する。
【化25】
【0094】
(評価用基板)
シリコン基板にチタン(20nm)および銅(50nm)をスパッタで積層した基板を作成した(
図1、
図2)。
【0095】
<実施例1>
製造例4で得られたカテコールノボラック0.5g、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン(YH434L)0.08gをプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)に溶解し、スピナーにより膜厚100nmとなるように、評価用基板に塗布し、その基板をホットプレート上に配置し230℃で1分間ベークすることで、酸化抑制膜を形成した。
【0096】
次に、製造例3で調製した樹脂組成物をスピンコートし、その基板をホットプレート上に配置し、115℃で270秒間ベークした。その後、アライナー(PLA-501、キヤノン株式会社製)を用いて露光(i線、露光量:500mJ/cm2)後、さらに160℃1時間及び230℃1時間窒素下のオーブンで焼成し、膜厚5μmの絶縁膜を形成した。続いてオーブン(大気下)にて150℃で500時間高温保持し、その前後の銅の改質状態を確認した。
【0097】
高温保持後の断面SEM写真(
図3)では、銅表面に酸化銅層は形成されず、カテコールノボラック層の上部に32nmと薄い酸化銅層が形成されるのみであった。
【0098】
また、高温保持後の断面SEM写真にて、銅層中のボイドが少なく、絶縁膜中への銅の拡散を抑制できた(
図4)。
【0099】
<実施例2~4、比較例1>
実施例1と同様、表のように薬液を作成し、評価基板に塗布し高温処理前後の銅の生成を確認した。
【表1】
タンニン酸:東京化成工業製
VP15000:ポリヒドロキシスチレン(東ソー製)
レヂトップPS―7822:m-クレゾールノボラック(群栄化学工業製)
レヂトップPSF―2808:m/p-クレゾールノボラック(群栄化学工業製)
【0100】
<比較例1>
酸化防止膜を塗布せず評価基板に製造例3で調製した樹脂組成物をスピンコートし、その基板をホットプレート上に配置し、115℃で270秒間ベークした。その後、アライナー(PLA-501、キヤノン株式会社製)を用いて露光(i線、露光量:500mJ/cm2)後、さらに160℃1時間及び230℃1時間窒素下のオーブンで焼成し、膜厚5μmの絶縁膜を形成した。 続いてオーブン(大気下)にて150℃で500時間高温保持することで、銅の高温処理前後の改質状態を確認した。
【0101】
高温保持後の断面SEM写真(
図5)では、銅表面に酸化銅層が110nmと厚く形成され、かつ、銅層中のボイドが多くみられることから、絶縁膜中へ銅が多く拡散していた(
図6)。
特に、今後需要が高まると想定される半導体製造の再配線工程において、本発明の金属表面塗布膜を配線上に形成することにより、配線形成後も配線表面の酸化が起こらず、且つ層間絶縁膜との密着性に優れるため、半導体の長期信頼性向上寄与が期待できる。