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特開2022-109068冷凍機の制御方法、冷凍機の制御プログラム及び冷凍機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109068
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】冷凍機の制御方法、冷凍機の制御プログラム及び冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F25B 7/00 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
F25B7/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004398
(22)【出願日】2021-01-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 政輝
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 信介
(72)【発明者】
【氏名】岩本 建次
(72)【発明者】
【氏名】布袋 裕次郎
(57)【要約】
【課題】ターボ式の圧縮機の回転数の急激な変化を抑制できる冷凍機の制御方法、冷凍機の制御プログラム及び冷凍機を提供する。
【解決手段】第1の制御モードから第2の制御モードへの移行を指示する、第2の制御モードへの移行指令工程と、第2の温度調節器の設定値(SV2)のSV21を、第2の温度調節器の現在値(PV2)のPV21に書き替える、第2の温度調節器の設定値書替工程と、第2の温度調節器の操作量(MV2)を、第1の温度調節器の操作量(MV1)のMV11に書き替える、第2の温度調節器の操作量書替工程と、ターボ式の圧縮機の回転数の制御を第1の温度調節器の操作量(MV1)依存から第2の温度調節器の操作量(MV2)依存に切り替える、第二制御ポイント切替工程と、第2の温度調節器の設定値(SV2)をPV21からSV21まで経時的に変化させる、第2の温度調節器の設定値経時変化工程とを備える、冷凍機の制御方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の冷媒が循環する第1の循環経路と、第2の冷媒が循環する第2の循環経路と、前記第1の循環経路に配置され、前記第1の冷媒を断熱圧縮するターボ式の圧縮機と、前記第1の循環経路に配置され、前記ターボ式の圧縮機により断熱圧縮した後の前記第1の冷媒を等圧冷却する冷却器と、前記第1の循環経路に配置され、前記ターボ式の圧縮機により断熱圧縮される前の前記第1の冷媒と前記冷却器により等圧冷却された後の前記第1の冷媒との熱交換を行う主熱交換器と、前記第1の循環経路に配置され、前記第1の冷媒を断熱膨張する膨張タービンと、前記第1の循環経路及び前記第2の循環経路に配置され、前記第1の冷媒と前記第2の冷媒との熱交換を行う副熱交換器と、前記第1の循環経路の前記膨張タービンの入口側に配置された第1の温度調節器と、前記第2の循環経路の前記副熱交換器の出口側に配置された第2の温度調節器と、前記ターボ式の圧縮機、前記第1の温度調節器及び前記第2の温度調節器を制御する制御装置とを備え、前記第1の温度調節器の操作量(MV1)又は前記第2の温度調節器の操作量(MV2)に依存して前記制御装置が前記ターボ式の圧縮機の回転数を制御する冷凍機の制御方法であって、
極低温で用いられる前記冷凍機は、前記第1の温度調節器を使用して前記ターボ式の圧縮機の回転数を調節することにより前記第1の冷媒の温度を目標温度で制御する第1の制御モード及び前記第2の温度調節器を使用して前記ターボ式の圧縮機の回転数を調節することにより前記第2の冷媒の温度を目標温度で制御する第2の制御モードを有し、
第1の制御モードから第2の制御モードへの移行を指示する、第2の制御モードへの移行指令工程と、
第2の温度調節器の設定値(SV2)のSV21を、第2の温度調節器の現在値(PV2)のPV21に書き替える、第2の温度調節器の設定値書替工程と、
第2の温度調節器の操作量(MV2)を、第1の温度調節器の操作量(MV1)のMV11に書き替える、第2の温度調節器の操作量書替工程と、
ターボ式の圧縮機の回転数の制御を第1の温度調節器の操作量(MV1)依存から第2の温度調節器の操作量(MV2)依存に切り替える、第二制御ポイント切替工程と、
第2の温度調節器の設定値(SV2)をPV21からSV21まで経時的に変化させる、第2の温度調節器の設定値経時変化工程と
を備える、冷凍機の制御方法。
【請求項2】
さらに、
前記第2の制御モードへの移行指令工程の後、前記第2の温度調節器の設定値書替工程の前に、又は前記第2の温度調節器の設定値書替工程の後、前記第2の温度調節器の操作量書替工程の前の前に、第1の温度調節器の操作量(MV1)をMV11に固定する、第1の温度調節器の操作量固定工程を備え、
前記第二制御ポイント切替工程の後に、第1の温度調節器の操作量(MV1)の固定を解除する、第1の温度調節器の操作量固定解除工程を備える、
請求項1に記載の冷凍機の制御方法。
【請求項3】
第1の冷媒が循環する第1の循環経路と、第2の冷媒が循環する第2の循環経路と、前記第1の循環経路に配置され、前記第1の冷媒を断熱圧縮するターボ式の圧縮機と、前記第1の循環経路に配置され、前記ターボ式の圧縮機により断熱圧縮した後の前記第1の冷媒を等圧冷却する冷却器と、前記第1の循環経路に配置され、前記ターボ式の圧縮機により断熱圧縮される前の前記第1の冷媒と前記冷却器により等圧冷却された後の前記第1の冷媒との熱交換を行う主熱交換器と、前記第1の循環経路に配置され、前記第1の冷媒を断熱膨張する膨張タービンと、前記第1の循環経路及び前記第2の循環経路に配置され、前記第1の冷媒と前記第2の冷媒との熱交換を行う副熱交換器と、前記第1の循環経路の前記膨張タービンの入口側に配置された第1の温度調節器と、前記第2の循環経路の前記副熱交換器の出口側に配置された第2の温度調節器と、前記ターボ式の圧縮機、前記第1の温度調節器及び前記第2の温度調節器を制御する制御装置とを備え、前記第1の温度調節器の操作量(MV1)又は前記第2の温度調節器の操作量(MV2)に依存して前記制御装置が前記ターボ式の圧縮機の回転数を制御する冷凍機の制御方法であって、
前記冷凍機は、前記第1の温度調節器を使用して前記ターボ式の圧縮機の回転数を調節することにより前記第1の冷媒の温度を目標温度で制御する第1の制御モード及び前記第2の温度調節器を使用して前記ターボ式の圧縮機の回転数を調節することにより前記第2の冷媒の温度を目標温度で制御する第2の制御モードを有し、
第2の制御モードから第1の制御モードへの移行を指示する、第1の制御モードへの移行指令工程と、
第1の温度調節器の設定値(SV1)のSV11を、第1の温度調節器の現在値(PV1)のPV11に書き替える、第1の温度調節器の設定値書替工程と、
第1の温度調節器の操作量(MV1)を、第2の温度調節器の操作量(MV2)のMV21に書き替える、第1の温度調節器の操作量書替工程と、
ターボ式の圧縮機の回転数の制御を第2の温度調節器の操作量(MV2)依存から第1の温度調節器の操作量(MV1)依存に切り替える、第一制御ポイント切替工程と、
第1の温度調節器の設定値(SV1)をPV11からSV11まで経時的に変化させる、第1の温度調節器の設定値経時変化工程と
を備える、冷凍機の制御方法。
【請求項4】
さらに、
前記第1の温度調節器の設定値書替工程S22の後、前記第1の温度調節器の操作量書替工程S24の前に、又は前記第1の制御モードへの移行指令工程S21の後、前記第1の温度調節器の設定値書替工程S22の前に、第2の温度調節器の操作量(MV2)をMV21に固定する、第2の温度調節器の操作量固定工程を備え、
前記第一制御ポイント切替工程の後に、第2の温度調節器の操作量(MV2)の固定を解除する、第2の温度調節器の操作量固定解除工程を備える、
請求項3に記載の冷凍機の制御方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の冷凍機の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とする、冷凍機の制御プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載の冷凍機の制御プログラムを搭載した制御装置を備えることを特徴とする、冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機の制御方法、冷凍機の制御プログラム及び冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
断熱圧縮、等圧冷却、断熱膨張及び等圧加熱を繰り返す極低温の冷凍サイクルを利用する冷凍機は、送電ケーブル、限流器又は変圧器等の超電導電力機器(冷却対象)の冷却に用いられる。超電導電力機器の冷却では、液体窒素、液体水素又は液体ヘリウム等の循環冷媒(第2の冷媒)を超電導電力機器に循環させ、超電導電力機器での発熱及び系内の侵入熱により昇温した循環冷媒(第2の冷媒)が冷凍機によって所定の温度まで冷却される。冷凍機は、大容量の冷凍能力が必要となる場合に適している。冷凍機の冷媒ガスとしては、ネオン又はヘリウム等の冷凍機冷媒(第1の冷媒)が用いられる。
【0003】
冷凍機の一例の概略構成を図1に示す。冷凍機1においては、第1の冷媒(冷凍機冷媒)M1が循環する第1の循環経路(冷凍機冷媒循環ライン)111上に、主熱交換器101、副熱交換器102、ターボ式の圧縮機103、冷却器110、膨張タービン104及び第1の温度調節器105が配置され、第2の冷媒(循環冷媒)M2が循環する第2の循環経路(循環冷媒循環ライン)112上に、副熱交換器102、第2の温度調節器106、冷媒循環ポンプ108、冷却対象109が配置される。副熱交換器102において、第1の冷媒M1と第2の冷媒M2との間で熱交換が行われ、第2の冷媒M2が冷却される。ターボ式の圧縮機103、第1の温度調節器105及び第2の温度調節器106は、それぞれ、ターボ式の圧縮機制御ライン103a、第1の温度調節器制御ライン105a及び第2の温度調節器制御ライン106aを介して、制御装置107によって制御される。制御装置107は、インバータ107aと制御盤107bとから構成される。
【0004】
図1に示す冷凍機で超電導機器を冷却する場合の制御モードは、大きくは、以下の第1の制御モード(以下「制御モード1」ともいう。)及び第2の制御モード(以下「制御モード2」ともいう。)の2つである。
制御モード1は、第1の温度調節器105を使用して冷凍機冷媒M1の温度を目標温度で制御するモードである。制御モード2は第2の温度調節器106を使用して循環冷媒M2の温度を目標温度で制御するモードである。冷凍機1において、第2の冷媒M2が第2の循環経路112を流れているときは、循環冷媒M2の温度を安定させることが必要であり、制御モード1で循環冷媒M2の温度を制御しようとすると、循環冷媒M2の温度変動に対して応答性が悪くなる。そのため、循環冷媒M2側の熱負荷に対して冷凍機1の制御が追従できず、超電導電力機器(冷却対象109)の冷却に必要な温度を保持できない可能性がある。したがって、冷凍機1の制御は、循環冷媒M2の状況に応じて制御モード1又は制御モード2を選択する必要がある。このとき、制御モード1から制御モード2への移行、又は制御モード2から制御モード1への移行を、スムーズに行うことが、冷凍機1の運用において重要である。
各制御モードにおける冷凍能力の制御方法としては、冷媒(冷凍機冷媒M1、循環冷媒M2)の温度を温度調節器(第1の温度調節器105、第2の温度調節器106)により監視し、その温度が設定値(以下「SV」ともいう。)を保つようにターボ式の圧縮機103の回転数を演算し、操作量(以下「MV」ともいう。)を出力する方法が用いられる。例えば、SVに対して現在値(以下「PV」ともいう。)が高い場合は、冷却を促進する必要があるため、ターボ式の圧縮機103の回転数を上げ、冷凍能力を増加させる。このように、ターボ式の圧縮機103の回転数を増減させることで、SVとPVとを一致させるように制御を行う。
制御モード1から制御モード2へ移行する時は、制御の重複を回避するため、温度調節器を冷凍機冷媒M1側の第1の温度調節器105から、循環冷媒M2側の第2の温度調節器106に切り替える必要がある。しかし、第1の温度調節器105におけるPV及びSVと第2の温度調節器106におけるPV及びSVとは、運転状況により異なるため、第1の温度調節器105及び第2の温度調節器106におけるMVにも差異が生じる。第1の温度調節器105及び第2の温度調節器106におけるMVの乖離が大きいまま制御モードを移行すると、ターボ式の圧縮機103の回転数の急激な変化により、ターボ式の圧縮機へ負荷がかかる。
ターボ式の圧縮機103は、冷凍機1における重要機器の一つであり、ターボ式の圧縮機103が故障すると、冷凍機冷媒M1系統の開放及びターボ式の圧縮機103の分解修理等が必要となり、復旧には多大な時間及び費用が必要となる。したがって、冷凍機1の長期運転を実現するためには、ターボ式の圧縮機103の安定運転が重要となる。
また、ターボ式の圧縮機103の回転数に急激な変化が起こると、SVからのアンダーシュート及びオーバーシュートが発生する可能性がある。その場合、SVとPVとが一致するまで時間を要してしまう。さらに、循環冷媒M2の負荷変動が大きい場合、ハンチングを起こし制御ができなくなる可能性もある。また、アンダーシュートにより循環冷媒M2が低温になりすぎ、凝固してしまうおそれがある。冷凍機冷媒M1と循環冷媒M2とを熱交換させる副熱交換器102内において、循環冷媒M2の凝固により閉塞が発生すると、伝熱面積の減少に伴う交換熱量の低下により、循環冷媒M2の冷却が困難になる可能性がある。循環冷媒M2の冷却ができなければ、バックアップ設備への切り替えが必要となる。バックアップが追いつかない場合、超電導電力機器(冷却対象109)の停止による電力供給の停止につながる。
【0005】
特許文献1では、多段式圧縮機を用いた極低温の冷凍サイクルを利用した冷凍機では、冷却対象の熱負荷が変動した場合、圧縮機や膨張機の回転数を制御することによって、冷凍能力を熱負荷に応じて調整することが行われているが、冷凍能力を回転数制御によって制御した場合、回転数の変化に伴って、冷媒の流量、圧力比及び温度等の他の制御パラメータにも変動をきたしてしまうため、冷凍能力を熱負荷に対応した所定の目標値に収束させるまでに時間を要してしまう場合があり、良好な応答性を得ることが難しいという問題点が指摘されている。
このような問題点に対して、特許文献1は、多段式圧縮機を用いた極低温の冷凍サイクルを利用した冷凍機において、冷却対象において熱負荷の変動が検出された場合に、極低温の冷凍サイクルを流れる冷媒流量を変化させることを特徴とする、冷却対象の熱負荷変動に対して効率の低下を伴うことなく、良好な応答性を有する極低温の冷凍サイクル冷凍機を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2014/192382号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1が示すように、制御モード1と制御モード2を使い分けることは一般的に知られている。しかし、モード移行についての制御方法は示されていない。
また、特許文献1では、MVの出力により冷凍機冷媒循環経路とバッファタンクを接続するバルブを開閉し、冷凍機冷媒の圧力を変化させて冷凍能力を調整する方法が用いられている。この方法では、圧縮機の回転数が一定のため、圧縮機の効率が高い領域で常に運転でき、冷凍機としても高効率に運転できるというメリットがある。しかし、回転数による冷凍能力の調整と比較し、系内圧力の調整では冷凍能力の応答性が悪く、循環冷媒の負荷変動が大きい場合に追従できない可能性がある。さらに、圧力を調整するためのバッファタンクおよびバルブ等が必要となり、装置が大型化する懸念がある。
また、レシプロ式の圧縮機を用いた冷凍機においては、回転数制御の変わりに稼動するピストンの筒数を増減させることで冷凍能力の調整を行う。しかし、レシプロ式の圧縮機を用いた冷凍機は1台当たりの冷凍能力が小さいため、大容量の冷凍には複数台を並べる必要がある。さらに台数が増えるとメンテナンス頻度の増加も懸念される。そのため、超電導電力機器等の大容量な冷凍能力が必要となる場合は、設置面積やコスト、メンテナンス性の観点からターボ式の圧縮機を用いた冷凍機が適している。
【0008】
本発明は、ターボ式の圧縮機の回転数の急激な変化を抑制でき、安定的な運転が可能となる冷凍機の制御方法、冷凍機の制御プログラム及び冷凍機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1] 第1の冷媒が循環する第1の循環経路と、第2の冷媒が循環する第2の循環経路と、前記第1の循環経路に配置され、前記第1の冷媒を断熱圧縮するターボ式の圧縮機と、前記第1の循環経路に配置され、前記ターボ式の圧縮機により断熱圧縮した後の前記第1の冷媒を等圧冷却する冷却器と、前記第1の循環経路に配置され、前記ターボ式の圧縮機により断熱圧縮される前の前記第1の冷媒と前記冷却器により等圧冷却された後の前記第1の冷媒との熱交換を行う主熱交換器と、前記第1の循環経路に配置され、前記第1の冷媒を断熱膨張する膨張タービンと、前記第1の循環経路及び前記第2の循環経路に配置され、前記第1の冷媒と前記第2の冷媒との熱交換を行う副熱交換器と、前記第1の循環経路の前記膨張タービンの入口側に配置された第1の温度調節器と、前記第2の循環経路の前記副熱交換器の出口側に配置された第2の温度調節器と、前記ターボ式の圧縮機、前記第1の温度調節器及び前記第2の温度調節器を制御する制御装置とを備え、前記第1の温度調節器の操作量(MV1)又は前記第2の温度調節器の操作量(MV2)に依存して前記制御装置が前記ターボ式の圧縮機の回転数を制御する冷凍機の制御方法であって、
極低温で用いられる前記冷凍機は、前記第1の温度調節器を使用して前記ターボ式の圧縮機の回転数を調節することにより前記第1の冷媒の温度を目標温度で制御する第1の制御モード及び前記第2の温度調節器を使用して前記ターボ式の圧縮機の回転数を調節することにより前記第2の冷媒の温度を目標温度で制御する第2の制御モードを有し、
第1の制御モードから第2の制御モードへの移行を指示する、第2の制御モードへの移行指令工程と、
第2の温度調節器の設定値(SV2)のSV21を、第2の温度調節器の現在値(PV2)のPV21に書き替える、第2の温度調節器の設定値書替工程と、
第2の温度調節器の操作量(MV2)を、第1の温度調節器の操作量(MV1)のMV11に書き替える、第2の温度調節器の操作量書替工程と、
ターボ式の圧縮機の回転数の制御を第1の温度調節器の操作量(MV1)依存から第2の温度調節器の操作量(MV2)依存に切り替える、第二制御ポイント切替工程と、
第2の温度調節器の設定値(SV2)をPV21からSV21まで経時的に変化させる、第2の温度調節器の設定値経時変化工程と
を備える、冷凍機の制御方法。
[2] さらに、
前記第2の制御モードへの移行指令工程の後、前記第2の温度調節器の設定値書替工程の前に、又は前記第2の温度調節器の設定値書替工程の後、前記第2の温度調節器の操作量書替工程の前の前に、第1の温度調節器の操作量(MV1)をMV11に固定する、第1の温度調節器の操作量固定工程を備え、
前記第二制御ポイント切替工程の後に、第1の温度調節器の操作量(MV1)の固定を解除する、第1の温度調節器の操作量固定解除工程を備える、
[1]に記載の冷凍機の制御方法。
[3] 第1の冷媒が循環する第1の循環経路と、第2の冷媒が循環する第2の循環経路と、前記第1の循環経路に配置され、前記第1の冷媒を断熱圧縮するターボ式の圧縮機と、前記第1の循環経路に配置され、前記ターボ式の圧縮機により断熱圧縮した後の前記第1の冷媒を等圧冷却する冷却器と、前記第1の循環経路に配置され、前記ターボ式の圧縮機により断熱圧縮される前の前記第1の冷媒と前記冷却器により等圧冷却された後の前記第1の冷媒との熱交換を行う主熱交換器と、前記第1の循環経路に配置され、前記第1の冷媒を断熱膨張する膨張タービンと、前記第1の循環経路及び前記第2の循環経路に配置され、前記第1の冷媒と前記第2の冷媒との熱交換を行う副熱交換器と、前記第1の循環経路の前記膨張タービンの入口側に配置された第1の温度調節器と、前記第2の循環経路の前記副熱交換器の出口側に配置された第2の温度調節器と、前記ターボ式の圧縮機、前記第1の温度調節器及び前記第2の温度調節器を制御する制御装置とを備え、前記第1の温度調節器の操作量(MV1)又は前記第2の温度調節器の操作量(MV2)に依存して前記制御装置が前記ターボ式の圧縮機の回転数を制御する冷凍機の制御方法であって、
極低温で用いられる前記冷凍機は、前記第1の温度調節器を使用して前記ターボ式の圧縮機の回転数を調節することにより前記第1の冷媒の温度を目標温度で制御する第1の制御モード及び前記第2の温度調節器を使用して前記ターボ式の圧縮機の回転数を調節することにより前記第2の冷媒の温度を目標温度で制御する第2の制御モードを有し、
第2の制御モードから第1の制御モードへの移行を指示する、第1の制御モードへの移行指令工程と、
第1の温度調節器の設定値(SV1)のSV11を、第1の温度調節器の現在値(PV1)のPV11に書き替える、第1の温度調節器の設定値書替工程と、
第1の温度調節器の操作量(MV1)を、第2の温度調節器の操作量(MV2)のMV21に書き替える、第1の温度調節器の操作量書替工程と、
ターボ式の圧縮機の回転数の制御を第2の温度調節器の操作量(MV2)依存から第1の温度調節器の操作量(MV1)依存に切り替える、第一制御ポイント切替工程と、
第1の温度調節器の設定値(SV1)をPV11からSV11まで経時的に変化させる、第1の温度調節器の設定値経時変化工程と
を備える、冷凍機の制御方法。
[4] さらに、
前記第1の温度調節器の設定値書替工程S22の後、前記第1の温度調節器の操作量書替工程S24の前に、又は前記第1の制御モードへの移行指令工程S21の後、前記第1の温度調節器の設定値書替工程S22の前に、第2の温度調節器の操作量(MV2)をMV21に固定する、第2の温度調節器の操作量固定工程を備え、
前記第一制御ポイント切替工程の後に、第2の温度調節器の操作量(MV2)の固定を解除する、第2の温度調節器の操作量固定解除工程を備える、
[3]に記載の冷凍機の制御方法。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の冷凍機の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とする、冷凍機の制御プログラム。
[6] [5]に記載の冷凍機の制御プログラムを搭載した制御装置を備えることを特徴とする、冷凍機。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ターボ式の圧縮機の回転数の急激な変化を抑制でき、安定的な運転が可能となる冷凍機の制御方法、冷凍機の制御プログラム及び冷凍機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、冷凍機の一例の概略構成図である。
図2図2は、制御モード1から制御モード2への移行シーケンスを示すフロー図である。
図3図3は、制御モード2から制御モード1への移行シーケンスを示すフロー図である。
図4図4は、制御モード1から制御モード2への移行におけるPV及びMVのトレンドグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[冷凍機の制御方法]
本発明の冷凍機の制御方法の実施形態を、適宜、図面を参照しながら、説明する。
【0013】
<冷凍機の構成>
図1に構成概要を示す極低温で用いられる冷凍機1は、第1の冷媒M1が循環する第1の循環経路111と、第1の循環経路111に配置された、主熱交換器101、副熱交換器102、ターボ式の圧縮機103、膨張タービン104、第1の温度調節器105及び冷却器110と、第2の冷媒M2が循環する第2の循環経路112と、第2の循環経路112に配置された、副熱交換器102、第2の温度調節器106、冷媒循環ポンプ108及び冷却対象109と、ターボ式の圧縮機103、第1の温度調節器105及び第2の温度調節器106を制御する制御装置107を備える。
【0014】
ターボ式の圧縮機103は、第1の冷媒M1を断熱圧縮する。ターボ式の圧縮機103は、インバータ107aからの指令により、設計回転数の範囲内で運転することが可能である。
冷却器110は、ターボ式の圧縮機103により断熱圧縮した後の第1の冷媒M1を等圧冷却する。
主熱交換器101は、ターボ式の圧縮機103により断熱圧縮される前の第1の冷媒M1と冷却器110により等圧冷却された後の第1の冷媒M1との熱交換を行う。
膨張タービン104は、第1の冷媒M1を断熱膨張する。
副熱交換器102は、第1の冷媒M1と第2の冷媒M2との熱交換を行う。
【0015】
第1の温度調節器105は、図1では、第1の循環経路111の膨張タービン104の入口側、すなわち主熱交換器101と膨張タービン104との間に配置しているが、第1の温度調節器105は、膨張タービン104と副熱交換器102との間又は副熱交換器102と主熱交換器101との間に設置してもよい。
第2の温度調節器106は、図1では、第2の循環経路112の副熱交換器102の出口側に配置しているが、副熱交換器102の入口側に配置してもよい。冷却対象(超電導機器)109に導入される第2の冷媒M2の温度を制御しやすいことから、第2の温度調節器106は、副熱交換器102の出口側に配置することが好ましい。
【0016】
制御装置107は、インバータ107aと、インバータ107aを制御するための制御盤107bとを含む。インバータ107aと、ターボ式の圧縮機103、第1の温度調節器105及び第2の温度調節器106とは、それぞれ、ターボ式の圧縮機制御ライン103a、第1の温度調節器制御ライン105a及び第2の温度調節器制御ライン106aとを介して接続されている。
【0017】
冷凍機1は、第1の温度調節器105を使用してターボ式の圧縮機103の回転数を調節することにより第1の冷媒M1の温度を目標温度で制御する第1の制御モード及び第2の温度調節器106を使用してターボ式の圧縮機103の回転数を調節することにより第2の冷媒M2の温度を目標温度で制御する第2の制御モードを有する。
制御モード1では、第1の温度調節器105が第1の冷媒M1の温度を監視し、ターボ式の圧縮機103の回転数を制御する。第1の循環経路111の冷媒配管には、第1の冷媒M1の温度を計測する温度センサ(図示省略)が設けられており、第1の冷媒M1の温度の現在値PV1が電気信号により第1の温度調節器105に現在値PV11として入力される。第1の冷媒M1の温度の設定値SV1は、第1の温度調節器105本体の操作により、任意の値SV11に設定する。PV11とSV11との偏差を基に、第1の温度調節器105からインバータ107aへ操作量MV1が出力され、ターボ式の圧縮機103の回転数を設定する。
制御モード2では、第2の温度調節器106が第2の冷媒M2の温度を監視し、ターボ式の圧縮機103の回転数を制御する。第2の循環経路112の冷媒配管には、第2の冷媒M2の温度を計測する温度センサ(図示省略)が設けられており、第2の冷媒M2の温度の現在値PV2が電気信号により第2の温度調節器106に現在値PV21として入力される。第2の冷媒M2の温度の設定値SV2は、第2の温度調節器106本体の操作により、任意の値SV21に設定する。PV21とSV21との偏差を基に、第2の温度調節器106からインバータ107aへ操作量MV2が出力され、ターボ式の圧縮機103の回転数を設定する。
【0018】
第1の冷媒M1は、例えば、ネオン、水素又はヘリウムである。第1の冷媒M1としては、凝固点が低く、ターボ式の圧縮機の設計圧力比を低回転数で実現できることから、ネオンが好ましい。
第2の冷媒M2は、例えば、液体窒素、液体水素又は液体ヘリウムである。第2の冷媒M2としては、通常、必要充分な冷却性能を発揮でき、安価であることから、液体窒素が好ましい。
【0019】
以下では、本発明の冷凍機の制御方法における、制御モード1から制御モード2への移行シーケンスと、制御モード2から制御モード1への移行シーケンスと、について詳細に説明する。
【0020】
<制御モード1から制御モード2への移行シーケンス>
制御モード1から制御モード2への移行シーケンスは、図2に示すように、第2の制御モードへの移行指令工程S11と、第2の温度調節器の設定値書替工程S12と、第1の温度調節器の操作量固定工程S13と、第2の温度調節器の操作量書替工程S14と、第二制御ポイント切替工程S15と、第1の温度調節器の操作量固定解除工程S16と、第2の温度調節器の設定値経時変化工程S17と、を含む。通常、制御モード1から制御モード2への移行シーケンスは電気信号による操作であるため、1秒未満で実行可能である。制御モード1から制御モード2への移行シーケンスにおける操作量MV1の変化は極めて小さいため、操作量の固定及び固定の解除を省略することが可能であり、第1の温度調節器の操作量固定工程S13及び第1の温度調節器の操作量固定解除工程S16は、省略可能である。
【0021】
(S11:第2の制御モードへの移行指令工程)
第2の制御モードへの移行指令工程S11は、第1の制御モードから第2の制御モードへの移行を指示する工程である。
冷凍機1は制御モード1の状態である。制御モード1から制御モード2へのモード移行のシーケンスを起動する。
【0022】
(S12:第2の温度調節器の設定値書替工程)
第2の温度調節器の設定値書替工程S12は、第2の温度調節器106の設定値(SV2)のSV21を、第2の温度調節器106の現在値(PV2)のPV21に書き替える工程である。
SV21をPV21に書き替えた後は、常に第2の温度調節器106の現在値(PV2)と第2の温度調節器106の設定値(SV2)とが同一となるように連動させる。これにより第2の温度調節器106の操作量(MV2)を一定に保つことが可能である。
【0023】
(S13:第1の温度調節器の操作量固定工程)
第1の温度調節器の操作量固定工程S13は、第1の温度調節器105の操作量(MV1)をMV11に固定する工程である。
第1の温度調節器105の操作量(MV1)を固定する方法としては、例えば、第1の温度調節器105を手動モードに切り替える方法がある。また、第1の温度調節器105の操作量(MV1)の算出にPID(Proportional-Integral-Differential)制御を用いている場合、PIDパラメータを一時的に変更して第1の温度調節器105の操作量(MV1)の変化速度を極端に遅くしてもよい。
また、同時に、第2の温度調節器106の操作量(MV2)を固定してもよい。
第1の温度調節器の操作量固定工程S13は、第2の温度調節器の設定値書替工程S12の後、第2の温度調節器の操作量書替工程S14の前に行ってもよいし、第2の温度調節器の設定値書替工程S12の前、第2の制御モードへの移行指令工程S11の後に行ってもよい。
【0024】
(S14:第2の温度調節器の操作量書替工程)
第2の温度調節器の操作量書替工程S14は、第2の温度調節器106の操作量(MV2)を、第1の温度調節器105の操作量(MV1)のMV11に書き替える工程である。
本工程においては、第2の温度調節器106の現在値(PV2)と第2の温度調節器106の設定値(SV2)とは同一のため、第2の温度調節器106の操作量(MV2)は変化しない。
【0025】
(S15:第二制御ポイント切替工程)
第二制御ポイント切替工程S15は、ターボ式の圧縮機103の回転数の制御を第1の温度調節器105の操作量(MV1)依存から第2の温度調節器106の操作量(MV2)依存に切り替える工程である。
【0026】
(S16:第1の温度調節器の操作量固定解除工程)
第1の温度調節器の操作量固定解除工程S16は、第1の温度調節器105の操作量(MV1)の固定を解除する工程である。
第2の温度調節器106の操作量(MV2)を固定していた場合は、第2の温度調節器106の操作量(MV2)の固定も同時に解除する。温度調節器を手動モードにしていた場合は自動モードに戻す。また、PID制御のパラメータを変更してMVの変化を遅くしていた場合はパラメータを元に戻す。
【0027】
(S17:第2の温度調節器の設定値経時変化工程)
第2の温度調節器の設定値経時変化工程S17は、第2の温度調節器106の設定値(SV2)をPV21からSV21まで経時的に変化させる工程である。
第2の温度調節器106の設定値(SV2)は、本来設定している値(第2の制御モードへの移行指令工程でのSV2)と異なるため、元に戻す。ただし、急激に本来設定している値へ戻すと、差異が大きい場合は第2の温度調節器106の操作量(MV2)の急激な変化が発生する。そこで小刻みに第2の温度調節器106の設定値(SV2)を変更し、徐々に本来設定した値へと近づけることが好ましい。具体的には、例えば、0.1K/sの変化速度にて第2の温度調節器106の設定値(SV2)を増加又は減少させる方法挙げられる。また、インバータ107aの出力制御により、ターボ式の圧縮機103の回転数に上限下限を段階的に設け、複数回に分けターボ式の圧縮機103の回転数を変化させてもよい。
【0028】
上記S11~S17を実行することで、ターボ式の圧縮機103回転数の急激な変化を抑制し、制御モード1から制御モード2への安定的なモード移行が実行可能となる。
【0029】
<制御モード2から制御モード1への移行シーケンス>
制御モード2から制御モード1への移行シーケンスは、図3に示すように、第1の制御モードへの移行指令工程S21と、第1の温度調節器の設定値書替工程S22と、第2の温度調節器の操作量固定工程S23と、第1の温度調節器の操作量書替工程S24と、第一制御ポイント切替工程S25と、第2の温度調節器の操作量固定解除工程S26と、第1の温度調節器の設定値経時変化工程S27と、を含む。通常、制御モード2から制御モード1への移行シーケンスは電気信号による操作であるため、1秒未満で実行可能である。制御モード2から制御モード1への移行シーケンスにおける操作量MV2の変化は極めて小さいため、操作量の固定及び固定の解除を省略することが可能であり、第2の温度調節器の操作量固定工程S23及び第2の温度調節器の操作量固定解除工程S26は、省略可能である。
【0030】
(S21:第1の制御モードへの移行指令工程)
第1の制御モードへの移行指令工程S21は、第2の制御モードから第1の制御モードへの移行を指示する工程である。
冷凍機1は制御モード2の状態である。制御モード2から制御モード1へのモード移行のシーケンスを起動する。
【0031】
(S22:第1の温度調節器の設定値書替工程)
第1の温度調節器の設定値書替工程S22は、第1の温度調節器105の設定値(SV1)のSV11を、第1の温度調節器105の現在値(PV1)のPV11に書き替える工程である。
SV11をPV11に書き替えた後は、常に第1の温度調節器105の現在値(PV1)と第1の温度調節器105の設定値(SV1)とが同一となるように連動させる。これにより第1の温度調節器105の操作量(MV1)を一定に保つことが可能である。
【0032】
(S23:第2の温度調節器の操作量固定工程)
第2の温度調節器の操作量固定工程S23は、第2の温度調節器106の操作量(MV2)をMV21に固定する工程である。
第2の温度調節器106の操作量(MV2)を固定する方法としては、例えば、第2の温度調節器106を手動モードに切り替える方法がある。また、第2の温度調節器106の操作量(MV2)の算出にPID(Proportional-Integral-Differential)制御を用いている場合、PIDパラメータを一時的に変更して第2の温度調節器106の操作量(MV2)の変化速度を極端に遅くしてもよい。
また、同時に、第1の温度調節器105の操作量(MV1)を固定してもよい。
第2の温度調節器の操作量固定工程S23は、第1の温度調節器の設定値書替工程S22の後、第1の温度調節器の操作量書替工程S24の前に行ってもよいし、第1の温度調節器の設定値書替工程S22の前、第1の制御モードへの移行指令工程S21の後に行ってもよい。
【0033】
(S24:第1の温度調節器の操作量書替工程)
第1の温度調節器の操作量書替工程S24は、第1の温度調節器105の操作量(MV1)を、第2の温度調節器106の操作量(MV2)のMV21に書き替える工程である。
本工程においては、第1の温度調節器105の現在値(PV1)と第1の温度調節器105の設定値(SV1)とは同一のため、第1の温度調節器105の操作量(MV1)は変化しない。
【0034】
(S25:第一制御ポイント切替工程)
第一制御ポイント切替工程S25は、ターボ式の圧縮機103の回転数の制御を第2の温度調節器106の操作量(MV2)依存から第1の温度調節器105の操作量(MV1)依存に切り替える工程である。
【0035】
(S26:第2の温度調節器の操作量固定解除工程)
第2の温度調節器の操作量固定解除工程S26は、第2の温度調節器106の操作量(MV2)の固定を解除する工程である。
第1の温度調節器105の操作量(MV1)を固定していた場合は、第1の温度調節器105の操作量(MV1)の固定も同時に解除する。温度調節器を手動モードにしていた場合は自動モードに戻す。また、PID制御のパラメータを変更してMVの変化を遅くしていた場合はパラメータを元に戻す。
【0036】
(S27:第1の温度調節器の設定値経時変化工程)
第1の温度調節器の設定値経時変化工程S27は、第1の温度調節器105の設定値(SV1)をPV11からSV11まで経時的に変化させる工程である。
第1の温度調節器105の設定値(SV1)は、本来設定している値(第1の制御モードへの移行指令工程でのSV1)と異なるため、元に戻す。ただし、急激に本来設定している値へ戻すと、差異が大きい場合は第1の温度調節器105の操作量(MV1)の急激な変化が発生する。そこで小刻みに第1の温度調節器105の設定値(SV1)を変更し、徐々に本来設定した値へと近づけることが好ましい。具体的には、例えば、0.1K/sの変化速度にて第1の温度調節器105の設定値(SV1)を増加又は減少させる方法挙げられる。また、インバータ107aの出力制御により、ターボ式の圧縮機103の回転数に上限下限を段階的に設け、複数回に分けターボ式の圧縮機103の回転数を変化させてもよい。
【0037】
上記S21~S27を実行することで、ターボ式の圧縮機103回転数の急激な変化を抑制し、制御モード2から制御モード1への安定的なモード移行が実行可能となる。
【0038】
[冷凍機の制御プログラム]
本発明の冷凍機の制御プログラムは、上述した冷凍機の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0039】
[冷凍機]
本発明の冷凍機は、上述した冷凍機の制御プログラムを搭載した制御装置を備えることを特徴とする。
本発明の冷凍機の一例の概略構成は、図1に示すとおりである。
【0040】
[作用効果]
従来の冷凍機の制御方法では、制御モード1から制御モード2への移行の際には、第1の冷媒M1側の温度を制御する第1の温度調節器105から、第2の冷媒M2の温度を制御する第2の温度調節器106へ、温度調節器を単純に移行する方法でモード移行が行われていた。この方法では、各温度調節器の制御パラメータを変更しないので、各温度調節器のMVが異なり、第1の温度調節器105から第2の温度調節器106に制御が切り替った時に、ターボ式の圧縮機103の回転数が急激に変化する。ターボ式の圧縮機103の回転数が一時的に大きく変動することで、第2の冷媒M2の温度も変動を引き起こし、再び安定状態となるまでに時間を要する。さらに、ターボ式の圧縮機103に負荷がかかるだけでなく、回転数の変動に伴う第1の冷媒M1の圧力変動等により、冷凍機1がインターロック停止する可能性がある。
これに対して、本発明の冷凍機の制御方法では、制御モード1から制御モード2への移行時に、第1の温度調節器105及び第2の温度調節器106のそれぞれに制御シーケンスを付加することで、ターボ式の圧縮機103の回転数の急激な変化を抑制し、安定的な運転が可能となる。
【実施例0041】
以下では実施例によって本発明をより具体的に説明する。しかし、本発明は後述する実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。
【0042】
[実施例1]
制御モード1から制御モード2への移行を、S11:第2の制御モードへの移行指令工程、S12:第2の温度調節器の設定値書替工程、S13:第1の温度調節器の操作量固定工程、S14:第2の温度調節器の操作量書替工程、S15:第二制御ポイント切替工程、S16:第1の温度調節器の操作量固定解除工程、S17:第2の温度調節器の設定値経時変化工程、の順に行い、モード移行を完了した。
本実施例における制御モード1から制御モード2へのモード移行時の温度調節器の設定値(SV)、現在値(PV)及び操作量(MV)を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
温度調節器の現在値(PV)は常に変動している。
SV列及びMV列の斜体字は強制的に変更した値である。
MV列の○が付いているMVは出力に使用している値である。
【0045】
図4に、制御モード1から制御モード2への移行における、本実施例のPV及びMVのトレンドグラフを示す(実線)。
【0046】
[実施例2]
制御モード1から制御モード2への移行を、S11:第2の制御モードへの移行指令工程、S12:第2の温度調節器の設定値書替工程、S14:第2の温度調節器の操作量書替工程、S15:第二制御ポイント切替工程、S17:第2の温度調節器の設定値経時変化工程、の順に行い、モード移行を完了した。
本実施例における制御モード1から制御モード2へのモード移行時の温度調節器の設定値(SV)、現在値(PV)及び操作量(MV)を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
温度調節器の現在値(PV)は常に変動している。
SV列及びMV列の斜体字は強制的に変更した値である。
MV列の○が付いているMVは出力に使用している値である。
【0049】
[実施例3]
制御モード2から制御モード1への移行を、S21:第1の制御モードへの移行指令工程、S22:第1の温度調節器の設定値書替工程、S23:第2の温度調節器の操作量固定工程と、S24:第1の温度調節器の操作量書替工程と、S25:第一制御ポイント切替工程、S26:第2の温度調節器の操作量固定解除工程、S27:第1の温度調節器の設定値経時変化工程、の順に行い、モード移行を完了した。
本実施例における制御モード2から制御モード1へのモード移行時の温度調節器の設定値(SV)、現在値(PV)及び操作量(MV)を表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
温度調節器の現在値(PV)は常に変動している。
SV列及びMV列の斜体字は強制的に変更した値である。
MV列の○が付いているMVは出力に使用している値である。
【0052】
[比較例1]
制御モード1から制御モード2への移行を、S11:第2の制御モードへの移行指令工程、S15:第二制御ポイント切替工程、の順に行い、モード移行を完了した。
本比較例における制御モード1から制御モード2へのモード移行時の温度調節器の設定値(SV)、現在値(PV)及び操作量(MV)を表4に示す。
【0053】
【表4】
【0054】
温度調節器の現在値(PV)は常に変動している。
MV列の○が付いているMVは出力に使用している値である。
【0055】
図4に、制御モード1から制御モード2への移行における、本比較例のPV及びMVのトレンドグラフを示す(破線)。
【0056】
[結果の説明]
実施例1~3では、ターボ式の圧縮機の回転数の急激な変化を抑制し、安定的な運転ができる。これに対して、比較例1では、ターボ式の圧縮機の回転数の急激な変化が起こり、安定的な運転ができない。
また、図4に示すとおり、実施例1では、PV2が循環冷媒凝固点に到達しないのに対し、比較例1では、アンダーシュートが大きいためPV2が循環冷媒凝固点に達してしまう可能性がある。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の冷凍機の制御方法は、制御モード1から制御モード2への移行、制御モード2から制御モード1への移行に際して、ターボ式の圧縮機の回転数の急激な変化がないので、冷凍機の安定的な運転が可能である。
本発明の冷凍機の制御方法は、超電導機器の冷却用の冷凍機の運転に適している。
【符号の説明】
【0058】
1 冷凍機
101 主熱交換器
102 副熱交換器
103 ターボ式の圧縮機
103a ターボ式の圧縮機制御ライン
104 膨張タービン
105 第1の温度調節器
105a 第1の温度調節器制御ライン
106 第2の温度調節器
106a 第2の温度調節器制御ライン
107 制御装置
107a インバータ
107b 制御盤
108 冷媒循環ポンプ
109 冷却対象
110 冷却器
111 第1の循環経路(冷凍機冷媒循環ライン)
112 第2の循環経路(循環冷媒循環ライン)
M1 第1の冷媒(冷凍機冷媒)
M2 第2の冷媒(循環冷媒)
図1
図2
図3
図4