(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109080
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】音響センサ装置
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20220720BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
G01H17/00 C
G08C15/00 H
G08C15/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004421
(22)【出願日】2021-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鵜戸 真也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 征幸
(72)【発明者】
【氏名】矢田 智春
【テーマコード(参考)】
2F073
2G064
【Fターム(参考)】
2F073AA11
2F073AB14
2F073BB04
2F073BC01
2F073CC02
2F073CC08
2F073CD22
2F073DD01
2F073FG04
2F073GG01
2F073GG02
2G064AA01
2G064AA11
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
(57)【要約】
【課題】非常に微小な変化を検出し得るセンサを用い、センサの出力信号としてアナログ信号を伝送する音響センサ装置の場合でも、ケーブルを増やすことなく、常時データ処理部側で、そのセンサによる異常検出信号とセンサの故障診断結果とを自動的に受信できる音響センサ装置を提供する。
【解決手段】音響センサ11及び音響センサ11の出力信号の直流成分をカットする第1キャパシタ13を含むセンサ回路部10と、センサ回路部10の出力信号を受信し、センサ回路部10の出力信号を処理するデータ処理部20と、センサ回路部10の出力信号をデータ処理部20に伝送するケーブル30とを備えている。センサ回路部10が音響センサ11の故障を検出する故障検出回路12を有し、データ処理部20がセンサ回路部10の出力信号に重畳した故障信号を受信する故障信号受信回路21をさらに有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響センサ及び該音響センサに直列接続され、前記音響センサの出力信号の直流成分をカットする第1キャパシタを含むセンサ回路部と、
前記センサ回路部の出力信号を受信し、前記センサ回路部の出力信号を処理するデータ処理部と、
前記センサ回路部の出力信号を前記データ処理部に伝送するケーブルと、
を備え、
前記センサ回路部が前記音響センサの故障を検出する故障検出回路をさらに有し、前記故障検出回路からの故障信号を前記音響センサの出力信号に重畳して前記センサ回路部の出力信号とし、
前記データ処理部が前記故障検出回路からの前記故障信号を受信する故障信号受信回路をさらに有している、
音響センサ装置。
【請求項2】
前記故障検出回路が第1コンパレータ及びトランジスタを有し、前記第1コンパレータは前記音響センサの出力で前記第1キャパシタに入力する前の信号を入力し、入力した信号が前記第1コンパレータの予め設定した閾値の範囲に入っていない場合に前記トランジスタを介して故障信号を出力し、前記トランジスタの出力が前記センサ回路部の出力端子に接続される、請求項1に記載の音響センサ装置。
【請求項3】
前記センサ回路部は、前記第1キャパシタの出力信号を増幅する増幅回路及び該増幅回路による増幅後の出力の直流電位を設定する直流電位設定回路をさらに含む、請求項1又は2に記載の音響センサ装置。
【請求項4】
前記故障信号受信回路は第2コンパレータを有し、前記センサ回路部の出力信号を入力し、所定の閾値と比較して、前記音響センサの故障の有無を出力する、請求項1~3のいずれか1項に記載の音響センサ装置。
【請求項5】
前記音響センサが容量型センサである、請求項1~4のいずれか1項に記載の音響センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響センサを用いた産業用製造装置等の稼働センシングに関する。
【背景技術】
【0002】
特にベアリングや回転軸などを有する産業用製造装置は、部品などの消耗が進むと急激に故障になるため、その稼働状態を常時検知する必要がある。また、これらは故障に至る前に予め故障になりそうだという予兆を発するのでそれを検出することも重要となる。そのために種々のセンサが用いられ、検出したい装置の部品の近くにセンサが設置される。一方、この種のセンサの出力は、センサの設置場所とは離れた場所に設置されたセンサ装置の後段としてのデータ処理部で管理される。
【0003】
これらの産業用製造装置は、それほど短期間で異常をきたすことは少なく、設置されたセンサは長期間に亘って故障予兆の検出作業が続けられる。そのため、その間にセンサが故障する可能性もある。特に高湿度、高温などといった環境条件の厳しい場所などに設置される場合には、産業用製造装置と同じようにセンサも破損する。そのため、センサの故障の有無も検出する必要がある。
【0004】
現在同様の用途で主に使用される加速度センサにおいては、センサにより2種類の方法が一般的である。すなわち、例えばピエゾ素子を用いたDC出力型センサ装置では、
図3に示されるように、センサ回路部50の出力が、ケーブル70を介してデータ処理部60に送られ、データ処理部60においてはセンサ回路部50から送られる出力信号を処理すると共に、出力信号の直流電位を故障検出回路61で検出することができる(特許文献1参照)。また、多軸の加速度MEMSセンサでは、デジタルI/Fで処理され、双方向の通信でデータ処理部側から診断情報を読みに行く方法がとられている。
【0005】
図3において、センサ回路部50は、センサ51、抵抗52及び増幅回路53からなっており、データ処理部60は、故障検出回路61、定電流源65、キャパシタ66、増幅回路62、ADC64、制御回路63からなっている。ケーブル70は同軸ケーブルなど、信号線71の周囲をシールド線で被覆した、外部ノイズが混入し難い配線になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
センサ回路部50は監視しようとする産業用製造装置の近傍に設置され、データ処理部60は、一般的に各産業用製造装置の制御盤や分電盤などに設置されるため、両者は通常離れた場所に設置される。前述のように、センサの出力がDC信号の場合には、データ処理部60にセンサの故障検出回路61を形成して、常時センサの故障も検出することができる。しかし、センサの出力がAC信号の場合には、データ処理部60に伝送される前に直流成分がカットされているため、データ処理部60ではセンサの直流電位を検出することができず、センサの故障を直接検出することができない。このような場合でも、センサの故障をデータ処理部60側で検出するには、例えば容量型センサなどのセンサ回路部50の出力は、ケーブル70とは別のケーブルを用いて後段のデータ処理部60に入力する必要があり、配線が1本増えるという問題がある。すなわち、センサ回路部50と後段のデータ処理部60との間には、電源線(図示せず)、信号線71、GND線(図示せず)に加えてセンサの故障検出線(図示せず)の合計4本の配線が必要となり複雑になる。
【0008】
一方、前述の多軸の加速度MEMSセンサのように、双方向通信をする構成にすると、出力信号線でセンサ回路部50の出力とセンサの故障の有無の信号とを切り替えて検出することができる。しかし、この場合には、出力を切り替える制御が必要となるとともに、センサ51の出力信号とセンサの故障検出信号とを常時、自動的に監視することができないという問題がある。
【0009】
監視しようとする産業用製造装置は、材料が変形又は破損する際、内部に蓄えられている弾性エネルギーを音波(超音波)として放出する。前述の産業用製造装置などの信頼性を高めるため、このような音波を検出することによって、産業用製造装置などの故障の予兆をも検出し得る。すなわち、ベアリングやモータ軸などから発する超音波などに重畳される、疲労などによる僅かな異常を検出することができる。そのためには、例えば微小信号でも超音波帯域まで高精度で検出し得る容量型センサを用い、アナログによるAC信号を増幅して検出する必要がある。
【0010】
このようにセンサ回路部からの出力をAC信号にすると、センサ回路部からの直流電位により、前述の
図3に示されるようなデータ処理部で直接センサの故障を検出することができない。そのため、上述したようにセンサの故障を検出するケーブルをセンサの出力用のケーブルとは別に設ける必要が生じる。また、センサが故障して取り換える場合、センサのレベルが変わると、センサを取り換えるごとにデータ処理部にある故障検出回路を対で取り換えるか、新しいセンサと故障検出回路との整合を図る必要があるが、センサの設置される場所と故障検出回路が設置される場所が離れているので、そのレベル調整が煩雑になる。
【0011】
そこで、本発明は、このような非常に微小な変化を検出し得るセンサを用い、センサの出力信号としてアナログ信号を伝送する音響センサ装置の場合でも、ケーブルを増やすことなく、常時データ処理部側で、そのセンサによる異常検出信号とセンサの故障診断結果とを自動的に受信できる音響センサ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の音響センサ装置の一実施形態は、音響センサ及び該音響センサに直列接続され、前記音響センサの出力信号の直流成分をカットする第1キャパシタを含むセンサ回路部と、前記センサ回路部の出力信号を受信し、前記センサ回路部の出力信号を処理するデータ処理部と、前記センサ回路部の出力信号を前記データ処理部に伝送するケーブルと、を備え、前記センサ回路部が前記音響センサの故障を検出する故障検出回路をさらに有し、前記故障検出回路からの故障信号を前記音響センサの出力信号に重畳して前記センサ回路部の出力信号とし、前記データ処理部が前記故障検出回路からの前記故障信号を受信する故障信号受信回路をさらに有している。
【発明の効果】
【0013】
本発明の音響センサ装置によれば、センサ回路部に音響センサと共に、音響センサの故障を検出する故障検出回路が設けられているので、音響センサからの出力の直流電位によって音響センサの故障を検出し、故障がある場合には、故障検出回路から故障信号、例えばLow信号を出力してセンサ回路部の出力信号線に重畳し、データ処理部に伝送される。そのため、センサ回路部からの1本の信号線によって、データ処理部で常時音響センサの出力信号と、音響センサの故障の有無とを自動的に別々に取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の音響センサ装置の一実施形態のブロック図である。
【
図2】
図1の音響センサ部分のさらに具体的な接続回路である。
【
図3】従来のこの種のセンサ装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、図面を参照しながら本発明の音響センサ装置の実施形態が説明されるが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本発明の音響センサ装置1の一実施形態は、
図1に示されるように、音響センサ11及び音響センサ11に直列接続され、音響センサ11の出力信号の直流成分をカットする第1キャパシタ13を含むセンサ回路部10と、センサ回路部10の出力信号を受信し、センサ回路部10の出力信号を処理するデータ処理部20と、センサ回路部10の出力信号をデータ処理部20に伝送するケーブル30とを備えている。そして、センサ回路部10が音響センサ11の故障を検出する故障検出回路12をさらに有し、音響センサ11の故障を検出すると故障信号をセンサ回路部10の出力信号に重畳して出力する。データ処理部20はセンサ回路部10の出力信号に重畳された故障信号を受信する故障信号受信回路21をさらに有し、故障信号受信回路21からの故障を示す出力に基づき報知処理などをし得る構成になっている。
【0017】
すなわち、本実施形態の音響センサ装置1は、検出信号が非常に微細で、ACの検出信号をセンサ回路部10とは離れた場所にあるデータ処理部20に送り、音響センサ11により検出した信号に応じて処理をする音響センサ装置に特に適している。本実施形態においては、センサ回路部10に音響センサ11の故障を検出する故障検出回路12が形成されており、その故障検出回路12の出力が音響センサ11の出力信号に重畳して信号線31を介してデータ処理部20に送られて、データ処理部20で故障の有無を検出でき、センサの本来の信号と共に、センサの故障診断結果も常時取得できる構成になっていることに特徴がある。その結果、音響センサ11の出力の直流成分を第1キャパシタ13によってカットしても、直流成分をカットする前の音響センサ11の出力が有する直流電圧を検出することによって音響センサ11の故障を検出することができる。そして、その故障信号を音響センサ11の出力信号に重畳するため、音響センサ11の出力信号と音響センサ11の故障がある場合の故障信号を1本の信号線31で伝送することができる。以下に、詳細に説明される。
【0018】
本実施形態のセンサ回路部10は、音響センサ11と、音響センサ11の故障を検出する故障検出回路12と、音響センサ11の直流成分をカットする第1キャパシタ13と、直流成分がカットされた検出信号のAC成分を増幅する増幅回路14と、増幅後の出力信号に一定の直流電位を付与する直流電位設定回路15とを含んでいる。
【0019】
音響センサ11は、前述のように、産業用製造装置のベアリングや回転軸などの消耗、故障の予兆などを超音波帯域で検出し得るものが好ましい。そのような高周波帯域の微小信号を検出するには、容量型センサが好ましい。容量型センサを用いた音響センサ11は、
図2に示されるように、2枚の電極が設けられることによって両電極間に電極間の距離dなどに応じた容量が形成され、通電されると両電極間に電荷が蓄積されるセンサ素子111を含む。この電荷Qによって電極間に電圧Vが発生する。電極間の容量をCとすると、発生する電圧Vは、V=Q/Cとなる。超音波によって電極の一方が振動すると電極間の距離dが変化し、容量Cが変化する(C=ε・S/d、ここでεは電極間の媒体の誘電率、Sは電極の面積である)。そのため、容量の変化、すなわち距離dの変化をもたらす音響の変化を両電極間の電圧Vによって検出することができる。
【0020】
この容量の変化は、非常に微小であるため、センサ素子111に直結した増幅回路112で増幅される。すなわち、音響センサ11は、センサ素子111と増幅回路112とが一体化したセンサモジュールとして形成されている。
【0021】
この音響センサ11には、
図2に示されるように、バイアス電源が抵抗17を介して接続される。なお、
図2は音響センサ11をECM(Electret Condenser Microphone)で構成した回路例である。この回路で、センサ素子111に所望のバイアス電圧が印加され、その両端の電圧が増幅回路112により増幅され、交流のセンサ出力として
図1の第1キャパシタ13及び増幅回路14を介して出力される。また、増幅回路112により増幅されたセンサ素子111の両端の電圧は、
図1の故障検出回路12に印加され、センサ出力に異常があるか否か、すなわちセンサ素子111に異常があるか否かが監視される。
【0022】
センサ素子111は、容量型センサが用いられると、水分などの侵入、又は異物の付着などによってセンサなどの動作に異常が生じる場合が想定される。特に、前述のように、産業用製造装置の故障の予兆を検出しようとする場合には、非常に長期間連続的に監視を行うこととなり、特に環境状態が過酷な場所にセンサが設置される場合には、センサ自体の故障が生じ得る。そのため、センサの故障を検出することが不可欠になる。一方で、前述のように、微小の異常を検出するセンサにおいては、AC信号で増幅回路によって増幅する必要があり、センサの出力を交流信号にする必要がある。そのため、キャパシタによって直流成分をカットするが、本実施形態では、第1キャパシタ13によって直流成分をカットする前に故障検出回路12によって音響センサ11の故障の有無を検出し、その結果を出力信号に重畳するようになっている。
【0023】
故障検出回路12は、第1コンパレータ121と、その比較結果が故障と診断された場合には、例えばLow信号などの故障信号を出力するトランジスタ122を有している。
図1に示される第1コンパレータ121は、ウインドウコンパレータが用いられ、上位の閾値121aと下位の閾値121bとの間に入力信号があれば故障なしと診断してトランジスタ122はオープン状態となり、入力信号がその間からいずれかに外れていれば故障と診断して第1コンパレータ121の出力によりトランジスタ122がオン状態となって例えばGND(Low電位)に接続されたソースとドレインとが導通することによってLow信号が出力される。このトランジスタ122のドレインがセンサ回路部10の出力端子10aに接続されている。
【0024】
ウインドウコンパレータは、簡単な例としては、2つのコンパレータを有し、一方のコンパレータが上位閾値以下であるか否かを検出し、もう1つのコンパレータが下位の閾値以上であるか否かを検出することにより比較結果が得られる。しかし、第1コンパレータ121はウインドウコンパレータに限定されるものではない。なお、この第1コンパレータ121に入力される信号は、抵抗123及び一方の電極がGNDに接続されるキャパシタ124を含むフィルタ回路を介して入力される。
【0025】
第1キャパシタ13は、音響センサ11の出力信号から直流成分をカットするために設けられている。
【0026】
増幅回路14は、音響センサ11の出力信号のAC成分を増幅する。AC成分だけになっているので、出力電圧を増幅回路14の出力電圧範囲内とすることが容易である。
【0027】
直流電位設定回路15は、増幅されたAC信号に一定の直流電位を付与する。これは、前述の故障検出回路12のLow信号が信号線31に入力された場合に、そのLow信号を認識できるようにするためである。
【0028】
この直流電位設定回路15では、増幅回路14でのオフセットの除去のためキャパシタ153を介した信号線31が、電源とGNDとの間に接続された2個の抵抗器151と152の接続点に接続されている。その結果、信号線31には、電源電圧とGNDとの間の電圧が2個の抵抗器151、152の抵抗値の比で分圧された直流電位が付与される。
【0029】
データ処理部20は、センサ回路部10とは離れた場所に設置されており、故障信号受信回路21と、直流成分をカットする第2キャパシタ22と、増幅回路23と、アナログ信号をデジタル信号に変換するADC回路24と、センサ回路部10の出力信号を重畳する故障信号に応じて処理をする制御回路25とを有している。
【0030】
故障信号受信回路21は、第2コンパレータ211を有しており、第2コンパレータ211の一方の入力端子211aはセンサ回路部10の出力端子10aから送られてきた信号が入力されるように信号線31に接続され、第2コンパレータ211の他方の入力端子211bは、閾値を設定する基準電位212に接続されており、入力された出力信号は閾値である基準電位212と比較される。比較の結果を示す第2コンパレータ211の出力が制御回路25に送られるように、第2コンパレータ211の出力端子は制御回路25に接続されている。例えば、入力端子211aが非反転入力端子である場合、入力端子211aに入力されたセンサ回路部10の出力信号が基準電位よりも小さい場合、第2コンパレータ211からはLowレベル信号が出力され、このLowレベル信号が、音響センサ11の異常の検出信号として制御回路25によって認識されてもよい。
【0031】
第2キャパシタ22は、センサ回路部10の出力信号から直流成分をカットするために設けられている。すなわち、センサ回路部10で第1キャパシタ13によって出力信号の直流成分はカットされているが、その後、故障検出回路12による故障検出状態の識別のために、直流電位設定回路15によって所定の直流電位が付与されているため、その直流電位をカットするものである。
【0032】
増幅回路23は、直流成分がカットされた音響センサ11の出力信号をさらに増幅して信号処理を行いやすくするものである。
【0033】
ADC回路24は、アナログ信号をデジタル信号に変換して、信号処理を行う後段の制御回路25に出力する。本実施形態では、アナログ信号の状態でデータ処理部20にセンサ信号を伝送していることに特徴がある。
【0034】
制御回路25は、音響センサ11により検出した産業用製造装置の故障の予兆を分析し、その予兆の程度に応じて産業用製造装置の修理又は部品の取り換えなどの処置を指示する。また、故障信号受信回路21から音響センサ11の故障信号が送られてきた際には、LEDなどからなる警告灯などによってセンサの交換をすべきことを報知する。
【0035】
音響センサ11が故障して取り換える場合、音響センサ11によって、そのレベルが異なり、故障検出回路12とのレベル調整をする必要があるが、本実施形態では故障検出回路12がデータ処理部20ではなく、センサ回路部10に形成されているため、センサ素子111の近くであり、そのレベル調整を容易に行うことができる。
【0036】
ケーブル30は、外部ノイズが混入しないように同軸ケーブルなどが好ましい。非常に微小の変化を検出するため、外部からの信号などが入り込まないようにGND線によりシールド線で保護されていることが好ましい。
図1では、信号線31をケーブル30としているが、GND線(図示せず)や電源線(図示せず)を含めることもできる。
【0037】
次に、この音響センサ装置の動作について説明する。
【0038】
センサ回路部10は、産業用製造装置の特に監視したい部品などの近傍に設置される。そのセンサ回路部10には、電源がバイアス電圧生成回路及び抵抗17を介して音響センサ11の、例えば容量型のセンサ素子111(
図2参照)の一方の電極に接続される。このセンサ素子111の他方の電極はGNDに接続される。
【0039】
その結果、両電極間に電流が流れ、両電極間の距離d及び各電極の面積S並びに両電極間の媒体の誘電率εに応じて定まる容量Cに応じた電荷Qが蓄積され、両電極間の電圧VがV=Q/Cで定まる。この音響センサ11が設置された近傍の産業用製造装置の回転軸などの部品に疲労変位が生じると、疲労の生じていない場合にその部品から発せられる超音波と、疲労が発生している場合の超音波との間に変化が生じる。疲労の初期段階での非常に僅かな変化で、人間の耳には聞こえない異常でも、超音波の変化の検出により異常の予兆を検知し得る。そのような超音波がセンサ素子111に達すると、一方の電極が振動し、電極間の間隔が変動するため、容量も変動する。そのため
図2に示される回路で、抵抗17とセンサ素子111との間の接続点18の電位が変動する。すなわち、センサ素子111の出力として接続点18に交流信号が現れる。
【0040】
その接続点18に現れる信号を増幅回路112で増幅した信号が音響センサ11の出力信号で、第1キャパシタ13によって直流成分をカットし、増幅回路14で増幅したアナログのAC信号が出力される。一方、音響センサ11の出力は、故障検出回路12にも接続されている。この故障検出回路12に入力する信号は第1キャパシタ13を経由していないので、センサ素子111の出力信号の直流成分を有している。この直流成分を含む入力信号は抵抗123及びキャパシタ124を含むフィルタ回路によりAC信号がカットされて直流成分が故障検出回路12の第1コンパレータ121に入力され、その閾値121a、121bと比較して、センサ素子111に異常があるか否かが検出される。
【0041】
すなわち、容量型センサの故障は、電極間に水分が付着したり、異物が付着したりすることによる場合が多く、電極間に異常が生じ、大きな異常の場合には電極間がショートして電圧が低下したり、異常が軽微の場合でも、電極間の容量が変化したりする。前述のように、電極間の容量が変化すると、電極間の電圧が変わる。この電極間の電圧の変化は、付着した異物などによっては変化しないので、定常的な電圧の変化として現れる。そのため、超音波などの変化とは区別され、直流電位の変化で検出し得る。従って、第1コンパレータ121で閾値と比較することによって、音響センサ11が異常、すなわち故障が生じているか否かを検出することができる。
【0042】
ウインドウコンパレータは、前述のように、上位の閾値121aと、下位の閾値121bの両方と比較し、その両方の間にある場合は正常とする判定をすることができる。センサ素子111の故障がショートになるような場合は、下位の閾値だけで判定し得るが、電極間に何が付着するか不明であるし、どういう故障が生じるか分らないので、両方の閾値を有するウインドウコンパレータで検査することが好ましい。
【0043】
故障検出回路12で故障が検出された場合は、前述のように、トランジスタ122がオン状態となって、故障信号(Low信号)の出力として、センサ回路部10の出力端子10aがトランジスタ122のソース電位(例えばGND)に接続される。すなわち、信号線を伝送する音響センサ11により検出した出力信号と故障検出回路12により検出した故障を示す故障信号が信号線31で重畳される。
【0044】
一方、第1キャパシタ13で直流成分がカットされ、増幅回路14で増幅されたACの出力信号は、再度キャパシタ153で直流成分をカットし、電源とGNDとの間に接続された2個の抵抗器151と152の接続部に信号線31を接続して、信号線31が2個の抵抗器151、152で分圧された電位が付与されている。その結果、センサ回路部10の出力端子10aでは、出力信号は所定の直流成分を有しているが、故障検出回路12で故障が検出されると、センサ回路部10の信号線31の電位はLow電位(例えばGNDレベル)になる。
【0045】
音響センサ11により検出した産業用製造装置の異常検出信号とセンサ素子111の故障を検出する故障検出回路12の故障信号が信号線31に重畳されて、データ処理部20に入力される。センサ素子111の故障が検出された場合は、故障検出回路12の故障信号が重畳された出力信号の直流電位は、Low電位になっている。そのため、故障検出回路12の故障信号が重畳された場合には、データ処理部20に入力された信号は故障信号受信回路21の第2コンパレータ211の閾値から外れ、故障を示す信号が第2コンパレータ211から出力され、制御回路25に送られる。信号線31を伝送した出力信号は、故障信号受信回路21と第2キャパシタ22の両方に接続されているので、センサ素子111の故障の有無は常時故障信号受信回路21で検出される。センサ素子111に故障がない場合には、故障検出回路12の出力はオープン状態なので、出力信号がそのまま、すなわち直流電位設定回路15で設定された直流成分を含んだままの出力信号が、故障信号受信回路21に入力される。従って、この場合、故障信号受信回路21に入力される信号は、第2コンパレータ211の閾値以上となり、故障を示す信号は出力されない。
【0046】
一方、音響センサ11で検出した産業用製造装置の異常の有無を検出する異常検出信号は、これも常時第2キャパシタ22を経て処理に適したレベルに増幅される。そして、アナログ信号である異常検出信号(センサ回路部10の出力信号)がADC回路24でデジタル信号に変換され、制御回路25に送られる。この音響センサ11によって検出した異常検出信号も常時データ処理部20に送られ、産業用製造装置に異常のない場合の超音波の信号も受信される。従って、異常な波形になれば制御回路25からアラームを出すことによって非常にわずかな予兆でも検出し得る。
【0047】
一方、故障信号受信回路21から故障を示す信号が制御回路25に送られた場合には、LEDなどによってアラームを出すことにより、直ちに音響センサ11の交換手続きを行うことができる。
【0048】
(まとめ)
(1)本発明の音響センサ装置は、音響センサ及び該音響センサに直列接続され、前記音響センサの出力信号の直流成分をカットする第1キャパシタを含むセンサ回路部と、前記センサ回路部の出力信号を受信し、前記センサ回路部の出力信号を処理するデータ処理部と、前記センサ回路部の出力信号を前記データ処理部に伝送するケーブルと、を備え、前記センサ回路部が前記音響センサの故障を検出する故障検出回路をさらに有し、前記故障検出回路からの故障信号を前記音響センサの出力信号に重畳して前記センサ回路部の出力信号とし、前記データ処理部が前記故障検出回路からの前記故障信号を受信する故障信号受信回路をさらに有している。
【0049】
本実施形態の音響センサ装置によれば、容量型センサのように、超音波を有効に検出し得るセンサでAC信号を受信して増幅しているので、産業用製造装置などの部品の消耗など微小な変動を的確に検出することができる。しかも、音響センサが形成されたセンサ回路部にセンサの故障を検出する故障検出回路が形成され、音響センサの故障をその出力信号から検出しながら、その検出によりセンサに故障がある場合の故障信号を、本来の産業用製造装置の異常の有無を検出する異常検出信号と重畳しているので、センサ回路部からデータ処理部に1本の信号線で伝送することができる。
【0050】
(2)前記故障検出回路は、第1コンパレータ及びトランジスタを有し、前記第1コンパレータは前記音響センサの出力で前記第1キャパシタに入力する前の信号を入力し、入力した信号が前記第1コンパレータの予め設定した閾値の範囲に入っていない場合に前記トランジスタを介して故障信号を出力し、前記トランジスタの出力が前記センサ回路部の出力端子に接続される構造にすることができる。その結果、センサの故障を検出しながら、センサの本来の異常検出信号と共に1本の信号線で伝送することができる。
【0051】
(3)前記センサ回路部は、前記第1キャパシタの出力信号を増幅する増幅回路及び該増幅回路による増幅後の出力の直流電位を設定する直流電位設定回路をさらに含むことが好ましい。直流電位設定回路が設けられることによって、故障検出回路の故障信号を確実に検出することができる。
【0052】
(4)前記故障信号受信回路は第2コンパレータを有し、前記センサ回路部の出力信号を入力し、所定の閾値と比較して、前記音響センサの故障の有無を出力することにより、容易にセンサの故障を制御回路に伝送することができる。
【0053】
(5)前記音響センサが容量型センサであることが、微小な超音波信号でもAC信号で正確に検出することができるので好ましい。なお、実施形態では容量型センサをECMで構成したが、MEMS構造の容量型センサとしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 音響センサ装置
10 センサ回路部
10a 出力端子
11 音響センサ
12 故障検出回路
121 第1コンパレータ
13 第1キャパシタ
14 増幅回路
15 直流電位設定回路
20 データ処理部
21 故障信号受信回路
211 第2コンパレータ
22 第2キャパシタ
23 増幅回路
24 ADC
25 制御回路
30 ケーブル
31 信号線