(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109210
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】基板固定装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20220720BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20220720BHJP
C09J 5/02 20060101ALI20220720BHJP
H01L 21/3065 20060101ALN20220720BHJP
【FI】
H01L21/68 R
C09J7/30
C09J5/02
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104338
(22)【出願日】2021-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2021004453
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 渓太
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 啓晴
(72)【発明者】
【氏名】山田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐一
(72)【発明者】
【氏名】飯島 信行
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA13
4J004AA18
4J004BA02
4J004BA03
4J004FA05
4J004FA08
4J040DF021
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4J040KA32
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4J040PA02
5F004AA01
5F004BB22
5F004BB25
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5F004CA04
5F131AA02
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5F131EA03
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5F131EB12
5F131EB13
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
(57)【要約】 (修正有)
【課題】静電吸着部材の吸着面の温度の均一性を向上することができる基板固定装置を提供する。
【解決手段】基板固定装置1は、ベースプレート10と、基板を吸着保持する静電吸着部材50と、静電吸着部材をベースプレートに接着する第1接着層20と、を有し、-110℃~250℃の温度範囲内で、第1接着層の貯蔵弾性率は、25MPa以下である。また、第1接着層の厚さは、0.4mm以下である。また、第1接着層の熱伝導率は、0.5W/(m・K)以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
基板を吸着保持する静電吸着部材と、
前記静電吸着部材を前記ベースプレートに接着する第1接着層と、
を有し、
-110℃~250℃の温度範囲内で、前記第1接着層の貯蔵弾性率は、25MPa以下であることを特徴とする基板固定装置。
【請求項2】
-100℃~140℃の温度範囲内で、前記第1接着層の貯蔵弾性率は、21MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項3】
前記第1接着層の厚さは、0.4mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板固定装置。
【請求項4】
前記第1接着層の厚さは、0.2mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板固定装置。
【請求項5】
前記温度範囲内で、前記第1接着層の熱伝導率は、0.5W/(m・K)以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板固定装置。
【請求項6】
前記ベースプレートの前記静電吸着部材側の面に設けられた第1プライマーを有し、
前記第1接着層は前記第1プライマーに直接接触する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板固定装置。
【請求項7】
前記ベースプレートと前記第1接着層との間に設けられ、前記第1接着層よりも薄い第2接着層を有し、
前記温度範囲内で、前記第2接着層の熱伝導率は、前記第1接着層の熱伝導率よりも高いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板固定装置。
【請求項8】
-100℃~0℃の温度範囲内で、前記第2接着層の貯蔵弾性率は、前記第1接着層の貯蔵弾性率よりも高いことを特徴とする請求項7に記載の基板固定装置。
【請求項9】
前記第2接着層の厚さは、0.12mm以下であることを特徴とする請求項7又は8に記載の基板固定装置。
【請求項10】
前記静電吸着部材の前記ベースプレート側の面に設けられた第2プライマーを有し、
前記第1接着層は前記第2プライマーに直接接触することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の基板固定装置。
【請求項11】
前記ベースプレートと前記静電吸着部材との間の距離は、0.025mm~1.025mm以下であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の基板固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ウェハ等の基板の固定に用いられる基板固定装置では、接着層を用いて、静電吸着部材がベースプレートに接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/035878号
【特許文献2】特開2014-207374号公報
【特許文献3】国際公開第2009/107701号
【特許文献4】特開2011-091297号公報
【特許文献5】特開2020-023088号公報
【特許文献6】特開2015-061913号公報
【特許文献7】特開2019-220503号公報
【特許文献8】特開2007-299837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の基板固定装置では、静電吸着部材の吸着面に十分な均熱特性が得られないことがある。つまり、静電吸着部材の吸着面の温度にばらつきが生じることがある。
【0005】
本開示は、静電吸着部材の吸着面の温度の均一性を向上することができる基板固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、ベースプレートと、基板を吸着保持する静電吸着部材と、前記静電吸着部材を前記ベースプレートに接着する第1接着層と、を有し、-110℃~250℃の温度範囲内で、前記第1接着層の貯蔵弾性率は、25MPa以下である基板固定装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、静電吸着部材の吸着面の温度の均一性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る基板固定装置を示す断面図である。
【
図2】接着層の例における温度と貯蔵弾性率との関係を示す図である。
【
図3】接着層の例及び補助接着層の一例における温度と貯蔵弾性率との関係を示す図である。
【
図4】接着層の他の一例における温度と貯蔵弾性率との関係を示す図である。
【
図6】第2実施形態に係る基板固定装置を示す断面図である。
【
図7】第3実施形態に係る基板固定装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願発明者らは、従来の基板固定装置において静電吸着部材の吸着面に温度のばらつきが生じる原因を究明すべく鋭意検討を行った。この結果、基板固定装置が-60℃程度の低温に晒された時に、静電吸着部材の熱変形量とベースプレートの熱変形量との間に大きな差が生じ、接着層に大きな応力が作用し、接着層に凝集破壊が生じることがあることが明らかになった。凝集破壊の発生により、接着層の熱抵抗の面内均一性が低下し、静電吸着部材の吸着面に温度がばらつくのである。
【0010】
本開示は、このような知見に基づきなされたものであって、基板固定装置が低温に晒された時でも、接着層の凝集破壊を抑制し、静電吸着部材の吸着面の温度の均一性を向上する。
【0011】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0012】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る基板固定装置を示す断面図である。
【0013】
図1に示すように、第1実施形態に係る基板固定装置1は、主要な構成要素として、ベースプレート10と、接着層20と、補助接着層21と、静電吸着部材50とを有している。
【0014】
ベースプレート10は、静電吸着部材50を搭載するための部材である。ベースプレート10の厚さは、例えば、20mm~50mm程度とすることができる。ベースプレート10は、例えば、アルミニウムから形成され、プラズマを制御するための電極等として利用することもできる。ベースプレート10に所定の高周波電力を給電することで、発生したプラズマ状態にあるイオン等を静電吸着部材50上に吸着されたウェハ等の基板に衝突させるためのエネルギーを制御し、エッチング処理を効果的に行うことができる。
【0015】
ベースプレート10の内部には、水路15が設けられている。水路15は、一端に冷却水導入部15aを備え、他端に冷却水排出部15bを備えている。水路15は、基板固定装置1の外部に設けられた冷却水制御装置(図示せず)に接続されている。冷却水制御装置(図示せず)は、冷却水導入部15aから水路15に冷却水を導入し、冷却水排出部15bから冷却水を排出する。水路15に冷却水を循環させベースプレート10を冷却することで、静電吸着部材50上に吸着された基板を冷却することができる。ベースプレート10には、水路15の他に、静電吸着部材50上に吸着された基板を冷却する不活性ガスを導入するガス路等を設けてもよい。
【0016】
静電吸着部材50は、発熱部30と、静電チャック40とを有し、吸着対象物であるウェハ等の基板を吸着保持する。静電吸着部材50のベースプレート10側の面にプライマー62が塗布されている。プライマー62は、例えばチタンを含んでいてもよい。プライマー62は第2プライマーの一例である。
【0017】
発熱部30は、絶縁層31と、絶縁層31に内蔵された発熱体32とを有している。発熱体32の周囲は、絶縁層31に被覆され、外部から保護されている。発熱体32としては、例えばタングステン又はモリブデンの焼結体を用いることができる。発熱体32として、圧延合金を用いてもよい。なお、発熱体32は、必ずしも絶縁層31の厚さ方向の中央部に内蔵される必要はなく、要求仕様に応じて絶縁層31の厚さ方向の中央部よりもベースプレート10側又は静電チャック40側に偏在してもよい。
【0018】
絶縁層31としては、例えば、高熱伝導率及び高耐熱性を有するエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等を用いることができる。絶縁層31の熱伝導率は3W/(m・K)以上とすることが好ましい。絶縁層31にアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーを含有させることで、絶縁層31の熱伝導率を向上させることができる。また、絶縁層31のガラス転移温度(Tg)は250℃以上とすることが好ましい。また、絶縁層31の厚さは100μm~150μm程度とすることが好ましく、絶縁層31の厚さばらつきは±10%以下とすることが好ましい。
【0019】
なお、発熱体32と絶縁層31との高温下での密着性を向上するため、発熱体32の少なくとも一つの面(上下面の一方又は双方)が粗化されていることが好ましい。もちろん、発熱体32の上下面の両方が粗化されていてもよい。この場合、発熱体32の上面と下面で異なる粗化方法を用いてもよい。粗化の方法は特に限定されないが、エッチングによる方法、カップリング剤系の表面改質技術を用いる方法、波長が355nm以下のUV-YAGレーザによるドット加工を用いる方法等を例示することができる。
【0020】
静電チャック40は、吸着対象物であるウェハ等の基板を吸着保持する。静電チャック40の吸着対象物である基板の直径は、例えば、8インチ、12インチ、又は18インチ程度とすることができる。
【0021】
静電チャック40は、発熱部30上に設けられている。静電チャック40は、基体41と、静電電極42とを有している。静電チャック40は、例えば、ジョンセン・ラーベック型静電チャックである。但し、静電チャック40は、クーロン力型静電チャックであってもよい。
【0022】
基体41は誘電体であり、基体41としては、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックスを用いることができる。基体41の厚さは、例えば、1mm~10mm程度、基体41の比誘電率は、例えば、1kHzの周波数で9~10程度とすることができる。静電チャック40と発熱部30の絶縁層31とは直接接合されている。発熱部30と静電チャック40とを接着剤を介すことなく直接接合することにより、基板固定装置1の耐熱温度を向上することができる。発熱部30と静電チャック40とを接着剤で接合する基板固定装置の耐熱温度は150℃程度であるが、基板固定装置1では耐熱温度を200℃程度とすることができる。
【0023】
静電電極42は、薄膜電極であり、基体41に内蔵されている。静電電極42は、基板固定装置1の外部に設けられた電源に接続され、所定の電圧が印加されると、ウェハ等の基板との間に静電気による吸着力が発生し、静電チャック40上に基板を吸着保持することができる。吸着保持力は、静電電極42に印加される電圧が高いほど強くなる。静電電極42は、単極形状でも、双極形状でも構わない。静電電極42としては、例えばタングステン又はモリブデンの焼結体を用いることができる。
【0024】
接着層20は、発熱部30をベースプレート10に接着している。接着層20はプライマー62に直接接触する。接着層20としては、例えば、シリコーン系接着剤を用いることができる。接着層20にアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーが含有されていてもよい。-110℃~250℃の温度範囲R1内で、接着層20の貯蔵弾性率は25MPa以下であり、好ましくは、-100℃~140℃の温度範囲R2内で、接着層20の貯蔵弾性率は21MPa以下である。
図2は、接着層20の例における温度と貯蔵弾性率との関係を示す図である。
図2に示す関係は、動的粘弾性測定(dynamic mechanical analysis:DMA)により取得することができる。
図2には、接着層20の第1例20A及び第2例20Bの特性を示す。第1例20A及び第2例20Bのいずれでも、貯蔵弾性率が温度の上昇につれて低下し、-110℃において25MPa以下であり、温度範囲R1内で25MPaとなっている。また、第1例20A及び第2例20Bのいずれでも、-100℃~140℃の温度範囲R2内で、貯蔵弾性率は21MPa以下である。特に第1例20Aでは、-100℃において11MPa以下であり、温度範囲R2内で11MPaとなっている。接着層20は第1接着層の一例である。
【0025】
接着層20の厚さは、好ましくは0.4mm以下である。接着層20の厚さが0.4mm超であると、静電チャック40とベースプレート10との間の熱抵抗が過剰となるおそれがあるためである。接着層20の厚さは、より好ましくは0.3mm以下であり、更に好ましくは0.2mm以下である。また、接着力の確保の観点から、接着層20の厚さは、好ましくは0.1mm以上である。
【0026】
温度範囲R1及びR2内で、接着層20の熱伝導率は、好ましくは0.5W/(m・K)以上であり、より好ましくは0.9W/(m・K)以上である。接着層20の熱伝導率が0.5W/(m・K)未満であると、静電チャック40とベースプレート10との間の熱抵抗が過剰となるおそれがあるためである。温度範囲R1及びR2内で、接着層20の熱伝導率は、更に好ましくは1.0W/(m・K)以上であり、更に一層好ましくは1.1W/(m・K)以上である。
【0027】
補助接着層21は接着層20よりも薄い。補助接着層21の厚さは、例えば0.12mm以下である。温度範囲R1及びR2内で、補助接着層21の熱伝導率は、接着層20の熱伝導率よりも高いことが好ましい。例えば、温度範囲R1及びR2内で、補助接着層21の熱伝導率は2.0W/(m・K)以上である。補助接着層21は第2接着層の一例である。
【0028】
第1実施形態に係る基板固定装置1では、-110℃~250℃の温度範囲R1内で、接着層20の貯蔵弾性率は25MPa以下と低い。このため、静電吸着部材50の熱変形量とベースプレート10の熱変形量との間に大きな差が生じたとしても、温度範囲R1内であれば、接着層20は変形しやすく、接着層20に作用する応力が抑制される。従って、接着層20の凝集破壊を抑制し、静電吸着部材50の吸着面に優れた均熱特性を得ることができる。つまり、静電吸着部材50の吸着面の温度の均一性を向上することができる。
【0029】
-100℃~0℃の温度範囲S内で、補助接着層21の貯蔵弾性率は接着層20の貯蔵弾性率よりも高いことが好ましい。接着層20に作用する応力を緩和しやすいためである。
図3は、接着層20の例(第1例20A、第2例20B)及び補助接着層21の一例における温度と貯蔵弾性率との関係を示す図である。
図3に示す関係は、DMAにより取得することができる。
図3に示す例では、温度範囲R1及びR2内で、補助接着層21の貯蔵弾性率は接着層20の貯蔵弾性率よりも高い。つまり、-100℃~0℃の温度範囲S内で、補助接着層21の貯蔵弾性率は接着層20の貯蔵弾性率よりも高くなっている。
【0030】
補助接着層21及びプライマー62が設けられていなくてもよい。
【0031】
なお、第1実施形態に係る基板固定装置1の製造に際し、接着層20の原料として、例えば粘度が2Pa・s~40Pa・sの接着剤を用いることができる。接着剤は塗布により設けてもよく、半硬化状態(B-ステージ)の絶縁樹脂フィルムを用いてもよい。
【0032】
また、第1実施形態に係る基板固定装置1の製造に際し、補助接着層21の原料として、例えば粘度が40Pa・s~70Pa・sの接着剤を用いることができる。接着剤は塗布により設けてもよく、半硬化状態(B-ステージ)の絶縁樹脂フィルムを用いてもよい。接着剤の塗布及び硬化後に研削を行ってもよい。
【0033】
第1実施形態に係る基板固定装置1は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、ベースプレート10の上に補助接着層21を形成する。補助接着層21の形成後に補助接着層21の平面研削を行ってもよい。また、静電吸着部材50の下面にプライマー62を塗布し、風乾する。そして、接着層20により、補助接着層21の上面と、プライマー62が塗布された静電吸着部材50の下面とを互いに接着する。このとき、スペーサを用いてベースプレート10と静電吸着部材50との間の距離を調整してもよい。
【0034】
接着層20及び補助接着層21の材料は限定されない。接着層20及び補助接着層21の材料としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂が挙げられる。これらの複合材料が、接着層20及び補助接着層21に用いられてもよい。また、接着層20及び補助接着層21にフィラーが含まれていてもよい。フィラーとしては、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム等が挙げられる。
【0035】
次に、第1実施形態に倣って製造した基板固定装置(装置No.1)についての信頼性試験の結果について、参考例(装置No.2)についての信頼性試験の結果と比較しながら説明する。
【0036】
装置No.1は、
図3に示す特性を備えた接着層20の第1例20A及び補助接着層21を有する。接着層20の厚さは0.2mmとし、補助接着層21の厚さは0.1mmとした。
【0037】
装置No.2は、接着層20の第1例20Aに代えて、
図4に示す特性を備えた接着層22を有し、他の構成は装置No.1の構成と同様である。接着層22の厚さは0.2mmとした。
図4は、接着層の他の一例(接着層22)における温度と貯蔵弾性率との関係を示す図である。
図4に示す関係は、DMAにより取得することができる。
【0038】
なお、接着層20及び22はフィラーを含有し、接着層20のフィラー含有率(接着層の単位質量当たりのフィラーの質量)は、接着層22のフィラー含有率よりも低い。
【0039】
信頼性試験では、-45℃への降温と150℃への昇温との熱負荷の繰り返し(試験A)と、-45℃への降温と170℃への昇温との熱負荷の繰り返し(試験B)とを行った。そして、試験開始から所定日数が経過した時の吸着面での温度のばらつきを測定した。試験Aでの1日当たりの熱負荷の繰り返し数は16回とし、試験Bでの1日当たりの熱負荷の繰り返し数は11回とした。これらの結果を
図5に示す。
図5は、信頼性試験の結果を示す図である。
図5の横軸は経過日数を示し、縦軸は吸着面での温度のばらつきを示す。
【0040】
図5に示すように、試験A及び試験Bのいずれにおいても、装置No.1の吸着面の温度のばらつきが、装置No.2の吸着面の温度のばらつきよりも大幅に小さくなった。このことは、接着層20の凝集破壊が接着層22の凝集破壊よりも生じにくく、接着層20の熱抵抗の均一性が長期にわたって良好であることを示している。
【0041】
なお、ベースプレート10の表面がアルミナ溶射等により絶縁処理されていてもよい。絶縁処理により、ベースプレート10と静電電極42との間の放電をより確実に抑制することができる。
【0042】
絶縁層31が設けられず、発熱体32が基体41に内蔵されていてもよい。また、発熱部30が設けられなくてもよい。これらの場合、接着層20は、基体41をベースプレート10に接着する。
【0043】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、主として、静電吸着部材の構成の点で第1実施形態と相違する。
図6は、第2実施形態に係る基板固定装置を示す断面図である。
【0044】
図6に示すように、第2実施形態に係る基板固定装置2は、静電吸着部材50が発熱部30を含まず、静電チャック40が発熱体32を内蔵している。他の構成は第1実施形態と同様である。
【0045】
第2実施形態によっても第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0046】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、主として、ベースプレート10と静電吸着部材50との間の部分の構成の点で第1実施形態と相違する。
図7は、第3実施形態に係る基板固定装置を示す断面図である。
【0047】
図7に示すように、第3実施形態に係る基板固定装置3では、ベースプレート10の静電吸着部材50側の面にプライマー61が塗布されている。プライマー61は、例えばチタンを含んでいてもよい。基板固定装置3は補助接着層21を含まず、接着層20はプライマー61に直接接触する。他の構成は第1実施形態と同様である。プライマー61は第1プライマーの一例である。
【0048】
第3実施形態によっても第1実施形態と同様の効果が得られる。また、補助接着層21が設けられていないため、静電吸着部材50とベースプレート10との間の熱抵抗をより低減することができる。
【0049】
第3実施形態に係る基板固定装置3は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、ベースプレート10の上面にプライマー61を塗布し、乾燥させる。静電吸着部材50の下面にプライマー62を塗布し、乾燥させる。プライマー61及び62は、加熱により乾燥させてもよい。そして、接着層20により、プライマー61が塗布されたベースプレート10の上面と、プライマー62が塗布された静電吸着部材50の下面とを互いに接着する。このとき、スペーサを用いてベースプレート10と静電吸着部材50との間の距離を調整してもよい。
【0050】
第2実施形態において、第3実施形態のように、ベースプレート10の静電吸着部材50側の面にプライマー61が塗布され、補助接着層21が設けられず、接着層20がプライマー61に直接接触していてもよい。
【0051】
なお、ベースプレート10と静電吸着部材50との間の距離は、好ましくは0.025mm~1.025mm以下であり、より好ましくは0.050mm~1.000mm以下である。良好な密着性と放熱性との両立のためである。
【0052】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0053】
1、2、3 基板固定装置
10 ベースプレート
20 接着層
21 補助接着層
30 発熱部
40 静電チャック
50 静電吸着部材
61、62 プライマー