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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109272
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】接着剤フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/30 20180101AFI20220720BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20220720BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J9/02
B32B27/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071079
(22)【出願日】2022-04-22
(62)【分割の表示】P 2018568556の分割
【原出願日】2018-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2017027987
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】白川 哲之
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 弘行
(72)【発明者】
【氏名】熊田 達也
(57)【要約】
【課題】信頼性に優れた接着剤フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明の一側面は、第1の接着剤成分と、デンドライト状の導電粒子である第1の導電粒子と、第1の導電粒子以外の導電粒子であって、非導電性の核体及び該核体上に設けられた導電層を有する導電粒子である第2の導電粒子と、を含有する第1の接着剤層、及び、第2の接着剤成分を含有する第2の接着剤層を備え、第2の接着剤層に占める第2の接着剤成分の体積割合が、第1の接着剤層に占める第1の接着剤成分の体積割合より大きい、接着剤フィルムである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接着剤成分と、デンドライト状の導電粒子である第1の導電粒子と、前記第1の導電粒子以外の導電粒子であって、非導電性の核体及び該核体上に設けられた導電層を有する導電粒子である第2の導電粒子と、を含有する第1の接着剤層、及び、
第2の接着剤成分を含有する第2の接着剤層、を備え、
前記第2の接着剤層に占める前記第2の接着剤成分の体積割合が、前記第1の接着剤層に占める前記第1の接着剤成分の体積割合より大きい、接着剤フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体、液晶ディスプレイ等の分野において、電子部品の固定、回路の接続等のために各種接着剤が使用されている。これらの用途では、電子部品、回路等の高密度化及び高精細化が進み、接着剤にもより高い水準の性能が求められている。
【0003】
例えば、液晶ディスプレイとTCP(Tape Carrier Package)との接続、FPC(FlexiblePrinted Circuit)とTCPとの接続、又は、FPCとプリント配線板との接続には、接着剤中に導電粒子を分散させた接着剤が使用されている。このような接着剤では、導電性及び信頼性をより一層高めることが要求される。
【0004】
例えば特許文献1には、基材フィルム上に、所定のデンドライト状銀被覆銅粉粒子を含有する導電膜を備えた導電性フィルムが記載されており、かかる導電性フィルムにより、銀粉を配合しなくても十分な導電特性が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/021037号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、信頼性に優れた接着剤フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、第1の接着剤成分と、デンドライト状の導電粒子である第1の導電粒子と、第1の導電粒子以外の導電粒子であって、非導電性の核体及び該核体上に設けられた導電層を有する導電粒子である第2の導電粒子と、を含有する第1の接着剤層、及び、第2の接着剤成分を含有する第2の接着剤層を備え、第2の接着剤層に占める第2の接着剤成分の体積割合が、第1の接着剤層に占める第1の接着剤成分の体積割合より大きい、接着剤フィルムである。
【0008】
第2の接着剤層は、第2の接着剤成分のみからなっていてよい。
【0009】
導電層は、金、ニッケル及びパラジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有してよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、信頼性に優れた接着剤フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】接着剤フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
図2】電子部材同士の接続の一例を模式的に示す要部断面図である。
図3】信頼性試験用の実装体の作製方法を示す模式図である。
図4】信頼性試験用の実装体を示す模式図である。
図5】信頼性試験における接続抵抗の測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、接着剤フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。図1に示すように、接着剤フィルム1は、第1の接着剤層2と、第2の接着剤層3とを備える。第1の接着剤層2は、第1の接着剤成分4と、第1の接着剤成分4中に分散された第1の導電粒子5及び第2の導電粒子6とを含有する。第2の接着剤層3は、第2の接着剤成分7を含有する。
【0014】
第1の接着剤成分4及び第2の接着剤成分7は、互いに同種であっても異種であってもよいが、環境温度の変化に対して安定した接着力が得られる観点から、好ましくは互いに同種である。第1の接着剤成分4及び第2の接着剤成分7は、それぞれ以下で説明する接着剤成分であってよい。
【0015】
接着剤成分としては、例えば熱又は光により硬化性を示す材料で構成されており、エポキシ系接着剤、ラジカル硬化型の接着剤、ポリウレタン、ポリビニルエステル等の熱可塑性接着剤などであってよい。接着剤成分は、接着後の耐熱性及び耐湿性に優れていることから、架橋性材料で構成されていてもよい。これらの中でも、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を主成分として含有するエポキシ系接着剤は、短時間硬化が可能で接続作業性が良く、接着性に優れている等の点で好ましく用いられる。ラジカル硬化型の接着剤は、エポキシ系接着剤よりも低温短時間での硬化性に優れている等の特徴を有するため、用途に応じて適宜用いられる。
【0016】
エポキシ系接着剤は、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性材料及び硬化剤を含有し、必要に応じて、熱可塑性樹脂、カップリング剤、充填剤等を更に含有していてよい。
【0017】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、ハロゲン化されていてもよく、水素添加されていてもよく、アクリロイル基又はメタクリロイル基が側鎖に付加された構造を有していてもよい。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0018】
硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化させることができるものであれば特に制限はなく、例えば、アニオン重合性の触媒型硬化剤、カチオン重合性の触媒型硬化剤、重付加型の硬化剤等が挙げられる。硬化剤は、速硬化性において優れ、化学当量的な考慮が不要である点から、好ましくは、アニオン又はカチオン重合性の触媒型硬化剤である。
【0019】
アニオン又はカチオン重合性の触媒型硬化剤は、例えば、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素-アミン錯体、オニウム塩(芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、脂肪族スルホニウム塩等)、アミンイミド、ジアミノマレオニトリル、メラミン及びその誘導体、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等であってよく、これらの変性物であってもよい。重付加型の硬化剤としては、例えば、ポリアミン、ポリメルカプタン、ポリフェノール、酸無水物等が挙げられる。
【0020】
これらの硬化剤を、ポリウレタン系、ポリエステル系等の高分子物質、ニッケル、銅等の金属薄膜、ケイ酸カルシウム等の無機物などで被覆してマイクロカプセル化した潜在性硬化剤は、可使時間が延長できるため好ましい。硬化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0021】
硬化剤の含有量は、熱硬化性材料と必要により配合される熱可塑性樹脂との合計量100質量部に対して、0.05~20質量部であってよい。
【0022】
ラジカル硬化型の接着剤は、例えば、ラジカル重合性材料及びラジカル重合開始剤(硬化剤とも呼ばれる)を含有し、必要に応じて、熱可塑性樹脂、カップリング剤、充填剤等を更に含有していてよい。
【0023】
ラジカル重合性材料としては、例えば、ラジカルにより重合する官能基を有する物質であれば特に制限なく使用することができる。ラジカル重合性材料は、具体的には、例えば、アクリレート(対応するメタクリレートも含む。以下同じ。)化合物、アクリロキシ(対応するメタアクリロキシも含む。以下同じ。)化合物、マレイミド化合物、シトラコンイミド樹脂、ナジイミド樹脂等のラジカル重合性物質であってよい。これらのラジカル重合性物質は、モノマー又はオリゴマーの状態であってよく、モノマーとオリゴマーとの混合物の状態であってもよい。
【0024】
アクリレート化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジアクリロキシプロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレート、リン酸エステルジアクリレート等が挙げられる。
【0025】
アクリレート化合物等のラジカル重合性物質は、必要により、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン等の重合禁止剤と共に用いられてもよい。アクリレート化合物等のラジカル重合性物質は、耐熱性の向上の観点から、好ましくは、ジシクロペンテニル基、トリシクロデカニル基、トリアジン環等の置換基を少なくとも1種を有する。アクリレート化合物以外のラジカル重合性物質としては、例えば、国際公開第2009/063827号に記載の化合物を好適に使用することが可能である。ラジカル重合性物質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0026】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、加熱又は光の照射により分解して遊離ラジカルを発生する化合物であれば特に制限なく使用することができる。ラジカル重合開始剤は、具体的には、例えば、過酸化化合物、アゾ系化合物等であってよい。これらの化合物は、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等により適宜選定される。
【0027】
ラジカル重合開始剤は、より具体的には、好ましくは、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイド等であり、高反応性が得られる観点から、より好ましくはパーオキシエステルである。これらのラジカル重合開始剤としては、例えば、国際公開第2009/063827号に記載の化合物を好適に使用することが可能である。ラジカル重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0028】
ラジカル重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性材料と必要により配合される熱可塑性樹脂との合計量100質量部に対して、0.1~10質量部であってよい。
【0029】
エポキシ系接着剤及びラジカル硬化型の接着剤において必要により配合される熱可塑性樹脂は、例えば、接着剤に優れたフィルム成形性を付与しやすくする。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、キシレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、国際公開第2009/063827号に記載の化合物を好適に使用することが可能である。熱可塑性樹脂は、接着性、相溶性、耐熱性、機械的強度等に優れることから、好ましくはフェノキシ樹脂である。熱可塑性樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0030】
熱可塑性樹脂の含有量は、エポキシ系接着剤に配合される場合、熱可塑性樹脂及び熱硬化性材料の合計量100質量部に対し、5~80質量部であってよい。熱可塑性樹脂の含有量は、ラジカル硬化型の接着剤に配合される場合、熱可塑性樹脂及びラジカル重合性物質の合計量100質量部に対し、5~80質量部であってよい。
【0031】
接着剤成分の他の例として、熱可塑性樹脂と、30℃にて液状のラジカル重合性物質を含むラジカル重合性材料と、ラジカル重合開始剤とを含有する熱ラジカル硬化型接着剤が挙げられる。熱ラジカル硬化型接着剤は、上述の接着剤成分に比べて低粘度である。熱ラジカル硬化型接着剤におけるラジカル重合性物質の含有量は、熱可塑性樹脂及びラジカル重合性物質の合計量100質量部に対し、好ましくは20~80質量部、より好ましくは30~80質量部、更に好ましくは40~80質量部である。
【0032】
接着剤成分は、熱可塑性樹脂と、30℃にて液状のエポキシ樹脂を含む熱硬化性材料と、硬化剤とを含有するエポキシ系接着剤であってもよい。この場合、エポキシ系接着剤におけるエポキシ樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性材料の合計量100質量部に対し、好ましくは20~80質量部、より好ましくは40~80質量部、更に好ましくは30~80質量部である。
【0033】
接着剤フィルム1が、ICチップと、ガラス基板、フレキシブルプリント基板(FPC)等との接続に用いられる場合、ICチップと基板との線膨張係数の差に起因する基板の反りを抑制する観点から、接着剤組成物は、好ましくは、内部応力の緩和作用を発揮する成分を更に含有する。かかる成分としては、具体的には、アクリルゴム、エラストマ成分等が挙げられる。あるいは、接着剤組成物は、国際公開第98/44067号に記載されているようなラジカル硬化型接着剤であってもよい。
【0034】
第1の接着剤層2に占める第1の接着剤成分4の体積割合は、第1の接着剤層2の全体積基準で、例えば、55体積%以上又は65体積%以上であってよく、95体積%以下又は85体積%以下であってよい。
【0035】
第1の導電粒子5は、デンドライト状(樹枝状ともよばれる)を呈しており、一本の主軸と、該主軸から二次元的又は三次元的に分岐する複数の枝とを備えている。第1の導電粒子5は、銅、銀等の金属で形成されていてよく、例えば銅粒子が銀で被覆されてなる銀被覆銅粒子であってよい。
【0036】
第1の導電粒子5は、公知のものであってよく、具体的には、例えばACBY-2(三井金属鉱業株式会社)又はCE-1110(福田金属箔粉工業株式会社)として入手可能である。あるいは、第1の導電粒子5は、公知の方法(例えば、上述の特許文献1に記載の方法)により製造することも可能である。
【0037】
第1の接着剤層2における第1の導電粒子5の含有量(第1の接着剤層2に占める第1の導電粒子5の体積割合)は、第1の接着剤層2の全体積基準で、2体積%以上又は8体積%以上であってよく、25体積%以下又は15体積%以下であってよい。
【0038】
第2の導電粒子6は、非導電性の核体と、該核体上に設けられた導電層とを有している。核体は、ガラス、セラミック、樹脂等の非導電性材料で形成されており、好ましくは樹脂で形成されている。樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、ポリブタジエン樹脂又はこれら樹脂を構成するモノマーの共重合体が挙げられる。核体の平均粒径は、例えば2~30μmであってよい。
【0039】
導電層は、例えば、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム又はこれらの合金で形成されている。導電層は、導電性に優れる観点から、好ましくは、金、ニッケル及びパラジウムから選ばれる少なくとも1種を含有し、より好ましくは金又はパラジウムを含有し、更に好ましくは金を含有する。導電層は、例えば核体に上記金属をめっきすることにより形成される。導電層の厚さは、例えば10~400nmであってよい。
【0040】
第2の導電粒子6の平均粒径は、フィルムを好適に薄膜化できる観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、更に好ましくは20μm以下である。第2の導電粒子6の平均粒径は、例えば1μm以上であってよい。第2の導電粒子6の平均粒径は、レーザー回折・散乱法を用いた粒度分布測定装置(マイクロトラック(製品名、日機装株式会社))により測定される。
【0041】
第1の接着剤層2における第2の導電粒子6の含有量(第1の接着剤層2に占める第2の導電粒子6の体積割合)は、第1の接着剤層2の全体積基準で、2体積%以上又は5体積%以上であってよく、20体積%以下又は10体積%以下であってよい。
【0042】
第1の接着剤層2の厚さは、例えば、5μm以上、7μm以上、又は10μm以上であってよく、30μm以下、25μm以下、又は20μm以下であってよい。
【0043】
第2の接着剤層3は、第2の接着剤成分7を含有する。第2の接着剤層3の厚さは、例えば、5μm以上、7μm以上、又は10μm以上であってよく、30μm以下、25μm以下、又は20μm以下であってよい。
【0044】
上記実施形態では、第2の接着剤層3は、第2の接着剤成分7のみを含有しているが、第2の接着剤層は、第1の導電粒子5、第2の導電粒子6等の導電粒子を更に含有していてもよい。
【0045】
第2の接着剤層が導電粒子を更に含有する場合、第2の接着剤層に占める第2の接着剤成分7の体積割合は、電子部材の表面に凹凸がある場合に、それを好適に埋められる観点から、第1の接着剤層2に占める第1の接着剤成分4の体積割合より大きい。第2の接着剤層に占める第2の接着剤成分7の体積割合は、第2の接着剤層の全体積基準で、例えば、90体積%以上、95体積%以上又は98体積%以上であってよい。また、同様の観点から、第2の接着剤層は、好ましくは、上記実施形態のように、第2の接着剤成分7のみを含有する。
【0046】
接着剤フィルム1は、例えば、第1の接着剤層2と第2の接着剤層3とをそれぞれ別々に形成した後、それらを積層することにより得られる。第1の接着剤層2及び第2の接着剤層3は、例えば、それぞれペースト状の接着剤組成物をPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の樹脂フィルム上に塗布し、乾燥することによって得られる。ペースト状の接着剤組成物は、例えば、接着剤成分4,7と、第1の導電粒子5及び第2の導電粒子6とを含む混合物を、加熱する又は溶剤に溶解させることにより得られる。溶剤としては、例えば常圧での沸点が50~150℃である溶剤が用いられる。
【0047】
本実施形態に係る接着剤フィルムは、同種の被着体同士を接着させる接着剤として使用することが可能であり、また、異種の被着体(例えば、熱膨張係数の異なる被着体)同士を接着させる接着剤として使用することもできる。接着剤フィルムは、電子部材同士の接続に好適に用いられる。
【0048】
図2は、電子部材同士の接続の一例を模式的に示す要部断面図である。まず、図2(a)に示すように、第1の基板8、及び第1の基板8の主面上に形成された回路電極である第1の電極9を備える第1の電子部材10と、第2の基板11、及び第2の基板11の主面上の例えば略全面に形成された第2の電極12を備える第2の電子部材13との間に、本実施形態に係る接着剤フィルム1を配置して積層体14を形成する。
【0049】
次いで、積層体14を加熱しながら、図2(a)の矢印Aで示す方向に加圧することにより、第2の接着剤成分7が第1の基板8の主面上に形成された凹部を埋めるように流動させ、図2(b)に示すように、第1の電子部材10と第2の電子部材13とを回路接続材料15を介して互いに電気的に接続させて、接続構造体16を得る。加熱温度は、例えば50~190℃である。加圧時の圧力は、例えば0.1~30MPaである。これらの加熱及び加圧は、例えば0.5~120秒間の範囲で行われる。
【0050】
第1の基板8及び第2の基板11は、それぞれ、ガラス、セラミック、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテルスルホン等で形成された基板であってよい。第1の電極9及び第2の電極12は、金、銀、銅、錫、アルミニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、インジウム錫酸化物(ITO)等で形成された電極であってよい。
【0051】
回路接続材料15は、第1の導電粒子5と、第2の導電粒子6と、接着剤成分4,7の硬化物17とを含んでいる。すなわち、回路接続材料15は、上述した接着剤フィルム1を硬化してなるものである。
【0052】
本実施形態に係る接着剤フィルム1は、第1の電極9がその表面に酸化被膜を形成しやすい材料(例えば銅、アルミニウム)で形成されている場合であっても、電子部材10,13同士を好適に接続することが可能となる。これは、接着剤フィルム1において、第1の導電粒子5と第2の導電粒子6とを併用していることに起因していると考えられる。すなわち、図2(b)に示すように、第2の導電粒子6が第1の電極9と第2の電極12とを互いに導通させる主たる導通経路を形成する一方で、第1の導電粒子5が第2の導電粒子6と第1の電極9との間の電気的な接続を補助することにより、好適な接続が実現されていると考えられる。より具体的には、第1の導電粒子5が、デンドライト状の導電粒子であるため、第1の電極9の表面に酸化被膜が形成されている場合でも、第1の導電粒子5は、酸化被膜を貫通して第1の電極9と接触することができ、その結果、第2の導電粒子6と第1の電極9との間の好適な接続を可能にしている、と本発明者は推察している。したがって、本実施形態に係る接着剤フィルム1は、第1の導電粒子及び第2の導電粒子のどちらか一方のみを用いた接着剤フィルムと比較して信頼性に優れる、すなわち環境温度の変化に対して所望の導電性を維持できるものと考えられる。
【0053】
さらに、本実施形態に係る接着剤フィルム1は、第1の接着剤成分4と、第1の導電粒子5と、第2の導電粒子6と、を含有する第1の接着剤層2、及び第2の接着剤成分7を含有する第2の接着剤層3を備えることにより、より一層好適に電子部材10,13同士を接続することが可能となる。その理由としては、第2の接着剤層3に占める第2の接着剤成分7の体積割合が、第1の接着剤層2に占める第1の接着剤成分4の体積割合よりも大きいため、第2の接着剤層3の流動性が高いことに起因していることが考えられる。すなわち、流動性が高い第2の接着剤層3を用いることで、第1の電極9等によって主面上に凹凸を有するような第1の基板8に対しても隙間なく凹部を埋めることができ、結果として良好な接着が可能となるものと考えられる。したがって、本実施形態に係る接着剤フィルム1は、第2の接着剤層を備えていない接着剤フィルムと比較して、信頼性が更に向上するものと考えられる。
【実施例0054】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
(溶液A1の調製)
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド株式会社製、製品名:PKHC、重量平均分子量:45000)50gを、トルエン(沸点:110.6℃)と酢酸エチル(沸点:77.1℃)との混合溶剤(質量比でトルエン:酢酸エチル=1:1)に溶解して、固形分40質量%のフェノキシ樹脂溶液を得た。このフェノキシ樹脂溶液に、ラジカル重合性物質として、ウレタンアクリレート(根上工業株式会社製、製品名:UN7700)及びリン酸エステルジメタクリレート(共栄社化学株式会社製、製品名:ライトエステルP-2M)と、硬化剤として1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(日本油脂株式会社製、製品名:パーヘキサTMH)とを、フェノキシ樹脂:ウレタンアクリレート:リン酸エステルジメタクリレート:硬化剤=10:10:3:2の固形質量比で配合し溶液A1を得た。
【0056】
(溶液A2の調製)
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド株式会社製、製品名:PKHC、重量平均分子量:45000)50gを、トルエン(沸点:110.6℃)と酢酸エチル(沸点:77.1℃)との混合溶剤(質量比でトルエン:酢酸エチル=1:1)に溶解して、固形分40質量%のフェノキシ樹脂溶液を得た。このフェノキシ樹脂溶液に、ラジカル重合性物質として、ウレタンアクリレート(根上工業株式会社製、製品名:UN7700)及びリン酸エステルジメタクリレート(共栄社化学株式会社製、製品名:ライトエステルP-2M)と、硬化剤として1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(日本油脂株式会社製、製品名:パーヘキサTMH)とを、フェノキシ樹脂:ウレタンアクリレート:リン酸エステルジメタクリレート:硬化剤=9:9:5:2の固形質量比で配合し溶液A2を得た。
【0057】
導電粒子B1(第1の導電粒子)として、デンドライト状の導電粒子(銀被覆銅粒子、三井金属鉱山株式会社製、製品名:ACBY-2)を用いた。
【0058】
(核体(樹脂粒子)の作製)
ジビニルベンゼン、スチレンモノマー及びブチルメタクリレートの混合溶液に、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイドを投入して、高速で均一撹拌しながら加熱して重合反応を行うことで微粒子分散液を得た。この微粒子分散液を濾過し減圧乾燥することで、微粒子の凝集体であるブロック体を得た。さらに、このブロック体を粉砕することで、それぞれ架橋密度の異なる平均粒子径20μmの核体(樹脂粒子)を作製した。
【0059】
(導電粒子C1の作製)
上記の核体の表面に、パラジウム触媒(ムロマチテクノス株式会社製、製品名:MK-2605)を担持させて、促進剤(ムロマチテクノス株式会社製、製品名:MK-370)を用いて核体を活性化させた。この核体を、60℃に加温された、硫酸ニッケル水溶液、次亜燐酸ナトリウム水溶液及び酒石酸ナトリウム水溶液の混合液中に投入して、無電解メッキ前工程を行った。この混合物を20分間撹拌し、水素の発泡が停止するのを確認した。次に、硫酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム及びメッキ安定剤の混合溶液を添加し、pHが安定するまで撹拌し、水素の発泡が停止するまで無電解メッキ後工程を行った。続いて、メッキ液を濾過し、濾過物を水で洗浄した後、80℃の真空乾燥機で乾燥してニッケルメッキされた導電粒子C1(第2の導電粒子)を作製した。
【0060】
[実施例1]
<接着剤組成物のフィルム化>
100体積部の溶液A1に対して、45体積部の導電粒子B1と15体積部の導電粒子C1を分散させて、混合溶液を得た。得られた混合溶液を、厚み80μmのフッ素樹脂フィルム上に塗布し、70℃で10分間熱風乾燥することにより溶剤を除去して、フッ素樹脂フィルム上に形成された厚み20μmのフィルム状の接着剤組成物(第1の接着剤層)を得た。
【0061】
次に、100体積部の溶液A2を、厚み80μmのフッ素樹脂フィルム上に塗布し、70℃で10分間熱風乾燥することにより溶剤を除去して、フッ素樹脂フィルム上に形成された厚み20μmのフィルム状の接着剤組成物(第2の接着剤層)を得た。第2の接着剤層に第1の接着剤層をラミネートし、フッ素樹脂フィルムを剥がして、厚み40μmの接着剤フィルムを得た。
【0062】
得られた接着剤フィルムを回路接続材料として用いたときの信頼性を以下に示す信頼性試験により評価した。
【0063】
<信頼性試験>
図3(a),(b)に示すように、6mm×6mmに切り出した接着剤フィルム21を、6mm×50mmの銅箔22の略中央に配置し、株式会社大橋製作所製BD-07を用いて加熱加圧(50℃、0.5MPa、2秒間)を行って貼り付けた。続いて、図3(c)に示すように、厚み25μmのポリイミドフィルム23上に厚み20μmの銅電極24を備える部材25(日立化成エレクトロニクス株式会社製FPC、サイズ:6mm×50mm、電極ピッチ:1000μm、電極:電極間スペース=11)を用意した。この部材25を、銅箔22上の接着剤フィルム21を覆うように、且つ接着剤フィルム21と銅電極24とが互いに接するように、銅箔22と接着剤フィルム21との積層体に重ねた状態で、株式会社大橋製作所製BD-07で加熱加圧(150℃、0.5MPa、10秒間)を行って、図4(a),(b)に示すような信頼性試験用の実装体を得た。なお、図4(b)は、図4(a)におけるIVb-IVb線に沿った矢視断面図である。
得られた実装体に対して、図5に示すように電流計、電圧計を接続し、4端子法で接続抵抗(初期)を測定した。また、エスペック株式会社製TSA-43ELを使用して、-20℃で30分間保持、10分間かけて100℃まで昇温、100℃で30分間保持、10分間かけて-20℃まで降温、というヒートサイクルを500回繰り返すヒートサイクル試験を実装体に対して行った後に、上記と同様にして接続抵抗(ヒートサイクル試験後)を測定した。結果を表1に示す。
【0064】
[参考例1]
100体積部の溶液A1に対して、45体積部の導電粒子B1と15体積部の導電粒子C1を分散させて、混合溶液を得た。得られた混合溶液を、厚み80μmのフッ素樹脂フィルム上に塗布し、70℃で10分間熱風乾燥することにより溶剤を除去して、フッ素樹脂フィルム上に形成された厚み30μmのフィルム状の接着剤組成物を得た。得られたフィルム状の接着剤組成物について、実施例1と同様にして回路接続材料として用いたときの信頼性を評価した。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【符号の説明】
【0066】
1…接着剤フィルム、2…第1の接着剤層、3…第2の接着剤層、4…第1の接着剤成分、5…第1の導電粒子、6…第2の導電粒子、7…第2の接着剤成分。

図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接着剤成分と、デンドライト状の導電粒子である第1の導電粒子と、前記第1の導電粒子以外の導電粒子であって、非導電性の核体及び該核体上に設けられた導電層を有する導電粒子である第2の導電粒子と、を含有する第1の接着剤層、及び、
第2の接着剤成分を含有する第2の接着剤層、を備え、
前記第1の接着剤成分が、熱可塑性樹脂と、ラジカル重合性物質を含むラジカル重合性材料と、ラジカル重合開始剤とを含有するラジカル硬化型接着剤であり、
前記熱可塑性樹脂が、前記熱可塑性樹脂及びラジカル重合性物質の合計量100質量部に対し20~80質量部の割合で含まれ、
前記熱可塑性樹脂が、フェノキシ樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、キシレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂又はこれらの2種以上の組み合わせであり、
前記第2の接着剤層に占める前記第2の接着剤成分の体積割合が、前記第1の接着剤層に占める前記第1の接着剤成分の体積割合より大きい、接着剤フィルム。
【請求項2】
前記第2の接着剤層が前記第2の接着剤成分のみからなる、請求項1に記載の接着剤フィルム。
【請求項3】
前記導電層が、金、ニッケル及びパラジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1又は2に記載の接着剤フィルム。