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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010939
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】プラスチック容器及び飲料製品
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/42 20060101AFI20220107BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20220107BHJP
   C08G 63/183 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B65D1/42
B65D1/02 221
C08G63/183
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111745
(22)【出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】浅倉 貴史
(72)【発明者】
【氏名】中谷 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 陽平
(72)【発明者】
【氏名】永谷 明子
(72)【発明者】
【氏名】万木 彬生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆行
(72)【発明者】
【氏名】阿武 秀二
【テーマコード(参考)】
3E033
4J029
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA17
3E033BA18
3E033CA20
3E033DA04
3E033DB01
3E033DD05
3E033EA05
3E033FA02
3E033FA03
3E033GA02
4J029AA03
4J029AB01
4J029AC01
4J029AD01
4J029AD07
4J029AE01
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA08
4J029BA10
4J029BB06A
4J029BB10A
4J029BB13A
4J029BD03A
4J029BD04A
4J029BD06A
4J029BD07A
4J029BD10
4J029BF03
4J029BF09
4J029BF18
4J029BF25
4J029BF26
4J029BH02
4J029CA02
4J029CA04
4J029CA05
4J029CA06
4J029CB04A
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029CB10A
4J029CB12A
4J029CC06A
4J029CD03
4J029CE04
4J029CF08
4J029DB02
4J029DB11
4J029GA12
4J029JA091
4J029JF361
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE05
(57)【要約】
【課題】内容物のほぼ全量を注出することが可能なプラスチック容器及び当該プラスチック容器に飲料を充填した飲料製品を提供する。
【解決手段】プラスチック容器は、口部と、口部に連続する肩部と、肩部に連続する胴部と、胴部に連続する底部とを備え、プラスチック容器の鉛直方向に対して実質的に平行なN個(N≧2)の第1凹状リブが胴部に設けられており、第1凹状リブの第1端部は肩部の近傍に位置し、第1凹状リブの第1端部の反対側に位置する第2端部は底部の近傍に位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部と、前記口部に連続する肩部と、前記肩部に連続する胴部と、前記胴部に連続する底部とを備えるプラスチック容器であって、
前記プラスチック容器の鉛直方向に対して実質的に平行なN個(Nは2以上の整数である。)の第1凹状リブが、前記胴部に設けられており、
前記第1凹状リブの第1端部は前記肩部の近傍に位置し、前記第1凹状リブの前記第1端部の反対側に位置する第2端部は前記底部の近傍に位置することを特徴とするプラスチック容器。
【請求項2】
前記N個の第1凹状リブが、前記胴部の周方向に沿って実質的に等間隔で設けられていることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック容器。
【請求項3】
2個の前記第1凹状リブが、前記胴部に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のプラスチック容器。
【請求項4】
前記肩部と前記胴部との境界に、前記プラスチック容器の周方向に沿って複数の第2凹状リブが設けられており、
前記第2凹状リブの両端部のそれぞれは、前記プラスチック容器の周方向において隣接する2つの前記第1凹状リブのそれぞれの前記第1端部に連続することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のプラスチック容器。
【請求項5】
前記第1凹状リブの前記第1端部と前記第2凹状リブの端部との連続部分が、湾曲していることを特徴とする請求項4に記載のプラスチック容器。
【請求項6】
1個以上の凹状溝部が、前記底部に設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のプラスチック容器。
【請求項7】
前記凹状溝部の両端部のそれぞれに、前記第1凹状リブの前記第2端部が連続していることを特徴とする請求項6に記載のプラスチック容器。
【請求項8】
前記凹状溝部は、前記底部を横断するようにして前記底部に設けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載のプラスチック容器。
【請求項9】
前記底部側から平面視において、前記凹状溝部は、前記底部の中心を通るようにして前記底部に設けられていることを特徴とする請求項6~8のいずれかに記載のプラスチック容器。
【請求項10】
前記プラスチック容器は、ポリエステル樹脂により構成されていることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のプラスチック容器。
【請求項11】
前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度が、62℃以上88℃以下であることを特徴とする請求項10に記載のプラスチック容器。
【請求項12】
前記ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分とを構成成分として含み、
前記ジカルボン酸成分は、95.0~98.9モル%のテレフタル酸、0.5~2.7モル%のイソフタル酸及び0.6~2.3モル%のダイマー酸を含むことを特徴とする請求項10又は11に記載のプラスチック容器。
【請求項13】
前記プラスチック容器は、前記ジカルボン酸成分及び前記ジオール成分の含有量が互いに異なる2種以上のポリエステル樹脂の混合物を用いて成形されたものであることを特徴とする請求項12に記載のプラスチック容器。
【請求項14】
前記ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート又はポリトリメチレンナフタレートであることを特徴とする請求項10~13のいずれかに記載のプラスチック容器。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載のプラスチック容器に飲料が充填されていることを特徴とする飲料製品。
【請求項16】
前記飲料が、炭酸飲料であることを特徴とする請求項15に記載の飲料製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック容器及び飲料製品に関する。
【背景技術】
【0002】
容器に充填されている飲料、例えばビール等の穀類分解物含有発泡性飲料等を冷却し、当該容器から漏洩させることなく注出するために用いられる、ビールサーバー、ビールディスペンサー等と称される飲料注出装置が知られている。飲料注出装置からビールを注出することで、ビン、缶等の容器から直接ジョッキ等にビールを注ぐ場合に比べて泡もめや気抜けが生じるのを抑えることができ、ビールの香味、コク、旨み等を引き立たせることができる。したがって、ビアホール等の料飲店においては、飲料注出装置が一般に用いられている。
【0003】
近年、飲食店向け及び家庭向けの飲料注出装置におけるビール等の容器として、PET(ポリエチレンテレフタレート)容器等のプラスチック容器を使用する事例が増加している。これは、プラスチック容器が、軽量で、ワンウエイ使用できる等、高い利便性、経済性、環境調和性を有することに由来している。
【0004】
このようなプラスチック容器を用いる場合であっても、容器内のビール等の内容液を注出する方式としては、炭酸ガス等の気体を加圧して容器内に供給し、注出経路に内容液を押し出す方式が一般的である。特に内容液が炭酸ガスを含有する飲料の場合、注出に伴い増加する容器内のヘッドスペースに対し、適切な平衡圧の炭酸ガスを供給することで、内容液のガス圧の変動を抑制することができる(特許文献1参照)。
【0005】
一方で、近年、プラスチック容器の柔軟性を利用して、容器外部からのガス圧や機械的応力の印加によりプラスチック容器を変形させ、内容液を注出する方法が知られている(特許文献2、3参照)。このような方式によれば、ガスボンベ等の高圧ガス使用の回避が容易になることや、使用後のプラスチック容器を減容化することで廃棄が容易になること等のメリットを享受することができる。また、開放された容器内に注出経路の末端を差し込み、ダイアフラム式ポンプで内容液を吸引して注出する方法も知られている。装置構造が簡易である点がメリットである。なお、いわゆるガロンボトル等の大型容器においては、回転翼や回転ディスクを用いた簡易ポンプにより、内容液の注出が行われることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-79992号公報
【特許文献2】国際公開第2011-35397号
【特許文献3】特表2019-520276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
飲食店向け及び家庭向けの飲料注出装置における、プラスチック容器の柔軟性を利用して、容器外部からのガス圧や機械的な手段を伴う応力の印加によりプラスチック容器を変形させ、それにより内容液を注出する従来の方式では、使用するプラスチック容器が比較的硬質な樹脂により構成され、一般的な炭酸飲料向けの形状、例えば、球形、楕円形、砲弾形、繭形等の形状を有していると、内容液の注出に伴ってプラスチック容器が変形する際に比較的大きな音が発生することがあり、飲用シーンの支障になりかねないという問題がある。また、プラスチック容器内外の圧力差が注出途中で解消されてしまうと、変形したプラスチック容器が復元し、正常な注出を再開することが困難になる場合があるという問題がある。
【0008】
さらに、プラスチック容器が相対的に潰れにくい部分と相対的に大きく変形しやすい部分とを有する場合、内容液を可能な限り注出した後であっても残液量が多くなりやすいという問題がある。この問題を解決するためには、プラスチック容器の全体として潰れやすいものを使用することが考えられる。しかしながら、内容液のほぼ全量を注出するためには、プラスチック容器の潰れ方(潰れ形状)が重要となり、その潰れ方(潰れ形状)によっては、内容液のほぼ全量を注出することができないという問題がある。
【0009】
また、内容液を注出した後のプラスチック容器を廃棄する場合、ゴミの減容化の観点から、プラスチック容器を潰すことが望ましいとされている。プラスチック容器の潰れ方(潰れ形状)によって、ゴミをより減容化することができるため、プラスチック容器の潰れ方(潰れ形状)が重要となる。
【0010】
上記課題に鑑みて、本発明は、飲料のほぼ全量を注出することが可能なプラスチック容器及び当該プラスチック容器に飲料を充填した飲料製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、口部と、前記口部に連続する肩部と、前記肩部に連続する胴部と、前記胴部に連続する底部とを備えるプラスチック容器であって、前記プラスチック容器の鉛直方向に対して実質的に平行なN個(Nは2以上の整数である。偶数であることが望ましい。)の第1凹状リブが、前記胴部に設けられており、前記第1凹状リブの第1端部は前記肩部の近傍に位置し、前記第1凹状リブの前記第1端部の反対側に位置する第2端部は前記底部の近傍に位置することを特徴とするプラスチック容器を提供する。プラスチック容器が上記第1凹状リブを有することで、内容液である飲料の注出によりプラスチック容器の内圧が低くなった場合に第1凹状リブに沿ってプラスチック容器が変形するため、飲料のほぼ全量の注出が可能となる。また、プラスチック容器の変形に際し、大きな音が発生しないという効果も奏する。さらに、未開封のプラスチック容器内が陽圧となっても、プラスチック容器の全体形状を維持することができるという効果も奏する。
【0012】
前記N個の第1凹状リブが、前記胴部の周方向に沿って実質的に等間隔で設けられていればよく、2個の前記第1凹状リブが、前記胴部に設けられているのが好ましい。前記肩部と前記胴部との境界に、前記プラスチック容器の周方向に沿って複数の第2凹状リブが設けられており、前記第2凹状リブの両端部のそれぞれは、前記プラスチック容器の周方向において隣接する2つの前記第1凹状リブのそれぞれの前記第1端部に連続していればよく、前記第1凹状リブの前記第1端部と前記第2凹状リブの端部との連続部分が、湾曲していてもよい。
【0013】
前記底部には、1個以上の凹状溝部が設けられていてもよく、前記凹状溝部の両端部のそれぞれに、前記第1凹状リブの前記第2端部が連続していてもよく、前記凹状溝部は、前記底部を横断するようにして前記底部に設けられていてもよく、前記底部側から平面視において、前記凹状溝部は、前記底部の中心を通るようにして前記底部に設けられていてもよい。
【0014】
前記プラスチック容器は、ポリエステル樹脂により構成されていればよく、前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度が、62℃以上88℃以下であればよく、前記ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分とを構成成分として含み、前記ジカルボン酸成分は、95.0~98.9モル%のテレフタル酸、0.5~2.7モル%のイソフタル酸及び0.6~2.3モル%のダイマー酸を含んでいてもよい。前記プラスチック容器は、前記ジカルボン酸成分及び前記ジオール成分の含有量が互いに異なる2種以上のポリエステル樹脂の混合物を用いて成形されたものであってもよく、前記ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート又はポリトリメチレンナフタレートであればよい。プラスチック容器がポリエステル製であることで、上述した第1凹状リブ等を有する形状に成形しやすく、また柔軟性や耐圧性等、要求される容器物性を確保しやすいという効果を奏する。
【0015】
本発明は、上記プラスチック容器に飲料が充填されていることを特徴とする飲料製品を提供する。前記飲料としては、例えば、炭酸飲料であればよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、飲料のほぼ全量を注出することが可能なプラスチック容器及び当該プラスチック容器に飲料を充填した飲料製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るプラスチック容器の概略構成を示す側面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るプラスチック容器の底部の概略構成を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るプラスチック容器の概略構成を示す側面図であり、図2は、本実施形態に係るプラスチック容器の底部の概略構成を示す底面図である。
【0019】
本実施形態に係るプラスチック容器1は、例えば、飲料等を内容物とする包装容器であって、その容量は例えば100~30000mLである。本実施形態に係るプラスチック容器1に飲料を充填し、合成樹脂製キャップを用いて閉栓することで飲料製品とすることができる。
【0020】
プラスチック容器1の内容物としての飲料は、特に限定されるものではなく、例えば、炭酸水、スパークリングワイン、穀類分解物含有発泡性飲料等の炭酸飲料等が挙げられる。本実施形態における「穀類分解物含有発泡性飲料」としては、穀類の分解物を含む発泡性飲料であれば特に限定されるものではないが、好ましくは、麦芽、大麦の分解物を含む飲料を例示することができる。本実施形態において、「穀類」とは、穀物であれば特に限定されるものではなく、例えば、大麦、小麦、大豆、エンドウ豆等が挙げられ、好ましくは大麦が挙げられる。穀類の分解物の具体的な態様としては、麦芽、大麦、小麦、大豆、エンドウ豆、トウモロコシの分解物であり、例えば、大豆タンパク、大豆ペプチド、エンドウ豆タンパク、コーンタンパク分解物が挙げられる。
【0021】
本実施形態における「穀類分解物含有発泡性飲料」の具体例としては、好ましくは麦芽分解物含有発泡性飲料であり、より好ましくはビール系飲料である。ビール系飲料とは、通常、ビールを製造した場合(酵母等による発酵に基づいてビールを製造した場合)に得られるビール特有の味わい、香りを有する飲料を意味し、例えば、ビール、発泡酒、リキュール等の発酵麦芽飲料や、その他の醸造酒、若しくは完全無アルコール麦芽飲料(非アルコール麦芽飲料)等の非発酵麦芽飲料が挙げられる。また、ビール系飲料としては、麦芽飲料のみならず、麦や麦芽を使用しない非麦飲料であってもよい。かかる非麦飲料としては、エンドウ豆、大豆、トウモロコシ等を用いた、ビール風の発泡性アルコール含有飲料、完全無アルコール飲料等が挙げられる。なお、本実施形態において、穀類分解物含有発泡性飲料としてのビールを例に挙げて説明する。
【0022】
本実施形態に係るプラスチック容器1は、内容物であるビールの注出口として機能する口部2と、口部2に連続する肩部3と、肩部3の下端に連続する胴部4と、胴部4の下端に連続する、凹凸形状を有するドーム型の底部5とを備える。
【0023】
口部2は、略円筒状であり、口部2の開口端側の側面には、キャップ(図示せず)を取り付けるためのねじ山が形成されている。これにより、プラスチック容器1に飲料を充填した後に、口部2にキャップを取り付けることで、プラスチック容器1を密封することができる。
【0024】
プラスチック容器1、特に胴部4は、ポリエステル樹脂により構成されている。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート等が挙げられる。ポリエステル樹脂により構成されていることで、本実施形態に係るプラスチック容器1の形状に容易に成形可能であり、プラスチック容器1に求められる柔軟性、耐圧性等の容器物性を確保しやすいという効果が奏される。
【0025】
ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分とを構成成分とする共重合体であればよい。当該共重合体中におけるジカルボン酸成分は、95.0~98.9モル%のテレフタル酸、0.5~2.7モル%のイソフタル酸及び0.6~2.3モル%のダイマー酸を含む。共重合体中におけるテレフタル酸の含量は、95.3~98.5モル%であるのが好ましく、95.5~98.3モル%であるのがより好ましい。共重合体中におけるイソフタル酸の含量は1.0~2.7モル%であるのが好ましく、1.3~2.7モル%であるのがより好ましい。共重合体中におけるダイマー酸の含量は、0.7~2.2モル%であるのが好ましく、1.0~2.0モル%であるのがより好ましい。
なお、共重合体中における各ジカルボン酸成分(テレフタル酸、イソフタル酸及びダイマー酸)の定量は、H-NMRスペクトルの測定により行われ得る。
【0026】
本実施形態におけるダイマー酸とは、炭素数16以上の不飽和脂肪族カルボン酸の二量体又はその水添物を意味する。ダイマー酸は、例えば、大豆油、菜種油、牛脂、トール油等の非石油原料から抽出された炭素数16以上の不飽和カルボン酸(例えば、リノール酸やオレイン酸を主成分とする不飽和脂肪族カルボン酸)の混合物を二量体化又はそれに水添することで得られる。このようにして得られるダイマー酸には、過剰に反応した三量体、未反応物である不飽和脂肪族カルボン酸が不純物として含まれる。当該不純物は、ポリエステルにおけるブリードアウトやゲル化の原因となり得る。そのため、本実施形態におけるダイマー酸は、可能な限り上記不純物を含まないのが好ましい。
【0027】
ポリエステル樹脂は、本実施形態に係るプラスチック容器1により奏される効果を妨げない範囲において、テレフタル酸、イソフタル酸及びダイマー酸以外の他のジカルボン酸成分を含んでいてもよい。他のジカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’-ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;上記ジカルボン酸の炭素数1~4程度のアルキル基を有するエステルやハロゲン化物等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を混合して含んでいてもよい。
【0028】
共重合体中におけるジオール成分は、エチレングリコールを含む。共重合体中におけるエチレングリコールの含量は、90.0~98.0モル%であるのが好ましく、91.0~97.5モル%であるのがより好ましい。共重合体中におけるジオール成分は、ジエチレングリコールを含んでいてもよい。
なお、ポリエステル樹脂の各ジオール成分の定量は、H-NMRスペクトルの測定により行われ得る。
【0029】
ポリエステル樹脂は、本実施形態に係るプラスチック容器1により奏される効果を妨げない限りにおいて、エチレングリコール、ジエチレングリコール以外の他のジオール成分を含んでいてもよい。他のジオール成分としては、例えば、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオール;1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,1-シクロヘキサンジメチロール、1,4-シクロヘキサンジメチロール、2,5-ノルボルナンジメチロール等の脂環式ジオール;キシリレングリコール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族ジオール;2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物又はプロピレンオキサイド付加物、ダイマージオール等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を混合して含んでいてもよい。
【0030】
ポリエステル樹脂の硬度(タイプD)は80度未満であればよく、好ましくは69度超80度未満であり、より好ましくは76~79度である。ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、62℃以上88℃以下であればよく、好ましくは63℃以上87℃以下であり、より好ましくは64℃以上86℃以下である。ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.7~0.8dL/gであるのが好ましく、0.71~0.79dL/gであるのがより好ましい。ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)及び固有粘度が上記範囲内であれば、高温保管時においてプラスチック容器1の変形を抑制することができるとともに、プラスチック容器1への臭気移りやプラスチック容器1に由来の臭気成分が内容物としてのビールに溶け出すのを低減することができる。
【0031】
本実施形態に係るプラスチック容器1において、4個の第1凹状リブ11と、4個の第2凹状リブ12とが、略円筒形の胴部4に形成されている。第1凹状リブ11は、肩部3の近傍に位置する第1端部11Aと、凹凸形状を有するドーム型の底部5の近傍に位置する第2端部11Bとを含む。第1凹状リブ11の長手方向は、プラスチック容器1の鉛直方向に実質的に平行である。なお、「プラスチック容器1の鉛直方向」とは、プラスチック容器1の底部5を水平面に接地させたときにおける当該水平面に対する垂直方向(プラスチック容器1の軸線方向)を意味し、「プラスチック容器1の鉛直方向に実質的に平行」とは、プラスチック容器1の鉛直方向に対する第1凹状リブ11の長手方向のなす角度が30°以下、好ましくは15°以下であることを意味する。肩部3の近傍とは、肩部3と胴部4との境界からプラスチック容器1の鉛直方向に沿って肩部3側又は胴部4側に10mm以内程度の箇所を意味する。底部5の近傍とは、胴部4と底部5との境界からプラスチック容器1の鉛直方向に沿って胴部4側又は底部5側に10mm以内程度の箇所を意味する。
【0032】
4個の第1凹状リブ11のうちの2個は、180°±15°の間隔で設けられているのが好ましい。特に、4個の第1凹状リブ11が、胴部4の周方向に沿って実質的に等間隔、すなわち90°±10°の間隔で設けられているのが好ましい。プラスチック容器1内が減圧されたとき、プラスチック容器1の鉛直方向に実質的に平行な第1凹状リブ11を起点として胴部4が潰れていく。このとき、2つの第1凹状リブ11が180°±15°の間隔で設けられていることで、当該2つの第1凹状リブ11を起点にして胴部4の対向する内壁同士が接触するように潰れる。すなわち、プラスチック容器1の胴部4の径方向内側に向かって胴部4が潰れる。特に、4個の第1凹状リブ11が胴部4の周方向に実質的に等間隔で設けられていることで、4個の第1凹状リブ11が突出し、隣接する第1凹状リブ11の間が胴部4の径方向内側に向かって凹むようにして胴部4が潰れる。このようにして胴部4が潰れることで、プラスチック容器1内の飲料のほぼ全量が注出され得る。また、第1凹状リブ11が胴部4に設けられていることで、未開封のプラスチック容器1内が陽圧となっても、プラスチック容器1の全体形状を維持することができるという効果も奏する。なお、本実施形態において、「プラスチック容器1内の飲料のほぼ全量が注出可能」とは、プラスチック容器の容量が2000mL未満の場合、残液量がプラスチック容器1の入味容量の5%以下、好ましくは1%以下となるまで注出可能であることを意味し、プラスチック容器1の容量が2000mL以上の場合、残液量が100mL以下、好ましくは20mL以下となるまで注出可能であることを意味する。
【0033】
第1凹状リブ11の幅W11は、特に限定されるものではないが、プラスチック容器1の内部が減圧されて当該プラスチック容器1が潰れる際に、第1凹状リブ11が起点となって胴部4の対向する内壁同士が接触するようにして潰れる程度で設定されていればよく、例えば第1凹状リブ11の幅W11が相対的に大きすぎると、第1凹状リブ11が起点となりにくくなるおそれがある。このような観点から、第1凹状リブ11の幅W11は15mm以下であればよく、好ましくは5~10mm程度である。
【0034】
プラスチック容器1の飲料を注出するための容器内部の減圧には、例えば、ダイアフラム式ポンプや回転翼式ポンプ等を用いてもよいが、ビール等の穀類分解物含有発泡性飲料等を注出する際には泡もめが顕著に発生しやすい。そのため、泡もめの抑制の観点や、衛生性、定速注出性等の観点を踏まえると、ローラーポンプを用いることが好ましい。ここで、定速注出性とは、容器内の溶液全体に対し、注出の初期から終期までの時間あたりの注出液量(注出速度)の安定性をいう。ローラーポンプを使用する際には、当該ポンプに装着されたチューブの一端が、プラスチック容器1と密封的に接続されることで、プラスチック容器1を減圧しながら注出することが可能となる。これに対し、プラスチック容器1の外部から一定の応力を印加して当該プラスチック容器1を変形させて飲料を注出する場合、プラスチック容器1が変形する際の反力により、注出速度が一定とならずに、定速注出性に劣る傾向がある。
【0035】
第2凹状リブ12は、肩部3と胴部4との境界に沿って周方向に延びる。第2凹状リブ12の両端部12Aのそれぞれは、プラスチック容器1の周方向において隣接する2つの第1凹状リブ11の第1端部11Aのそれぞれに連続している。換言すると、第1凹状リブ11の第1端部11Aから二股に分かれるようにして2つの第2凹状リブ12の端部12Aのそれぞれに連続している。第2凹状リブ12の端部12Aと第1凹状リブ11の第1端部11Aとの連続部は湾曲しているのが好ましく、上方(実質的に口部2側)に向かって凸状に湾曲しているのがより好ましい。第2凹状リブ12の両端部12Aと第1凹状リブ11の第1端部11Aとが連続していることで、プラスチック容器1内が減圧されたときに第1凹状リブ11及び第2凹状リブ12により囲まれた部分、特に胴部4のうちの肩部3側に位置する部分が、第1凹状リブ11及び第2凹状リブ12を起点として胴部4の径方向内側に向かって凹むように潰れる。このようにして胴部4が潰れることで、プラスチック容器1内の飲料がより注出されやすくなる。なお、第2凹状リブ12の幅は、第1凹状リブ11の幅W11と同一であればよい。
【0036】
凹凸形状を有するドーム型の底部5には、底部5の径方向に沿って延びる2個の凹状溝部13が設けられている(図2参照)。2個の凹状溝部13は90°±10°の角度で互いに交差している。すなわち、2個の凹状溝部13の交差角度は実質的に直角であるのが好ましい。互いに交差する2個の凹状溝部13が底部5に設けられていることで、第1凹状リブ11と同数の4個の突起構造51が底部5に形成される。すなわち、プラスチック容器1の胴部4にN個(Nは2以上の偶数)の第1凹状リブ11が設けられている場合において、底部5にはN/2個の凹状溝部13及びN個の突起構造51が設けられていればよく、N/2個の凹状溝部13が底部5の中心(底部5側からの平面視における底部5の幾何学的中心)を通るようにして底部5の略全体を横断していればよい。これにより、飲料の注出に伴って胴部4とともに底部5も潰れやすくなり、プラスチック容器1内の飲料が注出されやすくなる。
【0037】
凹状溝部13の両端部13Aは、第1凹状リブ11の第2端部11Bに連続していてもよいし、連続していなくてもよい。凹状溝部13の両端部13Aが第1凹状リブ11の第2端部11Bに連続していない場合であっても、第1凹状リブ11の第2端部11Bの延長線上に凹状溝部13の端部13Aが位置するように、凹状溝部13が底部5に設けられているのが好ましい(図1参照)。凹状溝部13の端部13Aと第1凹状リブ11の第2端部11Bとが連続していたり、それらが連続してなくても第1凹状リブ11の第2端部11Bの延長線上に凹状溝部13の端部13Aが位置していたりすることで、プラスチック容器1内が減圧されたときに胴部4のうちの底部5側に位置する部分が第1凹状リブ11を起点として胴部4の径方向内側に向かって凹むようにして潰れる。このようにして胴部4が潰れることで、プラスチック1容器内の飲料がより注出されやすくなる。凹状溝部13の端部13Aと第1凹状リブ11の第2端部11Bとが連続していない場合において(図1参照)、当該端部13A及び第2端部11Bとの間隔Dは、10mm以内程度であればよく、好ましくは1~3mm程度である。当該間隔Dが10mm以内程度であれば、プラスチック容器1内が減圧されたときに胴部4のうちの底部5側に位置する部分が第1凹状リブ11を起点として胴部4の径方向内側に向かって凹むようにして潰れやすくなる。
【0038】
凹状溝部13が設けられることにより底部5に形成される複数の突起構造51は、底部5側からの平面視における底部5の幾何学的中心を軸とする回転対称性を有するのが好ましい。4個の突起構造51が底部5に形成され、当該突起構造51を有する底部5が、底部5の幾何学的中心を軸とするM回対称形状(Mは2以上の整数)であればよく、4回対称形状であるのが好ましい。一般的な耐圧性能を有するプラスチック容器において、底部は花弁様の形状(ペタロイド形状)を有するが、当該花弁様の形状(ペタロイド形状)に比べると、4個等の偶数個の突起構造51を有する底部5の構造は、耐圧強度や搬送時の耐転倒性等に劣る傾向にあり、採用され難い構造である。しかしながら、本実施形態に係るプラスチック容器1の底部5の構造は、ビール等の炭酸飲料に対する十分な耐圧強度を確保することができる構造であるため、搬送時の直立安定性を得ることができるとともに、飲料のほぼ全量を注出することができる点で優れた効果を有する。
【0039】
プラスチック容器1内に充填したビール等の飲料に含まれる炭酸ガスによる内圧に耐えられ得る限りにおいて、凹状溝部13の深さは特に限定されるものではなく、例えば、14~20mm程度であればよい。凹状溝部13の深さが14mm未満であると、炭酸ガスによる内圧に耐え切れずにプラスチック容器1の底部5が飛び出してしまうおそれがある。また、第1凹状リブ11の深さは特に限定されるものではなく、例えば、1~8mm程度であればよい。第1凹状リブ11の深さが、1mm未満であると、プラスチック容器1が潰れるときに第1凹状リブ11が起点になりにくくなるおそれがあり、8mmを超えると、炭酸ガスによる内圧に耐え切れずに第1凹状リブ11がプラスチック容器1の外側に向かって突出してしまい、プラスチック容器1が潰れるときに第1凹状リブ11が起点になりにくくなるおそれがある。なお、第2凹状リブ12の深さは、第1凹状リブ11の深さと同一であればよい。プラスチック容器1の厚みもまた、当該炭酸ガスによる内圧に耐えられ得る限りにおいて特に限定されるものではないが、例えば、0.15~0.55mm程度であればよい。厚みが0.15mm未満であると、炭酸ガスによる内圧に耐え切れずにプラスチック容器1の破裂や変形を生じさせてしまうおそれがある。一方で、厚みが0.55mmを超えると、プラスチック容器1内が減圧されたとしてもプラスチック容器1、特に胴部4が潰れにくくなり、プラスチック容器1内の飲料のほぼ全量を注出するのが困難となるおそれがある。
【0040】
胴部4の水平方向に沿った断面形状は、実質的に円形状である。胴部4は、それぞれ、プラスチック容器1の鉛直方向に亘り略同径であり、当該胴部4の径は、例えば、30~600mmの範囲内であればよい。なお、本実施形態における「水平方向」とは、底部5を水平面に設置させた状態における水平方向を意味するものとする。
【0041】
本実施形態に係るプラスチック容器1によれば、後述する実施例からも明らかなように、チューブポンプ等を用いて内容物である飲料を注出したときに、当該飲料のほぼ全量を注出することができる。これは、チューブポンプ等によりプラスチック容器1内が減圧されたときに、第1凹状リブ11を起点として胴部4が径方向内側に向かって凹むようにして潰れるからであると考えられる。また、本実施形態に係るプラスチック容器1によれば、良好な熱安定性を示すことができるため、当該プラスチック容器1に飲料を充填した飲料製品を倉庫等に保管しているとき、プラスチック容器1の変形等が生じるのを防止することができる。
【0042】
上述した構成を有する本実施形態に係るプラスチック容器1の製造方法について説明する。
【0043】
プラスチック容器1を成形するための成形用樹脂として、単一のポリエステル樹脂又は複数種のポリエステル樹脂の混合物を準備し、当該成形用樹脂を用いたブロー成型、射出成形等によりプラスチック容器1が製造される。
【0044】
上記プラスチック容器1を構成するポリエステル樹脂は、例えば、以下のようにして製造される。
テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体、イソフタル酸又はそのエステル形成性誘導体を含むジカルボン酸成分と、エチレングリコール、ジエチレングリコール等を含むジオール成分とを、所定割合で攪拌下に混合して原料スラリーを調製する。次いで、原料スラリーを常圧又は加圧下で加熱してエステル化反応させてポリエステル低重合体(以下「オリゴマー」と称する場合がある。)を生成する。そして、当該オリゴマーにダイマー酸又はそのエステル形成性誘導体を添加し、エステル交換触媒等の存在下に、漸次減圧するとともに加熱して、溶融重縮合反応させることで、ポリエステル樹脂を製造することができる。必要に応じて、上記のようにして得られたポリエステル樹脂を固相重縮合反応にさらに供してもよい。なお、ダイマー酸又はそのエステル形成性誘導体は、原料スラリーに添加されてもよい。
【0045】
テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体、イソフタル酸又はそのエステル形成性誘導体、及びダイマー酸又はそのエステル形成性誘導体の添加量は、ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分中におけるテレフタル酸の含量が95.0~98.9モル%、好ましくは95.3~98.5モル%、より好ましくは95.5~98.3モル%となるように、イソフタル酸の含量が0.5~2.7モル%、好ましくは1.0~2.7モル%、より好ましくは1.3~2.7モル%となるように、ダイマー酸の含量が0.6~2.3モル%、好ましくは0.7~2.2モル%、より好ましくは1.0~2.0モル%となるように適宜設定されればよい。また、エチレングリコールの添加量は、ポリエステル樹脂のジオール成分中におけるエチレングリコールの含量が好ましくは90.0~98.0モル%、より好ましくは91.0~97.5モル%となるように適宜設定されればよく、ジエチレングリコールの添加量は、ポリエステル樹脂のジオール成分中におけるジエチレングリコールの含量が2.0~10.0モル%となるように適宜設定されればよい。なお、「ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分中におけるテレフタル酸、イソフタル酸及びダイマー酸の含量」とは、それぞれ、テレフタル酸に由来する構造単位、イソフタル酸に由来する構造単位及びダイマー酸に由来する構造単位の含量を意味する。また、「ポリエステル樹脂のジオール成分中におけるエチレングリコール及びジエチレングリコールの含量」とは、それぞれ、エチレングリコールに由来する構造単位及びジエチレングリコールに由来する構造単位の含量を意味する。
【0046】
エステル交換触媒としては、例えば、三酸化二アンチモン等のアンチモン化合物;二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物;テトラメチルチタネート、テトライソプロプルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等のチタン化合物;ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、シクロヘキサヘキシルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリフェニルスズハイドロオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイド、ブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸等のスズ化合物;酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキサイド、燐酸水素マグネシウム等のマグネシウム化合物;酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムアルコキサイド、燐酸水素カルシウム等のカルシウム化合物等が挙げられる。これらのうち、反応効率が良好であること等の理由から、チタン化合物、マグネシウム化合物を好適に用いることができる。チタン化合物としてはテトラブチルチタネートをより好適に用いることができ、マグネシウム化合物としては酢酸マグネシウムをより好適に用いることができる。なお、これらの触媒は単独で使用されてもよいし、2種以上を混合して使用されてもよい。
【0047】
また、ポリエステル樹脂の製造時に、エステル交換触媒とともに安定剤を併用してもよい。安定剤としては、正リン酸、ポリリン酸、トリメチルフォスフェート、トリエチルホスフェート、トリ-n-ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(トリエチレングリコール)ホスフェート、エチルジエチルホスホノアセテート、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、モノブチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、トリエチレングリコールアシッドホスフェート等の5価のリン化合物;亜リン酸、次亜リン酸、ジエチルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト等の3価のリン化合物等が挙げられる。これらのうち、3価のリン化合物は5価のリン化合物よりも一般に還元性が強く、重集合触媒として添加した金属化合物が還元されて析出し、異物を発生させる原因となり得るため、5価のリン化合物の方が好適に用いられ得る。
【0048】
溶融重縮合反応における反応圧力は、絶対圧力で0.001~1.33kPaであるのが好ましく、反応温度は、220~280℃であるのが好ましく、230~260℃であるのがより好ましい。また、固相重縮合反応は、減圧下又は不活性ガス雰囲気下において、160~220℃の反応温度で、5~100時間の反応時間で行われるのが好ましい。溶融重縮合反応及び固相重縮合反応の反応条件を上記範囲内で設定することで、所望とする硬度(タイプD)(80度未満、好ましくは69度超80度未満、より好ましくは76~79度)、所望とするガラス転移温度(62℃以上88℃以下、好ましくは63以上87℃以下、より好ましくは64℃以上86℃以下)及び所望とする固有粘度(0.7~0.8dL/g、好ましくは0.71~0.79dL/g)のポリエステルを製造することができる。
【0049】
なお、上記のようにして製造されるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分とを構成成分とする共重合体からなり、当該共重合体中におけるジカルボン酸成分として95.0~98.9モル%のテレフタル酸、0.5~2.7モル%のイソフタル酸及び0.6~2.3モル%のダイマー酸を含み、80度未満の硬度(タイプD)であり、62℃以上88℃以下のガラス転移温度Tgを有するものであるが、本実施形態においては、共重合体中における各ジカルボン酸成分(テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸)の含量が上記範囲外であるポリエステル樹脂を複数種類ブレンドすることで、ジカルボン酸成分として95.0~98.9モル%のテレフタル酸、0.5~2.7モル%のイソフタル酸及び0.6~2.3モル%のダイマー酸を含み、80度未満の硬度(タイプD)であり、62℃以上88℃以下のガラス転移温度Tgを有するポリエステル樹脂を調製してもよい。
【0050】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0051】
上記実施形態においては、2個の第1凹状リブ11が胴部4に設けられている態様を例に挙げて説明したが、この態様に限定されるものではない。例えば、少なくとも2個の第1凹状リブ11が胴部4に設けられていればよい。すなわち、N個(Nは2以上の整数であり、好ましくは4以上の偶数である。)の第1凹状リブ11が胴部4に設けられていればよい。この場合において、底部5には、N/2個程度の凹状溝部13とN個の突起構造51とが設けられていればよい。
【0052】
上記実施形態においては、第1凹状リブ11の第1端部11Aに第2凹状リブ12の端部12Aが連続している態様を例に挙げて説明したが、この態様に限定されるものではなく、例えば、第2凹状リブ12が設けられていなくてもよい。また、例えば、第1凹状リブ11の第1端部11Aと第2凹状リブ12の端部12Aとが連続しておらず、両者の間に僅かな隙間(例えば、1~5mm程度の隙間)が形成されていてもよい。
【実施例0053】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0054】
〔第2ポリエステル(第2PEs)の製造例〕
テレフタル酸50.0質量部、イソフタル酸2.60質量部及びエチレングリコール53.6質量部を、攪拌装置、昇温装置及び留出液分離塔を備えるエステル化反応槽に仕込み、温度250℃、圧力0.90kg/cmにてエステル化反応を4時間行った。
【0055】
次に、テレフタル酸33.3質量部、イソフタル酸1.89質量部及びエチレングリコール16.9質量部で調製したスラリーを上記エステル化反応槽に仕込み、温度250℃、常圧下で4時間エステル化反応を行い、ポリエステル低重合体(オリゴマー)を得た。
【0056】
続いて、当該オリゴマーを、留出管を備えた攪拌機付き重縮合反応槽へ移送し、炭素数36の水添ダイマー酸8.9質量部を添加し、さらに触媒として、二酸化ゲルマニウムをポリマーに対し195質量ppm、正リン酸をポリマーに対し210質量ppmとなるように添加した。
【0057】
当該重縮合反応槽内の温度を250℃に保ちながら、2時間かけて重縮合反応槽内を0.13kPaまで減圧し、その圧力を維持したまま4時間反応を行い、反応系を常圧に戻して反応を終了した。得られたポリエステルを重縮合反応槽の底部からストランドとして抜き出し、水中を潜らせた後、カッターでストランドをカットすることにより共重合体のペレットを得た。得られたペレットにつき120℃、窒素流通下で結晶化処理を行うことで、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を88モル%、イソフタル酸を5モル%、ダイマー酸を7モル%、ジオール成分としてエチレングリコールを97モル%、ジエチレングリコールを3モル%含有する第2ポリエステル(第2PEs)のペレットを得た。なお、第2ポリエステル(第2PEs)中の各ジカルボン酸成分及び各ジオール成分の含有量(モル%)は、以下のようにして求めた。
【0058】
<第2ポリエステル(第2PEs)中の各ジカルボン酸成分及び各ジオール成分の定量>
第2ポリエステル(ペレット又はその混合物)20mgを重クロロホルム/重ヘキサフルオロイソプロパノール(重量比7/3)の混合溶媒0.75mLに溶解させ、重ピリジン25μLを添加して試料溶液とした。当該試料溶液を外径5mmのNMR試料管に入れ、核磁気共鳴装置を用い、室温でH-NMRスペクトルを測定し、第2ポリエステル中における各ジカルボン酸成分及び各ジオール成分の含有量(モル%)を求めた。
【0059】
<固有粘度(IV)の算出>
上記のようにして得られた第2ポリエステルのペレット0.25gを、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒25mLに濃度が1.00g/dLとなるように溶解させて試料溶液を調製した後、30℃まで冷却し、30℃において全自動溶液粘度計(センテック社製,製品名:DT553)にて試料溶液の落下秒数及び溶媒のみの落下秒数のそれぞれを測定し、下記の式による固有粘度(IV)を算出した。
IV=((1+4Kηsp)0.5-1)/(2KC)
ここで、ηsp=η/η-1であり、ηは試料溶液の落下秒数、ηは溶媒のみの落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、Kはハギンズの定数である。なお、Kを0.33とし、第2ポリエステルのペレットの溶解条件を110℃で30分間とした。
上記のようにして算出した第2ポリエステルの固有粘度(IV)は0.64dL/gであった。
【0060】
<ガラス転移温度の測定>
示差走査熱量計(DSC)を用いて、第2ポリエステルのガラス転移温度(Tg)を測定した。ガラス転移温度(Tg)の測定は、以下のようにして行われた。
アルミ製オープンパンに10mgの試料(第2ポリエステル)を入れて、-10℃から300℃まで20℃/minで昇温し、300℃で3分間保持した後、速やかにオープンパンごと液体窒素中に浸して急冷した。再度-10℃から300℃まで20℃/minで昇温し、JIS-K-7121に従ってガラス転移温度(Tg)を計測し中間点ガラス転移温度をガラス転移温度とした。
上記のようにして計測された第2ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は、43℃であった。
【0061】
〔プラスチック容器の製造例1〕
成形用樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(製品名:BK2180,三菱ケミカルインドネシア社製、テレフタル酸含量:98.4モル%、イソフタル酸含量:1.7モル%、エチレングリコール含量:97.4モル%、ジエチレングリコール含量:2.6モル%、固有粘度:0.83dL/g、ガラス転移温度(Tg):77℃、以下「第1ポリエステル(第1PEs)」という。)を準備し、当該成形用樹脂を用いてブロー成形することで、図1に示す形状(第1凹状リブ11の数:2個、第2凹状リブ12の数:2個、底部5を径方向に横断する凹状溝部13の数:2個、突起構造51の数:4個)で、容量2000mL、重量30gのプラスチック容器1を製造した(試料1)。
【0062】
〔プラスチック容器の製造例2〕
第1ポリエステル(第1PEs)と第2ポリエステル(第2PEs)のペレットとを配合比(質量基準)80:20でドライブブレンドすることで、成形用樹脂を調製した。当該成形用樹脂を用いた以外は、プラスチック容器の製造例1と同様にしてプラスチック容器を製造した(試料2)。
【0063】
〔プラスチック容器の製造例3〕
底部5を径方向に横断する凹状溝部13の数を3個にし、突起構造51の数を6個にした以外は、プラスチック容器の製造例1と同様にしてプラスチック容器を製造した(試料3)。
【0064】
〔プラスチック容器の製造例4〕
胴部4の第1凹状リブ11の数を3個とし、底部5を径方向に横断する凹状溝部13の数を3個とし、突起構造51の数を6個にしたことに加え、第1ポリエステル(第1PEs)と第2ポリエステル(第2PEs)のペレットとの配合比(質量基準)を70:30に変更した以外は、プラスチック容器の製造例2と同様にしてプラスチック容器を製造した(試料4)。
【0065】
〔プラスチック容器の製造例5〕
底部5を径方向に横断する凹状溝部13の数を1個とし、突起構造51の数を2個にした以外、プラスチック容器の製造例2と同様にしてプラスチック容器を製造した(試料5)。
【0066】
〔プラスチック容器の製造例6〕
第1凹状リブ11及び第2凹状リブ12を設けない以外は、プラスチック容器の製造例1と同様にしてプラスチック容器を製造した(試料6)。
【0067】
〔プラスチック容器の製造例7〕
第1凹状リブ11及び第2凹状リブ12を設けない以外は、プラスチック容器の製造例2と同様にしてプラスチック容器を製造した(試料7)。
【0068】
〔プラスチック容器の製造例8〕
第1ポリエステル(第1PEs)と第2ポリエステル(第2PEs)のペレットとの配合比(質量基準)を60:40に変更した以外は、プラスチック容器の製造例2と同様にしてプラスチック容器を製造した(試料8)。
【0069】
〔プラスチック容器の製造例9〕
凹状溝部13を0個として底部5を半球状とし、突出構造51の数を1個にした以外は、プラスチック容器の製造例2と同様にしてプラスチック容器を製造した(試料9)。
【0070】
[試験例1]熱安定性評価試験
試料1~9のプラスチック容器に2Lの炭酸水(炭酸ガスボリューム:2.8GV)を充填し、合成樹脂製キャップを用いて閉栓した。試料1~9のプラスチック容器を30℃の温水に1時間浸漬させて加温した後、常温(23℃)に戻してからプラスチック容器の寸法(全高及び胴径)を測定した。各試料の測定値から、熱安定性について以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
<評価基準>
○:寸法変化率が6%未満、かつ底部が飛び出していない
×:寸法変化率が6%以上、又は底部が飛び出している
【0071】
[試験例2]プラスチック容器の潰れ形状の評価試験
試料1~9のプラスチック容器に2Lの炭酸水(炭酸ガスボリューム:2.8GV)を充填し、口部にチューブポンプ(WELCO社製,製品名:WP1000)を取り付け、プラスチック容易内の炭酸水を注出した。チューブポンプから炭酸水が注出されなくなるまでチューブポンプを駆動した後、プラスチック容器胴部の潰れ形状について、目視観察により以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
<評価基準>
〇:プラスチック容器の径方向内側に向かって凹むように潰れている
×:プラスチック容器の高さが縮小するように潰れている
【0072】
[試験例3]注出性試験
試験例2において炭酸水が注出された後、プラスチック容器内の残液量を測定し、注出性について以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
<評価基準>
〇:残液量が20mL未満
△:残液量が20~100mL
×:残液量が100mL超
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
表2に示すように、試料1~5のプラスチック容器においては、熱安定性に優れ、かつプラスチック容器の径方向内側に向かって凹むように潰れており、注出後の残液量が少なく、ほぼ全量が注出されることが明らかとなった。試料6及び試料7のプラスチック容器においては、プラスチック容器の鉛直方向(高さ方向)に潰れてしまい、注出中に大きな容器変形音が発生したほか、注出後の残液量が多かった。試料8においては、保管中に底部が飛び出してしまい、熱安定性に欠けていた。したがって、試料1~5のように、プラスチック容器の胴部に第1凹状リブと、第1凹状リブの第1端部に連続する第2凹状リブとが設けられ、第1凹状リブの第2端部の延長線上に位置するように、底部に凹状溝部が設けられていることで、注出性を良好にすることができるものと考えられる。特に、試料1及び試料2のように、底部の底面に2個の凹状溝部が交差して設けられていることで、熱安定性にも優れたものとすることができると考えられる。なお、直立搬送性を有しない容器形状である試料9においては、底部においてプリフォーム成形時のゲート跡近傍が変形しにくく、この結果から、底部に凹状溝部を設けることで、注出性を向上させ得ると考えられる。
【符号の説明】
【0076】
1…プラスチック容器
2…口部
3…肩部
4…胴部
5…底部
11…第1凹状リブ
12…第2凹状リブ
13…凹状溝部
図1
図2