(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110146
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】細胞培養支援装置の作動プログラム、細胞培養支援装置、細胞培養支援装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20220721BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20220721BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M3/00 A
C12Q1/06
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084135
(22)【出願日】2022-05-23
(62)【分割の表示】P 2020532191の分割
【原出願日】2019-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2018138740
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 直貴
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 昌孝
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB02
4B029BB06
4B029BB11
4B029BB12
4B029FA15
4B063QA20
4B063QQ05
4B063QQ08
4B063QQ09
4B063QR74
4B063QR77
4B063QR78
4B063QS39
(57)【要約】 (修正有)
【課題】細胞培養支援装置を提供する。
【解決手段】細胞培養支援装置の作動プログラムは、第1取得部と、第2取得部と、第1導出部と、出力制御部としてコンピュータを機能させる。第1取得部は、細胞培養に用いられる培地を構成する複数種の成分の各々の分量の時間推移を示す学習用の時系列データと、学習用の時系列データに対応し、細胞培養の結果の良悪を示す良悪データとの組に基づいて機械学習を行って導出された、分量の指針を示す学習済みモデルを取得する。第2取得部は、分量の時間推移を示す解析用の時系列データを取得する。第1導出部は、第1取得部において取得した学習済みモデルと、第2取得部において取得した解析用の時系列データのうちの少なくとも一部の入力データとから、複数種の成分のうちの少なくとも1つについて、細胞培養において良い結果を得るための分量の定量的な指針情報を導出する。出力制御部は指針情報を出力する制御を行う。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養に用いられる培地を構成する複数種の成分の各々の分量の時間推移を示す学習用の時系列データと、前記学習用の時系列データに対応し、前記細胞培養の結果の良悪を示す良悪データとの組に基づいて機械学習を行って導出された、前記分量の指針を示す学習済みモデルを取得する第1取得部と、
前記分量の時間推移を示す解析用の時系列データを取得する第2取得部と、
前記第1取得部において取得した前記学習済みモデルと、前記第2取得部において取得した前記解析用の時系列データのうちの少なくとも一部の入力データとから、前記複数種の成分のうちの少なくとも1つについて、前記細胞培養において良い結果を得るための前記分量の定量的な指針情報を導出する第1導出部と、
前記指針情報を出力する制御を行う出力制御部として、コンピュータを機能させる細胞培養支援装置の作動プログラムであり、
前記学習用の時系列データおよび前記解析用の時系列データは、複数日の前記細胞培養の期間において、日毎に測定される分量である測定分量を含み、
前記学習済みモデルは、前記測定分量に関する不等式である細胞培養支援装置の作動プログラム。
【請求項2】
前記第1導出部は、前記細胞培養の開始に先立って用意される基礎培地中の分量である基礎分量、複数日の前記細胞培養の期間において、日毎に補給される分量である補給分量、および細胞が代謝する分量である代謝分量をパラメータとする加算式に、前記入力データを代入して計算することで、前記指針情報を導出する請求項1に記載の細胞培養支援装置の作動プログラム。
【請求項3】
前記指針情報は、前記基礎分量に関する情報、または前記補給分量に関する情報である請求項2に記載の細胞培養支援装置の作動プログラム。
【請求項4】
前記学習用の時系列データと前記良悪データとの組を取得する第3取得部と、
前記第3取得部において取得した前記学習用の時系列データと前記良悪データとの組に基づいて前記機械学習を行って、前記学習済みモデルを導出する第2導出部として、前記コンピュータを機能させる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の細胞培養支援装置の作動プログラム。
【請求項5】
前記細胞培養の結果の良悪を判断するための判断用データを取得する第4取得部と、
前記判断用データに基づいて前記良悪を判断する判断部として、前記コンピュータを機能させ、
前記第3取得部は、前記判断部の判断結果を前記良悪データとして取得する請求項4に記載の細胞培養支援装置の作動プログラム。
【請求項6】
前記第2導出部は、前記機械学習の手法として、決定木分析を用いる請求項4または5に記載の細胞培養支援装置の作動プログラム。
【請求項7】
細胞培養に用いられる培地を構成する複数種の成分の各々の分量の時間推移を示す学習用の時系列データと、前記学習用の時系列データに対応し、前記細胞培養の結果の良悪を示す良悪データとの組に基づいて機械学習を行って導出された、前記分量の指針を示す学習済みモデルを取得する第1取得部と、
前記分量の時間推移を示す解析用の時系列データを取得する第2取得部と、
前記第1取得部において取得した前記学習済みモデルと、前記第2取得部において取得した前記解析用の時系列データのうちの少なくとも一部の入力データとから、前記複数種の成分のうちの少なくとも1つについて、前記細胞培養において良い結果を得るための前記分量の定量的な指針情報を導出する第1導出部と、
前記指針情報を出力する制御を行う出力制御部と、
を備え、
前記学習用の時系列データおよび前記解析用の時系列データは、複数日の前記細胞培養の期間において、日毎に測定される分量である測定分量を含み、
前記学習済みモデルは、前記測定分量に関する不等式である細胞培養支援装置。
【請求項8】
細胞培養に用いられる培地を構成する複数種の成分の各々の分量の時間推移を示す学習用の時系列データと、前記学習用の時系列データに対応し、前記細胞培養の結果の良悪を示す良悪データとの組に基づいて機械学習を行って導出された、前記分量の指針を示す学習済みモデルを取得する第1取得ステップと、
前記分量の時間推移を示す解析用の時系列データを取得する第2取得ステップと、
前記第1取得ステップにおいて取得した前記学習済みモデルと、前記第2取得ステップにおいて取得した前記解析用の時系列データのうちの少なくとも一部の入力データとから、前記複数種の成分のうちの少なくとも1つについて、前記細胞培養において良い結果を得るための前記分量の定量的な指針情報を導出する第1導出ステップと、
前記指針情報を出力する制御を行う出力制御ステップと、
を備え、
前記学習用の時系列データおよび前記解析用の時系列データは、複数日の前記細胞培養の期間において、日毎に測定される分量である測定分量を含み、
前記学習済みモデルは、前記測定分量に関する不等式である細胞培養支援装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、細胞培養支援装置の作動プログラム、細胞培養支援装置、細胞培養支援装置の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体から採取した細胞を培養する細胞培養が盛んに行われている。細胞培養では、まず基礎培地を用意し、基礎培地に細胞を導入する。そして、細胞が消費した分を補うために、日毎に培地の成分を補給(フィードともいう)する。
【0003】
国際公開第2017/038887号には、培地の補給に関する技術が記載されている。国際公開第2017/038887号の段落[0293]には、ニューラルネットワークにより、二酸化炭素濃度、酸素濃度、温度といった培養条件を含む各種条件と、細胞培養の結果との関連を分析し、結果を導く条件を抽出したり、結果を予測したりしてもよいことが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基礎培地中の各成分の分量、および日毎に補給する各成分の分量には、良い結果を得るための最適値がある。しかしながら、従来、作業者は、分量の最適値を知る術がなく、自分の経験等に頼っていた。このため、良い結果を得られる確率が低かった。国際公開第2017/038887号には、こうした問題に対する解決策は開示されていない。
【0005】
本開示は、細胞培養において良い結果を得られる確率を高めることが可能な細胞培養支援装置の作動プログラム、細胞培養支援装置、細胞培養支援装置の作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の細胞培養支援装置の作動プログラムは、細胞培養に用いられる培地を構成する複数種の成分の各々の分量の時間推移を示す学習用の時系列データと、学習用の時系列データに対応し、細胞培養の結果の良悪を示す良悪データとの組に基づいて機械学習を行って導出された、分量の指針を示す学習済みモデルを取得する第1取得部と、分量の時間推移を示す解析用の時系列データを取得する第2取得部と、第1取得部において取得した学習済みモデルと、第2取得部において取得した解析用の時系列データのうちの少なくとも一部の入力データとから、複数種の成分のうちの少なくとも1つについて、細胞培養において良い結果を得るための分量の定量的な指針情報を導出する第1導出部と、指針情報を出力する制御を行う出力制御部として、コンピュータを機能させる。
【0007】
第1導出部は、細胞培養の開始に先立って用意される基礎培地中の分量である基礎分量、複数日の細胞培養の期間において、日毎に補給される分量である補給分量、および細胞が代謝する分量である代謝分量をパラメータとする加算式に、入力データを代入して計算することで、指針情報を導出することが好ましい。
【0008】
指針情報は、基礎分量に関する情報、または補給分量に関する情報であることが好ましい。
【0009】
学習用の時系列データおよび解析用の時系列データは、複数日の細胞培養の期間において、日毎に測定される分量である測定分量を含み、学習済みモデルは、測定分量に関する不等式であることが好ましい。
【0010】
学習用の時系列データと良悪データとの組を取得する第3取得部と、第3取得部において取得した学習用の時系列データと良悪データとの組に基づいて機械学習を行って、学習済みモデルを導出する第2導出部として、コンピュータを機能させることが好ましい。
【0011】
細胞培養の結果の良悪を判断するための判断用データを取得する第4取得部と、判断用データに基づいて良悪を判断する判断部として、コンピュータを機能させ、第3取得部は、判断部の判断結果を良悪データとして取得することが好ましい。
【0012】
第2導出部は、機械学習の手法として、決定木分析を用いることが好ましい。
【0013】
本開示の細胞培養支援装置は、細胞培養に用いられる培地を構成する複数種の成分の各々の分量の時間推移を示す学習用の時系列データと、学習用の時系列データに対応し、細胞培養の結果の良悪を示す良悪データとの組に基づいて機械学習を行って導出された、分量の指針を示す学習済みモデルを取得する第1取得部と、分量の時間推移を示す解析用の時系列データを取得する第2取得部と、第1取得部において取得した学習済みモデルと、第2取得部において取得した解析用の時系列データのうちの少なくとも一部の入力データとから、複数種の成分のうちの少なくとも1つについて、細胞培養において良い結果を得るための分量の定量的な指針情報を導出する第1導出部と、指針情報を出力する制御を行う出力制御部と、を備える。
【0014】
本開示の細胞培養支援装置の作動方法は、細胞培養に用いられる培地を構成する複数種の成分の各々の分量の時間推移を示す学習用の時系列データと、学習用の時系列データに対応し、細胞培養の結果の良悪を示す良悪データとの組に基づいて機械学習を行って導出された、分量の指針を示す学習済みモデルを取得する第1取得ステップと、分量の時間推移を示す解析用の時系列データを取得する第2取得ステップと、第1取得ステップにおいて取得した学習済みモデルと、第2取得ステップにおいて取得した解析用の時系列データのうちの少なくとも一部の入力データとから、複数種の成分のうちの少なくとも1つについて、細胞培養において良い結果を得るための分量の定量的な指針情報を導出する第1導出ステップと、指針情報を出力する制御を行う出力制御ステップと、を備える。
【0015】
また、本開示の細胞培養支援装置は、細胞培養に用いられる培地を構成する複数種の成分の各々の分量の時間推移を示す学習用の時系列データと、学習用の時系列データに対応し、細胞培養の結果の良悪を示す良悪データとの組に基づいて機械学習を行って導出された、分量の指針を示す学習済みモデルを取得する第1取得プロセッサと、分量の時間推移を示す解析用の時系列データを取得する第2取得プロセッサと、第1取得プロセッサにおいて取得した学習済みモデルと、第2取得プロセッサにおいて取得した解析用の時系列データのうちの少なくとも一部の入力データとから、複数種の成分のうちの少なくとも1つについて、細胞培養において良い結果を得るための分量の定量的な指針情報を導出する第1導出プロセッサと、指針情報を出力する制御を行う出力制御プロセッサと、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、細胞培養において良い結果を得られる確率を高めることが可能な細胞培養支援装置の作動プログラム、細胞培養支援装置、細胞培養支援装置の作動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】作業者端末から細胞培養支援サーバに送信する要求と、細胞培養支援サーバから作業者端末に送信する情報を示す図である。
【
図3】細胞培養の全体的な流れを示すフローチャートである。
【
図4】培養1日目の基礎分量、代謝分量、測定分量、培養2日目の補給分量、代謝分量、測定分量を示す図である。
【
図5】培養N日目の補給分量、代謝分量、測定分量を示す図である。
【
図6】作業者端末および細胞培養支援サーバを構成するコンピュータを示すブロック図である。
【
図7】作業者端末のCPUの処理部を示すブロック図である。
【
図8】細胞培養支援サーバのCPUの処理部を示すブロック図である。
【
図11】培養目的、培養ID、培養日数の入力画面を示す図である。
【
図12】基礎分量、測定分量の入力画面を示す図である。
【
図13】補給分量、測定分量、抗体濃度の入力画面を示す図である。
【
図14】第1導出部における指針情報の導出過程を示す図である。
【
図15】第1導出部における指針情報の導出過程を示す図である。
【
図16】第1導出部における指針情報の導出過程を示す図である。
【
図20】決定木分析を用いて、
図16で示した学習済みモデルを導出する様子を示す図である。
【
図21】決定木分析を用いて、
図16で示した学習済みモデルを導出する様子を示す図である。
【
図22】判断部において細胞培養の結果の良悪を判断する様子を示す図である。
【
図23】細胞培養支援サーバの処理手順を示すフローチャートである。
【
図24】細胞培養支援サーバの処理手順を示すフローチャートである。
【
図25】細胞培養支援サーバの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1において、細胞培養システム2は、作業者端末10と細胞培養支援サーバ11とを備え、例えば1つの医薬品開発ラボラトリーに設置される。作業者端末10は、細胞培養の作業者が操作する端末であり、例えばデスクトップ型のパーソナルコンピュータで構成される。細胞培養支援サーバ11は細胞培養支援装置に相当し、サーバコンピュータで構成される。作業者端末10と細胞培養支援サーバ11とは、LAN(Local Area Network)等のネットワーク12で相互に通信可能に接続されている。
【0019】
作業者端末10および細胞培養支援サーバ11は、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、ワークステーションといったコンピュータをベースとする。作業者端末10および細胞培養支援サーバ11は、これらのコンピュータに、オペレーティングシステム等の制御プログラム、および各種アプリケーションプログラムをインストールして構成される。
【0020】
図2において、作業者端末10は、指針情報の出力要求を細胞培養支援サーバ11に送信する。指針情報は、細胞培養において良い結果を得るための、培地の成分の分量の定量的な情報である。細胞培養支援サーバ11は、出力要求を受けて指針情報を導出し、導出した指針情報を出力要求元の作業者端末10に出力する。
【0021】
細胞培養支援サーバ11は、指針情報の出力の一形態として、作業者端末10のウェブブラウザ上で閲覧可能な指針情報表示画面100(
図17~
図19参照)を生成し、生成した指針情報表示画面100を作業者端末10に出力する。より詳しくは、細胞培養支援サーバ11は、指針情報表示画面100を、XML(Extensible Markup Language)等のマークアップ言語によって作成されるウェブ配信用の画面データの形式で出力する。XMLに代えて、JSON(Javascript(登録商標) Object Notation)等の他のデータ記述言語を利用してもよい。なお、細胞培養支援サーバ11は、指針情報表示画面100の他にも、様々な画面をウェブ配信用の画面データの形式で作業者端末10に出力する。
【0022】
図3に、例えば抗体を生成するために抗体遺伝子を導入した細胞の培養の全体的な流れを示す。まず、細胞培養の開始に先立って、シャーレ、フラスコ等の培養器20(
図4および
図5参照)に基礎培地が用意される。そして、基礎培地に細胞が導入される(ステップST10)。これにより培養器20内で培養が行われる(ステップST11)。そして、培地を構成する複数種の成分の分量が測定(ステップST12)され、培養1日目の作業が終了する。なお、分量の測定には、例えば液体クロマトグラフ質量分析器が用いられる。また、分量の単位は、例えばmgである。以下、説明に必要な場合を除いて、分量は単位を記載せずに数値のみを記載する。
【0023】
培養2日目、培養1日目に細胞が消費した培地中の成分を補うために、細胞が消費した成分が補給される(ステップST13)。そして培養1日目と同様にして培養が行われ(ステップST14)、培地を構成する複数種の成分の分量が測定(ステップST15)される。培養3日目以降、これらの培地の成分補給、培養、成分の分量測定の各ステップが繰り返し行われる。
【0024】
培養最終日、培養2日目等と同様に培地の成分補給、培養、成分の分量測定の各ステップ(ステップST19、ステップST20、ステップST21)が行われる。そして、最後に抗体濃度が測定され(ステップST22)、1回の細胞培養が終了する。なお、抗体濃度の単位は、例えばmg/mlである。以下では、分量の場合と同じく、説明に必要な場合を除いて、抗体濃度は単位を記載せずに数値のみを記載する。
【0025】
作業者は、ステップST10における基礎培地中の各成分の分量である基礎分量を作業者端末10に入力する。また、作業者は、ステップST12、ステップST15、ステップST18、・・・、ステップST21において測定した各成分の分量である測定分量を作業者端末10に入力する。同様に、作業者は、ステップST13、ステップST16、・・・、ステップST19において補給した各成分の分量である補給分量を作業者端末10に入力する。さらに、作業者は、ステップST22において測定した抗体濃度を作業者端末10に入力する。作業者は、1日の作業終了後に、これら基礎分量、測定分量、補給分量、抗体濃度を作業者端末10に入力する。上記各ステップにおける基礎分量、測定分量、補給分量の推移は、培地を構成する複数種の成分の各々の分量の時間推移を示す時系列データに相当する。抗体濃度は、細胞培養の結果の良悪を判断するための判断用データに相当する。
【0026】
図4において、基礎培地中の各成分Ca、Cb、Cc、・・・の基礎分量をB_Ca、B_Cb、B_Cc、・・・、培養1日目に細胞が代謝する各成分の分量である代謝分量をM_Ca1、M_Cb1、M_Cc1、・・・とした場合を考える。この場合、成分Caの測定分量S_Ca1は、基礎分量B_Caと代謝分量M_Ca1との和で表せる。すなわち、
S_Ca1=B_Ca+M_Ca1
同様にして、成分Cbの測定分量S_Cb1=B_Cb+M_Cb1、成分Ccの測定分量S_Cc1=B_Cc+M_Cc1、・・・と表せる。
【0027】
次いで、培養2日目の各成分の補給分量をF_Ca2、F_Cb2、F_Cc2、・・・、培養2日目の各成分の代謝分量をM_Ca2、M_Cb2、M_Cc2、・・・とした場合を考える。この場合、培養2日目の成分Caの測定分量S_Ca2は、基礎分量B_Ca、代謝分量M_Ca1、M_Ca2、補給分量F_Ca2の和で表せる。すなわち、
S_Ca2=B_Ca+M_Ca1+F_Ca2+M_Ca2
同様にして、培養2日目の成分Cbの測定分量S_Cb2=B_Cb+M_Cb1+F_Cb2+M_Cb2、培養2日目の成分Ccの測定分量S_Cc2=B_Cc+M_Cc1+F_Cc2+M_Cc2、・・・と表せる。
【0028】
以上のことから、培養N日目(Nは2以上の自然数)の各成分の測定分量S_CaN、S_CbN、S_CcN、・・・は、
図5のように表せる。すなわち、培養N日目の各成分の補給分量をF_CaN、F_CbN、F_CcN、・・・、培養N日目の各成分の代謝分量をM_CaN、M_CbN、M_CcN、・・・とした場合、培養N日目の成分Caの測定分量S_CaN=B_Ca+Σ(M_CaJ)+Σ(F_CaK)、培養N日目の成分Cbの測定分量S_CbN=B_Cb+Σ(M_CbJ)+Σ(F_CbK)、培養N日目の成分Ccの測定分量S_CcN=B_Cc+Σ(M_CcJ)+Σ(F_CcK)、・・・と表せる。ただし、J=1~N、K=2~Nである。
【0029】
このように、各成分の測定分量は、基礎分量、補給分量、および代謝分量をパラメータとする加算式で表せる。なお、成分は、例えば、グルタミン、ヒスチジン、アスパラギン、ロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、酵母エキス、塩化ナトリウム、硝酸カリウム、乳糖等である。また、代謝分量は、細胞がその成分を生成した場合は正の値、逆に消費した場合は負の値をとる。
【0030】
図6において、作業者端末10および細胞培養支援サーバ11を構成するコンピュータは、基本的な構成は同じであり、それぞれ、ストレージデバイス30、メモリ31、CPU(Central Processing Unit)32、通信部33、ディスプレイ34、および入力デバイス35を備えている。これらはデータバス36を介して相互接続されている。
【0031】
ストレージデバイス30は、作業者端末10等を構成するコンピュータに内蔵、またはケーブル、ネットワークを通じて接続されたハードディスクドライブである。もしくはストレージデバイス30は、ハードディスクドライブを複数台連装したディスクアレイである。ストレージデバイス30には、オペレーティングシステム等の制御プログラム、各種アプリケーションプログラム、およびこれらのプログラムに付随する各種データ等が記憶されている。
【0032】
メモリ31は、CPU32が処理を実行するためのワークメモリである。CPU32は、ストレージデバイス30に記憶されたプログラムをメモリ31へロードして、プログラムにしたがった処理を実行することにより、コンピュータの各部を統括的に制御する。
【0033】
通信部33は、ネットワーク12を介した各種情報の伝送制御を行うネットワークインターフェースである。ディスプレイ34は各種画面を表示する。各種画面にはGUI(Graphical User Interface)による操作機能が備えられる。作業者端末10等を構成するコンピュータは、各種画面を通じて、入力デバイス35からの操作指示の入力を受け付ける。入力デバイス35は、キーボード、マウス、タッチパネル等である。
【0034】
なお、以下の説明では、作業者端末10を構成するコンピュータの各部には添え字の「A」を、細胞培養支援サーバ11を構成するコンピュータの各部には添え字の「B」をそれぞれ符号に付して区別する。
【0035】
図7において、ウェブブラウザが起動されると、作業者端末10のCPU32Aは、メモリ31等と協働して、ブラウザ制御部40として機能する。ブラウザ制御部40は、ウェブブラウザの動作を制御する。ブラウザ制御部40は、細胞培養支援サーバ11からの各種画面の画面データを受け取る。ブラウザ制御部40は、画面データに基づきウェブブラウザ上に表示する各種画面を再現し、これをディスプレイ34Aに表示する。
【0036】
また、ブラウザ制御部40は、各種画面を通じて入力デバイス35Aから入力される様々な操作指示を受け付ける。ブラウザ制御部40は、各種操作指示に応じた各種要求を細胞培養支援サーバ11に対して発行する。操作指示には、指針情報の出力指示が含まれる。指針情報の出力指示を受け付けた場合、ブラウザ制御部40は、指針情報の出力要求を細胞培養支援サーバ11に対して発行する。
【0037】
図8において、細胞培養支援サーバ11のストレージデバイス30Bには、アプリケーションプログラムとして作動プログラム45が記憶されている。作動プログラム45は、細胞培養支援サーバ11を構成するコンピュータを、細胞培養支援装置として機能させるためのアプリケーションプログラムである。すなわち、作動プログラム45は、本開示の技術に係る「細胞培養支援装置の作動プログラム」の一例である。ストレージデバイス30Bには、作動プログラム45の他に、学習済みモデル46および教師データ47が記憶されている。
【0038】
作動プログラム45が起動されると、細胞培養支援サーバ11のCPU32Bは、メモリ31等と協働して、第1取得部50、第2取得部51、第1導出部52、出力制御部53、第3取得部54、第2導出部55、第4取得部56、および判断部57として機能する。
【0039】
第1取得部50は、機械学習の運用フェーズにおいて、学習済みモデル46をストレージデバイス30Bから読み出し、学習済みモデル46を取得する。第1取得部50は、取得した学習済みモデル46を第1導出部52に出力する。
【0040】
第2取得部51は、培地を構成する複数種の成分の各々の分量の時間推移を示す時系列データを取得する。第2取得部51は、取得した時系列データを、ストレージデバイス30Bに教師データ47として登録し、かつ第1導出部52に出力する。教師データ47として登録される時系列データは、学習用の時系列データである。一方、第1導出部52に出力される時系列データは、第1導出部52が学習済みモデル46を用いて解析する解析用の時系列データである。
【0041】
運用フェーズにおいて、第1導出部52は、第1取得部50において取得した学習済みモデル46と、第2取得部51において取得した解析用の時系列データのうちの少なくとも一部の入力データとから、複数種の成分のうちの少なくとも1つについて、指針情報を導出する。第1導出部52は、導出した指針情報を出力制御部53に出力する。
【0042】
運用フェーズにおいて、第1導出部52は、解析用の時系列データの中に入力データとなるものがあるか否かを検索する。入力データは、第1導出部52が指針情報を導出するために、学習済みモデル46と組み合わせて加算式に代入することが可能なデータである。解析用の時系列データの中に入力データとなるものがあった場合、第1導出部52は指針情報を導出する。一方、解析用の時系列データの中に入力データとなるものがなかった場合、第1導出部52は指針情報を導出しない。
【0043】
入力データは、例えば、ある1つの成分の基礎分量、ある1つの成分の培養2日目の測定分量、ある1つの成分の培養3日目の補給分量等である。また、入力データは、例えば、ある2つの成分の培養4日目の補給分量の組み合わせ、ある1つの成分の基礎分量と培養1日目の測定分量の組み合わせ等である。このように、入力データは、第2取得部51において取得した解析用の時系列データのうちの少なくとも一部である。
【0044】
運用フェーズにおいて、出力制御部53は、第1導出部52において導出された指針情報を出力する制御を行う。より具体的には、出力制御部53は、ウェブ配信用の指針情報表示画面100の画面データを生成する。そして、生成した指針情報表示画面100の画面データを出力要求元の作業者端末10に出力する。なお、出力制御部53は、指針情報表示画面100以外の各種画面の画面データの生成、作業者端末10への出力も担う。
【0045】
機械学習の学習フェーズにおいて、第3取得部54は、教師データ47をストレージデバイス30Bから読み出し、教師データ47を取得する。教師データ47は、学習用の時系列データと、細胞培養の結果の良悪を示す良悪データとの組で構成される(
図10参照)。すなわち、第3取得部54は、教師データ47を取得することで、学習用の時系列データと良悪データとの組を取得する。第3取得部54は、取得した教師データ47を第2導出部55に出力する。
【0046】
学習フェーズにおいて、第2導出部55は、第3取得部54からの教師データ47に基づいて機械学習を行って、分量の指針を示す学習済みモデル46を導出する。第2導出部55は、導出した学習済みモデル46をストレージデバイス30Bに登録する。
【0047】
第3取得部54における教師データ47の取得、および第2導出部55における学習済みモデル46の導出は、例えば1カ月毎等の予め設定されたタイミングで行われる。もちろん、第3取得部54における教師データ47の取得、および第2導出部55における学習済みモデル46の導出を、作業者が指示したタイミングで行ってもよい。
【0048】
また、第3取得部54における教師データ47の取得、および第2導出部55における学習済みモデル46の導出は、教師データ47のサンプル数が設定値を下回っている間は行われない。換言すれば、教師データ47のサンプル数が設定値以上となってはじめて、第2導出部55において学習済みモデル46が導出される。なお、教師データ47のサンプル数とは、
図10で示すレコードの数である。
【0049】
第4取得部56は、作業者端末10からの判断用データを取得する。第4取得部56は、取得した判断用データを判断部57に出力する。判断用データは、本例では
図3で示したように抗体濃度である。
【0050】
判断部57は、第4取得部56からの判断用データに基づいて、細胞培養の結果の良悪を判断する。具体的には、判断用データと予め設定された判断条件とを比較する。そして、判断用データが判断条件を満たしている場合は細胞培養の結果を良と判断し、逆に判断条件を満たしていない場合は悪と判断する。判断部57は、ストレージデバイス30Bの教師データ47に、良悪の判断結果を良悪データとして登録する。このように、教師データ47には判断部57の判断結果が良悪データとして登録され、かつ第3取得部54は教師データ47を取得するので、第3取得部54は、判断部57の判断結果を良悪データとして取得していることになる。
【0051】
図9において、学習済みモデル46は、医薬品α用、医薬品β用等、培養目的毎に導出される。
【0052】
図9では、医薬品α用の学習済みモデル46が示されている。例えばNo.1の学習済みモデル46は、S_Cd5>20.638である。この学習済みモデル46は、成分Cdの培養5日目の測定分量が20.638よりも多い場合、細胞培養において良い結果を得ることができる、ということを示している。またNo.2の学習済みモデル46は、S_Cg5-S_Cg2≦-18.469である。この学習済みモデル46は、成分Cgの培養5日目の測定分量と培養2日目の測定分量との差(以下、こうした差を日間差という)が-18.469以下である場合、細胞培養において良い結果を得ることができる、ということを示している。さらにNo.3の学習済みモデル46は、S_Cp7-S_Cp4>5.432、かつS_Cq6-S_Cq3≦5.832である。この学習済みモデル46は、成分Cpの培養7日目と培養4日目の日間差が5.432よりも多く、かつ成分Cqの培養6日目と培養3日目の日間差が5.832以下である場合、細胞培養において良い結果を得ることができる、ということを示している。このように、学習済みモデル46は、測定分量に関する不等式である。
【0053】
図10において、教師データ47も、学習済みモデル46と同様に、培養目的毎に登録される。教師データ47において、1回の細胞培養に対して1つずつ付された培養IDで区切られた領域が1つのレコードを構成する。さらに各レコードは培養の日数で区切られる。培養1日目(日数1)には、基礎分量と測定分量とが、培養2日目(日数2)以降には、測定分量と、基礎分量に代えて補給分量とが、それぞれ登録される。また、各レコードには良悪データが登録される。つまり、教師データ47は、学習用の時系列データと、これに対応する良悪データとの組で構成される。なお、
図10では、
図9と同じく、医薬品α用の教師データ47が示されている。
【0054】
図11~
図13は、作業者端末10のディスプレイ34Aに表示される入力画面の例である。
図11に示す第1入力画面65A、
図12に示す第2入力画面65B、
図13に示す第3入力画面65Cは、細胞培養支援サーバ11の出力制御部53において生成されて作業者端末10に出力される。そして、作業者端末10のブラウザ制御部40によりディスプレイ34Aに表示される。
【0055】
図11に示す第1入力画面65Aは、培養目的、培養ID、培養日数を入力するための画面である。第1入力画面65Aには、培養目的の入力ボックス70、培養IDの入力ボックス71、培養日数を選択するためのプルダウンメニュー72、OKボタン73が設けられている。
【0056】
入力ボックス70に培養目的が、入力ボックス71に培養IDがそれぞれ入力され、プルダウンメニュー72で培養1日目が選択されてOKボタン73が選択される。この場合、
図12に示す第2入力画面65Bに表示が切り替わる。一方、プルダウンメニュー72で培養2日目以降が選択されてOKボタン73が選択された場合は、
図13に示す第3入力画面65Cに表示が切り替わる。
【0057】
図12に示す第2入力画面65Bは、基礎分量と測定分量を入力するための画面である。第2入力画面65Bには、第1領域75、第2領域76、OKボタン77が設けられている。第1領域75には成分毎の基礎分量の入力ボックス78が、第2領域76には成分毎の培養1日目の測定分量の入力ボックス79が、それぞれ設けられている。
【0058】
入力ボックス78に基礎分量が、入力ボックス79に培養1日目の測定分量がそれぞれ入力されてOKボタン77が選択される。この場合、ブラウザ制御部40から細胞培養支援サーバ11に対して指針情報の出力要求が発行される。つまり、OKボタン77の選択が指針情報の出力指示に相当する。
【0059】
この場合の指針情報の出力要求には、入力ボックス78に入力された基礎分量、入力ボックス79に入力された培養1日目の測定分量が含まれる。また、この場合の指針情報の出力要求は、入力ボックス78に入力された基礎分量、入力ボックス79に入力された培養1日目の測定分量を、教師データ47として登録する登録要求も兼ねる。
【0060】
図13に示す第3入力画面65Cは、補給分量、測定分量、抗体濃度を入力するための画面である。第3入力画面65Cには、第1領域85、第2領域86、第3領域87、OKボタン88が設けられている。第1領域85には成分毎の補給分量の入力ボックス89が、第2領域86には成分毎の測定分量の入力ボックス90が、第3領域87には抗体濃度の入力ボックス91が、それぞれ設けられている。
【0061】
入力ボックス89に補給分量が、入力ボックス90に測定分量が、培養最終日の場合は入力ボックス91に抗体濃度がそれぞれ入力されてOKボタン88が選択される。この場合、
図12の入力画面65Bの場合と同様に、ブラウザ制御部40から細胞培養支援サーバ11に対して指針情報の出力要求が発行される。
【0062】
この場合の指針情報の出力要求には、入力ボックス89に入力された補給分量、入力ボックス90に入力された測定分量が含まれる。培養最終日の場合は、入力ボックス91に入力された抗体濃度も含まれる。また、この場合の指針情報の出力要求は、
図12の入力画面65Bの場合と同様に、入力ボックス89に入力された補給分量、入力ボックス90に入力された測定分量を、教師データ47として登録する登録要求も兼ねる。培養最終日の場合は、入力ボックス91に入力された抗体濃度に基づいて判断した良悪データを、教師データ47として登録する登録要求も兼ねる。
【0063】
図14~
図16は、第1導出部52における指針情報の導出過程を示す図である。
【0064】
図14は、第1取得部50からの学習済みモデル46に、S_Cw7>2.038という内容のものがあった場合を示している。そして、第2取得部51からの解析用の時系列データが培養6日目のもので、入力データとしてS_Cw6=1.05が検索された場合を示している。この場合、第1導出部52は、S_Cw7を示す加算式に、入力データであるS_Cw6=1.05を代入して計算する。より具体的には、S_Cw7を示す加算式のうちのS_Cw6に該当する部分である、B_Cw+M_Cw1+F_Cw2+M_Cw2+・・・+F_Cw6+M_Cw6に1.05を代入して、S_Cw7>2.038の不等式をF_Cw7について計算する。その結果、次式(1)を得る。
F_Cw7>0.988-M_Cw7・・・(1)
【0065】
第1導出部52は、上記式(1)にさらにM_Cw7=-0.852を代入して、次式(2)を得る。
F_Cw7>1.84・・・(2)
第1導出部52は、この式(2)を指針情報として出力制御部53に出力する。
【0066】
なお、式(1)に代入するM_Cw7の値は、教師データ47の培養7日目の測定分量S_Cw7から、培養6日目の測定分量S_Cw6および培養7日目の補給分量F_Cw7を減算した値である。より詳しくは、第1導出部52は、教師データ47の各レコードについて上記減算を行って、各レコードでM_Cw7の値を計算する。そして、各レコードで計算したM_Cw7の平均値を計算することで、式(1)に代入するM_Cw7の値を得る。
【0067】
式(2)の指針情報は、培養7日目の成分Cwの補給分量を1.84よりも多くすると、細胞培養において良い結果を得ることができる、ということを示している。つまり、式(2)の指針情報は、補給分量に関する情報である。
【0068】
図15は、第1取得部50からの学習済みモデル46に、S_Cx1>16.52という内容のものがあった場合を示している。そして、第2取得部51からの解析用の時系列データが培養1日目のもので、入力データとしてS_Cx1=19.785、B_Cx=4が検索された場合を示している。この場合、第1導出部52は、S_Cx1を示す加算式(S_Cx1=B_Cx+M_Cx1)に、入力データであるS_Cx1=19.785、B_Cx=4を代入して計算する。その結果、次式(3)を得る。
M_Cx1=15.875・・・(3)
【0069】
第1導出部52は、学習済みモデル46であるS_Cx1=B_Cx+M_Cx1>16.52の不等式に、上記式(3)を代入して、次式(4)を得る。
B_Cx>0.645・・・(4)
第1導出部52は、この式(4)を指針情報として出力制御部53に出力する。
【0070】
式(4)の指針情報は、成分Cxの基礎分量を0.645よりも多くすると、細胞培養において良い結果を得ることができる、ということを示している。つまり、式(4)の指針情報は、基礎分量に関する情報である。
【0071】
図16は、第1取得部50からの学習済みモデル46に、S_Cy6-S_Cy3≦-46.964、かつS_Cz5-S_Cz3≦1608.145という内容のものがあった場合を示している。そして、第2取得部51からの解析用の時系列データが培養4日目のもので、入力データとしてF_Cy4=30、F_Cz=110が抽出された場合を示している。この場合、第1導出部52は、S_Cy6-S_Cy3を示す加算式に、入力データであるF_Cy4=30を、S_Cz5-S_Cz3を示す加算式に、入力データであるF_Cz4=110を、それぞれ代入して計算する。その結果、次式(5)、(6)を得る。
F_Cy5+F_Cy6≦-76.964-(M_Cy4+M_Cy5+M_Cy6)・・・(5)
F_Cz5≦1498.145-(M_Cz4+M_Cz5)・・・(6)
【0072】
第1導出部52は、上記式(5)にさらにM_Cy4+M_Cy5+M_Cy6=-98.332を代入して、次式(7)を得る。また、第1導出部52は、上記式(6)にさらにM_Cz4+M_Cz5=1200.045を代入して、次式(8)を得る。
F_Cy5+F_Cy6≦21.368・・・(7)
F_Cz5≦298.1・・・(8)
第1導出部52は、これらの式(7)、(8)を指針情報として出力制御部53に出力する。なお、式(5)に代入するM_Cy4+M_Cy5+M_Cy6の値、式(6)に代入するM_Cz4+M_Cz5の値は、
図14のM_Cw7の値の場合と同様に、教師データ47から得ることができる。
【0073】
式(7)の指針情報は、培養5日目と培養6日目の成分Cyの補給分量の合計を21.368以下にすると、細胞培養において良い結果を得ることができる、ということを示している。また、式(8)の指針情報は、培養5日目の成分Czの補給分量を298.1以下にすると、細胞培養において良い結果を得ることができる、ということを示している。つまり、式(7)、(8)の指針情報は、
図14の式(2)の指針情報と同じく、補給分量に関する情報である。
【0074】
図17~
図19は、作業者端末10のディスプレイ34Aに表示される指針情報表示画面100の例を示す。指針情報表示画面100は、細胞培養支援サーバ11の出力制御部53において生成されて作業者端末10に出力される。そして、作業者端末10のブラウザ制御部40によりディスプレイ34Aに表示される。指針情報表示画面100は、OKボタン101が選択された場合に表示が消える。
【0075】
図17に示す指針情報表示画面100は、
図14で示した式(2)の指針情報を表示した例である。より具体的には、式(2)を表現した「培養7日目の成分Cwの補給量を1.84mgよりも多くしてください。」という文章を指針情報として表示している。
【0076】
図18に示す指針情報表示画面100は、
図15で示した式(4)の指針情報を表示した例である。より具体的には、式(4)を表現した「基礎培地の成分Cxの量を0.645mgよりも多くしてください。」という文章を指針情報として表示する。
【0077】
図19に示す指針情報表示画面100は、
図16で示した式(7)の指針情報および式(8)の指針情報を表示した例である。より具体的には、式(7)を表現した「培養5日目と6日目の成分Cyの補給量の合計を21.368mg以下としてください。」という文章を指針情報として表示する。また、式(8)を表現した「培養5日目の成分Czの補給量を298.1mg以下としてください。」という文章を指針情報として表示する。なお、式(7)の指針情報については、上記例の代わりに、「培養5日目と6日目の成分Cyの補給量を10.684mg以下としてください。」と表現してもよい。
【0078】
図17~
図19では、補給分量に関する指針情報のみ、または基礎分量に関する指針情報のみが導出されて表示される例を示したが、当然ながら、補給分量に関する指針情報と基礎分量に関する指針情報とが同時に導出されて表示される場合もある。
【0079】
図20および
図21に示すように、第2導出部55は、学習済みモデル46を導出する機械学習の手法として、決定木分析を用いる。
図20および
図21では、
図16で示した学習済みモデル46を導出する例を示している。
【0080】
第2導出部55は、最終目標として、良悪データの良の割合が90%以上となる学習済みモデル46を導出する。そのために第2導出部55は、第1段階として、第3取得部54からの全ての教師データ47を、良悪データの良の割合が70%以上となるノードに分けることが可能な条件を抽出する。
図20では、成分Cyの培養6日目と培養3日目の日間差(S_Cy6-S_Cy3)に関する相反する条件(S_Cy6-S_Cy3≦-46.964とS_Cy6-S_Cy3>-46.964)で2つのノード110A、110Bに分けた場合に、ノード110Aの良悪データの良の割合が70%以上となった。このため、第2導出部55は、ノード110Aの条件(S_Cy6-S_Cy3≦-46.964)を、良悪データの良の割合が70%以上となるノードに分けることが可能な条件として抽出する。
【0081】
続いて第2導出部55は、ノード110Aの教師データ47を、さらに良悪データの良の割合が90%以上となるノードに分けることが可能な条件を抽出する。
図20では、成分Czの培養5日目と培養3日目の日間差(S_Cz5-S_Cz3)に関する相反する条件(S_Cz5-S_Cz3≦1608.145とS_Cz5-S_Cz3>1608.145)で2つのノード111A、111Bに分けた場合に、ノード111Aの良悪データの良の割合が90%以上となった。このため、第2導出部55は、ノード111Aの条件(S_Cz5-S_Cz3≦1608.145)を、良悪データの良の割合が90%以上となるノードに分けることが可能な条件として抽出する。
【0082】
第2導出部55は、ノード110A、111Aの分岐条件である、S_Cy6-S_Cy3≦-46.964とS_Cz5-S_Cz3≦1608.145とを、学習済みモデル46として導出する。
【0083】
なお、
図20および
図21では、学習済みモデル46を導出するために決定木分析を2段階に分けて行ったが、良悪データの良の割合が90%以上となるノードに分けることが可能な条件が第1段階で抽出された場合は、そこで決定木分析を終了してもよい。あるいは、良悪データの良の割合が90%以上となるノードに分けることが可能な条件が抽出されるまで、第3段階、第4段階と決定木分析を続けていってもよい。ただし、あまりに多段階に決定木分析を続けると、ノードの教師データ47のサンプル数が少なくなり、学習済みモデル46の信頼性が保てなくなる。このため、ノードの教師データ47のサンプル数が設定値以下となったら決定木分析を終了する等、決定木分析の段階(木の深さ)に制限を設けることが好ましい。
【0084】
図22において、判断部57は、第4取得部56からの抗体濃度と、予め設定された判断条件とを比較することで、細胞培養の結果の良悪を判断する。
図22では、第4取得部56からの抗体濃度が455mg/mlで、判断条件が、抗体濃度500mg/ml以上の場合は良、抗体濃度500mg/mlよりも低い場合は悪である場合を例示している。この場合、判断部57は、細胞培養の結果が悪と判断する。なお、判断条件は固定でもよいし、作業者が設定変更可能に構成してもよい。
【0085】
以下、上記構成による作用について、
図23~
図25のフローチャートを参照して説明する。まず、
図23に示すように、細胞培養支援サーバ11では、ストレージデバイス30Bから第1取得部50に学習済みモデル46が読み出され、第1取得部50において学習済みモデル46が取得される(ステップST100、第1取得ステップ)。学習済みモデル46は、第1取得部50から第1導出部52に出力される。
【0086】
作業者端末10では、
図12で示した第2入力画面65B、
図13で示した第3入力画面65Cが、ブラウザ制御部40によりディスプレイ34Aに表示される。そして、これら各入力画面65B、65Cを介して、基礎分量、測定分量、補給分量が入力される。入力された各分量は、出力要求兼登録要求として細胞培養支援サーバ11に送信される。これにより第2取得部51において時系列データが取得される(ステップST110、第2取得ステップ)。時系列データは、第2取得部51により、学習用の時系列データとしてストレージデバイス30Bの教師データ47に登録される(ステップST120)。また、時系列データは、解析用の時系列データとして、第2取得部51から第1導出部52に出力される。なお、ここでは、学習フェーズである学習用の時系列データの登録と、運用フェーズである解析用の時系列データの第1導出部52への出力とを並行して行う例を示すが、学習用の時系列データの登録と、解析用の時系列データの第1導出部52への出力とを、別々のタイミングで切り離して実行してもよい。
【0087】
第1導出部52では、第2取得部51からの解析用の時系列データの中に入力データとなるものがあるか否かが検索される(ステップST130)。解析用の時系列データの中に入力データとなるものがあった場合(ステップST130でYES)、
図14~
図16で示したように、第1導出部52において指針情報が導出される(ステップST140、第1導出ステップ)。より詳しくは、測定分量を示す、基礎分量、補給分量、および代謝分量をパラメータとする加算式に、入力データを代入して計算することで、指針情報が導出される。指針情報は、第1導出部52から出力制御部53に出力される。一方、解析用の時系列データの中に入力データとなるものがなかった場合(ステップST130でNO)は、指針情報は導出されない。
【0088】
指針情報が導出された場合、出力制御部53において、
図17~
図19で示した指針情報表示画面100の画面データが生成される。指針情報表示画面100の画面データは、出力制御部53により、出力要求元の作業者端末10に出力される(ステップST150、出力制御ステップ)。
【0089】
作業者端末10では、細胞培養支援サーバ11からの指針情報表示画面100が、ブラウザ制御部40によりディスプレイ34Aに表示される。作業者は、指針情報表示画面100に表示された指針情報を閲覧し、指針情報に沿って培養作業を進める。例えば
図17で示した指針情報表示画面100が表示された場合、作業者は、培養7日目の成分Cwの補給分量を1.84よりも多くする。
【0090】
培地の成分の分量の指針を示す学習済みモデル46を用いて、第1導出部52により細胞培養において良い結果を得るための分量の定量的な指針情報を導出し、出力制御部53により指針情報表示画面100を出力して作業者の閲覧に供する。したがって、細胞培養において良い結果を得られる確率を高めることが可能となる。作業者は容易に分量の最適値を知ることができる。このため、自分の経験等に基づいて補給分量を試行錯誤する、といった煩雑な思考をする必要がなく、指針情報に沿って粛々と培養作業を進めればよい。
【0091】
基礎分量、補給分量、および代謝分量をパラメータとする加算式に、入力データを代入して計算することで、第1導出部52により指針情報を導出するので、比較的簡単な計算で指針情報を導出することができる。
【0092】
作業者端末10では、培養最終日に第3入力画面65Cを介して抗体濃度が入力される。入力された抗体濃度は細胞培養支援サーバ11に送信され、
図24に示すように、第4取得部56において判断用データとして取得される(ステップST200)。抗体濃度は、第4取得部56から判断部57に出力される。
【0093】
続いて、判断部57において、
図22で示したように、第4取得部56からの抗体濃度と判断条件とが比較され、細胞培養の結果の良悪が判断される(ステップST210)。そして、判断部57により、判断結果が良悪データとして教師データ47に登録される(ステップST220)。
【0094】
このように、第4取得部56により判断用データを取得し、判断部57により判断用データに基づいて細胞培養の結果の良悪を判断するので、作業者は判断用データを入力するだけで済み、細胞培養の結果の良悪を判断する必要がない。
【0095】
図25に示すように、細胞培養支援サーバ11では、予め設定されたタイミングで、ストレージデバイス30Bから第3取得部54に教師データ47が読み出され、第3取得部54において教師データ47が取得される(ステップST300)。教師データ47は、第3取得部54から第2導出部55に出力される。
【0096】
第2導出部55では、
図20および
図21で示したように、教師データ47が決定木分析に掛けられ、これにより学習済みモデル46が導出される(ステップST310)。学習済みモデル46は、第2導出部55により、ストレージデバイス30Bに登録される(ステップST320)。
【0097】
このように、第3取得部54により教師データ47を取得し、教師データ47に基づいて第2導出部55により学習済みモデル46を導出するので、日々更新される教師データ47に応じて学習済みモデル46も更新することができる。また、学習済みモデル46を他のコンピュータから調達する手間を省くことができる。
【0098】
学習済みモデル46は、第2導出部55により決定木分析を用いて導出された、測定分量に関する不等式である。このため、学習済みモデル46がどういった内容を示しているかを容易に解釈することができる。ひいては、学習済みモデル46に基づいて導出される指針情報を、
図17~
図19で例示したように平易な文章等で表現することができる。
【0099】
上記実施形態では、細胞培養支援サーバ11のストレージデバイス30Bに、学習済みモデル46および教師データ47を登録した例を示したが、これに限定されない。細胞培養支援サーバ11とは別のデータベースサーバに、学習済みモデル46および教師データ47を登録しておき、データベースサーバから細胞培養支援サーバ11に学習済みモデル46および教師データ47を送信してもよい。
【0100】
上記実施形態では、判断用データとして抗体濃度を例示したが、これに限定されない。抗体濃度に代えて、あるいは加えて、不純物の濃度、細胞の凝集密度、円形度等の細胞の形状を示すパラメータ等を、判断用データとしてもよい。
【0101】
測定分量は、上記実施形態のように各入力画面65B、65Cを介して作業者に手入力させるのではなく、質量分析器から送信させてもよい。
【0102】
上記実施形態では、指針情報表示画面100等の各種画面を、ウェブ配信用の画面データの形式で出力制御部53から作業者端末10に出力する態様を例示したが、これに限定されない。作業者端末10に各種画面を表示するためのアプリケーションプログラムをインストールしておき、出力制御部53からは、各種画面の表示をアプリケーションプログラムに指示する指令を出力する態様でもよい。
【0103】
指針情報の出力形態は、上記実施形態の指針情報表示画面100に限らない。指針情報を作業者端末10に接続されたプリンタで印刷出力したり、指針情報を示すファイルを電子メールで作業者端末10に送信してもよい。
【0104】
機械学習の手法は決定木分析に限らない。ニューラルネットワーク等の他の手法を用いてもよい。
【0105】
細胞培養支援サーバ11を構成するコンピュータのハードウェア構成は種々の変形が可能である。例えば、細胞培養支援サーバ11を、処理能力、信頼性の向上を目的として、ハードウェアとして分離された複数台のサーバコンピュータで構成することも可能である。具体的には、第1取得部50、第2取得部51、第1導出部52、および出力制御部53の機能と、第3取得部54および第2導出部55の機能と、第4取得部56および判断部57の機能とを、3台のサーバコンピュータに分散して担わせる。この場合は3台のサーバコンピュータで細胞培養支援サーバ11を構成する。
【0106】
第2取得部51と第4取得部56の機能を、1つの取得部に担わせてもよい。また、作業者端末10に作動プログラム45をインストールし、上記実施形態で細胞培養支援サーバ11に構築した各処理部を作業者端末10に構築して、作業者端末10を細胞培養支援装置として稼働させてもよい。
【0107】
このように、コンピュータのハードウェア構成は、処理能力、安全性、信頼性等の要求される性能に応じて適宜変更することができる。さらに、ハードウェアに限らず、作動プログラム45等のアプリケーションプログラムについても、安全性および信頼性の確保を目的として、二重化したり、あるいは、複数のストレージデバイスに分散して格納することももちろん可能である。
【0108】
上記実施形態では、細胞培養支援サーバ11を1つの医薬品開発ラボラトリーに設置し、1つの医薬品開発ラボラトリー内で利用する形態としているが、細胞培養支援サーバ11を複数の医薬品開発ラボラトリーで利用可能な形態としてもよい。細胞培養支援サーバ11を複数の医薬品開発ラボラトリーで利用可能とするためには、細胞培養支援サーバ11を、例えば、インターネットあるいは公衆通信網等のWAN(Wide Area Network)を介して、複数の医薬品開発ラボラトリーに設置される複数台の作業者端末10と通信可能に接続する。そして、各作業者端末10からの出力要求を、WANを介して細胞培養支援サーバ11で受け付けて、各作業者端末10に対して指針情報を出力する。なお、この場合の細胞培養支援サーバ11の設置場所および運営主体は、例えば医薬品開発ラボラトリーとは別の会社が運営するデータセンタでもよいし、複数の医薬品開発ラボラトリーのうちの1つでもよい。
【0109】
なお、上記実施形態では、作業者が基礎培地を用意したり日毎に成分を補給したりすることを想定している。このため、上記実施形態では、作業者に向けた指針情報を出力している。しかし、作業者を介さずに、装置が基礎培地を用意したり日毎に成分を補給したりすることも考えられる。この場合の指針情報としては、装置に対する制御情報とする。例えば指針情報が、
図14に示す、培養7日目の成分Cwの補給分量を1.84よりも多くする、であった場合、培養7日目の成分Cwの補給分量を1.84よりも多くするような制御情報を、指針情報として装置に与える。こうすれば、作業者を介さずに、装置が基礎培地を用意したり日毎に成分を補給したりする場合にも対応することができる。
【0110】
上記実施形態において、例えば、第1取得部50、第2取得部51、第1導出部52、出力制御部53、第3取得部54、第2導出部55、第4取得部56、判断部57といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(作動プログラム45)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU32Bに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device :PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0111】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、および/または、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0112】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0113】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0114】
以上の記載から、以下の付記項1に記載の発明を把握することができる。
【0115】
[付記項1]
細胞培養に用いられる培地を構成する複数種の成分の各々の分量の時間推移を示す学習用の時系列データと、前記学習用の時系列データに対応し、前記細胞培養の結果の良悪を示す良悪データとの組に基づいて機械学習を行って導出された、前記分量の指針を示す学習済みモデルを取得する第1取得プロセッサと、
前記分量の時間推移を示す解析用の時系列データを取得する第2取得プロセッサと、
前記第1取得プロセッサにおいて取得した前記学習済みモデルと、前記第2取得プロセッサにおいて取得した前記解析用の時系列データのうちの少なくとも一部の入力データとから、前記複数種の成分のうちの少なくとも1つについて、前記細胞培養において良い結果を得るための前記分量の定量的な指針情報を導出する第1導出プロセッサと、
前記指針情報を出力する制御を行う出力制御プロセッサと、
を備える細胞培養支援装置。
【0116】
本開示の技術は、上述の種々の実施形態と種々の変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、上記実施形態に限らず、要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。さらに、本開示の技術は、プログラムに加えて、プログラムを非一時的に記憶する記憶媒体にもおよぶ。
【0117】
以上に示した記載内容および図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、および効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、および効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容および図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことはいうまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容および図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0118】
本明細書において、「Aおよび/またはB」は、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「Aおよび/またはB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、AおよびBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「および/または」で結び付けて表現する場合も、「Aおよび/またはB」と同様の考え方が適用される。
【0119】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。