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特開2022-110762ケーブル検査方法及び検査正否判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110762
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】ケーブル検査方法及び検査正否判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/28 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
G01R27/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006374
(22)【出願日】2021-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深作 泉
【テーマコード(参考)】
2G028
【Fターム(参考)】
2G028AA01
2G028BF05
2G028CG15
2G028CG18
2G028GL11
(57)【要約】
【課題】差動モード伝送損失やモード変換特性等の検査精度を容易に向上させることができるケーブル検査方法を提供する。
【解決手段】
差動信号伝送ケーブル10をベクトルネットワークアナライザ21に接続する接続工程S1と、ベクトルネットワークアナライザ21のSパラメータに基づいて、差動信号伝送ケーブル10の伝送特性を検査する検査工程S2~S4と、伝送特性検査の正否を判定する検査判定工程S5~S8と、を含み、検査判定工程S5~S8は、Sパラメータにおける、第1及び第2接続ポート21a、21bでの反射特性の、位相の差を算出する第1位相差算出工程S5と、Sパラメータにおける、第3、第4接続ポート21c、21dでの反射特性の、位相の差を算出する第2位相差算出工程S6と、算出した位相の差に基づいて、検査の正否を判定する判定工程S7、S8と、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベクトルネットワークアナライザから得られたSパラメータに基づいて、一対の信号線を有する差動信号伝送ケーブルを検査するケーブル検査方法であって、
前記差動信号伝送ケーブルの前記一対の信号線を接続する接続具、及び前記接続具と前記ベクトルネットワークアナライザの各接続ポートとを接続する接続ケーブルを介して、前記差動信号伝送ケーブルを前記ベクトルネットワークアナライザに接続する接続工程と、
前記差動信号伝送ケーブルを前記ベクトルネットワークアナライザに接続した状態における、前記ベクトルネットワークアナライザの前記Sパラメータに基づいて、前記差動信号伝送ケーブルの伝送特性を検査する検査工程と、
前記検査工程における検査の正否を判定する検査判定工程と、を含み、
前記検査判定工程は、
前記Sパラメータにおける、前記差動信号伝送ケーブルの一端部側に対応する一対の前記接続ポートでの反射特性の、位相の差を算出する第1位相差算出工程と、
前記Sパラメータにおける、前記差動信号伝送ケーブルの他端部側に対応する一対の前記接続ポートでの反射特性の、位相の差を算出する第2位相差算出工程と、
前記第1位相差算出工程及び前記第2位相差算出工程で算出した前記位相の差に基づいて、前記検査の正否を判定する判定工程と、を含む、
ケーブル検査方法。
【請求項2】
前記第1位相差算出工程及び前記第2位相差算工程では、前記差動信号伝送ケーブルが利用される周波数範囲の最大周波数をfmaxとしたときのfmax×0.95以上fmax以下の周波数帯における前記位相の差を算出する、
請求項1に記載のケーブル検査方法。
【請求項3】
前記判定工程では、
前記第1位相差算出工程及び前記第2位相差算出工程で算出した前記位相の差を、前記各接続ポートへの反射波の到達時間の差に変換し、変換した前記到達時間の差と、所定の閾値とを比較することで、前記検査の正否を判定する、
請求項1又は2に記載のケーブル検査方法。
【請求項4】
前記第1位相差算出工程及び前記第2位相差算出工程では、所定の周波数帯における複数の周波数の前記位相の差を算出し、
前記判定工程では、
前記複数の周波数の前記位相の差を、前記各接続ポートへの反射波の到達時間の差にそれぞれ変換し、変換した前記到達時間の差の平均値と、所定の閾値とを比較することで、前記検査の正否を判定する、
請求項3に記載のケーブル検査方法。
【請求項5】
Sパラメータを計測するベクトルネットワークアナライザと、差動信号伝送ケーブルの一対の信号線を接続する接続具と、前記接続具と前記ベクトルネットワークアナライザの各接続ポートとを接続する接続ケーブルと、を備えたケーブル検査装置における、前記差動信号伝送ケーブルの伝送特性検査の正否を判定する検査正否判定方法であって、
前記Sパラメータにおける、前記差動信号伝送ケーブルの一端部側に対応する一対の前記接続ポートでの反射特性の、位相の差を算出する第1位相差算出工程と、
前記Sパラメータにおける、前記差動信号伝送ケーブルの他端部側に対応する一対の前記接続ポートでの反射特性の、位相の差を算出する第2位相差算出工程と、
前記第1位相差算出工程及び前記第2位相差算出工程で算出した前記位相の差に基づいて、前記伝送特性検査の正否を判定する判定工程と、を含む、
検査正否判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル検査方法及び検査正否判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、差動信号伝送ケーブルのケーブル検査方法として、ベクトルネットワークアナライザ等の計測器を接続し、当該計測器により差動信号伝送ケーブルの伝送特性を検査する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このケーブル検査方法では、差動信号伝送ケーブルを接続する接続具(特性評価機構)、及び接続具と計測器とを接続する接続ケーブルを介して、差動信号伝送ケーブルを計測器に接続し、接続した差動信号伝送ケーブルにおける、差動モード伝送損失や、差動モードから同相モードへのモード変換特性等を検査することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-64648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のケーブル検査方法では、接続具に差動信号伝送ケーブルを接続するが、当該接続の際に接続具と差動信号伝送ケーブルとの間で接続不良が発生する場合があり、このような接続不良等に起因して、差動モード伝送損失やモード変換特性等の良否を正常に検査することができない場合があった。そのため、差動信号伝送ケーブルの接続不良等が生じていた場合、差動信号伝送ケーブルそのものが正常であっても、本来、良品である差動信号伝送ケーブルが、不良品であると判定されてしまうという場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、差動モード伝送損失やモード変換特性等の伝送特性の検査精度を容易に向上させることができるケーブル検査方法及び検査正否判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、ベクトルネットワークアナライザから得られたSパラメータに基づいて、一対の信号線を有する差動信号伝送ケーブルを検査するケーブル検査方法であって、前記差動信号伝送ケーブルの前記一対の信号線を接続する接続具、及び前記接続具と前記ベクトルネットワークアナライザの各接続ポートとを接続する接続ケーブルを介して、前記差動信号伝送ケーブルを前記ベクトルネットワークアナライザに接続する接続工程と、前記差動信号伝送ケーブルを前記ベクトルネットワークアナライザに接続した状態における、前記ベクトルネットワークアナライザの前記Sパラメータに基づいて、前記差動信号伝送ケーブルの伝送特性を検査する検査工程と、前記検査工程における検査の正否を判定する検査判定工程と、を含み、前記検査判定工程は、前記Sパラメータにおける、前記差動信号伝送ケーブルの一端部側に対応する一対の前記接続ポートでの反射特性の、位相の差を算出する第1位相差算出工程と、前記Sパラメータにおける、前記差動信号伝送ケーブルの他端部側に対応する一対の前記接続ポートでの反射特性の、位相の差を算出する第2位相差算出工程と、前記第1位相差算出工程及び前記第2位相差算出工程で算出した前記位相の差に基づいて、前記検査の正否を判定する判定工程と、を含む、ケーブル検査方法を提供する。
【0007】
また、本発明は、上記目的を達成するために、Sパラメータを計測するベクトルネットワークアナライザと、差動信号伝送ケーブルの一対の信号線を接続する接続具と、前記接続具と前記ベクトルネットワークアナライザの各接続ポートとを接続する接続ケーブルと、を備えたケーブル検査装置における、前記差動信号伝送ケーブルの伝送特性検査の正否を判定する検査正否判定方法であって、前記Sパラメータにおける、前記差動信号伝送ケーブルの一端部側に対応する一対の前記接続ポートでの反射特性の、位相の差を算出する第1位相差算出工程と、前記Sパラメータにおける、前記差動信号伝送ケーブルの他端部側に対応する一対の前記接続ポートでの反射特性の、位相の差を算出する第2位相差算出工程と、前記第1位相差算出工程及び前記第2位相差算出工程で算出した前記位相の差に基づいて、前記伝送特性検査の正否を判定する判定工程と、を含む、検査正否判定方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、差動モード伝送損失やモード変換特性等の伝送特性の検査精度を容易に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】差動信号伝送ケーブルの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
図2】ケーブル検査装置を示す概略図である。
図3】接続具を示す図であり、(a)は、接続具を示す平面図であり、(b)は、押え部材、締結ネジ、シールド導体保持部材及びクリップを省略した接続具を示す平面図である。
図4】ケーブル検査方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態]
以下、添付図面にしたがって、本発明の一実施形態に係るケーブル検査装置及びケーブル検査方法について説明する。まず、ケーブル検査装置及びケーブル検査方法の説明に先駆けて、ケーブル検査装置及びケーブル検査方法において検査対象となる差動信号伝送ケーブルについて説明する。
【0011】
(差動信号伝送ケーブル)
図1は、差動信号伝送ケーブル10の長手方向に垂直な断面を示す断面図である。図1に示すように、差動信号伝送ケーブル10は、差動信号を伝送する一対の信号線11a、11bと、一対の信号線11a、11bを一括して被覆する絶縁体12と、絶縁体12の外周に設けられたシールド導体13と、シールド導体13の外周に設けられたシース14と、を有している。以下、一対の信号線11a、11bのうちの一方を「第1信号線11a」と呼称し、他方を「第2信号線11b」と呼称する。また、差動信号伝送ケーブル10及び各信号線11a、11bの長手方向における一方側の端部(一端部)を「先端」と呼称し、差動信号伝送ケーブル10及び各信号線11a、11bの長手方向における他方側の端部(他端部)を「元端」と呼称する。なお、図1に示す差動信号伝送ケーブル10はあくまで一例であり、検査対象となる差動信号伝送ケーブル10の具体的構造は図示のものに限定されない。
【0012】
(ケーブル検査装置)
図2は、ケーブル検査装置20を示す概略図である。図2に示すように、ケーブル検査装置20は、ベクトルネットワークアナライザ21と、差動信号伝送ケーブル10の先端及び元端をそれぞれ接続する2つの接続具22と、ベクトルネットワークアナライザ21と各接続具22とを接続する4本の接続ケーブル23と、を備えている。すなわち、差動信号伝送ケーブル10は、各接続具22及び各接続ケーブル23を介して、ベクトルネットワークアナライザ21に接続される。
【0013】
ベクトルネットワークアナライザ21は、各接続具22及び各接続ケーブル23を介して接続された差動信号伝送ケーブル10のSパラメータ(Scattering parameters)を計測する計測器であり、差動信号伝送ケーブル10が利用される周波数範囲のSパラメータを計測する。また、ベクトルネットワークアナライザ21は、Sパラメータにおける各パラメータとして、位相(入力信号に対する位相差)及び振幅を計測することができるようになっている。なお、ベクトルネットワークアナライザ21で計測される位相及び振幅は、対応する接続ポート21a、21b、21c、21dから出力され,各接続具22及び各接続ケーブル23を介して接続された差動信号伝送ケーブル10を伝搬した全ての出力波を合成した合成波の位相及び振幅であり、特に反射特性(S11、S22、S33、S44)の位相及び振幅は、差動信号伝送ケーブル10及び差動信号伝送ケーブル10を接続ポート21a、21b、21c、21dに接続するまでの接続経路の各位置から反射する全ての反射波を合成した合成波の位相及び振幅である。
【0014】
また、ベクトルネットワークアナライザ21は、ねじ込み接続式の4つの接続ポート21a、21b、21c、21dを有している。4つの接続ポート21a、21b、21c、21dは、接続具22及び接続ケーブル23を介して第1信号線11aの先端に接続される第1接続ポート21aと、接続具22及び接続ケーブル23を介して、第2信号線11bの先端に接続される第2接続ポート21bと、接続具22及び接続ケーブル23を介して、第1信号線11aの元端に接続される第3接続ポート21cと、接続具22及び接続ケーブル23を介して、第2信号線11bの元端に接続される第4接続ポート21dと、とから成る。ベクトルネットワークアナライザ21では、各接続ポート21a、21b、21c、21dから、差動信号伝送ケーブル10が利用される周波数範囲の信号(電圧)を入力し、各接続ポート21a、21b、21c、21dから得られる信号(電圧)を検出ことで、差動信号伝送ケーブル10が利用される周波数範囲における、各接続ポート21a、21b、21c、21dに対するSパラメータを計測する。なお、本ベクトルネットワークアナライザ21では、差動信号伝送ケーブル10のみならず、差動信号伝送ケーブル10の各信号線11a、11bをベクトルネットワークアナライザ21の各接続ポート21a、21b、21c、21dに接続するまでの接続経路、すなわち、信号線11a、11a及び接続具22間の接続部分、接続具22、接続具22及び接続ケーブル23間の接続部分、接続ケーブル23、接続ケーブル23及び接続ポート21a、21b、21c、21d間の接続部分も含めて、Sパラメータが計測される。
【0015】
また、本ベクトルネットワークアナライザ21では、計測したSパラメータから、差動信号伝送ケーブル10の差動モード伝送損失及びモード変換特性等の伝送特性を演算する機能を有している。差動モード伝送損失とは、差動モードで信号を入力したときに、信号が損失する程度を示すものである。モード変換特性とは、差動モードで信号を入力したときに、出力される信号が差動モードから同相モードに変換される程度を示すものである。詳細は後述するが、本実施形態のケーブル検査方法では、この差動モード伝送損失やモード変換特性等の伝送特性を検査して、差動信号伝送ケーブル10の良否を検査する。
【0016】
各接続ケーブル23は、コネクタ23a付の同軸ケーブルで構成されており、各接続ケーブル23の長手方向両端には、ねじ込み接続式のコネクタ23aが取り付けられている。各接続ケーブル23の一方のコネクタ23aがベクトルネットワークアナライザ21の接続ポート21a、21b、21c、21dにねじ込み接続され、他方のコネクタ23aが接続具22のコネクタ34(後述する)にねじ込み接続されることで、接続ケーブル23によって、ベクトルネットワークアナライザ21の接続ポート21a、21b、21c、21dと、2つの接続具22の各コネクタ34と、がそれぞれ接続される。
【0017】
2つの接続具22は、一方に、差動信号伝送ケーブル10の先端が接続され、他方に、差動信号伝送ケーブル10の元端が接続される。すなわち、差動信号伝送ケーブル10の先端が、一方の接続具22及び接続ケーブル23を介して、ベクトルネットワークアナライザ21に接続され、差動信号伝送ケーブル10の元端が、他方の接続具22及び接続ケーブル23を介して、ベクトルネットワークアナライザ21に接続されている。
【0018】
図3は、接続具22を示す図であり、(a)は、接続具22を示す平面図であり、(b)は、押え部材41、締結ネジ42、シールド導体保持部材51及びクリップ52を省略した接続具22を示す平面図である。
【0019】
図3に示すように、各接続具22は、基板31と、基板31の表面に形成され、差動信号伝送ケーブル10の一対の信号線11a、11bがそれぞれ接続される2つの信号線パッド32と、基板31の表裏面に形成され、差動信号伝送ケーブル10のシールド導体13が接続されるグランドパッド33と、基板31に固定され、接続ケーブル23が接続される2つのねじ込み接続式のコネクタ34と、基板31上に形成され、各信号線パッド32と各コネクタ34と接続する2本のトレース35と、を備えている。差動信号伝送ケーブル10の端部(先端又は元端)を、各信号線11a、11bの露出部分と、シールド導体13の露出部分ができるように加工し、シールド導体13の露出部分を、基板31に形成された切欠き部31aに配置することで、各信号線11a、11bの露出部分が各信号線パッド32に接触し、各信号線11a、11bの端部(先端又は元端)と信号線パッド32とが接続される。
【0020】
差動信号伝送ケーブル10における各信号線11a、11bの先端が、一方の接続具22の各信号線パッド32に接続されると、第1信号線11aの先側が、一方の接続具22における信号線パッド32、トレース35及びコネクタ34、並びに接続ケーブル23を介して、ベクトルネットワークアナライザ21の第1接続ポート21aに接続される。一方、第2信号線11bの先側が、一方の接続具22における信号線パッド32、トレース35及びコネクタ34、並びに接続ケーブル23を介して、ベクトルネットワークアナライザ21の第2接続ポート21bに接続される。
【0021】
また、差動信号伝送ケーブル10における各信号線11a、11bの元側が、他方の接続具22の各信号線パッド32に接続されると、第1信号線11aの元側が、他方の接続具22における信号線パッド32、トレース35及びコネクタ34、並びに接続ケーブル23を介して、ベクトルネットワークアナライザ21の第3接続ポート21cに接続される。一方、第2信号線11bの元側が、他方の接続具22における信号線パッド32、トレース35及びコネクタ34、並びに接続ケーブル23を介して、ベクトルネットワークアナライザ21の第4接続ポート21dに接続される。
【0022】
また、各接続具22は、基板31の表面側に配設され、各信号線11a、11bを各信号線パッド32に押し付ける押え部材41と、押え部材41を締結する2本の締結ネジ42と、基板31の裏面側に配置され、2本の締結ネジ42が螺合する固定部材(図示省略)と、を備えている。2本の締結ネジ42が、押え部材41及び基板31の通し孔を介して、固定部材に螺合することで、押え部材41及び固定部材によって、基板31と各信号線11a、11bとが挟み込まれ、各信号線11a、11bが信号線パッド32に押し付けられる。
【0023】
さらに、各接続具22は、基板31の表面側及び裏面側にそれぞれ配設されると共に、切欠き部31aに配置されたシールド導体13を挟み込む一対のシールド導体保持部材51と、一対のシールド導体保持部材51を基板31と共に挟み込み、一対のシールド導体保持部材51を基板31に固定する左右2つのクリップ52と、を備えている。シールド導体保持部材51のシールド導体13側の面には導電性の金属箔が形成されており、当該金属箔が、シールド導体13及びグランドパッド33に接触することで、当該金属箔を介して、シールド導体13がグランドパッド33に接続される。
【0024】
以上のような接続具22への差動信号伝送ケーブル10の取付けでは、まず、差動信号伝送ケーブル10を所定の長さに切断して長さを調整した後、差動信号伝送ケーブル10の端部(先端又は元端)を、各信号線11a、11bの露出部分と、シールド導体13の露出部分とができるように加工する。その後、シールド導体13の露出部分を基板31の切欠き部31aに配置して、各信号線11a、11bの露出部分を各信号線パッド32上に位置させる。その後、基板31を挟み込む形で、締結ネジ42によって押え部材41と固定部材とを締結し、各信号線11a、11bを各信号線パッドに押え付けた状態にする。その後、基板31を挟み込む形で、クリップ52によって、一対のシールド導体保持部材51を基板31に固定する。これによって、差動信号伝送ケーブル10の各信号線11a、11bが各信号線パッド32に接続され、差動信号伝送ケーブル10のシールド導体13がグランドパッド33に接続される。
【0025】
(ケーブル検査方法)
次に図4を参照し、本実施形態でのケーブル検査方法として、10MHz以上20GHz以下の伝送周波数範囲の用途で利用される差動信号伝送ケーブル10を検査するケーブル検査方法について説明する。本ケーブル検査方法では、ケーブル検査装置20を用い、ベクトルネットワークアナライザ21から得られたSパラメータに基づいて、差動信号伝送ケーブル10を検査する。また、本ケーブル検査方法では、差動信号伝送ケーブル10の差動モード伝送損失やモード変換特性等の伝送特性を検査して、差動信号伝送ケーブル10が良品であるか、不良品であるかを検査する。
【0026】
図4に示すように、ケーブル検査方法では、まず、接続具22及び接続ケーブル23を介して、差動信号伝送ケーブル10をベクトルネットワークアナライザ21に接続する(S1)(接続工程)。具体的には、まず、4本の接続ケーブル23の一端を2つの接続具22の各コネクタ34にそれぞれ接続し、他端を対応する接続ポート21a、21b、21c、21dに接続する。その後、各接続具22に、差動信号伝送ケーブル10の先端及び元端を取り付ける。これによって、差動信号伝送ケーブル10における各信号線11a、11bの先端及び元端が、接続具22及び接続ケーブル23を介して、ベクトルネットワークアナライザ21の各接続ポート21a、21b、21c、21dに接続される。
【0027】
差動信号伝送ケーブル10をベクトルネットワークアナライザ21に接続した後、ベクトルネットワークアナライザ21のSパラメータに基づいて、差動信号伝送ケーブル10の差動モード伝送損失及びモード変換特性等の伝送特性を検査する(S2~S4)(検査工程)。検査工程S2~S4では、まず、ベクトルネットワークアナライザ21によって、差動信号伝送ケーブル10を接続した状態の、10MHz以上20GHz以下の各周波数におけるSパラメータを計測する(S2)。本実施形態では、10MHz以上20GHz以下の10MHz刻みでSパラメータを計測して、2000周波数分のSパラメータを計測した。
【0028】
2000周波数分のSパラメータを計測した後、ベクトルネットワークアナライザ21により、2000周波数分のSパラメータに基づいて、各周波数での差動モード伝送損失及びモード変換特性等を演算する(S3)。その後、演算した差動モード伝送損失及びモード変換特性等に基づいて、差動信号伝送ケーブル10が良品であるか、不良品であるかを判定する(S4)。判定の結果、差動信号伝送ケーブル10が良品であると判定された場合(S4:A)には、本ケーブル検査を終了する。なお、差動モード伝送損失及びモード変換特性等に基づく差動信号伝送ケーブル10の良否判定は、例えば、差動モード伝送損失及びモード変換特性等の演算値(測定値)が、所定の閾値以上であるか否かに基づいて、差動信号伝送ケーブル10が良品であるか、不良品であるかを判定する。
【0029】
一方、判定の結果、差動信号伝送ケーブル10が不良品であると判定された場合(S4:No)には、検査工程S2~S4における伝送特性検査の正否を判定する(S5~S8)(検査判定工程)(検査正否判定方法)。検査判定工程S5~S8では、まず、S2で計測したSパラメータを参照して、計測周波数範囲での最も高い周波数帯(19GHz以上20GHz以下)のSパラメータにおける、差動信号伝送ケーブル10の一端部側に対応する一対の接続ポート(第1及び第2接続ポート21a、21b、並びに第3及び第4接続ポート21c、21d)での反射特性の、位相の差を算出する。すなわち、19GHz以上20GHz以下の10MHz刻みの複数の周波数(100周波数分)におけるSパラメータの、第1接続ポート21aでの反射特性(S11)の位相と、第2接続ポート21bでの反射特性(S22)の位相との差を算出する(S5)と共に、第3接続ポート21cでの反射特性(S33)の位相と、第4接続ポート21dでの反射特性(S44)の位相との差を算出する(S6)(位相差算出工程)。
【0030】
Sパラメータにおける反射特性の位相は、上記したように、接続経路及び差動信号伝送ケーブル10の各位置からの反射波を合成した合成波の位相であるが、対象の接続ポート21a、21b、21c、21d側に位置する、接続ケーブル23と接続具22との接続部分や接続具22と差動信号伝送ケーブル10との接続部分からの反射波は、他の部分より強い反射波となるため、反射特性の位相が、接続ポート21a、21b、21c、21dから差動信号伝送ケーブル10までの接続経路の電気長の指標となる。そして、2つの接続ポート21a、21b、21c、21dでの反射特性の位相の差が、2つの接続ポート21a、21b、21c、21dの当該電気長の差の指標となり、接続不良、ひいては検査異常の指標となる。また、計測周波数範囲での最も高い周波数帯(19GHz以上20GHz以下)の反射特性の位相では、上記2つの接続部分からの反射波が強調されるので、計測周波数範囲での最も高い周波数帯における位相の差を利用することで、上記2つの接続部分の不良に起因する検査異常の指標としての効力が向上される。なお、19GHz以上20GHz以下の範囲における19GHzとの値は、差動信号伝送ケーブル10が利用される周波数範囲の最大周波数をfmaxとしたときのfmax×0.95の値であり、上記2つの接続部分の反射波が強く強調される境界値である。周波数を19GHz以上にすることで、検査異常の指標としての効力を向上させることができる。また、19GHz以上20GHz以下の範囲における20GHzとの値は、差動信号伝送ケーブル10が利用される周波数範囲の最大周波数fmaxの値である。
【0031】
各位相差を算出したら、各位相差に基づいて、伝送特性検査の正否を判定する(S7、S8)(判定工程)。判定工程S7、S8では、まず、算出した各位相差を、各接続ポート21a、21b、21c、21dへの反射波の到達時間の差にそれぞれ変換する(S7)。具体的には、上記複数の周波数における、第1接続ポート21a及び第2接続ポート21bでの反射特性の位相差を、第1接続ポート21aへの反射波の到達時間と第2接続ポート21bへの反射波の到達時間との差にそれぞれ変換すると共に、上記複数の周波数における、第3接続ポート21c及び第4接続ポート21dでの反射特性の位相差を、第3接続ポート21cへの反射波の到達時間と第4接続ポート21dへの反射波の到達時間との差にそれぞれ変換する。位相差をp[°]とし、周波数をf[Hz]とした場合、p/(360×f)[s(秒)]が、各接続ポート21a、21b、21c、21dへの反射波の到達時間の差である。よって、当該式に基づいて、位相差を各接続ポート21a、21b、21c、21dへの反射波の到達時間の差に変換する。例えば、周波数が20GHzであり、位相差が6°である場合、6/(360×2×1010)[s]=0.8333…×1012[s]=0.8333…[ps(ピコ秒)]が、接続ポート21a、21b、21c、21dへの反射波の到達時間の差である。
【0032】
到達時間差を算出したら、算出した到達時間差の平均値が1ps(所定の閾値)以上であるか否かに基づいて、検査工程S2~S4における伝送特性検査の正否を判定する(S8)。具体的には、第1接続ポート21a及び第2接続ポート21bへの反射波の到達時間の差について、複数の周波数における算出値の平均値を算出し、第3接続ポート21c及び第4接続ポート21dへの反射波の到達時間の差について、複数の周波数における算出値の平均値を算出する。そして、算出した両平均値がいずれも1ps以上でない場合(S8:No)には、検査工程S2~S4における伝送特性検査が正常であったと判定し、本ケーブル検査を終了する。
【0033】
一方、算出した両平均値の少なくとも一方が1ps以上である場合(S8:Yes)には、検査工程S2~S4における伝送特性検査が異常であったと判定する。そして、S1に戻り、差動信号伝送ケーブル10の接続をやり直して、再度、検査工程S2~S4を行う。そして、差動信号伝送ケーブル10が良品であると判定される(S4:A)か、伝送特性検査が正常であったと判定される(S8:No)まで、一連の工程(S1~S8)を繰返し実行する。
【0034】
(実施形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施形態に係るケーブル検査方法では、伝送特性検査の正否を判定する検査判定工程S5~S8を実行し、検査判定工程S5~S8において、Sパラメータにおける、第1及び第2接続ポート21a、21bでの反射特性の、位相の差を算出する第1位相差算出工程S5と、上記周波数帯のSパラメータにおける、第3及び第4接続ポート21c、21dでの反射特性の、位相の差を算出する第2位相差算出工程S6と、第1位相差算出工程S5及び第2位相差算出工程S6で算出した位相の差に基づいて、伝送特性検査の正否を判定する判定工程S7~S8と、を実行する。
【0035】
このような構成にすることで、ベクトルネットワークアナライザ21を用いた差動モード伝送損失及びモード変換特性等の伝送特性検査の検査精度を容易に向上させることができる。詳細には、従来のケーブル検査方法では、差動信号伝送ケーブル10の接続不良、具体的には、差動信号伝送ケーブル10を接続具22に取り付けるときの接続不良や、接続ケーブル23を接続具22や接続ポート21a、21b、21c、21dにねじ込み接続するときの接続不良(ねじ込み量の不足や過多)に起因して、伝送特性検査の検査精度が低下するという問題があった。これは、これらの接続不良によって、各接続ポート21a、21b、21c、21dから各信号線11a、11bまでの接続経路の電気長に差が生じることが原因である。すなわち、第1接続ポート21aから第1信号線11aの先端までの接続経路と、第2接続ポート21bから第2信号線11bの先端までの接続経路とに電気長の差が生じること、及び、第3接続ポート21cから第1信号線11aの元端までの接続経路と、第4接続ポート21dから第2信号線11bの元端までの接続経路とに電気長の差が生じること、が原因である。各接続ポート21a、21b、21c、21dから各信号線11a、11bまでの接続経路の電気長に差が大きいと、その影響により、Sパラメータを正確に計測することが困難になり、伝送特性検査の検査精度が低下する。その結果、良品である差動信号伝送ケーブル10が、不良品であると判定されてしまうおそれがあり、差動信号伝送ケーブル10の歩留まりが低下してしまう。
【0036】
これに対し、本実施形態では、上記接続経路の電気長の差の指標となる、Sパラメータにおける反射特性の位相の差に基づいて、伝送特性検査の正否を判定することで、伝送特性検査の正否を容易に判定することができ、伝送特性検査の検査精度を向上させることができる。特に、ベクトルネットワークアナライザ21から得られたSパラメータに基づいて、伝送特性検査の正否判定を行うことができるので、伝送特性検査の正否判定を容易に行うことができ、ベクトルネットワークアナライザ21を用いた伝送特性検査の検査精度を容易に向上させることができる。
【0037】
また、「接続不良によって、上記接続経路の電気長の差が生じる」と記載したが、接続具22及び接続ケーブル23の特性不備や、ベクトルネットワークアナライザ21のキャリブレーション不備によっても、上記接続経路の電気長の差が生じる。そのため、Sパラメータにおける反射特性の位相差に基づいて、伝送特性検査の正否を判定することで、接続不良のみならず、接続具22及び接続ケーブル23の特性不備や、ベクトルネットワークアナライザ21のキャリブレーション不備による検査異常も判定することができる。
【0038】
なお、本発明は、伝送特性検査の精度低下が上記接続経路の電気長の差に起因して発生すること、及びSパラメータにおける反射特性の位相差が上記接続経路の電気長の差の指標となること、の知見を得てなされたものである。
【0039】
また、上記実施形態の構成によれば、19GHz以上20GHz以下(差動信号伝送ケーブル10が利用される周波数範囲の最大周波数fmaxの0.95倍以上fmax以下)の周波数帯における反射特性の位相の差を用いることで、伝送特性検査の正否判定を、より精度良く行うことができる。
【0040】
さらに、上記実施形態の構成によれば、反射特性の位相差を、各接続ポート21a、21b、21c、21dへの反射波の到達時間差に変換し、この到達時間差に基づいて、伝送特性検査の正否判定を行うことで、伝送特性検査の正否判定を、精度良く行うことができる。
【0041】
またさらに、上記実施形態の構成によれば、上記周波数帯における複数の周波数の上記到達時間差の平均値に基づいて、伝送特性検査の正否判定を行うことで、伝送特性検査の正否判定を、より精度良く行うことができる。
【0042】
また、上記実施形態の構成によれば、検査工程S2~S4で計測したSパラメータを用いて、伝送特性検査の正否判定を行う構成であるため、検査判定工程S5~S8に際し、再度、Sパラメータを計測する必要がなく、伝送特性検査の正否判定を、より容易に行うことができる。
【0043】
(変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記した実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【0044】
例えば、上記実施形態においては、差動信号伝送ケーブル10が良品であると判定された場合(S4:A)には、検査判定工程S5~S8を実施せず、差動信号伝送ケーブル10が不良品であると判定された場合(S4:B)のみ、検査判定工程S5~S8を実施する構成であったが、差動信号伝送ケーブル10が良品であると判定された場合(S4:A)にも、検査判定工程S5~S8を実施する構成であっても良い。
【0045】
また、上記実施形態においては、検査工程S2~S4の後に、検査判定工程S5~S8を実施する構成であったが、検査工程S2~S4の前に、検査判定工程S5~S8を実施する構成であっても良い。かかる場合、接続工程S1の後、検査判定工程S5~S8に先駆けて、ベクトルネットワークアナライザ21によって、Sパラメータの計測を行う必要がある。
【0046】
また、上記実施形態においては、検査工程S2~S4と共に、検査判定工程S5~S8を実施する構成であったが、検査工程S2~S4を行わずに、検査判定工程S5~S8のみを実施する構成であっても良い。
【0047】
また、上記実施形態においては、検査対象の差動信号伝送ケーブル10として、絶縁体12によって一対の信号線11a、11bを一括して被覆するものを例示したが、例えば、差動信号伝送ケーブル10が、絶縁体12に代えて発泡絶縁体で一対の信号線11a、11bを被覆する構成であっても良いし、差動信号伝送ケーブル10が、2つの絶縁体12で一対の信号線11a、11bを個々に被覆する構成であっても良い。
【0048】
また、上記実施形態においては、各接続ポート21a、21b、21c、21dへの反射波の到達時間の差について、複数の周波数における算出値の平均値を算出し、この平均値が、所定の閾値以上であるか否かに基づいて、伝送特性検査の判定を行う構成であったが、1の周波数における、各接続ポート21a、21b、21c、21dへの反射波の到達時間の差を算出し、1つの算出値に基づいて、伝送特性検査の判定を行う構成であっても良い。また、上記実施形態においては、反射特性の位相の差を、各接続ポート21a、21b、21c、21dへの反射波の到達時間の差に変換し、当該到達時間の差に基づいて、伝送特性検査の判定を行う構成であったが、反射特性の位相の差が、所定の閾値以上であるか否かに基づいて、伝送特性検査の判定を行う構成であっても良い。
【0049】
(実施形態のまとめ)
次に、以上説明した実施形態から把握される技術思想について、実施形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0050】
[1]ベクトルネットワークアナライザ(21)から得られたSパラメータに基づいて、一対の信号線(11a、11b)を有する差動信号伝送ケーブル(10)を検査するケーブル検査方法であって、前記差動信号伝送ケーブル(10)の前記一対の信号線(11a、11b)を接続する接続具(22)、及び前記接続具(22)と前記ベクトルネットワークアナライザ(21)の各接続ポート(21a、21b、21c、21d)とを接続する接続ケーブル(23)を介して、前記差動信号伝送ケーブル(10)を前記ベクトルネットワークアナライザ(21)に接続する接続工程(S1)と、前記差動信号伝送ケーブル(10)を前記ベクトルネットワークアナライザ(21)に接続した状態における、前記ベクトルネットワークアナライザ(21)の前記Sパラメータに基づいて、前記差動信号伝送ケーブル(10)の伝送特性を検査する検査工程(S2~S4)と、前記検査工程(S2~S4)における検査の正否を判定する検査判定工程(S5~S8)と、を含み、前記検査判定工程(S5~S8)は、前記Sパラメータにおける、前記差動信号伝送ケーブル(10)の一端部側に対応する一対の前記接続ポート(21a、21b)での反射特性の、位相の差を算出する第1位相差算出工程(S5)と、前記Sパラメータにおける、前記差動信号伝送ケーブル(10)の他端部側に対応する一対の前記接続ポート(21c、21d)での反射特性の、位相の差を算出する第2位相差算出工程(S6)と、前記第1位相差算出工程(S5)及び前記第2位相差算出工程(S6)で算出した前記位相の差に基づいて、前記検査の正否を判定する判定工程(S7、S8)と、を含む、ケーブル検査方法。
[2]前記第1位相差算出工程(S5)及び前記第2位相差算工程(S6)では、前記差動信号伝送ケーブルが利用される周波数範囲の最大周波数をfmaxとしたときのfmax×0.95以上fmax以下の周波数帯における前記位相の差を算出する、[1]に記載のケーブル検査方法。
[3]判定工程(S7、S8)では、第1位相差算出工程(S5)及び第2位相差算出工程(S6)で算出した前記位相の差を、前記各接続ポート(21a、21b、21c、21d)への反射波の到達時間の差に変換し、変換した前記到達時間の差と、所定の閾値とを比較することで、前記検査の正否を判定する、[1]又は[2]に記載のケーブル検査方法。
[4]前記第1位相差算出工程(S5)及び前記第2位相差算出工程(S6)では、所定の周波数帯における複数の周波数の前記位相の差を算出し、前記判定工程(S7、S8)では、前記複数の周波数の前記位相の差を、前記各接続ポート(21a、21b、21c、21d)への反射波の到達時間の差にそれぞれ変換し、変換した前記到達時間の差の平均値と、所定の閾値とを比較することで、前記検査の正否を判定する、[3]に記載のケーブル検査方法。
[5]Sパラメータを計測するベクトルネットワークアナライザ(21)と、差動信号伝送ケーブル(11)の一対の信号線(11a、11b)を接続する接続具(22)と、前記接続具(22)と前記ベクトルネットワークアナライザ(21)の各接続ポート(21a、21b、21c、21d)とを接続する接続ケーブル(23)と、を備えたケーブル検査装置(20)における、前記差動信号伝送ケーブル(10)の伝送特性検査の正否を判定する検査正否判定方法であって、前記Sパラメータにおける、前記差動信号伝送ケーブル(10)の一端部側に対応する一対の前記接続ポート(21a、21b)での反射特性の、位相の差を算出する第1位相差算出工程(S5)と、前記Sパラメータにおける、前記差動信号伝送ケーブル(10)の他端部側に対応する一対の前記接続ポート(21c、21d)での反射特性の、位相の差を算出する第2位相差算出工程(S6)と、前記第1位相差算出工程(S5)及び前記第2位相差算出工程(S6)で算出した前記位相の差に基づいて、前記伝送特性検査の正否を判定する判定工程(S7、S8)と、を含む、検査正否判定方法。
【符号の説明】
【0051】
10:差動信号伝送ケーブル、 11a:第1信号線、 11b:第2信号線、 20:ケーブル検査装置、 21:ベクトルネットワークアナライザ、 21a:第1接続ポート、 21b:第2接続ポート、 21c:第3接続ポート、 21d:第4接続ポート、 22:接続具、 23:接続ケーブル、 S1:接続工程、 S2~S4:検査工程、 S5~S8:検査判定工程、 S5:第1位相差算出工程、 S6:第2位相差算出工程、 S7、S8:判定工程
図1
図2
図3
図4