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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110808
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】カラー画像撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 9/07 20060101AFI20220722BHJP
   H04N 5/369 20110101ALI20220722BHJP
【FI】
H04N9/07 A
H04N5/369
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006443
(22)【出願日】2021-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098073
【弁理士】
【氏名又は名称】津久井 照保
(72)【発明者】
【氏名】堺 俊克
(72)【発明者】
【氏名】高木 友望
(72)【発明者】
【氏名】今村 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘人
(72)【発明者】
【氏名】相原 聡
【テーマコード(参考)】
5C024
5C065
【Fターム(参考)】
5C024CX41
5C024EX42
5C024EX52
5C024EX56
5C024GX07
5C065BB30
5C065CC01
5C065DD17
5C065EE05
5C065EE09
(57)【要約】
【課題】 カラーフィルタを配設した表面側、配設しない裏面側の両面から光入射を許容するように設定された撮像素子を備え、簡易な構成で感度を良好とし得るように、これら両面からの入射光の分配率を制御する。
【解決手段】 透明基板46上に、透明画素電極45と信号読出し回路48、光電変換部44、透明共通電極43、カラーフィルタ42を、この順に積層された撮像素子40、撮像素子40からの画素信号値を判定する画素信号値判定部(制御部30内)、この画素信号値情報に基づき、撮像素子40のカラーフィルタ42が配された表面側、配されていない裏面側への、入射光量の適切な光量分配率を決定する光量分配率決定部(制御部30内)、この光量分配率決定部からの光量分配率切替情報に基づき、表面側、裏面側への各光路の光量分配率を切り替える光量分配率切替部20とを備えてなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に、透明な画素電極と信号読出し回路、光電変換部、透明な共通電極、およびカラーフィルタを、この順に積層され、上下両面からの光入射を許容する撮像素子、
該撮像素子から出力された画素信号の値を判定する画素信号値判定部、
該画素信号値判定部からの画素信号値判定情報に基づき、該撮像素子の前記カラーフィルタが配された表面側および前記カラーフィルタが配されていない裏面側への、光入射光量の適切な分配率を決定する光量分配率決定部、
該光量分配率決定部からの光量分配率切替情報に基づき、前記表面側への光と前記裏面側への光の光量分配率を切り替える光量分配率切替部、
を備えたことを特徴とするカラー画像撮像装置。
【請求項2】
前記光量分配率切替部が、前記光量分配率切替情報に基づき、前記光量分配率が互いに異なる複数個のミラーを択一的に光路中に挿入可能とされたミラー群であることを特徴とする請求項1に記載のカラー画像撮像装置。
【請求項3】
前記光量分配率切替部が、前記光量分配率切替情報に基づき、前記光量分配率を変更し得る反射率可変ミラーであることを特徴とする請求項1に記載のカラー画像撮像装置。
【請求項4】
前記光量分配率決定部は、入力された前記画素信号値判定情報に基づき、前記適切な分配率を出力する光量分配率出力テーブルを備えていることを特徴とする請求項1~3のうちいずれか1項に記載のカラー画像撮像装置。
【請求項5】
前記画素信号値判定部で判定された画素信号値、前記光量分配率決定部により決定された前記裏面側への光量分配率および予め設定された所定の係数に基づいて、前記画素信号値から白色成分に係る信号値を減算する信号処理部を備えたことを特徴とする請求項1~4のうちいずれか1項に記載のカラー画像撮像装置。
【請求項6】
前記カラーフィルタを画素毎に赤色、緑色、青色および白色の4種で構成し、該白色の画素信号値に前記裏面側への光量分配率を乗算し、この乗算結果に基づき、該画素毎の白色光成分を求めることを特徴とする請求項1~5のうちいずれか1項に記載のカラー画像撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表裏両方向からの光を同時に光電変換する画像撮像素子を備えたカラー画像撮像装置に関し、詳しくは、画像撮像素子の一方側(表面側)にカラーフィルタを備えたカラー画像撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体基板の表面部には光電変換部を設けず、信号読出回路と画素回路を設け、これら信号読出回路と画素回路上に光電変換層、さらには共通電極を順次積層した光電変換部積層型の撮像素子が知られている。このような光電変換部積層型の固体撮像素子は、高品質、高S/Nの撮像画像信号を取得し得ることが知られている。
ところで、このような積層型の固体撮像素子をカラー撮像に対応させるためには、下記特許文献1に示すように、光入射側にカラーフィルタを設けるか、下記特許文献2に示すように、赤色・青色・緑色の3色光の各々に感度を有する積層型光電変換部を順次重畳させることが知られている。
【0003】
しかしながら、下記特許文献1に記載のカラーフィルタを用いた方式では、フィルタに光吸収作用があって光透過率が低いため、光の利用効率が悪いという問題があった。
一方、下記特許文献2に記載の多層積層構造とした方式では、カラーフィルタを使用していない分、光の利用効率が高いが、下記特許文献2に記載されているように、積層型光電変換部を複数重畳させるための製造技術が必要とされる上、製造工程が複雑となり、製造コストも高くなるという問題があった。
【0004】
構成簡易なカラーフィルタを用いつつ、光の利用効率を高め得る撮像素子として、下記特許文献3に記載された技術を用いることが考えられる。すなわち、この技術は、透明基板上に光電変換領域を備え、この光電変換領域の表裏両側をいずれも光透過領域とし、表裏両方向から入射した被写体からの光を同時に光電変換して、得られる被写体の画像信号を増大させたものであり、映画館内等、暗い場所で、被写体をなるべく明るく撮影するためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-228621号公報
【特許文献2】特開2015-95517号公報
【特許文献3】特開2010-251496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、上記特許文献3に記載の撮像素子は、表裏両方向から入射した被写体からの光を同時に光電変換して被写体の画素信号を増大させているが、この撮像素子に入射した光のうち、カラーフィルタを配設した表面側から入射させる光と、カラーフィルタを配設されていない裏面側から入射させる光の光量割合については何ら記載も示唆もされていない。
しかしながら、カラーフィルタは、前述したように光を吸収する性質を有するので、表面側からの光入射は裏面側からの光入射に比して光利用効率が低下する。その一方、カラー画像を得るためには、カラーフィルタを通過する表面側からの光入射が必要となる。
したがって、表面側からの光入射と裏面側からの光入射の光量分配率について種々考察した上で、その考察結果に基づく具体的な装置としての構成を取り入れなければ、表裏両面からの光入射を許容するタイプの撮像素子を用いたカラー画像撮像装置において感度を適切に向上させることは難しい。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたもので、カラーフィルタを配設した表面側およびカラーフィルタを配設しない裏面側の両面から光入射を許容するように設定された撮像素子を備え、簡易な構成で感度を良好とし得るように、これら両面からの入射光の分配率を制御可能とされたカラー画像撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するため、本発明のカラー画像撮像装置は以下のような構成とされている。
すなわち、本発明のカラー画像撮像装置は、
透明基板上に、透明な画素電極と信号読出し回路、光電変換部、透明な共通電極、およびカラーフィルタを、この順に積層され、上下両面からの光入射を許容する撮像素子、
該撮像素子から出力された画素信号の値を判定する画素信号値判定部、
該画素信号値判定部からの画素信号値判定情報に基づき、該撮像素子の前記カラーフィルタが配された表面側および前記カラーフィルタが配されていない裏面側への、光入射光量の適切な分配率を決定する光量分配率決定部、
該光量分配率決定部からの光量分配率切替情報に基づき、前記表面側への光と前記裏面側への光の光量分配率を切り替える光量分配率切替部、
を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
また、前記光量分配率切替部が、前記光量分配率切替情報に基づき、前記光量分配率が互いに異なる複数個のミラーを択一的に光路中に挿入可能とされたミラー群とすることが可能である。
ここで、上記「ミラー」には、ハーフミラーと全反射ミラーの両方が含まれる。
また、前記光量分配率切替部が、前記光量分配率切替情報に基づき、前記光量分配率を変更し得る反射率可変ミラーとすることも可能である。
【0010】
また、前記光量分配率決定部は、入力された前記画素信号値判定情報に基づき、前記適切な分配率を出力する光量分配率出力テーブルを備えていることが好ましい。
また、前記画素信号値判定部で判定された画素信号値、前記光量分配率決定部により決定された前記裏面側への光量分配率および予め設定された所定の係数に基づいて、前記画素信号値から白色成分に係る信号値を減算する信号処理部を備えたことものとすることができる。
さらに、前記カラーフィルタを画素毎に赤色、緑色、青色および白色の4種で構成し、該白色の画素信号値に前記裏面側への光量分配率を乗算し、この乗算結果に基づき、該画素毎の白色光成分を求めるように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカラー画像撮像装置によれば、撮像素子から出力された画素信号の値に基づき、撮像素子のカラーフィルタが配された表面側およびカラーフィルタが配されていない裏面側に、上記入射光量を分配する適切な光量分配率を決定し、この光量分配率に係る情報に基づいて、表面側への光路と、裏面側への光路の光量分配率を切り替え得る構成とされており、両面各々から入射する光の適切な割合を自動で調整することができ、簡易な構成で感度を良好とすることが可能となる。
したがって、本発明のカラー画像撮像装置によれば、簡易な装置構成でカラー画像のS/N比を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るカラー画像撮像装置を概念的に示す図である。
図2図1に示す制御部の具体的な構成を示すブロック図である。
図3図2に示す光量分配率決定部に収納される、光量分配率切替情報変換テーブルの一例を示す概念図である。
図4図1に示す光量分配率切替部の一態様を示す概略図である。
図5図1に示す光量分配率切替部の別の態様を示す概略図である。
図6】本実施形態に係るカラー画像撮像装置において、裏面側からの入射光(白色光)の変化に伴う信号処理を説明するための一例を示す概念的なグラフである((a)、(b)、(c)共に)。
図7】本実施形態に係るカラー画像撮像装置において、裏面側からの入射光(白色光)の変化に伴う検出可能光量の下限値の変化を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るカラー画像撮像装置について図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係るカラー画像撮像装置の概略を示すものであり、撮像素子40と、被写体(図示せず)からの光を入射光として撮像素子40に入射させるレンズ10と、この入射光を撮像素子40の表面側と裏面側に、所定の分配率で分配する光量分配率切替部20と、表面側と裏面側に分配された光により撮像素子40で発生した画素信号を入力され、この画素信号の値に基づいて、光量分配率切替部20における光量分配率の切替制御を行う制御部30を備えている。
【0014】
撮像素子40は、透明基板(ガラス、プラスチック等の可視光に対し透明な基板)46上に、画素47毎に、透明画素電極(下部電極)45と信号読出し回路48、光電変換部44、透明共通電極(上部電極)43、およびカラーフィルタ42を、この順に積層されてなる。
この撮像素子40は、表面側からはカラーフィルタ(赤色フィルタ41A、緑色フィルタ41B、青色フィルタ(図示せず)の他、白色フィルタ(図示せず)も含む)42および透明共通電極43を通してRGBの3色光および白色光(W)が、一方、裏面側からは透明基板46および透明共通電極43を通して白色光が、各々光電変換部44に入射され、表裏面から入射した光が、いずれもこの光電変換部44において光電変換され、合算された画素信号が信号読出し回路48から制御部30に出力されるようになっている。
【0015】
また、本実施形態においては、光量分配率切替部20で、撮像素子40の表面側に分配された表面側入射光21Aをカラーフィルタ41方向に偏向させる光偏向部材22A、および撮像素子40の裏面側に分配された裏面側入射光21Bを透明基板46方向に偏向させる光偏向部材22Bが設けられている。
【0016】
信号読出し回路48の形成材料としては、光を透過する半導体材料が望ましく、例えばIGZO等の酸化物半導体や有機半導体が用いられる。その他の信号読出し回路48の形成材料としては、例えば特開2015-95517号公報に記載されているように、数十nm程度の厚みの薄膜状のSiを回路部のみに配したSOI基板を、回路部を含めて研削し、これを透明基板46上に転写することによって実現することも可能である。
前記信号読出し回路48は、各画素毎に、ITO等の透明導電膜からなる透明画素電極45に隣接するように配置されており、光電変換部44からの画素信号は透明画素電極45を介して信号読出し回路48により読み出される。
【0017】
上記光電変換部44の形成材料としては、可視光を電気信号に変換し得る材料であればよく、例えば有機半導体薄膜やSi、Seなどの無機半導体薄膜、有機無機ハイブリッドペロブスカイト薄膜、無機ナノ粒子等を用いることができる。
なお、撮像素子40に入射した可視光を効率良く電気信号に変換するために、可視光の波長域全域に亘って、高い光吸収率と量子効率を有する材料を用いることが望ましい。
【0018】
また、上記光電変換部44の上部には、全画素に対して同一の電圧を印加するための透明共通電極43が設けられ、さらにその上部にカラーフィルタ42が配される。このカラーフィルタ42は従来から撮像素子に用いられているものでよく、例えば、赤(R)・緑(G)・青(B)の色光を各々透過する有機顔料を付して形成することができ、さらに、いずれの有機顔料も付さない白(W)の光を透過するフィルタ(本実施形態の説明においては、この白色光を通過させる透孔部もカラーフィルタとして扱うものとする)を加えてRGBWの4種のカラーフィルタがモザイク状に配列したものとすることができる。なお、RGBの3種のカラーフィルタをベイヤー配列状等のモザイク状に配列することも可能である。
【0019】
この撮像素子40の各画素47についての信号読出し回路48の電極端子部は、図2に示す制御部30内の駆動回路31と接続されており、信号読出し回路48で読み出された画素信号は駆動回路31に入力される。なお、上記駆動回路31は、信号読出し回路48と一体に形成されていても良いし、信号読出し回路48とは別体とされたICチップ等で構成するようにしてもよい。
また、駆動回路31は、信号読出し回路48における各画素47の読出しのタイミングを指定し、指定されたタイミングで各画素47からの画素信号を取得する。取得された画素信号は、制御部30内の信号処理回路32で画像信号とされ、撮像素子40の外部に出力される。
【0020】
一方、信号読出し回路48において読み出されたカラー画像の画素信号の値は、画素信号値判定部33により判定される。
また、画素信号値判定部33により判定された画素信号値情報に基づき、光量分配率決定部34において、撮像素子40のカラーフィルタ42が配された表面側およびカラーフィルタ42が配されていない裏面側への、入射光量の適切な光量分配率が決定される。
【0021】
この光量分配率決定部34には、例えば図3に示す光量分配率切替情報変換テーブルが格納されている。
図3に示す、光量分配率切替情報変換テーブルの内容は、説明のための一例を示すものである。すなわち、光量分配率決定部34に入力された画素信号値情報が所定のしきい値により、小さい方から、暗時雑音レベル、低信号レベル、中信号レベル、高信号レベルの4つの区分に分類され、それら各区分における、適切な光量分配率がこれら各区分に対応して示されている。
【0022】
すなわち、表面側の分配光量:裏面側の分配光量は各々、暗時雑音レベルの場合は10:90、低信号レベルの場合は50:50、中信号レベルの場合は80:20、高信号レベルの場合は100:0となるように設定されている。このように、撮像素子40への入射光量が小さい場合ほど裏面側の光量分配率が高く設定されるようになっている。これは、表面側に照射される光は、カラーフィルタ42により吸収されることから、信号に寄与する効率が低く、それに対して裏面側に照射される光は、カラーフィルタ42の影響を受けないことから、信号に寄与する効率が高いためである。
【0023】
上記光量分配率切替部20は、光量分配率決定部34から出力された光量分配率切替情報に基づき、撮像素子40の表面側と裏面側への光量分配率を切り替える。光量分配率を切り替える(そのままの状態に再設定される場合も含む)処理は、任意のタイミングで行うことが可能である。
【0024】
上記光量分配率切替部20としては、種々の態様のものが考えられるが、例えば、図4に示すように、透過率が互いに異なる複数の可動ハーフミラー(全反射ミラーを含む)20A~Dを光路上に択一的に挿脱する構成のものとすることができる。図4に示す状態では可動ハーフミラー20Cが光路中に挿入されており、これにより、入射光の光量を100とした場合に、上記表面側に分配される光出力1の光量は80となり、一方、上記裏面側に分配される光出力2の光量は20となる。この可動ハーフミラー20Cが選択されるのは、上述した中信号レベルの例示の場合である。
【0025】
同様に、光透過率が90%の可動ハーフミラー20Aが選択されるのは、上述した暗時雑音レベルの例示の場合であり、光透過率が50%の可動ハーフミラー20Bが選択されるのは、上述した低信号レベルの例示の場合であり、さらに全反射ミラー(透過率0%)20Dが選択されるのは、上述した高信号レベルの例示の場合である。
なお、各可動ハーフミラー(全反射ミラーを含む)20A~Dの各々には、光量分配率決定部34からの光量分配率切替情報に基づき、光路位置と光路からの退避位置との間を移動するアクチュエータが付設されている。
【0026】
また、上記光量分配率切替部20に替えて、図5に示すような、エレクトロクロミズムを利用した反射率制御手段(例えば、反射率可変ミラーフィルム素子)20Eを用いた光量分配率切替部20´とすることもできる。この反射率制御手段20Eは、反射率(透過率)制御回路により連続的に反射率(透過率)を調整することが可能であり(例えば特開2014-26262号公報を参照)、これにより、上記表面側に分配される光出力1の光量と、上記裏面側に分配される光出力2の光量の割合を連続的に変更することができる。
【0027】
ここで、前述した制御部30の光量分配率決定部34から出力された光量分配率切替情報に基づいてなされる、光量分配率切替部20の分配率切替処理についてさらに説明する。
例えば、図4に示すような光量分配率切替部20を用いた場合には、まず、初期状態として全入射光を表面側に導く。この場合に、全入射光による画素信号値が暗時雑音レベル付近と判定された場合、より多くの光を裏面側に分配して画素信号値を増大させるような制御がなされる。前述したように、撮像素子40の裏面側にはカラーフィルタが配されていないため、光量のロスがなくRGB各画素の信号レベルを増大させることが可能となるからである。
【0028】
上記制御は、まず、可動ハーフミラー20A~Dのうち最も小さい透過率のハーフミラー(図4では可動全反射ミラー20D)を光路上に移動させるように光路を制御する。
ここでの画素信号値とは、例えば全画素の平均値や、一定レベル以下の暗部の平均値、雑音レベル以上の画素の中で最も暗い画素の値など、そのアルゴリズムに応じて適宜設定することができる。
その際、透過率が最も小さい透過率のハーフミラーでは画素信号値のレベルが予め設定された第1のしきい値よりも小さい場合、次に透過率の大きな可動ハーフミラー(図4では可動ハーフミラー20C)に切り替えて、画素信号値のレベルが上記第1のしきい値よりも大きいか否かを判定する。このような切替動作を順次繰り返して、読み取られた画素信号値が予め決められた第1のしきい値を超えるか、最大の透過率に設定された可動ハーフミラー(図4では可動ハーフミラー20A)に切り替わるまで制御処理を行う。
【0029】
なお、最大の透過率のハーフミラーでも信号量が不十分である場合、カラー画像の取得を断念してモノクロ画像を取得することも可能である。すなわち、ほとんどの光が撮像素子40の裏面側から入射するような可動ハーフミラー(図4では示されていない)に切り替えてモノクロ画像を取得することも可能である。
上述した切替動作後に、入射光量が増加し、第1のしきい値よりも大きな値である第2のしきい値よりも大きい画素信号値が取得されていると判定された場合、その時に光路中に配されている可動ハーフミラーよりも透過率の低い可動ハーフミラーに、順次切り替えて裏面光量を減らすように制御することも可能である。
【0030】
次に、裏面側への入射光量の増減に伴い、カラー画像の色バランスが変化してしまう場合において、予め設定されたパラメーターを用いて白色成分を減算する等の信号の演算処理を施して良好なカラー画像を再生する手法について説明する。この信号の演算処理は信号処理回路32において行われる。
例えば、図6(a)に示すように、R、G、B各画素の真の画素信号値がノイズレベルより低く、カラー画像が再生できない場合には、上述したように裏面入射光量を増加させる光量分配率切替処理が行われる。このような処理が行われると、図6(b)に示すような、R、G、Bの真の画素信号値に白色光の信号値が加算され、各画素信号値の合計値は第1のしきい値として設定したノイズレベルよりも大きい値とされる。
その後、図6(c)に示すように、各画素信号値からノイズレベルを減算することで、真のR、G、Bの画素信号値(またはそれと相関のある値)を得、これにより良好なカラー画像を再生することが可能となる。
【0031】
なお、上述した第1のしきい値は必ずしもノイズレベルとしなくともよい。また、第1のしきい値よりも大きな値である第2のしきい値を任意に設定し、これらの2つのしきい値に基づいて画素信号値(光量)を判定し、光量分配率切替処理を制御する。これらの判定および処理は、静止画のみならず動画にも対応可能である。
【0032】
このように、通常のカラーフィルタを用いた撮像素子では暗時雑音レベル程度の光量となる暗所において、表面側からの入射光(表面照射光)の一部を、裏面側からの入射光(裏面照射光)に変えることによって、裏面照射光の割合を高めて画素信号値を増加させ、これによりレンズ10に入射する光量(撮像素子40に入射する光量)において検出可能な光量の下限値をより下げることが可能となる。
すなわち、図7に示すように、レンズ10に入射する光量では、実線のグラフで示されるように、検出可能光量の下限が高い値である場合にも、上記実施形態の制御を行うことで裏面照射光(白色光)を増加させ、画素信号値を増加させることで、太い点線のグラフにシフトさせ、検出可能光量の下限値を低下させることができる。
【0033】
さらに、上述した実施形態のように、表面のカラーフィルタをR、G、B、Wの4種類で構成することにより、下記のような作用効果を奏することができる。
すなわち、下式(1)により、裏面側入射光の白色光成分を算出できるため、白色光成分を画素毎に正確に推定、補正することが可能となり、色再現性およびS/N比の両者に優れたカラー画像を得ることが可能となる。
(W画素の画素信号値)×(制御部により決定された裏面側への光量分配率) (1)
【0034】
本発明のカラー画像撮像装置としては、上記実施形態のものに限られるものではなく、その他の種々の態様の変更が可能である。例えば、撮像素子の層構成としては、上記実施形態のものに限られるものではなく、その他の透明な層を上記層構成の間に挟むように構成することが可能である。
また、カラーフィルタの組合せとしても、RGBあるいはRGBW以外の組合わせ、例えばRGBの補色であるCMYの組合せ、さらにはR:G:Bの画素数割合を1:1:1ではなく1:2:1等とすることも可能である。
【0035】
また、表面側と裏面側に光を導くための光路の形状としては、上記実施形態のものに限られず、種々の光路形状とすることができる。
また、上記実施形態においては、光量分配率決定部において光量分配率切替情報を得るために、予め設定したテーブルを用いるようにしているが、所定の計算式をメモリに格納しておき、逐次その計算式を用い計算を行って、光量分配率切替情報を求めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 レンズ
20、20´ 光量分配率切替部
20A~D 可動ハーフミラー(可動全反射ミラーを含む)
20E 反射率制御手段
21A 表面側入射光
21B 裏面側入射光
22A、B 光偏向部材
30 制御部
31 駆動回路
32 信号処理回路
33 画素信号値判定部
34 光量分配率決定部
40 撮像素子
41A 赤色フィルタ
41B 緑色フィルタ
42 カラーフィルタ
43 透明共通電極(上部電極)
44 光電変換部
45 透明画素電極(下部電極)
46 透明基板
47 画素
48 信号読出し回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7