(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110816
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】フレーミング評価装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/232 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
H04N5/232 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006454
(22)【出願日】2021-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 敦志
(72)【発明者】
【氏名】洗井 淳
【テーマコード(参考)】
5C122
【Fターム(参考)】
5C122DA02
5C122EA42
5C122FA01
5C122FA18
5C122FE02
5C122FE05
5C122GD04
5C122GD06
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】基準カメラのフレーミング領域に対して、評価対象カメラのフレーミング領域がどのくらい合致できているのかを評価する。
【解決手段】フレーミング評価装置1は、ROI情報と第1カメラ情報とを用いて第1カメラのフレーミング領域の各頂点の座標値を算出するフレーミング領域決定部10と、第2カメラ情報を用いて第1カメラのフレーミング領域の各頂点を第2カメラの画像座標系における各頂点へ変換するフレーミング領域頂点演算部11と、第2カメラの画像座標系に射影された各頂点のうち最外角を構成する頂点を選択して連結することで射影領域を形成するフレーミング領域頂点選択部12と、射影領域の面積を算出する射影面積演算部14と、第2カメラの画像フレームと射影領域との重複面積を求めて射影面積および第2カメラのフレーム面積に対する重複面積の割合を表すフレーミング効率を算出するフレーミング効率演算部15と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
世界座標系で表された所定の関心領域の位置情報を示すROI情報と、前記関心領域を撮影する基準となる第1カメラのカメラパラメータと、を用いて、前記第1カメラのフレーミング領域の境界を決定するための各頂点の世界座標値を算出するフレーミング領域決定部と、
評価対象となる第2カメラのカメラパラメータを用いて世界座標系の所定位置を前記第2カメラの画像座標系に射影することによって、前記第1カメラのフレーミング領域の境界を決定するための各頂点の世界座標値を、前記第2カメラの画像座標系における各頂点の画像座標値へ変換するフレーミング領域頂点演算部と、
前記第2カメラの画像座標系に射影された各頂点のうち、最外角を構成する頂点を選択して前記最外角を構成する頂点を連結することで射影領域を形成するフレーミング領域頂点選択部と、
前記射影領域の面積である射影面積を算出する射影面積演算部と、
前記第2カメラの画像フレームと前記射影領域とが重複する重複領域の面積を求めて、前記射影面積および前記第2カメラの画像フレームの面積に対する前記重複領域の面積の割合を表すフレーミング効率を算出するフレーミング効率演算部と、を備えることを特徴とするフレーミング評価装置。
【請求項2】
前記射影領域の輪郭線と、前記第2カメラの画像フレームの輪郭線との交点が2つ以上存在するかどうかを判定する交点判定部を備え、
前記フレーミング効率演算部は、2つ以上の前記交点が存在する場合、前記フレーミング効率を算出することを特徴とする請求項1に記載のフレーミング評価装置。
【請求項3】
前記フレーミング効率演算部は、
前記射影面積に対する前記重複領域の面積の割合を示す面積包含率を算出し、前記第2カメラの画像フレームの面積に対する前記重複領域の面積の割合を示す面積占有率を算出し、前記面積包含率と前記面積占有率との積を前記フレーミング効率として算出すること特徴とする請求項1または請求項2に記載のフレーミング評価装置。
【請求項4】
前記関心領域は、世界座標系におけるZ=0の平面とZ=hの平面とに挟まれた範囲に定義され、
前記フレーミング領域決定部は、前記第1カメラの撮像素子の4隅をそれぞれ通る4つの視線ベクトルと、前記Z=0の平面および前記Z=hの平面との合計8つの交点を、前記フレーミング領域の各頂点として、各頂点の座標を算出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のフレーミング評価装置。
【請求項5】
前記フレーミング領域頂点選択部は、
Z=0およびZ=hのいずれか一方の平面における前記交点が前記第2カメラの画像座標系に射影された頂点を判定対象の頂点であるものとしたとき、
当該判定対象の頂点の座標が、他方の平面における4つの前記交点が前記第2カメラの画像座標系に射影された4つの頂点で囲まれた領域外であった場合、
当該判定対象の頂点が前記最外角の頂点であると判定する判定処理を、
Z=0およびZ=hの両方の平面の各交点に対して行うことで前記最外角を構成する頂点を決定することを特徴とする請求項4に記載のフレーミング評価装置。
【請求項6】
前記フレーミング効率演算部で算出された値が所定の閾値よりも大きいか否かを判別した判別結果を含む評価値を算出するフレーミング効率評価部と、
算出された前記評価値を表示装置に表示させるフレーミング効率表示部と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のフレーミング評価装置。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のフレーミング評価装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーミング評価装置に係り、特に、放送用のカメラのフレーミングを評価するフレーミング評価装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばサッカー等のスポーツ中継のテレビ放送においては、複数のカメラによって撮影対象シーンが撮影されている。例えば特許文献1には、サッカー等のスポーツ競技場における自由視点映像を生成し、生成した自由視点映像を配信するシステムが記載されている。このシステムでは、複数の撮像装置により、同一シーンを異なる視点から撮影した多視点映像を生成し、画像認識により、例えば現在のシーンがシュートシーンであるか等の情報を生成し、ゴールが映像中に入るようにカメラ注視点を設定してカメラワーク映像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、撮影対象シーンを複数のカメラによって撮影するときに、メインカメラのフレーミング領域と、サブカメラのフレーミング領域とがどの程度合致しているのか評価することができなかった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、基準となるカメラのフレーミング領域に対して、評価対象となるカメラのフレーミング領域がどのくらい合致できているのかを評価することができるフレーミング評価装置およびプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係るフレーミング評価装置は、世界座標系で表された所定の関心領域の位置情報を示すROI情報と、前記関心領域を撮影する基準となる第1カメラのカメラパラメータと、を用いて、前記第1カメラのフレーミング領域の境界を決定するための各頂点の世界座標値を算出するフレーミング領域決定部と、評価対象となる第2カメラのカメラパラメータを用いて世界座標系の所定位置を前記第2カメラの画像座標系に射影することによって、前記第1カメラのフレーミング領域の境界を決定するための各頂点の世界座標値を、前記第2カメラの画像座標系における各頂点の画像座標値へ変換するフレーミング領域頂点演算部と、前記第2カメラの画像座標系に射影された各頂点のうち、最外角を構成する頂点を選択して前記最外角を構成する頂点を連結することで射影領域を形成するフレーミング領域頂点選択部と、前記射影領域の面積である射影面積を算出する射影面積演算部と、前記第2カメラの画像フレームと前記射影領域とが重複する重複領域の面積を求めて、前記射影面積および前記第2カメラの画像フレームの面積に対する前記重複領域の面積の割合を表すフレーミング効率を算出するフレーミング効率演算部と、を備える構成とした。
なお、本発明は、コンピュータを、前記したフレーミング評価装置として機能させるためのプログラムで実現することもできる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、基準となる第1カメラのフレーミング領域に対して、評価対象となる第2カメラのフレーミング領域がどのくらい合致できているのかを評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るフレーミング評価装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図2】カメラの構成を模式的に示すブロック図であり、(a)は基準となる第1カメラ、(b)は評価対象となる第2カメラをそれぞれ示している。
【
図3】カメラ座標系の模式図であり、(a)は第1カメラのカメラ座標系、(b)は第2カメラのカメラ座標系をそれぞれ示している。
【
図4】ROIが設定されるサッカーフィールドの模式図であり、(a)は平面図、(b)は側面図をそれぞれ示している。
【
図5】
図4のサッカーフィールドに設定されたROIの一例を示す斜視図である。
【
図6】
図5のROIのフィールド地面への投影図である。
【
図7】射影の一例の説明図であって、(a)は第2カメラの画像フレーム上の画像座標系、(b)は視線ベクトルと高さ0の交点の射影、(c)は視線ベクトルと高さ0および高さhの交点の射影をそれぞれ示している。
【
図8】
図7(b)の最外角の頂点を繋げて得られる多角形を示す図である。
【
図9】
図8の多角形と画像フレームとの重複領域を示す図である。
【
図11】
図10の最外角の頂点を繋げて得られる多角形を示す図である。
【
図12】最外角の頂点を繋げて得られる多角形と画像フレームとの重複領域の他の例を示す図である。
【
図13】本発明の実施形態に係るフレーミング評価装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
まず、本実施形態に係るフレーミング評価装置1(
図1)に関連したカメラの一例を説明した後、フレーミング評価装置1の構成を説明する。
【0010】
[カメラ]
図2を参照し、基準(リファレンス)となるカメラと、評価対象となるカメラについて説明する。第1カメラ2は、フレーミング評価装置1で評価を実施する際の基準となるカメラである。第1カメラ2は、例えば遠隔操作可能に構成されるカメラである。
第1カメラ2は、
図2(a)に示すように、駆動機構21と、パン・チルトデータ検出センサ22と、レンズデータ検出センサ23と、を備えている。駆動機構21は、第1カメラ2のカメラレンズ等の本体を搭載する雲台などから構成されている。この駆動機構21によって、パン、チルト、ズーム及びフォーカスが制御されている。なお、ズーム及びフォーカスの制御は、第1カメラ2の内部機構によって行われ、この駆動機構21で包括しているものとして説明する。
【0011】
パン・チルトデータ検出センサ22は、第1カメラ2の姿勢を測定するためのセンサであり、第1カメラ2が固定されている雲台のパン角を検出するパン角センサと、第1カメラ2のチルト角を検出するチルト角センサと、を備えている。ここで、パン角センサ及びチルト角センサは、例えば、雲台に取り付けられたロータリエンコーダ、ポテンショメータ又はジャイロセンサによって構成できる。
【0012】
レンズデータ検出センサ23は、第1カメラ2の図示を省略したレンズの画角、焦点位置を測定するためのセンサであり、第1カメラ2のズーム量(画角)を検出するズームセンサと、第1カメラ2に内蔵されているレンズの焦点位置(フォーカス)を検出するフォーカスセンサとが含まれている。ここで、ズームセンサ及びフォーカスセンサは、ズームリング及びフォーカスリングの回転角をロータリエンコーダ、ポテンショメータで読みとる方式によって構成できる。この他、ズームセンサ及びフォーカスセンサは、第1カメラ2のレンズ摺動部に設置されるリニアセンサを用いることができる。
【0013】
第2カメラ3は、フレーミング評価装置1で評価を実施する際の評価対象となるカメラである。第2カメラ3は、例えば遠隔操作可能に構成されるカメラである。この第2カメラ3は、
図2(b)に示すように、駆動機構31と、パン・チルトデータ検出センサ32と、レンズデータ検出センサ33と、を備えている。これらの構成は、第1カメラ2の駆動機構21、パン・チルトデータ検出センサ22およびレンズデータ検出センサ23と同様なので、説明を省略する。
【0014】
第1カメラ2のカメラパラメータ(以下、第1カメラ情報)は、外部パラメータと、内部パラメータに相当し、カメラの構図を決定するために必要となる情報である。外部パラメータは、例えば、カメラ位置(カメラの視点の位置)やカメラ姿勢(パン角やチルト角)などのパラメータであり、世界座標からカメラ座標への変換に利用される。内部パラメータは、カメラが移動しても変化しないパラメータであり、例えば、焦点距離、レンズ歪などのパラメータであり、カメラ座標から画像座標への変換に利用される。
同様に、第2カメラ3のカメラパラメータ(以下、第2カメラ情報)も、外部パラメータと、内部パラメータに相当し、カメラの構図を決定するために必要となる情報である。
【0015】
ここで、第1カメラ2は、
図3(a)に示すように、平面状のイメージセンサ25を有しそれに射影されたものを画像として出力するものとする。同様に、第2カメラ3は、
図3(b)に示すように、平面状のイメージセンサ35を有しそれに射影されたものを画像として出力するものとする。イメージセンサ25,35は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)撮像素子や、CCD(Charge Coupled Device)撮像素子である。
【0016】
第1カメラ2の視体積(全フレーミング領域)は、
図3(a)に示す視点24からイメージセンサ25の四隅をそれぞれ通過する視線ベクトル26,27,28,29に囲まれた空間としてみることができる。同様に、第2カメラ3の視体積(全フレーミング領域)は、
図3(b)に示す視点34からイメージセンサ35の四隅をそれぞれ通過する視線ベクトル36,37,38,39に囲まれた空間としてみることができる。なお、
図2では視線ベクトルの先端を省略している。カメラ毎のカメラ座標系は、
図2において白抜きの矢印で示す光軸方向を+z
c軸とし、x
c,y
c,z
cの順に右手系を成す。第1カメラ2の視点24の位置は、第1カメラ2のカメラ座標系の原点の位置であり、第2カメラ3の視点34の位置は、第2カメラ3のカメラ座標系の原点の位置である。
【0017】
[フレーミング評価装置の構成]
図1を参照し、フレーミング評価装置1の構成について説明する。
フレーミング評価装置1は、基準となるカメラのフレーミング領域に対して、評価対象となるカメラのフレーミング領域がどのくらい合致できているのかを評価する装置である。フレーミング評価装置1は、フレーミング領域決定部10と、フレーミング領域頂点演算部11と、フレーミング領域頂点選択部12と、射影面積演算部14と、フレーミング効率演算部15と、を備えている。ここでは、フレーミング評価装置1は、さらに、記憶手段9と、交点判定部13と、フレーミング効率評価部16と、フレーミング効率表示部17と、を備えている。以下、各部の構成を順に説明する。
【0018】
(記憶手段)
記憶手段9は、このフレーミング評価装置1の各部で用いる情報、演算結果、動作プロフラム等を記憶するものであり、例えばHDD(hard disk drive)、SSD(solid state drive)、メモリ等の記憶装置である。前記情報として、例えば後記するROI情報、第1カメラ情報、第2カメラ情報等を含めることができる。これらの情報は、例えばキーボード、マウス、タッチパネルといった入力装置4や、無線または有線の所定の通信手段6によって入力される。また、これらの情報や演算結果は、必要に応じて例えば液晶ディスプレイ等の表示装置5に出力されたり、通信手段6を介して外部装置に出力されたりする。なお、表示装置5は外部装置であってもよい。
【0019】
(フレーミング領域決定部)
フレーミング領域決定部10は、世界座標系で表された所定の関心領域の位置情報を示すROI情報と、関心領域を撮影する基準となる第1カメラ2のカメラパラメータと、を用いて、第1カメラ2のフレーミング領域の境界を決定するための各頂点の世界座標値を算出するものである。このフレーミング領域決定部10による処理は、基準となる第1カメラ2に係る演算処理である。以下では、フレーミング領域決定部10による処理について、後記する式(1)~式(6)の数式や
図3~
図6の図面等によって、詳細に説明する。
【0020】
ここでは、一例として、サッカー中継のテレビ放送のためにサッカーフィールド(
図4参照)で用いられる複数のカメラのうちの1つのカメラを基準となる第1カメラ2(
図2(a)参照)とし、同じくサッカーサッカーフィールドで用いられる他のカメラを評価対象となる第2カメラ3(
図2(b)参照)とする。この場合の世界座標系とカメラ座標系の定義について説明した後、フレーミング領域決定部10の処理について説明する。なお、フレーミング評価装置1は、例えば中継車に設置されるものとする。また、中継車には、光ケーブルでカメラに接続されるCCU(カメラコントロールユニット)等が搭載される。カメラの遠隔操作装置は、CCUにケーブル接続される。
【0021】
図4~
図6はサッカーフィールド101を例として、被写体が存在する世界座標系と、カメラの位置および姿勢が反映されたカメラ座標系との関係を説明するための図面である。
図4(a)に示すように、世界座標系は、サッカーフィールドの中央102を原点とし、原点を通りサイドライン104,105と平行な軸をX
w軸とし、センターライン103と平行な軸をY
w軸とし、フィールド平面に垂直かつ上向きの軸を+Z
w軸とする。また、世界座標系は、X
w軸、Y
w軸、Z
w軸の順に右手系を成す。なお、フィールド平面は、グラウンド地面と同じ高さの平面であり、以下では、Z
w=0の平面108と呼ぶ。
【0022】
ここでは、世界座標系におけるZ
w=0の無限に広い平面と、それに平行なZ
w=hの無限に広い平面とに挟まれた範囲をROI(Region of Interest:関心領域)と定義している。つまり、ROIは、
図4(b)に示すように、Z
w=0の平面108と、このZ
w=0の平面108から高さhの平面(Z
w=hの平面109)とに挟まれた範囲である。
【0023】
ROIは、ユーザが任意に定義できるものであり、平面で定義しても立体で定義しても構わない。また、範囲は有限であっても構わない。ROIが有限である場合、一例として、ROIの頂点がフレーミング領域に含まれないように定義すれば、視線ベクトルがROIの境界面と平行にならない限りROIに交わることになる。この交点の世界座標値を有し全交点に囲まれた領域(交点を含まない領域)を、カメラのフレーミング領域とすることができる。他の例として、ROIの頂点がフレーミング領域に含まれるのであれば、含まれる頂点を、視線ベクトルとROIとの交点としてみることができる。このようにしてカメラのフレーミング領域は、平面または立体を形成する。なお、カメラのフレーミング領域は、カメラの視体積とROIとが重なる領域である。
【0024】
ここでは、第1カメラ2を操作する実際のカメラマン(撮影者)が、どういうプレーなのか認識しながらフレームを切り取って第1カメラ2のフレーミング領域を決める。第2カメラ3を操作する撮影者は、第2カメラ3のフレーミング領域を、基準となる第1カメラ2のフレーミング領域に近づけるように第2カメラ3を操作する。第1カメラ2は、サイドライン105の側から被写体を撮影する。第2カメラ3は、異なる場所として、ゴールライン107の側から被写体を撮影する。このときのROI、世界座標系および各カメラのカメラ座標系の関係を
図5に示し、第1カメラ2のカメラ座標系と世界座標系との関係を
図6に示す。
図6は、
図5のROIのフィールド地面への投影図である。
【0025】
例えば第1カメラ2のカメラ座標系は、
図3(a)および
図4(a)を参照すると、もしもカメラ座標系の原点(視点24)が世界座標系の原点(サッカーフィールドの中央102)と一致する場合、且つ、各軸の回転がない場合には、カメラ座標系+x
c軸と世界座標系+X
w軸が一致し、カメラ座標系+y
c軸と世界座標系-Z
w軸が一致し、カメラ座標系+z
c軸と世界座標系+Y
w軸が一致する関係にある。
【0026】
次に、例えば第1カメラ2に関して、各軸の回転を考慮する。具体的には、第1カメラ2のカメラ座標系におけるyc軸の回転角をα[rad](パン角)、xc軸の回転をδ[rad](チルト角)、zc軸の回転をφ[rad](ロール角)としたカメラ姿勢は、次の式(1)で示す回転行列Rによって、世界座標系におけるカメラ姿勢に変換できる関係にある。なお、一般的に使用される雲台にはロール角φを操作する回転機構がないため、その場合にはロール角φ=0とすればよい。
【0027】
【0028】
例えば第1カメラ2のカメラ座標系の原点の位置、すなわち、第1カメラ2の視点24の位置が、世界座標系で記述されたときの位置ベクトルtwが次の式(2)で表されるとする。また、世界座標系の原点の位置、すなわち、サッカーフィールドの中央102が、カメラ座標系で記述されたときの位置ベクトルtCが次の式(3)で表されるとする。この場合、カメラ座標系で記述された、世界座標系の原点の位置ベクトルtCと、世界座標系で記述された、カメラの視点位置ベクトルtwとの関係は、前記した式(1)の回転行列Rを用いると、次の式(4)で表される。
【0029】
【0030】
上記の世界座標系とカメラ座標系の定義を前提とした場合、フレーミング領域決定部10は、次のように演算処理を行う。ここでは、
図5に示すように、ROI(関心領域)が、世界座標系におけるZ
w=0の平面108とZ
w=hの平面109とに挟まれた範囲に定義されている。そのため、フレーミング領域決定部10は、第1カメラ2のイメージセンサ(撮像素子)25の4隅をそれぞれ通る4つの視線ベクトル26,27,28,29と、Z
w=0の平面108とZ
w=hの平面109との合計8つの交点を、フレーミング領域の各頂点として、各頂点の座標を算出する。
【0031】
具体的には、フレーミング領域決定部10は、視線ベクトルとROIの境界面との交点の世界座標値を次のようにして求める。ROIの境界面のうち例えばZw=0の平面108上の求めるべき交点の世界座標値を[Xw,Yw]とする。画像座標系から、Zw=0の平面108上の世界座標値[Xw,Yw]への変換の関係式は、次の式(5)で表される。
【0032】
【0033】
ここで、画像座標系は、
図7(a)に示すように、画像左上を原点O
Iとして水平右方向を+x
I軸、垂直下方向を+y
I軸としている。式(5)において、r
xx,r
yx,r
zx,r
xy,r
yy,r
zyは、前記した式(1)の回転行列の成分である。t
cx,t
cy,t
czは、前記した式(3)の位置ベクトルt
Cの成分である。x
Iとy
Iは、画像格子点の座標値であって、多数の画像格子点の座標値を代表している。u
0は、横方向ピクセル数の半値を示し、v
0は、縦方向ピクセル数の半値を示す。fは、ピクセル単位の焦点距離を示す。なお、ピクセル単位の焦点距離は、mm単位の焦点距離を、そのカメラセンサの画素数で正規化したパラメータである。例えば、水平画素数1920、水平画角60°である場合、ピクセル単位の焦点距離は、1662.8[pixel]となる。
【0034】
要するに、フレーミング領域決定部10は、式(5)の関係式に必要なパラメータを入力することで、視線ベクトルとROIにおけるZ
w=0の平面108との交点の世界座標値[X
w,Y
w,0]を得る。
図5において、交点41は、視線ベクトル29と平面108との交点である。交点42は、視線ベクトル26と平面108との交点である。交点43は、視線ベクトル27と平面108との交点である。交点44は、視線ベクトル28と平面108との交点である。
【0035】
また、フレーミング領域決定部10が、視線ベクトルとROIにおけるZ
w=hの平面109との交点の世界座標値[X
w,Y
w,h]を得る方法は、Z
w=0の平面108の交点の世界座標値[X
w,Y
w,0]を得る方法と概ね同様にして計算することができるで、詳細な説明を省略する。
図5において、交点51は、視線ベクトル29と平面109との交点である。交点52は、視線ベクトル26と平面109との交点である。交点53は、視線ベクトル27と平面109との交点である。交点54は、視線ベクトル28と平面109との交点である。なお、この場合には、第1カメラ2の視点24の位置が世界座標系で記述されたときの位置ベクトルt
wとしては、前記した式(2)の代わりに次の式(6)を用いる。
【0036】
【0037】
図1に戻って、フレーミング評価装置1の構成の説明を続ける。
(フレーミング領域頂点演算部)
フレーミング領域頂点演算部11は、評価対象となる第2カメラ3のカメラパラメータを用いて世界座標系の所定位置を第2カメラ3の画像座標系に射影することによって、第1カメラ2のフレーミング領域の境界を決定する各頂点の世界座標値を、第2カメラ3の画像座標系における各頂点の画像座標値へ変換するものである。ここで、フレーミング領域頂点とは、評価対象となる第2カメラ3に係る画像座標系に射影されたフレーミング領域を形成する頂点のことである。フレーミング領域頂点演算部11は、画像座標系におけるフレーミング領域頂点の座標値を以下の演算により算出する。
【0038】
フレーミング領域頂点演算部11には、フレーミング領域決定部10で求められた、視線ベクトルと、ROIにおける平面108,109との交点の世界座標値が、基準となる第1カメラ2のフレーミング領域の頂点として入力される。また、フレーミング領域頂点演算部11には、第2カメラ情報として、評価対象の第2カメラ3の内部パラメータおよび外部パラメータが入力される。
【0039】
フレーミング領域頂点演算部11の演算において、世界座標系の座標値(Xw,Yw,Zw)から、第2カメラ3の視点34の位置に係る画像座標系の座標値(xI,yI)への変換式は、例えば、次の式(7)を用いることができる。
【0040】
【0041】
式(7)において、rxx,ryx,rzx,rxy,ryy,rzy,rxz,ryz,rzzは、前記した式(1)の回転行列Rの成分である。twx,twy,twzは、前記した式(2)の位置ベクトルtwの成分である。ここで、回転行列および視点位置をそれぞれ表す式(1)および式(2)は、第2カメラ3に関して求められたものを用いる。同様に、xIとyIは、第2カメラ3のイメージセンサ35の画像格子点の座標値である。u0及びv0は、イメージセンサ35に関する横・縦方向ピクセル数の半値を示す。fは、イメージセンサ35に関するピクセル単位の焦点距離を示す。
【0042】
本実施形態では、式(7)の右辺の世界座標系の座標値(X
w,Y
w,Z
w)は、
図5に示す交点41~44および交点51~44の合計8個の交点に関するそれぞれの座標値の組み合わせを代表して示している。フレーミング領域頂点演算部11は、演算結果として、第2カメラ3の画像座標系における頂点の位置を示す画像座標値をそれぞれフレーミング領域頂点選択部12に出力する。
【0043】
(フレーミング領域頂点選択部)
フレーミング領域頂点選択部12は、第2カメラ3の画像座標系に射影された各頂点のうち、最外角を構成する頂点を選択して前記最外角を構成する頂点を連結することで射影領域を形成するものである。フレーミング領域頂点選択部12には、フレーミング領域頂点演算部11から、第2カメラ3の画像座標系における頂点の位置を示す画像座標値が入力される。フレーミング領域頂点選択部12が、最外角を構成する頂点を選択して射影領域を形成するのは、後段の射影面積演算部14において、射影領域の面積を求めるためである。
【0044】
例えば
図4~
図6に示すようなZ
w=0の平面108とZ
w=hの平面109との間に挟まれた領域にROIを設定している場合、フレーミング領域頂点選択部12は、第1カメラ2のフレーミング領域の交点(頂点)が第2カメラ3のイメージセンサ35に射影された点(頂点)の画像座標において、次のような判定を行うことで、最外角を構成する頂点を決定する。
【0045】
フレーミング領域頂点選択部12は、Zw=0およびZw=hのいずれか一方の平面における交点が第2カメラ3の画像座標系に射影された頂点を判定対象の頂点であるものとしたとき、当該判定対象の頂点の座標が、他方の平面における4つの交点が第2カメラ3の画像座標系に射影された4つの頂点で囲まれた領域外であった場合、当該判定対象の頂点が最外角の頂点であると判定する判定処理を行う。フレーミング領域頂点選択部12は、この判定処理を、Zw=0およびZw=hの両方の平面の各交点に対して行うことで最外角を構成する頂点を決定する。
【0046】
このフレーミング領域頂点選択部12の処理について、
図7を参照して説明する。
図7(a)は、第2カメラ3の画像フレーム30をドットのハッチングで示す図である。画像フレーム30の上には画像座標系が設定されている。この第2カメラ3の画像座標系では、画像左上を原点O
Iとして水平右方向を+x
I軸、垂直下方向を+y
I軸としている。
【0047】
図7(b)は、
図5に示すイメージセンサ35の4隅をそれぞれ通る4つの視線ベクトルとZ
w=0の平面108との交点41~44が、第2カメラ3の画像座標系にそれぞれ射影された点(頂点61~64)を繋いだ矩形状の輪郭線を示した模式図である。
図7(c)は、
図7(b)の輪郭線に対して、別の矩形状の輪郭線を重ねて示した模式図である。この
図7(c)における別の矩形状の輪郭線は、
図5に示すイメージセンサ35の4隅をそれぞれ通る4つの視線ベクトルとZ
w=hの平面109との交点51~54が、第2カメラ3の画像座標系にそれぞれ射影された点(頂点71~74)を繋いで形成されている。
【0048】
フレーミング領域頂点選択部12は、例えばZ
w=0の平面108における交点41が第2カメラ3の画像座標系に射影された頂点61(
図7(c))を判定対象の頂点であるものとしたとき、この頂点61の座標が、Z
w=hの平面109における4つの交点51~54が第2カメラ3の画像座標系に射影された4つの頂点71~74で囲まれた領域の外にあるか否かを判別する。
図7(c)に示す例では、頂点61の座標は頂点71~74で囲まれた領域の外にあることが明らかである。この場合、フレーミング領域頂点選択部12は、頂点61が最外角の頂点であると判定する。一方、
図7(c)に示す例では、頂点63の座標は頂点71~74で囲まれた領域内にあることが明らかである。この場合、フレーミング領域頂点選択部12は、頂点63が最外角の頂点ではないと判定する。
【0049】
同様に、フレーミング領域頂点選択部12は、例えばZ
w=hの平面109における交点51が第2カメラ3の画像座標系に射影された頂点71(
図7(c))を判定対象の頂点であるものとしたとき、この頂点71の座標が、Z
w=0の平面108における4つの交点41~44が第2カメラ3の画像座標系に射影された4つの頂点61~64で囲まれた領域の外にあるか否かを判別する。
図7(c)に示す例では、頂点71の座標は頂点61~64で囲まれた領域内にあることが明らかである。この場合、フレーミング領域頂点選択部12は、頂点71が最外角の頂点ではないと判定する。
【0050】
図7(c)に示す例では、フレーミング領域頂点選択部12は、8個の判定対象の頂点についての判定処理の結果、最外角の頂点として決定した頂点61、頂点62、頂点72、頂点73、頂点74、頂点64をこの順番に連結することで、
図8に示す射影領域80を形成する。この射影領域80の輪郭を形成する各頂点の座標の情報は、交点判定部13、射影面積演算部14およびフレーミング効率演算部15にそれぞれ出力される。なお、この例では、射影領域80の輪郭を形成する頂点の総数は、4~8個のいずれかになる。
【0051】
(交点判定部)
交点判定部13は、射影領域80の輪郭線と、第2カメラ3の画像フレーム30の輪郭線との交点が2つ以上存在するかどうかを判定するものである。交点判定部13は、交点が2つ以上存在する場合、演算指示をフレーミング効率演算部15に出力する。この場合、フレーミング効率演算部15は、後記するフレーミング効率を算出する。
【0052】
交点判定部13には、フレーミング領域頂点選択部12から、射影領域80の輪郭を形成する各頂点の座標の情報が入力される。交点判定部13は、これら入力される各頂点の座標の情報によって、所定のアルゴリズムで、射影領域80の輪郭線と画像フレーム30の輪郭線との交点を求める。例えば、全頂点に関して、隣り合う2つの頂点を結ぶ線分の1次関数をそれぞれ求めて、画像フレーム30の輪郭線を形成する4辺との交点をそれぞれ求める。この交点の座標の情報は、フレーミング効率演算部15に出力される。
【0053】
なお、画像フレーム30の輪郭線の座標の情報については、例えば画像フレーム30の輪郭線のうち、
図7(a)において上の辺はx
I軸なので上辺に相当する輪郭線のy
I座標は0である。
図7(a)において左の辺はy
I軸なので左辺に相当する輪郭線のx
I座標は0である。また、
図7(a)において下辺に相当する輪郭線のy
I座標と、右辺に相当する輪郭線のx
I座標は、第2カメラ3のイメージセンサ35に関する縦方向ピクセル数と横方向ピクセル数から定義できる。
【0054】
ここで、
図9を参照する。
図9では、射影領域80と、第2カメラ3の画像フレーム30との重複領域90に左下がりのハッチングを施している。
図9に示す例では、射影領域80の輪郭線と、第2カメラ3の画像フレーム30の輪郭線との交点は、交点92、交点93、交点94、交点95の合計4個存在する。したがって、この場合、交点判定部13は、交点が2つ以上存在すると判定し、演算指示をフレーミング効率演算部15に出力する。
【0055】
もしも、射影領域80と、第2カメラ3の画像フレーム30とが重複する領域が全く存在しない場合、交点判定部13は、交点が2個以上ではないと判定する。
また、射影領域80の1つの頂点(例えば右下隅)と、第2カメラ3の画像フレーム30の1つの頂点(例えば左上隅)とが一致する場合、交点判定部13は、交点が2個以上ではないと判定する。
仮に、前段のフレーミング領域頂点演算部11の演算の結果、
図10に示すように、第2カメラ3の画像座標系に射影された各頂点がいずれも第2カメラ3の画像フレーム30の輪郭線の内部に含まれた場合、
図11に示すように射影領域80の全体が、第2カメラ3の画像フレーム30の輪郭線の内部に含まれることになる。この場合、交点判定部13は、交点の個数が2個以上であると判定する。
また、
図12に示す例では、射影領域80の輪郭線と、第2カメラ3の画像フレーム30の輪郭線との交点としては、交点91および交点92の合計2個の交点が存在する。この場合も当然ながら、交点判定部13は、交点の個数が2個以上であると判定する。
【0056】
(射影面積演算部)
射影面積演算部14は、射影領域80の面積である射影面積を算出するものである。射影面積演算部14には、フレーミング領域頂点選択部12から、射影領域80の輪郭を形成する各頂点の座標の情報が入力される。射影面積演算部14は、これら入力される各頂点の座標の情報によって、多角形の面積に関する公知の公式で射影面積を求める。以下、射影面積演算部14で算出された射影面積を、射影面積SAと表記する。座射影面積SAは、各頂点の座標値をxk,yk、頂点の数をnとすると、例えば次の式(8)によって求めることができる。
【0057】
【0058】
ただし、x
n+1=x
1、y
n+1=y
1となり、
図8のような画像座標系の取り方をした場合、頂点は時計回りとなる。
図8に示す例では頂点数nは6であり、最初の頂点を頂点61とすると、頂点61、頂点62、頂点72、頂点73、頂点74、頂点64、再び頂点61という順番となる。
【0059】
(フレーミング効率演算部)
フレーミング効率演算部15は、第2カメラ3の画像フレーム30と射影領域80とが重複する重複領域90の面積を求めて、射影面積SAおよび第2カメラ3の画像フレーム30の面積に対する重複領域90の面積の割合を表すフレーミング効率を算出するものである。
【0060】
本実施形態では、フレーミング効率演算部15は、重複面積算出部15aと、フレーム面積算出部15bと、フレーミング効率算出部15cと、を備えている。
<重複面積算出部>
重複面積算出部15aは、
図9に示すように、射影領域80のうち、第2カメラ3の画像フレーム30内に存在する重複領域90の面積である重複面積を算出するものである。重複面積算出部15aには、フレーミング領域頂点選択部12から、射影領域80の輪郭を形成する各頂点の座標の情報が入力され、交点判定部13から交点の座標の情報が入力される。重複面積算出部15aは、これら入力される頂点や交点の座標の情報によって、所定のアルゴリズムで重複面積を求める。例えば、射影面積演算部14と同様の計算方法で重複面積を求めることもできる。以下、重複面積算出部15aで算出された重複面積を、重複面積S
Cと表記する。なお、
図11に示すように射影領域80の全体が画像フレーム30の輪郭線の内部に含まれる場合、重複面積S
Cは、射影面積S
Aと等しくなる。
【0061】
<フレーム面積算出部>
フレーム面積算出部15bは、第2カメラ3の画像フレーム30の面積であるフレーム面積を算出するものである。フレーム面積算出部15bは、第2カメラ3のイメージセンサ35に関する縦方向ピクセル数と横方向ピクセル数との積によりフレーム面積を算出する。以下、フレーム面積算出部15bで算出されたフレーム面積を、フレーム面積SBと表記する。
【0062】
<フレーミング効率算出部>
フレーミング効率算出部15cは、次の式(9)で示される面積包含率RAと、次の式(10)で示される面積占有率RBとを算出する。また、フレーミング効率算出部15cは、次の式(11)で定義されたフレーミング効率RABを算出する。
【0063】
【0064】
面積包含率RAは、射影面積SAに対する重複面積SCの割合を示す。面積占有率RBは、フレーム面積SBに対する重複面積SCの割合を示す。フレーミング効率RABは、面積包含率RAと面積占有率RBとの積を示す。このフレーミング効率RABが0である場合、基準となる第1カメラ2のフレーミング領域を、評価対象となる第2カメラ3が全くフォローできていないことを意味する。フレーミング効率RABが1に近いほど、第1カメラ2のフレーミング領域を第2カメラ3で効率的にフォローできていることを意味する。
フレーミング効率演算部15は、最終演算結果として、フレーミング効率RABをフレーミング効率評価部16に出力する。
【0065】
(フレーミング効率評価部)
フレーミング効率評価部16は、フレーミング効率演算部15が算出した値が所定の閾値よりも大きいか否かを判別した判別結果を含む評価値を算出するものである。閾値は任意に設定することができる。フレーミング効率評価部16には、フレーミング領域頂点選択部12から、フレーミング効率RABが入力される。また、予め記憶手段9に記憶された閾値、または、オペレータが所定のタイミングで入力装置4から入力する閾値が、フレーミング効率評価部16に入力される。
【0066】
フレーミング効率評価部16は、入力されたフレーミング効率RABが、入力された閾値以上であるか否かを判別し、閾値以上であることを示す信号、または、閾値未満であることを示す信号を出力する。フレーミング効率評価部16は、フレーミング効率RABと閾値との差を算出して、差分を評価値に含めて出力するように構成してもよい。例えば閾値が0.97であり、かつ、フレーミング効率RABが0.78であった場合、フレーミング効率評価部16は、閾値未満を示す信号を出力すると共に、その差分値-0.19を戻り値としてフレーミング効率表示部17に出力する。差分値にプラス符号またはマイナス符号を付していれば、閾値以上または閾値未満であることが分かるので、評価値は、フレーミング効率RABおよび符号付きの差分値であってもよい。なお、フレーミング効率RABや差分値を小数ではなく百分率で出力してもよい。
【0067】
(フレーミング効率表示部)
フレーミング効率表示部17は、フレーミング効率評価部16が算出した評価値を表示装置5に表示させるものである。フレーミング効率表示部17には、フレーミング効率評価部16から評価値が入力される。
【0068】
例えば第1カメラ2や第2カメラ3が撮影者よって操作されるビューファインダー付きの放送用カメラである場合、このビューファインダーが表示装置5であってもよい。この場合、フレーミング効率表示部17は、評価値としてのフレーミング効率RABおよび差分値(戻り値)を表示装置5に出力する。すなわち、カメラのビューファインダー(表示装置5)が現在表示しているカメラの映像フレーム上にリアルタイムで、例えばフレーミング効率RABおよび差分値を重畳表示する。例えば第2カメラ3のビューファインダーに、フレーミング効率RABと差分値とを重畳表示すれば、第2カメラ3の撮影者に対して、現在のフレーミング領域が、基準となる第1カメラ2のフレーミング領域にどれだけ近いものであるのかを教示することができる。
【0069】
[フレーミング評価装置の動作]
次に、
図13を参照(適宜その他図面参照)して、本発明の実施形態に係るフレーミング評価装置の動作について説明する。まず、フレーミング評価装置1は、フレーミング領域決定部10によって、第1カメラ情報とROI情報とを用いて、基準となる第1カメラ2のフレーミング領域を決定する(ステップS1)。そして、フレーミング評価装置1は、フレーミング領域頂点演算部11によって、第2カメラ情報を用いて、第1カメラ2のフレーミング領域を射影して、第2カメラ3の画像座標系におけるフレーミング領域頂点の座標値を演算により算出する(ステップS2)。
【0070】
そして、フレーミング評価装置1は、フレーミング領域頂点選択部12によって、フレーミング領域頂点を選択して射影領域80を形成する(ステップS3)。そして、フレーミング評価装置1は、交点判定部13によって、射影領域80の輪郭線と画像フレーム30の輪郭線との交点が2つ以上存在するか否かを判別する(ステップS4)。交点が2個以上ではない場合(ステップS4:No)、フレーミング評価装置1は、処理を終了する。一方、交点が2個以上である場合(ステップS4:Yes)、フレーミング評価装置1は、射影面積演算部14によって、射影面積SAを算出する(ステップS5)。
【0071】
そして、フレーミング評価装置1は、フレーミング効率演算部15の重複面積算出部15aによって、射影領域80のうち画像フレーム30内に存在する重複領域90の重複面積SCを算出する(ステップS6)。また、フレーミング効率演算部15のフレーム面積算出部15bは、フレーム面積SBを算出する(ステップS7)。このステップS7の処理は、ステップS6の処理よりも前に行ってもよい。そして、フレーミング評価装置1は、フレーミング効率演算部15のフレーミング効率算出部15cによって、射影面積SA、フレーム面積SB、重複面積SCを用いて前記した式(9)~式(11)により、フレーミング効率RABを算出する(ステップS8)。
【0072】
そして、フレーミング評価装置1は、フレーミング効率評価部16によって、フレーミング効率RABが閾値以上であるか否かを判別することでフレーミング効率RABを評価する(ステップS9)。そして、フレーミング評価装置1は、フレーミング効率表示部17によって、評価値としてのフレーミング効率RABおよび差分値(戻り値)を表示装置5に表示させる(ステップS10)。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係るフレーミング評価装置1は、基準となる第1カメラ2のフレーミング領域に対して、評価対象となる第2カメラ3のフレーミング領域がどのくらい合致できているのかを定量的に評価することができる。また、フレーミング評価装置1は、第1カメラ2のフレーミング領域の射影面積に基づいてフレーミング効率を計算するので、世界座標上のボクセルで評価するよりも少ない計算量で評価することができる。さらに、フレーミング評価装置1によれば、評価対象の第2カメラ3の撮影者に対してフレーミング効率をリアルタイムに知らせれば、現在のフレーミング領域が、基準となる第1カメラ2にどれだけ近いのかを第2カメラ3の撮影者に教示することが可能となる。
【0074】
(変形例)
以上、本発明の実施形態に係るフレーミング評価装置について説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変などしたものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【0075】
例えば、本実施形態では、フレーミング評価装置1は、交点判定部13を備えることとしたが、必須の構成ではない。交点判定部13を備えない場合、フレーミング領域頂点選択部12は、射影領域80の輪郭を形成する各頂点の座標の情報を、射影面積演算部14およびフレーミング効率演算部15にそれぞれ出力する。また、フレーミング効率演算部15は、重複面積SCを算出するために、これら入力される各頂点の座標の情報によって、所定のアルゴリズムで、射影領域80の輪郭線と第2カメラ3の画像フレーム30の輪郭線との交点を求める。なお、例えば射影領域80と、第2カメラ3の画像フレーム30とが重複する領域が全く存在しないときにフレーミング効率を演算することは無意味であり、交点判定部13を備えている場合、そのような無意味の演算を防止することで、フレーミング効率の演算に係る処理負荷を低減できる。
【0076】
また、本実施形態では、フレーミング評価装置1は、フレーミング効率評価部16とフレーミング効率表示部17とを備えることとしたが、これらの構成は必須ではなく外部装置としてもよい。この場合、フレーミング効率演算部15の演算結果を評価値として扱ってもよいし、フレーミング効率演算部15の演算結果を外部装置としてのフレーミング効率評価部等へ出力して得られる評価値を用いるようにしてもよい。
【0077】
また、フレーミング効率演算部15は、フレーミング効率RABに代え、面積包含率RAを広義のフレーミング効率としてフレーミング効率評価部16に出力してもよい。この場合、フレーミング効率評価部16には、面積包含率RAの閾値を入力する。さらに、表示装置5に表示される映像フレームに対して、面積包含率RAおよび差分値を重畳表示してもよい。同様に、フレーミング効率演算部15は、面積占有率RBを広義のフレーミング効率としてフレーミング効率評価部16に出力し、フレーミング効率評価部16には、面積占有率RBの閾値を入力し、表示装置5に表示される映像フレームに対して面積占有率RBおよび差分値を重畳表示してもよい。さらに、フレーミング効率演算部15は、フレーミング効率RABと、上記広義のフレーミング効率の双方とをすべて、フレーミング効率評価部16に出力する構成としてもよい。
【0078】
また、第1カメラ2は、サイドライン105の側から被写体を撮影するものとしたが、サイドライン104の側から被写体を撮影してもよい。また、第2カメラ3は、ゴールライン107の側から被写体を撮影するものとしたが、ゴールライン106の側から被写体を撮影してもよい。さらに、評価対象となる第2カメラ3を複数備えて、ゴールライン106近傍、ゴールライン107近傍、サイドライン104近傍のように異なる場所にそれぞれ第2カメラ3を設置しても、それぞれ同様の効果を奏することができる。
【0079】
また、第1カメラ2にも第2カメラ3にも実際のカメラマンが割り当てられるものとしたが、実際に撮影するときに必要な人数を減らす目的であれば、いずれか一方または両方のカメラをロボットカメラで置き換えてもよい。例えば、第1カメラ2を実際のカメラマンが操作し、かつ、第2カメラ3がロボットカメラである場合、第2カメラ3は無人であってカメラマンは操作しない。この場合、ロボットカメラ(第2カメラ3)は、実際のカメラマンが決定した第1カメラ2のフレーミング領域を参考にして第2カメラ3のフレーミング領域を決めることができる。また、実際に撮影するときに必要な人数は足りているが、経験豊富ではないカメラマンが含まれているときには、ロボットカメラを使用せずに、第1カメラ2を熟練カメラマンに任せて、経験豊富ではないカメラマンが第2カメラ3を操作する、という使い方も可能である。
【0080】
また、第1カメラ2や第2カメラ3は、固定設置型でもよいし、移動可能に構成されていてもよい。移動可能なカメラとしては、例えば車輪付き雲台に搭載されたカメラ、ワイヤに沿って決まった軌道を行ったり来たりする空中特殊撮影機材、ドローンに搭載されたカメラなどが挙げられる。第1カメラ2としてドローンカメラを採用した場合、フレーミング評価装置1は、第1カメラ2のフレーミング領域(ドローン撮影領域)を決定し、他のカメラ(第2カメラ3)に対して、ドローン撮影領域に追随させるフレーミングをさせる使い方も可能である。
【0081】
また、フレーミング評価装置1は、例えば中継車に設置されるものとしたが、これに限るものではなく、例えば競技場の中に設置してもよい。
また、フレーミング評価装置1は、評価対象となる第2カメラ3と同じ筐体に一体的に構成されていてもよい。
また、フレーミング評価装置1は、競技場から離れた場所(放送局)に設置されていてもよい。この場合、例えば中継車から通信手段を介してカメラの情報をサッカー場とは違う場所(放送局)に送り、放送局に設置されたフレーミング評価装置1がカメラの情報を使ってフレーミング効率の演算を行う。そして、フレーミング評価装置1は、通信手段6を介して、評価対象となる第2カメラ3に評価値をフィードバックして、第2カメラ3のビューファインダーに、評価値(フレーミング効率RABと差分値)を表示させることができる。
【0082】
また、評価対象となる第2カメラ3のビューファインダーの画面表示をマルチ画面表示して、基準となる第1カメラ2のフレーミング領域を一緒に映すようにしてもよい。このマルチ画面には、カメラ映像と共に、状況に応じて例えば
図8から
図12のいずれか1つを表示することもできる。このようにすることで、第2カメラ3が撮影者によって操作される場合、第2カメラ3の撮影者は、リファレンスである第1カメラ2のフレーミング領域が自分のカメラのフレームに対してどこにあるのかを直感的に認識できる。そのため、自分のカメラのフレーミングを修正し易くする効果がある。
【0083】
また、前記した実施形態では、サッカー中継のフレーミングを一例として説明したが、これに限定されない。例えば、本発明は、サッカー以外のラグビー、野球、バスケットボールなどのスポーツ中継や、コンサートや舞台などの撮影映像に好適である。
【0084】
また、前記した実施形態では、フレーミング評価装置を独立したハードウェアとして説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、本発明は、コンピュータが備えるCPU、メモリ、ハードディスク等のハードウェア資源を、前記した各装置として動作させるプログラムで実現することもできる。これらのプログラムは、通信回線を介して配布してもよく、CD-ROMやフラッシュメモリ等の記録媒体に書き込んで配布してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 フレーミング評価装置
2 第1カメラ
3 第2カメラ
4 入力装置
5 表示装置
6 通信手段
9 記憶手段
10 フレーミング領域決定部
11 フレーミング領域頂点演算部
12 フレーミング領域頂点選択部
13 交点判定部
14 射影面積演算部
15 フレーミング効率演算部
15a 重複面積算出部
15b フレーム面積算出部
15c フレーミング効率算出部
16 フレーミング効率評価部
17 フレーミング効率表示部
21,31 駆動機構
22,32 パン・チルトデータ検出センサ
23,33 レンズデータ検出センサ
24,34 視点
25,35 イメージセンサ
30 画像フレーム
80 射影領域
90 重複領域