IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社の特許一覧

特開2022-110943樹脂組成物、積層体の製造方法及び硬化膜
<>
  • 特開-樹脂組成物、積層体の製造方法及び硬化膜 図1
  • 特開-樹脂組成物、積層体の製造方法及び硬化膜 図2
  • 特開-樹脂組成物、積層体の製造方法及び硬化膜 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110943
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】樹脂組成物、積層体の製造方法及び硬化膜
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20220722BHJP
   C08G 73/12 20060101ALI20220722BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20220722BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
H01L23/12 501P
C08G73/12
C08F290/14
B32B27/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006698
(22)【出願日】2021-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】398008295
【氏名又は名称】HDマイクロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 聡
【テーマコード(参考)】
4F100
4J043
4J127
【Fターム(参考)】
4F100AB01D
4F100AB17D
4F100AB17E
4F100AG00B
4F100AK01E
4F100AK49A
4F100AL05A
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100BA05
4F100EH46E
4F100EH66D
4F100EH71E
4F100EJ08A
4F100EJ08E
4F100EJ15E
4F100EJ42A
4F100EJ52A
4F100EJ54E
4F100GB41
4F100JA02B
4F100JN01B
4F100JN17E
4F100YY00A
4F100YY00B
4J043PA04
4J043PA08
4J043PA15
4J043PA19
4J043PC035
4J043SA06
4J043SA54
4J043SB01
4J043TA12
4J043TA22
4J043TA26
4J043TA47
4J043TA72
4J043TB03
4J043UA041
4J043UA121
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA142
4J043UA151
4J043UA231
4J043UA252
4J043UA261
4J043UA262
4J043UA362
4J043UA761
4J043UA771
4J043UB011
4J043UB012
4J043UB121
4J043UB122
4J043UB131
4J043UB151
4J043UB152
4J043UB281
4J043UB301
4J043UB302
4J043UB401
4J043UB402
4J043VA011
4J043VA022
4J043VA041
4J043VA051
4J043VA062
4J043VA081
4J043VA091
4J043WA09
4J043XA15
4J043XA16
4J043XA18
4J043XB35
4J043YA13
4J043YA28
4J043YB08
4J043YB19
4J043YB25
4J043ZA02
4J043ZA60
4J043ZB50
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB041
4J127BB071
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC151
4J127BD261
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BE24Z
4J127BF451
4J127BF45Y
4J127BF531
4J127BF53Y
4J127BF53Z
4J127BG051
4J127BG05Y
4J127BG05Z
4J127BG081
4J127BG08Z
4J127BG121
4J127BG12Y
4J127BG171
4J127BG17Y
4J127BG17Z
4J127BG251
4J127BG25Y
4J127BG25Z
4J127BG311
4J127BG31Z
4J127CB152
4J127CB281
4J127CB371
4J127CC121
4J127CC131
4J127CC392
4J127FA37
4J127FA38
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐熱性及び積層体を支持体から分離する際の剥離性に優れる硬化膜を形成可能な樹脂組成物及び積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法において、、支持体1上に、ポリイミド前駆体を含有する樹脂組成物の硬化膜2を形成し、さらに硬化膜2上に積層体を作製した後に、活性エネルギー線Xを照射することにより硬化膜2を変質させた後、積層体を支持体1から分離することにより、半導体装置100を形成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド前駆体を含有し、以下の(a)~(c)の処理に用いられる樹脂組成物。
(a)支持体上に前記樹脂組成物の硬化膜を形成する。
(b)前記硬化膜上に積層体を作製する。
(c)前記積層体を前記支持体から分離する。
【請求項2】
溶剤をさらに含有し、前記溶剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して50質量部~10000質量部である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記溶剤は、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、γ-ブチロラクトン、シクロペンタノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン及びN-ホルミルピぺリジンからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化膜は、100℃~400℃、4時間以下の条件で熱処理した後に変質が生じていない請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリイミド前駆体は下記一般式(1)で表される構造単位を有する化合物を含む請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化1】

(一般式(1)中、Xは4価の有機基を表し、Yは2価の有機基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基を表す。前記R及びRの少なくとも一方は1価の有機基である。
【請求項6】
前記1価の有機基は、下記一般式(2)で表される基を含む請求項5に記載の樹脂組成物。
【化2】

(一般式(2)中、R~R10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基を表し、Rは2価の連結基を表す。)
【請求項7】
重合性モノマー及び熱重合開始剤をさらに含有する請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
以下の(d)の処理に用いられる請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
(d)前記支持体から分離された後の前記積層体上に残る前記硬化膜の残渣を除去する。
【請求項9】
前記(d)において、前記積層体上に残る前記硬化膜の残渣は溶剤処理で除去可能である請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を準備する工程と、
支持体上に前記樹脂組成物の硬化膜を形成する工程と、
前記硬化膜上に積層体を作製する工程と、
前記積層体を前記支持体から分離する工程と、
を含む積層体の製造方法。
【請求項11】
前記支持体の25℃から300℃における熱膨張率は3ppm/K~15ppm/Kである請求項10に記載の積層体の製造方法。
【請求項12】
前記支持体の厚さは100μm~10000μmであり、波長355nmの光の透過率は90%以上である請求項10又は請求項11に記載の積層体の製造方法。
【請求項13】
活性エネルギー線を前記硬化膜に照射して前記硬化膜を変質させた後に前記積層体を前記支持体から分離する請求項10~請求項12のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項14】
前記支持体から分離された後の前記積層体上に残る前記硬化膜の残渣を除去する工程をさらに含む請求項10~請求項13のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項15】
前記硬化膜を形成する際の加熱温度は、100℃~450℃である請求項10~請求項14のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項16】
前記支持体上に作製された前記硬化膜の平均厚さは、0.1μm以上である請求項10~請求項15のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項17】
前記積層体は、配線層、絶縁層及び半導体チップを備える半導体装置であり、
前記積層体を作製する工程は、前記硬化膜上に前記配線層を形成する工程と、前記配線層間を少なくとも絶縁する前記絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層上に前記半導体チップを配置し、前記半導体チップを前記配線層と接続する工程と、を含む請求項10~請求項16のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項18】
前記積層体は、前記半導体チップを封止する封止材をさらに備え、
前記積層体を作製する工程は、前記配線層と接続された前記半導体チップを封止する工程をさらに含む請求項17に記載の積層体の製造方法。
【請求項19】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂組成物、積層体の製造方法及び硬化膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化、及び高機能化の要求が高まっている。これらの要求に応じて電子機器を構成する半導体装置についても、小型化、薄型化、及び高密度実装化が求められている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
小型化、薄型化等が実現可能な半導体のパッケージとして、従来から提案されているファンアウトウエハレベルパッケージ(Fan-out wafer level package)、マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ(Multi-die wafer level package)等が挙げられる。
【0004】
ファンアウトウエハレベルパッケージのような、薄型及び高密度の配線構造を持つ半導体装置の製造工程の一つとして、RDL(Redistribution layer)ファーストという工程が提案されている。この工程では、支持体上に形成した仮固定層上に薄膜の配線層を形成し、次いで半導体素子を配線層と接続した後、半導体素子を封止材で封止して半導体装置を作製する。その後、半導体装置を支持体から剥離する。
【0005】
上記工程にて使用される仮固定層には、半導体装置を作製する際の種々のプロセスを行っても支持体と配線層との間に剥離が生じないような耐性が求められる。具体的には、スパッタリング、CVD(chemical vapor deposition:化学蒸着法)、PVD(physical vapor deposition:物理蒸着法)、リソグラフィ、めっき、ウェットエッチング、洗浄、層間絶縁膜の硬化、CMP(chemical mechanical polishing:化学機械研磨)、ダイボンディング、実装、アニーリング、パッケージング等の各プロセスにて支持体と配線層との間に剥離が生じないことが求められる。
【0006】
このような仮固定層の技術としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。すなわち、特許文献1では、支持体側に仮固定層である分離層及び接着層を作製しその上に半導体装置を作製した後、支持体側からレーザー光を照射し、分離層を変質させて接着力を低下させることで半導体装置を剥離することが開示されている。
【0007】
また、特許文献2では、光透過性支持体に、アクリル材料を含有する樹脂組成物を含む仮固定用シートを積層し、仮固定用シート上に半導体チップを仮固定した後、半導体チップを封止体で覆うこと、封止体を研削すること、及び半導体チップの表面に配線を形成することをこの順で行い、次いで、光透過性支持体側から仮固定用シートに放射エネルギーを照射することにより、樹脂組成物を分解して半導体装置から仮固定用シートを剥離することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-93021
【特許文献2】特開2017-98481
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】“半導体技術年鑑 2013 パッケージング/実装 編”,日経BP社,p41-p50.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ファンアウトウエハレベルパッケージのように支持体基板上に複数の半導体電子部品を作製する際に、前述のRDLファーストという工程を用いることで反りが抑制された微細な配線層等を支持体上に形成することができるため、半導体装置の一層の小型化及び薄型化が可能となる。
【0011】
しかし、特許文献1に記載の方法では、仮固定層は接着層と剥離層の2層であるため、仮固定層の作製時の工程が煩雑になる。
【0012】
特許文献2に記載の方法では、アクリル材料を含有する樹脂組成物を仮固定用シートの作製に用いているため、仮固定用シートの耐熱性は150℃程度である。そのため、半導体装置を製造する際に対象物を200℃以上で熱処理すると、アクリル材料の分解により仮固定用シート内にボイド等が発生して仮固定用シートと半導体チップ又は光透過性支持体との間に剥離が生じるおそれがある。
【0013】
また、樹脂組成物を硬化してなる仮固定層を介して支持体に仮固定された半導体装置等の積層体を分離する際、積層体の損傷を抑制する点から、積層体の剥離性に優れることが望ましい。
【0014】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、耐熱性、及び積層体を支持体から分離する際の剥離性に優れる硬化膜を形成可能な樹脂組成物、当該樹脂組成物を用いた積層体の製造方法並びに当該樹脂組成物を硬化してなる硬化膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> ポリイミド前駆体を含有し、以下の(a)~(c)の処理に用いられる樹脂組成物。
(a)支持体上に前記樹脂組成物の硬化膜を形成する。
(b)前記硬化膜上に積層体を作製する。
(c)前記積層体を前記支持体から分離する。
<2> 溶剤をさらに含有し、前記溶剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して50質量部~10000質量部である<1>に記載の樹脂組成物。
<3> 前記溶剤は、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、γ-ブチロラクトン、シクロペンタノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン及びN-ホルミルピぺリジンからなる群より選択される少なくとも1種を含む<2>に記載の樹脂組成物。
<4> 前記硬化膜は、100℃~400℃、4時間以下の条件で熱処理した後に変質が生じていない<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5> 前記ポリイミド前駆体は下記一般式(1)で表される構造単位を有する化合物を含む<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【0016】
【化1】
【0017】
一般式(1)中、Xは4価の有機基を表し、Yは2価の有機基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基を表す。
<6> 前記1価の有機基は、下記一般式(2)で表される基を含む<5>に記載の樹脂組成物。
【0018】
【化2】
【0019】
一般式(2)中、R~R10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基を表し、Rは2価の連結基を表す。
<7> 重合性モノマー及び熱重合開始剤をさらに含有する<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8> 以下の(d)の処理に用いられる<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
(d)前記支持体から分離された後の前記積層体上に残る前記硬化膜の残渣を除去する。
<9> 前記(d)において、前記積層体上に残る前記硬化膜の残渣は溶剤処理で除去可能である<8>に記載の樹脂組成物。
【0020】
<10> <1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を準備する工程と、
支持体上に前記樹脂組成物の硬化膜を形成する工程と、
前記硬化膜上に積層体を作製する工程と、
前記積層体を前記支持体から分離する工程と、
を含む積層体の製造方法。
<11> 前記支持体の25℃から300℃における熱膨張率は3ppm/K~15ppm/Kである<10>に記載の積層体の製造方法。
<12> 前記支持体の厚さは100μm~10000μmであり、波長355nmの光の透過率は90%以上である<10>又は<11>に記載の積層体の製造方法。
<13> 活性エネルギー線を前記硬化膜に照射して前記硬化膜を変質させた後に前記積層体を前記支持体から分離する<10>~<12>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<14> 前記支持体から分離された後の前記積層体上に残る前記硬化膜の残渣を除去する工程をさらに含む<10>~<13>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<15> 前記硬化膜を形成する際の加熱温度は、100℃~450℃である<10>~<14>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<16> 前記支持体上に作製された前記硬化膜の平均厚さは、0.1μm以上である<10>~<15>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<17> 前記積層体は、配線層、絶縁層及び半導体チップを備える半導体装置であり、
前記積層体を作製する工程は、前記硬化膜上に前記配線層を形成する工程と、前記配線層間を少なくとも絶縁する前記絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層上に前記半導体チップを配置し、前記半導体チップを前記配線層と接続する工程と、を含む<10>~<16>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<18> 前記積層体は、前記半導体チップを封止する封止材をさらに備え、
前記積層体を作製する工程は、前記配線層と接続された前記半導体チップを封止する工程をさらに含む<17>に記載の積層体の製造方法。
<19> <1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化膜。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、耐熱性、及び積層体を支持体から分離する際の剥離性に優れる硬化膜を形成可能な樹脂組成物、当該樹脂組成物を用いた積層体の製造方法並びに当該樹脂組成物を硬化してなる硬化膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す図面である。
図2】本開示の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す図面である。
図3】本開示の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0024】
本開示において「A又はB」とは、AとBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において、層又は膜の平均厚さは、対象となる層又は膜の5点の厚さを測定し、その算術平均値として与えられる値とする。
層又は膜の厚さは、マイクロメーター等を用いて測定することができる。本開示において、層又は膜の厚さを直接測定可能な場合には、マイクロメーターを用いて測定する。一方、1つの層の厚さ又は複数の層の総厚さを測定する場合には、電子顕微鏡を用いて、測定対象の断面を観察することで測定してもよい。
本開示において「(メタ)アクリル基」とは、「アクリル基」及び「メタクリル基」を意味する。
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0025】
<樹脂組成物>
本開示の樹脂組成物は、ポリイミド前駆体を含有し、以下の(a)~(c)の処理に用いられる樹脂組成物である。
(a)支持体上に前記樹脂組成物の硬化膜を形成する。
(b)前記硬化膜上に積層体を作製する。
(c)前記積層体を前記支持体から分離する。
【0026】
本開示の樹脂組成物は、耐熱性、及び積層体を支持体から分離する際の剥離性に優れる硬化膜を形成可能である。この理由としては、樹脂組成物がポリイミド前駆体を含有することで、支持体上に作製される樹脂組成物の硬化膜は耐熱性に優れ、さらに、硬化膜にレーザー光等の活性エネルギー線を照射した場合、硬化膜に加熱処理を施した場合等に硬化膜が変質することで積層体を支持体から分離する際の剥離性に優れるため、と推測される。さらに、本開示の樹脂組成物を硬化してなる硬化膜は、積層体と支持体とを接着する接着層、及び変質させることで積層体を支持体から分離可能となる剥離層の両方として機能する。そのため、本開示の樹脂組成物を積層体の製造方法に用いる場合に、接着層及び剥離層の両方を形成する必要がなく、積層体の製造工程が簡略化できる。
【0027】
ポリイミド前駆体は、重合性の不飽和結合を有するポリイミド前駆体を含有していてもよい。これにより、樹脂組成物が後述する重合性モノマー及び熱重合開始剤の少なくとも一方、好ましくは重合性モノマー及び熱重合開始剤の両方を含む場合に、硬化膜の特性(例えば、熱特性)を向上させることができる傾向にある。
重合性の不飽和結合としては、炭素炭素の二重結合等が挙げられる。
【0028】
本開示の樹脂組成物を硬化してなる硬化膜は、100℃~400℃、4時間以下の条件で熱処理した後に変質が生じていないことが好ましい。より具体的には、硬化膜の変質としては、熱分解、剥離、除去性の変化等が挙げられる。
【0029】
本開示の樹脂組成物は、以下の(d)の処理に用いられることが好ましい。
(d)前記支持体から分離された後の前記積層体上に残る前記硬化膜の残渣を除去する。
例えば、硬化膜にレーザー光等の活性エネルギー線を照射した場合、硬化膜に加熱処理を施した場合等に硬化膜が変質することで積層体を支持体から分離するとき、支持体から分離された後の積層体上に硬化膜の残渣が付着していることがある。そこで、前述の(d)の処理によって積層体上に残る硬化膜の残渣を除去することが好ましい。
【0030】
前述の(d)の処理によって積層体上に残る硬化膜の残渣を除去する場合、積層体上に残る硬化膜の残渣は溶剤処理で除去可能であることが好ましい。例えば、ポリイミド前駆体が後述する一般式(1)で表される構造単位を有し、かつ一般式(1)中のR及びRの少なくとも一方は1価の有機基である化合物を含む場合に、積層体上に残る硬化膜の残渣を溶剤で除去しやすくなる傾向にある。
【0031】
ポリイミド前駆体は、下記一般式(1)で表される構造単位を有する化合物であってもよい。
【0032】
【化3】
【0033】
一般式(1)中、Xは4価の有機基を表し、Yは2価の有機基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基を表す。
ポリイミド前駆体は、下記一般式(1)で表される構造単位を複数有していてもよく、複数の構造単位におけるX、Y、R及びRはそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0034】
一般式(1)において、Xで表される4価の有機基は、炭素数が4~25であることが好ましく、4~13であることがより好ましく、6~12であることがさらに好ましい。
Xで表される4価の有機基は、芳香環を含んでもよい。Xで表される4価の有機基が芳香環を含む場合、芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環等が挙げられる。これらの中でも、ポリイミド前駆体の紫外領域における光透過性を向上する観点から、ベンゼン環が好ましい。
Xで表される4価の有機基が芳香環を含む場合、各芳香環は、置換基を有していてもよいし、無置換であってもよい。芳香環の置換基としては、アルキル基、フッ素原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。
Xで表される4価の有機基がベンゼン環を含む場合、Xで表される4価の有機基は1つ~4つのベンゼン環を含むことが好ましく、1つ~3つのベンゼン環を含むことがより好ましく、1つ又は2つのベンゼン環を含むことがさらに好ましい。
Xで表される4価の有機基が2つ以上のベンゼン環を含む場合、各ベンゼン環は、単結合により連結されていてもよいし、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、カルボニル基、スルホニル基、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)、シリレン結合(-Si(R-;Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表す。)、シロキサン結合(-O-(Si(R-O-);Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表し、nは1又は2以上の整数を表す。)等の連結基、これら連結基を少なくとも2つ組み合わせた複合連結基などにより結合されていてもよい。また、2つのベンゼン環が単結合及び連結基の少なくとも一方により2箇所で結合されて、2つのベンゼン環の間に連結基を含む5員環又は6員環が形成されていてもよい。
【0035】
一般式(1)において、-COOR基と-CONH-基とは互いにオルト位置にあり、-COOR基と-CO-基とは互いにオルト位置にあることが好ましい。
【0036】
Xで表される4価の有機基の具体例としては、下記式(A)~式(E)で表される基を挙げられる。本開示は下記具体例に限定されるものではない。
【0037】
【化4】
【0038】
式(D)において、A及びBは、それぞれ独立に、単結合、メチレン基、ハロゲン化メチレン基、カルボニル基、スルホニル基、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)又はシリレン結合(-Si(R-;Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表す。)を表し、A及びBの両方が単結合となることはない。
【0039】
式(E)において、Cは、単結合、又は、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、カルボニル基、スルホニル基、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)、シリレン結合(-Si(R-;Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表す。)、シロキサン結合(-O-(Si(R-O-);Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表し、nは1又は2以上の整数を表す。)若しくはこれらを少なくとも2つ組み合わせた2価の基を表す。また、Cは、下記式(C1)で表される構造であってもよい。
【0040】
【化5】

【0041】
式(E)におけるCで表されるアルキレン基としては、炭素数が1~10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が1~5のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数が1又は2のアルキレン基であることがさらに好ましい。
式(E)におけるCで表されるアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の直鎖状アルキレン基;メチルメチレン基、メチルエチレン基、エチルメチレン基、ジメチルメチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、エチルエチレン基、1-メチルテトラメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、1-エチルトリメチレン基、2-エチルトリメチレン基、1,1-ジメチルトリメチレン基、1,2-ジメチルトリメチレン基、2,2-ジメチルトリメチレン基、1-メチルペンタメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、3-メチルペンタメチレン基、1-エチルテトラメチレン基、2-エチルテトラメチレン基、1,1-ジメチルテトラメチレン基、1,2-ジメチルテトラメチレン基、2,2-ジメチルテトラメチレン基、1,3-ジメチルテトラメチレン基、2,3-ジメチルテトラメチレン基、1,4-ジメチルテトラメチレン基等の分岐鎖状アルキレン基;などが挙げられる。これらの中でも、メチレン基が好ましい。
【0042】
式(E)におけるCで表されるハロゲン化アルキレン基としては、炭素数が1~10のハロゲン化アルキレン基であることが好ましく、炭素数が1~5のハロゲン化アルキレン基であることがより好ましく、炭素数が1~3のハロゲン化アルキレン基であることがさらに好ましい。
式(E)におけるCで表されるハロゲン化アルキレン基の具体例としては、上述の式(E)におけるCで表されるアルキレン基に含まれる少なくとも1つの水素原子がフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換されたアルキレン基が挙げられる。これらの中でも、フルオロメチレン基、ジフルオロメチレン基、ヘキサフルオロジメチルメチレン基等が好ましい。
【0043】
上記シリレン結合又はシロキサン結合に含まれるR又はRで表されるアルキル基としては、炭素数が1~5のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1~3のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が1又は2のアルキル基であることがさらに好ましい。R又はRで表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
【0044】
式(D)におけるA及びBの組み合わせは特に限定されるものではなく、メチレン基とエーテル結合との組み合わせ、メチレン基とスルフィド結合との組み合わせ、カルボニル基とエーテル結合との組み合わせ等が好ましい。
式(E)におけるCとしては、単結合、エーテル結合、カルボニル基等が好ましい。
【0045】
式(1)において、Yで表される2価の有機基は、炭素数が6~25であることが好ましく、6~14であることがより好ましく、12~14であることがさらに好ましい。
Yで表される2価の有機基は、2価の脂肪族基であってもよく、2価の芳香族基であってもよい。耐熱性の観点から、Yで表される2価の有機基は、2価の芳香族基であることが好ましい。
【0046】
Yで表される2価の芳香族基の具体例としては、下記一般式(F)及び下記一般式(G)で表される基を挙げることができる。
【0047】
【化6】

【0048】
一般式(F)又は一般式(G)において、Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基又はフェニル基を表し、nは、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。
一般式(G)において、Dは、単結合、又は、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、カルボニル基、スルホニル基、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)、シリレン結合(-Si(R-;Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表す。)、シロキサン結合(-O-(Si(R-O-);Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表し、nは1又は2以上の整数を表す。)若しくはこれらを少なくとも2つ組み合わせた2価の基を表す。また、Dは、上記式(C1)で表される構造であってもよい。一般式(G)におけるDの具体例は、式(E)におけるCの具体例と同様である。
一般式(G)におけるDとしては、単結合が好ましい。
【0049】
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるアルキル基としては、炭素数が1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1~5のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が1又は2のアルキル基であることがさらに好ましい。
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
【0050】
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるアルコキシ基としては、炭素数が1~10のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数が1~5のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数が1又は2のアルコキシ基であることがさらに好ましい。
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられる。
【0051】
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるハロゲン化アルキル基としては、炭素数が1~5のハロゲン化アルキル基であることが好ましく、炭素数が1~3のハロゲン化アルキル基であることがより好ましく、炭素数が1又は2のハロゲン化アルキル基であることがさらに好ましい。
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるハロゲン化アルキル基の具体例としては、一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるアルキル基に含まれる少なくとも1つの水素原子がフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換されたアルキル基が挙げられる。これらの中でも、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等が好ましい。
【0052】
一般式(F)又は一般式(G)におけるnは、それぞれ独立に、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0053】
Yで表される2価の脂肪族基の具体例としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、シクロアルキレン基、ポリアルキレンオキサイド構造を有する2価の基、ポリシロキサン構造を有する2価の基等が挙げられる。
【0054】
Yで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、炭素数が1~20のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が1~15のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数が1~10のアルキレン基であることがさらに好ましい。
Yで表されるアルキレン基の具体例としては、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、2-メチルヘキサメチレン基、2-メチルヘプタメチレン基、2-メチルオクタメチレン基、2-メチルノナメチレン基、2-メチルデカメチレン基等が挙げられる。
【0055】
Yで表されるシクロアルキレン基としては、炭素数が3~10のシクロアルキレン基であることが好ましく、炭素数が3~6のシクロアルキレン基であることがより好ましい。
Yで表されるシクロアルキレン基の具体例としては、シクロプロピレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。
【0056】
Yで表されるポリアルキレンオキサイド構造を有する2価の基に含まれる単位構造としては、炭素数1~10のアルキレンオキサイド構造が好ましく、炭素数1~8のアルキレンオキサイド構造がより好ましく、炭素数1~4のアルキレンオキサイド構造がさらに好ましい。なかでも、ポリアルキレンオキサイド構造としてはポリエチレンオキサイド構造又はポリプロピレンオキサイド構造が好ましい。アルキレンオキサイド構造中のアルキレン基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。ポリアルキレンオキサイド構造中の単位構造は1種類でもよく、2種類以上であってもよい。
【0057】
Yで表されるポリシロキサン構造を有する2価の基としては、ポリシロキサン構造中のケイ素原子が水素原子、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~18のアリール基と結合しているポリシロキサン構造を有する2価の基が挙げられる。
ポリシロキサン構造中のケイ素原子と結合する炭素数1~20のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。
ポリシロキサン構造中のケイ素原子と結合する炭素数6~18のアリール基は、無置換でも置換基で置換されていてもよい。アリール基が置換基を有する場合の置換基の具体例としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。炭素数6~18のアリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。
ポリシロキサン構造中の炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~18のアリール基は、1種類でもよく、2種類以上であってもよい。
Yで表されるポリシロキサン構造を有する2価の基を構成するケイ素原子は、メチレン基、エチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基などを介して一般式(1)中のNH基と結合していてもよい。
【0058】
一般式(1)における、Xで表される4価の有機基とYで表される2価の有機基との組み合わせは特に限定されるものではない。Xで表される4価の有機基とYで表される2価の有機基との組み合わせとしては、Xが式(A)で表される基及び式(E)で表される基の併用であり、Yが式(G)で表される基の組み合わせ;Xが式(D)で表される基及び式(E)で表される基の併用であり、Yが式(G)で表される基の組み合わせ等が挙げられる。
Xとして式(A)で表される基及び式(E)で表される基を併用し、Yとして一般式(G)で表される基を用いることで、300℃以下の比較的低い温度で加熱処理しても、得られるポリイミド樹脂の弾性率がより向上する傾向にある。
Xが式(A)で表される基及び式(E)で表される基の併用である場合、式(A)で表される基XAと、式(E)で表される基XEとの個数基準の比率(XA/XE)は、1/99~99/1の範囲であることが好ましく、50/50~90/10の範囲であることがより好ましく、70/30~90/10の範囲であることがさらに好ましい。
【0059】
及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、支持体から剥離した後の積層体に付着した硬化膜の残渣の除去性の観点から、R及びRの少なくとも一方は1価の有機基であることが好ましい。1価の有機基としては、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基又は不飽和二重結合を有する有機基を含むことが好ましく、炭素数1若しくは2の脂肪族炭化水素基又は下記一般式(2)で表される基を含むことがより好ましく、下記一般式(2)で表される基を含むことがさらに好ましい。特に1価の有機基が不飽和二重結合を有する有機基、好ましくは下記一般式(2)で表される基を含むことでi線の透過率が高く、300℃以下の低温硬化時にも良好な硬化膜を形成できる傾向にある。
炭素数1~4の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
【0060】
【化7】
【0061】
一般式(2)中、R~R10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基を表し、Rは2価の連結基を表す。
【0062】
一般式(2)におけるR~R10で表される脂肪族炭化水素基の炭素数は1~3であり、1又は2であることが好ましい。R~R10で表される脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0063】
一般式(2)におけるR~R10の組み合わせとしては、R及びRが水素原子であり、R10が水素原子又はメチル基の組み合わせが好ましい。
【0064】
一般式(2)におけるRは、2価の連結基であり、好ましくは、炭素数1~10の炭化水素基であることが好ましい。炭素数1~10の炭化水素基としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。
における炭素数は、1つ~10つが好ましく、2つ~5つがより好ましく、2つ又は3つがさらに好ましい。
【0065】
一般式(1)においては、R及びRの少なくとも一方が、前記一般式(2)で表される基であることが好ましく、R及びRの両方が前記一般式(2)で表される基であることがより好ましい。
【0066】
ポリイミド前駆体が前述の一般式(1)で表される構造単位を有する化合物を含む場合、当該化合物に含有される全構造単位のR及びRの合計に対する一般式(2)で表される基であるR及びRの割合は、50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されず、100モル%でもよい。
なお、前述の割合は、0モル%以上50モル%未満であってもよい。
【0067】
一般式(2)で表される基は、下記一般式(3)で表される基であることが好ましい。
【0068】
【化8】
【0069】
一般式(3)中、R~R10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基を表し、qは1~10の整数を表す。
【0070】
一般式(3)におけるqは1~10の整数であることが好ましく、2~5の整数であることがより好ましく、2又は3であることがさらに好ましい。
【0071】
ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物とを用いて合成されたものであってもよい。この場合、一般式(1)において、Xは、テトラカルボン酸二無水物由来の残基に該当し、Yは、ジアミン化合物由来の残基に該当する。なお、ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物に替えて、テトラカルボン酸を用いて合成されたものであってもよい。
【0072】
テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、m-ターフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、p-ターフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス{4’-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、2,2-ビス{4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス{4’-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス{4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、4,4’-スルホニルジフタル酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物等が挙げられる。
テトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0073】
ジアミン化合物の具体例としては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジフルオロ-4,4’-ジアミノビフェニル、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、2,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、2,4’-ジアミノジフェニルスルホン、2,2’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’-ジアミノジフェニルスルフィド、o-トリジン、o-トリジンスルホン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジイソプロピルアニリン)、2,4-ジアミノメシチレン、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ベンゾフェノンジアミン、ビス-{4-(4’-アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2-ビス{4-(4’-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス{4-(3’-アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,6-ジアミノヘキサン、2-メチル-1,7-ジアミノヘプタン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、2-メチル-1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,10-ジアミノデカン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、ジアミノポリシロキサン等が挙げられる。
ジアミン化合物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0074】
一般式(1)で表される構造単位を有し、かつ一般式(1)中のR及びRの少なくとも一方は1価の有機基である化合物は、例えば、下記一般式(8)で表されるテトラカルボン酸二無水物とR-OHで表される化合物とを、N-メチル-2-ピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等の溶剤中にて反応させジエステル誘導体とした後、ジエステル誘導体とHN-Y-NHで表されるジアミン化合物とを縮合反応させるか、または、テトラカルボン酸二無水物とHN-Y-NHで表されるジアミン化合物とを溶剤中にて反応させポリアミック酸を得て、R-OHで表される化合物を加え、溶剤中で反応させエステル基を導入することで、得ることができる。
ここで、前述の反応に使用する溶剤としては、後述する本開示の樹脂組成物に含まれ得る溶剤であってもよい。
N-Y-NHで表されるジアミン化合物におけるYは、一般式(1)におけるYと同様であり、具体例及び好ましい例も同様である。また、R-OHで表される化合物におけるRは、1価の有機基を表し、具体例及び好ましい例は、一般式(1)におけるR及びRの場合と同様である。
一般式(8)で表されるテトラカルボン酸二無水物、HN-Y-NHで表されるジアミン化合物及びR-OHで表される化合物は、各々、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
また、ポリイミド前駆体に含まれる前述の化合物は、下記一般式(8)で表されるテトラカルボン酸二無水物にR-OHで表される化合物を作用させてジエステル誘導体とした後、塩化チオニル等の塩素化剤を作用させて酸塩化物に変換し、次いで、HN-Y-NHで表されるジアミン化合物と酸塩化物とを反応させることで得ることができる。
さらに、ポリイミド前駆体に含まれる前述の化合物は、下記一般式(8)で表されるテトラカルボン酸二無水物にR-OHで表される化合物を作用させてジエステル誘導体とした後、カルボジイミド化合物の存在下でHN-Y-NHで表されるジアミン化合物とジエステル誘導体とを反応させることで得ることができる。
さらに、ポリイミド前駆体に含まれる前述の化合物は、下記一般式(8)で表されるテトラカルボン酸二無水物とHN-Y-NHで表されるジアミン化合物とを反応させてポリアミック酸とした後、トリフルオロ酢酸無水物の存在下でポリアミック酸をイソイミド化し、次いでR-OHで表される化合物を作用させて得ることができる。あるいは、テトラカルボン酸二無水物の一部に予めR-OHで表される化合物を作用させて、部分的にエステル化されたテトラカルボン酸二無水物とHN-Y-NHで表されるジアミン化合物とを反応させてもよい。
【0075】
【化9】

【0076】
一般式(8)において、Xは、一般式(1)におけるXと同様であり、具体例及び好ましい例も同様である。
【0077】
ポリイミド前駆体に含まれる前述の化合物の合成に用いられるR-OHで表される化合物としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸2-ヒドロキシブチル、メタクリル酸2-ヒドロキシブチル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル等が好ましく、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル及びアクリル酸2-ヒドロキシエチルがより好ましい。
【0078】
ポリイミド前駆体の分子量には特に制限はなく、例えば、重量平均分子量で10,000~200,000であることが好ましい。
重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定することができ、標準ポリスチレン検量線を用いて換算することによって求めることができる。
【0079】
本開示の樹脂組成物は、ポリイミド前駆体以外の樹脂成分を含有していてもよい。例えば、耐熱性の観点から、本開示の樹脂組成物は、ポリイミド樹脂、ノボラック樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等のその他の樹脂を含有していてもよい。その他の樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0080】
本開示の樹脂組成物では、樹脂成分全量に対するポリイミド前駆体の含有率は、50質量%~100質量%であることが好ましく、70質量%~100質量%であることがより好ましく、90質量%~100質量%であることがさらに好ましい。
【0081】
(溶剤)
本開示の樹脂組成物は、溶剤をさらに含有することが好ましい。溶剤としては、特に限定されず、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ‐ブチロラクトン、N,N‐ジメチルアセトアミド、シクロペンタノン、ジメチルスルホキシド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N,2-トリメチルプロピオンアミド、ジメチルイミダゾリジノン、N-ホルミルピぺリジン、N-ジメチルモルホリン及びプロピレングリコール1-モノメチルエーテル-2-アセタートが挙げられる。中でも、溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、γ-ブチロラクトン、シクロペンタノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン及びN-ホルミルピぺリジンが好ましい。溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0082】
本開示の樹脂組成物が溶剤を含有する場合、溶剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して50質量部~10000質量部であることが好ましく、100質量部~10000質量部であることがより好ましい。
【0083】
(重合性モノマー)
本開示の樹脂組成物は、硬化膜の物性を向上させる観点から、重合性モノマーをさらに含有することが好ましい。重合性モノマーは、重合性の不飽和二重結合を含む基を少なくとも一つ有することが好ましく、カップリング剤等により重合可能である観点から、(メタ)アクリル基を少なくとも一つ有することがより好ましい。架橋密度の向上及び光感度の向上の観点から、重合性の不飽和二重結合を含む基を、2つ~4つ有することが好ましく、支持体から剥離した後の積層体に付着した硬化膜の残渣の除去性の観点から、2つ有することがより好ましい。
重合性モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0084】
(メタ)アクリル基を有する重合性モノマーとしては、特に限定されず、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリメタクリレート、アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート及びメタクリロイルオキシエチルイソシアヌレートが挙げられる。中でも、重合性モノマーとしては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート及びテトラエチレングリコールジメタクリレートが好ましい。
【0085】
(メタ)アクリル基を有する重合性モノマー以外の重合性モノマーとしては、特に限定されず、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、4-ビニルトルエン、4-ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、メチレンビスアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド及びN-メチロールアクリルアミドが挙げられる。
【0086】
本開示の樹脂組成物が重合性モノマーを含有する場合、重合性モノマーの含有量は特に限定されず、ポリイミド前駆体100質量部に対して、1質量部~50質量部であることが好ましく、硬化膜の熱特性の観点から、5質量部~50質量部であることがより好ましく、5質量部~40質量部であることがさらに好ましい。
【0087】
本開示の樹脂組成物が重合性モノマーを含有する場合、重合性モノマー全量に占める(メタ)アクリル基を有する重合性モノマーの割合は、硬化膜の物性の観点から、50質量%~100質量%であることが好ましく、70質量%~100質量%であることがより好ましく、90質量%~100質量%であることがさらに好ましい。
【0088】
(熱重合開始剤)
本開示の樹脂組成物は、硬化膜の物性を向上させる観点から、熱重合開始剤をさらに含有することが好ましい。また、本開示の樹脂組成物は、前述の重合性モノマー及び熱重合開始剤の両方を含有することがより好ましい。
【0089】
熱重合開始剤としては特に限定されず、メチルエチルケトンペルオキシド等のケトンペルオキシド、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロペルオキシド、クメンハイドロペルオキシド、p-メンタンハイドロペルオキシド等のハイドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド等のジアシルペルオキシド、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等のパーオキシエステル、ビス(1-フェニル-1-メチルエチル)ペルオキシドなどが挙げられる。熱重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0090】
本開示の樹脂組成物が熱重合開始剤を含有する場合、熱重合開始剤の含有量は、ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.1質量部~20質量部であってもよく、1質量部~15質量部であってもよく、5質量部~10質量部であってもよい。
【0091】
(光吸収剤)
本開示の樹脂組成物は、特定波長の光の透過率、例えば、355nmの光の透過率を抑制する観点から、光吸収剤をさらに含有していてもよい。
光吸収剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0092】
光吸収剤の具体例としては、
ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン等のベンゾフェノン誘導体;
2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン誘導体;
チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;
ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール等のベンジル誘導体;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾイン誘導体;
1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシプロパントリオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、オキシムエステル類などが挙げられる。
【0093】
光吸収剤の具体例は、前述の化合物に限定されない。
光吸収剤の他の具体例としては、ベンゾトリアゾール系光吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系光吸収剤、ベンゾフェノン系光吸収剤、サリチル酸系光吸収剤、感放射線性ラジカル重合開始剤、光感応性酸発生剤等の有機系光吸収剤;
フェノールノボラック、ナフトールノボラック等のノボラック樹脂;
C.I.ピグメントブラック7、C.I.ピグメントブラック31、C.I.ピグメントブラック32、C.I.ピグメントブラック35等の黒色顔料(例えばカーボンブラック);
C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントレッド254等の非黒色顔料;
C.I.バットブルー4、C.I.アシッドブルー40、C.I.ダイレクトグリーン28、C.I.ダイレクトグリーン59、C.I.アシッドイエロー11、C.I.ダイレクトイエロー12、C.I.リアクティブイエロー2、C.I.アシッドレッド37、C.I.アシッドレッド180、C.I.アシッドブルー29、C.I.ダイレクトレッド28、C.I.ダイレクトレッド83等の染料などが挙げられる。
【0094】
本開示の樹脂組成物が光吸収剤を含有する場合、光吸収剤の含有量は、ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.1質量部~1.0質量部であってもよく、0.2質量部~0.8質量部であってもよい。
【0095】
(カップリング剤)
本開示の樹脂組成物は、カップリング剤をさらに含有していてもよい。カップリング剤は、加熱処理において、ポリイミド前駆体と反応して架橋する、又はカップリング剤自身が重合する。これにより、得られる硬化膜と支持体との接着性をより向上させることができる傾向にある。
【0096】
カップリング剤の具体例は特に限定されるものではない。カップリング剤としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシメチル-3-ピペリジノプロピルシラン、ジエトキシ-3-グリシドキシプロピルメチルシラン、N-(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)スクシンイミド、N-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕フタルアミド酸、ベンゾフェノン-3,3’-ビス(N-〔3-トリエトキシシリル〕プロピルアミド)-4,4’-ジカルボン酸、ベンゼン-1,4-ビス(N-〔3-トリエトキシシリル〕プロピルアミド)-2,5-ジカルボン酸、3-(トリエトキシシリル)プロピルスクシニックアンハイドライド、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系接着助剤;などが挙げられる。
【0097】
カップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0098】
本開示の樹脂組成物がカップリング剤を含有する場合、カップリング剤の含有量は、ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.1質量部~20質量部が好ましく、0.3質量部~10質量部がより好ましく、1質量部~10質量部がさらに好ましい。
【0099】
(界面活性剤及びレベリング剤)
本開示の樹脂組成物は、界面活性剤及びレベリング剤の少なくとも一方を含有してもよい。樹脂組成物が界面活性剤及びレベリング剤の少なくとも一方を含有することにより、塗布性(例えばストリエーション(膜厚のムラ)の抑制)を向上させることができる。
【0100】
界面活性剤又はレベリング剤としては、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等が挙げられる。
【0101】
界面活性剤及びレベリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0102】
本開示の樹脂組成物が界面活性剤及びレベリング剤の少なくとも一方を含有する場合、界面活性剤及びレベリング剤の合計の含有量は、ポリイミド前駆体100質量部に対して0.01質量部~10質量部であることが好ましく、0.05質量部~5質量部であることがより好ましく、0.05質量部~3質量部であることがさらに好ましい。
【0103】
(重合禁止剤)
本開示の樹脂組成物は、良好な保存安定性を確保する観点から、重合禁止剤を含有していてもよい。重合禁止剤としては、ラジカル重合禁止剤、ラジカル重合抑制剤等が挙げられる。
【0104】
重合禁止剤の具体例としては、p-メトキシフェノール、ジフェニル-p-ベンゾキノン、ベンゾキノン、ハイドロキノン、ピロガロール、フェノチアジン、レゾルシノール、オルトジニトロベンゼン、パラジニトロベンゼン、メタジニトロベンゼン、フェナントラキノン、N-フェニル-2-ナフチルアミン、クペロン、2,5-トルキノン、タンニン酸、パラベンジルアミノフェノール、ニトロソアミン類等が挙げられる。重合禁止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0105】
本開示の樹脂組成物が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、樹脂組成物の保存安定性及び得られる硬化膜の耐熱性の観点から、ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.01質量部~30質量部であることが好ましく、0.01質量部~10質量部であることがより好ましく、0.05質量部~5質量部であることがさらに好ましい。
【0106】
本開示の樹脂組成物は、ポリイミド前駆体を含有し、任意成分として溶剤、重合性モノマー、熱重合開始剤、光吸収剤、カップリング剤、界面活性剤、レベリング剤、重合禁止剤等をさらに含有し、本開示の効果を損なわない範囲でその他の成分及び不可避不純物を含有してもよい。
本開示の樹脂組成物の、例えば、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上又は100質量%が、
ポリイミド前駆体、
ポリイミド前駆体及び溶剤、
ポリイミド前駆体、溶剤、並びに、重合性モノマー及び熱重合開始剤の少なくとも一方、
ポリイミド前駆体及び溶剤並びに、任意成分として重合性モノマー、熱重合開始剤、光吸収剤、カップリング剤、界面活性剤、レベリング剤、及び重合禁止剤からなる群より選択される少なくともいずれか1つ、
ポリイミド前駆体、溶剤、重合性モノマー、熱重合開始剤及び光吸収剤又は
ポリイミド前駆体、溶剤、重合性モノマー、熱重合開始剤及び光吸収剤並びに、任意成分としてカップリング剤、界面活性剤、レベリング剤、及び重合禁止剤からなる群より選択される少なくともいずれか1つ、
からなっていてもよい。
【0107】
<硬化膜>
本開示の硬化膜は、本開示の樹脂組成物を硬化してなる。本開示の硬化膜は、本開示の樹脂組成物を用いて支持体上に作製され、硬化膜上に積層体を作製した後に積層体を支持体から分離することで積層体を得る方法に用いられる。
【0108】
次に、硬化膜の作製方法について説明する。上述の硬化膜の作製方法としては、例えば、(α)樹脂組成物を、支持体上に塗布、乾燥して樹脂膜を形成する工程と、樹脂膜を加熱処理する工程と、を含む方法、(β)離型処理が施されたフィルム上に樹脂組成物を用いて一定膜厚で成膜した後、樹脂膜を支持体へラミネート方式により転写する工程と、転写後に支持体上に形成された樹脂膜を加熱処理する工程と、を含む方法が挙げられる。平坦性の点から、前記(α)の方法が好ましい。この方法により、平坦な硬化膜が得られやすく、硬化膜上に積層体を形成した際に信頼性に優れる。
【0109】
樹脂組成物の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、インクジェット法、及びスリットコート法が挙げられる。
【0110】
支持体の材質は、積層体を平坦な状態で維持し、積層体を作製する工程及び搬送作業時に破損しない材料であることが好ましく、積層体を作製する工程にて積層体の反りを抑制する観点から、充分な剛性を有する材料であることが好ましい。支持体としては、アクリル板、ガラス基板、シリコンウエハ等の半導体基板、TiO基板、SiO基板等の金属酸化物絶縁体基板、窒化ケイ素基板、銅基板、銅合金基板などが挙げられる。
【0111】
支持体側から硬化膜にレーザー光等の活性エネルギー線を照射して硬化膜を変質させて積層体を支持体から分離する場合、支持体は活性エネルギー線を透過可能なものであることが好ましい。例えば、アクリル板又はガラス基板が好ましく、耐熱性の観点から、ガラス基板が好ましい。
【0112】
また、積層体を作製する工程にて硬化膜と支持体との剥離を抑制する観点及び以降の工程である封止時の反りを抑える観点から、支持体の25℃から300℃における熱膨張率は3ppm/K~15ppm/Kであることが好ましく、5ppm/K~15ppm/Kであることがより好ましい。
【0113】
支持体の形状、大きさ等については、限定されず、作製する積層体の形状、大きさ等に応じて適宜選択すればよく、ウエハ状、パネル状(例えば、正方形状)等であってもよい。
【0114】
支持体の厚さは、積層体を作製する工程にて積層体の反りを抑制する観点及び積層体の生産性の観点から、100μm~10000μmであることが好ましく、100μm~2000μmであることがより好ましい。
また、支持体側から硬化膜にレーザー光を照射して硬化膜を変質させて積層体を支持体から好適に分離する観点から、支持体の波長355nmの光の透過率は90%以上であることが好ましい。
【0115】
スピンコート法では、例えば、回転速度が300rpm(回転毎分)~3,500rpm、好ましくは500rpm~1,500rpm、加速度が500rpm/秒~15,000rpm/秒、回転時間が30秒~300秒という条件にて、前記樹脂組成物をスピンコーティングしてもよい。
【0116】
樹脂組成物を支持体、フィルム等に塗布した後に乾燥工程を含んでもいてもよい。ホットプレート、オーブン等を用いて乾燥を行ってもよい。乾燥温度は、75℃~130℃が好ましく、硬化膜の平坦性向上の観点から、90℃~120℃がより好ましい。乾燥時間は、30秒間~5分間が好ましい。
乾燥は、2回以上行ってもよい。これにより、上述の樹脂組成物を膜状に形成した樹脂膜を得ることができる。
【0117】
また、スリットコート法では、例えば、薬液吐出速度10μL/秒~400μL/秒、薬液吐出部高さ0.1μm~1.0μm、ステージ速度(又は、薬液吐出部速度)1.0mm/秒~50.0mm/秒、ステージ加速度10mm/秒~1000mm/秒、減圧乾燥時の到達真空度10Pa~100Pa、減圧乾燥時間30秒~600秒、乾燥温度60℃~150℃、及び乾燥時間30~300秒という条件にて、前記樹脂組成物をスリットコーティングしてもよい。
【0118】
形成された樹脂膜を加熱処理してもよい。加熱温度は、100℃~450℃が好ましく、150℃~400℃が好ましく、250℃~380℃がより好ましい。加熱温度が上記範囲内であることにより、支持体へのダメージを抑制してプロセスの省エネルギー化を実現しつつ、硬化膜を好適に作製することができる。
【0119】
加熱時間は、5時間以下が好ましく、30分間~3時間がより好ましい。加熱処理の時間が上記範囲内であることにより、架橋反応又は脱水閉環反応を充分に進行させることができる。
加熱処理の雰囲気は大気中であっても、窒素等の不活性雰囲気中であってもよいが、樹脂膜の酸化を防ぐことができる観点から、窒素雰囲気下が好ましい。
【0120】
加熱処理に用いられる装置としては、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、マイクロ波硬化炉等が挙げられる。
【0121】
支持体上に作製された硬化膜の平均厚さは、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm~10μmであることがより好ましく、0.5μm~5μmであることがさらに好ましい。
【0122】
<積層体の製造方法>
以下、本開示の樹脂組成物を用いた本開示の積層体の製造方法について説明する。本開示の積層体の製造方法は、本開示の樹脂組成物を準備する工程と、支持体上に前記樹脂組成物の硬化膜を形成する工程と、前記硬化膜上に積層体を作製する工程と、前記積層体を前記支持体から分離する工程と、を含む。
【0123】
本開示の積層体の製造方法は、本開示の樹脂組成物を準備する工程を含む。例えば、前述のようにしてポリイミド前駆体を合成し、合成したポリイミド前駆体を、任意成分である溶剤、重合性モノマー、熱重合開始剤、光吸収剤、カップリング剤、界面活性剤、レベリング剤、重合禁止剤等と必要に応じて混合することで本開示の樹脂組成物を準備してもよい。
【0124】
本開示の積層体の製造方法は、支持体上に樹脂組成物の硬化膜を形成する工程を含む。硬化膜を形成する工程については、前述の硬化膜を形成方法と同様である。
【0125】
本開示の積層体の製造方法は、硬化膜上に積層体を作製する工程を含む。積層体としては、半導体装置、より具体的には、配線層、絶縁層及び半導体チップを備える半導体装置等が挙げられる。また、半導体装置は、半導体ウエハ、半導体チップ、ガラス基板、樹脂基板、金属基板、金属箔等の金属膜、研磨パッド、絶縁層等の樹脂塗膜、配線層、封止材などを必要に応じて備えていてもよい。半導体ウエハ及び半導体チップには、バンプ、配線、スルーホール、スルーホールビア、絶縁膜及び各種の素子から選ばれる少なくとも1種が形成されていてもよいし、各種の素子が形成又は搭載されていてもよい。樹脂塗膜としては、例えば、有機成分を主成分として含有する層が挙げられ;具体的には、感光性樹脂から形成される感光性樹脂層、絶縁性材料から形成される絶縁性樹脂層、感光性絶縁樹脂材料から形成される感光性絶縁樹脂層が挙げられる。
【0126】
以下では、積層体として配線層、絶縁層及び半導体チップを備える半導体装置を作製する方法について説明する。このとき、積層体を作製する工程は、硬化膜上に配線層を形成する工程と、配線層間を少なくとも絶縁する絶縁層を形成する工程と、絶縁層上に半導体チップを配置し、半導体チップを配線層と接続する工程と、を含むことが好ましい。
【0127】
まず、硬化膜上に金属膜を成膜してもよい。金属膜を成膜する方法としてはスパッタリングが挙げられる。また金属膜に含まれる成分としては、銅、金、銀、白金、鉛、錫、ニッケル、コバルト、インジウム、ロジウム、クロム、タングステン、ルテニウム等の金属、これらの2種類以上からなる合金、これらの窒化物などが挙げられる。金属膜に含まれ得る金属、合金、窒化物としては、それぞれ1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0128】
金属膜の平均厚さは、特に限定されず、例えば、10nm~1000nmであることが好ましい。
【0129】
次に、金属膜上にパターニングされたレジスト層を形成した後、金属膜上に配線層を形成してもよい。レジストを含む液状体を金属膜上に付与してもよい。またフィルム状のレジスト材でもよく、ラミネート等によりレジスト層を金属膜上に形成してもよい。レジストは、ポジ型であってもネガ型であってもよく、プロセスに応じて適宜設定できる。
【0130】
レジストを含む液状体の付与方法としては、特に限定されず、スピンコート法、ディッピング法、ローラーブレード法、ドクターブレード法、スプレー法、スリットノズル法、インクジェット法等の塗布法が挙げられる。また、レジストを含む液状体を塗布した後、加熱等を行ってもよい。
【0131】
レジスト層が形成された後、レジストパターニング工程が行われる。レジストパターニング工程では、任意のパターンでレジスト層を露光し、その後現像液に浸すことにより現像する。これらの処理では、レジスト層を露光する前又はレジスト層を露光した後において、レジスト層を加熱する工程を含むことが好ましい。
【0132】
パターニングされたレジスト層が形成された後、金属膜上に配線層を形成する。配線層形成工程では、スパッタリング等の手法により、金属膜と接続するように配線層を形成することが好ましい。配線層の形成に使用される材料としては、金、銀、銅、アルミ等の金属、導電性樹脂などが挙げられる。配線層を形成した後、パターニングされたレジスト層を除去する。
【0133】
また、配線層形成工程の後にめっき工程を行ってもよい。めっき工程では、無電解めっき又は電解めっきにより配線層上部にめっき層を形成する。めっき工程は、対象物を所定のめっき槽に浸すことにより、配線層上部にめっき層を形成する。めっき層を形成するために用いる材料としては、ハンダめっき、銅めっき、金めっき、ニッケルめっき、銀錫めっき等に用いる薬液が挙げられる。なお、スパッタリング等の手法により十分な厚さの配線層を形成できる場合は、めっき工程を省略してもよい。
【0134】
次に、配線層間を少なくとも絶縁する絶縁層を形成する。絶縁層を形成するために用いる材料としては、絶縁性を有する絶縁性材料であれば特に限定されず、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ベンゾシクロブテン、フェノール樹脂、アクリル樹脂等の樹脂材料等が挙げられる。絶縁性材料は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。絶縁層形成工程では、例えば、配線層間及び配線層上に絶縁性材料を含む液状液を付与すればよい。絶縁性材料を含む液状液を付与する方法としては、特に限定されず、スピンコート法、ディッピング法、ローラーブレード法、ドクターブレード法、スプレー法、スリットノズル法、インクジェット法等の塗布法が挙げられる。一例として、支持体をステージ上に保持した状態でステージとスリットノズルとを相対的に移動させつつ、絶縁性材料を含む液状液をスリットノズルから吐出することで配線層間及び配線層上に絶縁性材料を含む液状液を付与してもよい。また、絶縁性材料を含む液状液を付与した後、加熱等により乾燥させてもよい。
【0135】
続いて、上述の絶縁層に対し、層間の接続を取るためにビアを形成する。ビアを形成する方法としては、感光性樹脂を用いてパターニングで形成する方法、非感光性樹脂に対し加工を行う方法等が挙げられる。感光性樹脂を用いる場合、任意のパターンで感光性樹脂層を露光し、その後現像液に浸すことにより現像すればよい。これらの処理では、感光性樹脂層を露光する前又は感光性樹脂層を露光した後において、感光性樹脂層を加熱する工程を含むことが好ましい。
【0136】
感光性樹脂層を加熱する工程では、信頼性の観点から、100℃~400℃の範囲、好ましくは150℃~400℃の範囲、より好ましくは180℃~380℃の範囲で加熱すればよい。また、本開示では、硬化膜の耐熱温度が高く、例えば、280℃~350℃で加熱しても硬化膜の変質が抑制されており、製造される半導体装置の高信頼性化が可能となる。
【0137】
感光性樹脂層をパターニングする際に、照射する活性エネルギー線は、ブロードバンド光(波長350nm~450nm)、i線等の紫外線、可視光線、放射線などが挙げられ、中でも、i線であることが好ましい。露光装置としては、平行露光機、投影露光機、ステッパー、スキャナ露光機、プロキシミティ露光機等を用いてもよい。
【0138】
非感光性樹脂を用いる場合、ビアを形成する方法は特に限定されず、非感光性樹脂層上にレジスト層を作製して加工してもよいし、レーザービア、ドライエッチング等で加工してもよい。
【0139】
また、蒸着、CVD、スパッタリング等で十分な厚さの絶縁層を形成できる場合、絶縁層を用いてビアを形成してもよい。
【0140】
次に、絶縁層上に半導体チップを配置し、半導体チップを配線層と接続する。このとき、接続用端子を介して半導体チップと配線層とを接続してもよい。
【0141】
上述の配線層を形成する方法と同様の方法で、半導体チップと配線層とを接続する接続用端子を形成してもよい。接続用端子に用いられる金属としては、銅、金、銀、白金、鉛、錫、ニッケル、コバルト、インジウム、ロジウム、クロム、タングステン、ルテニウム等の金属、これらの2種類以上からなる合金、これらの窒化物などが挙げられる。フリップチップ実装により半導体チップと配線層とを接続してもよく、フリップチップボンダーを用い、接続用端子を介してバンプを備える半導体チップを配線層と接続してもよい。また、半導体チップと接続用端子との間の信頼性を向上させる観点から、その間にアンダーフィル材を供給してもよい。
【0142】
積層体を作製する工程は、配線層と接続された半導体チップを封止する工程をさらに含んでいてもよい。封止材を用いて半導体チップを封止する方法としては、特に限定されず、例えば、コンプレッションモールド法及びトランスファモールド法が挙げられる。また、半導体チップを封止材を用いて封止した後に封止材を加熱処理してもよい。
【0143】
封止後の半導体装置の反りを抑制する観点から、支持体の25℃から300℃における熱膨張率は3ppm/K~15ppm/Kであるときに、封止材の25℃から300℃における熱膨張率は4ppm/K~8ppm/K(CTE1:ガラス転移温度(Tg)未満のCTE)であることが好ましい。支持体及び封止材の熱膨張率を調節することで、封止後の半導体装置の反りが抑制されるため、半導体チップの破損抑制、歩留まり低下の抑制等が可能となる。
【0144】
本開示の積層体の製造方法は、積層体を支持体から分離する工程を含む。例えば、この工程では、加熱により硬化膜を変質させた後に積層体を支持体から分離してもよく、活性エネルギー線を硬化膜に照射して硬化膜を変質させた後に積層体を支持体から分離してもよい。後者としては、支持体側から硬化膜にレーザー光等の活性エネルギー線を照射して硬化膜を変質させてもよい。
【0145】
硬化膜にレーザー光等の活性エネルギー線を照射することで硬化膜が変質して硬化膜の接着力が低下する。これにより、活性エネルギー線を照射した後に、積層体を支持体から容易に分離することができる。
【0146】
活性エネルギー線は、紫外領域の波長を有する光であることが好ましく、例えば、波長10nm~400nmの紫外線が好ましく、波長300nm~400nmの紫外線がより好ましい。活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、LEDランプ、レーザーが挙げられる。
【0147】
レーザーの例としては、YAGレーザー、ルビーレーザ、ガラスレーザ、YVOレーザー、LDレーザー、ファイバーレーザ等の固体レーザー、色素レーザー等の液体レーザー、COレーザー、エキシマレーザ、Arレーザー、He-Neレーザー等の気体レーザー、半導体レーザー、自由電子レーザーなどが挙げられる。
【0148】
活性エネルギー線の種類、光源の種類、レーザーの種類等は、硬化膜の組成に応じて適宜選択すればよい。
【0149】
活性エネルギー線を照射する等により硬化膜を変質させた後に、積層体を支持体から分離することが好ましい。このとき、対象物について積層体を鉛直下側、支持体を鉛直上側に配置した状態で支持体を鉛直上方向に持ち上げることにより、硬化膜が物理的に破壊されて積層体を支持体から分離することができる。支持体を持ち上げる作業は、支持体を吸着して持ち上げる装置を用いてもよく、作業者が支持体を持ち上げてもよい。このとき、積層体は、例えばステージ等に吸着されていることが好ましい。
【0150】
本開示の積層体の製造方法は、支持体から分離された後の積層体上に残る硬化膜の残渣を除去する工程をさらに含むことが好ましい。この工程では、分離された支持体上に残る硬化膜の残渣を除去してもよい。
【0151】
硬化膜の残渣を除去する方法としては、研磨、溶剤等による洗浄などが挙げられ、利便性の観点から溶剤等による洗浄が好ましい。
【0152】
硬化膜の残渣を除去する際に用いられる溶剤としては、配線層、封止樹脂等の積層体が備えてもよい各構成に含まれる材料を溶解させずに硬化膜の残渣を除去可能な溶剤であれば特に限定されない。硬化膜の残渣への溶剤の供給は、例えば、ディスペンサ等の供給装置を積層体上で走査させて行ってもよく、溶剤を貯留した槽に積層体を浸漬させて行ってもよい。
【0153】
硬化膜の残渣を除去する溶剤としては、例えば、水;ペンタン、へキサン、デカン、リモネン、メシチレン、ジペンテン、ピネン、ビシクロヘキシル、シクロドデセン、1-t-ブチル-3,5-ジメチルベンゼン、ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素溶剤;アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジグライム等のアルコール又はエーテル溶剤;炭酸エチレン、酢酸エチル、酢酸N-ブチル、乳酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、メトキシプロピルアセテート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアセテート、炭酸プロピレン、γ-ブチロラクトン等のエステル溶剤又はラクトン溶剤;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン等のケトン溶剤;N-メチル-2-ピロリジノン、3-メトキシ-N、N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド又はラクタム溶剤などが挙げられる。前述の溶剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0154】
硬化膜の残渣を除去する溶剤は塩基を含んでいてもよい。
塩基の具体例としては、
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機塩基、
エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類;アンモニア;テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド等のアンモニウム塩等の有機塩基などが挙げられる。
【0155】
一般的なレジスト剥離液等を使用して硬化膜の残渣を除去してもよい。
【0156】
本開示の積層体の製造方法は、硬化膜の残渣を除去する工程の後に、積層体をエッチングする工程、積層体をダイシングする工程等を含んでいてもよい。積層体が半導体チップを含む半導体装置である場合、半導体チップを含む範囲でダイシングを行うことによって、個片化した半導体装置が得られる。
【0157】
以下、図1図3を参照しながら本開示の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付す。
【0158】
図1の(a)に示すように、支持体1を準備する。次に、ポリイミド前駆体を含む樹脂組成物を、支持体1上に塗布、乾燥して樹脂膜を形成する。形成された樹脂膜を加熱処理することで、図1の(b)に示すように、支持体1上に硬化膜2が形成される。
図1の(c)に示すように、硬化膜2上に金属膜3を成膜する。金属膜3は、スパッタリング等により成膜すればよい。
【0159】
次に、レジストを含む液状体を金属膜3上に付与してレジスト層を形成する。レジスト層が形成された後、任意のパターンでレジスト層を露光し、その後現像液に浸すことにより現像する。また、レジスト層を露光する前又はレジスト層を露光した後において、レジスト層を加熱してもよい。これにより、図1の(d)に示すように、パターニングされたレジスト層4が金属膜3上に形成される。
【0160】
パターニングされたレジスト層4が形成された後、パターン間に銅配線等の配線層5を形成する。配線層5は、スパッタリング等により形成すればよい。また、十分な厚さの配線層5を形成する観点から、配線層形成工程の後にめっき工程を行ってもよい。以上により、図1の(e)に示すように、金属膜3上に配線層5が形成される。
【0161】
次に、絶縁性材料を含む液状液をスリットノズルから吐出することで配線層5間及び配線層5上に絶縁性材料を含む液状液を付与し、付与された液状液を加熱により乾燥させる。これにより、図2の(a)に示すように配線層5間及び配線層5上に絶縁層6を形成する。
【0162】
図2の(b)に示すように、絶縁層6に対し、ビア7を形成する。例えば、レーザービア、ドライエッチング等で絶縁層6を加工してビア7を形成してもよい。その後、図2の(c)に示すように、ビア7にスパッタリング等により接続用端子8を形成する。
【0163】
次に、フリップチップボンダーを用い、接続用端子8を介してバンプ11を備える半導体チップ10を配線層5と接続する。これにより、図2の(d)に示すように、接続用端子8を介して半導体チップ10と配線層5とが接続された半導体装置が得られる。
【0164】
図3の(a)に示すように、配線層5と接続された半導体チップ10を封止材20を用いて封止してもよい。また、半導体チップ10を封止した後に封止材20を加熱処理してもよい。
【0165】
次に、図3の(b)に示すように、支持体1側から硬化膜2に活性エネルギー線Xを照射して硬化膜2を変質させてもよい。活性エネルギー線Xを照射することにより硬化膜2を変質させた後に、半導体装置を支持体1から分離する。これにより、図3の(c)に示すように、硬化膜2の残渣30が金属膜3に付着した半導体装置100が得られる。
【0166】
溶剤による洗浄により、半導体装置上に残る残渣30を除去する。以上により、図3の(d)に示すように、残渣30が除去された半導体装置100が得られる。さらに、エッチング等により金属膜3を除去することにより、図3の(e)に示すように半導体装置100が得られる。
【実施例0167】
以下、実施例及び比較例に基づき、本開示についてさらに具体的に説明する。尚、本開示は下記実施例に限定されるものではない。
【0168】
<合成例1:ピロメリット酸-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステルの合成>
0.5リットルのポリ瓶中に、160℃の乾燥機で24時間乾燥させたピロメリット酸二無水物(以下、PMDAとも記載する。)43.5g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル54.9g及びハイドロキノン0.220gをN-メチル-2-ピロリドン394gに溶解させ、1,8-ジアザビシクロウンデセンを触媒量添加して混合液を準備した。混合液を室温下(25℃)で24時間撹拌し、エステル化を行うことでピロメリット酸-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステル溶液を得た。この溶液をPMDA(HEMA)溶液とする。
【0169】
<合成例2:4,4’-オキシジフタル酸ジエステルの合成>
0.5リットルのポリ瓶中に、160℃の乾燥機で24時間乾燥させた4,4’-オキシジフタル酸無水物(以下、ODPAとも記載する。)15.5gとメタクリル酸2-ヒドロキシエチル14.1gとハイドロキノン0.1gをN-メチル-2-ピロリドン118gに溶解させ、1,8-ジアザビシクロウンデセンを触媒量添加して混合液を準備した。混合液を室温下(25℃)で48時間撹拌し、エステル化を行うことで4,4’-オキシジフタル酸-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステル溶液を得た。この溶液をODPA(HEMA)溶液とする。
【0170】
<合成例3:ポリイミド前駆体の合成(A1の合成)>
撹拌機及び温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に合成例1で得られたPMDA(HEMA)溶液493.2gと合成例2で得られたODPA(HEMA)溶液148.1gを入れ、その後、氷冷下で塩化チオニル124.9gを反応液温度が10度以下を保つように滴下漏斗を用いて滴下した。このとき、PMDA(HEMA)と、ODPA(HEMA)とのモル比は、4:1であった。塩化チオニルの滴下が終了した後、氷冷下で2時間反応を行いPMDA(HEMA)とODPA(HEMA)の酸クロリドの溶液を得た。次いで、滴下漏斗を用いて、N-メチル-2-ピロリドン227gに2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)80g、ピリジン83g及びハイドロキノン0.2gを溶解させた溶液を氷冷化で反応液の温度が10℃を超えないように注意しながら滴下した。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリアミック酸エステルであるポリイミド前駆体を得た。これをA1とする。ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法を用いて、標準ポリスチレン換算により求めたA1の重量平均分子量は40,000であった。1gのA1をN-メチル-2-ピロリドン1.5gに溶解させ、ガラス基板上にスピンコートで塗布し、100℃のホットプレート上で180秒加熱してN-メチル-2-ピロリドンを揮発させて厚さ20μmの塗膜を形成した。この時、得られた塗膜のi線透過率は30%であった。
【0171】
<合成例4:ポリイミド前駆体の合成(A2の合成)>
上述の合成例1~3の合成のうち、N-メチル-2-ピロリドンを3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミドに変更した以外は同様にしてポリイミド前駆体を得た。これをA2とする。ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法を用いて、標準ポリスチレン換算により、求めたA2の重量平均分子量は42,000であった。またエステル化率は100モル%であった。
【0172】
<合成例5:ポリイミド前駆体の合成(A3の合成)>
160℃の乾燥機で24時間乾燥させたPMDA 30.20gとODPA 7.51gをN-メチル-2-ピロリドン400gに溶かした溶液に、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)49.5gをN-メチル-2-ピロリドン 100gに溶解させた溶液を滴下して混合液を準備した。混合液を30℃で4時間攪拌することで反応液を得た。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリアミック酸であるポリイミド前駆体を得た。これをA3とする。ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法を用いて、標準ポリスチレン換算により求めたA3の重量平均分子量は36,000であった。
【0173】
<合成例6:ポリイミド前駆体の合成(A4の合成)>
ODPA 7.07gとDMAP 4.12gとをN-メチル-2-ピロリドン(NMP)30gに溶解させて混合液を準備した。混合液を30℃で4時間撹拌し、その後室温下で一晩撹拌することでポリアミック酸を含む反応液を得た。反応液にトリフルオロ酢酸無水物9.45gを添加した後、45℃で2~3時間撹拌した。次いで、撹拌後の反応液にメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)7.08gを添加した後、45℃で15時間程度撹拌した。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリイミド前駆体を得た。これをA4とする。ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法を用いて、標準ポリスチレン換算により求めたA4の重量平均分子量は20,000であった。
【0174】
<参考例1:A5の準備>
ポリイミド前駆体以外の高分子として、4-ヒドロキシスチレンの重合体(重量平均分子量=10000、丸善石油化学株式会社、商品名「マルカリンカーM」)を準備した。
【0175】
<重量平均分子量の測定>
A1~A5の重量平均分子量を以下のようにして測定した。具体的には、A1~A4 0.5mgを溶剤[テトラヒドロフラン(THF)/ジメチルホルムアミド(DMF)=1/1(容積比)]1mLに溶解させた溶液、及びA5 0.5mgをTHF 1mLに溶解させた溶液を用い、以下の条件で測定した。
(測定条件)
測定装置:検出器 株式会社日立製作所L4000UV
ポンプ:株式会社日立製作所L6000
株式会社島津製作所C-R4A Chromatopac
測定条件:カラムGelpack GL-S300MDT-5×2本
溶離液:A1~A4ではTHF/DMF=1/1(容積比)
A5ではTHF
LiBr(0.03mol/L)、HPO(0.06mol/L)
流速:1.0mL/min、検出器:UV270nm
標準ポリスチレン:東ソー製 TSKgel standard Polystyrene Type F-1,F-4,F-20,F-80,A-2500にて検量線を作成し使用した。
【0176】
<エステル化率>
以下の条件でNMR測定を行うことで、A1及びA4のエステル化率(A1及びA4について、HEMAと反応してなるエステル基及びHEMAと未反応のカルボキシ基の合計に対するHEMAと反応してなるエステル基の割合)を算出した。エステル化率は、A1では100モル%、A4では80モル%(残り20モル%はカルボキシ基)であった。
(測定条件)
測定機器:ブルカー・バイオスピン社 AV400M
磁場強度:400MHz
基準物質:テトラメチルシラン(TMS)
溶剤:ジメチルスルホキシド(DMSO)
【0177】
<実施例1~10及び比較例1>
(樹脂組成物の調製)
表1に示した成分及び配合量にて、実施例1~10及び比較例1の樹脂組成物を調製した。表1の配合量は、各高分子成分100質量部に対する各成分の質量部である。また、表1中の空欄は該当成分が未配合であることを意味する。
【0178】
実施例1~10及び比較例1にて用いた各成分は以下の通りである。
(高分子)
上述のA1~A5
(溶剤)
B1:3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド
B2:N-メチル-2-ピロリドン
B3:乳酸メチル
(重合性モノマー)
C1:トリエチレングリコールジメタアクリレート(TEGDMA)
C2:エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート
C3:ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン
(熱重合開始剤)
D1:ビス(1-フェニル-1-メチルエチル)ペルオキシド
(接着助剤)
E1:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
E2:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
E3:トリエトキシシリルプロピルエチルカルバメート
E4:3-ウレイドプロピルトリエトキシシランの50%メタノール溶液
E5:下記式(Y)で表される化合物
【0179】
【化10】
【0180】
<剥離性評価>
(剥離性評価用サンプルの作製)
実施例1~10及び比較例1の樹脂組成物を、塗布装置8インチスピンコーターを用いて、支持体であるガラスウエハ(TEMPAX)上にスピンコートし、乾燥工程を行い樹脂膜を形成した。
得られた樹脂膜を、縦型拡散炉を用いて、窒素雰囲気下で2時間所定温度で加熱し、硬化膜(硬化後膜厚2μm~5μm)を得た。
得られた硬化膜上に、スパッタリング装置を用いてチタン層50nm及び銅層200nmを蒸着した。膜厚の測定はSEM(走査電子顕微鏡)によって断面から測定した。
次いで、蒸着した金属層に対して、電解銅めっきを行い20μmの銅層を形成することで剥離性評価用サンプルを作製した。
【0181】
(評価方法及び評価基準)
上述の剥離性評価用サンプルに対し、レーザー照射装置5331(ESI社)を用いて、波長355nm、レーザー出力0.4W、繰り返し周波数40kHz、及び送り速度500mm/sの条件で、ガラスウエハ側からレーザー光を幅10mm、長さ100mmの範囲に対して照射した。
レーザー光を照射した後、銅層側からカッターナイフで、レーザー光を照射した範囲の外周に沿うように剥離性評価用サンプルに切り込みを入れた。そして、幅10mm、長さ100mmの範囲の樹脂組成物の硬化膜とガラスウエハの間にカッターナイフを差し入れ銅層を剥離した。
【0182】
硬化膜の剥離した部分をピンセットで保持し、ガラスウエハに対して90度の方向に引っ張り、ガラスウエハから硬化膜及び硬化膜上の金属層が分離できるか評価を行った。評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
-評価基準-
A ガラスウエハから硬化膜及び硬化膜上の金属層が、抵抗なく分離できた。
B ガラスウエハから硬化膜及び硬化膜上の金属層を分離できたが、分離に際し抵抗が生じた。
C ガラスウエハから硬化膜及び硬化膜上の金属層を分離できなかった。
【0183】
<残渣除去性の評価>
実施例1~10及び比較例1の樹脂組成物を、塗布装置8インチスピンコーターを用いて、支持体であるシリコンウエハ上にスピンコートし、乾燥工程を行い樹脂膜を形成した。
得られた樹脂膜を、縦型拡散炉を用いて、窒素雰囲気下で2時間所定温度で加熱し、硬化膜(硬化後膜厚2μm~5μm)を得た。
所定温度に加熱した薬液(Dynastrip7700、Dynaloy株式会社)に、得られたシリコンウエハ上の硬化膜を所定時間浸漬した。シリコンウエハを冷却後、アセトンで洗浄して乾燥した。
乾燥後にシリコンウエハに付着する硬化膜の膜厚を測定し、以下の式に基づいて膜厚変化率を算出した。
膜厚変化率(%)=100×[(薬液浸漬前の膜厚)-(乾燥後のパターン硬化膜の膜厚)]/薬液浸漬前の膜厚
【0184】
前述のようにして算出した膜厚変化率の値を用い、以下の基準で残渣除去性を評価した。結果を表1に示す。
-評価基準-
A 膜厚変化率が100%~90%である。
B 膜厚変化率が90%を超えて50%である。
C 膜厚変化率が50%未満である。
【0185】
<金属層との接着性評価>
実施例1~10及び比較例1の樹脂組成物を、8インチスピンコーターを用いて、シリコンウエハ上にスピンコートし、乾燥工程を行い樹脂膜を形成した。
得られた樹脂膜を、縦型拡散炉を用いて、窒素雰囲気下で2時間所定温度で加熱し、硬化膜(硬化後膜厚2μm~5μm)を得た。
得られた硬化膜上に、スパッタリング装置を用いてチタン層50nm及び銅層200nmを蒸着した。その後、縦型拡散炉を用いて、窒素雰囲気下で、2時間、表1に示す温度で加熱した。対象物を目視で観察し、硬化膜と金属層との間の剥離の有無を観察した。評価基準は以下の通りである。ここで剥離が生じないことは積層体、特に半導体装置の作製の際に歩留まりを落とさず作製できることを意味する。結果を表1に示す。
-評価基準-
A 硬化膜と金属層との間に気泡等の剥離が確認されなかった。
B 硬化膜と金属層との間に気泡等の剥離が確認された。
【0186】
<積層体作製時の適応性評価>
実施例1~10及び比較例1の樹脂組成物を、12インチスピンコータを用いて、支持体(厚さ800μm)である12インチガラスウエハ上にスピンコートし、乾燥工程を行い樹脂膜を形成した。
得られた樹脂膜を、イナートガスオーブンを用いて、窒素雰囲気下で2時間所定温度で加熱し、硬化膜付き基板(硬化後膜厚2μm~5μm)を得た。
得られた硬化膜付き基板上に、スパッタリング装置を用いてチタン層50nm及び銅層200nmを蒸着し金属薄膜層付き基板を得た。膜厚の測定はSEM(走査電子顕微鏡、)によって断面から測定した。
【0187】
金属薄膜層付き基板に対し、ドライフィルムレジストRY5110(昭和電工マテリアルズ株式会社)を真空ラミネーターを用いて、上部圧着部温度110℃、下部圧着部温度40℃、圧力0.5MPa、及び圧着時間90秒の条件でラミネートし、ドライフィルムレジスト-金属薄膜層付き基板を得た。
ドライフィルムレジスト-金属薄膜層付き基板に対し、ステッパー式露光機を用いて、露光量210mJ/cmの条件で露光を行い回路図をドライフィルムレジストにパターニングした。
上述のパターニングを行った基板について、露光後1時間~3時間以内に、現像機を用いて現像を行い、パターン付き基板を得た。現像は、現像液として1%現像液炭酸水素ナトリウム水溶液を用い、現像液温度30℃及び現像時間30秒の条件で行った。
【0188】
得られたパターン付き基板に対し、電解銅めっき処理を行い、パターン間に銅配線を形成することで銅配線-パターン付き基板を得た。電解銅めっき処理は、めっき液として奥野製薬工業株式会社の硫酸銅水溶液及び添加剤NSVシリーズを所定量配合した溶液を使用した。また、銅配線の厚さがウェハ内で4.0μm±1.0μmとなるように調整して電解銅めっきを行った。
【0189】
得られた銅配線-パターン付き基板に対し、ドライフィルムレジストの除去を行った。ドライフィルムレジストの除去は、R100S(三菱ガス化学株式会社)とR101(三菱ガス化学株式会社)と純水とを所定量配合したレジスト剥離液が貯留され、40℃に加熱された液槽に銅配線-パターン付き基板を浸漬することで行った。これにより、銅配線-金属薄膜付き基板を得た。
【0190】
次に、得られた銅配線-金属薄膜付き基板に対し、絶縁層を形成した。銅配線-金属薄膜付き基板上に12インチスピンコータを用いて、ネガ型感光性絶縁性感光材をスピンコートした後、乾燥工程を行い、厚さ5μm~6μmの感光性絶縁樹脂膜付き基板を得た。これに、ステッパー式露光機を用いて、露光量250mJ/cmの条件で露光を行い回路パターンを、上述の感光性絶縁樹脂膜にパターニングした。その後、溶剤現像機を用いて現像を行った後、イナートガスオーブンを用いて表1に示す230℃又は280℃で2時間の加熱処理により、感光性絶縁樹脂膜の硬化を行い、絶縁層-銅配線付き基板を得た。
【0191】
得られた絶縁層-銅配線付き基板上に、スパッタリング装置を用いてチタン層50nm及び銅層200nmを蒸着し金属薄膜層付き基板2を得た。膜厚の測定はSEM(走査電子顕微鏡)によって断面から測定した。
【0192】
続いて、金属薄膜層付き基板2に対し、ドライフィルムレジストRY5110(昭和電工マテリアルズ株式会社)を真空ラミネーターを用いて、上部圧着部温度110℃、下部圧着部温度40℃、圧力0.5MPa及び圧着時間90秒の条件でラミネートし、ドライフィルムレジスト-金属薄膜層付き基板2を得た。
ドライフィルムレジスト-金属薄膜層付き基板2に対し、ステッパー式露光機を用いて、露光量210mJ/cmの条件で露光を行い回路パターンをドライフィルムレジストにパターニングした。
上述のパターニングを行った基板について、露光後1時間~3時間以内に、現像機を用いて現像を行い、パターン付き基板2を得た。現像は、現像液として1%現像液炭酸水素ナトリウム水溶液を用い、現像液温度30℃及び現像時間30秒の条件で行った。
【0193】
得られたパターン付き基板2に対し、電解銅めっき処理を行い、パターン間に銅配線を形成することで銅配線-パターン付き基板2を得た。電解銅めっき処理は、めっき液として奥野製薬株式会社の硫酸銅水溶液及び添加剤NSVシリーズを所定量配合した溶液を使用した。また、銅配線の厚さが3.0μm±1.0μmとなるように調整して電解銅めっきを行った。
【0194】
得られた銅配線-パターン付き基板2に対し、ドライフィルムレジストの除去を行った。ドライフィルムレジストの除去は、R100S(三菱ガス化学株式会社)とR101(三菱ガス化学株式会社)と純水とを所定量配合したレジスト剥離液が貯留され、40℃に加熱された液槽に銅配線-パターン付き基板を浸漬することで行った。これにより、銅配線-金属薄膜付き基板2を得た。
【0195】
続いて、得られた銅配線-金属薄膜付き基板2に対し、金属薄膜層のエッチングを行い、銅配線付き基板2を得た。銅配線-金属薄膜付き基板2の金属薄膜層内にある銅層のエッチング液として、WLC-C2(三菱ガス化学株式会社)を所定の配合量で用い、チタン層のエッチング液としては、WLC-T(三菱ガス化学株式会社)を所定の配合量で用いた。金属薄膜層のエッチングを行うことで、銅配線間の金属薄膜を除去することができる。
【0196】
続いて、得られた銅配線付き基板2に対し、絶縁層を形成した。銅配線付き基板2上に12インチスピンコータを用いて、ネガ型感光性絶縁性感光材をスピンコートした後、乾燥工程を行い、厚さ5μm~6μmの感光性絶縁樹脂膜付き基板2を得た。これに、ステッパー式露光機を用いて、露光量250mJ/cmの条件で露光を行い回路パターンを、上述の感光性絶縁樹脂膜にパターニングした。その後、溶剤現像機を用いて現像を行った後、イナートガスオーブンを用いて表1に示す230℃又は280℃で2時間の加熱処理により、感光性絶縁樹脂膜の硬化を行い、絶縁層-銅配線付き基板2を得た。
【0197】
得られた絶縁層-銅配線付き基板2上に、スパッタリング装置を用いてチタン層50nm及び銅層200nmを蒸着し金属薄膜層付き基板3を得た。膜厚の測定はSEM(走査電子顕微鏡)によって断面から測定した。
【0198】
続いて、金属薄膜層付き基板3に対し、ドライフィルムレジストRY5110(昭和電工マテリアルズ株式会社)を真空ラミネーターを用いて、上部圧着部温度110℃、下部圧着部温度40℃、圧力0.5MPa及び圧着時間90秒の条件でラミネートし、ドライフィルムレジスト-金属薄膜層付き基板3を得た。
ドライフィルムレジスト-金属薄膜層付き基板3に対し、ステッパー式露光機を用いて、露光量210mJ/cmの条件で露光を行い回路パターンをドライフィルムレジストにパターニングした。
上述のパターニングを行った基板について、露光後1時間~3時間以内に、現像機を用いて現像を行い、パターン付き基板3を得た。現像は、現像液として1%現像液炭酸水素ナトリウム水溶液を用い、現像液温度30℃及び現像時間30秒の条件で行った。
【0199】
得られたパターン付き基板3に対し、電解銅めっき処理を行い、パターン間に銅配線を形成することで銅配線-パターン付き基板3を得た。電解銅めっき処理は、めっき液として奥野製薬株式会社の硫酸銅水溶液及び添加剤NSVシリーズを所定量配合した溶液を使用した。また、銅配線の厚さが2.0μm±1.0μmとなるように調整して電解銅めっきを行った。
【0200】
得られた銅配線-パターン付き基板3に対し、ドライフィルムレジストの除去を行った。ドライフィルムレジストの除去は、R100S(三菱ガス化学株式会社)とR101(三菱ガス化学株式会社)と純水とを所定量配合したレジスト剥離液が貯留され、40℃に加熱された液槽に銅配線-パターン付き基板3を浸漬することで行った。これにより、銅配線-金属薄膜付き基板3を得た。
【0201】
次に得られた銅配線-金属薄膜付き基板3に対し、金属薄膜層のエッチングを行い、再配線層付き基板を得た。銅配線-金属薄膜付き基板3の金属薄膜層内にある銅層のエッチング液として、WLC-C2(三菱ガス化学株式会社)を所定の配合量で用い、チタン層のエッチング液としては、WLC-T(三菱ガス化学株式会社)を所定の配合量で用いた。金属薄膜層のエッチングを行うことで、銅配線間の金属薄膜を除去することができる。
【0202】
上述の再配線層付き基板に対し、配線付きチップのボンディングを行った。配線付きチップCC80-0101JY(SiN)_Model1(ウォルツ株式会社;銅バンプ高さ15μm、鈴銀はんだ厚さ8μm)のSi側を200μm厚さまでグラインドを用いて薄化したのち、ブレードダイシング装置を用いて7.3mm角にダイシングしたのち、配線側にNCFフィルム(昭和電工マテリアルズ株式会社)を真空ラミネーターを用いてラミネートすることでNCF付きチップを得た。得られたNCF付きチップをフリップチップボンダーを用いて、再配線層付き基板上に圧着した。その後、加熱処理を行いNCFの硬化を行うことでチップ付き基板を得た。
【0203】
続いて、チップ付き基板に対し、ウエハレベルコンプレッションモールド装置を用いて、封止樹脂W5MG(昭和電工マテリアルズ株式会社)で樹脂封止を行い樹脂封止基板を得た。この樹脂封止基板を、リフロー装置でリフローを行い、配線付きチップと再配線層付き基板間の接続を取ったのち、150℃で4時間加熱処理を行い、封止樹脂の本硬化を行うことで、樹脂封止基板を得た。樹脂封止は150℃、300秒の条件で行い、リフローは最高温度275℃の条件で行った。
【0204】
続いて、樹脂封止基板を支持体から分離する処理を行った。レーザー照射装置5331(ESI社)を用いて、波長355nm、サンプルによって任意の出力、繰り返し周波数40kHz、送り速度500mm/sの条件で、支持体側からレーザーを、樹脂封止基板全体に対して照射した。照射後に硬化膜と金属薄膜層との界面に切り込みを入れることで支持体を分離し、樹脂ウエハを得た。
【0205】
続いて、得られた樹脂ウエハの剥離面に残渣として残っている硬化膜の除去を行った。硬化膜の残渣は枚葉式スピン洗浄機と一部純水で湿らせたウエスで除去した。続いて、所定温度に加熱した薬液(Dynastrip7700、Dynaloy株式会社)に、樹脂ウエハを所定時間浸漬した。樹脂ウエハを冷却後、アセトンで洗浄して乾燥することで金属薄膜層上の硬化膜の残渣が除去できた。この工程で硬化膜の残渣が容易に除去できない場合、接続端子が露出できず、配線間の短絡、接続不良等が起こり歩留まりの低下につながる。
【0206】
続いて樹脂ウエハに対し、金属薄膜層のエッチングを行い、積層体である樹脂パッケージを得た。樹脂ウエハの銅層のエッチング液としてはWLC-C2(三菱ガス化学株式会社)を所定の配合量で用い、チタン層のエッチング液としては、WLC-T(三菱ガス化学株式会社)を所定の配合量で用いた。
【0207】
前述の積層体作製について、プロセス適応性を以下の評価基準で評価した。また絶縁層の硬化温度を230℃及び280℃の2水準で積層体作製を実施し、本開示の積層体作製工程への適合性を確認した。結果を表1に示す。
-評価基準-
A 前述の積層体の作製を通して、金属薄膜層の剥離が生じず、また、硬化膜の残渣も除去でき、問題なく各工程を行うことができた。
B 金属薄膜層の剥離は生じなかったものの、硬化膜の残渣の除去性に問題があった。
C 金属薄膜層の剥離が生じ、さらに、硬化膜の残渣の除去性にも問題があった。
【0208】
【表1】
【0209】
表1に示すように、実施例1~10の樹脂組成物は、比較例1の樹脂組成物と比較して支持体からの剥離性に優れており、積層体の作成時の適応性評価も良好であった。
さらに実施例1~7の樹脂組成物は、樹脂組成物を硬化してなる硬化膜の残渣の除去性に優れており、積層体の作製時の適応性評価もより良好であった。
【0210】
<樹脂パッケージの導通評価>
得られた樹脂パッケージについて、分離処理による熱の影響によって、銅配線、絶縁層等に対し、断面の確認と導通の確認を行い、銅配線、絶縁層等の劣化が生じているか否かを評価した。
【0211】
断面の確認のため、樹脂パッケージに対し、ブレードダイシング装置を用いて任意の箇所を切断し、試料研磨装置を用いて、研磨紙2000番によって断面研磨を行った後、電子顕微鏡によって断面の観察を行った。その結果、実施例1~7では、銅配線及び絶縁層に劣化がないことを確認した。一方、比較例1では、一部の絶縁層の劣化が確認された。
【0212】
また、樹脂パッケージに対してプローブを用いて導通確認を行った。実施例1~7では半導体チップと再配線との間の導通を確認することができた。
【0213】
以上の点から、実施例1~7では、絶縁層の硬化温度にかかわらず、プロセス中の異常、剥離時の劣化等を抑制しつつ半導体パッケージを作製できることが分かった。
【符号の説明】
【0214】
1 支持体
2 硬化膜
3 金属膜
4 パターニングされたレジスト層
5 配線層
6 絶縁層
7 ビア
8 接続用端子
10 半導体チップ
11 バンプ
20 封止材
30 残渣
100 半導体装置
図1
図2
図3