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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011118
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/06 20190101AFI20220107BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20220107BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B32B7/06
B32B7/022
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020112035
(22)【出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中堀 兵太
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
【Fターム(参考)】
2H149CA02
2H149FA05Z
2H149FA12Z
2H149FA54Z
2H149FC03
2H149FD09
2H149FD12
4F100AK02
4F100AK02A
4F100AK42
4F100AK42A
4F100AK42B
4F100AR00B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA42
4F100BA42A
4F100BA42B
4F100CA07
4F100CA07A
4F100EH20
4F100GB41
4F100JK06
4F100JK06A
4F100JK06B
4F100JN01
4F100JN01B
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】ハードコート層の形成によるシワを抑制できる積層体を提供する。
【解決手段】基材フィルムと、前記基材フィルムに剥離可能に貼合された保護フィルムと、を備え、前記基材フィルム及び前記保護フィルムの90度剥離強度が、0.15N/25mm~0.5N/25mmである、積層体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルムに剥離可能に貼合された保護フィルムと、を備え、
前記基材フィルム及び前記保護フィルムの90度剥離強度が、0.15N/25mm~0.5N/25mmである、積層体。
【請求項2】
前記積層体の端部における90度剥離強度が、前記積層体の中央部における90度剥離強度の85%~115%である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記保護フィルムのヘイズが、10%以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記保護フィルムの全光線透過率が、85%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記基材フィルムが、脂環式構造を含有する重合体を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記基材フィルムが、紫外線吸収剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記基材フィルムが、前記保護フィルムに接する第一層と、第二層とを、前記保護フィルム側からこの順に備え、
前記第一層が、前記紫外線吸収剤を含まない、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記基材フィルムの波長380nmにおける光線透過率が、8%以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の表示装置には、光学フィルムが設けられることがある。このような光学フィルムとして、従来、樹脂で形成された基材フィルムを用いることがあった(特許文献1及び2)。また、このような基材フィルムの傷付きを抑制するために、基材フィルム上にハードコート層を形成することがあった(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-121777号公報
【特許文献2】国際公開第2016/158275号
【特許文献3】特開2017-177739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、ハードコート層は、基材フィルム上に液状の材料を塗工し、硬化させて形成される。しかし、そのようにハードコート層を形成した場合、得られる基材フィルムにシワが生じることがあった。
【0005】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、ハードコート層の形成によるシワを抑制できる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、基材フィルムと、前記基材フィルムに剥離可能に貼合された保護フィルムと、を備える積層体であって、基材フィルム及び保護フィルムの90度剥離強度が特定の範囲にあるものが、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のものを含む。
【0007】
〔1〕 基材フィルムと、前記基材フィルムに剥離可能に貼合された保護フィルムと、を備え、
前記基材フィルム及び前記保護フィルムの90度剥離強度が、0.15N/25mm~0.5N/25mmである、積層体。
〔2〕 前記積層体の端部における90度剥離強度が、前記積層体の中央部における90度剥離強度の85%~115%である、〔1〕に記載の積層体。
〔3〕 前記保護フィルムのヘイズが、10%以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の積層体。
〔4〕 前記保護フィルムの全光線透過率が、85%以上である、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔5〕 前記基材フィルムが、脂環式構造を含有する重合体を含む、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔6〕 前記基材フィルムが、紫外線吸収剤を含む、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔7〕 前記基材フィルムが、前記保護フィルムに接する第一層と、第二層とを、前記保護フィルム側からこの順に備え、
前記第一層が、前記紫外線吸収剤を含まない、〔6〕に記載の積層体。
〔8〕 前記基材フィルムの波長380nmにおける光線透過率が、8%以下である、〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハードコート層の形成によるシワを抑制できる積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る積層体の基材フィルム上にハードコート層が形成された様子を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本発明の別の実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0011】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、通常5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0012】
以下の説明において、フィルムの面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、フィルムの前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。dは、フィルムの厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、550nmである。
【0013】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0014】
以下の説明において、「偏光板」及び「1/4波長板」とは、別に断らない限り、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0015】
以下の説明において、フィルムの遅相軸とは、別に断らない限り、当該フィルムの面内における遅相軸を表す。
【0016】
以下の説明において、接着剤とは、別に断らない限り、狭義の接着剤(エネルギー線照射後、あるいは加熱処理後、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa~500MPaである接着剤)のみならず、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である粘着剤をも包含する。
【0017】
[1.積層体の概要]
図1は、本発明の一実施形態に係る積層体100を模式的に示す断面図である。図1に示すように、積層体100は、基材フィルム110と、この基材フィルム110に剥離可能に貼合された保護フィルム120とを備える。通常、保護フィルム120は、基材フィルム110の一方の面110Dに接している。また、基材フィルム110及び保護フィルム120の貼合強度に相当する90度剥離強度は、特定の範囲にある。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態に係る積層体100の基材フィルム110上にハードコート層130が形成された様子を模式的に示す断面図である。通常、ハードコート層130は、基材フィルム110の保護フィルム120とは反対側の面110Uに形成される。このようにハードコート層130が形成された場合でも、積層体100は、シワの発生を抑制することができる。
【0019】
図3は、本発明の別の実施形態に係る積層体200を模式的に示す断面図である。図3に示すように、積層体200は、複数の層を含む基材フィルム210を備えていてもよい。図3では、保護フィルム120側から第一層211、第二層212及び第三層213をこの順に備える基材フィルム210を例に示す。ただし、基材フィルム210は、第一層211及び第二層212のみを備える2層構造を有していてもよく、第一層211、第二層212及び第三層213に組み合わせて更に任意の層を備える4層以上の構造を有していてもよい。
【0020】
通常、基材フィルム110及び210の使用時には、保護フィルム120は剥がされる。通常は、保護フィルム120を剥がして、基材フィルム110及び210並びにハードコート層130を備える複層フィルム(図示せず)を得て、この複層フィルムが適切な用途に用いられる。シワの発生を抑制できるので光学特性の均一性に優れる複層フィルムが得られるという利点を活用する観点では、複層フィルムは、偏光板保護フィルム等の光学フィルムとして用いることが好ましい。
【0021】
[2.基材フィルム]
基材フィルムは、樹脂で形成された樹脂フィルムでありうる。通常、基材フィルムを形成する樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いる。この熱可塑性樹脂は、重合体と、必要に応じて任意の成分とを含みうる。
【0022】
重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド;ポリビニルアルコール;ポリカーボネート;ポリアリレート;セルロースエステル重合体、ポリエーテルスルホン;ポリスルホン;ポリアリルサルホン;ポリ塩化ビニル;ノルボルネン系重合体等の、脂環式構造を含有する重合体;棒状液晶ポリマーなどが挙げられる。重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、重合体は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。これらの中でも、機械特性、耐熱性、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れることから、脂環式構造を含有する重合体が好ましい。脂環式構造を含有する重合体を、以下、適宜「脂環式構造含有重合体」ということがある。従来、このような脂環式構造含有重合体を含む基材フィルムでは、ハードコート層の形成によってシワが生じ易かった。しかし、本実施形態に係る積層体によれば、そのシワを抑制することが可能である。
【0023】
脂環式構造含有重合体は、その重合体の構造単位が脂環式構造を含有する。脂環式構造含有重合体は、主鎖に脂環式構造を有していてもよく、側鎖に脂環式構造を有していてもよい。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
【0024】
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、シクロアルカン構造が特に好ましい。
【0025】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上、特に好ましくは6個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲にある場合、基材フィルムの機械強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
【0026】
脂環式構造含有重合体において、脂環式構造を有する構造単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択しうる。脂環式構造含有重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にある場合、基材フィルムの透明性及び耐熱性が良好となる。
【0027】
脂環式構造含有重合体の例としては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び、これらの水素化物が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体及びこれらの水素化物は、透明性と成形性が良好なため、好適である。
【0028】
ノルボルネン系重合体及びその水素化物の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの重合体としては、例えば、特開2002-321302号公報等に開示されている重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物は、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性の観点から、特に好適である。
【0029】
ノルボルネン系重合体及びこれらの水素化物の具体例としては、日本ゼオン社製「ゼオノア」;JSR社製「アートン」;TOPAS ADVANCED POLYMERS社製「TOPAS」が挙げられる。
【0030】
重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、更に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、更に好ましくは50,000以下である。このような重量平均分子量を有する重合体は、機械的強度、成形加工性及び耐熱性のバランスに優れる。また、従来、このような重量平均分子量を有する重合体を含む基材フィルムでは、ハードコート層の形成によってシワが生じ易かった。しかし、本実施形態に係る積層体によれば、そのシワを抑制することが可能である。
【0031】
重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。ここで、Mnは、数平均分子量を表す。分子量分布が前記範囲の下限値以上である場合、重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、上限値以下である場合、低分子成分の量が小さくなるので、高温曝露時の緩和を抑制して、その重合体を含む基材フィルムの安定性を高めることができる。
【0032】
重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、溶媒としてシクロヘキサンを用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)により、ポリイソプレン換算の値で測定しうる。重合体がシクロヘキサンに溶解しない場合には、溶媒としてトルエンを用いたGPCにより、ポリスチレン換算の値で測定しうる。
【0033】
重合体のガラス転移温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、特に好ましくは170℃以下である。従来、このようなガラス転移温度を有する重合体を含む基材フィルムでは、ハードコート層の形成によってシワが生じ易かった。しかし、本実施形態に係る積層体によれば、そのシワを抑制することが可能である。
【0034】
ガラス転移温度は、JIS K7121に基づき、示差走査熱量分析法により測定しうる。この測定は、室温から200℃まで20℃/minで昇温し、次いで40℃まで20℃/minで冷却した試料について、40℃から200℃まで10℃/minで昇温する条件で行いうる。
【0035】
基材フィルムを形成する樹脂に含まれる重合体の量は、基材フィルムを形成する樹脂100重量%に対して、好ましくは50重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、更に好ましくは80重量%~100重量%、更に好ましくは90重量%~100重量%、特に好ましくは95重量%~100重量%である。重合体の量が前記範囲にある場合、重合体が有する特性を効果的に発揮できる。
【0036】
また特に、基材フィルムが、紫外線吸収剤を含む層と紫外線吸収剤を含まない層とを備える複層構造を有する場合、紫外線吸収剤を含まない層に含まれる樹脂における重合体の量は、その層に含まれる樹脂100重量%に対して、好ましくは90.0重量%~100重量%、より好ましくは95.0重量%~100重量%である。他方、紫外線吸収剤を含む層に含まれる樹脂における重合体の量は、その層に含まれる樹脂100重量%に対して、好ましくは80重量%以上、より好ましくは82重量%以上、特に好ましくは84重量%以上であり、好ましくは99重量%以下、より好ましくは97重量%以下、更に好ましくは95重量%以下、特に好ましくは90重量%以下である。
【0037】
基材フィルムを形成する樹脂は、上述した重合体に組み合わせて、任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、紫外線吸収剤;無機微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤;染料、顔料等の着色剤;老化防止剤;などの配合剤が挙げられる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0038】
基材フィルムを形成する樹脂は、任意の成分として、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ナフタルイミド系紫外線吸収剤、フタロシアニン系紫外線吸収剤等の有機紫外線吸収剤が挙げられる。中でも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
【0039】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-ベンゾトリアゾール-2-イル-4,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(直鎖および側鎖ドデシル)-4-メチルフェノール等が挙げられる。このようなトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、ADEKA社製「アデカスタブLA-31」などが挙げられる。
【0040】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-4,6-ジフェニル-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシ-5-メチルフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-4,6-ジビフェニル-s-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-s-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-s-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-s-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-s-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)-6-(2,4-ジメチルフェニル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)-s-トリアジン、2-(4-イソオクチルオキシカルボニルエトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-s-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-s-トリアジン-2-イル)-5-(2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ)フェノール等が挙げられる。このようなトリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えばADEKA社製「アデカスタブLA-F70」などが挙げられる。
【0041】
紫外線吸収剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0042】
基材フィルムを形成する樹脂に含まれる紫外線吸収剤の量は、樹脂100重量%に対して、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、更に好ましくは5重量%以上、特に好ましくは7重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは18重量%以下、特に好ましくは15重量%以下である。ここで、紫外線吸収剤の量とは、2種類以上の紫外線吸収剤を用いる場合には、それらの紫外線吸収剤の全体量のことを示す。また、基材フィルムが、紫外線吸収剤を含む層と紫外線吸収剤を含まない層とを備える複層構造を有する場合、紫外線吸収剤を含む層に含まれる樹脂における紫外線吸収剤の量が、前記の範囲に収まることが好ましい。紫外線吸収剤の量が前記範囲の下限以上である場合、波長200nm~370nmの紫外線の透過を効果的に抑制できる。また、紫外線吸収剤の量が前記範囲の上限以下である場合、基材フィルムの可視波長における光線透過率を高くし易い。さらに、一般に、紫外線吸収剤を含む樹脂は、耐熱性が低下するので、従来、前記の量の紫外線吸収剤を含む基材フィルムでは、ハードコート層の形成によってシワが生じ易かった。しかし、本実施形態に係る積層体によれば、そのシワを抑制することが可能である。
【0043】
基材フィルムを形成する樹脂のガラス転移温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上、特に好ましくは100℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、特に好ましくは170℃以下である。また、基材フィルムが、複数の層を備える複層構造を有する場合、最も保護フィルムに近い層(例えば、後述する第一層)を形成する樹脂のガラス転移温度が、前記の範囲に収まることが好ましい。従来、このようなガラス転移温度を有する樹脂を含む基材フィルムでは、ハードコート層の形成によってシワが生じ易かった。しかし、本実施形態に係る積層体によれば、そのシワを抑制することが可能である。
【0044】
基材フィルムは、1層のみを備える単層構造を有していてもよい。また、基材フィルムは、複数の層を備える複層構造を有していてもよい。例えば、基材フィルムは、第一層と、第二層とを、保護フィルム側からこの順に備えていてもよい。この場合、第一層が、保護フィルムに接する。また、この場合、第一層と第二層とは、異なる組成を有する樹脂によって形成されうる。
【0045】
複層構造を有する基材フィルムでは、第一層には、紫外線吸収剤が含まれないことが好ましい。よって、複層構造を有する基材フィルムが紫外線吸収剤を含む場合、その紫外線吸収剤は、第一層以外の層に含まれることが好ましく、例えば第二層に含まれることが好ましい。この場合、第一層の表面への紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制できるので、第一層と保護フィルムとの界面への紫外線吸収剤の浸入を抑制できる。よって、基材フィルム及び保護フィルムの90度剥離強度が紫外線吸収剤によって変化することを抑制できる。したがって、基材フィルム及び保護フィルムの90度剥離強度の大きさを適切な範囲に収めたり、基材フィルム及び保護フィルムの90度剥離強度の均一性を高めたりできる。したがって、ハードコート層の形成によるシワを効果的に抑制できる。
【0046】
紫外線吸収剤のブリードアウトの効果的な抑制の観点では、基材フィルムは、重合体を含む第一の熱可塑性樹脂で形成された第一層と、重合体及び紫外線吸収剤を含む第二の熱可塑性樹脂で形成された第二層と、重合体を含む第三の熱可塑性樹脂で形成された第三層とを、厚み方向においてこの順に備えることが好ましい。また、第一の熱可塑性樹脂及び第三の熱可塑性樹脂は、紫外線吸収剤の濃度が第二の熱可塑性樹脂よりも小さいことが好ましく、紫外線吸収剤を含まないことがより好ましい。第一の熱可塑性樹脂に含まれる重合体、第二の熱可塑性樹脂に含まれる重合体、及び、第三の熱可塑性樹脂に含まれる重合体は、同じでもよく、異なっていてもよい。第一の熱可塑性樹脂及び第三の熱可塑性樹脂は、紫外線吸収剤を含まないこと以外は第二の熱可塑性樹脂と同じ組成を有することが好ましい。
【0047】
基材フィルムは、光学部材としての機能を安定して発揮させる観点から、可視波長領域において高い光線透過率を有することが好ましい。具体的には、基材フィルムの全光線透過率は、好ましくは70%~100%、より好ましくは80%~100%、特に好ましくは90%~100%である。フィルムの全光線透過率は、JIS K 7105に準拠して、日本電色工業社製の濁度計「NDH-2000」を用いて、D65光源を用いて測定しうる。
【0048】
基材フィルムは、基材フィルムを組み込んだ表示装置の画像鮮明性を高める観点から、ヘイズが小さいことが好ましい。光学フィルムの具体的なヘイズは、好ましくは1%以下、より好ましくは0.8%以下、特に好ましくは0.5%以下である。フィルムのヘイズは、日本電色工業社製の濁度計「NDH2000」を用いて測定しうる。
【0049】
基材フィルムの波長380nmにおける光線透過率は、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下である。基材フィルムの波長380nmにおける光線透過率が前記のように小さい場合、基材フィルムは紫外線を効果的に遮断できるので、偏光板保護フィルムのように紫外線遮断能力が求められる用途に用いることが可能となる。波長380nmにおけるフィルムの光線透過率は、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製「V-7200」)を用いて測定できる。
【0050】
基材フィルムは、温度80℃における線膨張係数が、好ましくは6.0×10-5/℃以上、より好ましくは6.5×10-5/℃以上、特に好ましくは7.0×10-5/℃以上であり、好ましくは10.5×10-5/℃以下、より好ましくは10.0×10-5/℃以下、特に好ましくは9.5×10-5/℃以下である。測定方向によって基材フィルムの線膨張係数が異なる場合、線膨張係数の最大値が前記範囲に収まることが好ましい。従来、このような線膨張係数を有する樹脂を含む基材フィルムでは、ハードコート層の形成によってシワが生じ易かった。しかし、本実施形態に係る積層体によれば、そのシワを抑制することが可能である。フィルムの線膨張係数は、熱機械分析装置により、20℃~200℃まで5℃/minで昇温して、測定しうる。
【0051】
基材フィルムは、面内レターデーションReを実質的に有さない光学等方性のフィルムであってもよく、用途に応じた大きさの面内レターデーションReを有する光学異方性のフィルムであってもよい。
【0052】
基材フィルムが光学等方性のフィルムである場合、この基材フィルムの面内レターデーションは、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下、更に好ましくは3nm以下である。
【0053】
基材フィルムが光学異方性のフィルムである場合、基材フィルムは、1/4波長板として機能しうる面内レターデーションを有していてもよい。具体的には、1/4波長板として機能しうる基材フィルムの測定波長550nmにおける面内レターデーションReは、好ましくは80nm以上、より好ましくは95nm以上であり、好ましくは180nm以下、より好ましくは150nm以下である。
【0054】
さらに、基材フィルムが光学異方性を有する長尺のフィルムである場合、その基材フィルムの遅相軸は、基材フィルムの長手方向に対して特定の範囲の角度をなすことが好ましい。以下、基材フィルムの遅相軸が基材フィルムの長手方向に対してなす角度を、適宜「配向角」ということがある。この配向角の範囲は、好ましくは40°以上、より好ましくは41°以上、特に好ましくは42°以上であり、好ましくは50°以下、より好ましくは49°以下、特に好ましくは48°以下である。このよう範囲の配向角を有する長尺の基材フィルムは、長尺の偏光板と互いの長手方向を平行にして貼り合わせて、円偏光板を容易に製造できる。
【0055】
基材フィルムは、枚葉のフィルムであってもよく、長尺のフィルムであってもよい。
【0056】
基材フィルムは、平滑な表面を有することが好ましく、保護フィルム側の表面の全体が平滑であることがより好ましい。基材フィルムの表面の算術平均粗さは、好ましくは2.0nm以下、より好ましくは1.5nm以下、特に好ましくは1.0nm以下である。フィルムの表面の算術平均粗さRaは、カラー3Dレーザー顕微鏡(キーエンス社製「VK-9700」)を用いて、JIS B 0601-2001に準拠して測定することができる。
【0057】
基材フィルムの総厚みは、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは12μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下である。従来、このような厚みの基材フィルムでは、ハードコート層の形成によってシワが生じ易かった。しかし、本実施形態に係る積層体によれば、そのシワを抑制することが可能である。
【0058】
また、特に基材フィルムが複層構造を有する場合、第一層の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、特に好ましくは3μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、特に好ましくは5μm以下である。また、第二層の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは6μm以上、特に好ましくは7μm以上であり、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。基材フィルムが第三層を含む場合、第三層の厚みは、第一層の厚みの範囲と同じ範囲にあることが好ましい。中でも、第一層の厚みと第三層の厚みとが一致することがより好ましい。
【0059】
基材フィルムは、例えば、樹脂をフィルム状に成形することを含む方法により製造しうる。成形方法としては、例えば、溶融成形法、溶液流延法などを用いうる。中でも、フィルム中の揮発性成分を低減させられることから、溶融成形法を用いることが好ましい。溶融成形法としては、例えば、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などが挙げられる。これらの中で、機械的強度及び表面精度などに優れる基材フィルムを得る観点から、溶融押出成形法が好ましい。
【0060】
特に、複層構造を有する基材フィルムを製造する場合には、共押出法を用いることが好ましい。例えば、第一層及び第二層を備える基材フィルムは、第一層を形成するための樹脂と、第二層を形成するための樹脂とをダイから共押し出しすることにより、製造しうる。また、例えば、第一層、第二層及び第三層を備える基材フィルムは、第一層を形成するための樹脂と、第二層を形成するための樹脂と、第三層を形成するための樹脂とをダイから共押し出しすることにより、製造しうる。このような共押出法の中でも、共押出Tダイ法が好ましい。また、共押出Tダイ法としては、フィードブロック方式及びマルチマニホールド方式を挙げることができる。
【0061】
溶融押出成形法において、押し出される樹脂の溶融温度は、好ましくはTg+80℃以上、より好ましくはTg+100℃以上であり、好ましくはTg+180℃以下、より好ましくはTg+150℃以下である。「Tg」は、押し出しされる樹脂に含まれる重合体のガラス転移温度のうち、最も高い温度を表す。また、前記の溶融温度は、例えば共押出Tダイ法においては、Tダイを有する押出機における樹脂の溶融温度を表す。
【0062】
押出温度は、樹脂の組成に応じて適切に選択しうる。例えば、押出機内における樹脂の温度は、樹脂投入口ではTg~(Tg+100℃)、押出機出口では(Tg+50℃)~(Tg+170℃)、ダイス温度は(Tg+50℃)~(Tg+170℃)℃でありうる。
【0063】
溶融押出成形法では、通常、ダイスリップから押し出されたフィルム状の溶融樹脂を冷却ロールに密着させて冷却し、硬化させる。この際、溶融樹脂を冷却ロールに密着させる方法としては、例えば、エアナイフ方式、バキュームボックス方式、静電密着方式などが挙げられる。
【0064】
前記のように樹脂をフィルム状に成形することにより、基材フィルムが得られる。基材フィルムの製造方法は、更に任意の工程を含んでいてもよい。例えば、基材フィルムの製造方法は、延伸工程を含んでいてもよい。上述したように樹脂を成形して得られたフィルムに延伸処理を施すことにより、基材フィルムにレターデーション等の光学特性を発現させることができる。
【0065】
[3.保護フィルム]
保護フィルムは、基材フィルムに剥離可能に貼合されたフィルムである。このとき、基材フィルム及び保護フィルムの90度剥離強度が、特定の範囲にある場合に、本実施形態に係る積層体は、ハードコート層の形成によるシワを抑制できる。
【0066】
基材フィルム及び保護フィルムの90度剥離強度の範囲は、具体的には、通常0.15N/25mm以上、好ましくは0.18N/25mm以上、特に好ましくは0.20N/25mm以上であり、通常0.50N/25mm以下、好ましくは0.45N/25mm以下、特に好ましくは0.40N/25mm以下である。
【0067】
基材フィルム及び保護フィルムの90度剥離強度は、位置に依らず、高い均一性を有することが好ましい。前記の90度剥離強度の均一性は、剥離強度のバラツキによって表すことができる。この剥離強度のバラツキは、積層体の端部における90度剥離強度の、積層体の中央部における90度剥離強度に対する百分率で表すことができる。よって、剥離強度のバラツキは、下記の式(1)で表すことができる。
剥離強度のバラツキ(%)={(端部における90度剥離強度)/(中央部における90度剥離強度)}×100 (1)
【0068】
剥離強度のバラツキは、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上であり、好ましくは115%以下、より好ましくは110%以下、特に好ましくは105%以下である。剥離強度のバラツキが前記の範囲にあることは、基材フィルム及び保護フィルムの90度剥離強度の均一性が高いことを表す。この場合、保護フィルムが基材フィルムの変形を均一に抑制できるので、ハードコート層の形成によるシワを効果的に抑制できる。
【0069】
積層体の形状によっては、積層体の端部は2か所以上ありうる。この際、各端部における90度剥離強度が異なることにより、剥離強度のバラツキが複数の値をとる場合がありうる。この場合、それらの剥離強度のバラツキの値のうち、100%から最も離れた値が、前記の範囲に収まることが好ましい。
例えば、長尺の積層体では、幅方向の一方の端部と他方の端部とで、90度剥離強度が異なる場合がありうる。その場合、両方の端部における測定結果から求められる剥離強度のバラツキの値のうち、100%からより離れた値が、前記の範囲に収まることが好ましい。
【0070】
前記の保護フィルムは、樹脂で形成された支持フィルム層を備えるフィルムが好ましい。支持フィルム層に含まれる樹脂としては、通常、熱可塑性樹脂を用いる。この熱可塑性樹脂は、通常、重合体と、必要に応じて任意の成分を含む。重合体としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリルポリマー、トリアセチルセルロース等が挙げられる。重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、表面平滑性、耐熱性及び透明性の観点から、ポリエステルが好ましい。ポリエステルは、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリエチレンテレフタレートなどが好ましい。
【0071】
支持フィルム層の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下である。支持フィルム層の厚みが前記範囲の下限値以上である場合、ハードコート層の形成によるシワを効果的に抑制できる。また、支持フィルム層の厚みが前記範囲の上限値以下である場合、基材フィルムからの保護フィルムの剥離を抑制したり、積層体の巻き取りを容易に行ったりできる。
【0072】
保護フィルムは、支持フィルム層に組み合わせて、粘着層を備えることが好ましい。粘着層は、通常、粘着剤により形成される。この粘着層に含まれる粘着剤の粘着力により、保護フィルムは、基材フィルムと適切な貼合強度で貼り合わせられることができる。よって、粘着層を備える保護フィルムは、通常、粘着層の面で基材フィルムと貼り合わせられる。
【0073】
粘着層としては、コーティングにより形成される粘着層と、共押し出しにより形成される自己粘着層とがありうる。中でも、支持フィルム層の選択肢を広げることが可能であるという観点から、コーティングにより形成される粘着層が好ましい。
【0074】
粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。粘着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、耐熱性及び生産性の観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0075】
粘着層の厚みは、好ましくは2.0μm以上、より好ましくは5.0μm以上であり、好ましくは20.0μm以下、より好ましくは15.0μm以下である。粘着層の厚みが前記範囲の下限値以上である場合、粘着層の粘着力を高められるので、保護フィルムと基材フィルムとの90度剥離強度を適切な範囲に容易に収めることができる。また、粘着層の厚みが前記範囲の上限値以下である場合、基材フィルムから保護フィルムを剥がす際の糊残りを抑制できる。「糊残り」とは、保護フィルムの剥離後に基材フィルムに粘着剤が残留する現象をいう。
【0076】
保護フィルムの温度80℃における引張弾性率は、特定の範囲に収まることが好ましい。測定方向によって保護フィルムの引張弾性率が異なる場合、引張弾性率の最小値が特定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、引張弾性率は、好ましくは2000MPa以上、より好ましくは2500MPa以上、特に好ましくは3000MPa以上である。引張弾性率が前記の範囲に収まる場合、ハードコート層の形成によるシワを効果的に抑制できる。
フィルムの引張弾性率は、JIS K 7127に準拠して測定しうる。測定条件は、引張速度は5mm/min、ロードセルは100N、試料形状はタイプ1B、初期長は50mmでありうる。
【0077】
保護フィルムのヘイズは、小さいことが好ましい。保護フィルムの具体的なヘイズは、好ましくは10%以下、より好ましくは6%以下、特に好ましくは4%以下である。積層体の製造時、及び、ハードコート層の形成時に、インラインカメラを用いた観察によって異物検査を行うことがありうる。この異物検査の際、通常は、保護フィルムを通した観察により、異物の検出を行う。保護フィルムのヘイズが前記のように小さい場合、上述した異物検査を正確に行うことができる。
【0078】
保護フィルムは、可視波長領域において高い光線透過率を有することが好ましい。具体的には、保護フィルムの全光線透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは87%以上、特に好ましくは89%以上である。保護フィルムの全光線透過率が前記のように高い場合、ハードコート層の形成時にインラインカメラを用いた異物検査を正確に行うことができる。
【0079】
保護フィルムの厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下である。保護フィルムの厚みが前記範囲の下限値以上である場合、ハードコート層の形成によるシワを効果的に抑制できる。また、保護フィルムの厚みが前記範囲の上限値以下である場合、基材フィルムからの保護フィルムの剥離を抑制したり、積層体の巻き取りを容易に行ったりできる。
【0080】
上述した保護フィルムは、例えば、市販のマスキングフィルムとして入手しうる。
【0081】
[4.任意の層]
積層体は、本発明の効果を著しく損なわない限り、基材フィルム及び保護フィルムに組み合わせて更に任意の層を備えていてもよい。しかし、通常は、積層体は、基材フィルム及び保護フィルムのみを備える。
【0082】
[5.積層体の物性及び寸法]
積層体のヘイズは、小さいことが好ましい。積層体の具体的なヘイズは、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下、特に好ましくは5%以下である。積層体のヘイズが前記のように小さい場合、ハードコート層の形成時にインラインカメラを用いた異物検査を正確に行うことができる。
【0083】
積層体は、可視波長領域において高い光線透過率を有することが好ましい。具体的には、積層体の全光線透過率は、好ましくは70%~100%、より好ましくは80%~100%、特に好ましくは85%~100%である。積層体の全光線透過率が前記のように高い場合、ハードコート層の形成時にインラインカメラを用いた異物検査を正確に行うことができる。
【0084】
積層体は、長尺のフィルムであってもよく、枚葉のフィルムであってもよい。通常、製造効率を高める観点から、積層体は、長尺のフィルムとして製造され、ロール状に巻き取られて運搬及び保管される。また、枚葉の積層体を製造する場合には、通常は、長尺の積層体を所望の形状に切り出すことにより、枚葉の積層体を製造する。
【0085】
積層体の厚みは、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、特に好ましくは40μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、特に好ましくは100μm以下である。
【0086】
[6.シワの抑制効果]
上述した積層体は、ハードコート層の形成によるシワの発生を抑制できる。例えば、基材フィルムの保護フィルム層とは反対側の面にハードコート層を形成する。この場合、通常は、硬化可能な液状の組成物の層を基材フィルム上に形成し、当該組成物の層を硬化させて、ハードコート層を得る。従来は、このようにハードコート層を形成する工程において、基材フィルムにシワが発生することがあった。これに対し、上述した積層体によれば、基材フィルムのシワの発生を抑制することができる。
【0087】
本発明者は、シワの発生を抑制できる仕組みを、以下のように推察する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記に説明する仕組みによって制限されるものではない。
【0088】
ハードコート層を形成するための組成物は、溶媒を含むことがあり得る。このように溶媒を含む組成物を用いる場合、その溶媒を乾燥によって除去するために、乾燥のための熱が加えられることがある。
【0089】
また、ハードコート層を形成するための組成物として、熱によって硬化可能な熱硬化性組成物を用いることがありうる。この場合、組成物の層の硬化のために、熱が加えられることがある。
【0090】
さらに、ハードコート層を形成するための組成物として、紫外線、可視光線等の活性エネルギー線によって硬化可能な光硬化性組成物を用いることがありうる。この場合、組成物の層の硬化のために、活性エネルギー線が照射されることがある。通常、この活性エネルギー線の一部又は全部は、積層体に含まれる成分に吸収されるので、熱が発生しうる。特に、紫外線吸収剤を含む基材フィルムを用い、且つ、活性エネルギー線として紫外線を用いた場合には、大きな熱が発生する傾向がある。
【0091】
このように、ハードコート層を形成するための組成物の層を硬化させる工程では、基材フィルムに熱が加えられることがある。このような熱によって基材フィルムが変形することにより、従来は、基材フィルムにシワは発生していた。
【0092】
これに対し、上述した積層体では、基材フィルムに適切な貼合強度で貼り合わせられた保護フィルムが、熱による基材フィルムの変形を抑制できる。したがって、積層体では、基材フィルムのシワの発生を抑制することができる。
【0093】
[7.積層体の製造方法]
積層体の製造方法は、特に制限されない。例えば、積層体は、基材フィルムを用意する工程、保護フィルムを用意する工程、及び、基材フィルムと保護フィルムとを貼合する工程、を含む方法によって、製造できる。通常、基材フィルムと保護フィルムとの貼合は、接着剤を用いることなく、基材フィルムと保護フィルムとが直接に接するように行う。ここで、2つのフィルムが「直接に」接するとは、それら2つのフィルムの間に他の部材が無いことをいう。
【0094】
通常、積層体は、長尺のフィルムとして製造される。そして、その積層体は、ロール状に巻き取られて保存及び運搬される。
【0095】
[8.積層体の用途]
上述した積層体の用途は、制限されない。通常は、積層体の基材フィルム上にハードコート層を形成し、保護フィルムを剥離して、複層フィルムを得る。そして、この複層フィルムを、適切な用途に用いうる。
【0096】
複層フィルムは、例えば、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、視野角補償フィルム等の光学フィルムとして用いうる。中でも、複層フィルムは、偏光板保護フィルムとして用いることが好ましい。
【0097】
偏光板保護フィルムとして複層フィルムを用いた偏光板は、偏光子及び複層フィルムを備えうる。この偏光板は、偏光子の片側に複層フィルムを備えていてもよく、両側に複層フィルムを備えていてもよい。この偏光子は、例えば、偏光子と複層フィルムとを貼り合わせることを含む方法により、製造できる。貼り合わせに際しては、必要に応じて、接着剤を用いてもよい。
【0098】
偏光板は、偏光子及び複層フィルムに組み合わせて、更に任意の層を備えていてもよい。例えば、偏光板は、複層フィルム以外の任意の保護フィルムを、偏光子の保護のために備えていてもよい。このような保護フィルムは、通常、複層フィルムとは反対側の偏光子の面に設けられる。さらに、任意の層としては、例えば、低屈折率層、帯電防止層、インデックスマッチング層等が挙げられる。
【0099】
前記の偏光板は、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の表示装置に適用できる。中でも、中型又は小型の表示装置、フレキシブルタイプの表示装置に用いて好適である。
【実施例0100】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中において行った。
【0101】
[評価方法]
(保護フィルムのヘイズの測定方法)
積層体から保護フィルムを剥がした。この保護フィルムのヘイズを、日本電色工業社製の濁度計「NDH2000」を用いて測定した。
【0102】
(保護フィルムの全光線透過率の測定方法)
積層体から保護フィルムを剥がした。この保護フィルムの全光線透過率を、JIS K 7105に準拠して、D65光源を使用して、日本電色工業社製の濁度計「NDH-2000」を用いて測定した。
【0103】
(フィルム厚みの測定方法)
フィルムの厚みは、接触式膜厚計(ミツトヨ社製「ABSデジマチックインジケータ」)を用いて測定した。
【0104】
(基材フィルムの380nmにおける透過率の測定方法)
波長380nmにおける基材フィルムの光線透過率は、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製「V-7200」)を用いて測定した。
【0105】
(基材フィルムの線膨張係数の測定方法)
基材フィルムの80℃における線膨張係数は、熱機械分析装置により、20℃~200℃まで5℃/minで昇温して、測定した。
【0106】
(基材フィルムの表面粗さの測定方法)
基材フィルムの表面の算術平均粗さRaは、カラー3Dレーザー顕微鏡(キーエンス社製「VK-9700」)を用いて、JIS B 0601-2001に準拠して測定した。後述する実施例及び比較例では、いずれも、測定した面の全体が一定の表面粗さを有していることを確認した。
【0107】
(保護フィルムの引張弾性率の測定方法)
保護フィルムの80℃における引張弾性率は、JIS K 7127に準拠して測定した。測定条件は、引張速度5mm/min、ロードセル100N、試料形状はタイプ1B、初期長は50mmであった。
【0108】
(基材フィルムと保護フィルムとの剥離強度の測定方法)
積層体の幅方向の中央部、一方の端部、他方の端部の3か所で、それぞれサンプルを切り取った。このサンプルは、25mm(幅方向)×100mm(流れ方向)の長方形であった。
【0109】
サンプルの基材フィルム側の面を、水平な台に固定した。そして、保護フィルムを、フォースゲージ(IMADA社製「デジタルフォースゲージ」)を用いて、台の表面の法線方向に引っ張る90度剥離試験を実施した。この90度剥離試験において、基材フィルムから保護フィルムがはがれる際に測定された力を、90度剥離強度として測定した。
【0110】
両方の端部の90度剥離強度の値のうち、中央部の90度剥離強度の値から大きく離れている方の値を選択した。この選択した値の、中央部の90度剥離強度の値100%に対する百分率を計算して、剥離強度のバラツキを求めた。剥離強度のバラツキが100%に近いほど、基材フィルムと保護フィルムとの剥離強度が均一であることを表す。
【0111】
(シワの評価方法)
ハードコート層形成用の材料として、液状のハードコート組成物を用意した。このハードコート組成物は、紫外線硬化アクリル樹脂組成物を含んでいた。
【0112】
積層体の基材フィルム側の面に、コロナ処理(出力0.4kW、放電量300W・min/m)を施した。このコロナ処理を施された面に、バーコーターを用いてハードコート組成物を塗布して、組成物層を形成した。この組成物層を、80℃で1分間乾燥した。その後、高圧水銀ランプで250mJ/cmの光を照射して、組成物層を硬化させることで、厚み2μmのハードコート層を形成した。
【0113】
ハードコート層の形成後、積層体を観察して、下記の基準でシワの評価を行った。
「良」:積層体に、シワも凹凸のうねりも観察されなかった。
「不良」:積層体に、シワ又は凹凸のうねりが観察された。
【0114】
[樹脂の説明]
樹脂A:
樹脂Aとしては、脂環式構造含有重合体としてのシクロオレフィン重合体を99重量%以上含む、シクロオレフィン樹脂(日本ゼオン社製「ゼオノア」、ガラス転移温度123℃)を使用した。
【0115】
樹脂B:
樹脂Bとしては、脂環式構造含有重合体としてのシクロオレフィン重合体を99重量%以上含む、シクロオレフィン樹脂(日本ゼオン社製「ゼオノア」、ガラス転移温度162℃)を使用した。
【0116】
樹脂C:
樹脂Cとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(ユニチカ社製「SA-8339P」)を使用した。
【0117】
樹脂D:
乾燥させた樹脂Aを91部と、紫外線吸収剤(ADEKA社製「LA-31RG」)9部とを、二軸押出機を用いて混合して、樹脂Dを得た。
【0118】
樹脂E:
乾燥させた樹脂Bを91部と、紫外線吸収剤(ADEKA社製「LA-31RG」)9部とを、二軸押出機を用いて混合して、樹脂Eを得た。
【0119】
樹脂F:
乾燥させた樹脂Aを85部と、紫外線吸収剤(ADEKA社製「LA-31RG」)15部とを、二軸押出機を用いて混合して、樹脂Fを得た。
【0120】
樹脂G:
乾燥させた樹脂Cを91部と、紫外線吸収剤(ADEKA社製「LA-31RG」)9部とを、二軸押出機を用いて混合して、樹脂Gを得た。
【0121】
[実施例1]
ギアポンプ及びフィルタを備えた単軸押出機を2台用意した。2台の単軸押出機に、樹脂A及び樹脂Dをそれぞれ投入し、溶融させ、ギアポンプ及びフィルタをこの順で通過させた。次いで、溶融した樹脂A及び樹脂Dを、2種3層用フィードブロックで合流させ、Tダイより共押し出しした。樹脂の押出条件は、所望の厚みの基材フィルムが得られるように調整した。押し出された樹脂を、冷却ロールを通過させて、「樹脂Aの層/樹脂Dの層/樹脂Aの層」の層構成を有する長尺の基材フィルム(厚み13μm;80℃における線膨張係数8.0×10-5/℃;表面の算術平均粗さ0.6nm)を得た。
【0122】
基材フィルムに、保護フィルムとしての長尺のマスキングフィルム(80℃における引張弾性率3450MPa)を貼り合せて、長尺の積層体を得た。マスキングフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートで形成された支持フィルム層(厚み50μm)と、この支持フィルム層の片面にアクリル系粘着剤で形成された粘着層(厚み15μm)とを備えるものを用いた。
得られた積層体を、上述した方法で評価した。
【0123】
[実施例2]
ギアポンプ及びフィルタを備えた単軸押出機を2台用意した。2台の単軸押出機に、樹脂A及び樹脂Dをそれぞれ投入し、溶融させ、ギアポンプ及びフィルタをこの順で通過させた。次いで、溶融した樹脂A及び樹脂Dを、2種2層用フィードブロックで合流させ、Tダイより共押し出しした。樹脂の押出条件は、所望の厚みの基材フィルムが得られるように調整した。押し出された樹脂を、冷却ロールを通過させて、「樹脂Aの層/樹脂Dの層」の層構成を有する長尺の基材フィルム(厚み13μm;80℃における線膨張係数7.9×10-5/℃;樹脂Aの層の表面の算術平均粗さ0.6nm)を得た。この基材フィルムの樹脂Aの層側に、実施例1と同じ長尺のマスキングフィルムを貼り合わせて、長尺の積層体を得た。得られた積層体を、上述した方法で評価した。
【0124】
[実施例3]
樹脂A及び樹脂Dの代わりに樹脂B及び樹脂Eを用いて、基材フィルムの層構成を「樹脂Bの層/樹脂Eの層/樹脂Bの層」に変更した。80℃における基材フィルムの線膨張係数は7.0×10-5/℃、基材フィルムの表面の算術平均粗さは0.5nmであった。以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、積層体の製造及び評価を行った。
【0125】
[実施例4]
樹脂Dの代わりに樹脂Fを用いて、基材フィルムの層構成を「樹脂Aの層/樹脂Fの層/樹脂Aの層」に変更した。80℃における基材フィルムの線膨張係数は8.3×10-5/℃、基材フィルムの表面の算術平均粗さは0.6nmであった。以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、積層体の製造及び評価を行った。
【0126】
[実施例5]
樹脂の押出条件を変更することにより、基材フィルムの厚みを23μmに変更した。80℃における基材フィルムの線膨張係数は7.8×10-5/℃、基材フィルムの表面の算術平均粗さは0.7nmであった。以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、積層体の製造及び評価を行った。
【0127】
[実施例6]
樹脂A及び樹脂Dの代わりに樹脂C及び樹脂Gを用いて、基材フィルムの層構成を「樹脂Cの層/樹脂Gの層/樹脂Cの層」に変更した。また、樹脂の押出条件を変更することにより、基材フィルムの厚みを20μmに変更した。80℃における基材フィルムの線膨張係数は8.5×10-5/℃、基材フィルムの表面の算術平均粗さは1.0nmであった。以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、積層体の製造及び評価を行った。
【0128】
[比較例1]
マスキングフィルムを、ポリエチレンで形成された自己粘着型のフィルム(厚み25μm)に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、積層体の製造及び評価を行った。
【0129】
[結果]
実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。下記の表において、略称の意味は、以下の通りである。
PET:ポリエチレンテレフタレート。
PE:ポリエチレン。
COP:シクロオレフィン重合体。
Tg:ガラス転移温度。
UVA:紫外線吸収剤。
380nm透過率:基材フィルムの波長380nmにおける透過率。
バラツキ:剥離強度のバラツキ。
【0130】
【表1】
【符号の説明】
【0131】
100 積層体
110 基材フィルム
110D 基材フィルムの一方の面
110U 基材フィルムの他方の面
120 保護フィルム
130 ハードコート層
200 積層体
210 基材フィルム
211 第一層
212 第二層
213 第三層
図1
図2
図3