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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111723
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】音響用座標変換装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04S 7/00 20060101AFI20220725BHJP
【FI】
H04S7/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007343
(22)【出願日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】大出 訓史
【テーマコード(参考)】
5D162
【Fターム(参考)】
5D162AA07
5D162CD01
5D162EG02
(57)【要約】
【課題】音声信号を再生する位置の座標を変換する際に、座標の表記方法が異なる場合であっても、音声エンジニアの意図する位置に変換する。
【解決手段】音響用座標変換装置1の範囲決定手段10は、M個の指標座標を入力すると共に、音声オブジェクトの変換前座標(極座標Tまたはデカルト座標(X,Y))を入力し、M個の指標座標に基づいて、音声オブジェクトの変換前座標の属する範囲(最小値Mn、最大値Mx)を決定する。割合算出手段11は、音声オブジェクトの変換前座標の属する範囲に対し、音声オブジェクトの変換前座標の位置に関する割合Rを算出する。変換後座標算出手段12は、音声オブジェクトの変換前座標、割合R、最小値Mn及び最大値Mxに基づき、最小値Mn及び最大値Mxの示す範囲内で、等間隔に変換が行われるように、音声オブジェクトの変換後座標(デカルト座標(X’,Y’)または極座標T’)を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号を再生する位置の座標系を変換する音響用座標変換装置であって、
変換前の極座標またはデカルト座標を変換前座標とし、前記変換前の極座標に対する変換後のデカルト座標、または前記変換前のデカルト座標に対する変換後の極座標を変換後座標として、
予め設定された指標となる座標に基づいて、前記変換前座標の範囲を決定する範囲決定手段と、
前記範囲決定手段により決定された前記範囲に対し、前記変換前座標の位置に関する割合を算出する割合算出手段と、
前記割合算出手段により算出された前記割合に基づいて、前記変換後座標を算出する変換後座標算出手段と、
を備えたことを特徴とする音響用座標変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音響用座標変換装置において、
前記変換後座標算出手段は、
前記範囲において、前記変換前座標及び前記変換後座標をデカルト座標系で表したときに、等間隔に位置する複数の前記変換前座標が等間隔に位置する複数の前記変換後座標に変換されるように、前記割合に基づいて、前記変換後座標を算出する、ことを特徴とする音響用座標変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の音響用座標変換装置において、
前記変換後座標算出手段は、
前記範囲において、前記変換前座標及び前記変換後座標をデカルト座標系で表したときに、原点を基準にして等角度に位置する複数の前記変換前座標が等角度に位置する複数の前記変換後座標に変換されるように、前記割合に基づいて、前記変換後座標を算出する、ことを特徴とする音響用座標変換装置。
【請求項4】
コンピュータを、請求項1から3までのいずれか一項に記載の音響用座標変換装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声信号を再生する位置の座標系を変換する音響用座標変換装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音声オブジェクトの位置情報と再生するスピーカの位置情報に基づいて、再生するスピーカに割り当てる音声信号の信号レベルを規定するオブジェクトベース音響の導入が進んでいる。
【0003】
音声オブジェクトは、1つ以上の音声信号からなり、番組の音を構成する人の声による実況若しくは解説、楽器等による背景音、または効果音等の番組を構成する音の素材をいう。オブジェクトベース音響は、素材となる音声信号及び音響メタデータを放送し、スピーカ配置等の再生環境または視聴者の好みに合わせた再生信号を生成する方式である。
【0004】
音声オブジェクトの位置情報は、極座標またはデカルト座標で記述され(非特許文献1を参照。)、空間の絶対位置情報だけではなく、スピーカからの相対位置情報によって記述されることがある(非特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Recommendation ITU-R BS.2076-2(10/2019),“Audio Definition Model”
【非特許文献2】Recommendation ITU-R BS.2127-0(06/2019),“Audio Definition Model renderer for advanced sound systems”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
音声オブジェクトの位置情報がスピーカからの相対位置を想定してデカルト座標で記述された場合、そのデカルト座標をそのまま絶対位置を想定した極座標に変換すると、音声エンジニアの意図とは異なる位置から音声オブジェクトが再生されることとなる。
【0007】
例えば、音声オブジェクトの位置情報がデカルト座標(X,Y)=(1,0)で記述された場合、音声エンジニアは、当該音声オブジェクトが右スピーカから再生されることを意図する。この場合の右スピーカの位置は、極座標では方位角φ=30度である。
【0008】
しかしながら、このデカルト座標(X,Y)=(1,0)を極座標にそのまま変換すると、極座標の方位角φ=45度となる。このため、デカルト座標をそのまま極座標に変換すると、音声オブジェクトの再生位置は、音声エンジニアの意図とは異なるものとなる。
【0009】
これは、音声オブジェクトの位置情報が極座標で記述されており、その極座標をそのままデカルト座標に変換する場合も同様である。
【0010】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、音声信号を再生する位置の座標を変換する際に、座標の表記方法が異なる場合であっても、音声エンジニアの意図する位置に変換可能な音響用座標変換装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、請求項1の音響用座標変換装置は、音声信号を再生する位置の座標系を変換する音響用座標変換装置であって、変換前の極座標またはデカルト座標を変換前座標とし、前記変換前の極座標に対する変換後のデカルト座標、または前記変換前のデカルト座標に対する変換後の極座標を変換後座標として、予め設定された指標となる座標に基づいて、前記変換前座標の範囲を決定する範囲決定手段と、前記範囲決定手段により決定された前記範囲に対し、前記変換前座標の位置に関する割合を算出する割合算出手段と、前記割合算出手段により算出された前記割合に基づいて、前記変換後座標を算出する変換後座標算出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の音響用座標変換装置は、請求項1に記載の音響用座標変換装置において、前記変換後座標算出手段が、前記範囲において、前記変換前座標及び前記変換後座標をデカルト座標系で表したときに、等間隔に位置する複数の前記変換前座標が等間隔に位置する複数の前記変換後座標に変換されるように、前記割合に基づいて、前記変換後座標を算出する、ことを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の音響用座標変換装置は、請求項1に記載の音響用座標変換装置において、前記変換後座標算出手段が、前記範囲において、前記変換前座標及び前記変換後座標をデカルト座標系で表したときに、原点を基準にして等角度に位置する複数の前記変換前座標が等角度に位置する複数の前記変換後座標に変換されるように、前記割合に基づいて、前記変換後座標を算出する、ことを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項4のプログラムは、コンピュータを、請求項1から3までのいずれか一項に記載の音響用座標変換装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、音声信号を再生する位置の座標を変換する際に、座標の表記方法が異なる場合であっても、音声エンジニアの意図する位置に変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態による音響用座標変換装置の構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態による音響用座標変換装置の処理例を示すフローチャートである。
図3】範囲決定手段の処理例(ステップS201~S203,S206)を示すフローチャートである。
図4】割合算出手段の処理例(ステップS204,S207)を示すフローチャートである。
図5】(1)は、極座標Tをデカルト座標(X’,Y’)に等間隔に変換する場合の座標値の例を説明する図である。(2)は、デカルト座標(X,Y)を極座標T’に等間隔に変換する場合の座標値の例を説明する図である。
図6】(1)は、極座標Tをデカルト座標(X’,Y’)に等間隔に変換する場合の例を説明する表である。(2)は、デカルト座標(X,Y)を極座標T’に等間隔に変換する場合の例を説明する表である。
図7】(1)は、極座標Tをデカルト座標(X’,Y’)に等角度に変換する場合の座標値の例を説明する図である。(2)は、デカルト座標(X,Y)を極座標T’に等角度に変換する場合の座標値の例を説明する図である。
図8】(1)は、極座標Tをデカルト座標(X’,Y’)に等角度に変換する場合の例を説明する表である。(2)は、デカルト座標(X,Y)を極座標T’に等角度に変換する場合の例を説明する表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、音声オブジェクトの極座標またはデカルト座標を入力し、指標となる座標に基づいて、入力した座標の範囲を決定し、当該範囲における当該座標の位置に関する割合を算出し、当該割合に基づいて、変換後のデカルト座標または極座標を求めて出力することを特徴とする。
【0018】
これにより、制作時の座標系における音声オブジェクトの間隔、及び前後・左右(または右前・左前・右後・左後)の四方の方向が保持される。また、指標となる座標を増やすことで、上下も含めた八方向を保持することも可能となる。したがって、音声信号を再生する位置の座標を変換する際に、座標の表記方法が異なる場合であっても、音声エンジニアの意図する位置に変換することができる。
【0019】
〔音響用座標変換装置〕
図1は、本発明の実施形態による音響用座標変換装置の構成例を示すブロック図であり、図2は、本発明の実施形態による音響用座標変換装置の処理例を示すフローチャートである。この音響用座標変換装置1は、制作時の音声エンジニアの意図を反映するように、音声信号を再生する音声オブジェクトの位置の座標系を、極座標からデカルト座標に変換し、またはデカルト座標から極座標に変換する装置である。音響用座標変換装置1は、範囲決定手段10、割合算出手段11、及び変換後座標算出手段12を備えている。
【0020】
(範囲決定手段10)
範囲決定手段10は、M個の指標となる座標(以下、「指標座標」という。)を入力すると共に、音声オブジェクトの変換前の座標(以下、「変換前座標」という。極座標Tまたはデカルト座標(X,Y,Z)、本実施形態ではZ=0)を入力する(ステップS201)。範囲決定手段10は、入力したM個の指標座標を、図示しないメモリに格納する。以下、デカルト座標(X,Y,0)のZ=0は省略し、デカルト座標(X,Y)とする。Mは、1以上の整数である。
【0021】
M個の指標座標は、当該音響用座標変換装置1が音声オブジェクトの座標を変換する際に、基準となる座標である。M個の指標座標としては、通常、オブジェクトベース音響において音声信号を再生する際のスピーカ配置の座標、及びユーザ(音声エンジニア)の意図する方向の座標が指定され、入力される。例えばM個の指標座標として、聴取者の位置を基準にした前後左右及び部屋の四隅に相当する方向の座標が指定され、入力される(この場合は、M=8である)。
【0022】
ここで、ユーザの意図する方向とは、コンテンツ制作時に指定された音声オブジェクトが再生される方向であり、聴取者を基準にして正中面または側方等の方向のように、方向が変わると大きく印象が変わる方向、または左右のスピーカ等主たるスピーカが設置されている方向である。
【0023】
例えば5.1マルチチャンネル音響においては、0度(0,1)、±30度(±1,1)、±110度(±1,-1)の座標にスピーカが置かれるため、これらの座標が指標座標として入力される。また、側方の±90度(±1,0)及び後方の180度(0,-1)の座標がユーザの意図する方向の座標であり、これらの座標も指標座標として入力される。0度、±30度等は、極座標の方位角を示し、(0,1)、(±1,1)等は、デカルト座標を示す。
【0024】
この例の場合、範囲決定手段10は、M=8個の指標座標として、0度(0,1)、±30度(±1,1)、±110度(±1,-1)、±90度(±1,0)及び180度(0,-1)を入力する。尚、22.2マルチチャンネル音響のようにスピーカ数が多い再生システムにおいては、M=8を超える数の指標座標を入力してもよい。
【0025】
範囲決定手段10は、入力した音声オブジェクトの変換前座標の座標系が極座標であるか、またはデカルト座標であるかを判定する(ステップS202)。
【0026】
範囲決定手段10は、ステップS202において、極座標であると判定した場合(ステップS202:極座標)、メモリからM個の指標座標を読み出し、M個の指標座標に基づいて、音声オブジェクトの変換前座標である極座標Tの属する範囲を決定する(ステップS203)。この範囲は、例えば角度により表され、最小角度である最小値Mn及び最大角度である最大値Mxにより特定される。
【0027】
一方、範囲決定手段10は、ステップS202において、デカルト座標であると判定した場合(ステップS202:デカルト座標)、メモリからM個の指標座標を読み出し、M個の指標座標に基づいて、音声オブジェクトの変換前座標であるデカルト座標(X,Y)の属する範囲を決定する(ステップS206)。この範囲は、ステップS203における範囲と同様に、例えば角度により表される。
【0028】
範囲決定手段10は、音声オブジェクトの変換前座標の属する範囲として、最小値Mn及び最大値Mxを割合算出手段11に出力する。
【0029】
図3は、範囲決定手段10の処理例(ステップS201~S203,S206)を示すフローチャートであり、図2に示したステップS201~S203,S206の処理の詳細を示している。
【0030】
範囲決定手段10は、M個の指標座標を入力し(ステップS301)、M個の指標座標に基づいて、極/デカルト範囲テーブル及びデカルト/極範囲テーブルを生成し、メモリに格納する(ステップS302)。
【0031】
例えばM=8個の指標座標として、0度(0,1)、±30度(±1,1)、±110度(±1,-1)、±90度(±1,0)及び180度(0,-1)を入力した場合を想定する。
【0032】
この場合、範囲決定手段10は、M=8個の指標座標に基づいて、後述する図6(1)に示す「変換前座標T」、「範囲/最小値Mn」及び「範囲/最大値Mx」からなる極/デカルト範囲テーブルを生成する。また、範囲決定手段10は、M=8個の指標座標に基づいて、後述する図6(2)に示す「変換前座標(X,Y)」、「範囲/最小値Mn」及び「範囲/最大値Mx」からなるデカルト/極範囲テーブルを生成する。
【0033】
具体的には、範囲決定手段10は、指標座標0度(0,1)、30度(1,1)を用いて、後述する図6(1)に示すように、「変換前座標T」を「0-30」とし、これに対応する「範囲/最小値Mn」を「0」及び「範囲/最大値Mx」を「30」とする極/デカルト範囲テーブルに含まれる1レコードを生成する。
【0034】
また、範囲決定手段10は、指標座標0度(0,1)、30度(1,1)を用いて、後述する図6(2)に示すように、「変換前座標(X,Y)」を「(0,1)-(1,1)」とし、これに対応する「範囲/最小値Mn」を「0」及び「範囲/最大値Mx」を「30」とするデカルト/極範囲テーブルに含まれる1レコードを生成する。同様にして、指標座標30度(1,1)、90度(1,0)等を用いることで、極/デカルト範囲テーブル及びデカルト/極範囲テーブルの各レコードが生成される。
【0035】
図3に戻って、範囲決定手段10は、ステップS302から移行して、音声オブジェクトの変換前座標(極座標Tまたはデカルト座標(X,Y))を入力する(ステップS303)。
【0036】
範囲決定手段10は、入力した音声オブジェクトの変換前座標の座標系が極座標であるか、またはデカルト座標であるかを判定し(ステップS304)、極座標であると判定した場合(ステップS304:極座標)、ステップS305へ移行する。一方、範囲決定手段10は、ステップS304において、デカルト座標であると判定した場合(ステップS304:デカルト座標)、ステップS306へ移行する。
【0037】
範囲決定手段10は、ステップS304(極座標)から移行して、ステップS302にてメモリに格納された極/デカルト範囲テーブルを用いて、音声オブジェクトの変換前座標である極座標Tがどの範囲に属するかを判断し、その範囲(最小値Mn、最大値Mx)を決定する(ステップS305)。
【0038】
例えば、音声オブジェクトの変換前座標が極座標T=20度の場合、範囲決定手段10は、後述する図6(1)に示す「変換前座標T」、「範囲/最小値Mn」及び「範囲/最大値Mx」からなる極/デカルト範囲テーブルを用いて、極座標T=20度の属する「変換前座標T」が「0-30」であると判断する。そして、範囲決定手段10は、これに対応する最小値Mn=0及び最大値Mx=30を決定する。
【0039】
一方、範囲決定手段10は、ステップS304(デカルト座標)から移行して、ステップS302にてメモリに格納されたデカルト/極範囲テーブルを用いて、音声オブジェクトの変換前座標であるデカルト座標(X,Y)がどの範囲に属するかを判断し、その範囲(最小値Mn、最大値Mx)を決定する(ステップS306)。
【0040】
例えば、音声オブジェクトの変換前座標がデカルト座標(X,Y)=(1,0.5)の場合、範囲決定手段10は、後述する図6(2)に示す「変換前座標(X,Y)」、「範囲/最小値Mn」及び「範囲/最大値Mx」からなるデカルト/極範囲テーブルを用いて、デカルト座標(X,Y)=(1,0.5)の属する「変換前座標(X,Y)」が「(1,1)-(1,0)」であると判断する。そして、範囲決定手段10は、これに対応する最小値Mn=30及び最大値Mx=90を決定する。
【0041】
図3に戻って、範囲決定手段10は、ステップS305またはステップS306から移行して、音声オブジェクトの変換前座標の属する範囲として、最小値Mn及び最大値Mxを割合算出手段11に出力する(ステップS307)。
【0042】
範囲決定手段10は、全ての音声オブジェクトの変換前座標に対する処理が完了しない限り(ステップS308:N)、ステップS303へ移行し、新たな音声オブジェクトの変換前座標に対するステップS303~S307の処理を繰り返す。一方、範囲決定手段10は、全ての音声オブジェクトの変換前座標に対する処理が完了した場合(ステップS308:Y)、当該処理を終了する。
【0043】
尚、後述する図6(1)は、音声オブジェクトの変換前座標が極座標Tの場合において、極座標Tが0度~180度の範囲について示しているが、極座標Tが0度~-180度の範囲については、0度~180度の範囲と対称であるため、その記載を省略してある。後述する図8(1)についても同様である。また、後述する図6(2)は、音声オブジェクトの変換前座標がデカルト座標(X,Y)の場合において、デカルト座標(X,Y)(Z=0)のX値が0または正の範囲について示しているが、X値が負の範囲については、0または正の範囲と対称であるため、その記載を省略してある。後述する図8(2)についても同様である。
【0044】
(割合算出手段11)
図1及び図2に戻って、割合算出手段11は、音声オブジェクトの変換前座標(極座標Tまたはデカルト座標(X,Y))を入力すると共に、範囲決定手段10から、音声オブジェクトの変換前座標の属する範囲を示す最小値Mn及び最大値Mxを入力する。
【0045】
割合算出手段11は、ステップS203から移行して、最小値Mn及び最大値Mxの示す範囲に対し、音声オブジェクトの変換前座標である極座標Tの位置に関する割合Rを算出する(ステップS204)。
【0046】
一方、割合算出手段11は、ステップS206から移行して、最小値Mn及び最大値Mxの示す範囲に対し、音声オブジェクトの変換前座標であるデカルト座標(X,Y)の位置に関する割合Rを算出する(ステップS207)。
【0047】
割合算出手段11は、音声オブジェクトの変換前座標の割合R、最小値Mn及び最大値Mxを、変換後座標算出手段12に出力する。
【0048】
図4は、割合算出手段11の処理例(ステップS204,S207)を示すフローチャートであり、図2に示したステップS204,S207の処理の詳細を示している。割合算出手段11は、音声オブジェクトの変換前座標(極座標Tまたはデカルト座標(X,Y))を入力すると共に、範囲決定手段10から最小値Mn及び最大値Mxを入力する(ステップS401)。
【0049】
割合算出手段11は、入力した音声オブジェクトの変換前座標の座標系が極座標であるか、またはデカルト座標であるかを判定し(ステップS402)、極座標であると判定した場合(ステップS402:極座標)、ステップS403へ移行する。一方、割合算出手段11は、ステップS402において、デカルト座標であると判定した場合(ステップS402:デカルト座標)、ステップS404へ移行する。
【0050】
割合算出手段11は、ステップS402(極座標)から移行して、音声オブジェクトの変換前座標である極座標T、当該極座標Tの属する範囲を示す最小値Mn及び最大値Mxから、当該極座標Tの属する範囲に対し、当該極座標Tの位置に関する割合Rを算出する(ステップS403)。割合Rは、最小値Mnから最大値Mxまでの間の距離に対し、最小値Mnから当該極座標Tの位置までの間の距離の割合である。前述の例では、割合算出手段11は、式:R=(T-Mn)/(Mx-Mn)により割合Rを算出する。
【0051】
例えば、音声オブジェクトの変換前座標が極座標T=20度の場合、割合算出手段11は、範囲決定手段10から最小値Mn=0及び最大値Mx=30を入力する。そうすると、割合算出手段11は、以下の式にて、当該極座標T=20度の属する範囲(0~30度)に対し、当該極座標T=20度の位置の割合R=0.67を算出する。
[数1]
R=(T-Mn)/(Mx-Mn)=T/Mx=20/30=0.67 ・・・(1)
【0052】
また、音声オブジェクトの変換前座標が極座標T=40度の場合、割合算出手段11は、以下の式にて、当該極座標T=40度の属する範囲(30~90度)に対し、当該極座標T=40度の位置の割合R=0.17を算出する。
[数2]
R=(T-Mn)/(Mx-Mn)=10/60=0.17 ・・・(2)
【0053】
一方、割合算出手段11は、ステップS402(デカルト座標)から移行して、音声オブジェクトの変換前座標であるデカルト座標(X,Y)、当該デカルト座標(X,Y)の属する範囲を示す最小値Mn及び最大値Mxから、当該デカルト座標(X,Y)の属する範囲に対し、当該デカルト座標(X,Y)の位置の割合Rを算出する(ステップS404)。
【0054】
前述の例では、割合算出手段11は、最小値Mn=0及び最大値Mx=30の場合、式:R=Xにより割合Rを算出し、最小値Mn=30及び最大値Mx=90の場合、式:R=(1-Y)により割合Rを算出する。また、割合算出手段11は、最小値Mn=90及び最大値Mx=110の場合、式:R=-Yにより割合Rを算出し、最小値Mn=110及び最大値Mx=180の場合、式:R=(1-X)により割合Rを算出する。
【0055】
例えば、音声オブジェクトの変換前座標がデカルト座標(X,Y)=(0.2,1)の場合、割合算出手段11は、範囲決定手段10から最小値Mn=0及び最大値Mx=30を入力する。そうすると、割合算出手段11は、以下の式にて、当該デカルト座標(X,Y)=(0.2,1)の属する範囲(0~30度)に対し、当該デカルト座標(X,Y)=(0.2,1)の位置の割合R=0.2を算出する。
[数3]
R=X=0.2 ・・・(3)
【0056】
また、音声オブジェクトの変換前座標がデカルト座標(X,Y)=(1,0.5)の場合、割合算出手段11は、以下の式にて、当該デカルト座標(X,Y)=(1,0.5)の属する範囲(30~90度)に対し、当該デカルト座標(X,Y)=(1,0.5)の位置の割合R=0.5を算出する。
[数4]
R=(1-Y)=1-0.5=0.5 ・・・(4)
【0057】
割合算出手段11は、ステップS403またはステップS404から移行して、音声オブジェクトの変換前座標の割合R、最小値Mn及び最大値Mxを、変換後座標算出手段12に出力する(ステップS405)。
【0058】
(変換後座標算出手段12)
図1及び図2に戻って、変換後座標算出手段12は、音声オブジェクトの変換前座標(極座標Tまたはデカルト座標(X,Y))を入力すると共に、割合算出手段11から、音声オブジェクトの変換前座標の割合R、最小値Mn及び最大値Mxを入力する。
【0059】
変換後座標算出手段12は、ステップS204から移行して、音声オブジェクトの変換前座標である極座標T、当該極座標Tの割合R、最小値Mn及び最大値Mxに基づき、最小値Mn及び最大値Mxの示す範囲内において、変換前後の座標をデカルト座標系でみたときに(表したときに)、等間隔となるように、音声オブジェクトの変換後座標であるデカルト座標(X’,Y’)を算出し、出力する(ステップS205)。
【0060】
ここで、最小値Mn及び最大値Mxの示す範囲内において、変換前後の座標をデカルト座標系でみたときに等間隔とは、変換前座標である極座標Tをそのままデカルト座標に変換したときに、当該範囲内において複数の変換前座標が等間隔に分散している場合(複数の変換前座標において2座標間の距離が等しい場合)、当該範囲内において対応する複数の変換後座標であるデカルト座標(X’,Y’)が等間隔に分散する(対応する複数のデカルト座標(X’,Y’)において2座標間の距離が等しい)ことをいう。つまり、等間隔に位置する複数の変換前座標が、等間隔に位置する複数の変換後座標に変換されることをいう。尚、極座標Tをそのままデカルト座標に変換するとは、例えば極座標T=45度をデカルト座標(X,Y)=(1,0)に変換することをいう。
【0061】
図5(1)は、極座標Tをデカルト座標(X’,Y’)に等間隔に変換する場合の座標値の例を説明する図である。また、図6(1)は、極座標Tをデカルト座標(X’,Y’)に等間隔に変換する場合の例を説明する表であり、図5(1)に対応している。図5(1)において、枠内の(0,0,1)T=0,(30,0,1)T=30,・・・,(180,0,1)T=180は、変換前の極座標を示している。例えば(0,0,1)の要素は、方位角、仰角及び距離であり、Tは方位角を示している。黒塗りの丸印は、変換後のデカルト座標(X’,Y’)を示している。原点Oは視聴者の位置を示している。後述する図7(1)についても同様である。
【0062】
尚、図5及び図6は、原点Oを基準にして時計回りをプラスの角度で示している。後述する図7及び図8についても同様である。
【0063】
例えば最小値Mn=0(T=0)及び最大値Mx=30(T=30)の示す範囲において、変換前の極座標Tが(デカルト座標系でみたときに)T=0~30(に対応するデカルト座標)の範囲で等間隔に分散している場合に、これを変換することにより、変換後のデカルト座標(X’,Y’)を示すプロット(黒塗りの丸印)a~gは、(X’=0,Y’=1)~(X’=1,Y’=1)の範囲で等間隔に分散することとなる。つまり、プロットa~gにおいて、隣合う2点の距離は等しくなる。
【0064】
最小値Mn=30(T=30)及び最大値Mx=90(T=90)の示す範囲、並びに最小値Mn=90(T=90)及び最大値Mx=110(T=110)の示す範囲についても同様である。また、最小値Mn=110(T=110)及び最大値Mx=180(T=180)の示す範囲についても同様である。
【0065】
具体的には、変換後座標算出手段12は、図6(1)に示すように、例えば最小値Mn=0及び最大値Mx=30の場合、この範囲内において、音声オブジェクトの変換後座標であるデカルト座標(X’=T/Mx=R,Y’=1.0)を算出する。これにより、当該範囲内において等間隔に(変換前の座標間の距離が等しい場合、変換後の座標間の距離も等しくなるように)変換が行われる。例えば、変換前座標が極座標T=20度の場合、割合R=0.67であり、変換後座標であるデカルト座標は(X’=0.67,Y’=1.0)となる。
【0066】
また、変換後座標算出手段12は、例えば最小値Mn=30及び最大値Mx=90の場合、この範囲内において、音声オブジェクトの変換後座標であるデカルト座標(X’=1.0,Y’=(Mx-T)/(Mx-Mn)=1.0-R)を算出する。これにより、当該範囲内において等間隔に変換が行われる。例えば、変換前座標である極座標T=40度の場合、割合R=0.17であり、変換後座標であるデカルト座標は(X’=1.0,Y’=0.83)となる。
【0067】
同様に、最小値Mn=90及び最大値Mx=110の場合、及び最小値Mn=110及び最大値Mx=180の場合も、これらの範囲内において、図6(1)に示す式にて、音声オブジェクトの変換後座標であるデカルト座標(X’,Y’)が算出される。
【0068】
図1及び図2に戻って、変換後座標算出手段12は、ステップS207から移行して、音声オブジェクトの変換前座標であるデカルト座標(X,Y)、当該デカルト座標(X,Y)の割合R、最小値Mn及び最大値Mxに基づき、最小値Mn及び最大値Mxの示す範囲内において、変換前後の座標をデカルト座標系でみたときに等間隔となるように、音声オブジェクトの変換後座標である極座標T’を算出し、出力する(ステップS208)。
【0069】
ここで、最小値Mn及び最大値Mxの示す範囲内において、変換前後の座標をデカルト座標系でみたときに等間隔とは、変換後座標である極座標T’をそのままデカルト座標に変換したときに、当該範囲内において複数の変換前座標であるデカルト座標(X,Y)が等間隔に分散している場合(複数のデカルト座標(X,Y)において2座標間の距離が等しい場合)、当該範囲内において対応する複数の変換後座標が等間隔に分散する(対応する複数の変換後座標において2座標間の距離が等しい)ことをいう。つまり、等間隔に位置する複数の変換前座標が、等間隔に位置する複数の変換後座標に変換されることをいう。
【0070】
図5(2)は、デカルト座標(X,Y)を極座標T’に等間隔に変換する場合の座標値の例を説明する図である。また、図6(2)は、デカルト座標(X,Y)を極座標T’に等間隔に変換する場合の例を説明する表であり、図5(2)に対応している。図5(2)において、枠内の(0,1),(1,1),・・・,(0,-1)は、変換前のデカルト座標(X,Y)(Z=0)を示し、黒塗りの丸印は、変換後の極座標T’を示している。変換後の極座標T’は、デカルト座標系でみたときに、半径を1とした円を想定している。後述する図7(2)についても同様である。
【0071】
例えば最小値Mn=0及び最大値Mx=30の示す範囲において、変換前のデカルト座標(X,Y)が(X=0,Y=1)~(X=1,Y=1)の範囲で等間隔に分散している場合に、これを変換することにより、変換後の極座標T’を示すプロット(黒塗りの丸印)h~rは、(デカルト座標系で表したときに)T’=0~30(に対応するデカルト座標)の範囲で等間隔に分散することとなる。つまり、プロットh~rにおいて、隣合う2点の距離は等しくなる。
【0072】
最小値Mn=30及び最大値Mx=90の示す範囲、並びに最小値Mn=90及び最大値Mx=110の示す範囲についても同様である。また、最小値Mn=110及び最大値Mx=180の示す範囲についても同様である。
【0073】
具体的には、変換後座標算出手段12は、図6(2)に示すように、例えば最小値Mn=0及び最大値Mx=30の場合、この範囲内において、音声オブジェクトの変換後座標である極座標T’=X*Mx=R*Mxを算出する。*は乗算を示す。これにより、当該範囲内において等間隔に(変換前の座標間の距離が等しい場合、変換後の座標間の距離も等しくなるように)変換が行われる。例えば、変換前座標であるデカルト座標(X,Y)=(0.2,1)の場合、割合R=0.2であり、変換後座標である極座標はT’=6度となる。
【0074】
また、変換後座標算出手段12は、例えば最小値Mn=30及び最大値Mx=90の場合、この範囲内において、音声オブジェクトの変換後座標である極座標T’=(1-Y)*(Mx-Mn)+Mn=R*(Mx-Mn)+Mnを算出する。これにより、当該範囲内において等間隔に変換が行われる。例えば、変換前座標であるデカルト座標(X,Y)=(1,0.5)の場合、割合R=0.5であり、変換後座標である極座標はT’=60度となる。
【0075】
同様に、最小値Mn=90及び最大値Mx=110の場合、及び最小値Mn=110及び最大値Mx=180の場合も、これらの範囲内において、図6(2)に示す式にて音声オブジェクトの変換後座標である極座標T’が算出される。
【0076】
以上のように、本発明の実施形態の音響用座標変換装置1によれば、範囲決定手段10は、M個の指標座標を入力すると共に、音声オブジェクトの変換前座標(極座標Tまたはデカルト座標(X,Y))を入力する。そして、範囲決定手段10は、M個の指標座標に基づいて、音声オブジェクトの変換前座標の属する範囲(最小値Mn、最大値Mx)を決定する。
【0077】
割合算出手段11は、音声オブジェクトの変換前座標の属する範囲(最小値Mn及び最大値Mx)に対し、音声オブジェクトの変換前座標の位置に関する割合Rを算出する。
【0078】
変換後座標算出手段12は、音声オブジェクトの変換前座標、当該変換前座標の割合R、最小値Mn及び最大値Mxに基づき、最小値Mn及び最大値Mxの示す範囲内において、変換前後の座標をデカルト座標系でみたときに等間隔となるように、音声オブジェクトの変換後座標(デカルト座標(X’,Y’)または極座標T’)を算出し、出力する。
【0079】
これにより、デカルト座標と極座標との間で音声オブジェクトの座標変換を行った場合に、制作時の座標系における音声オブジェクトの間隔、及び前後・左右(または右前・左前・右後・左後)の四方の方向が保持される。
【0080】
したがって、音声信号を再生する位置の座標を変換する際に、座標の表記方法が異なる場合であっても、音声エンジニアの意図する位置に変換することができる。
【0081】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0082】
前記実施形態において、音響用座標変換装置1は、所定範囲毎に、変換前後の座標をデカルト座標系でみたときに等間隔となるように、音声オブジェクトのデカルト座標(X,Y)を極座標T’に変換し、極座標Tをデカルト座標(X’,Y’)に変換するようにした。これに対し、音響用座標変換装置1は、所定範囲毎に、非線形に変換するようにしてもよい。
【0083】
例えば音響用座標変換装置1は、所定範囲毎に、変換前後の座標をデカルト座標系でみたときに等角度となるように、音声オブジェクトのデカルト座標(X,Y)を極座標T’に変換し、極座標Tをデカルト座標(X’,Y’)に変換する。
【0084】
具体的には、割合算出手段11は、音声オブジェクトの変換前座標(デカルト座標(X,Y)または極座標T)の属する範囲(最小値Mn及び最大値Mx)における原点Oを基準とした角度に対し、原点Oを基準とした最小値Mnの座標の位置と音声オブジェクトの変換前座標の位置との間の角度が占める割合Rを算出する。
【0085】
変換後座標算出手段12は、音声オブジェクトの変換前座標、当該変換前座標の割合R、最小値Mn及び最大値Mxに基づき、最小値Mn及び最大値Mxの示す範囲内において、変換前後の座標をデカルト座標系でみたときに原点Oを基準として等角度となるように、音声オブジェクトの変換後座標(デカルト座標(X’,Y’)または極座標T’)を算出し、出力する。
【0086】
ここで、最小値Mn及び最大値Mxの示す範囲内において、変換前後の座標をデカルト座標系でみたときに等角度とは、変換前座標である極座標Tまたは変換後座標である極座標T’をそのままデカルト座標に変換したときに、当該範囲内において複数の変換前座標が原点Oを基準にして等角度に分散している場合(複数の変換前座標において2座標間の角度が等しい場合)、当該範囲内において対応する複数の変換後座標が原点Oを基準にして等角度に分散する(対応する複数の変換後座標において2座標間の角度が等しい)ことをいう。つまり、原点Oを基準にして等角度に位置する複数の変換前座標が、等角度に位置する複数の変換後座標に変換されることをいう。
【0087】
図7(1)は、極座標Tをデカルト座標(X’,Y’)に等角度に変換する場合の座標値の例を説明する図である。また、図8(1)は、極座標Tをデカルト座標(X’,Y’)に等角度に変換する場合の例を説明する表であり、図7(1)に対応している。
【0088】
例えば最小値Mn=0(T=0)及び最大値Mx=30(T=30)の示す範囲において、変換前の極座標Tが(デカルト座標系で表したときに)T=0~30(に対応するデカルト座標)の範囲で原点Oを基準として等角度に分散している場合に、これを変換することにより、変換後のデカルト座標(X’,Y’)を示すプロット(黒塗りの丸印)a~gは、(X’=0,Y’=1)~(X’=1,Y’=1)の範囲で原点Oを基準として等角度に分散することとなる。つまり、プロットa~gにおいて、隣合う2点間の角度は等しくなる。他の範囲についても同様である。
【0089】
変換後座標算出手段12は、図8(1)に示すように、例えば最小値Mn=0及び最大値Mx=30の場合、この範囲内において、音声オブジェクトの変換後座標であるデカルト座標(X’=sin(radians(T))/sin(radians(Mx)),Y’=1.0)を算出する。これにより、当該範囲内において等角度に(原点Oを基準とした変換前の座標間の角度が等しい場合、変換後の座標間の角度も等しくなるように)変換が行われる。
【0090】
同様に、他の範囲の場合も、図8(1)に示す式にて、音声オブジェクトの変換後座標であるデカルト座標(X’,Y’)が算出される。
【0091】
図7(2)は、デカルト座標(X,Y)を極座標T’に等角度に変換する場合の座標値の例を説明する図である。また、図8(2)は、デカルト座標(X,Y)を極座標T’に等角度に変換する場合の例を説明する表であり、図7(2)に対応している。
【0092】
例えば最小値Mn=0及び最大値Mx=30の示す範囲において、変換前のデカルト座標(X,Y)が(X=0,Y=1)~(X=1,Y=1)の範囲で原点Oを基準にして等角度に分散している場合に、これを変換することにより、変換後の極座標T’を示すプロット(黒塗りの丸印)h~rは、(デカルト座標系で表したときに)T’=0~30(に対応するデカルト座標)の範囲で原点Oを基準として等角度に分散することとなる。つまり、プロットh~rにおいて、隣合う2点間の角度は等しくなる。他の範囲についても同様である。
【0093】
変換後座標算出手段12は、図8(2)に示すように、例えば最小値Mn=0及び最大値Mx=30の場合、この範囲内において、音声オブジェクトの変換後座標である極座標T’=degrees(arcsin(X*sin(radians(Mx)))を算出する。*は乗算を示す。これにより、当該範囲内において等角度に(原点Oを基準とした変換前の座標間の角度が等しい場合、変換後の座標間の角度も等しくなるように)変換が行われる。
【0094】
同様に、他の範囲の場合も、図8(2)に示す式にて、音声オブジェクトの変換後座標である極座標T’が算出される。
【0095】
これにより、デカルト座標と極座標との間で音声オブジェクトの座標変換を行った場合に、制作時の座標系における音声オブジェクトの角度、及び前後・左右(または右前・左前・右後・左後)の四方の方向が保持される。
【0096】
したがって、音声信号を再生する位置の座標を変換する際に、座標の表記方法が異なる場合であっても、音声エンジニアの意図する位置に変換することができる。
【0097】
尚、本発明の実施形態による音響用座標変換装置1のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。音響用座標変換装置1は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。
【0098】
音響用座標変換装置1に備えた範囲決定手段10、割合算出手段11及び変換後座標算出手段12の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
【0099】
これらのプログラムは、前記記憶媒体に格納されており、CPUに読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD-ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもでき、ネットワークを介して送受信することもできる。
【符号の説明】
【0100】
1 音響用座標変換装置
10 範囲決定手段
11 割合算出手段
12 変換後座標算出手段
T 音声オブジェクトの変換前座標(極座標、方位角)
X,Y 音声オブジェクトの変換前座標(デカルト座標)
Mn 最小値
Mx 最大値
R 割合
X’,Y’ 音声オブジェクトの変換後座標(デカルト座標)
T’ 音声オブジェクトの変換後座標(極座標、方位角)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8