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特開2022-111888極端紫外光生成システム、及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111888
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】極端紫外光生成システム、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20220725BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
H05G2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007564
(22)【出願日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】西村 祐一
(72)【発明者】
【氏名】薮 隆之
(72)【発明者】
【氏名】半井 宏明
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197CA10
2H197DA09
2H197GA01
2H197GA05
2H197GA24
2H197HA03
4C092AA06
4C092AA15
4C092AB10
4C092AB12
4C092AC09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】極端紫外(EUV)光のパルスエネルギーを安定化し得るEUV光生成システムを提供する。
【解決手段】EUV光生成システム11bは、第1の所定領域25にターゲット物質27を供給するターゲット供給部26と、ターゲット物質に第1の所定領域において照射されるパルスレーザ光31~33を出力するレーザシステム3と、ターゲット供給部と第1の所定領域との間の第2の所定領域35にターゲット物質が到達した到達タイミングを検出する第1のセンサ4aと、レーザシステムと第1の所定領域との間のパルスレーザ光31の光路に配置された光調節器OMと、到達タイミングに基づいて光調節器によるパルスレーザ光の透過率を制御するプロセッサ5と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の所定領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、
前記ターゲット物質に前記第1の所定領域において照射されるパルスレーザ光を出力するレーザシステムと、
前記ターゲット供給部と前記第1の所定領域との間の第2の所定領域に前記ターゲット物質が到達した到達タイミングを検出する第1のセンサと、
前記レーザシステムと前記第1の所定領域との間の前記パルスレーザ光の光路に配置された光調節器と、
前記到達タイミングに基づいて前記光調節器による前記パルスレーザ光の透過率を制御するプロセッサと、
を備える極端紫外光生成システム。
【請求項2】
請求項1記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、
前記第1のセンサが検出した前記到達タイミングの間隔が第1の時間間隔である場合に前記光調節器が前記パルスレーザ光を第1の透過率で透過させるように前記透過率を制御し、
前記第1のセンサが検出した前記到達タイミングの間隔が前記第1の時間間隔より短い第2の時間間隔である場合に前記光調節器が前記パルスレーザ光を前記第1の透過率より高い第2の透過率で透過させるように前記透過率を制御する、
極端紫外光生成システム。
【請求項3】
請求項1記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、前記光調節器に入射する前記パルスレーザ光のパルスエネルギーの第1のばらつきよりも、前記光調節器を透過した前記パルスレーザ光のパルスエネルギーの第2のばらつきが小さくなるように前記透過率を制御する、
極端紫外光生成システム。
【請求項4】
請求項1記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、前記光調節器の印加電圧を制御することにより前記透過率を制御する、
極端紫外光生成システム。
【請求項5】
請求項1記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、前記ターゲット物質が前記第2の所定領域に到達してから前記第1の所定領域に到達するまでの間に、前記到達タイミングに基づいて前記透過率を制御する、
極端紫外光生成システム。
【請求項6】
請求項1記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、前記到達タイミングに基づいて前記レーザシステムにトリガタイミング信号を出力する、
極端紫外光生成システム。
【請求項7】
請求項1記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、前記到達タイミングに基づいて、前記レーザシステムと前記光調節器とに互いに異なるタイミング信号を出力する、
極端紫外光生成システム。
【請求項8】
請求項1記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、
前記レーザシステムのレーザ発振間隔と前記パルスレーザ光の第1のパルスエネルギーとの関係に基づいて前記透過率を制御する、
極端紫外光生成システム。
【請求項9】
請求項1記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、
前記レーザシステムのレーザ発振間隔と前記パルスレーザ光の第1のパルスエネルギーとの関係と、
前記光調節器の印加電圧と前記透過率との関係と、
の両方に基づいて前記透過率を制御する、
極端紫外光生成システム。
【請求項10】
請求項1記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、
前記レーザシステムのレーザ発振間隔が変動したときの前記パルスレーザ光の第1のパルスエネルギーの変化率と、
前記光調節器の印加電圧が変動したときの前記透過率の変化率と、
の両方に基づいて前記透過率を制御する、
極端紫外光生成システム。
【請求項11】
請求項1記載の極端紫外光生成システムであって、
前記ターゲット供給部は前記第1の所定領域にドロップレット状の前記ターゲット物質を供給する、
極端紫外光生成システム。
【請求項12】
請求項1記載の極端紫外光生成システムであって、
前記レーザシステムは、YAGレーザ装置を含む、
極端紫外光生成システム。
【請求項13】
請求項1記載の極端紫外光生成システムであって、
前記レーザシステムは、連続発振レーザ光を出力して前記レーザシステムのレーザ媒質を励起する励起光源を含む、
極端紫外光生成システム。
【請求項14】
請求項1記載の極端紫外光生成システムであって、
前記光調節器は、音響光学素子、電気光学素子、及びアッテネータのいずれか1つを含む、
極端紫外光生成システム。
【請求項15】
請求項1記載の極端紫外光生成システムであって、
前記ターゲット物質に前記パルスレーザ光が照射されたことにより生成された極端紫外光の第2のパルスエネルギーを検出する第2のセンサをさらに備え、
前記プロセッサは、前記到達タイミングと前記第2のパルスエネルギーとの両方に基づいて前記透過率を制御する、
極端紫外光生成システム。
【請求項16】
請求項15記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、前記第2のパルスエネルギーに基づいて前記透過率をフィードバック制御する、
極端紫外光生成システム。
【請求項17】
請求項1記載の極端紫外光生成システムであって、
前記ターゲット物質に前記パルスレーザ光が照射されたことにより生成された極端紫外光の第2のパルスエネルギーを検出する第2のセンサをさらに備え、
前記パルスレーザ光は、前記ターゲット物質に照射されるプリパルスレーザ光と、前記プリパルスレーザ光が照射された前記ターゲット物質に照射されるメインパルスレーザ光と、を含み、
前記レーザシステムは、前記プリパルスレーザ光を出力するプリパルスレーザ装置と、前記メインパルスレーザ光を出力するメインパルスレーザ装置と、を含み、
前記光調節器は、前記プリパルスレーザ装置と前記第1の所定領域との間の前記プリパルスレーザ光の光路に配置された第1の光調節器と、前記メインパルスレーザ装置と前記第1の所定領域との間の前記メインパルスレーザ光の光路に配置された第2の光調節器と、を含み、
前記プロセッサは、
前記到達タイミングに基づいて前記第1の光調節器による前記プリパルスレーザ光の透過率を制御し、
前記到達タイミングと前記第2のパルスエネルギーとの両方に基づいて前記第2の光調節器による前記メインパルスレーザ光の透過率を制御する、
極端紫外光生成システム。
【請求項18】
請求項17記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、前記第2のパルスエネルギーが前記プリパルスレーザ光の透過率よりも前記メインパルスレーザ光の透過率に大きな影響を与えるように、前記メインパルスレーザ光の透過率を制御する、
極端紫外光生成システム。
【請求項19】
電子デバイスの製造方法であって、
第1の所定領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、
前記ターゲット物質に前記第1の所定領域において照射されるパルスレーザ光を出力するレーザシステムと、
前記ターゲット供給部と前記第1の所定領域との間の第2の所定領域に前記ターゲット物質が到達した到達タイミングを検出する第1のセンサと、
前記レーザシステムと前記第1の所定領域との間の前記パルスレーザ光の光路に配置された光調節器と、
前記到達タイミングに基づいて前記光調節器による前記パルスレーザ光の透過率を制御するプロセッサと、
を備える極端紫外光生成システムにおいて極端紫外光を生成し、
前記極端紫外光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記極端紫外光を露光する
ことを含む、電子デバイスの製造方法。
【請求項20】
電子デバイスの製造方法であって、
第1の所定領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、
前記ターゲット物質に前記第1の所定領域において照射されるパルスレーザ光を出力するレーザシステムと、
前記ターゲット供給部と前記第1の所定領域との間の第2の所定領域に前記ターゲット物質が到達した到達タイミングを検出する第1のセンサと、
前記レーザシステムと前記第1の所定領域との間の前記パルスレーザ光の光路に配置された光調節器と、
前記到達タイミングに基づいて前記光調節器による前記パルスレーザ光の透過率を制御するプロセッサと、
を備える極端紫外光生成システムにおいて生成した極端紫外光をマスクに照射して前記マスクの欠陥を検査し、
前記検査の結果を用いてマスクを選定し、
前記選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写する
ことを含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極端紫外光生成システム、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、70nm~45nmの微細加工、さらには32nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、例えば32nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度の極端紫外(EUV)光を生成する極端紫外光生成装置と縮小投影反射光学系(reduced projection reflection optics)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にパルスレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLPP(Laser Produced Plasma)式の装置と、放電によって生成されるプラズマが用いられるDPP(Discharge Produced Plasma)式の装置と、シンクロトロン放射光が用いられるSR(Synchrotron Radiation)式の装置との3種類の装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/099140号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/353528号明細書
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係る極端紫外光生成システムは、第1の所定領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、ターゲット物質に第1の所定領域において照射されるパルスレーザ光を出力するレーザシステムと、ターゲット供給部と第1の所定領域との間の第2の所定領域にターゲット物質が到達した到達タイミングを検出する第1のセンサと、レーザシステムと第1の所定領域との間のパルスレーザ光の光路に配置された光調節器と、到達タイミングに基づいて光調節器によるパルスレーザ光の透過率を制御するプロセッサと、を備える。
【0006】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、第1の所定領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、ターゲット物質に第1の所定領域において照射されるパルスレーザ光を出力するレーザシステムと、ターゲット供給部と第1の所定領域との間の第2の所定領域にターゲット物質が到達した到達タイミングを検出する第1のセンサと、レーザシステムと第1の所定領域との間のパルスレーザ光の光路に配置された光調節器と、到達タイミングに基づいて光調節器によるパルスレーザ光の透過率を制御するプロセッサと、を備える極端紫外光生成システムにおいて極端紫外光を生成し、極端紫外光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上に極端紫外光を露光することを含む。
【0007】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、第1の所定領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、ターゲット物質に第1の所定領域において照射されるパルスレーザ光を出力するレーザシステムと、ターゲット供給部と第1の所定領域との間の第2の所定領域にターゲット物質が到達した到達タイミングを検出する第1のセンサと、レーザシステムと第1の所定領域との間のパルスレーザ光の光路に配置された光調節器と、到達タイミングに基づいて光調節器によるパルスレーザ光の透過率を制御するプロセッサと、を備える極端紫外光生成システムにおいて生成した極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、検査の結果を用いてマスクを選定し、選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、例示的なLPP式のEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
図2図2は、比較例に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
図3図3は、比較例におけるレーザ制御のタイミングチャートである。
図4図4は、第1の実施形態に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
図5図5は、第1の実施形態におけるレーザ制御のタイミングチャートである。
図6図6は、レーザシステムのレーザ発振間隔ΔTnと、光変調器によるパルスレーザ光の透過率を最高値に制御したときのパルスレーザ光のパルスエネルギーEmax(ΔTn)と、の関係を示すグラフである。
図7図7は、光変調器の印加電圧Vnと、パルスレーザ光のパルスエネルギーE(Vn)と、の関係を示すグラフである。
図8図8は、レーザ発振間隔ΔTnとこれに基づいて設定される印加電圧Vnとの関係を示すグラフである。
図9図9は、レーザシステムのレーザ発振間隔ΔTnと、光変調器によるパルスレーザ光の透過率を最高値に制御したときのパルスレーザ光のパルスエネルギーEmax(ΔTn)と、の関係を示すグラフである。
図10図10は、光変調器の印加電圧Vnと、パルスレーザ光のパルスエネルギーE(Vn)と、の関係を示すグラフである。
図11図11は、第2の実施形態に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
図12図12は、EUV光生成システムに接続された露光装置の構成を概略的に示す。
図13図13は、EUV光生成システムに接続された検査装置の構成を概略的に示す。
【実施形態】
【0009】
<内容>
1.EUV光生成システム11の全体説明
1.1 構成
1.2 動作
2.比較例
2.1 構成
2.2 動作
2.3 比較例の課題
3.ターゲット検出信号に基づいて光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率を制御するEUV光生成システム11b
3.1 構成及び動作
3.2 関数の例
3.2.1 第1の例
3.2.2 第2の例
3.3 作用
4.プリパルスレーザ装置3Pを含むEUV光生成システム11c
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用
5.その他
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.EUV光生成システム11の全体説明
1.1 構成
図1に、例示的なLPP式のEUV光生成システム11の構成を概略的に示す。EUV光生成装置1は、レーザシステム3と共に用いられる。本開示においては、EUV光生成装置1及びレーザシステム3を含むシステムを、EUV光生成システム11と称する。EUV光生成装置1は、チャンバ2及びターゲット供給部26を含む。チャンバ2は、密閉可能な容器である。ターゲット供給部26は、ターゲット物質を含むターゲット27をチャンバ2内部に供給する。ターゲット物質の材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又は、それらの内のいずれか2つ以上の組合せを含んでもよい。
【0012】
チャンバ2の壁には、貫通孔が備えられている。その貫通孔は、ウインドウ21によって塞がれ、ウインドウ21をレーザシステム3から出力されるパルスレーザ光32が透過する。チャンバ2の内部には、回転楕円面形状の反射面を備えたEUV集光ミラー23が配置される。EUV集光ミラー23は、第1及び第2の焦点を備える。EUV集光ミラー23の表面には、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成される。EUV集光ミラー23は、その第1の焦点がプラズマ生成領域25に位置し、その第2の焦点が中間集光点292に位置するように配置される。プラズマ生成領域25は本開示における第1の所定領域に相当する。EUV集光ミラー23の中央部には貫通孔24が備えられ、貫通孔24をパルスレーザ光33が通過する。
【0013】
EUV光生成装置1は、プロセッサ5、ターゲットセンサ4等を含む。プロセッサ5は、制御プログラムが記憶されたメモリ501と、制御プログラムを実行するCPU(central processing unit)502と、を含む処理装置である。プロセッサ5は本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。ターゲットセンサ4は、ターゲット27の存在、軌跡、位置、速度の内の少なくとも1つを検出する。ターゲットセンサ4は、撮像機能を備えてもよい。
【0014】
また、EUV光生成装置1は、チャンバ2の内部とEUV光利用装置6の内部とを連通させる接続部29を含む。EUV光利用装置6の例については、図12及び図13を参照しながら後述する。接続部29内部には、アパーチャが形成された壁291が備えられる。壁291は、そのアパーチャがEUV集光ミラー23の第2の焦点に位置するように配置される。
【0015】
さらに、EUV光生成装置1は、レーザ光伝送装置34、レーザ光集光ミラー22、ターゲット27を回収するためのターゲット回収部28等を含む。レーザ光伝送装置34は、レーザ光の伝送状態を規定するための光学素子と、この光学素子の位置、姿勢等を調整するためのアクチュエータとを備える。
【0016】
1.2 動作
図1を参照して、EUV光生成システム11の動作を説明する。レーザシステム3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光伝送装置34を経て、パルスレーザ光32としてウインドウ21を透過してチャンバ2内に入射する。パルスレーザ光32は、チャンバ2内のレーザ光経路に沿って進み、レーザ光集光ミラー22で反射されて、パルスレーザ光33としてターゲット27に照射される。
【0017】
ターゲット供給部26は、ターゲット27をチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出力する。ターゲット27には、パルスレーザ光33が照射される。パルスレーザ光33が照射されたターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマから放射光251が放射される。放射光251に含まれるEUV光は、EUV集光ミラー23によって他の波長域の光に比べて高い反射率で反射される。EUV集光ミラー23によって反射されたEUV光を含む反射光252は、中間集光点292で集光され、EUV光利用装置6に出力される。なお、1つのターゲット27に、パルスレーザ光33に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。
【0018】
プロセッサ5は、EUV光生成システム11全体を制御する。プロセッサ5は、ターゲットセンサ4の検出結果を処理する。ターゲットセンサ4の検出結果に基づいて、プロセッサ5は、ターゲット27が出力されるタイミング、ターゲット27の出力方向等を制御する。さらに、プロセッサ5は、レーザシステム3の発振タイミング、パルスレーザ光32の進行方向、パルスレーザ光33の集光位置等を制御する。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御が追加されてもよい。
【0019】
2.比較例
2.1 構成
図2は、比較例に係るEUV光生成システム11aの構成を概略的に示す。本開示の比較例とは、出願人のみによって知られていると出願人が認識している形態であって、出願人が自認している公知例ではない。
【0020】
比較例に係るEUV光生成システム11aにおいて、レーザシステム3は、マスターオシレータMO及び増幅器PAを含む。マスターオシレータMO及び増幅器PAの少なくとも1つは、レーザ媒質としてYAG(yttrium aluminum garnet)の結晶又はネオジムなどの不純物をドープしたYAGの結晶を含むYAGレーザ装置である。あるいはレーザシステム3は、レーザ媒質としてNd:YVO結晶や、Yb等の希土類をドープした光ファイバを含んで構成されるレーザ装置でもよい。YAGレーザ装置、Nd:YVOレーザ装置、あるいはファイバレーザ装置は、図示しないレーザダイオードなどの励起光源をさらに含む。励起光源は、連続発振レーザ光を出力してレーザ媒質を励起する。
【0021】
レーザシステム3とプラズマ生成領域25との間のパルスレーザ光31の光路に、光変調器OMが配置されている。光変調器OMは本開示における光調節器の一例である。光変調器OMは、図示しない音響光学素子を含み、音響光学素子に印加される印加電圧によってパルスレーザ光31の透過率が制御される。光変調器OMは、音響光学素子の代わりに電気光学素子又はアッテネータを含み、電気光学素子又はアッテネータへの印加電圧によってパルスレーザ光31の透過率が制御されてもよい。本開示では、音響光学素子、電気光学素子又はアッテネータに印加される印加電圧を光変調器OMの印加電圧という。
【0022】
チャンバ2には、ターゲットタイミングセンサ4aと、EUVエネルギーセンサ7aと、レーザ光集光光学系22aと、が配置されている。ターゲットタイミングセンサ4aは本開示における第1のセンサに相当し、EUVエネルギーセンサ7aは本開示における第2のセンサに相当する。
ターゲットタイミングセンサ4aは、図示しない光源、転写光学系、及び光センサを含む。光源は、ターゲット供給部26とプラズマ生成領域25との間の検出領域35に到達したターゲット27を照明する。検出領域35は本開示における第2の所定領域に相当する。転写光学系は、光源によって照明されたターゲット27の像の一部を光センサに結像させる。光センサは、ターゲット27が検出領域35を通過する際の光量の変化を検出する。光センサは、ラインセンサでもよいしイメージセンサでもよい。
EUVエネルギーセンサ7aは、プラズマ生成領域25において生成されたEUV光の一部が入射する位置に配置されている。
プロセッサ5は、変調信号生成部51と、タイミング信号生成部52と、を含む。
【0023】
2.2 動作
マスターオシレータMOは、レーザ発振を行ってパルスレーザ光を出力する。マスターオシレータMOによるパルスレーザ光の出力タイミングは、タイミング信号生成部52からマスターオシレータMOに出力されるトリガタイミング信号によって規定される。増幅器PAは、マスターオシレータMOから入射したパルスレーザ光を増幅する。これによりレーザシステム3がパルスレーザ光31を出力する。
【0024】
光変調器OMは、印加電圧に応じた透過率でパルスレーザ光31を透過させる。光変調器OMの印加電圧は変調信号生成部51から光変調器OMに出力される変調信号によって規定される。光変調器OMの印加電圧を変更するタイミングは、タイミング信号生成部52から光変調器OMに出力される変調タイミング信号によって規定される。
【0025】
レーザ光伝送装置34は、光変調器OMから入射したパルスレーザ光31をパルスレーザ光32としてレーザ光集光光学系22aに導く。
レーザ光集光光学系22aは、レーザ光伝送装置34から入射したパルスレーザ光32をパルスレーザ光33としてプラズマ生成領域25に集光させる。
【0026】
ターゲット供給部26は、ドロップレット状のターゲット27をプラズマ生成領域25に向けて出力することによりターゲット27をプラズマ生成領域25に供給する。
ターゲットタイミングセンサ4aは、ターゲット27が検出領域35に到達した到達タイミングを検出し、到達タイミングを示すターゲット検出信号をタイミング信号生成部52に出力する。
パルスレーザ光33は、プラズマ生成領域25においてターゲット27に照射される。
EUVエネルギーセンサ7aは、ターゲット27にパルスレーザ光33が照射されたことにより生成されたEUV光のパルスエネルギーを検出し、検出結果を変調信号生成部51に出力する。EUV光のパルスエネルギーは本開示における第2のパルスエネルギーに相当する。
【0027】
変調信号生成部51は、EUVエネルギーセンサ7aから受信したEUV光のパルスエネルギーに基づいて、光変調器OMの印加電圧を制御するための変調信号を出力する。変調信号は、EUV光のパルスエネルギーに基づくフィードバック制御信号FBEUVを含む。例えば、EUV光のパルスエネルギーが目標値より低かった場合に、光変調器OMの印加電圧を上げることにより、光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率を高くしてもよい。パルスレーザ光31の透過率を高くすることによりターゲット27に照射されるパルスレーザ光33のパルスエネルギーが高くなるので、より高いエネルギーをターゲット27に与える。これにより、EUV光のパルスエネルギーが高くなり目標値に近づき得る。
【0028】
タイミング信号生成部52は、ターゲットタイミングセンサ4aから受信したターゲット検出信号に基づいて、マスターオシレータMOにトリガタイミング信号を出力し、光変調器OMに変調タイミング信号を出力する。本開示では、トリガタイミング信号と変調タイミング信号とをまとめてタイミング信号ということがある。
【0029】
図3は、比較例におけるレーザ制御のタイミングチャートである。
ターゲットタイミングセンサ4aからタイミング信号生成部52に出力されるターゲット検出信号は、複数のパルスを含む。例えば、各パルスの立ち上がりのタイミングが、ターゲット27が検出領域35に到達した到達タイミングを示す。1つのパルスの立ち上がりから次のパルスの立ち上がりまでの時間間隔ΔT1、ΔT2、ΔT3、・・・が、ターゲット27の時間間隔に相当する。
【0030】
タイミング信号生成部52からマスターオシレータMOに出力されるトリガタイミング信号は、ターゲット検出信号におけるパルスの立ち上がりに対して遅延時間tを有する第1のトリガを含む。遅延時間tは一定であるので、第1のトリガの時間間隔ΔT1、ΔT2、ΔT3、・・・は、それぞれターゲット27の時間間隔ΔT1、ΔT2、ΔT3、・・・に等しい。マスターオシレータMOは、第1のトリガを受信したタイミングでレーザ発振を開始するので、レーザ発振間隔ΔTnは第1のトリガの時間間隔ΔT1、ΔT2、ΔT3、・・・に等しい。遅延時間tは、ターゲット27が検出領域35に到達した後、プラズマ生成領域25に到達するまでの所要時間と、マスターオシレータMOがレーザ発振を開始した後、パルスレーザ光33がプラズマ生成領域25に到達するまでの所要時間と、の差に相当する。
【0031】
トリガタイミング信号は、ターゲット検出信号におけるパルスの立ち上がりに対して遅延時間t+tを有する第2のトリガをさらに含んでもよい。レーザシステム3は、第2のトリガを受信したタイミングで、次のレーザ発振のためのレーザ媒質の励起を開始する。レーザ媒質の励起エネルギーは、次のレーザ発振のための第1のトリガをマスターオシレータMOが受信するまで蓄積される。
遅延時間tはトリガタイミング信号の立ち下りのタイミングで規定され、遅延時間t+tはトリガタイミング信号の立ち上りのタイミングで規定されてもよい。
【0032】
タイミング信号生成部52から光変調器OMに出力される変調タイミング信号は、ターゲット検出信号におけるパルスの立ち上がりに対して遅延時間tを有する第3のトリガを含む。遅延時間tは遅延時間tよりも長い時間である。遅延時間tと遅延時間tとの差は、マスターオシレータMOがレーザ発振を開始した後、パルスレーザ光31が光変調器OMに到達するまでの所要時間よりも短い時間である。
光変調器OMは、タイミング信号生成部52から第3のトリガを含む変調タイミング信号を受信すると、変調信号生成部51から受信した変調信号に応じて印加電圧を変更することにより光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率を変化させる。
【0033】
2.3 比較例の課題
図3に示されるように、ターゲット検出信号に表れるターゲット27の時間間隔ΔT1、ΔT2、ΔT3、・・・は変動することがある。ターゲット27の時間間隔ΔT1、ΔT2、ΔT3、・・・の変動は、ターゲット供給部26の機械的な状態の変化などによって起こる。図3においてはターゲット27の時間間隔ΔT1、ΔT2、ΔT3、・・・の変動が誇張して描かれている。
ターゲット27の時間間隔ΔT1、ΔT2、ΔT3、・・・の変動に応じて、レーザ発振間隔ΔTnも変動する。
【0034】
レーザシステム3の励起強度I1、I2、I3、・・・は、レーザ発振間隔ΔTnによって変動し得る。例えば、連続発振レーザ光でレーザ媒質を励起するレーザシステム3において、レーザ発振間隔ΔTnが短い場合よりも、レーザ発振間隔ΔTnが長い方が、励起強度I1、I2、I3、・・・が高くなり得る。
【0035】
レーザシステム3の励起強度I1、I2、I3、・・・に応じて、パルスレーザ光33のレーザ光強度が変動し、レーザ光強度に応じてパルスエネルギーE10、E20、E30、・・・が変動する。例えば、光変調器OMの印加電圧を複数のパルスで同一とすることによりパルスレーザ光31の透過率を複数のパルスで同一とした場合、レーザシステム3の励起強度I1、I2、I3、・・・が高いほど、パルスレーザ光33のパルスエネルギーE10、E20、E30、・・・が高くなる。
パルスレーザ光33のパルスエネルギーE10、E20、E30、・・・が変動すると、EUV光のパルスエネルギーが不安定となり得る。
【0036】
3.ターゲット検出信号に基づいて光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率を制御するEUV光生成システム11b
3.1 構成及び動作
図4は、第1の実施形態に係るEUV光生成システム11bの構成を概略的に示す。図5は、第1の実施形態におけるレーザ制御のタイミングチャートである。
【0037】
第1の実施形態において、タイミング信号生成部52は、ターゲットタイミングセンサ4aから順次受信したターゲット検出信号の検出時間差に基づいてターゲット27の時間間隔ΔT1、ΔT2、ΔT3、・・・を計算する。タイミング信号生成部52は、検出時間差を計時するタイマーを備えてもよい。タイミング信号生成部52は、ターゲット27の時間間隔ΔT1、ΔT2、ΔT3、・・・をレーザ発振間隔ΔTnとして変調信号生成部51に出力する。
【0038】
図5に示されるターゲット検出信号、トリガタイミング信号、及びレーザシステム3の励起強度I1、I2、I3、・・・は、比較例において説明したものと同様でよい。
【0039】
変調信号生成部51は、レーザ発振間隔ΔTnに基づいて光変調器OMの印加電圧V1、V2、V3、・・・を計算する。本開示では、レーザ発振間隔ΔTnに基づいて計算される光変調器OMの印加電圧V1、V2、V3、・・・をまとめて印加電圧Vnということがある。
変調信号生成部51は、光変調器OMの印加電圧V1、V2、V3、・・・を制御することにより、光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率R1、R2、R3、・・・を制御する。
【0040】
これにより、プロセッサ5は、ターゲットタイミングセンサ4aが検出した到達タイミングに基づいて光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率R1、R2、R3、・・・を制御する。
【0041】
印加電圧Vnは、レーザ発振間隔ΔTnの関数で与えられる。
Vn=f(ΔTn)
関数の具体的な例については図6図10を参照しながら後述する。
【0042】
例えば、ターゲット27の時間間隔が第1の時間間隔ΔT1である場合は、光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率が第1の透過率R1となるように印加電圧V1が設定される。ターゲット27の時間間隔が第1の時間間隔ΔT1より短い第2の時間間隔ΔT2である場合は、透過率が第1の透過率R1より高い第2の透過率R2となるように印加電圧V2が設定される。
【0043】
これにより、光変調器OMに入射するパルスレーザ光31のパルスエネルギーの第1のばらつきよりも、光変調器OMを透過してターゲット27に照射されるパルスレーザ光33のパルスエネルギーの第2のばらつきが小さくなる。第1のばらつきは、励起強度I1、I2、I3、・・・のばらつきに対応する。第2のばらつきは、図5に示されるパルスエネルギーE1、E2、E3、・・・のばらつきに相当する。
【0044】
ターゲット27が検出領域35に到達してからプラズマ生成領域25に到達するまでの間に、プロセッサ5は以下の動作を行う。
1.タイミング信号生成部52が、ターゲット27の時間間隔ΔT1を示すターゲット検出信号をターゲットタイミングセンサ4aから受信し、ターゲット27の時間間隔ΔT1をレーザ発振間隔ΔTnとして変調信号生成部51に送信する。
2.タイミング信号生成部52が、ターゲット27の時間間隔ΔT1に基づくトリガタイミング信号をマスターオシレータMOに出力する。
3.ターゲット27の時間間隔ΔT1に基づくトリガタイミング信号に応じてマスターオシレータMOから出力されたパルスレーザ光が光変調器OMに到達する前に、変調信号生成部51がターゲット27の時間間隔ΔT1に基づいて光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率R1を制御する。
【0045】
これによれば、パルス毎に、ターゲット27が検出領域35に到達してからプラズマ生成領域25に到達するまでの間に、ターゲット27の時間間隔ΔT1に基づいて透過率R1が制御される。
その後に検出領域35に到達する別のターゲット27についても同様である。
【0046】
変調信号生成部51は、レーザ発振間隔ΔTnに基づいて計算される印加電圧Vnと、EUV光のパルスエネルギーに基づくフィードバック制御信号FBEUVと、の両方を用いて透過率R1、R2、R3、・・・を制御してもよい。この場合、レーザ発振間隔ΔTnに基づいて計算される印加電圧VnをEUV光のパルスエネルギーに基づいて補正してもよいし、EUV光のパルスエネルギーに基づくフィードバック制御信号FBEUVをレーザ発振間隔ΔTnに基づいて補正してもよい。
【0047】
3.2 関数の例
3.2.1 第1の例
図6は、レーザシステム3のレーザ発振間隔ΔTnと、光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率を最高値に制御したときのパルスレーザ光33のパルスエネルギーEmax(ΔTn)と、の関係を示すグラフである。パルスエネルギーEmax(ΔTn)は本開示における第1のパルスエネルギーに相当する。図6においては、レーザ発振間隔ΔTnが長いほどパルスエネルギーEmax(ΔTn)が高くなる。変調信号生成部51は、図6に示されるレーザ発振間隔ΔTnとパルスエネルギーEmax(ΔTn)との関係に基づいて光変調器OMの印加電圧Vnを制御する。
【0048】
図7は、光変調器OMの印加電圧Vnと、パルスレーザ光33のパルスエネルギーE(Vn)と、の関係を示すグラフである。図7は、光変調器OMの印加電圧Vnと、光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率と、の関係から求められる。
光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率を最高値に制御したときのパルスレーザ光33のパルスエネルギーEmax(ΔTn)は、レーザ発振間隔ΔTnに応じて異なる。パルスエネルギーEmax(ΔTn)の値は図6に示される関係を用いて求められる。
【0049】
図7に示されるように、光変調器OMの印加電圧Vnに応じて透過率が変化することによりパルスエネルギーE(Vn)が変化する。印加電圧Vnが閾値電圧Vth以下であればパルスエネルギーE(Vn)は0となり、印加電圧Vnが最大電圧Vmax以上であればパルスエネルギーE(Vn)はEmax(ΔTn)となる。印加電圧Vnを閾値電圧Vthから最大電圧Vmaxまで上げるにつれて、パルスエネルギーE(Vn)は0から次第に高くなってEmax(ΔTn)まで変化する。閾値電圧Vthと最大電圧Vmaxとの間において、パルスエネルギーE(Vn)は、印加電圧Vnの正弦の二乗に比例して変化する。図7に示される特性に基づいて印加電圧Vnを決定することにより、光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率を制御し、パルスレーザ光33のパルスエネルギーE(Vn)を制御することができる。
【0050】
レーザ発振間隔ΔTnに基づいて印加電圧Vnを計算するための関数の第1の例は、以下の式で与えられる。
Vn=(2/π)(Vmax-Vth)sin-1[√{Etarget/Emax(ΔTn)}]+Vth ・・・(式1)
ここで、X=sin-1[Y]は正弦関数の逆関数を示し、√{Z}はZの正の平方根を示す。πは円周率である。EtargetはパルスエネルギーE(Vn)の目標値である。
【0051】
例えば、閾値電圧Vthを1Vとし、最大電圧Vmaxを5Vとし、パルスエネルギーE(Vn)の目標値Etargetを11.5mJとする。光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率を最高値に制御したときのパルスレーザ光33のパルスエネルギーEmax(ΔTn)を16.7mJとする。このとき、式1から印加電圧Vnは約3.49Vと計算される。
【0052】
図8は、レーザ発振間隔ΔTnとこれに基づいて設定される印加電圧Vnとの関係を示すグラフである。図8は、一例としてパルスエネルギーE(Vn)の目標値Etargetを11.5mJとした場合を示している。ターゲット27の時間間隔ΔT1、ΔT2、ΔT3、・・・の変動によりレーザ発振間隔ΔTnが変動しても、光変調器OMの印加電圧Vnを制御することにより、パルスエネルギーE(Vn)を目標値Etargetに近い値にすることができる。
【0053】
3.2.2 第2の例
図9は、レーザシステム3のレーザ発振間隔ΔTnと、光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率を最高値に制御したときのパルスレーザ光33のパルスエネルギーEmax(ΔTn)と、の関係を示すグラフである。図9は、図6と同じグラフにおいて、基準間隔ΔTcにおけるパルスエネルギーEmax(ΔTn)の微分係数dEmax(ΔTc)/dΔTn、すなわち傾きを明示したものである。
【0054】
ここで、レーザシステム3のレーザ発振間隔ΔTnは基準間隔ΔTcの近傍で変動し、そのときのパルスエネルギーEmax(ΔTn)の変化率は微分係数dEmax(ΔTc)/dΔTnで近似されるものと仮定する。これを第1の仮定とする。
【0055】
図10は、光変調器OMの印加電圧Vnと、パルスレーザ光33のパルスエネルギーE(Vn)と、の関係を示すグラフである。図10において、レーザ発振間隔ΔTnは図9に示される基準間隔ΔTcである。すなわち、光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率を最高値に制御したときのパルスレーザ光33のパルスエネルギーはEmax(ΔTc)である。図10においては、さらに、基準電圧VcにおけるパルスエネルギーE(Vn)の微分係数dE(Vc)/dVn、すなわち傾きを明示している。
【0056】
ここで、光変調器OMの印加電圧Vnは基準電圧Vcの近傍で変動するように制御され、そのときのパルスエネルギーE(Vn)の変化率は微分係数dE(Vc)/dVnで近似されるものと仮定する。これを第2の仮定とする。
【0057】
第1の仮定と第2の仮定との両方が成り立つ範囲で、レーザ発振間隔ΔTnに基づいて印加電圧Vnを計算するための関数の第2の例は、以下の式で与えられる。
Vn=(dEmax(ΔTc)/dΔTn)(dVn/dE(Vc))(ΔTc-ΔTn)+Vc
ここで、dVn/dE(Vc)は図10に示される微分係数dE(Vc)/dVnの逆数である。
【0058】
なお、基準電圧Vcは、基準間隔ΔTcとパルスエネルギーE(Vn)の目標値Etargetとを用いて、以下の式で与えられる。
Vc=(2/π)(Vmax-Vth)sin-1[√{Etarget/Emax(ΔTc)}]+Vth
【0059】
3.3 作用
(1)第1の実施形態によれば、EUV光生成システム11bは、プラズマ生成領域25にターゲット27を供給するターゲット供給部26と、ターゲット27にプラズマ生成領域25において照射されるパルスレーザ光31~33を出力するレーザシステム3と、を含む。EUV光生成システム11bは、さらに、ターゲット供給部26とプラズマ生成領域25との間の検出領域35にターゲット27が到達した到達タイミングを検出するターゲットタイミングセンサ4aと、レーザシステム3とプラズマ生成領域25との間のパルスレーザ光31の光路に配置された光変調器OMと、を含む。EUV光生成システム11bは、さらに、到達タイミングに基づいて光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率を制御するプロセッサ5を含む。
これによれば、ターゲット27の時間間隔ΔT1、ΔT2、ΔT3、・・・が変動したときに、ターゲット27に照射されるパルスレーザ光33のパルスエネルギーの変動を抑制し得る。従って、EUV光のパルスエネルギーを安定化し得る。
【0060】
(2)第1の実施形態によれば、ターゲットタイミングセンサ4aが検出した到達タイミングが第1の時間間隔ΔT1である場合に、光変調器OMがパルスレーザ光31を第1の透過率R1で透過させる。さらに、ターゲットタイミングセンサ4aが検出した到達タイミングが第1の時間間隔ΔT1より短い第2の時間間隔ΔT2である場合に、光変調器OMがパルスレーザ光31を第1の透過率R1より高い第2の透過率R2で透過させる。
これによれば、ターゲット27の時間間隔ΔT1及びΔT2が短くなったときに、ターゲット27に照射されるパルスレーザ光33のパルスエネルギーが低くなることを抑制し得る。
【0061】
(3)第1の実施形態によれば、光変調器OMに入射するパルスレーザ光31のパルスエネルギーの第1のばらつきよりも、光変調器OMを透過してターゲット27に照射されるパルスレーザ光33のパルスエネルギーの第2のばらつきが小さくなるように、光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率が制御される。
これによれば、レーザシステム3から出力されるパルスレーザ光31のパルスエネルギーが変動した場合でも、ターゲット27に照射されるパルスレーザ光33のパルスエネルギーの変動が抑制される。
【0062】
(4)第1の実施形態によれば、プロセッサ5は、光変調器OMの印加電圧Vnを制御することにより光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率を制御する。
これによれば、パルスレーザ光31の透過率を高い応答性能で制御できる。
【0063】
(5)第1の実施形態によれば、プロセッサ5は、検出領域35にターゲット27が到達してからプラズマ生成領域25に到達するまでの間に、検出領域35にターゲット27が到達した到達タイミングに基づいて光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率を制御する。
ターゲット27がプラズマ生成領域25に到達するタイミングで、パルスレーザ光33がプラズマ生成領域25に到達する。従って、ターゲット27がプラズマ生成領域25に到達するまでに透過率を制御することにより、パルスエネルギーを調節されたパルスレーザ光33がターゲット27に照射され得る。
【0064】
(6)第1の実施形態によれば、プロセッサ5は、検出領域35にターゲット27が到達した到達タイミングに基づいて、レーザシステム3にトリガタイミング信号を出力する。
これによれば、ターゲット27にパルスレーザ光33を照射するための適切なタイミングでレーザシステム3がレーザ発振することができる。
【0065】
(7)第1の実施形態によれば、プロセッサ5は、検出領域35にターゲット27が到達した到達タイミングに基づいて、レーザシステム3と光変調器OMとに互いに異なるタイミング信号を出力する。
これによれば、レーザシステム3におけるレーザ発振のタイミングと、光変調器OMにおける透過率を変更するタイミングとを別々に制御し得る。
【0066】
(8)第1の実施形態によれば、レーザシステム3のレーザ発振間隔ΔTnと、光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率を最高値に制御したときのパルスレーザ光33のパルスエネルギーEmax(ΔTn)と、の関係に基づいて透過率が制御される。
これによれば、ターゲット27の時間間隔ΔT1、ΔT2、ΔT3、・・・が変動したときに、レーザ発振間隔ΔTnの変動に起因するパルスレーザ光33のパルスエネルギーの変動を抑制し得る。
【0067】
(9)第1の実施形態によれば、レーザ発振間隔ΔTnとパルスエネルギーEmax(ΔTn)との関係と、光変調器OMの印加電圧Vnと透過率との関係と、の両方に基づいて透過率が制御される。
これによれば、レーザ発振間隔ΔTnの変動に起因するパルスレーザ光31のパルスエネルギーの変動に応じて、パルスレーザ光33のパルスエネルギーが安定化するように光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率を制御し得る。
【0068】
(10)第1の実施形態によれば、レーザシステム3のレーザ発振間隔ΔTnが変動したときのパルスエネルギーEmax(ΔTn)の変化率と、光変調器OMの印加電圧Vnが変動したときの透過率の変化率と、の両方に基づいて透過率が制御される。
これによれば、例えば正弦関数の逆関数のような複雑な計算をパルスごとに行わなくても、予め計算した変化率を用いた制御ができるので、パルスごとのプロセッサ5の負荷を低減し得る。
【0069】
(11)第1の実施形態によれば、ターゲット供給部26はプラズマ生成領域25にドロップレット状のターゲット27を供給する。
これによれば、ターゲット27の時間間隔ΔT1、ΔT2、ΔT3、・・・の変動を小さくすることができる。ターゲット27の時間間隔ΔT1、ΔT2、ΔT3、・・・がわずかに変動した場合でも、光変調器OMを制御することによりパルスレーザ光33のパルスエネルギーを安定化し得る。
【0070】
(12)第1の実施形態によれば、レーザシステム3は、YAGレーザ装置を含む。
YAGレーザ装置を用いて生成されたパルスレーザ光33をターゲット27に照射することにより、効率よくEUV光を生成し得る。パルスレーザ光31のパルスエネルギーが変動した場合でも、光変調器OMを制御することによりパルスレーザ光33のパルスエネルギーを安定化し得る。
【0071】
(13)第1の実施形態によれば、レーザシステム3は励起光源を含み、励起光源は連続発振レーザ光を出力してレーザシステム3のレーザ媒質を励起する。
これによれば、レーザ発振間隔ΔTnとパルスレーザ光31のパルスエネルギーとの関係を利用して、光変調器OMを制御することによりパルスレーザ光33のパルスエネルギーを安定化し得る。
【0072】
(14)第1の実施形態によれば、光変調器OMは、音響光学素子、電気光学素子、及びアッテネータのいずれか1つを含む。
これによれば、光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率を応答性よく制御し得る。
【0073】
(15)第1の実施形態によれば、EUV光生成システム11bは、ターゲット27にパルスレーザ光33が照射されたことにより生成されたEUV光のパルスエネルギーを検出するEUVエネルギーセンサ7aをさらに備える。プロセッサ5は、検出領域35にターゲット27が到達した到達タイミングとEUV光のパルスエネルギーとの両方に基づいて光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率を制御する。
これによれば、ターゲット27の時間間隔ΔT1、ΔT2、ΔT3、・・・の変動に応じたパルスレーザ光33のパルスエネルギーの変動を抑制することに加えて、EUV光のパルスエネルギーの計測値を用いた制御を行うことにより、EUV光のパルスエネルギーを安定化し得る。
【0074】
(16)第1の実施形態によれば、プロセッサ5は、EUV光のパルスエネルギーに基づいて光変調器OMによるパルスレーザ光31の透過率をフィードバック制御する。
これによれば、EUV光のパルスエネルギーの計測値を用いたフィードバック制御により、EUV光のパルスエネルギーを安定化し得る。
他の点については、第1の実施形態は比較例と同様である。
【0075】
4.プリパルスレーザ装置3Pを含むEUV光生成システム11c
4.1 構成
図11は、第2の実施形態に係るEUV光生成システム11cの構成を概略的に示す。第2の実施形態において、レーザシステム3は、プリパルスレーザ装置3P及びメインパルスレーザ装置3Mを含む。プリパルスレーザ装置3PはマスターオシレータMOP及び増幅器PAPを含み、メインパルスレーザ装置3MはマスターオシレータMOM及び増幅器PAMを含む。
【0076】
プリパルスレーザ装置3Pとレーザ光伝送装置34との間のプリパルスレーザ光31Pの光路に、第1の光変調器OMPが配置されている。第1の光変調器OMPは本開示における第1の光調節器に相当する。
メインパルスレーザ装置3Mとレーザ光伝送装置34との間のメインパルスレーザ光31Mの光路に、第2の光変調器OMMが配置されている。第2の光変調器OMMは本開示における第2の光調節器に相当する。
【0077】
4.2 動作
マスターオシレータMOP及びMOMの各々は、レーザ発振を行ってパルスレーザ光を出力する。マスターオシレータMOPによるパルスレーザ光の出力タイミングは第1のトリガタイミング信号によって制御される。マスターオシレータMOMによるパルスレーザ光の出力タイミングは第2のトリガタイミング信号によって制御される。
【0078】
第1のトリガタイミング信号と第2のトリガタイミング信号の各々は、比較例におけるトリガタイミング信号と同様である。但し、第1のトリガタイミング信号に含まれる第1のトリガの遅延時間tAPは、第2のトリガタイミング信号に含まれる第1のトリガの遅延時間tAMよりも短い時間である。これにより、プリパルスレーザ光31Pはメインパルスレーザ光31Mよりも早く生成される。
第1のトリガタイミング信号は、ターゲット検出信号におけるパルスの立ち上がりに対して遅延時間tAP+tBPを有する第2のトリガをさらに含んでもよい。第2のトリガタイミング信号は、ターゲット検出信号におけるパルスの立ち上がりに対して遅延時間tAM+tBMを有する第2のトリガをさらに含んでもよい。
【0079】
第1の光変調器OMPは、印加電圧Vnに応じた透過率でプリパルスレーザ光31Pを透過させる。第2の光変調器OMMは、印加電圧Vnに応じた透過率でメインパルスレーザ光31Mを透過させる。
【0080】
第1の光変調器OMPに与えられる遅延時間tDPは、遅延時間tAPよりも長い時間である。遅延時間tDPと遅延時間tAPとの差は、マスターオシレータMOPがレーザ発振を開始した後、プリパルスレーザ光31Pが第1の光変調器OMPに到達するまでの所要時間よりも短い時間である。
【0081】
第2の光変調器OMMに与えられる遅延時間tDMは、遅延時間tAMよりも長い時間である。遅延時間tDMと遅延時間tAMとの差は、マスターオシレータMOMがレーザ発振を開始した後、メインパルスレーザ光31Mが第2の光変調器OMMに到達するまでの所要時間よりも短い時間である。
【0082】
レーザ光伝送装置34は、第1及び第2の光変調器OMP及びOMMから入射したプリパルスレーザ光31P及びメインパルスレーザ光31Mをレーザ光集光光学系22aに導く。プリパルスレーザ光31P及びメインパルスレーザ光31Mは、パルスレーザ光32としてレーザ光集光光学系22aに入射する。
【0083】
プリパルスレーザ光31Pはパルスレーザ光33としてドロップレット状のターゲット27に照射される。プリパルスレーザ光31Pが照射されたターゲット27はプリパルスレーザ光31Pのエネルギーにより破壊されて拡散する。プリパルスレーザ光31Pのパルスエネルギーの変動は、ターゲット27の拡散状態に影響し得る。ターゲット27の拡散状態が望ましくない状態である場合には、そのターゲット27にメインパルスレーザ光31Mを照射してもEUV光のパルスエネルギーが望ましい値にならない場合がある。
【0084】
従って、プリパルスレーザ光31Pのパルスエネルギーはレーザ発振間隔ΔTnの変動に依存せずに安定していることが望ましい。また、EUV光のパルスエネルギーの変動によってターゲット27の拡散状態が変動することを抑制するため、プリパルスレーザ光31PのパルスエネルギーはEUV光のパルスエネルギーに基づいてフィードバック制御されないようにしてもよい。
そこで、変調信号生成部51は、レーザ発振間隔ΔTnに基づいて計算される印加電圧Vnを用いて、第1の光変調器OMPによるプリパルスレーザ光31Pの透過率を制御する。
【0085】
プリパルスレーザ光31Pが照射されて拡散したターゲット27に、メインパルスレーザ光31Mがパルスレーザ光33として照射される。プリパルスレーザ光31Pとメインパルスレーザ光31Mとが照射されたターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマからEUV光が放射される。メインパルスレーザ光31Mのパルスエネルギーは、EUV光のパルスエネルギーに影響し得る。例えば、メインパルスレーザ光31Mのパルスエネルギーが低くなるとEUV光のパルスエネルギーが低くなり得る。
【0086】
従って、メインパルスレーザ光31Mのパルスエネルギーはレーザ発振間隔ΔTnの変動に依存せずに安定していることが望ましい。また、EUV光のパルスエネルギーを目標値の付近に制御するため、メインパルスレーザ光31MのパルスエネルギーはEUV光のパルスエネルギーに基づいてフィードバック制御されてもよい。
そこで、変調信号生成部51は、レーザ発振間隔ΔTnに基づいて計算される印加電圧Vnと、EUVエネルギーセンサ7aから受信したEUV光のパルスエネルギーに基づくフィードバック制御信号FBEUVと、の両方を用いて第2の光変調器OMMによるメインパルスレーザ光31Mの透過率を制御する。
【0087】
すなわち、変調信号生成部51は、EUV光のパルスエネルギーが第1の光変調器OMPによるプリパルスレーザ光31Pの透過率よりも第2の光変調器OMMによるメインパルスレーザ光31Mの透過率に大きな影響を与えるように、透過率を制御する。
【0088】
4.3 作用
(17)第2の実施形態によれば、EUV光生成システム11cは、ターゲット27にパルスレーザ光33が照射されたことにより生成されたEUV光のパルスエネルギーを検出するEUVエネルギーセンサ7aを含む。レーザシステム3は、プリパルスレーザ光31Pを出力するプリパルスレーザ装置3Pと、メインパルスレーザ光31Mを出力するメインパルスレーザ装置3Mと、を含む。プリパルスレーザ光31Pはターゲット27に照射され、メインパルスレーザ光31Mはプリパルスレーザ光31Pが照射されたターゲット27に照射される。EUV光生成システム11cは、光調節器として、プリパルスレーザ装置3Pとプラズマ生成領域25との間のプリパルスレーザ光31Pの光路に配置された第1の光変調器OMPと、メインパルスレーザ装置3Mとプラズマ生成領域25との間のメインパルスレーザ光31Mの光路に配置された第2の光変調器OMMと、を含む。プロセッサ5は、検出領域35にターゲット27が到達した到達タイミングに基づいて第1の光変調器OMPによるプリパルスレーザ光31Pの透過率を制御する。さらに、プロセッサ5は、到達タイミングとEUV光のパルスエネルギーとの両方に基づいて第2の光変調器OMMによるメインパルスレーザ光31Mの透過率を制御する。
【0089】
これによれば、プリパルスレーザ光31Pが照射されて拡散したターゲット27にメインパルスレーザ光31Mを照射するので、ターゲット27を効率よくプラズマ化し得る。また、ターゲット27の時間間隔ΔT1、ΔT2、ΔT3、・・・が変動してもターゲット27に照射されるプリパルスレーザ光31Pのパルスエネルギーの変動を抑制し得るので、ターゲット27の拡散状態を安定化し得る。さらに、ターゲット27の時間間隔ΔT1、ΔT2、ΔT3、・・・とEUV光のパルスエネルギーとの両方に基づいてターゲット27に照射されるメインパルスレーザ光31Mのパルスエネルギーを制御するので、EUV光のパルスエネルギーを安定化し得る。
【0090】
(18)第2の実施形態によれば、プロセッサ5は、EUV光のパルスエネルギーが第1の光変調器OMPによるプリパルスレーザ光31Pの透過率よりも第2の光変調器OMMによるメインパルスレーザ光31Mの透過率に大きな影響を与えるように、これらの透過率を制御する。
これによれば、EUV光のパルスエネルギーが第1の光変調器OMPによるプリパルスレーザ光31Pの透過率に与える影響を小さくし得るので、EUV光のパルスエネルギーの変動によってターゲット27の拡散状態が変動することを抑制し得る。
他の点については、第2の実施形態は第1の実施形態と同様である。
【0091】
5.その他
図12は、EUV光生成システム11bに接続された露光装置6aの構成を概略的に示す。
図12において、EUV光利用装置6(図1参照)としての露光装置6aは、マスク照射部68とワークピース照射部69とを含む。マスク照射部68は、EUV光生成システム11bから入射したEUV光によって、反射光学系を介してマスクテーブルMTのマスクパターンを照明する。ワークピース照射部69は、マスクテーブルMTによって反射されたEUV光を、反射光学系を介してワークピーステーブルWT上に配置された図示しないワークピース上に結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置6aは、マスクテーブルMTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、マスクパターンを反映したEUV光をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで電子デバイスを製造できる。
【0092】
図13は、EUV光生成システム11bに接続された検査装置6bの構成を概略的に示す。
図13において、EUV光利用装置6(図1参照)としての検査装置6bは、照明光学系63と検出光学系66とを含む。照明光学系63は、EUV光生成システム11bから入射したEUV光を反射して、マスクステージ64に配置されたマスク65を照射する。ここでいうマスク65はパターンが形成される前のマスクブランクスを含む。検出光学系66は、照明されたマスク65からのEUV光を反射して検出器67の受光面に結像させる。EUV光を受光した検出器67はマスク65の画像を取得する。検出器67は例えばTDI(time delay integration)カメラである。以上のような工程によって取得したマスク65の画像により、マスク65の欠陥を検査し、検査の結果を用いて、電子デバイスの製造に適するマスクを選定する。そして、選定したマスクに形成されたパターンを、露光装置6aを用いて感光基板上に露光転写することで電子デバイスを製造できる。
【0093】
図12又は図13において、EUV光生成システム11bの代わりにEUV光生成システム11cが用いられてもよい。
【0094】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
【0095】
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。たとえば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。
図1
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図12
図13