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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112043
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】薬液揮散装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20220726BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20220726BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20220726BHJP
   B65D 85/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
A61L9/12
A01M1/20 D
B65D83/00 F
B65D85/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007651
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】下村 真由香
(72)【発明者】
【氏名】肖 文沁
(72)【発明者】
【氏名】平川 宣幸
【テーマコード(参考)】
2B121
3E068
4C180
【Fターム(参考)】
2B121CA02
2B121CA15
2B121CA16
2B121CA32
2B121CA44
2B121CA46
2B121CA53
2B121CA58
2B121CC02
2B121CC13
2B121CC31
2B121EA01
2B121FA15
3E068AA22
3E068CC01
3E068CC03
3E068DD40
3E068EE14
4C180AA02
4C180AA03
4C180AA07
4C180AA18
4C180CA06
4C180CA09
4C180GG12
4C180GG17
(57)【要約】
【課題】温度変化などの環境の変化によって薬液が過剰に排出されるのを抑制することができる、薬液揮散装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る薬液揮散装置は、薬液が収容される内部空間を有し、下端部に前記薬液が排出される排出部が形成された容器と、前記容器の排出部から排出される薬液を吸収し、揮散させる揮散体と、少なくとも前記容器の下端部を覆う、カバー部材と、を備え、前記容器は、当該容器の内部の空気を前記排出部から外部に排出するための排気管を備えており、前記排気管は、前記容器の内部空間の上端付近まで延びている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が収容される内部空間を有し、下端部に前記薬液が排出される排出部が形成された容器と、
前記容器の排出部から排出される薬液を吸収し、揮散させる揮散体と、
少なくとも前記容器の下端部を覆う、カバー部材と、
を備え、
前記容器は、当該容器の内部の空気を前記排出部から外部に排出するための排気管を備えており、
前記排気管は、前記容器の内部空間の上端付近まで延びている、薬液揮散装置。
【請求項2】
前記カバー部材は、薬液を溜める貯留部を有し、
前記容器は、前記排出部に取り付けられる第1吸液部材及び第2吸液部材を備え、
前記容器内の薬液は、前記第1吸液部材を介して外部に排出されるように構成され、
前記第2吸液部材を介して外部の薬液を前記容器に吸引するように構成され、
前記第1吸液部材は、前記揮散体に接し、
前記第2吸液部材は、前記排出部から前記揮散体に接することなく、前記貯留部まで延びている、請求項1に記載の薬液揮散装置。
【請求項3】
前記容器は、前記排出部を構成する排出管を備え、
前記カバー部材の内面には、前記排出管から排出された薬液を溜めるための凹部が形成され、
前記排出管の下端と前記凹部の底面との間に隙間が形成されるように、前記排出管が前記凹部に挿入され、
前記揮散体の一部が、前記排出管の下端と前記凹部の底部との間に配置されている、請求項1に記載の薬液揮散装置。
【請求項4】
前記排気管は、前記排出部に取り付けられている、請求項1から3のいずれかに記載の薬液揮散装置。
【請求項5】
前記カバー部材は、
前記凹部が形成された底壁部と、
前記底壁部の周縁部から起立し、前記揮散体から揮散される薬液を外部に放出するための少なくとも1つの揮散孔が形成された側壁部と、
を備えている、請求項1から4のいずれかに記載の薬液揮散装置。
【請求項6】
前記揮散体は、前記揮散孔と対向する位置まで延びている、請求項5に記載の薬液揮散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液揮散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液揮散装置には、種々のタイプのものがあるが、例えば、特許文献1に記載のような倒立型の薬液揮散装置がある。この薬液揮散装置は、薬液が収容された容器と、この容器の下端部を覆う下容器と、下容器に収容される揮散体と、を備えている。容器の下端部には吸液芯が設けられており、この吸液芯を介して排出される薬液が揮散体に吸収され後、下容器に形成された揮散孔から外部に揮散するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2017/077946号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の薬液揮散装置では、次のような問題があった。使用が進むと容器内の薬液の水位が低くなり、容器の上部には空気が溜まっていく。そして、例えば、温度変化によって空気が膨張したときには、薬液が空気によって押圧されるため、過剰な薬液が排出されるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、温度変化などの環境の変化によって薬液が過剰に排出されるのを抑制することができる、薬液揮散装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る薬液揮散装置は、薬液が収容される内部空間を有し、下端部に前記薬液が排出される排出部が形成された容器と、前記容器の排出部から排出される薬液を吸収し、揮散させる揮散体と、少なくとも前記容器の下端部を覆う、カバー部材と、を備え、前記容器は、当該容器の内部の空気を前記排出部から外部に排出するための排気管を備えており、前記排気管は、前記容器の内部空間の上端付近まで延びている。
【0007】
上記薬液揮散装置において、前記カバー部材は、薬液を溜める貯留部を有し、前記容器は、前記排出部に取り付けられる第1吸液部材及び第2吸液部材を備え、前記容器内の薬液は、前記第1吸液部材を介して外部に排出されるように構成され、前記第2吸液部材を介して外部の薬液を前記容器に吸引するように構成され、前記第1吸液部材は、前記揮散体に接し、前記第2吸液部材は、前記排出部から前記揮散体に接することなく、前記貯留部まで延びているものとすることができる。
【0008】
上記薬液揮散装置において、前記容器は、前記排出部を構成する排出管を備え、前記カバー部材の内面には、前記排出管から排出された薬液を溜めるための凹部が形成され、前記排出管の下端と前記凹部の底面との間に隙間が形成されるように、前記排出管が前記凹部に挿入され、前記揮散体の一部が、前記排出管の下端と前記凹部の底部との間に配置することができる。
【0009】
上記薬液揮散装置において、前記排気管は、前記排出部に取り付けることができる。
【0010】
上記薬液揮散装置において、前記カバー部材は、前記凹部が形成された底壁部と、前記底壁部の周縁部から起立し、前記揮散体から揮散される薬液を外部に放出するための少なくとも1つの揮散孔が形成された側壁部と、を備えることができる。
【0011】
上記薬液揮散装置において、前記揮散体は、前記揮散孔と対向する位置まで延ばすことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る薬液揮散装置によれば、温度変化などの環境の変化によって薬液が過剰に排出されるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る薬液揮散装置の一実施形態を示す斜視図である。
図2】容器の側面図である。
図3】容器本体の側面図である。
図4】容器本体を上から見た斜視図である。
図5】容器本体の断面図である。
図6】蓋部材の斜視図である。
図7】蓋部材の断面図である。
図8】カバー部材の斜視図である。
図9】カバー部材の平面図である。
図10】カバー部材の断面図である。
図11】揮散体を上方から見た斜視図である。
図12】揮散体を容器に取り付けたときの側面図である。
図13】薬液揮散装置の断面図である。
図14】第1吸液部材、第2吸液部材、及び揮散体の他の例を示す断面図である。
図15】揮散体を容器に取り付けたときの他の態様を示す側面図である。
図16図15の薬液揮散装置において薬液の排出を説明する断面図である。
図17図15の薬液揮散装置において薬液の排出を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る薬液揮散装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
<1.薬液揮散装置の全体構成>
図1は本実施形態に係る薬液揮散装置の斜視図である。図1に示すように、この薬液揮散装置は、薬液が収容される容器10、この容器10の下端部を覆うカバー部材20と、及び容器10とカバー部材20との間に収容され、容器10から排出される薬液を揮散させる揮散体(図1では省略)30と、を備えている。以下、これらの部材について詳細に説明する。
【0016】
<1-1.容器>
図2は容器の側面図である。図2に示すように、容器10は、下端部に開口が形成され、薬液が収容される容器本体1と、この容器本体1の下端部の開口を閉じる蓋部材2と、を備えている。以下、これらの部材について、詳細に説明する。
【0017】
<1-1-1.容器本体>
図3は容器本体の斜視図、図4は容器本体を上から見た斜視図、図5は容器本体の断面図である。図3図5に示すように、容器本体1は、円筒状に形成された本体部11と、この本体部11の下端に連結される連結部12と、本体部11よりも小径で連結部12の下端から下方に延びる円筒状の排出部13と、を備え、これらが一体的に形成されている。本体部11は、円筒状の側壁部110と、この側壁部の上端を閉じる天壁部115と、を備えている。
【0018】
側壁部110は、上下方向に延びる第1部位111と、この第1部位111よりもやや小径で第1部位111の下端に連結された第2部位112と、この第2部位112よりもやや小径で第2部位112の下端に連結された第3部位113と、で構成されている。したがって、第1部位111と第2部位112との境界には段差が形成され、第2部位112と第3部位113の境界にも段差が形成されている。
【0019】
第1部位111は天壁部115の周縁から下方に延び、側壁部110の大半を構成する。また、第1部位111には上下方向の全体に亘って延びる第1溝114が周方向に所定間隔をおいて形成されている。第1部位111の下縁は、円形状に形成されているが、軸線を挟んで向かい合う一対の部位が下方に円弧状に突出している。以下、これらの部位を下突出部117と称することとする。また、両下突出部117の間には、上方にやや円弧状に突出する一対の部位が形成されている。以下、これらの部位を上突出部118と称することとする。このように、第1部位111の下縁は、一対の下突出部117と一対の上突出部118とがなめらかに連結された曲線によって構成されている。
【0020】
第2部位112の下縁は第1部位111の下縁と平行に延びている。したがって、第2部位112の上下方向の幅は概ね一定である。また、第2部位112には、周方向に延びる一対の取付溝119が所定間隔をおいて形成されている。これら取付溝119は、上述した下突出部117に対応する位置にそれぞれ形成されている。第3部位113の下縁は、側面視において水平方向に延びており、この第3部位113の下縁に連結部12が連結されている。
【0021】
連結部12は、下方にいくにしたがって径方向内方に延びる傾斜面によって形成されており、この連結部12の下端に円筒状の排出部13が連結されている。排出部13の下端には下方に開放された開口131が形成されている。また、排出部13の外周面の下端付近には雄ネジ132が形成されている。
【0022】
図4及び図5に示すように、天壁部115は、平面視円形状に形成されており、天壁部115の内面の中央には下方に突出する第1突出部116aが形成されている。第1突出部116aは、断面円弧状に形成されている。そして、この第1突出部116aを中心として、天壁部115の内面には、同心円状に、円形状の第2突出部116b及び第3突出部116cが形成されており、これら第2突出部116b及び第3突出部116cは、下方に断面円弧状に突出している。また、これら突出部116a~116cに対応するように、天壁部115の上面には凹部116e~116gが形成されている。
【0023】
容器本体1は、上述した本体部11、連結部12、及び排出部13によって囲まれる内部空間を有しており、この内部空間に薬液が収容される。
【0024】
<1-1-2.蓋部材>
次に、蓋部材2について、図6及び図7を参照しつつ説明する。図6は蓋部材の斜視図、図7は蓋部材の断面図である。図6及び図7に示すように、蓋部材2は、円筒状の側壁部21と、この側壁部21の下部を塞ぐ底壁部22と、を備えている。側壁部21の内面には、雌ネジ211が形成されており、この雌ネジ211と容器本体1の排出部13の雄ネジ132とが螺合するようになっている。底壁部22には、円形状の貫通孔221が形成されており、この貫通孔221に円柱状の第1吸液部材23、第2吸液部材24、及び排気管29が挿通されている。これら第1吸液部材23、第2吸液部材24、及び排気管29は、貫通孔221を液密に塞ぐシール部材25に取り付けられている。排気管29は、蓋部材2が容器本体1に取り付けられたときに、容器本体1の天壁部15付近まで延びる長さに形成されている。後述するように、容器10の薬液は第1吸液部材23及び第2吸液部材24を介して容器の外部に排出されたり、外部の薬液を吸い上げるようになっている。また、後述するように、容器10内の空気が排気管29により外部に排出されるようになっている。
【0025】
第1吸液部材23は、第2吸液部材24よりも短く形成されている。また、第1吸液部材23及び第2吸液部材24を形成する材料は、薬液を吸収できる材料であれば、特には限定されない。例えば、紙、布など種々の材料を用いることができ、好ましくは、不織布が望ましく、不織布はパルプ、ポリエステル、レーヨンなどに結着剤を混ぜたもので形成することができる。
【0026】
排気管29を構成する材料は特には限定されないが、樹脂材料、金属など、種々の材料で形成することができる。
【0027】
<1-2.カバー部材>
次に、カバー部材20について、図8図10を参照しつつ説明する。図8はカバー部材を上方から見た斜視図、図9はカバー部材の平面図、図10はカバー部材の断面図である。
【0028】
図8図10に示すように、カバー部材20は、円板状の底壁部3と、底壁部3の外縁よりもやや内側から上方に起立する円筒状の側壁部4と、を備えており、これらによって囲まれた空間に薬液を溜めることができるようになっている。すなわち、この空間が本発明の貯留部を構成する。カバー部材20が容器10に取り付けられたとき、側壁部4の上端は、容器本体1の第1部位111と第2部位112との境界の段差に接し、側壁部4の内面が第2部位112に接するようになっている。そのため、側壁部4の上端は、第1部位111の下端に沿うような形状に形成されている。また、カバー部材20と容器10とを着脱自在に固定するため、側壁部4の上端付近の内面には周方向に延びる一対の突条41が、周方向に延びるように形成されている。これら突条41は、容器本体1の第2部位112に形成された取付溝119に着脱自在に嵌まるようになっている。
【0029】
側壁部4には、上下方向に延びる複数の長穴状の揮散孔42が形成されており、これら揮散孔42を介して側壁部4の内部空間と外部とが連通している。後述するように、これら揮散孔42から薬液が外部に揮散するようになっている。
【0030】
複数の揮散孔42は、上下方向の長さがほぼ同じであり、側壁部4の周方向に沿って所定間隔をおいて形成されている。そして、このように並ぶ各揮散孔42の上端は、側壁部4の上端と同じ長さの間隔をおくように位置している。したがって、周方向に並ぶ複数の揮散孔42も、側壁部4の上端に合わせて、上下方向の位置が変化するように並んでいる。
【0031】
各揮散孔42の上端と側壁部4の上端との間には、上下方向に延びる第2溝43が形成されている。同様に、各揮散孔42の下端と側壁部4の下端との間には、上下方向に延びる第3溝44が形成されている。そして、カバー部材20が容器10に取り付けられたときには、容器の第1溝114、カバー部材20の第2溝43、揮散孔42、及び第3溝44が上下方向に並ぶように配置される。このように、複数の溝114,43,44と揮散孔42が上下方向に並ぶことで、デザイン的な統一感が得られる。
【0032】
底壁部3は、側壁部4の外径よりも大きい外径を有している。すなわち、底壁部3は、側壁部4の下端から径方向外方へ突出している。この底壁部3が、所定の設置面に設置され、薬液揮散装置全体を支持するようになっている。
【0033】
また、底壁部3と側壁部4との境界付近、つまり側壁部4の下端には、周方向全体に亘って延びる第4溝45が形成されており、この第4溝45に各第3溝44の下端が連結されている。
【0034】
<1-3.揮散体>
次に、揮散体について、図11及び図12を参照しつつ説明する。図11は揮散体を上方から見た斜視図、図12は揮散体を容器に取り付けたときの側面図である。
【0035】
図11及び図12に示すように、この揮散体30は、蓋部材2に取り付けられるようになっており、矩形状の板状の基板51と、この基板51の対向する側辺から上方に延びる一対の矩形状の揮散板52と、を備えている。基板51の外径は、蓋部材2の外径と概ね同じである。基板51には、中心からややずれた位置に円形状の貫通孔511が形成されており、この貫通孔511に、蓋部材2の第2吸液部材24及び排気管29が挿通されるようになっている。
【0036】
図12に示すように、揮散体30が蓋部材2に取り付けられたときには、蓋部材2の底壁部22が基板51の上面と対向するようになっている。このとき、第1吸液部材23が基板51に接し、第2吸液部材24及び排気管29が基板51の貫通孔511から下方に延びるようになっている。このうち、第2吸液部材24は、基板51には接しないようになっている。
【0037】
また、揮散体30が蓋部材2に取り付けられたときには、揮散板52は、容器本体1の排出部13を側方から覆うように配置され、揮散板52の上端は、容器本体1の第3部位113付近に位置している。したがって、揮散板52は、カバー部材20の揮散孔42と概ね対向する位置に配置される。
【0038】
揮散体30は、薬液を吸収し外部に揮散させることができるような材料であれば、特には限定されない。例えば、上述した各吸液部材23,24と同様の材料で形成することができる。
【0039】
<1-4.薬液>
容器10に収容される薬液は、機能性成分として、芳香成分を有する。但し、これ以外にも、消臭成分、防虫成分、抗菌成分など種々の成分を含有することができる。このような機能性成分は、油性及び水溶性のいずれであってもよい。
【0040】
また、このような薬液は、例えば、界面活性剤、香料、防腐剤、UV吸収材、及び水等を調製することで生成することができる。
【0041】
<2.薬液揮散装置の組立と使用方法>
次に、薬液揮散装置の組み立てについて、図13を参照しつつ説明する。図13は薬液揮散装置の断面図である。まず、容器本体1に薬液を収容し、蓋部材2により排出部13の下端部を閉じる。次に、上述したように蓋部材2に揮散体30を取り付ける。これにより、排気管29の上端が容器本体1の天壁部15付近に達する。排気管29の上端と容器本体1の天壁部15との距離は、例えば、0.1~10mmであることが好ましい。続いて、カバー部材20を容器10に取り付ける。このとき、カバー部材20は、揮散体30が取り付けられた容器10を下側から覆うように取り付けられる。図13に示すように、カバー部材20の取り付けが完了した状態では、第2吸液部材24がカバー部材20の底壁部3の上面に接するように構成されている。但し、後述するように薬液を吸い上げることができるのであれば、必ずしも底壁部3に接していなくてもよい。
【0042】
次に、薬液の揮散について説明する。図13に示すように、薬液は第1吸液部材23及び第2吸液部材24を介して容器本体1から外部に排出されるが、このうち第1吸液部材23は揮散体30に接しているため、薬液は、第1吸液部材管23を介して揮散体30のへ移動する。そして、揮散体30に吸収された薬液は揮散され、さらに揮散孔42から薬液揮散装置の外部に揮散されていく。これにより、機能成分による芳香効果を得ることができる。
【0043】
ところで、容器本体1から薬液が過剰に排出された場合には、揮散体30に薬液を保持できず、下方に漏れることがある。揮散体30から漏れた薬液は、図13に示すように、カバー部材20の内部空間に溜まっていく。ここで、容器10から延びる第2吸液部材24は、底壁部3の上面まで達しているため、内部空間に溜まった薬液に浸かる。そのため、内部空間に溜まった薬液は第2吸液部材24に吸い上げられ、容器10に戻される。
【0044】
また、使用が進むと容器本体1内の薬液の水位は低下するため、容器本体1の内部空間の空気が増えていく。図13に示すように、排気管29は、容器本体1の天壁部15付近まで延びているため、容器本体1の上部に溜まる空気は排気管29を介して外部に排出可能となっている。
【0045】
容器10内の薬液がなくなった場合、あるいは少なくなった場合には、薬液を補充することができる。すなわち、カバー部材20を容器10から取り外した後、蓋部材2を容器本体1から取り外し、排出部13の開口から容器本体1内に薬液を補充する。
【0046】
<3.特徴>
以上のように構成された薬液揮散装置によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)上述したように、使用が進むと容器本体1の内部空間の空気が増えていくが、気温の変化などによっては、この空気によって容器10内の薬液が押圧され、薬液が過剰に排出されることがある。これに対して、本実施形態では、容器10に排気管29を設けているため、例えば、容器10内の空気が膨張したときに、これを排気管29を介して外部に排出することができるため、膨張した空気により薬液が押圧されるのを抑制することができる。その結果、薬液の過剰な排出を防止することができる。
【0047】
(2)カバー部材20には、底壁部3と側壁部4とで囲まれた内部空間が形成されているため、揮散体30に保持できずに漏れた薬液を内部空間に溜めることができる。また、容器本体1から延びる第2吸液部材24は、内部空間の底面(底壁部3の上面)まで延び、溜まった薬液に浸かるため、薬液を吸い上げて容器本体1に戻すことができる。したがって、過剰な薬液が容器10から排出され、カバー部材20に溜まったとしても,容器本体1に戻すことができるため、薬液が無駄になるのを抑制することができる。
【0048】
また、内部空間に溜まった薬液を容器本体1に戻すことができるため、内部空間に溜まる薬液の量が増えるのを防止することができる。そのため、例えば、薬液揮散装置を動かしたときに、薬液がカバー部材20から外部へ流れ出るのを防止することができる。よって、薬液揮散装置の周囲が薬液によって汚れるのを防止することができる。
【0049】
(3)容器10の排出管22に弁部材23が設けられ、カバー部材20が容器10に取り付けられて突部32によって押圧されるまでは、弁部材23が閉状態にある。したがって、組立時に容器10から薬液が漏れるのを防止できる一方、カバー部材20を容器10に取り付けたときには、弁部材23が突部32によって押圧されて開状態になるため、カバー部材20の容器10への取付と同時に薬液を揮散させることができる。
【0050】
(4)カバー部材20の外周面において、各揮散孔42の下端から下方に延びる第3溝44が形成されているため、例えば、容器10の交換時に揮散孔42から薬液が漏れた場合でも、薬液はその下方にある第3溝44に溜まるため、漏れた薬液が目立つのを抑制することができる。さらには、第3溝44に薬液を保持できるため、薬液揮散装置の周囲が薬液によって汚れるのを防止することができる。
【0051】
(5)カバー部材20の側壁部4の下端に第4溝45が形成されているため、例えば、容器10の交換時に揮散孔42から薬液が漏れ、側壁部4に伝って下方に流れたとしても、その薬液を第4溝45に保持することができる。したがって、漏れた薬液が目立つのを抑制することができる。さらには、第4溝45に薬液を保持できるため、薬液揮散装置の周囲が薬液によって汚れるのを防止することができる。
【0052】
(6)容器本体1の天壁部15の内面に下方に突出する第1~第3突出部116a~116cが形成されているため、天壁部15に付着した薬液を突出部116a~116cの先端に集まりやすくすることができる。その結果、突出部116a~116cの先端に集まった薬液が落下し、天壁部15に付着したままになるのを抑制することができる。したがって、薬液が容器10内に残っているにもかかわらず、排出できないという不具合を抑制することができる。
【0053】
特に、本実施形態では、突出部116a~116cが同心円状に隣接しているため、突出部116a~116cの間に付着した薬液をいずれかの突出部116a~116cに誘導しやすい。また、第2及び第3突出部116b,116cが連続した円形状に形成されているため、天壁部15のいずれの位置に付着した薬液も、突出部116b,116cのいずれかの箇所に誘導しやすい。したがって、薬液が天壁部15に付着したままになるのをさらに抑制することができる。
【0054】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は適宜組み合わせることができる。
【0055】
<4-1>
上記実施形態では、排気管29を蓋部材2から下方に突出させ、さらに揮散体30を貫通して下方に延びるようにしているが、排気管の構成は特には限定されない。すなわち、容器10の内部の空気を外部に排出できればよいため、蓋部材2以外の箇所から外部に延びるように構成されていてもよい。但し、製造の容易さの観点から、蓋部材2に設けることが好ましい。
【0056】
<4-2>
第1吸液部材23、第2吸液部材24、及び揮散体30の形状は特には限定されない。すなわち、第1吸液部材23を介して排出された薬液が揮散体30に移動でき、第2吸液部材24がカバー部材20の内部空間に溜まった薬液を吸い上げることができればよい。例えば、図14に示すように、第1吸液部材23及び基板51を環状に形成し、これらが接するようにする。そして、第2吸液部材24が第1吸液部材23及び基板51を挿通して下方に延びるように形成することができる。このとき、第1吸液部材23と基板51とを一体化することもできる。
【0057】
<4-3>
揮散体30は、上述したような2つのパーツ51,52でなくてもよいが、薬液を効率よく装置外部に揮散するため、揮散体30の一部が揮散孔42と対向する位置付近まで延びていることが好ましい。また、薬液を吸収し、外部に揮散できるのであれば、揮散体30を構成する材料も特には限定されない。また、複数の材料で揮散体30を構成することもできる。
【0058】
<4-4>
容器10の形状は特には限定されず、少なくとも薬液を収容できる内部空間が形成され、排出部13から第1及び第2吸液部材23,24を介して外部に薬液を排出したり、吸引できればよい。
【0059】
<4-5>
カバー部材20の構成は特には限定されず、少なくとも容器10の下端部を覆い、薬液を溜める内部空間が形成されていればよい。但し、薬液を溜める内部空間の位置は特には限定されず、カバー部材20内のいずれの位置であってもよい。また、揮散孔42の形状、位置、溝43~45の有無も含めたカバー部材20の形状は種々の変更が可能である。例えば、カバー部材20と容器10との間に隙間を形成できれば、揮散孔42は必ずしも必要ではない。また、揮散体30の一部が外部に露出するような構造であってもよい。
【0060】
<4-6>
上記実施形態の薬液の成分は一例であり、揮散体30に吸い上げられ、揮散されるのであれば、他の成分の薬液を使用することもできる。
【0061】
<4-7>
上記実施形態では、第1吸液部材23及び揮散体30を介して薬液の方向成分を外部に放出しているが、これに限定されるものではなく、薬液を揮散体30に含浸させ、外部に揮散できるような構成であればよい。この観点からすると、第2吸液部材24は必ずしも必要ではない。
【0062】
その他、例えば、吸液部材を使用せずに薬液を排出することもできる。この態様について、図15図17を参照しつつ説明する。図15に示すように、蓋部材2に下方に延びる排出管22を取り付ける。さらに、揮散体30の基板51にはこの排出管22が挿通される貫通孔511を形成するとともに、基板51に排出管22を挟むように吸液板53を取り付ける。この吸液板は、排出管よりわずかに下方に延びるように形成されている。また、排気管29は、排出管22の側面から外部に延びるように形成する。
【0063】
図16に示すように、カバー部材20の底壁部4の上面には、排出管22が挿入される凹部31を形成する。そして、カバー部材20を容器10に取り付けたときには、排出管22が凹部31に挿入されるが、吸液板53が排出管22よりも下方に延びているため、排出管22と凹部31の底面との間には隙間が形成される。
【0064】
図16に示すように、薬液は排出管22から排出され、凹部31に貯まっていくが、凹部31の底面には揮散体30の吸液板53が接しているため、凹部31に貯まった薬液は吸液板53に吸収されていく。吸収された薬液は、吸液板53及び基板51を介して揮散板52に移動し、揮散板52から揮散され、さらに揮散孔42から薬液揮散装置の外部に揮散されていく。これにより、機能成分による芳香効果を得ることができる。
【0065】
ところで、凹部31に薬液が貯まっており、この薬液の中に排出管22の下端が浸かっている場合には、排出管22の内部は薬液で満たされて空気が入り込めないため、薬液の排出が停止する。しかし、凹部31に貯まった薬液が揮散体30に吸収されて凹部31における薬液の水位が低下し、排出管22の下端よりも薬液の水位が低下したとき、つまり、図17に示すように、薬液の水位が、排出管22の下端と凹部31の底面との隙間に位置したときには、排出管22の下端から空気が入り込み、この空気によって容器10内の薬液が押し出され、排出管22から薬液が排出される。その後、排出された薬液が凹部31に貯まり、再び、排出管22の下端よりも薬液の水位が上がった場合には、排出管に空気が入り込めないため、薬液の排出が停止する。こうして、薬液の排出と停止が繰り返されつつ、揮散体30によって薬液が薬液揮散装置の外部に揮散される。したがって、薬液の排出量を制限することができ、多量の薬液が排出されるのを抑制することができる。
【0066】
なお、凹部31の代わりに、薬液が溜まる溝を形成し、この溝に排出管22の下端と吸液板53の下端を接するようにしてもよい。また、排出管22には必要に応じて弁部材を取り付けておき、カバー部材20に容器10が取り付けられたときに、弁部材が開状態になり、薬液が排出可能となるように構成することもできる。これにより、カバー部材20が取り付けられる前には、排出管22は弁部材によって閉じられるため、薬液が漏れるのを防止することができる。また、図15図17の態様においても、排気管29の構成は特には限定されず、例えば、排気管29を取り付ける箇所は特には限定されない。また、底壁部3の上面において、凹部31や溝の周囲は平坦でもよいが、少なくとも一部を傾斜させることができる。すなわち、凹部31や溝の周囲の面の少なくとも一部を、凹部31や溝に向かって傾斜する傾斜面とすることができる。これにより、凹部31や溝の周囲に付着した薬液を凹部31や溝に集めることができる。
【0067】
<4-8>
上記実施形態の薬液揮散装置は、容器10、カバー部材20、及び揮散体30の3つのパーツにより構成されているが、外形上、これらの機能を奏する構成を備えていれば、これら3つのパーツをさらに複数のパーツで構成することもできる。その場合、異なる材料でパーツを形成することができる。
【0068】
容器10及びカバー部材20は樹脂材料で形成されることが好ましいが、一部に金属を用いることもでき、材料は特には限定されない。
【符号の説明】
【0069】
10 容器
20 カバー部材
23 第1吸液部材
24 第2吸液部材
29 排気管
30 揮散体
図1
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