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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112046
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】薬液揮散装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20220726BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20220726BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20220726BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20220726BHJP
   B65D 85/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
A61L9/12
A01M1/20 D
A61L9/01 Q
B65D83/00 F
B65D85/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007654
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】下村 真由香
(72)【発明者】
【氏名】肖 文沁
(72)【発明者】
【氏名】平川 宣幸
【テーマコード(参考)】
2B121
3E068
4C180
【Fターム(参考)】
2B121AA11
2B121AA20
2B121CA02
2B121CA15
2B121CA16
2B121CA20
2B121CA21
2B121CA22
2B121CA26
2B121CA31
2B121CA42
2B121CA44
2B121CA81
2B121CC02
2B121CC03
2B121EA01
3E068AA22
3E068CC01
3E068CC03
3E068DD40
3E068EE14
4C180AA01
4C180AA03
4C180AA18
4C180CA09
4C180EB07X
4C180EB08X
4C180EB12X
4C180GG17
(57)【要約】
【課題】揮散孔から薬液が漏れたとしても、装置の周囲が汚れるのを抑制することができる、薬液揮散装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る薬液揮散装置は、薬液が収容され、下端部に前記薬液が排出される排出部が形成された容器と、前記容器の排出部から排出される薬液を吸収し、揮散させる揮散体と、少なくとも前記容器の下端部を覆い、前記揮散体から揮散される薬液を外部に放出するための少なくとも1つの揮散孔を有するカバー部材と、を備え、前記カバー部材は、底壁部と、前記底壁部の周縁部から起立し、前記揮散孔が形成された側壁部と、を備え、前記側壁部の外面には、前記各揮散孔の下端付近から下方に延びる上下溝が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が収容され、下端部に前記薬液が排出される排出部が形成された容器と、
前記容器の排出部から排出される薬液を吸収し、揮散させる揮散体と、
少なくとも前記容器の下端部を覆い、前記揮散体から揮散される薬液を外部に放出するための少なくとも1つの揮散孔を有するカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材は、
底壁部と、
前記底壁部の周縁部から起立し、前記揮散孔が形成された側壁部と、
を備え、
前記側壁部の外面には、前記各揮散孔の下端付近から下方に延びる上下溝が形成されている、薬液揮散装置。
【請求項2】
複数の揮散孔は、前記側壁部の周方向に所定間隔をおいて配置され、
前記各揮散孔は、上下方向に延びる長穴状に形成されている、請求項1に記載の薬液揮散装置。
【請求項3】
前記側壁部の外面には、前記揮散孔よりも下方に、周方向に延びる少なくとも1つの周方向溝が形成されており、
前記各上下溝は、前記周方向溝に連結されている、請求項1または2に記載の薬液揮散装置。
【請求項4】
前記底壁部の周縁部は、前記側壁部の下端から径方向外方に延びるように形成されている、請求項1から3のいずれかに記載の薬液揮散装置。
【請求項5】
前記容器は、前記排出部を構成する排出管を備え、
前記カバー部材の内面には、前記排出管から排出された薬液を溜めるための凹部が形成され、
前記排出管の下端と前記凹部の底面との間に隙間が形成されるように、前記排出管が前記凹部に挿入され、
前記揮散体の一部が、前記排出管の下端と前記凹部の底部との間に配置されている、請求項1から4のいずれかに記載の薬液揮散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液揮散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液揮散装置には、種々のタイプのものがあるが、例えば、特許文献1に記載のような倒立型の薬液揮散装置がある。この薬液揮散装置は、薬液が収容された容器と、この容器の下端部を覆う下容器と、下容器に収容される揮散体と、を備えている。容器の下端部には吸液芯が設けられており、この吸液芯を介して排出される薬液が揮散体に吸収され後、下容器に形成された揮散孔から外部に揮散するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2017/077946号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の薬液揮散装置の下容器には、揮散孔が形成されているが、例えば、薬液揮散装置を動かしたり、あるいは振動が加わったときには、吸液芯から漏れた薬液が揮散孔から装置の外部に漏れるおそれがあり、これによって、装置の周囲を汚すおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、揮散孔から薬液が漏れたとしても、装置の周囲が汚れるのを抑制することができる、薬液揮散装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る薬液揮散装置は、薬液が収容され、下端部に前記薬液が排出される排出部が形成された容器と、前記容器の排出部から排出される薬液を吸収し、揮散させる揮散体と、少なくとも前記容器の下端部を覆い、前記揮散体から揮散される薬液を外部に放出するための少なくとも1つの揮散孔を有するカバー部材と、を備え、前記カバー部材は、底壁部と、前記底壁部の周縁部から起立し、前記揮散孔が形成された側壁部と、を備え、前記側壁部の外面には、前記各揮散孔の下端付近から下方に延びる上下溝が形成されている。
【0007】
上記薬液揮散装置において、複数の揮散孔は、前記側壁部の周方向に所定間隔をおいて配置され、前記各揮散孔は、上下方向に延びる長穴状に形成することができる。
【0008】
上記薬液揮散装置において、前記側壁部の外面には、前記揮散孔よりも下方に、周方向に延びる少なくとも1つの周方向溝が形成されており、前記各上下溝は、前記周方向溝に連結することができる。
【0009】
上記薬液揮散装置において、前記底壁部の周縁部は、前記側壁部の下端から径方向外方に延びるように形成することができる。
【0010】
上記薬液揮散装置において、前記容器は、前記排出部を構成する排出管を備え、前記カバー部材の内面には、前記排出管から排出された薬液を溜めるための凹部が形成され、前記排出管の下端と前記凹部の底面との間に隙間が形成されるように、前記排出管が前記凹部に挿入され、前記揮散体の一部が、前記排出管の下端と前記凹部の底部との間に配置することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る薬液揮散装置によれば、揮散孔から薬液が漏れたとしても、装置の周囲が汚れるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る薬液揮散装置の一実施形態を示す斜視図である。
図2】容器の側面図である。
図3】容器本体の側面図である。
図4】容器本体を上から見た斜視図である。
図5】容器本体の断面図である。
図6】蓋部材の斜視図である。
図7】蓋部材の断面図である。
図8】カバー部材の斜視図である。
図9】カバー部材の平面図である。
図10】カバー部材の断面図である。
図11】揮散体を上方から見た斜視図である。
図12】揮散体を下方から見た斜視図である。
図13】揮散体を容器に取り付けたときの側面図である。
図14】薬液揮散装置の断面図である。
図15図14の拡大図である。
図16】薬液の排出を説明する断面図である。
図17】薬液の排出を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る薬液揮散装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
<1.薬液揮散装置の全体構成>
図1は本実施形態に係る薬液揮散装置の斜視図である。図1に示すように、この薬液揮散装置は、薬液が収容される容器10、この容器10の下端部を覆うカバー部材20と、及び容器10とカバー部材20との間に収容され、容器10から排出される薬液を揮散させる揮散体(図1では省略)30と、を備えている。以下、これらの部材について詳細に説明する。
【0015】
<1-1.容器>
図2は容器の側面図である。図2に示すように、容器10は、下端部に開口が形成され、薬液が収容される容器本体1と、この容器本体1の下端部の開口を閉じる蓋部材2と、を備えている。以下、これらの部材について、詳細に説明する。
【0016】
<1-1-1.容器本体>
図3は容器本体の斜視図、図4は容器本体を上から見た斜視図、図5は容器本体の断面図である。図3図5に示すように、容器本体1は、円筒状に形成された本体部11と、この本体部11の下端に連結される連結部12と、本体部11よりも小径で連結部12の下端から下方に延びる円筒状の排出部13と、を備え、これらが一体的に形成されている。本体部11は、円筒状の側壁部110と、この側壁部の上端を閉じる天壁部115と、を備えている。
【0017】
側壁部110は、上下方向に延びる第1部位111と、この第1部位111よりもやや小径で第1部位111の下端に連結された第2部位112と、この第2部位112よりもやや小径で第2部位112の下端に連結された第3部位113と、で構成されている。したがって、第1部位111と第2部位112との境界には段差が形成され、第2部位112と第3部位113の境界にも段差が形成されている。
【0018】
第1部位111は天壁部115の周縁から下方に延び、側壁部110の大半を構成する。また、第1部位111には上下方向の全体に亘って延びる第1溝114が周方向に所定間隔をおいて形成されている。第1部位111の下縁は、円形状に形成されているが、軸線を挟んで向かい合う一対の部位が下方に円弧状に突出している。以下、これらの部位を下突出部117と称することとする。また、両下突出部117の間には、上方にやや円弧状に突出する一対の部位が形成されている。以下、これらの部位を上突出部118と称することとする。このように、第1部位111の下縁は、一対の下突出部117と一対の上突出部118とがなめらかに連結された曲線によって構成されている。
【0019】
第2部位112の下縁は第1部位111の下縁と平行に延びている。したがって、第2部位112の上下方向の幅は概ね一定である。また、第2部位112には、周方向に延びる一対の取付溝119が所定間隔をおいて形成されている。これら取付溝119は、上述した下突出部117に対応する位置にそれぞれ形成されている。第3部位113の下縁は、側面視において水平方向に延びており、この第3部位113の下縁に連結部12が連結されている。
【0020】
連結部12は、下方にいくにしたがって径方向内方に延びる傾斜面によって形成されており、この連結部12の下端に円筒状の排出部13が連結されている。排出部13の下端には下方に開放された開口131が形成されている。また、排出部13の外周面の下端付近には雄ネジ132が形成されている。
【0021】
図4及び図5に示すように、天壁部115は、平面視円形状に形成されており、天壁部115の内面の中央には下方に突出する第1突出部116aが形成されている。第1突出部116aは、断面円弧状に形成されている。そして、この第1突出部116aを中心として、天壁部115の内面には、同心円状に、円形状の第2突出部116b及び第3突出部116cが形成されており、これら第2突出部116b及び第3突出部116cは、下方に断面円弧状に突出している。また、これら突出部116a~116cに対応するように、天壁部115の上面には凹部116e~116gが形成されている。
【0022】
容器本体1は、上述した本体部11、連結部12、及び排出部13によって囲まれる内部空間を有しており、この内部空間に薬液が収容される。
【0023】
<1-1-2.蓋部材>
次に、蓋部材2について、図6及び図7を参照しつつ説明する。図6は蓋部材の斜視図、図7は蓋部材の断面図である。図6及び図7に示すように、蓋部材2は、円筒状の蓋本体21と、この蓋本体21の下端に連結された小径の排出管22と、を備え、これらが一体的に形成されている。また、排出管22の下端部には弁部材23が取り付けられている。蓋本体21は円筒状の側壁部211と、この側壁部211の下端を塞ぐ下壁部212とを有している。側壁部211の内面には、雌ネジ213が形成されており、この雌ネジ213と容器本体1の排出部13の雄ネジ132とが螺合するようになっている。これにより、蓋部材2は容器本体1に固定される。また、下壁部212の中央には貫通孔が形成されており、この貫通孔に排出管22が連結されている。
【0024】
排出管22の下端部に取り付けられた弁部材23は、排出管22に固定され貫通孔が形成された弁座231と、この弁座231の貫通孔を開閉可能に塞ぐ弁体232と、この弁体232を弁座231に対して押しつけるバネ133と、を備えている。弁体232はバネ233によって常時は弁座231の貫通孔を閉じているが、弁体232が下方から押圧されると、バネ233に抗して弁体232が上方に押し上げられ貫通孔を開状態にするようになっている。
【0025】
<1-2.カバー部材>
次に、カバー部材20について、図8図10を参照しつつ説明する。図8はカバー部材を上方から見た斜視図、図9はカバー部材の平面図、図10はカバー部材の断面図である。
【0026】
図8図10に示すように、カバー部材20は、円板状の底壁部3と、底壁部3の外縁よりもやや内側から上方に起立する円筒状の側壁部4と、を備えている。カバー部材20が容器10に取り付けられたとき、側壁部4の上端は、容器本体1の第1部位111と第2部位112との境界の段差に接し、側壁部4の内面が第2部位112に接するようになっている。そのため、側壁部4の上端は、第1部位111の下端に沿うような形状に形成されている。また、カバー部材20と容器10とを着脱自在に固定するため、側壁部4の上端付近の内面には周方向に延びる一対の突条41が、周方向に延びるように形成されている。これら突条41は、容器本体1の第2部位112に形成された取付溝119に着脱自在に嵌まるようになっている。
【0027】
側壁部4には、上下方向に延びる複数の長穴状の揮散孔42が形成されており、これら揮散孔42を介して側壁部4の内部空間と外部とが連通している。後述するように、これら揮散孔42から薬液が外部に揮散するようになっている。
【0028】
複数の揮散孔42は、上下方向の長さがほぼ同じであり、側壁部4の周方向に沿って所定間隔をおいて形成されている。そして、このように並ぶ各揮散孔42の上端は、側壁部4の上端と同じ長さの間隔をおくように位置している。したがって、周方向に並ぶ複数の揮散孔42も、側壁部4の上端に合わせて、上下方向の位置が変化するように並んでいる。
【0029】
各揮散孔42の上端と側壁部4の上端との間には、上下方向に延びる第2溝43が形成されている。同様に、各揮散孔42の下端と側壁部4の下端との間には、上下方向に延びる第3溝(上下溝)44が形成されている。そして、カバー部材20が容器10に取り付けられたときには、容器の第1溝114、カバー部材20の第2溝43、揮散孔42、及び第3溝44が上下方向に並ぶように配置される。このように、複数の溝114,43,44と揮散孔42が上下方向に並ぶことで、デザイン的な統一感が得られる。
【0030】
底壁部3は、側壁部4の外径よりも大きい外径を有している。すなわち、底壁部3は、側壁部4の下端から径方向外方へ突出している。この底壁部3が、所定の設置面に設置され、薬液揮散装置全体を支持するようになっている。
【0031】
また、底壁部3と側壁部4との境界付近、つまり側壁部4の下端には、周方向全体に亘って延びる第4溝(周方向溝)45が形成されており、この第4溝45に各第3溝44の下端が連結されている。
【0032】
底壁部3の上面において側壁部4によって囲まれた部分には、平面視正方形状の凹部31が形成されており、後述するように薬液が貯められる空間として機能する。凹部31の深さは全体に亘ってほぼ一定であり、例えば、0.01~3.0mm程度にすることができる。さらに、この凹部31の中央付近には、突部32が設けられており、上方に突出している。
【0033】
<1-3.揮散体>
次に、揮散体について、図11図13を参照しつつ説明する。図11は揮散体を上方から見た斜視図、図12は揮散体を下方から見た斜視図、図13は揮散体を容器に取り付けたときの側面図である。
【0034】
図11及び図12に示すように、この揮散体30は、蓋部材2に取り付けられるようになっており、矩形状の板状の基板51と、この基板51の対向する側辺から上方に延びる一対の揮散板52と、基板51から下方に延びる一対の吸液板53と、を備えている。揮散板52及び吸液板53は、ともに矩形状に形成されている。基板の外径は、蓋部材の外径と概ね同じである。基板51の中央には矩形状の貫通孔511が形成されており、この貫通孔511に、蓋部材2の排出管22が挿入されるようになっている。貫通孔511の対向する辺には、それぞれ上述した吸液板53が連結されている。これら吸液板53は、矩形状に形成されており、貫通孔511から下方に延びている。
【0035】
図13に示すように、揮散体30が蓋部材2に取り付けられたときには、排出管22が貫通孔511に挿入されるとともに、蓋部材2の下壁部212が基板51の上面に接するようになっている。このとき、吸液板53は、排出管22を挟むように配置され、さらに排出管22よりもやや下方に延びている。すなわち、揮散体30が蓋部材2に取り付けられたときには、吸液板53の下端が、排出管22の下端よりもやや下方に位置するようになっている。具体的には、吸液板53の下端が、排出管22の下端よりも0~5mm程度下方に位置している。
【0036】
また、揮散体30が蓋部材2に取り付けられたときには、揮散板52は、容器本体1の排出部13を側方から覆うように配置され、揮散板52の上端は、容器本体1の第3部位113付近に位置している。したがって、揮散板52は、カバー部材20の揮散孔42と概ね対向する位置に配置される。
【0037】
揮散体30は、薬液を吸い上げるとともに、薬液を外部に揮散させることができるような材料であれば、特には限定されない。例えば、紙、布など種々の材料を用いることができ、好ましくは、不織布が望ましく、不織布はパルプ、ポリエステル、レーヨンなどに結着剤を混ぜたもので形成することができる。
【0038】
<1-4.薬液>
容器10に収容される薬液は、機能性成分として、芳香成分を有する。但し、これ以外にも、消臭成分、防虫成分、抗菌成分など種々の成分を含有することができる。このような機能性成分は、油性及び水溶性のいずれであってもよい。また、このような機能性成分には、水蒸気圧が0.01~20hPaの揮散しやすい成分が配合されている。このような成分の配合率は、0.25~2.5質量%であることが好ましく、0.5~0.75質量%であることがさらに好ましい。具体的には、このような成分としては、例えば、リモネン、リナロール、酢酸リナリル、α-ピネン等を採用することができるが、これらは香料として機能する。また、水蒸気圧が低い成分も含有することができ、そのような成分としては、例えば、バニリン、ガラコリド等を採用することができる。これらも香料として機能する。
【0039】
また、このような薬液は、例えば、界面活性剤、香料、防腐剤、UV吸収材、及び水を調製することで生成することができる。そして、上述した揮散しやすい機能性成分を、所定の香料とともに、あるいは香料として含有させることができる。
【0040】
<2.薬液揮散装置の組立と使用方法>
次に、薬液揮散装置の組み立てについて、図14図18を参照しつつ説明する。図14は薬液揮散装置の断面図、図15図14の拡大図、図16及び図17は薬液の排出を説明する断面図である。なお、説明の便宜のため、図16及び図17においては、弁部材23と突部32を省略している。まず、容器本体1に薬液を収容し、蓋部材2により排出部13の下端部を閉じる。次に、上述したように蓋部材2に揮散体30を取り付ける。続いて、カバー部材20を容器10に取り付ける。このとき、カバー部材20は、揮散体30が取り付けられた容器10を下側から覆うように取り付けられる。図14に示すように、カバー部材20の取り付けが完了した状態では、カバー部材20の突条41が容器本体1の取付溝119に嵌まる。また、揮散体30の吸液板53の下端が凹部31の底面に接する。
【0041】
但し、図15に示すように、揮散体30の下端は、排出管22の下端よりも下方に位置しているため、排出管22の下端は、凹部31の底面には接しない。したがって、排出管22の下端と凹部31の底面との間には隙間が形成される。この隙間は、凹部31の深さよりも小さくなっている。すなわち、排出管22の下端は凹部31内、例えば、凹部31の深さの半分程度の位置に排出管22の下端が配置される。また、凹部31に設けられた突部32が排出管22の下端から弁体232を押圧し、弁体232を上方に移動させる。これにより、弁座231の貫通孔が開状態となり、容器10の薬液が排出管22から排出され,凹部31に貯まっていく。
【0042】
次に、薬液の揮散について説明する。図16に示すように、薬液は排出管22から排出され、凹部31に貯まっていくが、凹部31の底面には揮散体30の吸液板53が接しているため、凹部31に貯まった薬液は吸液板53に吸収されていく。吸収された薬液は、吸液板53及び基板51を介して揮散板52に移動し、揮散板52から揮散され、さらに揮散孔42から薬液揮散装置の外部に揮散されていく。これにより、機能成分による芳香効果を得ることができる。
【0043】
ところで、凹部31に薬液が貯まっており、この薬液の中に排出管22の下端が浸かっている場合には、排出管22の内部は薬液で満たされて空気が入り込めないため、薬液の排出が停止する。しかし、凹部31に貯まった薬液が揮散体30に吸収されて凹部31における薬液の水位が低下し、排出管22の下端よりも薬液の水位が低下したとき、つまり、図17に示すように、薬液の水位が、排出管22の下端と凹部31の底面との隙間に位置したときには、排出管22の下端から空気が入り込み、この空気によって容器10内の薬液が押し出され、排出管22から薬液が排出される。その後、排出された薬液が凹部31に貯まり、再び、排出管22の下端よりも薬液の水位が上がった場合には、排出管に空気が入り込めないため、薬液の排出が停止する。こうして、薬液の排出と停止が繰り返されつつ、揮散体30によって薬液が薬液揮散装置の外部に揮散される。
【0044】
容器10内の薬液がなくなった場合、あるいは少なくなった場合には、薬液を補充することができる。すなわち、カバー部材20を容器10から取り外した後、蓋部材2を容器本体1から取り外し、排出部13の開口から容器本体1内に薬液を補充する。
【0045】
<3.特徴>
以上のように構成された薬液揮散装置によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)カバー部材20の外周面において、各揮散孔42の下端から下方に延びる第3溝44が形成されているため、例えば、容器10の交換時や、薬液揮散装置が動いたときに、揮散孔42から薬液が漏れた場合でも、薬液はその下方にある第3溝44に溜まるため、漏れた薬液が目立つのを抑制することができる。さらには、第3溝44に薬液を保持できるため、薬液揮散装置の周囲が薬液によって汚れるのを防止することができる。
【0046】
(2)カバー部材20の側壁部4の下端に第4溝45が形成されているため、例えば、容器10の交換時や、薬液揮散装置が動いたときに、揮散孔42から薬液が漏れ、側壁部4に伝って下方に流れたとしても、その薬液を第4溝45に保持することができる。したがって、漏れた薬液が目立つのを抑制することができる。さらには、第4溝45に薬液を保持できるため、薬液揮散装置の周囲が薬液によって汚れるのを防止することができる。
【0047】
(3)排出管22の下端が凹部31内にあり、凹部31内の薬液の水位が排出管22の下端よりも低下したときにしか薬液が容器10から排出されないため、薬液の水位が排出管22の下端よりも高くなるのを抑制することができる。したがって、薬液の排出量を制限することができ、多量の薬液が排出されるのを抑制することができる。また、カバー部材は底壁部と側壁部とで内部空間を形成しているため、この内部空間から薬液が漏れるのは防止されるが、薬液は、この内部空間内でさらに凹部31に溜められるため、例えば、薬液揮散装置を動かしたときに、薬液がカバー部材20から外部へ流れ出るのをさらに防止することができる。よって、薬液揮散装置の周囲が薬液によって汚れるのを防止することができる。
【0048】
(4)容器10の排出管22に弁部材23が設けられ、カバー部材20が容器10に取り付けられて突部32によって押圧されるまでは、弁部材23が閉状態にある。したがって、組立時に容器10から薬液が漏れるのを防止できる一方、カバー部材20を容器10に取り付けたときには、弁部材23が突部32によって押圧されて開状態になるため、カバー部材20の容器10への取付と同時に薬液を揮散させることができる。
【0049】
(5)例えば、上部に開口が形成された容器に薬液を収容し、この容器の開口に吸液芯などを挿入し、吸液芯によって薬液を吸い上げて揮散するタイプの薬液揮散装置では、蒸気圧の高い成分が先に吸い上げられて揮散してしまうことがあった。そのため、一定の期間の使用を担保するためには、蒸気圧が低い揮散しにくい成分を多めに薬液に配合する必要があった。その結果、自由に香調を設計することが困難であった。これに対して、本実施形態に係る薬液揮散装置では、容器10の下方から薬液を排出した後に、揮散体30で薬液を吸収して揮散するため、蒸気圧の高い成分が先に揮散されることが防止されている。したがって、薬液に蒸気圧の低い成分を多く配合する必要がないため、香調の設計の自由度を向上することができる。
【0050】
(6)容器本体1の天壁部15の内面に下方に突出する第1~第3突出部116a~116cが形成されているため、天壁部15に付着した薬液を突出部116a~116cの先端に集まりやすくすることができる。その結果、突出部116a~116cの先端に集まった薬液が落下し、天壁部15に付着したままになるのを抑制することができる。したがって、薬液が容器10内に残っているにもかかわらず、排出できないという不具合を抑制することができる。
【0051】
特に、本実施形態では、突出部116a~116cが同心円状に隣接しているため、突出部116a~116cの間に付着した薬液をいずれかの突出部116a~116cに誘導しやすい。また、第2及び第3突出部116b,116cが連続した円形状に形成されているため、天壁部15のいずれの位置に付着した薬液も、突出部116b,116cのいずれかの箇所に誘導しやすい。したがって、薬液が天壁部15に付着したままになるのをさらに抑制することができる。
【0052】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は適宜組み合わせることができる。
【0053】
<4-1>
上記実施形態において、カバー部材20の側壁部4に設けられている第3溝44の構成は特には限定されず、その数、形状、位置は適宜変更することができる。例えば、第3溝44は、揮散孔42と側壁部4の下端までの全体に亘って形成されていなくてもよく、揮散孔42の下端付近から下方に延び、側壁部4の下端まで達していなくてもよい。したがって、揮散孔42の下端と完全に連結していなくてもよく、多少の隙間を空けて第3溝44が形成されていればよい。
【0054】
また、第3溝44は完全に鉛直方向に延びていなくてもよく、多少であれば、傾いていてもよい。さらに、第3溝44の幅は特には限定されず、揮散孔42の幅と同じでなくてもよい。したがって、揮散孔42の幅よりも狭くしたり、あるいは広くすることもできる。また、全ての第3溝44の幅を同じにしなくてもよく、相違させてもよい。
【0055】
第3溝44以外の、第1、第2、第4溝114,43、45は必須ではなく、第3溝44のみであっても、漏れた薬液を保持できるため、装置の周囲が汚れるのを防止することができる。但し、第4溝45が設けられていれば、さらに薬液を保持できるため、好ましい。
【0056】
第4溝45を設ける場合には、周方向全体に亘って形成されていなくてもよく、周方向に一部に形成されていてもよい。この場合には、少なくとも揮散孔42が形成されている箇所の下方に第4溝45を形成することが好ましい。また、第4溝45の上下方向の位置は、特には限定されず、側壁部4の下端と揮散孔42との間であればよい。したがって、第3溝44と交差していてもよい。また、第4溝部45を周方向に所定間隔をおいて複数形成してもよい。この場合、全ての第4溝45の上下方向の高さを同じにしてもよいし、ずらせてもよい。また、側壁部4の全周に亘って延びる第4溝45を複数形成することもできる。さらに、第4溝45は完全に水平方向に延びていなくてもよく、多少であれば傾いていてもよい。また、第3溝44が第4溝45に連結されていなくてもよく、両者の間に隙間が形成されていてもよく、さらには一部の第3溝44を第4溝45に連結させてもよい。
【0057】
上記実施形態では、底壁部3が側壁部4よりも径方向外方に突出しているが、底壁部3が側壁部4から突出しないような形状であってもよい。但し、第4溝45を底壁部3と側壁部4との境界付近に設ける場合には、底壁部3が突出していることが好ましい。また、第3溝44や第4溝45の位置にかかわらず、底壁部3が突出していると、薬液揮散装置を安定的に保持でき、また、仮に第3溝44や第4溝45から薬液が漏れた場合に、薬液を付着させることができるため、この観点から、底壁部3が突出していることが好ましい。
【0058】
揮散孔42の位置、形状、数についても特には限定されず、適宜変更が可能である。但し、揮散孔42を長穴状に形成していれば、仮に揮散孔42から薬液が下方に漏れたときに、薬液の漏れる量を制限することができるため、好ましい。その一方で、揮散孔42は上下方向には長く形成されているため、薬液の揮散を阻害することがない。
【0059】
カバー部材20のその他の構成については、特には限定されず、少なくとも容器10の下端部を覆い、揮散孔が形成されていればよい。
【0060】
<4-2>
凹部31の形状は特には限定されず、平面視の形状は矩形状以外でもよい。また、凹部31の深さも必ずしも一定でなくてもよい。但し、排出管22の下端が凹部31内にあり、且つ凹部31の底面との間に隙間が形成される必要がある。排出管22の下端の位置は凹部31内にある限り特には限定されないが、排出管22の下端が凹部31の上端に近いと、薬液が溢れる可能性があるため、例えば、凹部31の底面から凹部31の深さの50~80%の位置に、排出管22の下端が配置されることが好ましい。また、底壁部3の上面において、凹部31の周囲は平坦でもよいが、少なくとも一部を傾斜させることができる。すなわち、凹部31の周囲の面の少なくとも一部を、凹部31に向かって傾斜する傾斜面とすることができる。これにより、凹部31の周囲に付着した薬液を凹部31に集めることができる。
【0061】
<4-3>
揮散体30の形状は特には限定されず、上述した板状以外であってもよい。但し、薬液を吸い上げるために、揮散体30の一部が排出管22の下端よりも下方にあって薬液に浸される位置に配置される必要があるが、必ずしも凹部31の底面に接していなくてもよい。この限りにおいて揮散体30の形状は、上述したような3つのパーツ51~53でなくてもよいが、薬液を効率よく装置外部に揮散するため、揮散体30の一部が揮散孔42と対向する位置付近まで延びていることが好ましい。また、薬液を吸収し、外部に揮散できるのであれば、揮散体30を構成する材料も特には限定されない。また、複数の材料で揮散体30を構成することもできる。
【0062】
<4-4>
容器10の形状は特には限定されず、少なくとも薬液を収容できる内部空間が形成され、凹部31に挿入される排出管22が容器10の下端部に形成されていればよい。したがって、排出管22の形状も含め、容器10の形状は適宜変更することができる。また、排出管22に取り付けられる弁部材23は必ずしも必要ではないが、組立時に薬液が漏れるのを防止する観点からは設けられていることが好ましい。但し、常時は閉状態で、組立時に開状態となる構成であれば、弁部材の構造やタイプは特には限定されない。
【0063】
<4-5>
上記実施形態では、容器10から排出管22を介して薬液を凹部31に排出し、凹部31に溜まった薬液を揮散体で吸い上げているが、容器10から薬剤を揮散体30に吸収させるための構成はこれに限定されず、種々の構成が可能である。例えば、容器10の下部に吸液芯を設け、この吸液芯を介して容器10内の薬液を外部に排出するようにしてもよい。そして、この吸液芯を揮散体30に接するようにすれば、薬液が吸液芯を介して揮散体30に吸収させることができる。したがって、蓋部材2の構成は上記のものに限定されず、弁部材が取り付けられるのであれば、排出管22は必ずしも必要ではなく、例えば、容器本体1に形成された開口に弁部材23と吸液芯が設けられていればよい。また、凹部31も不要になる。なお、吸液芯は、弁部材が開いたときに、容器10内の薬液を吸収できるようにしておけばよい。また、吸液芯の材料は、例えば、揮散体30と同じにすることができる。このように、容器10から薬液を排出し、揮散体30に薬液を含浸できるように構成されていればよい。
【0064】
<4-6>
上記実施形態の薬液の成分は一例であり、揮散体30に吸い上げられ、揮散されるのであれば、他の成分の薬液を使用することもできる。
【0065】
<4-7>
上記実施形態の薬液揮散装置は、容器10、カバー部材20、及び揮散体30の3つのパーツにより構成されているが、外形上、これらの機能を奏する構成を備えていれば、これら3つのパーツをさらに複数のパーツで構成することもできる。その場合、異なる材料でパーツを形成することができる。
【0066】
容器10及びカバー部材20は樹脂材料で形成されることが好ましいが、一部に金属を用いることもでき、材料は特には限定されない。
【符号の説明】
【0067】
10 容器
20 カバー部材
22 排出管
3 底壁部
30 揮散体
31 凹部
4 側壁部
44 第3溝(周方向溝)
45 第4溝(上下溝)
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