(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112184
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】電極溶着方法及び電極溶着装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
H01L21/60 311S
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007890
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】一宮 佑希
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンソク
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044KK01
5F044LL05
5F044PP15
5F044RR12
(57)【要約】
【課題】バンプ電極を配線基板の電極に適切に溶着することができる電極溶着方法、及び電極溶着装置を提供する。
【解決手段】本発明によれば、半導体チップ17に対して吸収性を有する波長のレーザー光線LBを発振する発振器51と、発振器51が発振したレーザー光線LBのエネルギー分布を調整する空間光変調器54と、照射されたレーザー光線LB0によって複数のバンプ電極18の温度を均一化すべく空間光変調器54を調整する制御手段100と、を含み構成されたレーザー照射装置5を準備するレーザー照射装置準備工程と、配線基板10の電極14に対応してバンプ電極18を位置付ける電極位置付け工程と、レーザー光線LBを半導体チップの裏面に照射してデバイス16のバンプ電極18を配線基板10の電極14に溶着する電極溶着工程と、を含み構成される電極溶着方法、及びそれに好適な電極溶着装置が提供される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップの表面に複数のバンプ電極が配設されたデバイスを配線基板の電極に溶着する電極溶着方法であって、
該半導体チップに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を発振する発振器と、該発振器が発振したレーザー光線のエネルギー分布を調整する空間光変調器と、照射されたレーザー光線によって複数のバンプ電極の加熱温度を均一化すべく該空間光変調器を調整する制御手段と、を含み構成されたレーザー照射装置を準備するレーザー照射装置準備工程と、
配線基板の電極に対応してバンプ電極を位置付ける電極位置付け工程と、
レーザー光線を半導体チップの裏面に照射してデバイスのバンプ電極を配線基板の電極に溶着する電極溶着工程と、を含み構成される電極溶着方法。
【請求項2】
半導体チップの表面に複数のバンプ電極が配設されたデバイスを配線基板の電極に溶着する電極溶着装置であって、
該半導体チップに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を発振する発振器と、該発振器が発振したレーザー光線のエネルギー分布を調整する空間光変調器と、照射されたレーザー光線によって複数のバンプ電極の加熱温度を均一化すべく該空間光変調器を調整する制御手段と、を含むレーザー照射装置と、
配線基板を支持すると共に、該配線基板の電極に対応してバンプ電極が位置付けられたデバイスを支持するテーブルと、
該レーザー照射装置と該テーブルとを相対的に加工移動する加工移動手段と、
を含み構成される電極溶着装置。
【請求項3】
該空間光変調器によってエネルギー分布が調整されたレーザー光線を集光する集光器が含まれる請求項2に記載の電極溶着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップの表面に複数のバンプ電極が配設されたデバイスを配線基板の電極に溶着する電極溶着方法、及び電極溶着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン等の半導体チップの表面にバンプ電極が配設されたIC、LSI等のデバイスは、配線基板の電極にバンプ電極が溶着されて携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
配線基板の電極にバンプ電極を溶着する方法として、半導体チップの裏面側からレーザー光線を照射してバンプ電極を溶融して配線基板の電極に溶着する技術が提案されている(例えば、特許文献1~3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02-249247号公報
【特許文献2】特開平05-283479号公報
【特許文献3】特開2006-140295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に記載された技術においては、半導体チップの裏面全面にレーザー光線を照射してバンプ電極を加熱して溶融させ、基板の接続端子に対して複数のバンプ電極を同時に溶着するようにしている。しかし、複数のバンプ電極が均一に加熱されず、溶着が不均一になるという問題がある。
【0006】
また、上記した特許文献2、3に記載された技術においては、個々のバンプ電極を狙って個別にレーザー光線を照射するようにしているが、時間が掛かると共に、集光点位置をバンプ電極に向けて個々に正確に位置付けることが困難であり、また、全てのバンプ電極を溶着するのに時間が掛かるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、該バンプ電極を配線基板の電極に確実に溶着することができる電極溶着方法、及び電極溶着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、半導体チップの表面に複数のバンプ電極が配設されたデバイスを配線基板の電極に溶着する電極溶着方法であって、該半導体チップに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を発振する発振器と、該発振器が発振したレーザー光線のエネルギー分布を調整する空間光変調器と、照射されたレーザー光線によって複数のバンプ電極の加熱温度を均一化すべく該空間光変調器を調整する制御手段と、を含み構成されたレーザー照射装置を準備するレーザー照射装置準備工程と、配線基板の電極に対応してバンプ電極を位置付ける電極位置付け工程と、レーザー光線を半導体チップの裏面に照射してデバイスのバンプ電極を配線基板の電極に溶着する電極溶着工程と、を含み構成される電極溶着方法が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、半導体チップの表面に複数のバンプ電極が配設されたデバイスを配線基板の電極に溶着する電極溶着装置であって、該半導体チップに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を発振する発振器と、該発振器が発振したレーザー光線のエネルギー分布を調整する空間光変調器と、照射されたレーザー光線によって複数のバンプ電極の加熱温度を均一化すべく該空間光変調器を調整する制御手段と、を含むレーザー照射装置と、配線基板を支持すると共に、該配線基板の電極に対応してバンプ電極が位置付けられたデバイスを支持するテーブルと、該レーザー照射装置と該テーブルとを相対的に加工移動する加工移動手段と、を含み構成される電極溶着装置が提供される。
【0010】
好ましくは、該空間光変調器によってエネルギー分布が調整されたレーザー光線を集光する集光器が含まれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電極溶着方法は、半導体チップの表面に複数のバンプ電極が配設されたデバイスを配線基板の電極に溶着する電極溶着方法であって、該半導体チップに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を発振する発振器と、該発振器が発振したレーザー光線のエネルギー分布を調整する空間光変調器と、照射されたレーザー光線によって複数のバンプ電極の加熱温度を均一化すべく該空間光変調器を調整する制御手段と、を含み構成されたレーザー照射装置を準備するレーザー照射装置準備工程と、配線基板の電極に対応してバンプ電極を位置付ける電極位置付け工程と、レーザー光線を半導体チップの裏面に照射してデバイスのバンプ電極を配線基板の電極に溶着する電極溶着工程と、を含み構成されることから、空間光変調器によって、デバイスを構成する半導体チップの加熱領域が選択的に調整され、バンプ電極が均一に加熱されて、配線基板の電極に、デバイスのバンプ電極を確実に溶着することができ、複数のバンプ電極の溶融が不均一になるという問題が解消される。
【0012】
また、本発明の電極溶着装置は、半導体チップの表面に複数のバンプ電極が配設されたデバイスを配線基板の電極に溶着する電極溶着装置であって、該半導体チップに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を発振する発振器と、該発振器が発振したレーザー光線のエネルギー分布を調整する空間光変調器と、照射されたレーザー光線によって複数のバンプ電極の温度を均一化すべく該空間光変調器を調整する制御手段と、を含むレーザー照射装置と、配線基板を支持すると共に、該配線基板の電極に対応してバンプ電極が位置付けられたデバイスを支持するテーブルと、該レーザー照射装置と該テーブルとを相対的に加工移動する加工移動手段と、を含み構成されることから、空間光変調器によって、デバイスを構成する半導体チップの加熱領域が選択的に調整され、バンプ電極が均一に加熱されて、配線基板の電極に、デバイスのバンプ電極を確実に溶着することができ、複数のバンプ電極の溶融が不均一になるという問題が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の電極溶着装置の全体斜視図である。
【
図2】
図1に示す電極溶着装置に配設されるレーザー照射装置の光学系を示すブロック図である。
【
図3】(a)
図1に示す電極溶着装置に配設されたデバイス搬送手段の搬送アームの吸着部を拡大して示す斜視図、(b)(a)のA-A断面図である。
【
図4】(a)本実施形態の電極位置付け工程において、搬送アームの吸着部によりデバイスを吸着する態様を示す斜視図、(b)(a)に示す実施態様における一部の断面を拡大して示す断面図である。
【
図5】電極位置付け工程において、デバイスを集光器の直下に位置付ける態様を示す斜視図である。
【
図6】(a)電極溶着工程の実施態様を示す側面図、(b)(a)に示す実施態様における一部の断面を拡大して示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に基づいて構成される電着溶着方法及び該電極溶着方法に好適な電着溶着装置に係る実施形態について添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0015】
図1には、本実施形態の電極溶着装置1の全体斜視図が示されている。電極溶着装置1は、基台2と、後述する配線基板10を支持するテーブル34を備えた保持手段3と、保持手段3を基台2上で移動させる加工移動手段4と、後述する空間光変調器(SLM)54を含むレーザー照射装置5と、撮像手段6と、デバイス搬送手段7と、デバイス供給手段8と、表示手段9と、上記空間光変調器54を調整する制御手段100と、制御手段100に所定の情報を入力する入力手段110とを備える。
【0016】
保持手段3は、基台2上に、図中矢印Xで示すX方向に配設された案内レール2A、2Aに沿って移動自在に配設されたX方向可動板31と、X方向可動板31上において、該X方向と直交するY方向に配設された案内レール32、32に沿って移動自在に配設されたY方向可動板33と、Y方向可動板33の上面に矢印R1で示す方向に回転自在に設置された矩形状のテーブル34とを含む。テーブル34の上面を構成する保持面341上には、複数の吸引孔342、及び吸引溝343が形成されており、吸引孔342は、テーブル34の内部を通して、図示を省略する吸引手段に接続されている。該吸引手段を作動することで、吸引孔342、及び吸引溝343に吸引負圧が供給され、図示の配線基板10を吸引して支持することができる。配線基板10は、図示のデバイス16が、電極溶着によって装着される基板であり、表面10aに形成されたデバイス設置領域12(一点鎖線で示す)に、複数の電極14が形成されている。なお、上記X方向とY方向で規定されるXY平面は実質上水平である。
【0017】
加工移動手段4は、レーザー照射装置5と、上記したテーブル34とを相対的に加工移動させる手段であり、より具体的には、X方向移動手段41と、Y方向移動手段42とを含む。X方向移動手段41は、基台2上においてX方向に延びるボールねじ41bと、ボールねじ41bの片端部に連結されたモータ41aとを有する。ボールねじ41bのナット部(図示は省略)は、X方向可動板31の下面に固定されている。そしてX方向移動手段41は、ボールねじ41bによりモータ41aの回転運動を直線運動に変換して、該ナット部を介してX方向可動板31に伝達し、基台2上の案内レール2A、2Aに沿ってX方向可動板31をX方向に進退させる。Y方向移動手段42は、X方向可動板31上においてY方向に延びるボールねじ42bと、ボールねじ42bの片端部に連結されたモータ42aとを有する。ボールねじ42bのナット部(図示は省略)は、Y方向可動板33の下面側に形成されている。そしてY方向移動手段42は、ボールねじ42bによりモータ42aの回転運動を直線運動に変換して該ナット部を介してY方向可動板33に伝達し、X方向可動板31上の案内レール32、32に沿ってY方向可動板33をY方向に進退させる。加工移動手段4には、さらに、回転駆動手段(図示は省略)が含まれ、該回転駆動手段は、テーブル34に内蔵されたモータを有し、Y方向可動板33に対してテーブル34をR1で示す方向に回転させる。
【0018】
基台2上における保持手段3の奥側には、基台2の上面から上方に延びる垂直壁部21aと、垂直壁部21aの上端から水平に延びる水平壁部21bとを備える枠体21が立設されている。水平壁部21bには、本実施形態における空間光変調器54を含むレーザー照射装置5の光学系が内蔵されている。レーザー照射装置5は、
図2にその概略を示すブロック図から理解されるように、レーザー光線LBを発振する発振器51と、発振器51によって発振されたレーザー光線LBの出力を調整するアッテネーター52と、アッテネーター52から照射されたレーザー光線LBの光路を適宜変更する反射ミラー53と、反射ミラー53から導かれたレーザー光線LBのエネルギー分布を調整する空間光変調器54と、空間光変調器54によってエネルギー分布が調整されたレーザー光線LB0を集光する集光レンズ(図示は省略)を含む集光器55と、該空間光変調器54によるエネルギー分布を調整する指示信号を出力する制御手段100と、制御手段100に後述するデバイス16の情報を入力する入力手段110とを備えている。集光器55は、
図1に示すように、枠体21の水平壁部21bの先端部下面に配設される。空間光変調器54は、図示の実施形態では、反射型(LCOS)を採用した例を示すが、本発明はこれに限定されず、発振器51によって発振されるレーザー光線LBの光路を変更して、透過型(LC)の空間光変調器を採用するようにしてもよい。なお、集光器55は、空間光変調器54によってエネルギー分布を調整されたレーザー光線LB0のビーム寸法を調整するために設けられるものであり、被加工物のサイズによっては、省略することが可能である。また、アッテネーター52、反射ミラー53も、必要に応じて適宜配設されるものであって、適宜省略することができる。
【0019】
なお、水平壁部21b内には、集光器55を矢印Zで示すZ方向(上下方向)に移動させるZ方向移動手段(図示は省略している)が配設されており、該Z方向移動手段は、加工移動手段4において、レーザー照射装置5と、テーブル34とを相対的にZ方向に進退させる移動手段を構成する。
【0020】
撮像手段6は、水平壁部21bの先端下面であって、レーザー照射装置5の集光器55とX方向に間隔をおいた位置に配設されている。撮像手段6には、例えば、可視光線を含む光を照射する照明手段、及び可視光が反射することにより得られる像を撮像する撮像素子(CCD)を備えた光学系が含まれる。撮像手段6によって撮像された画像を表示する表示手段9は、枠体21の水平壁部21bの上面に搭載される。
【0021】
デバイス搬送手段7は、基台2上においてX方向に沿って配設された案内レール2A、2Aの終端部から上方に延びる直方体状のケーシング71と、ケーシング71に収容された図示を省略する昇降手段により昇降自在に支持されたX方向に延びる支持アーム72と、支持アーム72の先端に配設されたモータ73と、該モータ73によって回転される円板74と、該円板に配設された搬送アーム75と、該搬送アーム75の先端に配設された吸着部76と、を備えている。該吸着部76について、
図3を参照しながら、さらに詳細に説明する。
【0022】
図3(a)の上段に、搬送アーム75の先端に配設された吸着部76を斜め上方からみた斜視図を示し、下段には、該吸着部76を斜め下方からみた斜視図を示す。図に示すように、吸着部76は、平面視で略矩形形状の枠部761と、該枠部761によって囲繞され上下に貫通する矩形状の貫通口762と、を備えている。
図3(a)の下段の図、及び
図3(a)の上段の図のA-A断面を示す
図3(b)から理解されるように、吸着部76の枠部761の下面側には、段差部763が形成されており、段差部763には、均等な間隔で、複数の吸引孔764が配設されている。該吸引孔764は、搬送アーム75、支持アーム72等を介して、図示を省略する吸引手段に接続されている。該吸引手段を作動させることで、段差部763の形状と平面視で略一致する寸法のデバイス16を吸着することができる。
【0023】
図1に戻り説明を続けると、デバイス供給手段8は、箱状に形成された支持台81と、支持台81の上面に配設された支持基台82と、支持基台82上においてX方向に沿って配設された案内レール82A、82Aと、案内レール82A、82Aに沿ってX方向に移動可能に配設されたX方向移動板84と、X方向移動板84上においてY方向に沿って配設された案内レール84A、84Aと、案内レール84A、84Aに沿ってY方向に移動可能に配設されたパレット86と、X方向移動板84をX方向に沿って移動させるX方向移動手段83と、パレット86をY方向に沿って移動させるY方向移動手段85と、を備えている。
【0024】
上記したデバイス供給手段8のX方向移動手段83は、モータ83a、及びモータ83aによって回転させられるボールねじ83bを備え、Y方向移動手段85は、モータ85a、及びモータ85aによって回転させられるボールねじ85bを備えている。X方向移動手段83によってX方向移動板84がX方向において進退させられる構成、及びY方向移動手段85によってパレット86がY方向において進退させられる構成は、上記した加工移動手段4と略同様であるので詳細な説明については省略する。
【0025】
パレット86は、平板状に形成され、複数の領域が格子状に区画された表面にデバイス16を収容している。
図4(b)に断面図で示すように、デバイス16は、半導体チップ17の表面17aに複数のバンプ電極18が配設されたものである。
図1に示す実施形態におけるパレット86は、4×4=16個のデバイス16を収容しており、複数のバンプ電極18が形成された表面17aを下方に向け、裏面17bを上方に向けてパレット86に収容されている。
【0026】
なお、配線図は省略しているが、上記した制御手段100は、レーザー照射装置5の空間光変調器54に加え、加工移動手段4のX方向移動手段41、Y方向移動手段42、図示を省略する回転駆動手段、デバイス搬送手段7、デバイス供給手段8のX方向移動手段83、Y方向移動手段85にも接続されている。また、加工移動手段4のX方向移動手段41、Y方向移動手段42、及び図示を省略する回転駆動手段、デバイス搬送手段7、デバイス供給手段8のX方向移動手段83、Y方向移動手段85には、それぞれ図示を省略する位置検出手段が配設されており、テーブル34、及びパレット86を、XY平面において、任意の座標位置に正確に移動させることが可能に構成されている。
【0027】
本実施形態の電極溶着装置1は、概ね上記したとおりの構成を備えており、この電極溶着装置1を使用して実施される、半導体チップ17の表面17aに複数のバンプ電極18が配設されたデバイス16を、配線基板10の電極14に溶着する電極溶着方法について、以下に説明する。
【0028】
本実施形態の電極溶着方法によって配線基板10に溶着されるデバイス16は、上記したように、半導体チップ17と、半導体チップ17の表面17aに複数のバンプ電極18を備えたものであり、半導体チップ17は、例えば、シリコン(Si)チップからなる。また、配線基板10の表面10aには、デバイス16の複数のバンプ電極18と対応するように電極14が形成されたデバイス設置領域12が形成されている。
【0029】
本実施形態の電極溶着方法を実施するに際し、
図2に基づき説明したレーザー照射装置5を準備する。具体的には、レーザー照射装置5に配設された発振器81は、このシリコンチップに対して吸収性を有する波長のレーザー光線LBを発振するものであり、発振器81が発振したレーザー光線LBのエネルギー分布を調整する空間光変調器54と、照射されたレーザー光線LBによって複数のバンプ電極18の温度を均一化すべく空間光変調器54を調整する制御手段100と、を含み構成されたレーザー照射装置5を準備する(レーザー照射装置準備工程)。
【0030】
上記レーザー照射装置準備工程を実施したならば、配線基板10の電極12に対応してデバイス16のバンプ電極18を位置付ける電極位置付け工程を実施する。この電極位置付け工程は、概略以下の手順により実施される。
【0031】
まず、
図1に示すように、テーブル34を、配線基板10を搬出入する搬出入位置に位置付ける。次いで、配線基板10の表面10aを上方に裏面10bを下方に向けて、テーブル34上に配線基板10を載置し、図示を省略する吸引手段を作動して吸引孔342、吸引溝343に吸引負圧を供給して支持する。次いで、加工移動手段4を作動して、テーブル34を移動し、撮像手段6の直下に配線基板10を位置付ける。配線基板10上のデバイス設置領域12、及び電極14を撮像して、その位置を検出して、制御手段100の記憶部(メモリ)に該位置の情報を記憶する(アライメント)。なお、配線基板10上の該電極14は、デバイス16に形成された複数のバンプ電極18に対応している。
【0032】
上記したアライメントの前、後、又はこれと同時に、デバイス供給手段8のX方向移動手段83、Y方向移動手段85を作動して、パレット86を、所定の位置に位置付ける。該所定の位置とは、
図4(a)に示すように、デバイス搬送手段7を作動して、搬送アーム75を矢印R3の方向に回転させて、吸着部76を所定の吸着位置に位置付けたときに、パレット86に収容された吸着させたいデバイス16を該吸着位置に位置付ける位置である。このようにパレット86を所定の位置に位置付けたならば、
図4(a)に示すように、デバイス搬送手段7を作動して、支持アーム72を矢印R3で示す方向に回転させて、吸着位置に位置付ける。該吸着位置に位置付けられた吸着部76の直下には、次に搬送されるデバイス16が位置付けられている。次いで、
図4(b)に示すように、デバイス搬送手段7の図示を省略する昇降手段を作動させて、吸着部76を矢印R4で示す方向に下降させる。図に示すように、パレット86には、半導体チップ17の表面17aに複数のバンプ電極18が形成されたデバイス16が、裏面17bを上方に向けて収容されており、吸着部76の段差部763に半導体チップ17の裏面17bが収容される。次いで、上記した吸引手段を作動させて、吸引孔764に吸引負圧Vを供給する。これにより、半導体チップ17の裏面17bが、吸着部76に吸着され、この結果、吸着部76によってデバイス16が吸着される。次いで、搬送アーム75を上昇させて、
図5に示すように、搬送アーム75を矢印R5で示す方向に回転させて、吸着部76を集光器55の直下に位置付ける。
【0033】
吸着部76を集光器55の直下に位置付けると共に、加工移動手段4を作動して、
図5に矢印R6で示す方向にテーブル34を移動する。より具体的には、アライメントによって検出した配線基板10のデバイス設置領域12、電極14の位置情報に基づいて、レーザー照射装置5の集光器55の直下に、配線基板10のデバイス設置領域12の電極14を位置付ける。この結果、平面視で見て、集光器55の直下に、デバイス16、及び、配線基板10のデバイス設置領域12が位置付けられると共に、デバイス設置領域12に形成された電極14に対応して、デバイス16の半導体チップ17の表面17aに形成された複数のバンプ電極18が位置付けられる。そして、デバイス搬送手段7の搬送アーム75を下降させ、デバイス16のバンプ電極18を配設基板10のデバイス設置領域12に形成された電極14に接触させる。以上により電極位置付け工程が完了する。
【0034】
上記した電極位置付け工程を実施したならば、レーザー光線を半導体チップ17の裏面17bに照射してデバイス16のバンプ電極18を配線基板10の電極14に溶着する電極溶着工程を実施する。より具体的には、まず、予め、制御手段100に対して、入力手段110を介して、デバイス情報を入力しておく。なお、デバイス情報を入力する入力手段110は、必ずしも必須の構成ではなく、通信ネットワーク等を通じて入手したものであってもよい。該デバイス情報には、デバイス16の寸法に関する情報、半導体チップ17の表面17aに形成されたバンプ電極18の配設位置の情報、半導体チップ17の材質、厚み等に関する情報が含まれる。これらの情報に基づいて、
図6(a)に示すように、加工移動手段4の上記したZ方向移動手段を作動して、集光器55の位置をZ方向において調整し、レーザー照射装置5を作動して制御手段100から空間光変調器54に指示信号を送ると共に、上記した発振器51からレーザー光線LBを発振して、空間光変調器54に導き、空間光変調器54から、レーザー光線LBのエネルギー分布が調整されたレーザー光線LB0が照射され、
図6(b)に示すように、半導体チップ17の裏面17bに照射される。
【0035】
本実施形態のレーザー照射装置5によって発振されるレーザー光線LBには、連続波(CW)が採用され、例えば、以下の加工条件に設定される。
波長 :400~1100nm
平均出力 :80~300W/cm2
なお、レーザー光線LBの波長については、本実施形態の半導体チップ17がシリコン(Si)によって構成されていることから、半導体チップ17の表面17aにおいて反射を抑えると共に、シリコン(Si)への吸収を確保できる900~1000nmに設定することが好ましい。
【0036】
上記した実施形態によれば、概念図として示す
図6(b)により理解されるように、半導体チップ17の裏面17bから照射されるレーザー光線LB0は、LB1~LB7によって示すように、半導体チップ17における加熱領域を選択的に調整し、バンプ電極18を均一な溶融温度として、バンプ電極18と配線基板10のデバイス設置領域12に形成された電極14とを電気的に接続する。これにより、配線基板10に、デバイス16が溶着され、テーブル34は、配線基板10と共に、配線基板10の電極14に対応してバンプ電極18が位置付けられたデバイス16を支持した状態となる。以上により、電極溶着工程が完了する。
【0037】
上記した電極溶着工程が完了したならば、吸着部76に供給されていた吸引負圧を停止し、デバイス搬送手段7の上記昇降手段を作動して、搬送アーム75と共に吸着部76を上昇させ、加工移動手段4を作動して、テーブル34を、
図1においてテーブル34が位置付けられている搬出入位置に位置付ける。次いで、テーブル34に接続されている吸引手段を停止して、デバイス16と一体化された配線基板10を搬出する。次いで、デバイス16が溶着されていない未加工の配線基板10をテーブル34に載置して、吸引支持する。テーブル34に配線基板10を支持したならば、上記した電極位置付け工程、電極溶着工程を実施する。これを繰り返すことにより、パレット86に収容された残りのデバイス16を配線基板10に溶着することができる。
【0038】
上記した実施形態によれば、空間光変調器54によって、デバイス16を構成する半導体チップの加熱領域が選択的に調整され、バンプ電極18が均一に加熱されて、配線基板10の電極14に、デバイス16のバンプ電極18を良好に溶着することができる。これにより、複数のバンプ電極18の溶融が不均一になるという問題が解消される。
【符号の説明】
【0039】
1:電極溶着装置
2:基台
2A:案内レール
3:保持手段
31:X方向可動板
32:案内レール
33:Y方向可動板
34:テーブル
341:保持面
342:吸引孔
4:加工移動手段
41:X方向移動手段
42:Y方向移動手段
5:レーザー照射装置
51:発振器
52:アッテネーター
53:反射ミラー
54:空間光変調器
55:集光器
6:撮像手段
7:デバイス搬送手段
71:ケーシング
72:支持アーム
73:モータ
74:円板
75:搬送アーム
76:吸着部
761:枠部
762:貫通口
763:段差部
764:吸引孔
8:デバイス供給手段
81:支持台
82:支持基台
82A:案内レール
83:X方向移動手段
83a:モータ
83:ボールねじ
84:X方向移動板
85:Y方向移動手段
85a:モータ
85b:ボールねじ
86:パレット
9:表示手段
10:配線基板
12:デバイス設置領域
14:電極
16:デバイス
21:枠体
21a:垂直壁部
21b:水平壁部
100:制御手段
110:入力手段