(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112303
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】パターン測定システム、パターン測定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 15/00 20060101AFI20220726BHJP
G01B 15/04 20060101ALI20220726BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
G01B15/00 K
G01B15/04 K
H01L21/66 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008075
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀田 寿昌
(72)【発明者】
【氏名】酒井 計
(72)【発明者】
【氏名】角田 純一
【テーマコード(参考)】
2F067
4M106
【Fターム(参考)】
2F067AA54
2F067BB04
2F067CC15
2F067EE03
2F067EE04
2F067HH01
2F067HH06
2F067RR14
2F067RR28
2F067RR35
2F067RR41
2F067SS11
4M106AA01
4M106CA39
4M106DB02
4M106DB05
4M106DH24
4M106DH31
4M106DH33
4M106DJ12
4M106DJ13
4M106DJ15
4M106DJ18
4M106DJ19
4M106DJ20
4M106DJ21
4M106DJ23
(57)【要約】
【課題】計測パターンの制約なしに高精度にランダムノイズ成分を検出でき、より高精度にエッジラフネス計測を可能にする技術を提案する。
【解決手段】本開示によれば、取得したラインパターン画像において、ラインパターンの左エッジと右エッジをそれぞれパターンマッチングとエッジ位置補正を行い、ラフネスのない画像を生成する。当該画像からPSD値を計測し、全周波数の平均PSD値をランダムノイズ成分とすることによって、ランダムノイズ成分を高精度に検出できる。さらに、当該PSD値(ランダムノイズ成分)を元画像のPSD値から引くことで高精度にエッジラフネスを計測する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に対する荷電粒子ビーム走査または光の照射によって得られる信号を用いて、前記試料上に形成されたパターンを測定するパターン測定システムであって、
前記パターンの情報を処理するためのプログラムを格納する記憶デバイスと、
前記記憶デバイスから前記プログラムを読み込み、前記パターンの情報を処理するコンピュータと、を備え、
前記コンピュータは、
前記パターンから得られる前記信号に基づいて、複数の個別ラインプロファイル、前記複数のラインプロファイルの合計ラインプロファイル、および前記パターンの原画像を生成する処理と、
前記複数の個別のラインプロファイルのそれぞれを2つの領域に分割する処理と、
前記2つの領域に分割された複数の個別ラインプロファイルと前記合計ラインプロファイルのそれぞれについて、個別及び合計ラインプロファイルとの間でパターンマッチングを実行する処理と、
前記パターンマッチングの結果に基づいて、前記複数の個別ラインプロファイルのそれぞれに対して位置補正を実行する処理と、
前記位置補正した複数のラインプロファイルから前記パターンの補正画像を生成する処理と、
前記補正画像中の前記パターンのエッジにおけるパワースペクトル密度を求め、当該パワースペクトル密度を平均してランダムノイズ成分を求める処理と、
前記原画像中の前記パターンのエッジにおけるパワースペクトル密度と、前記ランダムノイズ成分との差分を取ることにより、エッジラフネスを算出する処理と、
を実行するパターン測定システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記コンピュータは、前記複数の個別のラインプロファイルのそれぞれを左右2つの領域に分割する、パターン測定システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記合計ラインプロファイルは、第1ピーク波形を含む第1ラインテンプレート画像と、第2ピーク波形を含む第2ラインテンプレート画像とを有する、パターン測定システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記コンピュータは、
複数種類のフレーム積算数の前記パターンの原画像を生成する処理と、
各積算数の原画像に関してランダムノイズ量を算出する処理と、
前記フレーム積算数と前記ランダムノイズ量との関係に基づいて、積算数が過不足のない最適フレーム積算数を決定する処理と、
を実行する、パターン測定システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記コンピュータは、前記各積算数の原画像に関してランダムノイズ量を算出する処理において、前記各積算数の原画像に対して、前記複数の個別ラインプロファイル、前記合計ラインプロファイルを生成し、前記複数の個別のラインプロファイルのそれぞれを2つの領域に分割し、前記2つの領域に分割された複数の個別ラインプロファイルと前記合計ラインプロファイルのそれぞれについて、個別及び合計ラインプロファイルとの間でパターンマッチングを行い、当該パターンマッチングの結果に基づいて、前記複数の個別ラインプロファイルのそれぞれに対して位置補正を実行し、当該位置補正した複数のラインプロファイルから前記パターンの補正画像を生成し、前記補正画像中の前記パターンのエッジにおけるパワースペクトル密度を求め、当該パワースペクトル密度を平均して前記ランダムノイズ成分を求める、パターン測定システム。
【請求項6】
請求項4において、
前記コンピュータは、前記フレーム積算数と前記ランダムノイズ量との関係を示すグラフを生成し、当該グラフにおける傾きの変化が所定値以下になった場合のフレーム積算数を前記最適フレーム積算数に決定する、パターン測定システム。
【請求項7】
請求項1において、
前記コンピュータは、
1ラインごとのラインプロファイルを取得し、エッジラフネスを減じた画像を生成する処理と、
前記エッジラフネスを減じた画像において、平滑化係数を変更しながらパワースペクトル密度を計測し、ランダムノイズ量を算出する処理と、
前記平滑化係数と前記ランダムノイズ量との関係に基づいて、ノイズ量が飽和する最低平滑化係数を決定する処理と、
を実行する、パターン測定システム。
【請求項8】
請求項7において、
前記コンピュータは、エッジラフネスを減じた画像を生成する処理において、ラインパターンを含む原画像について、複数の個別ラインプロファイルおよび前記複数のラインプロファイルの合計ラインプロファイルを生成し、前記複数の個別のラインプロファイルのそれぞれを2つの領域に分割し、前記2つの領域に分割された複数の個別ラインプロファイルと前記合計ラインプロファイルのそれぞれについて、個別及び合計ラインプロファイルとの間でパターンマッチングを実行し、前記パターンマッチングの結果に基づいて、前記複数の個別ラインプロファイルのそれぞれに対して位置補正を実行し、前記位置補正した複数のラインプロファイルから前記ラインパターンの補正画像を生成し、当該補正画像を用いて前記エッジラフネスを減じた画像を生成する、パターン測定システム。
【請求項9】
請求項1において、
前記コンピュータは、
前記原画像に含まれる少なくとも2本のラインパターンにおける前記複数のラインプロファイルを取得する処理と、
前記複数のラインプロファイルに基づいて、所定方向における前記合計ラインプロファイルを生成する処理と、
前記複数のラインプロファイルと前記合計ラインプロファイルとをパターンマッチングし、位置ずれ量を算出する処理と、
前記位置ずれ量を前記原画像にフィードバックし反映させる処理と、
を実行する、パターン測定システム。
【請求項10】
試料に対する荷電粒子ビーム走査または光の照射によって得られる信号を用いて、前記試料上に形成されたパターンを測定するパターン測定方法であって、
前記パターンの情報を処理するためのプログラムを格納する記憶デバイスから前記プログラムを読み込み、前記パターンの情報を処理するコンピュータが、前記パターンから得られる前記信号に基づいて、複数の個別ラインプロファイル、前記複数のラインプロファイルの合計ラインプロファイル、および前記パターンの原画像を生成することと、
前記コンピュータが、前記複数の個別のラインプロファイルのそれぞれを2つの領域に分割することと、
前記コンピュータが、前記2つの領域に分割された複数の個別ラインプロファイルと前記合計ラインプロファイルのそれぞれについて、個別及び合計ラインプロファイルとの間でパターンマッチングを実行することと、
前記コンピュータが、前記パターンマッチングの結果に基づいて、前記複数の個別ラインプロファイルのそれぞれに対して位置補正を実行することと、
前記コンピュータが、前記位置補正した複数のラインプロファイルから前記パターンの補正画像を生成することと、
前記コンピュータが、前記補正画像中の前記パターンのエッジにおけるパワースペクトル密度を求め、当該パワースペクトル密度を平均してランダムノイズ成分を求めることと、
前記コンピュータが、前記原画像中の前記パターンのエッジにおけるパワースペクトル密度と、前記ランダムノイズ成分との差分を取ることにより、エッジラフネスを算出することと、
を含む、パターン測定方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記コンピュータが、複数種類のフレーム積算数の前記パターンの原画像を生成することと、
前記コンピュータが、各積算数の原画像に関してランダムノイズ量を算出することと、
前記コンピュータが、前記フレーム積算数と前記ランダムノイズ量との関係に基づいて、積算数が過不足のない最適フレーム積算数を決定することと、
を含む、パターン測定方法。
【請求項12】
請求項10において、
前記コンピュータが、前記原画像を取得することと、
前記コンピュータが、前記原画像について、1ラインごとのラインプロファイルを取得し、エッジラフネスを減じた画像を生成することと、
前記コンピュータが、前記エッジラフネスを減じた画像において、平滑化係数を変更しながらパワースペクトル密度を計測し、ランダムノイズ量を算出することと、
前記コンピュータが、前記平滑化係数と前記ランダムノイズ量との関係に基づいて、ノイズ量が飽和する最低平滑化係数を決定することと、
を含む、パターン測定方法。
【請求項13】
請求項10において、
前記コンピュータが、前記原画像に含まれる少なくとも2本のラインパターンにおける前記複数のラインプロファイルを取得することと、
前記コンピュータが、前記複数のラインプロファイルに基づいて、所定方向における前記合計ラインプロファイルを生成することと、
前記コンピュータが、前記複数のラインプロファイルと前記合計ラインプロファイルとをパターンマッチングし、位置ずれ量を算出することと、
前記コンピュータが、前記位置ずれ量を前記原画像にフィードバックし反映させることと、
を含む、パターン測定方法。
【請求項14】
試料に対する荷電粒子ビーム走査または光の照射によって得られる信号を用いて、前記試料上に形成されたパターンを測定するパターン測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記パターンの情報を処理するコンピュータが、前記パターンから得られる前記信号に基づいて、複数の個別ラインプロファイル、前記複数のラインプロファイルの合計ラインプロファイル、および前記パターンの原画像を生成する処理と、
前記コンピュータが、前記複数の個別のラインプロファイルのそれぞれを2つの領域に分割する処理と、
前記コンピュータが、前記2つの領域に分割された複数の個別ラインプロファイルと前記合計ラインプロファイルのそれぞれについて、個別及び合計ラインプロファイルとの間でパターンマッチングを実行する処理と、
前記コンピュータが、前記パターンマッチングの結果に基づいて、前記複数の個別ラインプロファイルのそれぞれに対して位置補正を実行する処理と、
前記コンピュータが、前記位置補正した複数のラインプロファイルから前記パターンの補正画像を生成する処理と、
前記コンピュータが、前記補正画像中の前記パターンのエッジにおけるパワースペクトル密度を求め、当該パワースペクトル密度を平均してランダムノイズ成分を求めることと、
前記コンピュータが、前記原画像中の前記パターンのエッジにおけるパワースペクトル密度と、前記ランダムノイズ成分との差分を取ることにより、エッジラフネスを算出する処理と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パターン測定システム、パターン測定方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程における微細加工プロセスでは、パターンのエッジラフネス(パターン端部の凹凸)がデバイスの歩留まりに大きく影響する。エッジラフネスは、半導体デバイスを構成する材料、露光装置、あるいは下地基板の性質、特徴等に応じて発生の程度が大きく変化することが分かっている。近年では、パターンの微細化に伴い、エッジのラフネス計測がより高精度に求められている。エッジのラフネス計測において、計測する画像にランダムノイズが多いとパターンのエッジを正確にとらえることができず、真のエッジラフネス以上に大きなエッジラフネスを計測してしまう。このため、高精度なエッジラフネス計測のためには画像のランダムノイズ成分の検出及び除去が有効である。
【0003】
例えば、特許文献1には、ラインパターンの左右それぞれのエッジラフネスを、理想的な直線を基準にした凹凸ゆらぎの幅を示す3σ値として求める計測法が開示されている。また、特許文献1には、ゆらぎデータの集合についてフーリエ解析を行い、空間周波数に対する強度を求めることによって、エッジ形状を解析する手法が説明されている。さらに、特許文献2には、ラインパターンのPSD(Power Spectrum Density:パワースペクトル密度)値からランダムノイズ成分を検出する手法が説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3870044号公報
【特許文献2】特開2019-39884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、高精度なエッジラフネス計測のためには画像のランダムノイズ成分を検出及び除去することが有効である。
【0006】
しかし、特許文献2の手法では高周波成分のみからランダムノイズ量を推定するため、高周波部分においてPSD値が十分に収束していないことがある。この場合は、PSD値の近似直線の誤差も多く、ノイズ成分の検出精度が落ちてしまう。特に、画面内にラインパターンが少ない場合やラインが短い場合には、ノイズの検出精度が落ちてしまう。このため、検出精度を良くするためには、パターン数を増やす必要がある(計測パターンの制約)が、パターン数を増やすと処理が煩雑になり、効率が悪くなってしまう。
【0007】
本開示は、このような状況に鑑み、計測パターンの制約なしに高精度にランダムノイズ成分を検出でき、より高精度にエッジラフネス計測を可能にする技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示は、試料に対する荷電粒子ビーム走査または光の照射によって得られる信号を用いて、試料上に形成されたパターンを測定するパターン測定システムであって、パターンの情報を処理するためのプログラムを格納する記憶デバイスと、記憶デバイスからプログラムを読み込み、パターンの情報を処理するコンピュータと、を備え、当該コンピュータは、パターンから得られる信号に基づいて、複数の個別ラインプロファイル、複数のラインプロファイルの合計ラインプロファイル、およびパターンの原画像を生成する処理と、複数の個別のラインプロファイルのそれぞれを2つの領域に分割する処理と、2つの領域に分割された複数の個別ラインプロファイルと合計ラインプロファイルのそれぞれについて、個別及び合計ラインプロファイルとの間でパターンマッチングを実行する処理と、パターンマッチングの結果に基づいて、複数の個別ラインプロファイルのそれぞれに対して位置補正を実行する処理と、位置補正した複数のラインプロファイルからパターンの補正画像を生成する処理と、補正画像中のパターンのエッジにおけるパワースペクトル密度を求め、当該パワースペクトル密度を平均してランダムノイズ成分を求める処理と、原画像中の前記パターンのエッジにおけるパワースペクトル密度と、ランダムノイズ成分との差分を取ることにより、エッジラフネスを算出する処理と、を実行するパターン測定システムについて提案する。
【0009】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではないことを理解する必要がある。
【発明の効果】
【0010】
本開示の技術によれば、計測パターンの制約なしに高精度にランダムノイズ成分を検出でき、より高精度にエッジラフネスを計測することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態におけるCD-SEMの概略構成例を示す図である。
【
図2】画像変換ユニット109と、そこで得られた画像に対してパターンを計測するパターン計測ユニット202を含むシステムの構成例を示す図である。
【
図3】パターン計測ユニット202での画像処理および真のエッジラフネス計測処理を説明するためのフローチャートである。
【
図4】1ラインスキャンごとに取得したプロファイルを示している。
【
図5】全範囲のラインプロファイルから算出して得られたSUMラインプロファイル(例えば、全範囲のラインプロファイルを積算し、ライン数で除算して得られる:平均値)の例を示す図である。
【
図6】SUMラインプロファイルと各ラインプロファイルとの位置ずれ量の例を示す図である。
【
図7】ラフネス成分が除去された画像の例を示す図である。
【
図8】元の画像のPSD値(空間周波数に対するPSD値)とステップ305で求めた画像処理後のPSD値(空間周波数に対するPSD値)とを比較した様子を示す図である。
【
図9】最適フレーム数を算出する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図10】2フレーム積算から32フレーム積算によって生成される積算画像(例)を示す図である。
【
図11】フレーム数とランダムノイズ量との関係を示す図である。
【
図12】最適な平滑化係数決定処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【
図13】Y方向に平滑化係数を増やしながら算出したランダムノイズ量をプロットしたグラフである。
【
図14】X方向に平滑化係数を増やしながら算出したランダムノイズ量をプロットしたグラフである
【
図15】電源周波数と同期したノイズが混入しているSEM像の例を示す図である。
【
図16】
図15に示したSEM像に対してPSD計測を行った場合の計測値の周波数に対する変化を示す図である。
【
図17】電源周波数と同期したノイズ成分だけを除去する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図18】少なくとも2本以上のラインパターンからラインプロファイルを示す図である。
【
図19】位置ずれ量をSEM画像にフィードバックした後のSEM像を示す模擬図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態は、測定対象となる画像からノイズ成分を高精度に検出することによって、パターンのエッジに現れる真のエッジラフネスをより高精度に測定するためのパターン測定方法、及びパターン測定システム(装置)について提案する。
【0013】
近年では、パターンの微細化に伴い、パターンのエッジラフネス(パターン端部の凹凸)の高精度な計測が必須となっている。エッジラフネスは、半導体デバイスを構成する材料、露光装置、あるいは下地基板の性質、特徴等に応じて発生の程度が大きく変化することがわかっているおり、エッジラフネスの計測及び制御がデバイスの歩留まりに大きく影響するからである。
【0014】
しかし、例えば、走査型電子顕微鏡(Critical Dimension SEM:CD-SEM)などの半導体計測装置においてパターンを画像化すると、検出器やその信号を電気信号に変換する過程で電子回路から生じる時間的にランダムに発生するノイズ(ランダムノイズ)が重なってしまう。このため、ランダムノイズに起因してパターンのエッジを正確にとらえることができない。これにより、エッジラフネスを計測する際にパターン自身が持っている真のエッジラフネスよりも大きなラフネス値を出力してしまうことになる。
【0015】
そこで、画像上に存在するランダムノイズを高精度に検出し、ランダムノイズを除去してエッジラフネスを計測することが必要となる。半導体パターンの計測方法には光を照射するものと荷電粒子線を照射するものがあるが、両者で異なるのは分解能であって、パターンの画像化にはどちらもディジタル信号処理を行っている。従って、画像処理については同様のものを用いることができる。
【0016】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態について、一例としてCD-SEMで得られた画像を例に添付図面を参照して説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った具体的な実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【0017】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0018】
更に、本開示の実施形態は、後述されるように、汎用コンピュータ上で稼動するソフトウェアで実装しても良いし専用ハードウェア又はソフトウェアとハードウェアの組み合わせで実装しても良い。
【0019】
<CD-SEMの構成例>
図1は、本実施形態におけるCD-SEMの概略構成例を示す図である。CD-SEM10は、電子銃101と、コンデンサレンズ103と、絞り104と、対物レンズ105と、検出器108と、画像変換ユニット109と、を備える。
【0020】
電子銃101は、一次ビーム102を電子源から引き出し、ユーザが設定する加速電圧まで加速する。その後、一次ビーム102は、コンデンサレンズ103や絞り104、対物レンズ105を介して、試料106に照射される。照射時のエネルギーや試料電位、凹凸などに依存して、試料106から放出電子107が放出される。放出電子107は、検出器108で検出される。検出された信号は、電気信号に変換され、画像変換ユニット109に入力され、画像に変換される。
【0021】
<画像変換ユニットの構成例>
図2は、画像変換ユニット109と、そこで得られた画像に対してパターンを計測するパターン計測ユニット202を含むシステムの構成例を示す図である。なお、
図2では画像変換ユニット109とパターン計測ユニット202がネットワークで接続されている構成を示しているが、これに限られることなく、画像変換ユニット109内で後述のパターン計測を行うようにしてもよい。
【0022】
図2に例示するパターン計測ユニット202は、画像変換ユニット109から得られた画像を受け取って後述するようなラインプロファイルの算出と画像処理をする画像処理部203と、得られた画像からエッジを検出し、フーリエ解析することによってパワースペクトル密度(Power Spectrum Density:PSD)を求めるFFT処理部204と、FFT処理部204によって生成されたPSD曲線から後述するような手法によってランダムノイズ量を測定する波形処理部205と、波形処理部205から得られたランダムノイズ量を用いて真のエッジラフネス量を算出して結果を画像変換ユニット109のディスプレイに出力させる測定処理部206と、を備えている。パターン計測ユニット202は、例えば、記憶デバイスやプロセッサを構成要素として含むコンピュータで構成することができる。この場合、プロセッサが、記憶デバイスから、画像処理部203、FFT処理部204、波形処理部205、および測定処理部206を実現するための各種プログラムを読み込み、プロセッサの内部メモリ(図示せず)に展開して各ユニットを構成することができる。
【0023】
<画像処理及び真のエッジラフネス計測処理の詳細>
図3は、パターン計測ユニット202での画像処理および真のエッジラフネス計測処理を説明するためのフローチャートである。以下では、各ステップの動作主体を、各処理部(画像処理部203など)としているが、各処理部はパターン計測ユニット202のプロセッサによって実現されるので、動作主体をプロセッサ、あるいはパターン計測ユニット202とすることもできる。
【0024】
(i)ステップ301
まず、画像処理部203は、SEM撮像した少なくとも1本以上のラインパターンが入った画像を画像変換ユニット109から取り込む。そして、画像処理部203は、SEM画像から1ラインスキャン毎のラインプロファイルを
図4に示すように取得する。ここで、
図4は、1ラインスキャンごとに取得したプロファイルを示している。例えば、
図4において、Y方向の範囲が256pixであれば256本のラインプロファイルを取得することになる。
【0025】
(ii)ステップ302
画像処理部203は、SEM画像からY方向に指定した全範囲を合計したSUMラインプロファイルを
図5のように取得する。
図5は、全範囲のラインプロファイルから算出して得られたSUMラインプロファイル(例えば、全範囲のラインプロファイルを積算し、ライン数で除算して得られる:平均値)の例を示している。
【0026】
(iii)ステップ303
画像処理部203は、ステップ301で得られたラインプロファイルにおいて、各プロファイルを左右(LとR)に分割し、それぞれのラインエッジにおいてステップ302で得られたSUMラインプロファイルとパターンマッチングを行い、位置ずれ量を
図6に示すように取得する。
図6は、SUMラインプロファイルと各ラインプロファイルとの位置ずれ量の例を示している。
【0027】
(iv)ステップ304
画像処理部203は、ステップ303で得られた位置ずれ量からSEM画像の位置ずれ補正(画像処理)を行い、
図7に示すようにラフネス成分を除去した画像を生成する。
図7は、ラフネス成分が除去された画像の例を示している。
【0028】
(v)ステップ305
FFT処理部204は、ステップ304で得られたSEM画像に対してパワースペクトル密度(PSD)計測を行い、得られたPSD値の全周波数の平均値(PSD Ave.)を求め、ランダムノイズ成分とする。
【0029】
(vi)ステップ306
波形処理部205は、元の画像のPSD値からステップ305で得られたランダムノイズ成分を引き算することで真のエッジラフネスを計測する。なお、測定処理部206は、計測されたエッジラフネスを波形処理部205から受け取り、画像変換ユニット109のディスプレイに表示することができる。
【0030】
図8は、元の画像のPSD値(空間周波数に対するPSD値)とステップ305で求めた画像処理後のPSD値(空間周波数に対するPSD値)とを比較した様子を示す図である。
【0031】
図8に示すように、画像処理後のPSD値はパターンのエッジ位置補正がされているため、ここから得られたPSDはランダムノイズ成分のみが表われている。また、一般的にランダムノイズは全周波数帯に一様に存在することがわかっているので、全周波数の平均値をランダムノイズ成分とすることによって、ランダムノイズ成分のばらつきを抑えることができる。そして、本手法から得られたランダムノイズ成分を元の画像のPSD値から引くことによって、高精度に真のエッジラフネスを求めることができる。また、画像内に複数のラインパターンがあるときはそれぞれのラインパターンで上記処理を実施してランダムノイズ成分を算出し、平均化した値を元の画像のPSD値から引いてもよい。
【0032】
上記のようにラフネス成分を除去した画像を生成し、全周波数の平均PSD値をランダムノイズ成分とすることで、高精度なノイズ成分検出が可能であり、高精度なラフネス計測が可能になる。また、本手法は計測に用いるパターンに制約はない。
【0033】
<最適な撮像フレーム数決定処理>
ここでは、高精度に検出したノイズ量を用いて、最適な撮像フレーム数を決定する手法を説明する。CD-SEM10では、画像を生成するときに何回か同じ場所をスキャンして得られた画像をある決められた枚数(フレーム数)を積算してから計測を行う(上述のラフネス計測処理でも同様である)。この時、フレーム数を増やすほどランダムノイズは相対的に小さくなり、計測が安定する。
【0034】
しかし、フレーム数を増やすとその分画像取得時間が増加してしまうことや、サンプルへの電子ビーム照射によるダメージ、レジストサンプルであればパターンのシュリンクが発生してしまう。一方、ランダムノイズ量はフレーム数を加算するとあるフレーム数である程度飽和する。
そこで、ここでは、ランダムノイズ量が飽和する最低フレーム数(最適フレーム数)を算出する処理を提案する。
【0035】
図9は、最適フレーム数を算出する処理を説明するためのフローチャートである。
(i)ステップ901
画像処理部203は、ランダムノイズがある程度飽和するくらい十分に多いフレーム数(予め設定されたフレーム数:例えば32フレーム)でSEM画像を取得する。
【0036】
(ii)ステップ902
画像処理部203は、
図10に示すように、2フレーム積算、4フレーム積算、8フレーム積算、16フレーム積算、32フレーム積算までの積算画像を生成する。この時、積算するフレーム数は決まっておらず、任意の積算数でよい。
【0037】
(iii)ステップ903
画像処理部203は、それぞれの積算画像に対して、
図3のステップ301からステップ304を実行してラフネスのない画像を生成する。また、FFT処理部204は、
図3のステップ305を実行し、PSDを計測してランダムノイズ量を算出する。
【0038】
(iv)ステップ904
波形処理部205は、フレーム数とランダムノイズ量との関係を示すグラフを生成および表示し、ノイズ量が飽和している最低フレーム数を最適フレーム数とする。なお、
図11は、フレーム数とランダムノイズ量の関係を示すグラフである。ノイズ量が飽和しているか否かは、
図11で示されるグラフにおける傾きが所定の値以下になったか否かによって判断することができる(当該傾きが所定の値以下になった場合にノイズ量が飽和したと判断される)。
図11において、16フレームでランダムノイズ量は飽和している(グラフの傾きが所定値以下となったと判断できる)ので、16フレームが最適フレームであると決定される。
以上のようにして、フレーム数を変化させながらランダムノイズ量をプロットすることで、最適なフレーム数を決定することができる。
【0039】
<最適平滑化係数決定処理>
ここでは、高精度に検出したノイズ量を用いて、計測時の最適な平滑化係数を決定する処理について説明する。上述のように、エッジラフネス計測するためには、画像から得られたラインプロファイルからパターンのエッジ位置を検出する必要がある。このとき、ラインプロファイルをX方向またはY方向に任意のピクセル数で平滑化処理することによって、ラインプロファイルからランダムノイズ成分を減らし、エッジを安定して検出、測定することができる。
【0040】
しかし、平滑化処理に使う点数(平滑化係数)が大きい(点数が多い)場合、実際のパターンエッジの形状からかけ離れてしまい(平滑化係数が大きすぎるとパターンエッジの形状が鈍ってしまう)、パターンのエッジラフネスも無くなってしまう。
そこで、ここでは、ランダムノイズ成分が減り、かつパターンのエッジ情報は保持できる最適な平滑化係数を算出する処理を提案する。
【0041】
図12は、最適な平滑化係数決定処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
(i)ステップ1201
画像処理部203は、任意のフレーム枚数でSEM画像を取得する。
【0042】
(ii)ステップ1202
画像処理部203は、ステップ1201で取得した画像に対して、
図3のステップ301からステップ304を実行し、エッジラフネスの無い画像(
図7参照)を生成する。
【0043】
(iii)ステップ1203
FFT処理部204は、ステップ1202で得られたエッジラフネスの無い画像において、平滑化係数(スムージング係数)を増やしながらPSDを計測し、ランダムノイズ量を算出する。
【0044】
(iv)ステップ1204
波形処理部205は、平滑化係数とランダムノイズ量との関係を示すグラフを生成し、画像変換ユニットに表示する。そして、波形処理部205は、ノイズ量が飽和している最低平滑化係数を最適平滑化係数とする。ここで、
図13は、Y方向に平滑化係数を増やしながら算出したランダムノイズ量をプロットしたグラフである。また、
図14は、X方向に平滑化係数を増やしながら算出したランダムノイズ量をプロットしたグラフである。
図13および14を参照すると、Y方向においては20pix、X方向においては19pixでランダムノイズ量がおおよそ飽和していることが分かる(飽和しているか否かも、上述のノイズ飽和と同様に、グラフの傾きの変化に基づいて判断することができる)。つまり、これ以上の平滑化は意味がない。以上の結果より、最適な平滑化係数はY方向が20pix、X方向が19pixとなる。
以上のように、ラフネスの無い画像において平滑化係数を変化させながらランダムノイズ量をプロットすることで最適な平滑化係数を決定することができる。
【0045】
<電源周波数に同期したノイズ成分の検出と除去>
ここでは電源周波数と同期したノイズ成分の検出と除去する方法について説明する。CD-SEM10では、ランダムノイズの他に電源周波数と同期したノイズが混入することもある。CD-SEM10では前述の通り、通常同じ領域を何回かスキャンしフレーム積算させて画像を取得する。電源周波数と同期してスキャンを開始して画像を取得して積算した場合、ノイズが歪として画像に現れる。
【0046】
図15は、電源周波数と同期したノイズが混入しているSEM像の例を示す図である。
図15からは、画面内の複数のラインパターンで共通の歪が存在するのが分かる。また、
図16は、
図15に示したSEM像に対してPSD計測を行った場合の計測値の周波数に対する変化を示すグラフ(例)である。
図16からは、電源周波数と同期したノイズがPSDに現れていることが分かる。
そこで、ここでは、電源周波数と同期したノイズ成分だけを除去する処理について提案する。
【0047】
図17は、電源周波数と同期したノイズ成分だけを除去する処理を説明するためのフローチャートである。
(i)ステップ1701
画像処理部203は、少なくとも2本以上のラインパターンが計測できるようにSEM画像を取得する。
【0048】
(ii)ステップ1702
画像処理部203は、1ラインスキャン毎のラインプロファイルを取得する。ただし、この場合(電源周波数に同期したノイズ成分の検出と除去する処理では)、上述の真のエッジラフネス計測処理の場合のように1本のパターンにおいてプロファイルを取得するのではなく、
図18に示すように少なくとも2本以上のラインパターンからラインプロファイルが取得される。
【0049】
(iii)ステップ1703
画像処理部203は、Y方向に指定した全範囲を合計したSUMラインプロファイルを取得する。
【0050】
(iv)ステップ1704
画像処理部203は、1ラインスキャン毎のラインプロファイルとSUMラインプロファイルとをパターンマッチングし、位置ずれ量をSEM画像にフィードバックする。このとき、位置ずれ量は2本のラインで同じ量だけフィードバックされる。ここで、
図19は、位置ずれ量をSEM画像にフィードバックした後のSEM像を示す模擬図である。
図19を見ると、電源周波数と同期したノイズによる歪が消え、パターンのエッジラフネスとランダムノイズのみが残った画像が取得できることが分かる。
【0051】
以上のように、当該電源周波数に同期したノイズ成分の検出/除去処理によれば、電源周波数と同期したノイズ成分を検出し、それを除去することができるようになる。
【0052】
<まとめ>
(i)本開示の特定事項
ここでは、最適な撮像フレーム数決定処理、最適平滑化係数決定処理、および電源周波数に同期したノイズ成分の検出と除去のそれぞれの特定事項について列挙する。
【0053】
(i-1)特定事項1
試料に対する荷電粒子ビーム走査または光の照射によって得られる信号を用いて、前記試料上に形成されたパターンを測定するパターン測定システムであって、
前記パターンの情報を処理するためのプログラムを格納する記憶デバイスと、
前記記憶デバイスから前記プログラムを読み込み、前記パターンの情報を処理するコンピュータと、を備え、
前記コンピュータは、
複数種類のフレーム積算数の前記パターンの原画像を生成する処理と、
各積算数の原画像に関してランダムノイズ量を算出する処理と、
前記フレーム積算数と前記ランダムノイズ量との関係に基づいて、積算数が過不足のない最適フレーム積算数を決定する処理と、
を実行する、パターン測定システム。
【0054】
(i-2)特定事項2
特定事項1において、
前記コンピュータは、前記各積算数の原画像に関してランダムノイズ量を算出する処理において、前記各積算数の原画像に対して、複数の個別ラインプロファイル、合計ラインプロファイルを生成し、前記複数の個別のラインプロファイルのそれぞれを2つの領域に分割し、前記2つの領域に分割された複数の個別ラインプロファイルと前記合計ラインプロファイルのそれぞれについて、個別及び合計ラインプロファイルとの間でパターンマッチングを行い、当該パターンマッチングの結果に基づいて、前記複数の個別ラインプロファイルのそれぞれに対して位置補正を実行し、当該位置補正した複数のラインプロファイルから前記パターンの補正画像を生成し、前記補正画像中の前記パターンのエッジにおけるパワースペクトル密度を求め、当該パワースペクトル密度を平均して前記ランダムノイズ成分を求める、パターン測定システム。
【0055】
(i-3)特定事項3
試料に対する荷電粒子ビーム走査または光の照射によって得られる信号を用いて、前記試料上に形成されたパターンを測定するパターン測定システムであって、
前記パターンの情報を処理するためのプログラムを格納する記憶デバイスと、
前記記憶デバイスから前記プログラムを読み込み、前記パターンの情報を処理するコンピュータと、を備え、
前記コンピュータは、
ラインパターンを含む前記原画像を取得する処理と、
前記ラインパターンを含む原画像について、ラインプロファイルを取得し、エッジラフネスを減じた画像を生成する処理と、
前記エッジラフネスを減じた画像において、平滑化係数を変更しながらパワースペクトル密度を計測し、ランダムノイズ量を算出する処理と、
前記平滑化係数と前記ランダムノイズ量との関係に基づいて、ノイズ量が飽和する最低平滑化係数を決定する処理と、
を実行する、パターン測定システム。
【0056】
(i-4)特定事項4
特定事項3において、
前記コンピュータは、エッジラフネスを減じた画像を生成する処理において、前記少なくとも2本のラインパターンを含む原画像について、複数の個別ラインプロファイルおよび前記複数のラインプロファイルの合計ラインプロファイルを生成し、前記複数の個別のラインプロファイルのそれぞれを2つの領域に分割し、前記2つの領域に分割された複数の個別ラインプロファイルと前記合計ラインプロファイルのそれぞれについて、個別及び合計ラインプロファイルとの間でパターンマッチングを実行し、前記パターンマッチングの結果に基づいて、前記複数の個別ラインプロファイルのそれぞれに対して位置補正を実行し、前記位置補正した複数のラインプロファイルから前記少なくとも2本のラインパターンの補正画像を生成し、当該補正画像を用いて前記エッジラフネスを減じた画像を生成する、パターン測定システム。
【0057】
(i-5)特定事項5
試料に対する荷電粒子ビーム走査または光の照射によって得られる信号を用いて、前記試料上に形成されたパターンを測定するパターン測定システムであって、
前記パターンの情報を処理するためのプログラムを格納する記憶デバイスと、
前記記憶デバイスから前記プログラムを読み込み、前記パターンの情報を処理するコンピュータと、を備え、
前記コンピュータは、
前記試料の原画像に含まれるラインパターンにおける複数のラインプロファイルを取得する処理と、
前記複数のラインプロファイルに基づいて、所定方向における合計ラインプロファイルを生成する処理と、
前記複数のラインプロファイルと前記合計ラインプロファイルとをパターンマッチングし、位置ずれ量を算出する処理と、
前記位置ずれ量を前記原画像にフィードバックし反映させる処理と、
を実行する、パターン測定システム。
【0058】
(ii)本実施形態によるパターン測長システム(パターン測長装置とも言う)は、パターンに荷電粒子ビームを照射することによって得られる信号に基づいて、複数の個別ラインプロファイル、複数のラインプロファイルの合計ラインプロファイル(上記SUMラインプロファイル)、およびパターンの原画像を生成する処理と、複数の個別のラインプロファイルのそれぞれを2つの領域(例えば、左右の2つの領域)に分割する処理と、2つの領域に分割された複数の個別ラインプロファイルと合計ラインプロファイルのそれぞれについて、個別及び合計ラインプロファイルとの間でパターンマッチングを実行する処理と、パターンマッチングの結果に基づいて、複数の個別ラインプロファイルのそれぞれに対して位置補正を実行する処理と、位置補正した複数のラインプロファイルからパターンの補正画像(
図7参照)を生成する処理と、補正画像中の前記パターンのエッジにおけるパワースペクトル密度を求め、当該パワースペクトル密度を平均してランダムノイズ成分を求める処理と、原画像中のパターンのエッジにおけるパワースペクトル密度(PSD)と、ランダムノイズ成分との差分を取ることにより、エッジラフネスを算出する処理と、を実行する。このようにすることにより、全周波数の平均PSD値をランダムノイズ成分とするので、ランダムノイズ成分を高精度に検出できる。また、全周波数の平均PSD値(ランダムノイズ成分)を原画像(元画像)から得られるPSD値から引くことで高精度に真のエッジラフネスを計測することができる。
【0059】
なお、合計ラインプロファイルは、第1ピーク波形を含む第1ラインテンプレート画像(例えば右側領域の画像)と、第2ピーク波形を含む第2ラインテンプレート画像(例えば左側領域の画像)とを有するように構成する。これにより、原画像とのパターンマッチングを高精度に実行することができる。
【0060】
(iii)本実施形態によるパターン測長システムは、複数種類のフレーム積算数(例えば、2フレームから32フレームの積算数)のパターンの原画像(各フレーム積算数に対応する原画像)を生成する処理と、各積算数の原画像に関してランダムノイズ量を算出する処理と、フレーム積算数とランダムノイズ量との関係に基づいて、積算数が過不足のない最適フレーム積算数(積算し過ぎでもなく、積算数が不足してもいない最適な積算数)を決定する処理と、を実行する。前述のように、各積算数の原画像に関してランダムノイズ量を算出する処理は、
図3のステップ301からステップ305の処理に対応する。即ち、当該ランダムノイズ量を算出する処理は、各積算数の原画像に対して、複数の個別ラインプロファイル、合計ラインプロファイル(SUMラインプロファイル)を生成し、複数の個別のラインプロファイルのそれぞれを2つの領域(左右の領域)に分割し、2つの領域に分割された複数の個別ラインプロファイルと合計ラインプロファイルのそれぞれについて、個別及び合計ラインプロファイルとの間でパターンマッチングを行い、当該パターンマッチングの結果に基づいて、複数の個別ラインプロファイルのそれぞれに対して位置補正を実行し、当該位置補正した複数のラインプロファイルから前記パターンの補正画像を生成し、補正画像中の前記パターンのエッジにおけるパワースペクトル密度を求め、当該パワースペクトル密度を平均してランダムノイズ成分を求めるものである。このようにすることにより、画像取得時間とパターン計測の安定化の両立を図ることが可能となる。つまり、積算フレーム数を増やし過ぎても画像取得時間が増加するだけで、最適なフレーム積算数より多いフレーム数を積算してもその積算処理自体が無駄となってしまう。一方、積算フレーム数が少なすぎるとランダムノイズが相対的に大きく、計測結果が安定しない。そこで、本実施形態の最適フレーム積算数を求める処理を実行することにより、これらを両立することが可能となる。なお、最適フレーム積算数に決定する際には、フレーム積算数とランダムノイズ量との関係を示すグラフ(
図11参照)を生成し、当該グラフにおける傾きの変化が所定値以下になった場合のフレーム積算数を最適フレーム積算数とすることができる。
【0061】
(iv)本実施形態によるパターン測長システムは、ラインパターンを含む原画像を取得する処理と、ラインパターンを含む原画像についてラインプロファイルを取得し、エッジラフネスを減じた画像を生成する処理と、エッジラフネスを減じた画像(エッジラフネスが全く存在しない画像が望ましいが、少なくとも原画像よりもエッジラフネスを減少させた画像であってもよい)において、平滑化係数を変更しながらパワースペクトル密度を計測し、ランダムノイズ量を算出する処理と、平滑化係数とランダムノイズ量との関係に基づいて、ノイズ量が飽和する最低平滑化係数を決定する処理と、を実行する。これにより、実際のパターンエッジの形状に適合する最適な平滑化係数(平滑化処理の際に用いるピクセルの点数)を決定することができる。なお、さらに詳しく規定すると、エッジラフネスを減じた画像を生成する処理は、ラインパターンを含む原画像について、複数の個別ラインプロファイルおよび複数のラインプロファイルの合計ラインプロファイル(SUMラインプロファイル)を生成し、複数の個別のラインプロファイルのそれぞれを2つの領域(例えば、左右2つの領域)に分割し、2つの領域に分割された複数の個別ラインプロファイルと合計ラインプロファイルのそれぞれについて、個別及び合計ラインプロファイルとの間でパターンマッチングを実行し、パターンマッチングの結果に基づいて、複数の個別ラインプロファイルのそれぞれに対して位置補正を実行し、位置補正した複数のラインプロファイルからラインパターンの補正画像を生成し、当該補正画像を用いてエッジラフネスを減じた画像を生成するものである。これは、
図3のステップ301からステップ304に相当する。
【0062】
(v)本実施形態によるパターン測長システムは、原画像に含まれる少なくとも2本のラインパターンにおける複数のラインプロファイルを取得する処理と、複数のラインプロファイルに基づいて、所定方向(例えば、Y方向)における合計ラインプロファイル(SUMラインプロファイル)を生成する処理と、複数のラインプロファイルと合計ラインプロファイルとをパターンマッチングし、位置ずれ量を算出する処理と、位置ずれ量を原画像にフィードバックし反映させる処理と、を実行する。このようにすることにより、電源周波数に同期したノイズ成分を検出し、これを除去することができる。なお、ここで、少なくとも2本のラインパターンを含む画像に対して当該電源周波数ノイズ検出および除去処理を実行するのは、電源周波数に同期したノイズが存在する場合には、2本のラインパターンにおいて同一方向にパターンが鈍って検出されるからである。
【0063】
(vi)本開示による実施形態の機能は、ソフトウェアのプログラムコードによっても実現することができる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或は装置に提供し、そのシステム或は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本開示を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0064】
また、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータ上のメモリに書きこまれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータのCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。
【0065】
さらに、実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することにより、それをシステム又は装置のハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納し、使用時にそのシステム又は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしても良い。
【0066】
最後に、ここで述べたプロセス及び技術は本質的に如何なる特定の装置に関連することはなく、コンポーネントの如何なる相応しい組み合わせによっても実装できる。さらに、汎用目的の多様なタイプのデバイスがここで記述した教示に従って使用可能である。ここで述べた方法のステップを実行するのに、専用の装置を構築するのが有益である場合もある。また、実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、さらに、異なる構成要素を適宜組み合わせてもよい。本開示は、具体例に関連して記述したが、これらは、すべての観点に於いて限定の為ではなく説明の為である。本分野にスキルのある者には、本開示を実施するのに相応しいハードウェア、ソフトウェア、及びファームウエアの多数の組み合わせがあることが解るであろう。例えば、記述したソフトウェアは、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
【0067】
さらに、上述の実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていても良い。
【符号の説明】
【0068】
10 CD-SEM
101 電子銃
102 一次ビーム
103 コンデンサレンズ
104 絞り
105 対物レンズ
106 試料
107 放出電子
108 検出器
109 画像変換ユニット
202 パターン計測ユニット
203 画像処理部
204 FFT処理部
205 波形処理部
206 測定処理部