(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112586
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】植物性蛋白の非膨化押出成形物を含んでなる食感改良材
(51)【国際特許分類】
A23J 3/00 20060101AFI20220727BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20220727BHJP
A23L 13/60 20160101ALI20220727BHJP
A23L 17/10 20160101ALI20220727BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20220727BHJP
A23J 3/26 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
A23J3/00 502
A23L13/00 Z
A23L13/60 Z
A23L17/10
A23J3/16 501
A23J3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008430
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】塚原 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】田辺 優希
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC05
4B042AD36
4B042AE03
4B042AG02
4B042AG03
4B042AG16
4B042AH01
4B042AK06
4B042AK11
4B042AK20
4B042AP02
4B042AP23
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、植物由来の蛋白材料を用いて、肉のような繊維感を食品に付与する技術を開発することである。
【解決手段】本発明によって、植物性蛋白の非膨化押出成形物を含んでなる食感改良材が提供され、本発明によれば、肉様の繊維感を加工食品に付与することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性蛋白の非膨化押出成形物を含んでなる、肉様の繊維感を加工食品に付与するための食感改良材。
【請求項2】
前記植物性蛋白が、大豆由来の植物蛋白である、請求項1に記載の食感改良材。
【請求項3】
前記非膨化押出成形物の水分率が30~80質量%である、請求項1または2に記載の食感改良材。
【請求項4】
前記非膨化押出成形物が、その大きさが25mm以下となるように解砕されたものである、請求項1~3のいずれかに記載の食感改良材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の食感改良材を加工食品に添加することを含む、食品に肉様の繊維感を付与する方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の食感改良材を加工食品に添加することを含む、食品の製造方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載の食感改良材を含んでなる加工食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工食品に肉のような繊維感を付与するための食感改良材に関する。特に本発明は、植物由来の蛋白材料によって、肉のような繊維感を加工食品に付与する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
加工食品の分野において、大豆蛋白などの植物性蛋白が広く利用されており、近年では、生活習慣病予防などの健康への配慮から、積極的に利用される傾向にある。植物性蛋白は、「植物性たん白の日本農林規格」としてJAS規格に規定されており、植物性蛋白の原材料は、大豆粉、脱脂大豆粉、小麦粉、小麦グルテンなどから選ばれるものとされている。
【0003】
植物性蛋白は、その性状に基づいて、粉末状植物性蛋白、ペースト状植物性蛋白、粒状植物性蛋白、繊維状植物性蛋白などに分類される。中でも、粒状大豆蛋白は、挽肉加工食品に、肉粒感の付与、肉汁の流出抑制、加熱歩留り向上などの目的のため使用されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、大豆蛋白を膨化して得られた組織状蛋白を用いることによって加工食品にジューシー感を付与することが記載されている。また、特許文献2には、粒状大豆蛋白を用いて加工食品に肉のような食感を付与することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-235461号公報
【特許文献2】特開2018-126094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、植物性素材によって挽肉に近い食感を加工食品に付与するため、粒状大豆蛋白が挽肉代替素材として用いられることがある。しかし、粒状大豆蛋白を配合して得られた加工食品は、挽肉の食感とは異なる部分があり、特に、肉の筋線維に由来する繊維感を感じにくいものであった。
【0007】
このような状況に鑑み、本発明の課題は、植物由来の蛋白材料を用いて、食品に肉のような繊維感を付与する技術を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題について鋭意検討したところ、植物性蛋白の非膨化押出成形物を用いることによって、加工食品に肉のような優れた繊維感を付与できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
これに限定されるものではないが、本発明は、下記の発明を包含する。
[1] 植物性蛋白の非膨化押出成形物を含んでなる、肉様の繊維感を加工食品に付与するための食感改良材。
[2] 前記植物性蛋白が、大豆由来の植物蛋白である、[1]に記載の食感改良材。
[3] 前記非膨化押出成形物の水分率が30~80質量%である、[1]または[2]に記載の食感改良材。
[4] 前記非膨化押出成形物が、その大きさが25mm以下となるように解砕されたものである、[1]~[3]のいずれかに記載の食感改良材。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の食感改良材を加工食品に添加することを含む、食品に肉様の繊維感を付与する方法。
[6] [1]~[4]のいずれかに記載の食感改良材を加工食品に添加することを含む、食品の製造方法。
[7] [1]~[4]のいずれかに記載の食感改良材を含んでなる加工食品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、植物由来の蛋白材料によって、肉特有の優れた繊維感を食品に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】大豆蛋白の非膨化押出成形物の内部構造を示す顕微鏡写真である。
【
図2】粒状大豆蛋白の内部構造を示す顕微鏡写真である。
【
図3】実験1で調理したハンバーグの断面写真である(サンプル1-5、比較例)。
【
図4】実験1で調理したハンバーグの断面写真である(サンプル1-9)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、植物性蛋白を原料とした非膨化押出成形物を含む食感改良材を用いることによって、加工食品に肉のような優れた繊維感を付与する。従来、挽肉代替素材として使用されてきた粒状大豆蛋白素材は、膨化されているためスポンジ状の内部構造を有しているのに対し、本発明に係る非膨化押出成形物は、押出成形によって一つの方向に配向した層状構造を有している。このような配向した層状構造によって肉の筋繊維のような食感が実現され、また、肉のようなしっかりとしたかみ応えを実現することができる。
【0013】
本発明に係る非膨化押出成形物は、好ましい態様において水分率が30~80質量%であり、40~75質量%や50~70質量%であってもよい。このような水分率であると、肉のような硬さとかみ応えを実現しやすく、より肉のような繊維感を感じやすい。非膨化押出成形物の水分率は、押出成形する際に水を添加して調整することができ、また、醤油など液体調味料、着色料など含む水溶液などを用いて水分率を調整することもできる。
【0014】
本発明にかかる非膨化押出成形物は、植物性蛋白に、必要に応じて澱粉類や多糖類などを添加して二軸押出機などを用いて、膨化しないように押出すことによって製造することができる。
【0015】
前記非膨化押出成形物は、原料全体の蛋白質含有量が、固形分中の50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上や70質量%以上とすることもできる。蛋白質含有量が少なすぎると、押出成形によって一方向に配向した層状構造を実現しにくくなる場合がある。本発明に用いる植物性蛋白は、大豆、小麦、菜種、エンドウ豆、ソラ豆、ひよこ豆などの植物に由来する蛋白を好適に使用することができ、植物性蛋白は、酵素などによって処理されていてもよい。また、1種類の植物性蛋白を使用してもよいし、複数の植物性蛋白を使用してもよい。大豆由来の蛋白としては、例えば、脱脂大豆粉、含脂大豆粉、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白、豆乳粉末などを原料として使用することができ、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白、脱脂大豆粉が特に好ましい。
【0016】
前記非膨化押出成形物は、澱粉類や多糖類、食用油脂、食物繊維、色素、調味料、香料、乳化剤、有機酸類、塩類、ビタミン類などの副材料を含有していてもよく、これら副材料は、1種のみを単独で用いることもでき、2種以上を使用してもよい。澱粉類としては、例えば、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、コーンスターチ、またこれらの加工澱粉などが挙げられ、多糖類としては、例えば、プルラン、アラビアガム、グアガム、キサンタンガム、ジェランガム、ヘミセルロースなどを挙げることができる。
【0017】
本発明においては、植物性蛋白を膨化させずに押し出すことができれば、公知の押出成形機を制限なく使用することができる。好ましい態様において、本発明に係る非膨化押出成形物は、冷却できるようなダイを有する押出機を用いて成形することができる。例えば、二軸の押出機を使用する場合、バレルの加熱温度はバレル前半部の温度が40~120℃、バレル後半部の温度が140~180℃になるように調整することができ、段階的に昇温することが好ましい。また、圧力は、冷却ダイ直前の圧力が0~50kg/cm2となるように調整することができ、35kg/cm2以下や20kg/cm2以下であることが好ましい。スクリューは、ニーディングディスク、リバースクリューなどを適宜組み合わせて使用することができる。好ましい態様において押出機は、原材料供給口、バレル内をスクリューにおいて原材料を送り、混合、圧縮、温度調整機構を有し、さらに先端バレルに装着されたダイを有する。
【0018】
冷却条件は押出した際に膨化しないような条件を適宜設定すればよいが、冷却ダイから押し出された直後の押出成形物の温度が90℃以下となるように冷却すると好ましく、70℃以下や50℃以下となるように冷却することもできる。冷却ダイは水冷などによって冷却することができ、冷却水の温度、流量などは押出機のサイズや種類、原料処理量などにより適宜調整することができる。また、使用する冷却ダイの大きさに特に制限はなく、流路長や内径は押出機のサイズや種類、原料処理量などにより適宜調整することができる。植物性蛋白を膨化しないよう押出成形することによって、一方向に配向した層状構造が形成され、肉のような繊維感が感じられることになる。
【0019】
非膨化押出成形物は、殺菌などのために加熱してもよく、また、保管などのために冷蔵・冷凍してもよい。植物性蛋白の非膨化押出成形物は、包装容器に収容して保管してもよく、真空包装やガス置換包装などを行うこともできる。包装容器としては、例えば、トレー状、パック状、カップ状、袋状などの形態が挙げられ、紙、樹脂、金属など適宜素材を選択すればよい。また、缶詰や瓶詰にしてもよい。
【0020】
本発明においては、植物性蛋白の非膨化押出成形物を加工食品に含有させることで、肉のような繊維感を食品に付与することができる。本発明によれば、加工食品の食感をより改良することが可能であり、加工食品に含有させることで、肉特有の食感により近い食感を加工食品に付与することができる。したがって、一つの態様において本発明は、加工食品の食感改良材である。本発明に係る食感改良材は、挽肉などの肉を含有する加工食品に使用して肉のような繊維感を増強することもできるし、また、肉を含有しない加工食品に使用して肉のような繊維感を加工食品に付与することもできる。
【0021】
好ましい態様において本発明に係る食感改良材は、植物性蛋白の非膨化押出成形物の解砕物を含む。解砕物は、植物性蛋白の非膨化押出成形物の層状構造をほぐしながら所望の大きさに切断する処理、すなわち解砕処理をすることによって得られる。解砕処理は公知の装置を用いて行うことができ、例えば、フードプロセッサー、サイレントカッター、ミンサー、粉砕機などを用いることができる。解砕処理によって、層状構造を有する非膨化押出成形物の層と層をはがしながら、層と垂直方向に切断することによって、食品の食感を好適に制御することが容易になる。
【0022】
食感改良材の大きさは、本発明の効果が得られれば特に制限はなく、また加工食品の種類に応じて適宜調整することができ、具体的には25mm以下とすることができる。本発明において、解砕物の大きさは、解砕物の最もサイズが大きい部分(長辺)の長さを意味し、スケールを用いて測定することができる。10mmより大きく20mm以下の解砕物が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。解砕物は、所定の目開きの網で篩うことで測定することもできる。大きさが25mm以下とは、目開き25mmの網で篩ったときに網を通過する大きさである。
【0023】
本発明において挽肉(ミンチ)とは、肉を細かく切断したものであり、ウシ、ブタ、トリなどの肉だけでなく、魚介類の肉を原料とするものを包含する。すなわち、本発明における挽肉は、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマなどの哺乳類;ニワトリ、カモなどの鳥類;アジ、イワシ、マグロ、サケ、エビ、カニ、ホタテ、イカ、タコなどの魚介類などの可食性部分を細かく切断したものを意味する。
【0024】
本発明に適した加工食品としては、通常挽肉が使用される加工食品が挙げられる。例えば、ハンバーグ、ミートボール、メンチカツ、つみれ、つくね、そぼろ、フレーク、ナゲット、ハム、ソーセージ、キーマカレーなどが挙げられる。また、本発明に係る食感改良材は、餃子、シュウマイ、春巻き、中華まん、カレーパンなどの中具にも使用することができる。また、これらの加工食品の疑似食品を、挽肉を使わずに調製する場合にも適している。
【0025】
本発明に係る植物性蛋白の非膨化押出成形物を配合した加工食品は、適宜、加熱調理を行って喫食することができる。加熱調理の方法は特に限定されないが、例えば、焼き、炒め、蒸し、油ちょう、電子レンジ調理などを挙げることができる。
【0026】
本発明に係る植物性蛋白の非膨化押出成形物は冷凍耐性を備えており、成形ないし調理後の加工食品を冷凍して保管してもよい。本発明によって得られた加工食品は、喫食の際に肉のような繊維感が感じられ、外観も良好である。
【0027】
一つの態様において、本発明は、植物性蛋白の非膨化押出成形物を配合した加工食品(食品組成物)である。本発明に係る加工食品は、植物性蛋白の非膨化押出成形物を必須成分として少なくとも含有していればよく、動物性素材を含まない加工食品に対して本発明を適用すれば、ビーガンやベジタリアンなどに適した加工食品とすることができる。
【0028】
本発明においては、発明の効果を損ねない範囲内で、水、野菜、果物、海藻類、調味料、香辛料、増粘剤、ゲル化剤、澱粉類、糖質、食物繊維、着色料、香料、その他の植物性・動物性蛋白などを加工食品に配合してよい。野菜としては、例えば、タマネギ、ニンジン、ピーマンなどが挙げられ、調味料としては、例えば、ニンニク、ショウガ、トウガラシ、コショウ、醤油、味噌などが挙げられる。
【0029】
好ましい態様において本発明に係る加工食品は、原材料が混合された加工食品である。ミキサーなどの機械や手によって混合することができるが、本発明に係る植物性蛋白の押出成形物が均一に混ざるよう混合すればよい。さらに、必要に応じて、任意の形状に成形したり、パン粉やバッター液などの衣をつけたり、包餡食品用皮やベーカリー生地などで包んだり、ケーシングに充填したりすることで、目的とする加工食品を製造することもできる。ここで、衣、包餡食品用皮、ベーカリー生地としては、例えば、小麦粉、ソバ粉、トウモロコシ粉などの穀粉類や、澱粉類を用いて調製されたものが挙げられ、ケーシングとしては、例えば、豚、羊、牛などの腸、コラーゲン、プラスチック、セルロースなどのフィルムなどが挙げられる。
【実施例0030】
本発明を具体例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、特に記載しない限り、本明細書において濃度などは質量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0031】
実験1:挽肉無配合のハンバーグの製造と評価
実験1-1
大豆蛋白の非膨化押出成形物として、ベジタリアンブッチャージャパン社のNo chicken chunks(水分率:約68%)を使用した。この非膨化押出成形物をフードプロセッサー(RM-3200VD、FMI)で処理して解砕し、食感改良材を調製した。非膨化押出成形物の内部構造を示す顕微鏡写真を
図1に示すが、押出成形によって一つの方向に配向した層状構造を有していた。
【0032】
本実験においては、処理時間を変化させて、粒度の異なる食感改良材を調製した(食感改良材Dは、食感改良材A、B、Cを混合して調製した)。目視にて選別して確認したところ、10秒間解砕処理をした食感改良材Aは、長辺(最もサイズが大きい部分)が10mmより大きく20mm以下のものが約80質量%、10mm以下のものと、20mmより大きいものが、それぞれ約10質量%含まれていた。食感改良材A~Dの大きさを以下に示す。
【0033】
【0034】
分離大豆蛋白(フレッシュM600、昭和産業)24g、油脂(昭和菜種サラダ油、昭和産業)24g、水92gを、フードプロセッサー(RM-3200VD、FMI)で約20秒間攪拌混合してエマルジョンカードを調製してから、そこに、澱粉(S-600、昭和産業)、炒め玉ねぎ、調味料を下表に示す配合で添加し、動物性素材を含まないハンバーグのベース生地を調製した。なお、オリゴ糖としては、マルミノース(昭和産業)を使用した。
【0035】
【0036】
下表に示す配合で、調製したベース生地に対して、食感改良材を添加し、手ごねで1分間混合してハンバーグ生地を調製した。得られたハンバーグ生地を1個あたり約80gに分割し、楕円形に成形した(10cm×5cm、厚さ:約1cm)。成形後の生地を、スチームコンベクションオーブン(SSC-C06DC、マルゼン)を用いて、180℃にて10分間、蒸し焼きにして、挽肉無配合のハンバーグを得た。
【0037】
得られたハンバーグを真空冷却機で24℃まで冷却し、さらに急速冷凍して、-18℃で1日間冷凍保管した。
冷凍保管したハンバーグを電子レンジで再加熱(500W、1分30秒)し、ハンバーグの外観、繊維感、ほぐれ感、風味を官能評価した。官能評価は、訓練された5名のパネルが合議し、下記の基準に基づいて実施した。
■外観
5(非常に良好):粗挽きの挽肉で調製したハンバーグに非常に近い凹凸のある外観である
4(良好) :粗挽きの挽肉で調製したハンバーグに近い凹凸のある外観である
3(やや良好) :粗挽きの挽肉で調製したハンバーグにやや近い外観である
2(やや悪い) :粗挽きの挽肉で調製したハンバーグとは異なる均一な外観である
1(非常に悪い):粗挽きの挽肉で調製したハンバーグとは全く異なる均一な外観である
■繊維感
5(非常に良好):粗挽きの挽肉で調製したハンバーグと非常に近い食感で、繊維感が強い
4(良好) :粗挽きの挽肉で調製したハンバーグと近い食感で、繊維感がある
3(やや良好) :粗挽きの挽肉で調製したハンバーグとやや近い食感で、繊維感が多少感じられる
2(やや悪い) :粗挽きの挽肉で調製したハンバーグとはやや異なる食感であり、繊維感が弱い
1(非常に悪い):粗挽きの挽肉で調製したハンバーグとは異なる食感であり、繊維感がない
■ほぐれ感
5(非常に良好):粗挽きの挽肉で調製したハンバーグと非常に近いほぐれ感である
4(良好) :粗挽きの挽肉で調製したハンバーグと近いほぐれ感である
3(やや良好) :粗挽きの挽肉で調製したハンバーグとやや近いほぐれ感である
2(やや悪い) :粗挽きの挽肉で調製したハンバーグとはやや異なり、あまりほぐれない
1(非常に悪い):粗挽きの挽肉で調製したハンバーグとは異なり、ほぐれ難い
■風味
5(非常に良好):大豆臭が全く感じられない
4(良好) :大豆臭が感じられない
3(やや良好) :大豆臭が少し感じられる
2(やや悪い) :大豆臭がある
1(非常に悪い):大豆臭が強い
【0038】
【0039】
本発明の食感改良材を用いることによって、良好な繊維感、ほぐれ感を得ることができた。また、外観および風味も良好であった。食感改良材Aと食感改良材Dの評価が特に高く、10mmより大きく20mm以下の解砕物を一定以上含むことが好ましいと考えられた。
【0040】
実験1-2
実験1-1と同様にして調製したベース生地に対して、実験1-1で調製した食感改良材Aを下表の配合に基づいて添加し、手ごねで1分間混合してハンバーグ生地を調製した。本実験においては、食感改良材だけでなく、挽肉代替素材として用いられることもある粒状大豆蛋白(HA-10、昭和産業)も配合してハンバーグ生地を調製した。粒状大豆蛋白は、2倍重量の水を吸水させてから使用した。
図2に、粒状大豆蛋白の内部構造を示す顕微鏡写真を示すが、膨化によって形成された空隙構造を有しているものの、一方向に配向した層状構造は有していない。
【0041】
次いで、実験1-1と同様にして、ハンバーグを調理し、その外観、繊維感、ほぐれ感、風味を評価した。
【0042】
【0043】
上記の表から明らかなように、従来から挽肉代替として使用されている粒状大豆蛋白を混合するのみでは、十分な繊維感やほぐれ感を得ることが困難であった(サンプル1-5)。一方、本発明に係る食感改良材を配合すると、繊維感、ほぐれ感が良好なハンバーグを得ることができた。また、外観や風味についても良好であった。
【0044】
実験2:ハンバーグの製造と評価
本実験においては、挽肉を含むベース生地を使用し、ハンバーグを製造した。具体的には、下表に示す材料をミキサーに入れて2分間混合し、ベース生地を調製した。
【0045】
【0046】
次いで、調製したベース生地に対して、実験1で調製した食感改良材Aまたは粒状大豆蛋白(HA-10、昭和産業)を下表に基づいて添加し、手ごねで1分間混合してハンバーグ生地を調製した。なお、上述のとおり、粒状大豆蛋白は、挽肉代替素材として用いられるものであり、2倍重量の水を吸水させてから使用した。
【0047】
得られたハンバーグ生地を1個あたり約80gに分割し、楕円形に成形した(10cm×5cm、厚さ:約1cm)。成形後の生地を、スチームコンベクションオーブン(SSC-C06DC、マルゼン)を用いて、180℃にて10分間、蒸し焼きにして、ハンバーグを得た。得られたハンバーグを真空冷却機で24℃まで冷却し、さらに急速冷凍して、-18℃で1日間冷凍保管した。
【0048】
冷凍保管したハンバーグを電子レンジで再加熱(500W、1分30秒)し、ハンバーグの外観、繊維感、ほぐれ感、風味を官能評価した。官能評価は、訓練された5名のパネルが合議し、下記の基準に基づいて実施した。外観、繊維感、ほぐれ感は、サンプル2-1を3点として評価点をつけた。
■外観
5(非常に良好):挽肉加工食品よりも、凹凸が強調された外観である
4(良好) :挽肉加工食品よりも、凹凸がやや強調された外観である
3(やや良好) :挽肉加工食品と同等の外観である
2(やや悪い) :挽肉加工食品よりも凹凸がやや小さく、やや均一な外観である
1(非常に悪い):挽肉加工食品よりも凹凸が小さく、均一な外観である
■繊維感
5(非常に良好):挽肉加工食品よりも、繊維感が強調されている
4(良好) :挽肉加工食品よりも、繊維感がやや強調されている
3(やや良好) :挽肉加工食品と同等の繊維感が感じられる
2(やや悪い) :挽肉加工食品よりも、繊維感がやや弱い
1(非常に悪い):挽肉加工食品よりも、繊維感が弱い
■ほぐれ感
5(非常に良好):挽肉加工食品よりも、ほぐれ感が強調されている
4(良好) :挽肉加工食品よりも、ほぐれ感がやや強調されている
3(やや良好) :挽肉加工食品と同等のほぐれ感が感じられる
2(やや悪い) :挽肉加工食品よりも、ややほぐれ難い
1(非常に悪い):挽肉加工食品よりも、ほぐれ難い
■風味
5(非常に良好):大豆臭が全く感じられない
4(良好) :大豆臭が感じられない
3(やや良好) :大豆臭が少し感じられる
2(やや悪い) :大豆臭がある
1(非常に悪い):大豆臭が強い
【0049】
【0050】
本発明の食感改良材を用いることによって、挽肉を含む食品においても、繊維感やほぐれ感がさらに強調され、良好な食感を実現することができた。また、外観も良好なものとなった。
【0051】
実験3:鮭フレークの製造と評価
水、食塩、醤油、みりん、グルタミン酸ナトリウム、酵母エキス、鮭香料、色素を混合し、鮭風味調味液を調製した。調味液と食感改良材とを5分間フライパンで炒め、食感改良材に調味液をなじませた後、下表に示す配合で鮭のほぐし身(鮭の切身を焼いて、約10~20mmにほぐしたもの)と混合し、鮭フレークを調製した。食感改良材A~Cは、実験1と同様にして調製した。
【0052】
鮭フレークの繊維感、風味を官能評価した。官能評価は、訓練された5名のパネルが合議し、下記の基準に基づいて実施した。繊維感は、サンプル3-1を3点として評価した。
■繊維感
5(非常に良好):繊維感が非常に強い
4(良好) :繊維感が強い
3(やや良好) :同等の繊維感である
2(やや悪い) :繊維感がやや弱い
1(非常に悪い):維感が弱い
■風味
5(非常に良好):大豆臭が全く感じられない
4(良好) :大豆臭が感じられない
3(やや良好) :大豆臭が少し感じられる
2(やや悪い) :大豆臭がある
1(非常に悪い):大豆臭が強い
【0053】
【0054】
本発明の食感改良材を用いることによって、フレーク状の食品においても繊維感が強調された、良好な食感を得ることができた。