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特開2022-112655有機エレクトロルミネッセンス素子、及び電子機器
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  • 特開-有機エレクトロルミネッセンス素子、及び電子機器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112655
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20220727BHJP
   C07C 255/51 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
H05B33/22 D
H05B33/14 A
C07C255/51
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008533
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅人
【テーマコード(参考)】
3K107
4H006
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC12
3K107CC33
3K107DD72
3K107DD78
3K107FF15
3K107FF19
4H006AA03
4H006AB90
(57)【要約】
【課題】駆動電圧が低く、横リークを抑制可能な有機EL素子を提供する。
【解決手段】陰極と、陽極と、前記陰極及び前記陽極の間に配置された発光層と、前記陽極と前記発光層との間に配置された正孔輸送帯域と、を有し、前記正孔輸送帯域は、前記陽極側から第1の層と第2の層とをこの順に有し、前記第1の層は、下記式(1)で表される化合物を含み、前記第1の層は、厚さが0.10~3.00nmである、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と、
陽極と、
前記陰極及び前記陽極の間に配置された発光層と、
前記陽極と前記発光層との間に配置された正孔輸送帯域と、
を有し、
前記正孔輸送帯域は、前記陽極側から第1の層と第2の層とをこの順に有し、
前記第1の層は、下記式(1)で表される化合物を含み、
前記第1の層は、厚さが0.10~3.00nmである、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化89】
[式(1)中、
101~X103は、それぞれ独立に、下記式(1A)で表される2価の基である。
【化90】
(式(1A)中、*は、結合位置を表す。
は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の1価の複素環基である。
が2個以上存在する場合、2個以上のRは同一でもよく、異なっていてもよい。)]
【請求項2】
前記第2の層が、第2の化合物を含む請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
陰極と、
陽極と、
前記陰極及び前記陽極の間に配置された発光層と、
前記陽極と前記発光層との間に配置された正孔輸送帯域と、
を有し、
前記正孔輸送帯域は、前記陽極側から第1の層と第2の層とをこの順に有し、
前記第1の層は、第1の化合物を含み、
前記第1の化合物は、
下記式(11)で表される第1の環構造、及び、
下記式(12)で表される第2の環構造
からなる群から選択される1以上を含み、
前記第1の層は、厚さが0.10~3.00nmであり、
前記第2の層は、第2の化合物を含み、
前記第2の化合物は、イオン化ポテンシャルが5.6eV以上のモノアミン化合物である、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化91】
[第1の化合物において、前記式(11)で表される第1の環構造は、前記第1の化合物の分子中で、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素環、及び置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環からなる群から選択される1以上の環構造と縮合する。
式(11)中、
10は、下記式(11a)、(11b)、(11c)、(11d)、(11e)、(11f)、(11g)、(11h)、(11i)、(11j)、(11k)又は(11m)で表される2価の基である。
【化92】
(式(11a)~(11m)中、
11~R14、及びR111~R120は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基Rである。
置換基Rは、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)、
-O-(R904)、
-S-(R905)、
-N(R906)(R907
(ここで、R901~R907は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の1価の複素環基である。R901~R907が2個以上存在する場合、2個以上のR901~R907のそれぞれは同一でもよく、異なっていてもよい。)、
ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、及び
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の1価の複素環基
からなる群から選択される。
置換基Rが2以上存在する場合、2以上の置換基Rは同一でもよく、異なっていてもよい。)
10が2個以上存在する場合、2個以上のX10は同一でもよく、異なっていてもよい。
式(12)中、
~Xは、N、CR15、又は前記第1の化合物の分子中の他の原子と結合する炭素原子である。ただし、X~Xのうち少なくとも1つは、前記第1の化合物の分子中の他の原子と結合する炭素原子である。
~Xが2個以上存在する場合、2個以上のX~Xのそれぞれは同一でもよく、異なっていてもよい。
15は、水素原子又は置換基Rである。
15が2個以上存在する場合、2個以上のR15は同一でもよく、異なっていてもよい。
置換基Rは前記式(11)で定義した通りである。]
【請求項4】
前記第1の層の厚さが、0.10~1.50nmである請求項1~3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記第1の化合物の電子親和力Af1と、前記第2の化合物のイオン化ポテンシャルIp2が、以下の式(A1)を満たす、請求項2~4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
Af1-Ip2≧0.3(eV)・・・(A1)
【請求項6】
前記第1の化合物の電子親和力Af1と、前記第2の化合物のイオン化ポテンシャルIp2が、以下の式(A2)を満たす、請求項2~4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
Af1-Ip2≧0.4(eV)・・・(A2)
【請求項7】
前記第1の化合物の電子親和力Af1と、前記第2の化合物のイオン化ポテンシャルIp2が、以下の式(A3)を満たす、請求項2~4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
Af1-Ip2≧0.5(eV)・・・(A3)
【請求項8】
前記第1の化合物が、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素環、及び
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環
からなる群から選択される第3の環構造に、
下記式(13)で表される構造が2つ又は3つ縮合して形成される化合物である、請求項3~7のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化93】
[式(13)中、
環aは、前記式(11)で表される第1の環構造であり、前記第3の環構造と縮合する。
11及びX12は、それぞれ独立に、N又はCR16である。
16、R17、及びR18は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基Rである。
16、R17、及びR18が2個以上存在する場合、2個以上のR16、R17、及びR18のそれぞれは同一でもよく、異なっていてもよい。
置換基Rは前記式(11)で定義した通りである。]
【請求項9】
前記第1の化合物が、下記式(145)~(148)のいずれかで表される化合物である、請求項3~8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化94】
[式(145)~(148)中、
Ar141、Ar143及びAr144は、それぞれ独立に、
フッ素原子、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、及びシアノ基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する環形成炭素数6~30の芳香族炭化水素環基、又は
フッ素原子、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、及びシアノ基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する環形成原子数5~30の1価の複素環基である。)
【請求項10】
前記第1の化合物が、下記式(122D)で表される化合物である、請求項3~7のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化95】
[式(122D)中、
122~R125は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基Rである。
2個以上のR122~R125のそれぞれは同一でもよく、異なっていてもよい。
Alp1は、置換もしくは無置換の環形成炭素数3~6の脂肪族炭化水素環である。
置換基Rは前記式(11)で定義した通りである。]
【請求項11】
前記第2の化合物が、下記式(21)で表される化合物である、請求項2~10のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化96】
[式(21)中、
201~L203は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~18のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~13の2価の複素環基である。
Ar201~Ar203は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の1価の複素環基、又は
-Si(R’901)(R’902)(R’903)で表される基である。
R’901~R’903は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基である。
R’901~R’903が2個以上存在する場合、2個以上のR’901~R’903のそれぞれは同一でもよく、異なっていてもよい。
置換基Rは、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)、
-O-(R904)、
-S-(R905)、
-N(R906)(R907
(ここで、R901~R907は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の1価の複素環基である。R901~R907が2個以上存在する場合、2個以上のR901~R907のそれぞれは同一でもよく、異なっていてもよい。)、
ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、及び
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の1価の複素環基
からなる群から選択される。
置換基Rが2以上存在する場合、2以上の置換基Rは同一でもよく、異なっていてもよい。)]
【請求項12】
Ar201~Ar203のうち、1以上が下記式(21A)で表される基である、請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化97】
[式(21A)において、*は、結合位置を表す。
211は、CR221222、NR223、O又はSである。
221とR222は、互いに結合して置換もしくは無置換の飽和又は不飽和の環を形成するか、あるいは置換もしくは無置換の飽和又は不飽和の環を形成しない。
210~R214のうちの隣接する2以上のうちの1組以上は、互いに結合して置換もしくは無置換の飽和又は不飽和の環を形成するか、あるいは置換もしくは無置換の飽和又は不飽和の環を形成しない。
223、並びに置換もしくは無置換の飽和又は不飽和の環を形成しないR210~R214、R221及びR222は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基Rである。
p1は、3であり、3つのR210は、同一でもよく、異なっていてもよい。
置換基Rは前記式(21)で定義した通りである。]
【請求項13】
Ar201~Ar203のうち、2以上が前記式(21A)で表される基である、請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
Ar201~Ar203のうち、2以上が前記式(21A)で表される基であり、前記2以上の前記式(21A)で表される基がそれぞれ異なる、請求項12又は13に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
Ar201が前記式(21A)で表される基であり、
201が単結合である、
請求項12~14のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項16】
Ar202が前記式(21A)で表される基であり、
202が単結合である、
請求項12~15のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項17】
Ar203が前記式(21A)で表される基であり、
203が単結合である、
請求項12~16のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項18】
前記式(21A)で表される基が、下記式(22A)で表される基である、請求項12~17のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化98】
[式(22A)において、*は、結合位置を表す。
220~R224及びR231~R240のうちの隣接する2以上のうちの1組以上は、互いに結合して置換もしくは無置換の飽和又は不飽和の環を形成するか、あるいは置換もしくは無置換の飽和又は不飽和の環を形成しない。
置換もしくは無置換の飽和又は不飽和の環を形成しないR220~R224及びR231~R240は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基Rである。
p2は、3であり、3つのR220は、同一でもよく、異なっていてもよい。
置換基Rは、前記式(21)で定義した通りである。]
【請求項19】
前記第2の化合物が、下記式(31)で表される化合物である、請求項2~10のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化99】
[式(31)において、*1及び*2は、結合位置を表す。
301は、CR311312、NR313、O又はSである。
301~R308及びR311~R313のうちの2つは、それぞれ、N原子及びAr301に結合する単結合である。
N原子及びAr301に結合する単結合でないR301~R308及びR311~R313は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基Rである。
302及びL303は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~18のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~13の2価の複素環基である。
Ar301~Ar303は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の1価の複素環基、又は
-Si(R’901)(R’902)(R’903)で表される基である。
R’901~R’903は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基である。
R’901~R’903が2個以上存在する場合、2個以上のR’901~R’903のそれぞれは同一でもよく、異なっていてもよい。
ただし、Ar301~Ar303のうち少なくとも1つは、
置換もしくは無置換の環形成炭素数10~30の縮合アリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数10~50の1価の縮合複素環基である。
置換基Rは、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)、
-O-(R904)、
-S-(R905)、
-N(R906)(R907
(ここで、R901~R907は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の1価の複素環基である。R901~R907が2個以上存在する場合、2個以上のR901~R907のそれぞれは同一でもよく、異なっていてもよい。)、
ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、及び
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の1価の複素環基
からなる群から選択される。
置換基Rが2以上存在する場合、2以上の置換基Rは同一でもよく、異なっていてもよい。)]
【請求項20】
前記正孔輸送帯域が、前記発光層と前記第2の層との間に第3の層を有し、
前記第3の層は、第3の化合物を含み、
前記第2の化合物のイオン化ポテンシャルIp2と、前記第3の化合物のイオン化ポテンシャルIp3が、以下の式(B1)を満たす、請求項2~19のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
Ip2-Ip3≦0.6(eV)・・・(B1)
【請求項21】
前記第2の化合物のイオン化ポテンシャルIp2と、前記第3の化合物のイオン化ポテンシャルIp3が、以下の式(B2)を満たす、請求項20に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
Ip2-Ip3≦0.4(eV)・・・(B2)
【請求項22】
前記第2の化合物のイオン化ポテンシャルIp2と、前記第3の化合物のイオン化ポテンシャルIp3が、以下の式(B3)を満たす、請求項20に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
Ip2-Ip3≦0.2(eV)・・・(B3)
【請求項23】
請求項1~22のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える電子機器。
【請求項24】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子を2つ以上、面上に隣接して有し、
前記第1の層及び第2の層が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子間を横断する共有層である、請求項23に記載の電子機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な有機エレクトロルミネッセンス素子、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう。)に電圧を印加すると、陽極から正孔が、また陰極から電子が、それぞれ発光層に注入される。そして、発光層において、注入された正孔と電子とが再結合し、励起子が形成される。
【0003】
従来の有機EL素子は素子性能が未だ十分ではなかった。素子性能を高めるべく有機EL素子に用いる材料の改良は徐々に進められているが、さらなる高性能化が求められている。
【0004】
素子の性能を高めるために、様々な層構成が検討されており、例えば、特許文献1及び2には、特定のアミン化合物を正孔輸送帯域に含む有機EL素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0203651号明細書
【特許文献2】国際公開2018/164265号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の有機EL素子について、駆動電圧などに未だ改善の余地があった。
本発明の目的は、駆動電圧が低く、横リークを抑制可能な有機EL素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の有機EL素子等が提供される。
陰極と、
陽極と、
前記陰極及び前記陽極の間に配置された発光層と、
前記陽極と前記発光層との間に配置された正孔輸送帯域と、
を有し、
前記正孔輸送帯域は、前記陽極側から第1の層と第2の層とをこの順に有し、
前記第1の層は、下記式(1)で表される化合物を含み、
前記第1の層は、厚さが0.10~3.00nmである、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】
[式(1)中、
101~X103は、それぞれ独立に、下記式(1A)で表される2価の基である。
【化2】
(式(1A)中、*は、結合位置を表す。
は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の1価の複素環基である。
が2個以上存在する場合、2個以上のRは同一でもよく、異なっていてもよい。)]
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、駆動電圧が低く、横リークを抑制可能な有機EL素子が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一態様に係る有機EL素子の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[定義]
本明細書において、水素原子とは、中性子数が異なる同位体、即ち、軽水素(protium)、重水素(deuterium)、及び三重水素(tritium)を包含する。
【0011】
本明細書において、化学構造式中、「R」等の記号や重水素原子を表す「D」が明示されていない結合可能位置には、水素原子、即ち、軽水素原子、重水素原子、又は三重水素原子が結合しているものとする。
【0012】
本明細書において、環形成炭素数とは、原子が環状に結合した構造の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、及び複素環化合物)の当該環自体を構成する原子のうちの炭素原子の数を表す。当該環が置換基によって置換される場合、置換基に含まれる炭素は環形成炭素数には含まない。以下で記される「環形成炭素数」については、別途記載のない限り同様とする。例えば、ベンゼン環は環形成炭素数が6であり、ナフタレン環は環形成炭素数が10であり、ピリジン環は環形成炭素数5であり、フラン環は環形成炭素数4である。また、例えば、9,9-ジフェニルフルオレニル基の環形成炭素数は13であり、9,9’-スピロビフルオレニル基の環形成炭素数は25である。
また、ベンゼン環に置換基として、例えば、アルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、ベンゼン環の環形成炭素数に含めない。そのため、アルキル基が置換しているベンゼン環の環形成炭素数は、6である。また、ナフタレン環に置換基として、例えば、アルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、ナフタレン環の環形成炭素数に含めない。そのため、アルキル基が置換しているナフタレン環の環形成炭素数は、10である。
【0013】
本明細書において、環形成原子数とは、原子が環状に結合した構造(例えば、単環、縮合環、及び環集合)の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、及び複素環化合物)の当該環自体を構成する原子の数を表す。環を構成しない原子(例えば、環を構成する原子の結合を終端する水素原子)や、当該環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。以下で記される「環形成原子数」については、別途記載のない限り同様とする。例えば、ピリジン環の環形成原子数は6であり、キナゾリン環の環形成原子数は10であり、フラン環の環形成原子数は5である。例えば、ピリジン環に結合している水素原子、又は置換基を構成する原子の数は、ピリジン環形成原子数の数に含めない。そのため、水素原子、又は置換基が結合しているピリジン環の環形成原子数は、6である。また、例えば、キナゾリン環の炭素原子に結合している水素原子、又は置換基を構成する原子については、キナゾリン環の環形成原子数の数に含めない。そのため、水素原子、又は置換基が結合しているキナゾリン環の環形成原子数は10である。
【0014】
本明細書において、「置換もしくは無置換の炭素数XX~YYのZZ基」という表現における「炭素数XX~YY」は、ZZ基が無置換である場合の炭素数を表し、置換されている場合の置換基の炭素数を含めない。ここで、「YY」は、「XX」よりも大きく、「XX」は、1以上の整数を意味し、「YY」は、2以上の整数を意味する。
【0015】
本明細書において、「置換もしくは無置換の原子数XX~YYのZZ基」という表現における「原子数XX~YY」は、ZZ基が無置換である場合の原子数を表し、置換されている場合の置換基の原子数を含めない。ここで、「YY」は、「XX」よりも大きく、「XX」は、1以上の整数を意味し、「YY」は、2以上の整数を意味する。
【0016】
本明細書において、無置換のZZ基とは「置換もしくは無置換のZZ基」が「無置換のZZ基」である場合を表し、置換のZZ基とは「置換もしくは無置換のZZ基」が「置換のZZ基」である場合を表す。
本明細書において、「置換もしくは無置換のZZ基」という場合における「無置換」とは、ZZ基における水素原子が置換基と置き換わっていないことを意味する。「無置換のZZ基」における水素原子は、軽水素原子、重水素原子、又は三重水素原子である。
また、本明細書において、「置換もしくは無置換のZZ基」という場合における「置換」とは、ZZ基における1つ以上の水素原子が、置換基と置き換わっていることを意味する。「AA基で置換されたBB基」という場合における「置換」も同様に、BB基における1つ以上の水素原子が、AA基と置き換わっていることを意味する。
【0017】
「本明細書に記載の置換基」
以下、本明細書に記載の置換基について説明する。
【0018】
本明細書に記載の「無置換のアリール基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30、より好ましくは6~18である。
本明細書に記載の「無置換の複素環基」の環形成原子数は、本明細書に別途記載のない限り、5~50であり、好ましくは5~30、より好ましくは5~18である。
本明細書に記載の「無置換のアルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~20、より好ましくは1~6である。
本明細書に記載の「無置換のアルケニル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、2~50であり、好ましくは2~20、より好ましくは2~6である。
本明細書に記載の「無置換のアルキニル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、2~50であり、好ましくは2~20、より好ましくは2~6である。
本明細書に記載の「無置換のシクロアルキル基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、3~50であり、好ましくは3~20、より好ましくは3~6である。
本明細書に記載の「無置換のアリーレン基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30、より好ましくは6~18である。
本明細書に記載の「無置換の2価の複素環基」の環形成原子数は、本明細書に別途記載のない限り、5~50であり、好ましくは5~30、より好ましくは5~18である。
本明細書に記載の「無置換のアルキレン基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~20、より好ましくは1~6である。
【0019】
・「置換もしくは無置換のアリール基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」の具体例(具体例群G1)としては、以下の無置換のアリール基(具体例群G1A)及び置換のアリール基(具体例群G1B)等が挙げられる。(ここで、無置換のアリール基とは「置換もしくは無置換のアリール基」が「無置換のアリール基」である場合を指し、置換のアリール基とは「置換もしくは無置換のアリール基」が「置換のアリール基」である場合を指す。)本明細書において、単に「アリール基」という場合は、「無置換のアリール基」と「置換のアリール基」の両方を含む。
「置換のアリール基」は、「無置換のアリール基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアリール基」としては、例えば、下記具体例群G1Aの「無置換のアリール基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び下記具体例群G1Bの置換のアリール基の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換のアリール基」の例、及び「置換のアリール基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のアリール基」には、下記具体例群G1Bの「置換のアリール基」におけるアリール基自体の炭素原子に結合する水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び下記具体例群G1Bの「置換のアリール基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0020】
・無置換のアリール基(具体例群G1A):
フェニル基、
p-ビフェニル基、
m-ビフェニル基、
o-ビフェニル基、
p-ターフェニル-4-イル基、
p-ターフェニル-3-イル基、
p-ターフェニル-2-イル基、
m-ターフェニル-4-イル基、
m-ターフェニル-3-イル基、
m-ターフェニル-2-イル基、
o-ターフェニル-4-イル基、
o-ターフェニル-3-イル基、
o-ターフェニル-2-イル基、
1-ナフチル基、
2-ナフチル基、
アントリル基、
ベンゾアントリル基、
フェナントリル基、
ベンゾフェナントリル基、
フェナレニル基、
ピレニル基、
クリセニル基、
ベンゾクリセニル基、
トリフェニレニル基、
ベンゾトリフェニレニル基、
テトラセニル基、
ペンタセニル基、
フルオレニル基、
9,9’-スピロビフルオレニル基、
ベンゾフルオレニル基、
ジベンゾフルオレニル基、
フルオランテニル基、
ベンゾフルオランテニル基、
ペリレニル基、及び
下記一般式(TEMP-1)~(TEMP-15)で表される環構造から1つの水素原子を除くことにより誘導される1価のアリール基。
【0021】
【化3】
【0022】
【化4】
【0023】
・置換のアリール基(具体例群G1B):
o-トリル基、
m-トリル基、
p-トリル基、
パラ-キシリル基、
メタ-キシリル基、
オルト-キシリル基、
パラ-イソプロピルフェニル基、
メタ-イソプロピルフェニル基、
オルト-イソプロピルフェニル基、
パラ-t-ブチルフェニル基、
メタ-t-ブチルフェニル基、
オルト-t-ブチルフェニル基、
3,4,5-トリメチルフェニル基、
9,9-ジメチルフルオレニル基、
9,9-ジフェニルフルオレニル基
9,9-ビス(4-メチルフェニル)フルオレニル基、
9,9-ビス(4-イソプロピルフェニル)フルオレニル基、
9,9-ビス(4-t-ブチルフェニル)フルオレニル基、
シアノフェニル基、
トリフェニルシリルフェニル基、
トリメチルシリルフェニル基、
フェニルナフチル基、
ナフチルフェニル基、及び
前記一般式(TEMP-1)~(TEMP-15)で表される環構造から誘導される1価の基の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基。
【0024】
・「置換もしくは無置換の複素環基」
本明細書に記載の「複素環基」は、環形成原子にヘテロ原子を少なくとも1つ含む環状の基である。ヘテロ原子の具体例としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、及びホウ素原子が挙げられる。
本明細書に記載の「複素環基」は、単環の基であるか、又は縮合環の基である。
本明細書に記載の「複素環基」は、芳香族複素環基であるか、又は非芳香族複素環基である。
本明細書に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」の具体例(具体例群G2)としては、以下の無置換の複素環基(具体例群G2A)、及び置換の複素環基(具体例群G2B)等が挙げられる。(ここで、無置換の複素環基とは「置換もしくは無置換の複素環基」が「無置換の複素環基」である場合を指し、置換の複素環基とは「置換もしくは無置換の複素環基」が「置換の複素環基」である場合を指す。)本明細書において、単に「複素環基」という場合は、「無置換の複素環基」と「置換の複素環基」の両方を含む。
「置換の複素環基」は、「無置換の複素環基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換の複素環基」の具体例は、下記具体例群G2Aの「無置換の複素環基」の水素原子が置き換わった基、及び下記具体例群G2Bの置換の複素環基の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換の複素環基」の例や「置換の複素環基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換の複素環基」には、具体例群G2Bの「置換の複素環基」における複素環基自体の環形成原子に結合する水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び具体例群G2Bの「置換の複素環基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0025】
具体例群G2Aは、例えば、以下の窒素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A1)、酸素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A2)、硫黄原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A3)、及び下記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から1つの水素原子を除くことにより誘導される1価の複素環基(具体例群G2A4)を含む。
【0026】
具体例群G2Bは、例えば、以下の窒素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B1)、酸素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B2)、硫黄原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B3)、及び下記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から誘導される1価の複素環基の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基(具体例群G2B4)を含む。
【0027】
・窒素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A1):
ピロリル基、
イミダゾリル基、
ピラゾリル基、
トリアゾリル基、
テトラゾリル基、
オキサゾリル基、
イソオキサゾリル基、
オキサジアゾリル基、
チアゾリル基、
イソチアゾリル基、
チアジアゾリル基、
ピリジル基、
ピリダジニル基、
ピリミジニル基、
ピラジニル基、
トリアジニル基、
インドリル基、
イソインドリル基、
インドリジニル基、
キノリジニル基、
キノリル基、
イソキノリル基、
シンノリル基、
フタラジニル基、
キナゾリニル基、
キノキサリニル基、
ベンゾイミダゾリル基、
インダゾリル基、
フェナントロリニル基、
フェナントリジニル基、
アクリジニル基、
フェナジニル基、
カルバゾリル基、
ベンゾカルバゾリル基、
モルホリノ基、
フェノキサジニル基、
フェノチアジニル基、
アザカルバゾリル基、及びジアザカルバゾリル基。
【0028】
・酸素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A2):
フリル基、
オキサゾリル基、
イソオキサゾリル基、
オキサジアゾリル基、
キサンテニル基、
ベンゾフラニル基、
イソベンゾフラニル基、
ジベンゾフラニル基、
ナフトベンゾフラニル基、
ベンゾオキサゾリル基、
ベンゾイソキサゾリル基、
フェノキサジニル基、
モルホリノ基、
ジナフトフラニル基、
アザジベンゾフラニル基、
ジアザジベンゾフラニル基、
アザナフトベンゾフラニル基、及び
ジアザナフトベンゾフラニル基。
【0029】
・硫黄原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A3):
チエニル基、
チアゾリル基、
イソチアゾリル基、
チアジアゾリル基、
ベンゾチオフェニル基(ベンゾチエニル基)、
イソベンゾチオフェニル基(イソベンゾチエニル基)、
ジベンゾチオフェニル基(ジベンゾチエニル基)、
ナフトベンゾチオフェニル基(ナフトベンゾチエニル基)、
ベンゾチアゾリル基、
ベンゾイソチアゾリル基、
フェノチアジニル基、
ジナフトチオフェニル基(ジナフトチエニル基)、
アザジベンゾチオフェニル基(アザジベンゾチエニル基)、
ジアザジベンゾチオフェニル基(ジアザジベンゾチエニル基)、
アザナフトベンゾチオフェニル基(アザナフトベンゾチエニル基)、及び
ジアザナフトベンゾチオフェニル基(ジアザナフトベンゾチエニル基)。
【0030】
・下記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から1つの水素原子を除くことにより誘導される1価の複素環基(具体例群G2A4):
【0031】
【化5】
【0032】
【化6】
【0033】
前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)において、X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、NH、又はCHである。ただし、X及びYのうち少なくとも1つは、酸素原子、硫黄原子、又はNHである。
前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)において、X及びYの少なくともいずれかがNH、又はCHである場合、前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から誘導される1価の複素環基には、これらNH、又はCHから1つの水素原子を除いて得られる1価の基が含まれる。
【0034】
・窒素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B1):
(9-フェニル)カルバゾリル基、
(9-ビフェニリル)カルバゾリル基、
(9-フェニル)フェニルカルバゾリル基、
(9-ナフチル)カルバゾリル基、
ジフェニルカルバゾール-9-イル基、
フェニルカルバゾール-9-イル基、
メチルベンゾイミダゾリル基、
エチルベンゾイミダゾリル基、
フェニルトリアジニル基、
ビフェニリルトリアジニル基、
ジフェニルトリアジニル基、
フェニルキナゾリニル基、及び
ビフェニリルキナゾリニル基。
【0035】
・酸素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B2):
フェニルジベンゾフラニル基、
メチルジベンゾフラニル基、
t-ブチルジベンゾフラニル基、及び
スピロ[9H-キサンテン-9,9’-[9H]フルオレン]の1価の残基。
【0036】
・硫黄原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B3):
フェニルジベンゾチオフェニル基、
メチルジベンゾチオフェニル基、
t-ブチルジベンゾチオフェニル基、及び
スピロ[9H-チオキサンテン-9,9’-[9H]フルオレン]の1価の残基。
【0037】
・前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から誘導される1価の複素環基の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基(具体例群G2B4):
【0038】
前記「1価の複素環基の1つ以上の水素原子」とは、該1価の複素環基の環形成炭素原子に結合している水素原子、XA及びYAの少なくともいずれかがNHである場合の窒素原子に結合している水素原子、及びXA及びYAの一方がCH2である場合のメチレン基の水素原子から選ばれる1つ以上の水素原子を意味する。
【0039】
・「置換もしくは無置換のアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」の具体例(具体例群G3)としては、以下の無置換のアルキル基(具体例群G3A)及び置換のアルキル基(具体例群G3B)が挙げられる。(ここで、無置換のアルキル基とは「置換もしくは無置換のアルキル基」が「無置換のアルキル基」である場合を指し、置換のアルキル基とは「置換もしくは無置換のアルキル基」が「置換のアルキル基」である場合を指す。)以下、単に「アルキル基」という場合は、「無置換のアルキル基」と「置換のアルキル基」の両方を含む。
「置換のアルキル基」は、「無置換のアルキル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアルキル基」の具体例としては、下記の「無置換のアルキル基」(具体例群G3A)における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び置換のアルキル基(具体例群G3B)の例等が挙げられる。本明細書において、「無置換のアルキル基」におけるアルキル基は、鎖状のアルキル基を意味する。そのため、「無置換のアルキル基」は、直鎖である「無置換のアルキル基」、及び分岐状である「無置換のアルキル基」が含まれる。尚、ここに列挙した「無置換のアルキル基」の例や「置換のアルキル基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のアルキル基」には、具体例群G3Bの「置換のアルキル基」におけるアルキル基自体の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び具体例群G3Bの「置換のアルキル基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0040】
・無置換のアルキル基(具体例群G3A):
メチル基、
エチル基、
n-プロピル基、
イソプロピル基、
n-ブチル基、
イソブチル基、
s-ブチル基、及び
t-ブチル基。
【0041】
・置換のアルキル基(具体例群G3B):
ヘプタフルオロプロピル基(異性体を含む)、
ペンタフルオロエチル基、
2,2,2-トリフルオロエチル基、及び
トリフルオロメチル基。
【0042】
・「置換もしくは無置換のアルケニル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルケニル基」の具体例(具体例群G4)としては、以下の無置換のアルケニル基(具体例群G4A)、及び置換のアルケニル基(具体例群G4B)等が挙げられる。(ここで、無置換のアルケニル基とは「置換もしくは無置換のアルケニル基」が「無置換のアルケニル基」である場合を指し、「置換のアルケニル基」とは「置換もしくは無置換のアルケニル基」が「置換のアルケニル基」である場合を指す。)本明細書において、単に「アルケニル基」という場合は、「無置換のアルケニル基」と「置換のアルケニル基」の両方を含む。
「置換のアルケニル基」は、「無置換のアルケニル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアルケニル基」の具体例としては、下記の「無置換のアルケニル基」(具体例群G4A)が置換基を有する基、及び置換のアルケニル基(具体例群G4B)の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換のアルケニル基」の例や「置換のアルケニル基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のアルケニル基」には、具体例群G4Bの「置換のアルケニル基」におけるアルケニル基自体の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び具体例群G4Bの「置換のアルケニル基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0043】
・無置換のアルケニル基(具体例群G4A):
ビニル基、
アリル基、
1-ブテニル基、
2-ブテニル基、及び
3-ブテニル基。
【0044】
・置換のアルケニル基(具体例群G4B):
1,3-ブタンジエニル基、
1-メチルビニル基、
1-メチルアリル基、
1,1-ジメチルアリル基、
2-メチルアリル基、及び
1,2-ジメチルアリル基。
【0045】
・「置換もしくは無置換のアルキニル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキニル基」の具体例(具体例群G5)としては、以下の無置換のアルキニル基(具体例群G5A)等が挙げられる。(ここで、無置換のアルキニル基とは、「置換もしくは無置換のアルキニル基」が「無置換のアルキニル基」である場合を指す。)以下、単に「アルキニル基」という場合は、「無置換のアルキニル基」と「置換のアルキニル基」の両方を含む。
「置換のアルキニル基」は、「無置換のアルキニル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアルキニル基」の具体例としては、下記の「無置換のアルキニル基」(具体例群G5A)における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基等が挙げられる。
【0046】
・無置換のアルキニル基(具体例群G5A):
エチニル基
【0047】
・「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」の具体例(具体例群G6)としては、以下の無置換のシクロアルキル基(具体例群G6A)、及び置換のシクロアルキル基(具体例群G6B)等が挙げられる。(ここで、無置換のシクロアルキル基とは「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」が「無置換のシクロアルキル基」である場合を指し、置換のシクロアルキル基とは「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」が「置換のシクロアルキル基」である場合を指す。)本明細書において、単に「シクロアルキル基」という場合は、「無置換のシクロアルキル基」と「置換のシクロアルキル基」の両方を含む。
「置換のシクロアルキル基」は、「無置換のシクロアルキル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のシクロアルキル基」の具体例としては、下記の「無置換のシクロアルキル基」(具体例群G6A)における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び置換のシクロアルキル基(具体例群G6B)の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換のシクロアルキル基」の例や「置換のシクロアルキル基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のシクロアルキル基」には、具体例群G6Bの「置換のシクロアルキル基」におけるシクロアルキル基自体の炭素原子に結合する1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び具体例群G6Bの「置換のシクロアルキル基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0048】
・無置換のシクロアルキル基(具体例群G6A):
シクロプロピル基、
シクロブチル基、
シクロペンチル基、
シクロヘキシル基、
1-アダマンチル基、
2-アダマンチル基、
1-ノルボルニル基、及び
2-ノルボルニル基。
【0049】
・置換のシクロアルキル基(具体例群G6B):
4-メチルシクロヘキシル基。
【0050】
・「-Si(R901)(R902)(R903)で表される基」
本明細書に記載の-Si(R901)(R902)(R903)で表される基の具体例(具体例群G7)としては、
-Si(G1)(G1)(G1)、
-Si(G1)(G2)(G2)、
-Si(G1)(G1)(G2)、
-Si(G2)(G2)(G2)、
-Si(G3)(G3)(G3)、及び
-Si(G6)(G6)(G6)
が挙げられる。ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
-Si(G1)(G1)(G1)における複数のG1は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G1)(G2)(G2)における複数のG2は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G1)(G1)(G2)における複数のG1は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G2)(G2)(G2)における複数のG2は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G3)(G3)(G3)における複数のG3は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G6)(G6)(G6)における複数のG6は、互いに同一であるか、又は異なる。
【0051】
・「-O-(R904)で表される基」
本明細書に記載の-O-(R904)で表される基の具体例(具体例群G8)としては、
-O(G1)、
-O(G2)、
-O(G3)、及び
-O(G6)
が挙げられる。
ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
【0052】
・「-S-(R905)で表される基」
本明細書に記載の-S-(R905)で表される基の具体例(具体例群G9)としては、
-S(G1)、
-S(G2)、
-S(G3)、及び
-S(G6)
が挙げられる。
ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
【0053】
・「-N(R906)(R907)で表される基」
本明細書に記載の-N(R906)(R907)で表される基の具体例(具体例群G10)としては、
-N(G1)(G1)、
-N(G2)(G2)、
-N(G1)(G2)、
-N(G3)(G3)、及び
-N(G6)(G6)
が挙げられる。
ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
-N(G1)(G1)における複数のG1は、互いに同一であるか、又は異なる。
-N(G2)(G2)における複数のG2は、互いに同一であるか、又は異なる。
-N(G3)(G3)における複数のG3は、互いに同一であるか、又は異なる。
-N(G6)(G6)における複数のG6は、互いに同一であるか、又は異なる
【0054】
・「ハロゲン原子」
本明細書に記載の「ハロゲン原子」の具体例(具体例群G11)としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0055】
・「置換もしくは無置換のフルオロアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のフルオロアルキル基」は、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している少なくとも1つの水素原子がフッ素原子と置き換わった基を意味し、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している全ての水素原子がフッ素原子で置き換わった基(パーフルオロ基)も含む。「無置換のフルオロアルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。「置換のフルオロアルキル基」は、「フルオロアルキル基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。尚、本明細書に記載の「置換のフルオロアルキル基」には、「置換のフルオロアルキル基」におけるアルキル鎖の炭素原子に結合する1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び「置換のフルオロアルキル基」における置換基の1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。「無置換のフルオロアルキル基」の具体例としては、前記「アルキル基」(具体例群G3)における1つ以上の水素原子がフッ素原子と置き換わった基の例等が挙げられる。
【0056】
・「置換もしくは無置換のハロアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のハロアルキル基」は、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子と置き換わった基を意味し、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している全ての水素原子がハロゲン原子で置き換わった基も含む。「無置換のハロアルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。「置換のハロアルキル基」は、「ハロアルキル基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。尚、本明細書に記載の「置換のハロアルキル基」には、「置換のハロアルキル基」におけるアルキル鎖の炭素原子に結合する1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び「置換のハロアルキル基」における置換基の1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。「無置換のハロアルキル基」の具体例としては、前記「アルキル基」(具体例群G3)における1つ以上の水素原子がハロゲン原子と置き換わった基の例等が挙げられる。ハロアルキル基をハロゲン化アルキル基と称する場合がある。
【0057】
・「置換もしくは無置換のアルコキシ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルコキシ基」の具体例としては、-O(G3)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。「無置換のアルコキシ基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。
【0058】
・「置換もしくは無置換のアルキルチオ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキルチオ基」の具体例としては、-S(G3)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。「無置換のアルキルチオ基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。
【0059】
・「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」の具体例としては、-O(G1)で表される基であり、ここで、G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。「無置換のアリールオキシ基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18である。
【0060】
・「置換もしくは無置換のアリールチオ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリールチオ基」の具体例としては、-S(G1)で表される基であり、ここで、G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。「無置換のアリールチオ基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18である。
【0061】
・「置換もしくは無置換のトリアルキルシリル基」
本明細書に記載の「トリアルキルシリル基」の具体例としては、-Si(G3)(G3)(G3)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。-Si(G3)(G3)(G3)における複数のG3は、互いに同一であるか、又は異なる。「トリアルキルシリル基」の各アルキル基の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~20であり、より好ましくは1~6である。
【0062】
・「置換もしくは無置換のアラルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアラルキル基」の具体例としては、-(G3)-(G1)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」であり、G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。従って、「アラルキル基」は、「アルキル基」の水素原子が置換基としての「アリール基」と置き換わった基であり、「置換のアルキル基」の一態様である。「無置換のアラルキル基」は、「無置換のアリール基」が置換した「無置換のアルキル基」であり、「無置換のアラルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、7~50であり、好ましくは7~30であり、より好ましくは7~18である。
「置換もしくは無置換のアラルキル基」の具体例としては、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルイソプロピル基、2-フェニルイソプロピル基、フェニル-t-ブチル基、α-ナフチルメチル基、1-α-ナフチルエチル基、2-α-ナフチルエチル基、1-α-ナフチルイソプロピル基、2-α-ナフチルイソプロピル基、β-ナフチルメチル基、1-β-ナフチルエチル基、2-β-ナフチルエチル基、1-β-ナフチルイソプロピル基、及び2-β-ナフチルイソプロピル基等が挙げられる。
【0063】
本明細書に記載の置換もしくは無置換のアリール基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくはフェニル基、p-ビフェニル基、m-ビフェニル基、o-ビフェニル基、p-ターフェニル-4-イル基、p-ターフェニル-3-イル基、p-ターフェニル-2-イル基、m-ターフェニル-4-イル基、m-ターフェニル-3-イル基、m-ターフェニル-2-イル基、o-ターフェニル-4-イル基、o-ターフェニル-3-イル基、o-ターフェニル-2-イル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、9,9’-スピロビフルオレニル基、9,9-ジメチルフルオレニル基、及び9,9-ジフェニルフルオレニル基等である。
【0064】
本明細書に記載の置換もしくは無置換の複素環基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくはピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、ベンゾイミダゾリル基、フェナントロリニル基、カルバゾリル基(1-カルバゾリル基、2-カルバゾリル基、3-カルバゾリル基、4-カルバゾリル基、又は9-カルバゾリル基)、ベンゾカルバゾリル基、アザカルバゾリル基、ジアザカルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ナフトベンゾフラニル基、アザジベンゾフラニル基、ジアザジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ナフトベンゾチオフェニル基、アザジベンゾチオフェニル基、ジアザジベンゾチオフェニル基、(9-フェニル)カルバゾリル基((9-フェニル)カルバゾール-1-イル基、(9-フェニル)カルバゾール-2-イル基、(9-フェニル)カルバゾール-3-イル基、又は(9-フェニル)カルバゾール-4-イル基)、(9-ビフェニリル)カルバゾリル基、(9-フェニル)フェニルカルバゾリル基、ジフェニルカルバゾール-9-イル基、フェニルカルバゾール-9-イル基、フェニルトリアジニル基、ビフェニリルトリアジニル基、ジフェニルトリアジニル基、フェニルジベンゾフラニル基、及びフェニルジベンゾチオフェニル基等である。
【0065】
本明細書において、カルバゾリル基は、本明細書に別途記載のない限り、具体的には以下のいずれかの基である。
【0066】
【化7】
【0067】
本明細書において、(9-フェニル)カルバゾリル基は、本明細書に別途記載のない限り、具体的には以下のいずれかの基である。
【0068】
【化8】
【0069】
前記一般式(TEMP-Cz1)~(TEMP-Cz9)中、*は、結合部位を表す。
【0070】
本明細書において、ジベンゾフラニル基、及びジベンゾチオフェニル基は、本明細書に別途記載のない限り、具体的には以下のいずれかの基である。
【0071】
【化9】
【0072】
前記一般式(TEMP-34)~(TEMP-41)中、*は、結合部位を表す。
【0073】
本明細書に記載の置換もしくは無置換のアルキル基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及びt-ブチル基等である。
【0074】
・「置換もしくは無置換のアリーレン基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリーレン基」は、別途記載のない限り、上記「置換もしくは無置換のアリール基」からアリール環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基である。「置換もしくは無置換のアリーレン基」の具体例(具体例群G12)としては、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」からアリール環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基等が挙げられる。
【0075】
・「置換もしくは無置換の2価の複素環基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換の2価の複素環基」は、別途記載のない限り、上記「置換もしくは無置換の複素環基」から複素環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基である。「置換もしくは無置換の2価の複素環基」の具体例(具体例群G13)としては、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」から複素環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基等が挙げられる。
【0076】
・「置換もしくは無置換のアルキレン基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキレン基」は、別途記載のない限り、上記「置換もしくは無置換のアルキル基」からアルキル鎖上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基である。「置換もしくは無置換のアルキレン基」の具体例(具体例群G14)としては、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」からアルキル鎖上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基等が挙げられる。
【0077】
本明細書に記載の置換もしくは無置換のアリーレン基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは下記一般式(TEMP-42)~(TEMP-68)のいずれかの基である。
【0078】
【化10】
【0079】
【化11】
【0080】
前記一般式(TEMP-42)~(TEMP-52)中、Q~Q10は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
前記一般式(TEMP-42)~(TEMP-52)中、*は、結合部位を表す。
【0081】
【化12】
【0082】
前記一般式(TEMP-53)~(TEMP-62)中、Q~Q10は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
式Q及びQ10は、単結合を介して互いに結合して環を形成してもよい。
前記一般式(TEMP-53)~(TEMP-62)中、*は、結合部位を表す。
【0083】
【化13】
【0084】
前記一般式(TEMP-63)~(TEMP-68)中、Q~Qは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
前記一般式(TEMP-63)~(TEMP-68)中、*は、結合部位を表す。
【0085】
本明細書に記載の置換もしくは無置換の2価の複素環基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは下記一般式(TEMP-69)~(TEMP-102)のいずれかの基である。
【0086】
【化14】
【0087】
【化15】
【0088】
【化16】
【0089】
前記一般式(TEMP-69)~(TEMP-82)中、Q~Qは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
【0090】
【化17】
【0091】
【化18】
【0092】
【化19】
【0093】
【化20】
【0094】
前記一般式(TEMP-83)~(TEMP-102)中、Q~Qは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
【0095】
以上が、「本明細書に記載の置換基」についての説明である。
【0096】
・「結合して環を形成する場合」
本明細書において、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は互いに結合せず」という場合は、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合と、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合と、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合しない」場合と、を意味する。
本明細書における、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合、及び「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合(以下、これらの場合をまとめて「結合して環を形成する場合」と称する場合がある。)について、以下、説明する。母骨格がアントラセン環である下記一般式(TEMP-103)で表されるアントラセン化合物の場合を例として説明する。
【0097】
【化21】
【0098】
例えば、R921~R930のうちの「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、環を形成する」場合において、1組となる隣接する2つからなる組とは、R921とR922との組、R922とR923との組、R923とR924との組、R924とR930との組、R930とR925との組、R925とR926との組、R926とR927との組、R927とR928との組、R928とR929との組、並びにR929とR921との組である。
【0099】
上記「1組以上」とは、上記隣接する2つ以上からなる組の2組以上が同時に環を形成してもよいことを意味する。例えば、R921とR922とが互いに結合して環Qを形成し、同時にR925とR926とが互いに結合して環Qを形成した場合は、前記一般式(TEMP-103)で表されるアントラセン化合物は、下記一般式(TEMP-104)で表される。
【0100】
【化22】
【0101】
「隣接する2つ以上からなる組」が環を形成する場合とは、前述の例のように隣接する「2つ」からなる組が結合する場合だけではなく、隣接する「3つ以上」からなる組が結合する場合も含む。例えば、R921とR922とが互いに結合して環Qを形成し、かつ、R922とR923とが互いに結合して環Qを形成し、互いに隣接する3つ(R921、R922及びR923)からなる組が互いに結合して環を形成して、アントラセン母骨格に縮合する場合を意味し、この場合、前記一般式(TEMP-103)で表されるアントラセン化合物は、下記一般式(TEMP-105)で表される。下記一般式(TEMP-105)において、環Q及び環Qは、R922を共有する。
【0102】
【化23】
【0103】
形成される「単環」、又は「縮合環」は、形成された環のみの構造として、飽和の環であっても不飽和の環であってもよい。「隣接する2つからなる組の1組」が「単環」、又は「縮合環」を形成する場合であっても、当該「単環」、又は「縮合環」は、飽和の環、又は不飽和の環を形成することができる。例えば、前記一般式(TEMP-104)において形成された環Q及び環Qは、それぞれ、「単環」又は「縮合環」である。また、前記一般式(TEMP-105)において形成された環Q、及び環Qは、「縮合環」である。前記一般式(TEMP-105)の環Qと環Qとは、環Qと環Qとが縮合することによって縮合環となっている。前記一般式(TMEP-104)の環Qがベンゼン環であれば、環Qは、単環である。前記一般式(TMEP-104)の環Qがナフタレン環であれば、環Qは、縮合環である。
【0104】
「不飽和の環」には、芳香族炭化水素環、芳香族複素環の他、環構造中に不飽和結合、即ち、二重結合及び/又は三重結合を有する脂肪族炭化水素環(例えば、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン等)、及び不飽和結合を有する非芳香族複素環(例えば、ジヒドロピラン、イミダゾリン、ピラゾリン、キノリジン、インドリン、イソインドリン等)が含まれる。「飽和の環」には、不飽和結合を有しない脂肪族炭化水素環、又は不飽和結合を有しない非芳香族複素環が含まれる。
芳香族炭化水素環の具体例としては、具体例群G1において具体例として挙げられた基が水素原子によって終端された構造が挙げられる。
芳香族複素環の具体例としては、具体例群G2において具体例として挙げられた芳香族複素環基が水素原子によって終端された構造が挙げられる。
脂肪族炭化水素環の具体例としては、具体例群G6において具体例として挙げられた基が水素原子によって終端された構造が挙げられる。
「環を形成する」とは、母骨格の複数の原子のみ、あるいは母骨格の複数の原子とさらに1以上の任意の原子で環を形成することを意味する。例えば、前記一般式(TEMP-104)に示す、R921とR922とが互いに結合して形成された環Qは、R921が結合するアントラセン骨格の炭素原子と、R922が結合するアントラセン骨格の炭素原子と、1以上の任意の原子とで形成する環を意味する。具体例としては、R921とR922とで環Qを形成する場合において、R921が結合するアントラセン骨格の炭素原子と、R922とが結合するアントラセン骨格の炭素原子と、4つの炭素原子とで単環の不飽和の環を形成する場合、R921とR922とで形成する環は、ベンゼン環である。
【0105】
ここで、「任意の原子」は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは、炭素原子、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子である。任意の原子において(例えば、炭素原子、又は窒素原子の場合)、環を形成しない結合は、水素原子等で終端されてもよいし、後述する「任意の置換基」で置換されてもよい。炭素原子以外の任意の原子を含む場合、形成される環は複素環である。
単環または縮合環を構成する「1以上の任意の原子」は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは2個以上15個以下であり、より好ましくは3個以上12個以下であり、さらに好ましくは3個以上5個以下である。
本明細書に別途記載のない限り、「単環」、及び「縮合環」のうち、好ましくは「単環」である。
本明細書に別途記載のない限り、「飽和の環」、及び「不飽和の環」のうち、好ましくは「不飽和の環」である。
本明細書に別途記載のない限り、「単環」は、好ましくはベンゼン環である。
本明細書に別途記載のない限り、「不飽和の環」は、好ましくはベンゼン環である。
「隣接する2つ以上からなる組の1組以上」が、「互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合、又は「互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは、隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、母骨格の複数の原子と、1個以上15個以下の炭素原子、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子とからなる置換もしくは無置換の「不飽和の環」を形成する。
【0106】
上記の「単環」、又は「縮合環」が置換基を有する場合の置換基は、例えば後述する「任意の置換基」である。上記の「単環」、又は「縮合環」が置換基を有する場合の置換基の具体例は、上述した「本明細書に記載の置換基」の項で説明した置換基である。
上記の「飽和の環」、又は「不飽和の環」が置換基を有する場合の置換基は、例えば後述する「任意の置換基」である。上記の「単環」、又は「縮合環」が置換基を有する場合の置換基の具体例は、上述した「本明細書に記載の置換基」の項で説明した置換基である。
以上が、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合、及び「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合(「結合して環を形成する場合」)についての説明である。
【0107】
・「置換もしくは無置換の」という場合の置換基
本明細書における一実施形態においては、前記「置換もしくは無置換の」という場合の置換基(本明細書において、「任意の置換基」と呼ぶことがある。)は、例えば、
無置換の炭素数1~50のアルキル基、
無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)、
-O-(R904)、
-S-(R905)、
-N(R906)(R907)、
ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、
無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、及び
無置換の環形成原子数5~50の複素環基
からなる群から選択される基等であり、
ここで、R901~R907は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。
901が2個以上存在する場合、2個以上のR901は、互いに同一であるか、又は異なり、
902が2個以上存在する場合、2個以上のR902は、互いに同一であるか、又は異なり、
903が2個以上存在する場合、2個以上のR903は、互いに同一であるか、又は異なり、
904が2個以上存在する場合、2個以上のR904は、互いに同一であるか、又は異なり、
905が2個以上存在する場合、2個以上のR905は、互いに同一であるか、又は異なり、
906が2個以上存在する場合、2個以上のR906は、互いに同一であるか、又は異なり、
907が2個以上存在する場合、2個以上のR907は、互いに同一であるか又は異なる。
【0108】
一実施形態においては、前記「置換もしくは無置換の」という場合の置換基は、
炭素数1~50のアルキル基、
環形成炭素数6~50のアリール基、及び
環形成原子数5~50の複素環基
からなる群から選択される基である。
【0109】
一実施形態においては、前記「置換もしくは無置換の」という場合の置換基は、
炭素数1~18のアルキル基、
環形成炭素数6~18のアリール基、及び
環形成原子数5~18の複素環基
からなる群から選択される基である。
【0110】
上記任意の置換基の各基の具体例は、上述した「本明細書に記載の置換基」の項で説明した置換基の具体例である。
【0111】
本明細書において別途記載のない限り、隣接する任意の置換基同士で、「飽和の環」、又は「不飽和の環」を形成してもよく、好ましくは、置換もしくは無置換の飽和の5員環、置換もしくは無置換の飽和の6員環、置換もしくは無置換の不飽和の5員環、又は置換もしくは無置換の不飽和の6員環を形成し、より好ましくは、ベンゼン環を形成する。
本明細書において別途記載のない限り、任意の置換基は、さらに置換基を有してもよい。任意の置換基がさらに有する置換基としては、上記任意の置換基と同様である。
【0112】
本明細書において、「AA~BB」を用いて表される数値範囲は、「AA~BB」の前に記載される数値AAを下限値とし、「AA~BB」の後に記載される数値BBを上限値として含む範囲を意味する。
【0113】
[第1の有機エレクトロルミネッセンス素子]
【0114】
本発明の一態様に係る第1の有機EL素子は、陰極と、陽極と、前記陰極及び前記陽極の間に配置された発光層と、前記陽極と前記発光層との間に配置された正孔輸送帯域と、を有し、前記正孔輸送帯域は、前記陽極側から第1の層と第2の層とをこの順に有し、前記第1の層は、下記式(1)で表される化合物を含み、前記第1の層は、厚さが0.10~3.00nmである。
【0115】
従来の有機EL素子では、電子供与性(ドナー性)の化合物をマトリックス材料として、電子吸引性(アクセプター性)の化合物をドープすることで正孔注入性を確保し、駆動電圧を低下させることが一般的であった。しかしながら、駆動電圧の低下は、アクセプター性の化合物のドープ量を増加させて陽極からの正孔注入を確保することで可能であるが、ドープ量の増加によってシート抵抗が低下し、横リークが発生しやすくなるという問題があった。
本発明の一態様に係る第1の有機EL素子は、上記構成を有することにより、従来ドープしていたアクセプター性の化合物を単独で含む薄膜又は島状の膜を正孔注入層として、陽極から正孔輸送層への正孔注入性を十分に確保し、低電圧で素子を駆動し、また、電子注入層において、層平面方向への電流の横リークを抑制することが可能である。
【0116】
本発明の一態様に係る第1の有機EL素子は、前記第2の層が、第2の化合物を含む。
[第2の有機エレクトロルミネッセンス素子]
【0117】
本発明の一態様に係る第2の有機EL素子は、陰極と、陽極と、前記陰極及び前記陽極の間に配置された発光層と、前記陽極と前記発光層との間に配置された正孔輸送帯域と、を有し、前記正孔輸送帯域は、前記陽極側から第1の層と第2の層とをこの順に有し、前記第1の層は、第1の化合物を含み、前記第1の化合物は、下記式(11)で表される第1の環構造、及び、下記式(12)で表される第2の環構造からなる群から選択される1以上を含み、前記第1の層は、厚さが0.10~3.00nmであり、前記第2の層は、第2の化合物を含み、前記第2の化合物は、イオン化ポテンシャルが5.6eV以上のモノアミン化合物である。
【0118】
電子阻止層への正孔注入性を増加させ、素子の性能を高めるために、正孔輸送層に使用する材料として、イオン化ポテンシャルが深い材料が期待されていた。しかしながら、正孔注入層にイオン化ポテンシャルが深い材料を使用すると、陽極からの正孔注入が困難となり、素子の駆動電圧が上昇するという問題があった。
本発明の一態様に係る第2の有機EL素子は、上記構成を有することにより、従来ドープしていたアクセプター性の化合物を単独で含む薄膜又は島状の膜を正孔注入層として、陽極から正孔輸送層への正孔注入性を十分に確保するとともに、正孔輸送層にイオン化ポテンシャルが深い材料を使用することで電子阻止層への正孔注入性を増加させることで、低電圧で素子を駆動し、また、正孔注入層において、層平面方向への電流の横リークを抑制することが可能である。
以下、本発明の一態様に係る有機EL素子の各構成について説明する。
【0119】
(正孔輸送帯域)
正孔輸送帯域とは、陽極と発光層の間に配置された1又は2以上の層の総称である。正孔輸送帯域は、例えば、発光層側から、電子阻止層、正孔輸送層及び正孔注入層と呼ばれる各層から構成され、これら全てを含む積層構造であってもよいし、これらのうち一部のみの層構成であってもよい。また、上記各層のそれぞれについて、2種以上の層を用いてもよく、例えば、組成の異なる2種の正孔輸送層を積層してもよい。
各層は、1種の材料のみを用いて形成してもよいし、2種以上の材料を併用して形成してもよい。
【0120】
本発明の一態様における正孔輸送帯域の積層構造を以下に例示する。
(a)(陽極/)第1の層(正孔注入層)/第2の層(正孔輸送層)(/発光層)
(b)(陽極/)第1の層(正孔注入層)/第2の層(正孔輸送層)/第3の層(電子阻止層)(/発光層)
(c)(陽極/)第1の層(正孔注入層)/第2の層(第1の正孔輸送層)/第4の層(第2の正孔輸送層)/第3の層(電子阻止層)(/発光層)
(d)(陽極/)第1の層(第1の正孔注入層)/第2の層(第1の正孔輸送層)/第4の層(第2の正孔輸送層)/第5の層(第2の正孔注入層)/第3の層(電子阻止層)(/発光層)
【0121】
第1の層の厚さは、好ましくは0.10nm以上、より好ましくは0.30nm以上である。
第1の層の厚さは、好ましくは3.00nm以下、より好ましくは1.50nm以下、さらに好ましくは0.9nm以下、特に好ましくは0.5nm以下である。
【0122】
本発明の一態様に係る有機EL素子は、前記第1の層の厚さが、0.10~1.50nmである。
【0123】
以下、各化合物の詳細について説明する。
【0124】
(式(1)で表される化合物)
式(1)で表される化合物は以下の通りである。
【化24】
[式(1)中、
101~X103は、それぞれ独立に、下記式(1A)で表される2価の基である。
【化25】
(式(1A)中、*は、結合位置を表す。
は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の1価の複素環基である。
が2個以上存在する場合、2個以上のRは同一でもよく、異なっていてもよい。)]
【0125】
一実施形態において、前記式(1)で表される化合物は、下記式(1-1)で表される化合物である。
【化26】
[式(1-1)中、Rは、式(1)で定義した通りである。]
【0126】
一実施形態において、前記式(1A)における「置換もしくは無置換の」という場合における置換基は、
炭素数1~50のアルキル基、
炭素数1~50のハロアルキル基、
炭素数2~50のアルケニル基、
炭素数2~50のアルキニル基、
環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
炭素数1~50のアルコキシ基、
炭素数1~50のアルキルチオ基、
環形成炭素数6~50のアリールオキシ基、
環形成炭素数6~50のアリールチオ基、
炭素数7~50のアラルキル基、
-Si(R41)(R42)(R43)、
-C(=O)R44、-COOR45
-S(=O)46
-P(=O)(R47)(R48)、
-Ge(R49)(R50)(R51)、
-N(R52)(R53)(ここで、R41~R53は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~50のアルキル基、環形成炭素数6~50のアリール基、又は環形成原子数5~50の1価の複素環基である。R41~R53が2以上存在する場合、2以上のR41~R53のそれぞれは同一でもよく、異なっていてもよい。)、
ヒドロキシ基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
環形成炭素数6~50のアリール基、及び
環形成原子数5~50の1価の複素環基からなる群から選択される。
【0127】
一実施形態において、前記式(1A)における「置換もしくは無置換の」という場合における置換基は、
炭素数1~18のハロアルキル基、
ハロゲン原子、及び
シアノ基からなる群から選択される。
【0128】
一実施形態において、前記式(1A)におけるRは、
ペルフルオロピリジン-4-イル基、
テトラフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)基、
4-シアノペルフルオロフェニル基、
ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル基、及び
ペルフルオロフェニル基
からなる群から選択される。
【0129】
一実施形態において、前記式(1)で表される化合物は、(2E,2’E,2”E)-2,2’,2”-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(ペルフルオロフェニル)-アセトニトリル)、(2E,2’E,2”E)-2,2’,2”-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(ペルフルオロピリジン-4-イル)-アセトニトリル)、(2E,2’E,2”E)-2,2’,2”-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(4-シアノペルフルオロフェニル)-アセトニトリル)、(2E,2’E,2”E)-2,2’,2”-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-アセトニトリル)、および、(2E,2’E,2”E)-2,2’,2”-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(2,6-ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-アセトニトリル)からなる群から選択される。
【0130】
式(1)で表される化合物は、目的物に合わせた既知の代替反応や原料を用いることで合成することができる。
【0131】
以下に、式(1)で表される化合物の具体例を記載するが、これらは例示に過ぎず、式(1)で表される化合物は下記具体例に限定されるものではない。
【0132】
【化27】
【0133】
(第1の化合物)
第1の化合物は、下記式(11)で表される第1の環構造、及び下記式(12)で表される第2の環構造からなる群から選択される1以上を含む。
【化28】
[第1の化合物において、前記式(11)で表される第1の環構造は、前記第1の化合物の分子中で、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素環、及び置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環からなる群から選択される1以上の環構造と縮合する。
式(11)中、
10は、下記式(11a)、(11b)、(11c)、(11d)、(11e)、(11f)、(11g)、(11h)、(11i)、(11j)、(11k)又は(11m)で表される2価の基である。
【化29】
(式(11a)~(11m)中、
11~R14、及びR111~R120は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基Rである。
置換基Rは、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)、
-O-(R904)、
-S-(R905)、
-N(R906)(R907
(ここで、R901~R907は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の1価の複素環基である。R901~R907が2個以上存在する場合、2個以上のR901~R907のそれぞれは同一でもよく、異なっていてもよい。)、
ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、及び
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の1価の複素環基
からなる群から選択される。
置換基Rが2以上存在する場合、2以上の置換基Rは同一でもよく、異なっていてもよい。)
10が2個以上存在する場合、2個以上のX10は同一でもよく、異なっていてもよい。
式(12)中、
~Xは、N、CR15、又は前記第1の化合物の分子中の他の原子と結合する炭素原子である。ただし、X~Xのうち少なくとも1つは、前記第1の化合物の分子中の他の原子と結合する炭素原子である。
~Xが2個以上存在する場合、2個以上のX~Xのそれぞれは同一でもよく、異なっていてもよい。
15は、水素原子又は置換基Rである。
15が2個以上存在する場合、2個以上のR15は同一でもよく、異なっていてもよい。
置換基Rは前記式(11)で定義した通りである。]
【0134】
一実施形態において、前記第1の化合物は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素環、及び
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環
からなる群から選択される第3の環構造に、
下記式(13)で表される構造が2つ又は3つ縮合して形成される化合物である。
【化30】
[式(13)中、
環aは、前記式(11)で表される第1の環構造であり、前記第3の環構造と縮合する。
11及びX12は、それぞれ独立に、N又はCR16である。
16、R17、及びR18は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基Rである。
16、R17、及びR18が2個以上存在する場合、2個以上のR16、R17、及びR18のそれぞれは同一でもよく、異なっていてもよい。
置換基Rは前記式(11)で定義した通りである。]
【0135】
一実施形態において、前記式(13)におけるR17及びR18の少なくとも1つは、
フッ素原子、
フルオロアルキル基、
フルオロアルコキシ基、又は
シアノ基である。
【0136】
一実施形態において、前記第1の化合物は、下記式(14)又は(15)で表される化合物である。
【化31】
[式(14)及び(15)中、
環Ar1は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環である。
環a1、環a2、及び環a3は、それぞれ独立に、前記式(11)で表される第1の環構造である。
13~X18は、それぞれ独立に、N又はCR147である。
141~R147は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基Rである。
147が2個以上存在する場合、2個以上のR147は同一でもよく、異なっていてもよい。
置換基Rは前記式(11)で定義した通りである。]
【0137】
一実施形態において、前記第1の化合物は、下記式(14A)又は(15A)で表される化合物である。
【化32】
[式(14A)及び(15A)中、
環a1、環a2、環a3、X13~X18、及びR141~R146は、前記式(14)及び(15)で定義した通りである。
式(14A)中、
11及びZ12は、それぞれ独立に、N又はCHである。]
【0138】
一実施形態において、前記式(11)で表される第1の環構造は、下記式(11A)で表される環構造である。
【化33】
【0139】
一実施形態において、前記第1の化合物は、下記式(141)~(144)及び(151)のいずれかで表される化合物である。
【化34】
[式(141)~(144)及び(151)中、
141、R143、R144、及びR146は、それぞれ独立に、
フッ素原子、
フルオロアルキル基、
フルオロアルコキシ基、又は
シアノ基である。]
【0140】
一実施形態において、前記第1の化合物は、前記式(143)で表される化合物である。
【0141】
一実施形態において、前記第1の化合物は、下記式(145)~(148)のいずれかで表される化合物である。
【化35】
[式(145)~(148)中、
Ar141、Ar143及びAr144は、それぞれ独立に、
フッ素原子、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、及びシアノ基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する環形成炭素数6~30の芳香族炭化水素環基、又は
フッ素原子、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、及びシアノ基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する環形成原子数5~30の1価の複素環基である。)
【0142】
一実施形態において、前記第1の化合物は、下記式(1451)で表される化合物である。
【化36】
[式(1451)中、
1451~R1460は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、又はシアノ基である。
ただし、R1451~R1460のうち少なくとも1つは、フッ素原子、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、又はシアノ基である。]
【0143】
一実施形態において、前記第1の化合物は、下記式(1461)で表される化合物である。
【化37】
[式(1461)中、
1461~R1470は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、又はシアノ基である。
ただし、R1461~R1470のうち少なくとも1つ以上は、フッ素原子、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、又はシアノ基である。]
【0144】
一実施形態において、前記第1の化合物は、下記式(16)又は(17)で表される化合物である。
【化38】
[式(16)及び(17)中、
環a1及び環a2は、前記式(11)で表される第1の環構造である。
13~X16、及びR141~R144は、前記式(13)で定義した通りである。
環b1は、下記式(171)で表される環構造である。
【化39】
(式(171)中、X19は、O又はSである。)]
【0145】
一実施形態において、前記式(16)又は(17)におけるR141~R144のうち少なくとも1つが、
フッ素原子、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、シアノ基、フッ素原子、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、及びシアノ基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する環形成炭素数6~30の芳香族炭化水素環基、又は
フッ素原子、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基及びシアノ基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する環形成原子数5~30の1価の複素環基である
【0146】
一実施形態において、前記式(12)で表される第2の環構造は、下記式(121)又は(122)で表される環構造である。
【化40】
[式(121)及び(122)中、*は、それぞれ独立に、前記第1の化合物の分子中の他の原子との結合位置を示す。
式(121)中、
及びXは、前記式(12)で定義した通りである。
式(122)中、
122~R125は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基Rである。
置換基Rは前記式(11)で定義した通りである。]
【0147】
一実施形態において、前記第1の化合物は、下記式(121A)で表される化合物である。
【化41】
[式(121A)中、X及びXは、前記式(12)で定義した通りである。
環Ar2は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環である。]
【0148】
一実施形態において、前記式(12)で表される第2の環構造は、下記式(122B)で表される環構造である。
【化42】
[式(122B)中、*は、前記第1の化合物の分子中の他の原子との結合位置を示す。
122~R125は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基Rである。
置換基Rは前記式(11)で定義した通りである。]
【0149】
一実施形態において、前記第1の化合物は、下記式(122C)で表される化合物である。
【化43】
[式(122C)中、
122~R125は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基Rである。
環Alp1は、置換もしくは無置換の環形成炭素数3~6の脂肪族炭化水素環である。
置換基Rは前記式(11)で定義した通りである。]
【0150】
一実施形態において、前記第1の化合物は、下記式(122D)で表される化合物である。
【化44】
[式(122D)中、
122~R125は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基Rである。
2個以上のR122~R125のそれぞれは同一でもよく、異なっていてもよい。
Alp1は、置換もしくは無置換の環形成炭素数3~6の脂肪族炭化水素環である。
置換基Rは前記式(11)で定義した通りである。]
【0151】
一実施形態において、前記第1の化合物は、下記式(122E)で表される化合物である。
【化45】
[式(122E)中、
nxは、1~4の整数である。
E1、XE2及びXE3は、それぞれ独立に、下記式(E1)、(E2)、(E3)又は(E4)で表される2価の基である。XE2が2個以上存在する場合、2個以上のXE2は同一でもよく、異なっていてもよい。
【化46】
(式(E1)、(E2)、(E3)及び(E4)中、
1221、X1222及びX1223は、それぞれ独立して、O、又は下記式(E1A)で表される2価の基である。
【化47】
1221~R1224は、それぞれ独立に、
水素原子、
ハロゲン原子、
シアノ基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の1価の複素環基である。
1225は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基である。
1226は、置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の1価の複素環基である。)]
【0152】
第1の化合物は、目的物に合わせた既知の代替反応や原料を用いることで合成することができる。
【0153】
以下に、第1の化合物の具体例を記載するが、これらは例示に過ぎず、第1の化合物は下記具体例に限定されるものではない。また、前記式(1)で表される化合物の具体例も、第1の化合物の具体例として挙げられる。
【0154】
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
【化52】
【化53】
【化54】
【化55】
【化56】
【化57】
【化58】
【化59】
【化60】
【化61】
【化62】
【化63】
【化64】
【化65】
【0155】
(第2の化合物)
一実施形態において、第2の化合物は、イオン化ポテンシャルが5.6eV以上のモノアミン化合物である。
イオン化ポテンシャル(Ip)は、大気下で、光電子分光装置(理研計器株式会社製、「AC-3」)を用いて測定した。具体的には、材料に光を照射し、その際に電荷分離によって生じる光電子数を測定する。
【0156】
一実施形態において、前記第1の化合物の電子親和力Af1と、前記第2の化合物のイオン化ポテンシャルIp2は、以下の式(A1)を満たす。
Af1-Ip2≧0.3(eV)・・・(A1)
【0157】
電子親和力(Af)は、以下の式により算出した。
Af=-1.19×(Ere-Efc)-4.78eV
ここで、
Ere:第一還元電位(DPV,Negative scan)
Efc:フェロセンの第一酸化電位(DPV,Positive scan),(ca.+0.55V vs Ag/AgCl)
酸化還元電位は、電気化学アナライザー(ALS社製:CHI630B)を用いて微分パルスボルタンメトリー(DPV)法で測定した。
溶媒としてN,N-dimethylformamide(DMF)を用い、サンプル濃度は1.0mmol/Lとした。支持電解質はtetrabuthylammmonium hexafluorophosphate(TBHP)(100mmol/L)を用いた。作用電極、対抗電極としては、それぞれglassy carbon,Ptを用いた。
(参考文献)M. E. Thompson,et.al.,Organic Electronics,6(2005),p.11-20,Organic Electronics,10(2009),p.515-520
【0158】
一実施形態において、前記第1の化合物の電子親和力Af1と、前記第2の化合物のイオン化ポテンシャルIp2は、以下の式(A2)を満たす。
Af1-Ip2≧0.4(eV)・・・(A2)
【0159】
一実施形態において、前記第1の化合物の電子親和力Af1と、前記第2の化合物のイオン化ポテンシャルIp2は、以下の式(A3)を満たす。
Af1-Ip2≧0.5(eV)・・・(A3)
【0160】
一実施形態において、前記第2の化合物は、下記式(21)で表される化合物である。
【化66】
[式(21)中、
201~L203は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~18のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~13の2価の複素環基である。
Ar201~Ar203は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の1価の複素環基、又は
-Si(R’901)(R’902)(R’902)で表される基である。
R’901~R’903は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基である。
R’901~R’903が2個以上存在する場合、2個以上のR’901~R’903のそれぞれは同一でもよく、異なっていてもよい。
置換基Rは、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)、
-O-(R904)、
-S-(R905)、
-N(R906)(R907
(ここで、R901~R907は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の1価の複素環基である。R901~R907が2個以上存在する場合、2個以上のR901~R907のそれぞれは同一でもよく、異なっていてもよい。)、
ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、及び
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の1価の複素環基
からなる群から選択される。
置換基Rが2以上存在する場合、2以上の置換基Rは同一でもよく、異なっていてもよい。)]
【0161】
一実施形態において、Ar201~Ar203のうち、1以上は下記式(21A)で表される基である。
【化67】
[式(21A)において、*は、結合位置を表す。
211は、CR221222、NR223、O又はSである。
221とR222は、互いに結合して置換もしくは無置換の飽和又は不飽和の環を形成するか、あるいは置換もしくは無置換の飽和又は不飽和の環を形成しない。
210~R214のうちの隣接する2以上のうちの1組以上は、互いに結合して置換もしくは無置換の飽和又は不飽和の環を形成するか、あるいは置換もしくは無置換の飽和又は不飽和の環を形成しない。
223、並びに置換もしくは無置換の飽和又は不飽和の環を形成しないR210~R214、R221及びR222は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基Rである。
p1は、3であり、3つのR210は、同一でもよく、異なっていてもよい。
置換基Rは前記式(21)で定義した通りである。]
【0162】
一実施形態において、Ar201~Ar203のうち、2以上は前記式(21A)で表される基である。
【0163】
一実施形態において、Ar201~Ar203のうち、2以上は前記式(21A)で表される基であり、前記2以上の前記式(21A)で表される基はそれぞれ異なる。
【0164】
一実施形態において、Ar201は前記式(21A)で表される基であり、
201は単結合である。
【0165】
一実施形態において、Ar202は前記式(21A)で表される基であり、
202は単結合である。
【0166】
一実施形態において、Ar203は前記式(21A)で表される基であり、
203は単結合である。
【0167】
一実施形態において、前記式(21A)で表される基は、下記式(22A)で表される基である。
【化68】
[式(22A)において、*は、結合位置を表す。
220~R224及びR231~R240のうちの隣接する2以上のうちの1組以上は、互いに結合して置換もしくは無置換の飽和又は不飽和の環を形成するか、あるいは置換もしくは無置換の飽和又は不飽和の環を形成しない。
置換もしくは無置換の飽和又は不飽和の環を形成しないR220~R224及びR231~R240は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基Rである。
p2は、3であり、3つのR220は、同一でもよく、異なっていてもよい。
置換基Rは前記式(21)で定義した通りである。]
【0168】
一実施形態において、前記第2の化合物は、下記式(31)で表される化合物である。
【化69】
[式(31)において、*1及び*2は、結合位置を表す。
301は、CR311312、NR313、O又はSである。
301~R308及びR311~R313のうちの2つは、それぞれ、N原子及びAr301に結合する単結合である。
N原子及びAr301に結合する単結合でないR301~R308及びR311~R313は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基Rである。
302及びL303は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~18のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~13の2価の複素環基である。
Ar301~Ar303は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の1価の複素環基、又は
-Si(R’901)(R’902)(R’902)で表される基である。
R’901~R’903は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基である。
R’901~R’903が2個以上存在する場合、2個以上のR’901~R’903のそれぞれは同一でもよく、異なっていてもよい。
ただし、Ar301~Ar303のうち少なくとも1つは、
置換もしくは無置換の環形成炭素数10~30の縮合アリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数10~50の1価の縮合複素環基である。
置換基Rは、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)、
-O-(R904)、
-S-(R905)、
-N(R906)(R907
(ここで、R901~R907は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の1価の複素環基である。R901~R907が2個以上存在する場合、2個以上のR901~R907のそれぞれは同一でもよく、異なっていてもよい。)、
ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、及び
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の1価の複素環基
からなる群から選択される。
置換基Rが2以上存在する場合、2以上の置換基Rは同一でもよく、異なっていてもよい。)]
【0169】
第2の化合物は、目的物に合わせた既知の代替反応や原料を用いることで合成することができる。
【0170】
以下に、第2の化合物の具体例を記載するが、これらは例示に過ぎず、第2の化合物は下記具体例に限定されるものではない。
【0171】
【化70】
【化71】
【化72】
【化73】
【化74】
【化75】
【化76】
【化77】
【化78】
【化79】
【化80】
【化81】
【化82】
【化83】
【化84】
【化85】
【化86】
【0172】
(正孔輸送帯域の他の構成)
正孔輸送帯域において第3の層(電子阻止層)を設ける場合について説明する。電子阻止層とは、発光層から正孔輸送層へ電子が漏出することを阻止する機能を有する層である。
【0173】
一実施形態において、前記正孔輸送帯域は、前記発光層と前記第2の層との間に第3の層を有し、
前記第3の層は、第3の化合物を含み、
前記第2の化合物のイオン化ポテンシャルIp2と、前記第3の化合物のイオン化ポテンシャルIp3は、以下の式(B1)を満たす。
Ip2-Ip3≦0.6(eV)・・・(B1)
【0174】
一実施形態において、前記第2の化合物のイオン化ポテンシャルIp2と、前記第3の化合物のイオン化ポテンシャルIp3は、以下の式(B2)を満たす。
Ip2-Ip3≦0.4(eV)・・・(B2)
【0175】
一実施形態において、前記第2の化合物のイオン化ポテンシャルIp2と、前記第3の化合物のイオン化ポテンシャルIp3は、以下の式(B3)を満たす。
Ip2-Ip3≦0.2(eV)・・・(B3)
【0176】
第3の化合物としては、第2の化合物の具体例として挙げた化合物を用いることができるが、発光層から正孔輸送層へ電子が漏出することを阻止するために、第2の化合物として前記第2の層に含まれる化合物よりも、イオン化ポテンシャルが深い化合物を用いる。
【0177】
正孔輸送帯域に用いることができる上記以外の材料としては、特に正孔輸送層として、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、アントラセン誘導体等を使用する事ができる。ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもできる。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。尚、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が2層以上積層したものとしてもよい。
(有機EL素子の他の構成)
本発明の一態様に係る有機EL素子は、正孔輸送帯域が上述した条件を満たす限り、本発明の効果を損なわない限りにおいて、従来公知の材料及び素子構成を適用することができる。
以下、本発明の一態様にかかる有機EL素子の素子構成や各層を構成する材料等について説明する。
【0178】
当該有機EL素子の代表的な素子構成としては、基板上に、以下の構造を積層した構造が例示される。
(1)陽極/正孔輸送帯域/発光層/陰極
(2)陽極/正孔輸送帯域/発光層/電子輸送帯域/陰極
(「/」は各層が隣接して積層されていることを示す。)
【0179】
電子輸送帯域は、通常、電子注入層及び電子輸送層から選択される1以上の層からなる。以下、有機EL素子の各層について説明する。
【0180】
(基板)
基板は、発光素子の支持体として用いられる。基板としては、例えば、ガラス、石英、プラスチック等を用いることができる。また、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、折り曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルからなるプラスチック基板等が挙げられる。
【0181】
(陽極)
基板上に形成される陽極には、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物等を用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム-酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム-酸化スズ、酸化インジウム-酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化亜鉛を含有した酸化インジウム、及びグラフェン等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、又は金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0182】
(発光層のゲスト(ドーパント)材料)
発光層は、発光性の高い物質を含む層であり、種々の材料を用いることができる。例えば、発光性の高い物質としては、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。蛍光性化合物は一重項励起状態から発光可能な化合物であり、燐光性化合物は三重項励起状態から発光可能な化合物である。
発光層に用いることができる青色系の蛍光発光材料として、ピレン誘導体、スチリルアミン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、フルオレン誘導体、ジアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体等が使用できる。発光層に用いることができる緑色系の蛍光発光材料として、芳香族アミン誘導体等を使用できる。発光層に用いることができる赤色系の蛍光発光材料として、テトラセン誘導体、ジアミン誘導体等が使用できる。
発光層に用いることができる青色系の燐光発光材料として、イリジウム錯体、オスミウム錯体、白金錯体等の金属錯体が使用される。発光層に用いることができる緑色系の燐光発光材料としてイリジウム錯体等が使用される。発光層に用いることができる赤色系の燐光発光材料として、イリジウム錯体、白金錯体、テルビウム錯体、ユーロピウム錯体等の金属錯体が使用される。
【0183】
(発光層のホスト材料)
発光層としては、上述した発光性の高い物質(ゲスト材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成としてもよい。発光性の高い物質を分散させるための物質としては、各種のものを用いることができ、発光性の高い物質よりも最低空軌道準位(LUMO準位)が高く、最高被占有軌道準位(HOMO準位)が低い物質を用いることが好ましい。
発光性の高い物質を分散させるための物質(ホスト材料)としては、1)アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、若しくは亜鉛錯体等の金属錯体、2)オキサジアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、若しくはフェナントロリン誘導体等の複素環化合物、3)カルバゾール誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、若しくはクリセン誘導体等の縮合芳香族化合物、4)トリアリールアミン誘導体、若しくは縮合多環芳香族アミン誘導体等の芳香族アミン化合物が使用される。
また、ホスト材料として遅延蛍光性(熱活性化遅延蛍光性)の化合物を用いることもできる。発光層が、上記で説明した本発明で用いる材料と、遅延蛍光性のホスト化合物と、を含むことも好ましい。
【0184】
(正孔阻止層、励起子阻止層)
発光層に隣接して、正孔阻止層、励起子(トリプレット)阻止層等を設けてもよい。正孔阻止層とは、発光層から電子輸送層へ正孔が漏出することを阻止する機能を有する層である。励起子阻止層は、発光層で生成した励起子が隣接する層へ拡散することを阻止し、励起子を発光層内に閉じ込める機能を有する層である。
【0185】
(電子輸送層)
電子輸送層は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送層には、1)アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、亜鉛錯体等の金属錯体、2)イミダゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、アジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントロリン誘導体等の複素芳香族化合物、3)高分子化合物を使用することができる。
【0186】
(電子注入層)
電子注入層は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層には、リチウム(Li)、イッテルビウム(Yb)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、8-ヒドロキシキノリノラト-リチウム(Liq)等の金属錯体化合物、リチウム酸化物(LiO)等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はそれらの化合物を用いることができる。
【0187】
(陰極)
陰極には、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物等を用いることが好ましい。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の第1族又は第2族に属する元素、即ち、リチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、及びマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、及びこれらを含む合金(例えば、MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属及びこれらを含む合金等が挙げられる。
【0188】
本発明の一態様に係る有機EL素子において、各層の膜厚は特に制限されないが、一般にピンホール等の欠陥を抑制し、印加電圧を低く抑え、発光効率をよくするため、通常は数nmから1μmの範囲が好ましい。
【0189】
本発明の一態様に係る有機EL素子において、各層の形成方法は特に限定されない。従来公知の真空蒸着法、スピンコーティング法等による形成方法を用いることができる。発光層等の各層は、真空蒸着法、分子線蒸着法(MBE法)あるいは溶媒に溶かした溶液のディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法等の塗布法による公知の方法で形成することができる。
【0190】
[電子機器]
本発明の第1の態様に係る電子機器は、本発明の第1の態様に係る有機EL素子を備える。
本発明の第2の態様に係る電子機器は、本発明の第2の態様に係る有機EL素子を備える。
【0191】
本発明の一態様に係る電子機器は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を2つ以上、面上に隣接して有し、
前記第1の層及び第2の層は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子間を横断する共有層である。
【0192】
有機エレクトロルミネッセンス素子間を横断する共有層とした場合であっても、前記第1の層及び第2の層を用いることで、面上に隣接する2つ以上の有機エレクトロルミネッセンス素子間の横リークを抑制することができる。
【0193】
電子機器の具体例としては、有機ELパネルモジュール等の表示部品、テレビ、携帯電話、又はパーソナルコンピュータ等の表示装置、及び、照明、又は車両用灯具等の発光装置等が挙げられる。
【実施例0194】
以下、本発明に係る実施例を説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。
【0195】
<化合物>
実施例1~6及び比較例1~8の有機EL素子、並びに実施例7~10及び比較例9~11のシート抵抗測定用素子の製造に用いた、式(1)で表される化合物(又は、第1の化合物)を以下に示す。
【化87】
【0196】
実施例1~6及び比較例1~8の有機EL素子、並びに実施例7~10及び比較例9~11のシート抵抗測定用素子の製造に用いた、他の化合物の構造を以下に示す。
【化88】
【0197】
<有機EL素子の作製>
有機EL素子を以下のように作製した。
【0198】
(実施例1)
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極(陽極)付きガラス基板(ジオマティック株式会社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。ITOの膜厚は、130nmとした。
洗浄後の透明電極付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極が形成されている側の面上に透明電極を覆うようにして化合物HAを蒸着し、膜厚1nmの正孔注入層を成膜した。
正孔注入層上に、化合物HTを蒸着し、膜厚80nmの第1正孔輸送層を成膜した。
第1正孔輸送層上に、化合物EBL-1を蒸着し、膜厚10nmの第2正孔輸送層を成膜した。
第2正孔輸送層上に化合物BH(ホスト材料)及び化合物BD(ドーパント材料)を、化合物BDの割合が4質量%となるように共蒸着し、膜厚25nmの発光層を成膜した。
発光層上に、化合物HBLを蒸着し、膜厚5nmの第1電子輸送層を形成した。
第1電子輸送層上に、化合物ET及び8-ヒドロキシキノリノラト-リチウム(Liq)を、Liqの割合が50質量%となるように共蒸着し、膜厚20nmの第2電子輸送層を形成した。
第2電子輸送層上に、フッ化リチウム(LiF)を蒸着し、膜厚1nmの電子注入層を形成した。
そして、この電子注入層上に、金属アルミニウム(Al)を蒸着し、膜厚50nmの陰極を形成した。
【0199】
実施例1の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次の通りである。
ITO(130)/HA(1)/HT(80)/EBL(10)/BH:BD(25:4%)/HBL(5)/ET:Liq(20:50%)/LiF(1)/Al(50)
括弧内の数字は膜厚(単位:nm)を表す。また、括弧内においてパーセント表示された数字は、当該層における後者の化合物の割合(質量%)を示す。
【0200】
(比較例1)
正孔注入層の形成において、化合物HT及び化合物HAを、化合物HAの割合が3質量%となるように共蒸着し、膜厚10nmの正孔注入層を成膜したこと以外は実施例1と同じ方法で有機EL素子を製造した。
【0201】
比較例1の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次の通りである。
ITO(130)/HT:HA(10:3%)/HT(80)/EBL(10)/BH:BD(25:4%)/HBL(5)/ET:Liq(20:50%)/LiF(1)/Al(50)
括弧内の数字は膜厚(単位:nm)を表す。また、括弧内においてパーセント表示された数字は、当該層における後者の化合物の割合(質量%)を示す。
<有機EL素子の評価>
作製した有機EL素子について以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0202】
・駆動電圧
有機EL素子の初期特性を、室温下、DC(直流)定電流10mA/cm駆動で測定した。
・外部量子効率
電流密度が10mA/cmとなるように有機EL素子に電圧を印加し、EL発光スペクトルを分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタ株式会社製)にて計測した。得られた分光放射輝度スペクトルから、外部量子効率EQE(%)を算出した。
・素子寿命
得られた有機EL素子について、室温下、電流密度が50mA/cmとなるように有機EL素子に電圧を印加し、初期輝度に対して輝度が95%となるまでの時間(LT95(単位:h))を測定した。
・電圧上昇
得られた有機EL素子について、室温下、電流密度が50mA/cmとなるように有機EL素子に電圧を印加し、一定電流(50mA/cm)を流すために必要な電圧の変化を記録した。電流印加後、初期輝度に対して輝度が97%となるまでの間の電圧上昇(単位:V/h)を算出した。
【0203】
【表1】
【0204】
表1において括弧内の数字は膜厚(単位:nm)を表す。また、括弧内においてパーセント表示された数字は、当該層における後者の化合物の割合(質量%)を示す。
【0205】
(実施例2)
第1正孔輸送層の形成において、実施例1の化合物EBL-1をEBL-2に置き換えたこと以外は実施例1と同じ方法で有機EL素子を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0206】
(比較例2)
第1正孔輸送層の形成において、比較例1の化合物EBL-1をEBL-2に置き換えたこと以外は比較例1と同じ方法で有機EL素子を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0207】
【表2】
【0208】
表2において括弧内の数字は膜厚(単位:nm)を表す。また、括弧内においてパーセント表示された数字は、当該層における後者の化合物の割合(質量%)を示す。
【0209】
<有機EL素子の作製>
有機EL素子を以下のように作製した。
(実施例3)
第1正孔輸送層の形成において、膜厚3nmの正孔注入層を成膜したこと以外は実施例1と同じ方法で有機EL素子を製造した。
【0210】
(実施例4)
実施例1と同じ方法で有機EL素子を製造した。
【0211】
(実施例5)
第1正孔輸送層の形成において、膜厚0.75nmの正孔注入層を成膜したこと以外は実施例1と同じ方法で有機EL素子を製造した。
【0212】
(実施例6)
第1正孔輸送層の形成において、膜厚0.50nmの正孔注入層を成膜したこと以外は実施例1と同じ方法で有機EL素子を製造した。
【0213】
(比較例3)
第1正孔輸送層を形成しなかったこと以外は実施例1と同じ方法で有機EL素子を製造した。
【0214】
(比較例4)
比較例1と同じ方法で有機EL素子を製造した。
【0215】
<有機EL素子の評価>
作製した有機EL素子について以下の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0216】
・駆動電圧
有機EL素子の初期特性を、室温下、DC(直流)定電流10mA/cm駆動で測定した。
・外部量子効率
電流密度が10mA/cmとなるように有機EL素子に電圧を印加し、EL発光スペクトルを分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタ株式会社製)にて計測した。得られた分光放射輝度スペクトルから、外部量子効率EQE(%)を算出した。
・素子寿命
得られた有機EL素子について、室温下、電流密度が50mA/cmとなるように有機EL素子に電圧を印加し、初期輝度に対して輝度が95%となるまでの時間(LT95(単位:h))を測定した。
【表3】
【0217】
表3において括弧内の数字は膜厚(単位:nm)を表す。また、括弧内においてパーセント表示された数字は、当該層における後者の化合物の割合(質量%)を示す。
【0218】
(比較例7)
比較例1と同じ方法で有機EL素子を製造した。
【0219】
(比較例8)
正孔注入層の形成において、化合物HT及び化合物HAを、化合物HAの割合が1質量%となるように共蒸着したこと以外は比較例1と同じ方法で有機EL素子を製造した。
【0220】
<有機EL素子の評価>
作製した有機EL素子について以下の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0221】
・駆動電圧
有機EL素子の初期特性を、室温下、DC(直流)定電流10mA/cm駆動で測定した。
【0222】
【表4】
【0223】
表4の結果から、正孔注入層の形成において、化合物HTに対して化合物HAをドープする場合、ドープ量を減らすと駆動電圧が上昇することがわかる。
【0224】
<シート抵抗測定用素子の作製>
シート抵抗測定用素子を以下のように作製した。
【0225】
(実施例7)
電極間距離がそれぞれ10、20、40、80μmの櫛歯電極上に、化合物HAを真空蒸着し、膜厚0.1nmの正孔注入層を成膜した。
正孔注入層上に、化合物HTを真空蒸着し、膜厚90nmの正孔輸送層を成膜した。
【0226】
(実施例8)
正孔注入層の形成において、膜厚0.3nmの正孔注入層を成膜したこと以外は実施例7と同じ方法でシート抵抗測定用素子を製造した。
【0227】
(実施例9)
正孔注入層の形成において、膜厚0.4nmの正孔注入層を成膜したこと以外は実施例7と同じ方法でシート抵抗測定用素子を製造した。
【0228】
(実施例10)
正孔注入層の形成において、膜厚0.5nmの正孔注入層を成膜したこと以外は実施例7と同じ方法でシート抵抗測定用素子を製造した。
【0229】
(比較例9)
正孔注入層の形成において、膜厚5nmの正孔注入層を成膜したこと以外は実施例7と同じ方法でシート抵抗測定用素子を製造した。
【0230】
(比較例10)
正孔注入層の形成において、膜厚10nmの正孔注入層を成膜したこと以外は実施例7と同じ方法でシート抵抗測定用素子を製造した。
【0231】
(比較例11)
正孔注入層の形成において、化合物HT及び化合物HAを、化合物HAの割合が3質量%となるように共蒸着し、膜厚10nmの正孔注入層を成膜したこと以外は実施例7と同じ方法でシート抵抗測定用素子を製造した。
【0232】
<シート抵抗の評価>
作製した素子についてシート抵抗の評価を行った。
電極間に100Vの電圧を印加し、電極間に流れる電流値及び抵抗値を、6430型サブフェムトアンペアリモートソースメータ(ケースレー・インスツルメンツ製)にて測定した。電極間距離と、それぞれの電極間距離に対応する抵抗値をプロットし、その傾きであるRslope(Ω/μm)を算出し、Rslopeの値に電極幅(37640μm)を掛けて、シート抵抗Rs(Ω/sq)を算出した。結果を表5に示す。
【0233】
【表5】

図1