IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人広島大学の特許一覧

特開2022-112719電圧電流変換回路およびそれを備えたコスタスループ回路
<>
  • 特開-電圧電流変換回路およびそれを備えたコスタスループ回路 図1
  • 特開-電圧電流変換回路およびそれを備えたコスタスループ回路 図2
  • 特開-電圧電流変換回路およびそれを備えたコスタスループ回路 図3
  • 特開-電圧電流変換回路およびそれを備えたコスタスループ回路 図4
  • 特開-電圧電流変換回路およびそれを備えたコスタスループ回路 図5
  • 特開-電圧電流変換回路およびそれを備えたコスタスループ回路 図6
  • 特開-電圧電流変換回路およびそれを備えたコスタスループ回路 図7
  • 特開-電圧電流変換回路およびそれを備えたコスタスループ回路 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112719
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】電圧電流変換回路およびそれを備えたコスタスループ回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/34 20060101AFI20220727BHJP
   H03L 7/06 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
H03F3/34 210
H03F3/34 230
H03L7/06 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008625
(22)【出願日】2021-01-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発「集積電子デバイスによる大容量映像の非圧縮低電力無線伝送技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100163186
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 裕吉
(72)【発明者】
【氏名】李 尚曄
(72)【発明者】
【氏名】藤島 実
【テーマコード(参考)】
5J106
5J500
【Fターム(参考)】
5J106AA02
5J106AA04
5J106BB01
5J106CC01
5J106CC22
5J106CC38
5J106DD05
5J106DD12
5J106KK05
5J500AA01
5J500AA12
5J500AC13
5J500AC21
5J500AF13
5J500AF15
5J500AF17
5J500AH10
5J500AH17
5J500AH19
5J500AH25
5J500AH29
5J500AK06
5J500AK09
5J500AK20
5J500AK41
5J500AK42
5J500AK55
5J500AM13
5J500AS13
5J500AT01
(57)【要約】
【課題】コスタスループ回路に好適なオフセット変動の少ない電圧電流変換回路を提供する。
【解決手段】電圧電流変換回路30は、印加された2つの信号Φi,Φqの電圧誤差を電流信号に変換する第1のエラーアンプ31および第2のエラーアンプ32と、第1のエラーアンプ31の出力電流を平滑化した電圧Vsおよび第2のエラーアンプ32の出力電圧Vdの誤差を増幅する第3のエラーアンプ33とを備え、第1のエラーアンプ31のテール電流源34および第2のエラーアンプ32のテール電流源34が第3のエラーアンプ33の出力電圧Vbにより制御されるように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加された2つの信号の電圧誤差を電流信号に変換する第1のエラーアンプおよび第2のエラーアンプと、
前記第1のエラーアンプの出力電流を平滑化した電圧および前記第2のエラーアンプの出力電圧の誤差を増幅する第3のエラーアンプとを備え、
前記第1のエラーアンプのテール電流源および前記第2のエラーアンプのテール電流源が前記第3のエラーアンプの出力電圧により制御されるように構成されている
ことを特徴とする電圧電流変換回路。
【請求項2】
前記第1のエラーアンプおよび前記第2のエラーアンプが、ソースどうしが接続され、ゲートに前記2つの信号がそれぞれ印加される第1のトランジスタおよび第2のトランジスタと、前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタの各ドレインに接続された,電流源としての第3のトランジスタおよび第4のトランジスタとを有し、前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタの共通ソースに前記テール電流源が接続され、
前記第2のエラーアンプの前記第4のトランジスタがダイオード接続されてセルフバイアスされ、かつ、そのバイアス電圧が前記第1のエラーアンプの前記第3のトランジスタのゲートに接続されており、
前記第1のエラーアンプの前記第4のトランジスタおよび前記第2のエラーアンプの前記第3のトランジスタがいずれもダイオード接続されてセルフバイアスされ、かつ、これらトランジスタのゲートどうしが接続されてバイアス電圧が共通化されている、請求項1に記載の電圧電流変換回路。
【請求項3】
直交変調されたIF信号を直交LO信号でダウンコンバートしてI信号およびQ信号を復調する直交復調部と、
前記I信号および前記Q信号が入力され、前記IF信号および前記直交LO信号の位相誤差を2つの信号の電圧誤差として出力する位相誤差検出部と、
前記2つの信号の電圧誤差を電流信号に変換する第1の電圧電流変換回路と、
前記第1の電圧電流変換回路の出力電流を平滑化して制御電圧を生成するループフィルタと、
前記制御電圧に応じた周波数で発振して前記直交LO信号を生成するLO回路とを備え、
前記第1の電圧電流変換回路が請求項1または2に記載の電圧電流変換回路である
ことを特徴とするコスタスループ回路。
【請求項4】
前記直交復調部が、
前記IF信号および第1のLO信号を混合する第1のミキサと、
前記IF信号および第2のLO信号を混合する第2のミキサと、
前記第1のミキサの後段に接続された第1のローパスフィルタと、
前記第2のミキサの後段に接続された第2のローパスフィルタとを有する、請求項3に記載のコスタスループ回路。
【請求項5】
前記位相誤差検出部が、
前記I信号が入力される第1のリミティングアンプと、
前記Q信号が入力される第2のリミティングアンプと、
前記第1のリミティングアンプの出力および前記Q信号を混合する第3のミキサと、
前記第2のリミティングアンプの出力および前記I信号を混合する第4のミキサとを有し、
前記第3のミキサの出力および前記第4のミキサの出力を前記2つの信号として出力する、請求項3または4に記載のコスタスループ回路。
【請求項6】
前記第1のリミティングアンプの出力および前記第2のリミティングアンプの出力のいずれか一方が入力され、当該入力信号を電流信号に変換する第2の電圧電流変換回路を備え、
前記第2の電圧電流変換回路の出力電流が前記ループフィルタに入力されるように構成されている、請求項5に記載のコスタスループ回路。
【請求項7】
前記第2の電圧電流変換回路が、前記入力信号が入力されるアンプと、前記アンプの後段に接続されたバッファと、前記バッファの後段に接続されたレベルシフタとを有する、請求項6に記載のコスタスループ回路。
【請求項8】
前記第1の電圧電流変換回路および前記第2の電圧電流変換回路が、個別にオン/オフ切り替え可能に構成され、相補的に動作する、請求項6または7に記載のコスタスループ回路。
【請求項9】
前記第2の電圧電流変換回路が先に動作してその後前記第1の電圧電流変換回路が動作する、請求項8に記載のコスタスループ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コスタスループ回路に好適な電圧電流変換回路およびそれを備えたコスタスループ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
変調された無線信号を受信機側で復調するには基準搬送波が必要となるが、受信信号から基準搬送波を再生する回路技術の一つとしてコスタスループ回路がある。コスタスループ回路は、直交変調されたIF(Intermediate Frequency)信号または比較的周波数の低いRF(Radio Frequency)信号を直交LO(Local Oscillation)信号でダウンコンバートしてベースバンドのI信号およびQ信号を復調してデジタル信号を復元するとともに、復調したI信号およびQ信号からIF信号および直交LO信号の位相誤差を検出し、その位相誤差に応じてVCO(Voltage Controlled Oscillator)を制御することで基準搬送波となる直交LO信号を生成するというものである。
【0003】
このように、コスタスループ回路は本質的にはPLL(Phase Locked Loop)であり、PLLのキャリアトラッキングにより基準搬送波が再生される。コスタスループ回路にさらにFLL(Frequency Locked Loop)を追加して基準搬送波の周波数ロックおよび位相ロックを可能にした技術が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S. Huang, Y. Yeh, H. Wang, P. Chen and J. Lee, "W-Band BPSK and QPSK Transceivers With Costas-Loop Carrier Recovery in 65-nm CMOS Technology," in IEEE Journal of Solid-State Circuits, vol. 46, no. 12, pp. 3033-3046, Dec. 2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コスタスループ回路では位相ロック可能限界範囲が狭いため、VCO制御電圧のオフセットが大きいと位相ロックができなくなるおそれがある。特に、オフセットはIF信号および直交LO信号の位相誤差に応じて変動するため、このオフセット変動をいかに抑制するかが重要となる。
【0006】
また、周波数ロック機能を有するコスタスループ回路は、まずFLLモードで動作してVCO制御電圧を周波数ロック可能な値に設定し、そのVCO制御電圧を維持したままPLLモードに切り替わって位相ロックを行うが、FLLモードからPLLモードへの切り替え時にVCO制御電圧が乱れると位相ロックに失敗するおそれがある。したがって、FLLモードからPLLモードへの切り替えをスムースに行う必要がある。
【0007】
上記問題に鑑み、本発明は、コスタスループ回路に好適なオフセット変動の少ない電圧電流変換回路、およびそのような電圧電流変換回路を備えてFLLモードからPLLモードへの切り替えをスムースに行うことができるコスタスループ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に従った電圧電流変換回路は、印加された2つの信号の電圧誤差を電流信号に変換する第1のエラーアンプおよび第2のエラーアンプと、前記第1のエラーアンプの出力電流を平滑化した電圧および前記第2のエラーアンプの出力電圧の誤差を増幅する第3のエラーアンプとを備え、前記第1のエラーアンプのテール電流源および前記第2のエラーアンプのテール電流源が前記第3のエラーアンプの出力電圧により制御されるように構成されている。
【0009】
本発明の一局面に従ったコスタスループ回路は、直交変調されたIF信号を直交LO信号でダウンコンバートしてI信号およびQ信号を復調する直交復調部と、前記I信号および前記Q信号が入力され、前記IF信号および前記直交LO信号の位相誤差を2つの信号の電圧誤差として出力する位相誤差検出部と、前記2つの信号の電圧誤差を電流信号に変換する上記電圧電流変換回路と、前記第1の電圧電流変換回路の出力電流を平滑化して制御電圧を生成するループフィルタと、前記制御電圧に応じた周波数で発振して前記直交LO信号を生成するLO回路とを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、電圧電流変換回路の出力電流のオフセット変動を抑制することができる。また、そのような電圧電流変換回路を備えたコスタスループ回路のにおいてFLLモードからPLLモードへのスムースな切り替えを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るコスタスループ回路の構成図
図2】本発明の一実施形態に係る電圧電流変換回路の回路図
図3図2の電圧電流変換回路において出力電圧および2入力の一方の電圧を固定して他方の電圧をスイープしたときの出力電流を示すグラフ
図4図2の電圧電流変換回路において出力電圧を固定して2入力の両方の電圧をスイープしたときの出力電流を示すグラフ
図5図2の電圧電流変換回路において2入力の両方を所定電圧に固定して出力電圧をスイープしたときの出力電流を示すグラフ
図6図1のコスタスループ回路に含まれるもう一つの電圧電流変換回路の回路図
図7図1のコスタスループ回路の動作例を説明する図
図8図1のコスタスループ回路の起動時のVCO制御電圧の変化例を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者は、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
≪コスタスループ回路の構成例≫
図1は、本発明の一実施形態に係るコスタスループ回路の構成図である。本実施形態に係るコスタスループ回路100は、概して、直交復調部10と、位相誤差検出部20と、電圧電流変換回路(以下、V/Iと称する。)30,40と、ループフィルタ(以下、LFと称する。)50と、LO回路60とを備えている。
【0014】
直交変調部10は、直交変調されたIF信号(以下、IFと称する。)を互いに90度位相がずれた直交LO信号(以下、LOi,LOqと称する。)でダウンコンバートしてI信号およびQ信号(以下、I,Qと称する。)を復調する回路要素である。一例として、IF,LOi,LOqは40GHz±20GHzのミリ波帯信号、I,Qは5GHz以下のベースバンド信号である。なお、これら信号はいずれも差動信号である。
【0015】
より詳細には、直交変調部10は、ミキサ11,12と、これらの後段に接続されたローパスフィルタ(以下、LPFと称する。)13,14とを備えている。ミキサ11は、IFおよびLOiを混合する。LPF13は、ミキサ11の出力に含まれる高周波成分をカットして低周波成分を通過させる。ミキサ12は、IFおよびLOqを混合する。LOqはLOiを90度位相シフトさせた信号である。LPF14は、ミキサ12の出力に含まれる高周波成分をカットして低周波成分を通過させる。LPF13,14の出力がそれぞれI,Qとして取り出される。
【0016】
位相誤差検出部20は、I,Qが入力され、IFおよび直交LO信号の位相誤差を2つの信号の電圧誤差として出力する回路要素である。より詳細には、位相誤差検出部20は、レイル・ツー・レイル(Rail-to-Rail)動作をする高利得広帯域のアンプであるリミティングアンプ(以下、LIMと称する。)21,22と、これらの後段に接続されたミキサ23,24とを備えている。LIM21は、LPF13の後段に接続されており、LPF13から出力されるI信号をほぼ電源電圧いっぱいまでの振幅にする。ミキサ23は、LIM21の出力およびQを混合する。LIM22は、LPF14の後段に接続されており、LPF14から出力されるQ信号をほぼ電源電圧いっぱいまでの振幅にする。ミキサ24は、LIM22の出力およびIを混合する。ミキサ23,24の出力Φi,Φqが、位相誤差検出部20から出力される2つの信号に相当する。
【0017】
V/I30は、位相誤差検出部20から出力される2つの信号Φi,Φqを受け、その電圧誤差を電流信号に変換する回路要素である。V/I40は、LIM22の出力が入力され、当該入力信号を電流信号に変換する回路要素である。V/I30,40は、個別にオン/オフ切り替え可能に構成されており、一方が動作するとき他方が休止するといったように相補的に動作する。V/I30,40の回路構成例については後述する。
【0018】
LF50は、V/I30,40の後段に接続されており、V/I30,40の出力電流を平滑化してLO回路60の発振周波数および位相を制御するための制御電圧Vtを生成する回路要素である。例えば図2に示したように、LF50は、抵抗51と、キャパシタ52,53とで構成することができる。抵抗51の一端とキャパシタ52の一端とが互いに接続され、抵抗51の他端とキャパシタ53の一端とが互いに接続され、キャパシタ52,53の他端が接地されている。
【0019】
LO回路60は、LF50によって生成される制御電圧Vtに応じた周波数で発振して互いに90度位相がずれたLOi,LOqを生成する回路要素である。具体的には、LO回路60は、図略のVCOおよび90度位相シフタなどから構成される。
【0020】
上記構成のコスタスループ回路100において、直交変調部10、位相誤差検出部20、V/I30、LF50、およびLO回路60からなるループはPLLとして機能し、ミキサ12、LPF14、LIM22、V/I40、LF50、およびLO回路60からなるループはFLLとして機能する。
【0021】
≪V/I30の回路構成例≫
図2は、本発明の一実施形態に係るV/I30の回路図である。なお、同図にはV/I30の後段に接続されるLF50も合わせて表示している。V/I30は、概して、3つのエラーアンプ31,32,33を備えており、2つの入力信号Φi,Φqの電圧誤差を電流信号Ioutに変換して出力する。これら3つのエラーアンプのうちエラーアンプ31がLF50に接続されている。
【0022】
エラーアンプ31,32は、ミキサ23の出力Φiおよびミキサ24の出力Φqが印加され、これら2つの信号の電圧誤差を電流信号に変換する。エラーアンプ33は、エラーアンプ31の出力電流IoutをLF50で平滑化した電圧、具体的には、抵抗51とキャパシタ53の接続点における電圧Vsおよびエラーアンプ32の出力電圧Vdが印加され、これら2つの信号の電圧誤差を電流信号に変換する。
【0023】
エラーアンプ31,32,33はいずれも、nチャネルトランジスタM1,M2と、pチャネルトランジスタM3,M4とを備えている。エラーアンプ31,32のM1,M2のゲートにΦi,Φqがそれぞれ印加される。エラーアンプ33のM1,M2のゲートにVs,Vdがそれぞれ印加される。
【0024】
M1とM2はソースどうしが接続され、その共通ソースに、nチャネルトランジスタで構成されたテール電流源34が接続されている。エラーアンプ31,32のテール電流源34を構成するnチャネルトランジスタのゲートにエラーアンプ33の出力電圧Vbが印加されており、テール電流源34が供給する電流はVbにより制御される。エラーアンプ33のテール電流源34を構成するnチャネルトランジスタのゲートに定バイアス電圧Vbnが印加されており、テール電流源34は定電流を供給する。
【0025】
M3,M4は電流源であり、M1,M2にそれぞれ接続されている。エラーアンプ31,32のM3,M4はソースどうしが接続され、その共通ソースに、pチャネルトランジスタで構成された電流源35が接続されている。電流源35を構成するpチャネルトランジスタのゲートに定バイアス電圧Vbpが印加されており、電流源35は定電流を供給する。
【0026】
エラーアンプ31のM3,M4およびエラーアンプ32のM3,M4は相互に接続されている。より詳細には、エラーアンプ32のM4がダイオード接続されてセルフバイアスされ、かつ、そのバイアス電圧Vuがエラーアンプ31のM3のゲートに接続されており、エラーアンプ31のM3はVuでバイアスされている。さらに、エラーアンプ31のM4およびエラーアンプ32のM3がいずれもダイオード接続されてセルフバイアスされ、かつ、これらトランジスタのゲートどうしが接続されてバイアス電圧Vdが共通化されている。なお、Vdはエラーアンプ32の出力電圧ともなっている。
【0027】
エラーアンプ33のM3,M4はカレントミラー回路を構成しており、M3およびM4は同じ大きさの電流を供給するように動作する。エラーアンプ33において、M1のドレインとM2のゲートの間にキャパシタ36が接続され、M2のゲートとグランドの間に抵抗37およびキャパシタ38が直列接続されている。
【0028】
一般的なV/Iはエラーアンプ一つで構成されるが、本実施形態に係るV/I30は、上記のように3つのエラーアンプ31,32,33から構成される。エラーアンプが一つの場合、例えば、エラーアンプ31のみの場合、エラーアンプ31とLF50の接続点の電圧Vtの大小によってエラーアンプ31のM1~M4の特性が変化して出力電流Ioutのオフセット電流も変化してしまう。一方、本実施形態に係るV/I30では、VsをフィードバックしてVsとエラーアンプ32の出力電圧Vdの誤差に応じてエラーアンプ31,32のテール電流源34の電流量が自動調整されることで、エラーアンプ31とLF50の接続点の電圧Vtの大小によってエラーアンプ31のM1~M4の特性が変化してもその特性変化がテール電流源34の電流量の変化により補償される。これにより、出力電流Ioutのオフセット電流の変動が抑制されるようになっている。
【0029】
さらに、エラーアンプ31のM1,M3はLF50に直接接続されていることから、これらトランジスタには不要な負荷要素を極力接続しないことが望ましい。この点、本実施形態に係るV/I30では、エラーアンプ32を設けることで、エラーアンプ33がエラーアンプ31のM1,M3に直接接続されないようになっている。
【0030】
≪シミュレーション結果≫
次に、V/I30のシミュレーション結果について説明する。図3は、V/I30において出力電圧および2入力の一方の電圧を固定して他方の電圧をスイープしたときの出力電流を示すグラフである。V/I30の出力電圧を0.6V、Φqを0.4Vにそれぞれ固定して、Φiを0Vから0.9Vまでスイープした。図3のグラフからわかるように、V/I30の出力電流Ioutは、Φiが0.35V辺りから0.45V辺りまででΦiにほぼ比例して減少し、ΦiがΦqと同じ0.4Vのときにほぼゼロになる。このように、V/I30は、入力電圧がおおよそ0.35~0.45Vの区間で線形性を確保できている。
【0031】
図4は、V/I30において出力電圧を固定して2入力の両方の電圧をスイープしたときの出力電流を示すグラフである。V/I30の出力電圧を0.6Vに固定して、Φi,Φqを0Vから0.9Vまでスイープした。図4のグラフからわかるように、入力電圧がおおよそ0.3~0.6Vの区間で、V/I30の出力電流Ioutはほぼゼロの一定値を保っている。このように、V/I30は、入力電圧がおおよそ0.3~0.6Vの区間でオフセット電流の変動を抑制できている。
【0032】
図5は、V/I30において2入力の両方を所定電圧に固定して出力電圧をスイープしたときの出力電流を示すグラフである。Φi,Φqを0.4Vに固定して、出力電圧Voutを0Vから0.9Vまでスイープした。図5のグラフからわかるように、V/I30の出力電圧Voutがおおよそ0.2~0.9Vの区間で、V/I30の出力電流Ioutはほぼゼロの一定値を保っている。このように、V/I30では、出力電圧Voutの大小によってオフセット電流が変動しない。
【0033】
≪V/I40の回路構成例≫
図6は、コスタスループ回路100に含まれるもう一つの電圧電流変換回路であるV/I40の回路図である。V/I40は、概して、アンプ41と、バッファ42と、レベルシフタ43とを備えており、入力信号INを電流信号IFLLに変換して出力する。
【0034】
アンプ41は、nチャネルトランジスタ411と、pチャネルトランジスタ412とを備えている。トランジスタ411のソースに電流源44が接続され、ゲートにINが入力される。なお、INは、コスタスループ回路100におけるLIM22の出力信号である。電流源44は、ゲートにバイアス電圧Vbnが印加されたnチャネルトランジスタで構成される。トランジスタ412はダイオード接続されてセルフバイアスされており、トランジスタ411に電流を供給する電流源として動作する。
【0035】
バッファ42は、pチャネルトランジスタ421と、nチャネルトランジスタ422とを備えている。トランジスタ421のゲートにアンプ41の出力、すなわち、トランジスタ411のドレインが接続されている。トランジスタ422はダイオード接続されてセルフバイアスされており、トランジスタ421に電流を供給する電流源として動作する。トランジスタ422のソースに電流源44が接続されている。
【0036】
レベルシフタ43は、nチャネルトランジスタ431と、pチャネルトランジスタ432とを備えている。トランジスタ431のソースは接地され、ゲートにバッファ42の出力、すなわち、トランジスタ421のドレインが接続されている。トランジスタ432は、ゲートにバイアス電圧Vgが印加されており、トランジスタ421に電流を供給する電流源として動作する。レベルシフタ43の出力は抵抗45を介してコスタスループ回路100におけるLF50に接続される。
【0037】
上記構成のV/I40によると、コスタスループ回路100におけるLIM22の出力信号を、後段のLF50およびLO回路60を駆動するのに十分なレベルにシフトしてLF50に十分な量の電流を供給することができる。
【0038】
≪コスタスループ回路の動作例≫
図7は、コスタスループ回路100の動作例を説明する図である。なお、図中実線で表示した回路要素は動作していることを表し、破線で示した回路要素は休止しているか、あるいは動作していても使用されないことを表す。
【0039】
まず、図7左側に示したように、コスタスループ回路100の起動時にはV/I40が動作し、V/I30が休止し、サイン波のIFが入力されてコスタスループ回路100はFLLモードで動作する。サイン波のIFとしてテスト信号を入力するようにしてもよいし、パケット通信の場合にはガードセルのサイン波信号を使用することができる。
【0040】
その後、図7右側に示したように、V/I40が休止し、V/I30が動作してコスタスループ回路100はPLLモード(通常動作モード)に切り替わる。PLLモードではコスタスループ回路100にデータ信号のIFが入力される。なお、FLLモードからPLLモードへの切り替えは、例えば図略のタイマを設けてFLLモード開始からの経過時間をカウントして所定時間後に切り替えるようにしてもよいし、非特許文献1のように周波数ロックを検知したら切り替えるようにしてもよい。
【0041】
≪シミュレーション結果≫
次に、コスタスループ回路100のシミュレーション結果について説明する。図8は、コスタスループ回路100の起動時のVCO制御電圧Vtの変化例を示すグラフである。同グラフは、コスタスループ回路100が最初の500nsはFLLモードで動作し、その後PLLモードに切り替わる場合における435nsから515nsまでの期間のVCO制御電圧を抜き出したものである。同グラフにはVsも合わせて表示している。なお、VCO制御電圧とは、LO回路60を構成する図略のVCOの制御電圧のことをいう。
【0042】
コスタスループ回路100がFLLモードで動作するとき、VCO制御電圧がおよそ500MHzの周期で290~660mVの間で振動する。これは、LIM22のゲインが大きいためそれを含むFLLのループゲインが大きくなりループが発振するからである。ただし、ループが発振しても周波数ロックは可能である。この例では、LO回路60はおよそ620mVで制御されることになる。この620mVというのは、振動するVCO制御電圧の平均値である。コスタスループ回路100の動作開始から500ns経過後にPLLモードに切り替わると、コスタスループ回路100は発振することなく、VCO制御電圧は目標のおよそ620mVに収束する。
【0043】
ここで、もしV/I30が図2に示したような回路構成ではなくエラーアンプ一つで構成される一般的なV/Iであった場合、VCO制御電圧が目標の620mVから大きく外れた瞬間にFLLモードからPLLモードへ切り替わると、VCO制御電圧が位相ロック可能限界範囲を超えてしまって位相ロックができなくなる。このため、FLLモードではINの振幅を小さくしてループが発振しないようにするといったINの振幅調整が別途必要となる。
【0044】
一方、本実施形態に係るコスタスループ回路100では、V/I30は、図8のグラフに示したような安定したVsに追従して動作するため、VCO制御電圧が目標の620mVから大きく外れた瞬間にFLLモードからPLLモードへ切り替わってもその後VCO制御電圧は目標電圧(この例ではおよそ620mV)に収束するため位相ロックが可能である。すなわち、本実施形態に係るコスタスループ回路100は、FLLモードでループが発振した状態でPLLモードに切り替わっても位相ロックが可能である。したがって、コスタスループ回路100は、十分に大きい振幅のINを入力して周波数ロック、およびそれに引き続く位相ロックを行うことができ、FLLモードからPLLモードへのスムースな切り替えが可能である。
【0045】
≪変形例≫
FLLをI信号処理側に設けてもよい。すなわち、V/I40にIM21の出力を入力するようにしてもよい。
【0046】
また、V/I40の入力側および出力側にそれぞれスイッチを設けて、V/I40が休止するときそれらスイッチをオフにしてV/I40をコスタスループ回路100から切り離すようにしてもよい。V/I40がI信号側およびQ信号側のいずれか一方に接続されたままだとコスタスループ回路100のI信号側とQ信号側がアンバランスになるが、V/I40をコスタスループ回路100から切り離せるようにすることで、I信号側とQ信号側のバランスが取れるようになる。
【0047】
以上のように、本発明における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【符号の説明】
【0048】
100 コスタスループ回路
10 直交変調部
11,12 ミキサ(第1のミキサ、第2のミキサ)
13,14 ローパスフィルタ(第1のローパスフィルタ、第2のローパスフィルタ)
20 位相誤差検出部
21,22 リミティングアンプ(第1のリミティングアンプ、第2のリミティングアンプ)
23,24 ミキサ(第3のミキサ、第4のミキサ)
30,40 電圧電流変換回路(第1の電圧電流変換回路、第2の電圧電流変換回路)
31,32,33(第1のエラーアンプ、第2のエラーアンプ、第3のエラーアンプ)
M1,M2,M3,M4 トランジスタ(第1のトランジスタ、第2のトランジスタ、第3のトランジスタ、第4のトランジスタ)
34 テール電流源
41 アンプ
42 バッファ
43 レベルシフタ
50 ループフィルタ
60 LO回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8