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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112973
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/06 20060101AFI20220727BHJP
   F04D 29/046 20060101ALI20220727BHJP
   F16C 17/10 20060101ALI20220727BHJP
   F16C 32/04 20060101ALI20220727BHJP
   H02K 7/08 20060101ALI20220727BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
F04D13/06 C
F04D13/06 D
F04D29/046 C
F04D29/046 D
F16C17/10 A
F16C32/04 Z
H02K7/08 A
H02K7/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009036
(22)【出願日】2021-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(71)【出願人】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】落合 章裕
(72)【発明者】
【氏名】杉元 紘也
(72)【発明者】
【氏名】石生田 祥宏
【テーマコード(参考)】
3H130
3J011
3J102
5H607
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB22
3H130AB46
3H130AC30
3H130BA56C
3H130BA56E
3H130BA56G
3H130BA64C
3H130BA64E
3H130BA64G
3H130BA97C
3H130BA97E
3H130BA97G
3H130CB05
3H130CB09
3H130DB02X
3H130DB05X
3H130DB10X
3H130DB15X
3H130DD04X
3H130EA06C
3H130EA06E
3H130EA06G
3H130EA07C
3H130EA07E
3H130EA07G
3J011AA20
3J011BA06
3J011CA02
3J011EA10
3J011JA02
3J011KA04
3J011MA12
3J011RA03
3J102AA01
3J102AA08
3J102BA03
3J102BA17
3J102BA18
3J102CA14
3J102DA02
3J102DA09
3J102DA18
3J102DA36
3J102GA06
5H607AA04
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB05
5H607BB13
5H607BB27
5H607CC05
5H607DD03
5H607FF06
5H607FF12
5H607GG07
5H607GG12
5H607GG15
(57)【要約】
【課題】ポンプの停止時や低速回転時のように動圧軸受の動圧が不十分な運転条件で動作する際に磁石の吸引力によって動圧軸受のスラスト荷重を軽減するように構成されたポンプ装置において、動圧軸受のスラスト荷重軽減のための構造を小型化する。
【解決手段】ポンプ装置は、複数の固定子コイルを有するモータ固定子と、前記モータ固定子を収容するモータケーシングと、前記モータ固定子側に永久磁石が埋設された羽根車と、前記羽根車を収容するポンプケーシングと、前記羽根車を支持する軸受組立体と、を備え、前記羽根車は、前記モータ固定子と反対側に配置された第1磁性体を備え、前記ポンプケーシングは、前記羽根車に対向する内面に配置された第2磁性体を備え、前記第1磁性体と前記第2磁性体の一方は、第1磁石と第1ヨークを備え、前記第1磁性体と前記第2磁性体の他方は、少なくとも第2ヨークを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固定子コイルを有するモータ固定子と、
前記モータ固定子を収容するモータケーシングと、
前記モータ固定子側に永久磁石が埋設された羽根車と、
前記羽根車を収容するポンプケーシングと、
前記羽根車を支持する軸受組立体と、
を備えたポンプ装置であって、
前記羽根車は、前記モータ固定子と反対側に配置された第1磁性体を備え、
前記ポンプケーシングは、前記羽根車に対向する内面に配置された第2磁性体を備え、
前記第1磁性体と前記第2磁性体の一方は、第1磁石と第1ヨークを備え、
前記第1磁性体と前記第2磁性体の他方は、少なくとも第2ヨークを備える、
ポンプ装置。
【請求項2】
前記第1磁性体と前記第2磁性体の前記他方は、さらに第2磁石を備える、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記第1磁石は、内周側の第1リング磁石と、磁極の向きが前記第1リング磁石と逆向きとなるように配置された外周側の第2リング磁石とを備える、請求項1または2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記第2磁石は、内周側の第1リング磁石と、磁極の向きが前記第1リング磁石と逆向きとなるように配置された外周側の第2リング磁石とを備える、請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記第1リング磁石の径方向の幅は、前記第2リング磁石の径方向の幅よりも広い、請求項3または4に記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記軸受組立体は動圧軸受である、請求項1から5のいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記軸受組立体は、互いに係合する回転側軸受と固定側軸受から構成され、前記回転側軸受は、前記羽根車に固定され、前記固定側軸受は、前記モータケーシングに固定されている、請求項6に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置に関する。特に、本発明は、モータとポンプとが一体的に構成されたポンプ装置において、軸受にかかるスラスト荷重を軽減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
キャンドモータポンプは、モータとポンプとが一体に構成されることによって、ポンプで移送される液体の外部への漏洩防止が図られている。キャンドモータポンプは、永久磁石が埋設された羽根車、固定子、ポンプケーシング、モータケーシング、羽根車のラジアル荷重及びスラスト荷重を支持する軸受組立体を備えている。この軸受組立体は、液体の動圧を利用したすべり軸受(動圧軸受)であり、回転側軸受と固定側軸受との間に導かれた液体に動圧を発生させることで、羽根車を非接触で支持する。
【0003】
動圧軸受は、回転側軸受が回転することで液体の動圧を発生させるように構成されている。そのため、ポンプの停止時や低速回転時には液体の動圧は発生しないので、羽根車に埋設された永久磁石の吸引力によって回転側軸受と固定側軸受の接触面(軸受面)が強力に接触して、摺動摩擦に起因する起動不良が起こることがある。特許文献1および2には、ポンプの停止時や低速回転時に回転側軸受と固定側軸受の摺動摩擦を低減するために、羽根車とポンプケーシングの内壁に補助用磁石を設け、この磁石の吸引力によって動圧軸受のスラスト荷重を軽減するように構成されたポンプ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4456857号公報
【特許文献2】特許第5378010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の1つは、ポンプの停止時や低速回転時のように動圧軸受の動圧が不十分な運転条件で動作する際に磁石の吸引力によって動圧軸受のスラスト荷重を軽減するように構成されたポンプ装置において、動圧軸受のスラスト荷重軽減のための構造を小型化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[形態1]形態1によれば、複数の固定子コイルを有するモータ固定子と、前記モータ固定子を収容するモータケーシングと、前記モータ固定子側に永久磁石が埋設された羽根車と、前記羽根車を収容するポンプケーシングと、前記羽根車を支持する軸受組立体と、を備えたポンプ装置であって、前記羽根車は、前記モータ固定子と反対側に配置された第1磁性体を備え、前記ポンプケーシングは、前記羽根車に対向する内面に配置された第2磁性体を備え、前記第1磁性体と前記第2磁性体の一方は、第1磁石と第1ヨークを備え、前記第1磁性体と前記第2磁性体の他方は、少なくとも第2ヨークを備える、ポンプ装置が提供される。
【0007】
[形態2]形態2によれば、形態1のポンプ装置において、前記第1磁性体と前記第2磁性体の前記他方は、さらに第2磁石を備える。
【0008】
[形態3]形態3によれば、形態1または2のポンプ装置において、前記第1磁石は、内周側の第1リング磁石と、磁極の向きが前記第1リング磁石と逆向きとなるように配置
された外周側の第2リング磁石とを備える。
【0009】
[形態4]形態4によれば、形態2のポンプ装置において、前記第2磁石は、内周側の第1リング磁石と、磁極の向きが前記第1リング磁石と逆向きとなるように配置された外周側の第2リング磁石とを備える。
【0010】
[形態5]形態5によれば、形態3または4のポンプ装置において、前記第1リング磁石の径方向の幅は、前記第2リング磁石の径方向の幅よりも広い。
【0011】
[形態6]形態6によれば、形態1から形態5のいずれか1つの形態のポンプ装置において、前記軸受組立体は動圧軸受である。
【0012】
[形態7]形態7によれば、形態6のポンプ装置において、前記軸受組立体は、互いに係合する回転側軸受と固定側軸受から構成され、前記回転側軸受は、前記羽根車に固定され、前記固定側軸受は、前記モータケーシングに固定されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ポンプ装置の一実施形態を示す断面図である。
図2】ポンプ装置の別の一実施形態を示す断面図である。
図3】ポンプ装置におけるリング磁石の断面図である。
図4】ポンプ装置におけるリング磁石間の吸引力のシミュレーションによる計算例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0015】
図1はポンプ装置の一実施形態を示す断面図である。このポンプ装置は、モータとポンプとが一体的に構成されたモータポンプ50を備えている。図1に示すモータポンプ50はアキシャルギャップ型PMモータを搭載したキャンドモータポンプである。図1に示すように、モータポンプ50は、複数の永久磁石5が埋設された羽根車1と、これらの永久磁石5に作用する磁力を発生するモータ固定子6と、羽根車1を収容するポンプケーシング2と、モータ固定子6を収容するモータケーシング3と、モータケーシング3の開口端を閉じるエンドカバー4と、羽根車1のラジアル荷重およびスラスト荷重を支持する軸受組立体10とを備えている。
【0016】
モータ固定子6および軸受組立体10は、羽根車1の吸込側に配置されている。本実施形態では、複数の永久磁石5が設けられているが、本発明は本実施形態に限定されず、複数の磁極が着磁された1つの永久磁石を用いてもよい。具体的には、S極とN極とが交互に着磁された、複数の磁極を有する1つの環状の永久磁石を用いてもよい。
【0017】
ポンプケーシング2とモータケーシング3との間にはシール部材としてのOリング9が設けられている。Oリング9を設けることにより、ポンプケーシング2とモータケーシング3との間から液体が漏洩することを防止することができる。
【0018】
モータケーシング3には、吸込口15aを有する吸込ポート15が液密的に連結されている。この吸込ポート15はフランジ形状を有しており、図示しない吸込ラインに接続される。吸込ポート15、モータケーシング3、および軸受組立体10の中心部には、それぞれ液体流路15b,3a,10aが形成されている。これら液体流路15b,3a,10aは一列に連結され、吸込口15aから羽根車1の液体入口まで延びる1つの液体流路を構成する。液体流路15b,3a,10aは、羽根車1の液体入口に連通している。
【0019】
本実施形態に係るモータポンプ50は、永久磁石5およびモータ固定子6がこれら液体流路15b,3a,10aに沿って配置されるアキシャルギャップ型PMモータを搭載したキャンドモータポンプである。
【0020】
ポンプケーシング2の側面には、吐出口16aを有する吐出ポート16が設けられており、回転する羽根車1によって昇圧された液体は、吐出口16aを通って吐き出される。なお、本実施形態に係るモータポンプ50は、吸込口15aと吐出口16aが直交する、いわゆるエンドトップ型モータポンプである。
【0021】
羽根車1は、滑りやすく、かつ摩耗しにくい非磁性材料から形成されている。例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPPS(ポリフェニレンスルファイド)などの樹脂や、セラミックが好適に使用される。ポンプケーシング2およびモータケーシング3(エンドカバー4を含む)も羽根車1と同じ材料から形成することができる。
【0022】
羽根車1は単一の軸受組立体10によって回転自在に支持されている。この軸受組立体10は流体の動圧を利用した滑り軸受(動圧軸受)である。この軸受組立体10は、互いに緩やかに係合する回転側軸受11と固定側軸受12の組み合わせから構成される。回転側軸受11は、羽根車1に固定されており、羽根車1の流体入口を囲むように配置されている。固定側軸受12は、モータケーシング3に固定されており、回転側軸受11の吸込側に配置されている。この固定側軸受12は、円筒状の円筒部13と、円筒部13から外側に突出するフランジ部14とを有している。円筒部13は回転側軸受11の軸方向に延びている。円筒部13およびフランジ部14は一体的に構成されている。
【0023】
円筒部13は羽根車1のラジアル荷重を支持するラジアル面(外周面)12aを有しており、フランジ部14は羽根車1のスラスト荷重を支持するスラスト面(側面)12bを有している。ラジアル面12aは羽根車1の軸心と平行であり、スラスト面12bは羽根車1の軸心に対して垂直である。回転側軸受11は固定側軸受12の円筒部13の周囲に配置されている。
【0024】
回転側軸受11は、固定側軸受12のラジアル面12aに対向する内面11aと、内面11aとは反対側の外面11bと、内面11aと外面11bとの間を延びる側面11cとを有している。回転側軸受11の側面11cは、固定側軸受12のスラスト面12bに対向している。回転側軸受11の内面11aとラジアル面12aとの間、および回転側軸受11の側面11cとスラスト面12bとの間には微小な隙間が形成されている。回転側軸受11と羽根車1との間には図示しないシール部材が設けられており、回転側軸受11は羽根車1に液密的に固定されている。同様に、固定側軸受12とモータケーシング3との間には図示しないシール部材が設けられており、固定側軸受12はモータケーシング3に液密的に固定されている。
【0025】
羽根車1から吐き出された流体の一部は、羽根車1とモータケーシング3との間の微小な隙間を通って軸受組立体10に導かれる。回転側軸受11が羽根車1とともに回転すると、回転側軸受11と固定側軸受12との間に流体の動圧が発生し、これにより羽根車1が軸受組立体10によって非接触に支持される。固定側軸受12は、直交するラジアル面12aおよびスラスト面12bにより回転側軸受11を支持しているので、羽根車1の傾動は軸受組立体10により制限される。
【0026】
モータ固定子6は、固定子コア6Aと、複数の固定子コイル6Bとを有している。これら複数の固定子コイル6Bは環状に配列されている。羽根車1およびモータ固定子6は、軸受組立体10および吸込口15aと同心状に配列されている。
【0027】
固定子コイル6Bには、リード線25が接続されており、モータケーシング3の外面には、コネクタ27が取り付けられている。固定子コイル6Bは、リード線25およびコネクタ27を介してインバータ装置26に接続されている。インバータ装置26は、電源28に接続されている。
【0028】
このインバータ装置26は、電流をモータ固定子6の固定子コイル6Bに供給して、モータ固定子6に回転磁界を発生させる。この回転磁界は羽根車1に埋設されている永久磁石5に作用し、羽根車1を回転駆動する。羽根車1のトルクはモータ固定子6に供給される電流の大きさに依存する。羽根車1にかかる負荷が一定である限り、モータ固定子6に供給される電流は概ね一定である。
【0029】
羽根車1が回転すると、液体は吸込口15aから羽根車1の液体入口に導入される。液体は羽根車1の回転によって昇圧され、吐出口16aから吐き出される。羽根車1が液体を移送している間、羽根車1の背面は昇圧された液体によって吸込側に(すなわち吸込口15aに向かって)押圧される。軸受組立体10は、羽根車1の吸込側に配置されているので、羽根車1のスラスト荷重を吸込側から支持する。
【0030】
羽根車1の軸受組立体10と反対側の外面には、第1磁石41と第1ヨーク42からなる第1磁性体が備えられている。第1ヨーク42は羽根車1に接し、第1磁石41は第1ヨーク42に接している。第1磁石41および第1ヨーク42は、例えば、羽根車1と同心の円板またはリングの形状を有する。第1磁石41および第1ヨーク42は、羽根車1の軸受組立体10と反対側の外面の上に固定または取り付けられていてもよいし、当該外面にその一部または全体が埋設されていてもよい。
【0031】
また、ポンプケーシング2の内壁面のうち羽根車1上の第1磁石41と対向する面には、第2磁石43と第2ヨーク44からなる第2磁性体が備えられている。第2ヨーク44はポンプケーシング2の内壁面に接し、第2磁石43は第2ヨーク44に接している。第2磁石43および第2ヨーク44は、例えば、第1磁石41および第1ヨーク42と同心の円板またはリングの形状を有する。第2磁石43および第2ヨーク44は、ポンプケーシング2の内壁面上に固定または取り付けられていてもよいし、当該内壁面にその一部または全体が埋設されていてもよい。
【0032】
羽根車1上の第1磁石41とポンプケーシング2の内壁面上の第2磁石43は、反対の磁極(すなわちS極とN極)が向かい合うように配置されている。これにより、羽根車1には、第1磁石41と第2磁石43間の吸引力によって羽根車1を軸受組立体10から浮上させようとする力が作用する。したがって、羽根車1の停止時や低速回転時など、軸受組立体10の回転側軸受11と固定側軸受12との間に十分な動圧が発生していないような状況であっても、軸受組立体10のスラスト荷重を軽減することができ、その結果、軸受組立体10における回転側軸受11と固定側軸受12との機械的な接触に起因する不具合を防止することができる。
【0033】
また、第1磁石41には第1ヨーク42が隣接して設けられ、第2磁石43には第2ヨーク44が隣接して設けられているので、第1磁石41および第2磁石43の周りの磁気抵抗が低減し、磁束密度が大きくなる。これにより、第1磁石41と第2磁石43間の吸引力が増大し、羽根車1を軸受組立体10から浮上させようとする力が大きくなる。したがって、小型の第1磁石41および第2磁石43を用いて軸受組立体10のスラスト荷重の大きな軽減効果を得ることが可能となり、第1ヨーク42および第2ヨーク44を有しない構成に比べて、モータポンプ50を小型化することができる。
【0034】
なお、第1磁石41と第2磁石43のうちどちらか一方は省略されてもよい。第1磁石41と第2磁石43の一方が省略された構成であっても、羽根車1側の第1磁性体とポンプケーシング2側の第2磁性体との吸引力によって軸受組立体10のスラスト荷重を軽減することができる。ただし、第1磁石41と第2磁石43の両方を用いた構成の方が、羽根車1を軸受組立体10から浮上させようとする力や、さらには羽根車1がラジアル方向に変位した際に羽根車1の位置を回転軸側へ復元する力をより大きくすることができる。
【0035】
図2はポンプ装置の別の実施形態に係るモータポンプ52の断面図である。図2において、前述の図1における構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付す。本実施形態のモータポンプ52では、羽根車1上の第1磁石が、内周側の第1リング磁石41Aと、第1リング磁石41Aの外周側に配置された第2リング磁石41Bから構成され、ポンプケーシング2の内壁面上の第2磁石も同様に、内周側の第1リング磁石43Aと、第1リング磁石43Aの外周側に配置された第2リング磁石43Bから構成される。各リング磁石41A、41B、43A、および43Bは、羽根車1と同心のリングの形状を有している。モータポンプ52のこれら4つのリング磁石41A、41B、43A、および43B以外の部分の構成は、図1のモータポンプ50における各部の構成と同じである。
【0036】
羽根車1上に備えられた内周側の第1リング磁石41Aと外周側の第2リング磁石41Bは、磁極の向きが互いに反対となるように配置されている。同様に、ポンプケーシング2の内壁面上に備えられた内周側の第1リング磁石43Aと外周側の第2リング磁石43Bも、磁極の向きが互いに反対となるように配置されている。羽根車1上の第1リング磁石41Aとポンプケーシング2の内壁面上の第1リング磁石43Aは、磁極が同じ向きに向けられている(なお、第1リング磁石41AのN極とS極がどちら側であるかは任意である)。
【0037】
このような配置により、磁束が順に第1リング磁石41A、第1リング磁石43A、第2ヨーク44、第2リング磁石43B、第2リング磁石41B、第1ヨーク42を通るように磁気回路が形成される。そのため、周りの空間への磁束の漏れが減少し、磁束密度が大きくなる。これにより、羽根車1を軸受組立体10から浮上させようとする力が大きくなる。したがって、小型の各リング磁石41A、41B、43A、および43Bを用いながらも、軸受組立体10における回転側軸受11と固定側軸受12との機械的な接触に起因する不具合を防止することができる。
【0038】
なお、各リング磁石41A、41B、43A、および43Bは、周方向に同一の磁極を持つように構成されている。そのため、羽根車1の回転に伴う磁極の切り替わりが生じないので、渦電流は発生せず、モータポンプ52の運転に悪影響が及ぶことはない。
【0039】
図3は、モータポンプ52におけるリング磁石の断面図である。図示されるように、内周側の第1リング磁石41A、43Aの径方向の幅W1は、外周側の第2リング磁石41B、43Bの径方向の幅W2よりも広い。このような構成により、羽根車1上の各リング磁石41Aおよび41Bとポンプケーシング2の内壁面上の各リング磁石43Aおよび43Bとの間の吸引力、すなわち羽根車1を軸受組立体10から浮上させようとする力をより増大させることができる。その理由について以下に説明する。
【0040】
図4は、モータポンプ52におけるリング磁石間の吸引力のシミュレーションによる計算例を示すグラフである。図4において、横軸は、内周側と外周側のリング磁石の径方向の幅の和に対する内周側のリング磁石の径方向の幅の比W1/(W1+W2)を表し、縦軸は、羽根車1上のリング磁石41A、41Bとポンプケーシング2の内壁面上のリング磁石43A、43Bとの間の吸引力を表す。このシミュレーション結果から、内周側の第1リング磁石41A、43Aの径方向の幅W1を外周側の第2リング磁石41B、43B
の径方向の幅W2よりも広くすることで、羽根車1上のリング磁石41A、41Bとポンプケーシング2の内壁面上のリング磁石43A、43Bとの間の吸引力が増大することが理解される。
【0041】
以上、いくつかの例に基づいて本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 羽根車
2 ポンプケーシング
3 モータケーシング
3a 液体流路
4 エンドカバー
5 永久磁石
6 モータ固定子
6A 固定子コア
6B 固定子コイル
9 Oリング
10 軸受組立体
10a 液体流路
11 回転側軸受
12 固定側軸受
12a ラジアル面
12b スラスト面
13 円筒部
14 フランジ部
15 吸込ポート
15a 吸込口
15b 液体流路
16 吐出ポート
16a 吐出口
25 リード線
26 インバータ装置
27 コネクタ
28 電源
41 第1磁石
41A 第1リング磁石
41B 第2リング磁石
42 第1ヨーク
43 第2磁石
43A 第1リング磁石
43B 第2リング磁石
44 第2ヨーク
50 モータポンプ
52 モータポンプ
図1
図2
図3
図4