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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113108
(43)【公開日】2022-08-03
(54)【発明の名称】車両用窓ガラス
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/32 20060101AFI20220727BHJP
   H01Q 21/24 20060101ALI20220727BHJP
   H01Q 5/371 20150101ALI20220727BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
H01Q21/24
H01Q5/371
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182103
(22)【出願日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2021009095
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】船津 聡史
(72)【発明者】
【氏名】尾郷 優
【テーマコード(参考)】
5J021
5J046
【Fターム(参考)】
5J021AB06
5J021JA04
5J021JA05
5J046AB17
5J046LA05
5J046LA06
5J046LA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】VHF帯とUHF帯の両方の電波を比較的簡素な構成で受信可能なアンテナを備える車両用窓ガラスを提供する。
【解決手段】車両用窓ガラス101は、ガラス板10と、ガラス板に設けられたアンテナ20Aと、を備える。アンテナは、給電部21と、給電部に電気的に接続され第1開放端35まで延伸する第1エレメント30と、給電部21に電気的に接続され第2開放端45まで延伸する第2エレメント40と、給電部21に電気的に接続され第3開放端55まで延伸する第3エレメント50と、を有する。第1エレメント30は、第1方向(+Y)に延伸する第1部分31と、第1部分31から折り返して第1方向(+Y)とは反対側の第2方向(-Y)に延伸する第2部分32とを、含む。アンテナは、第1エレメント30、第2エレメント40及び第3エレメント50が、この順に、第1方向(+Y)及び第2方向(-Y)とは異なる第3方向(+X)に並ぶ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板と、
前記ガラス板に設けられ、第1周波数帯の電波、前記第1周波数帯よりも低い第2周波数帯の電波及び前記第2周波数帯よりも低い第3周波数帯の電波を受信するアンテナと、を備え、
前記第1周波数帯は、UHF帯に含まれる帯域であり、
前記第2周波数帯及び前記第3周波数帯は、VHF帯に含まれる帯域であり、
前記アンテナは、給電部と、前記給電部に電気的に接続された第1接続端から前記第1接続端とは反対側の第1開放端まで延伸する第1エレメントと、前記給電部に電気的に接続された第2接続端から前記第2接続端とは反対側の第2開放端まで延伸する第2エレメントと、前記給電部に電気的に接続された第3接続端から前記第3接続端とは反対側の第3開放端まで延伸する第3エレメントと、を有し、
前記第1エレメントは、第1方向に延伸する第1部分と、前記第1部分から折り返して前記第1方向とは反対側の第2方向に延伸する第2部分とを、含み、
前記第2エレメントは、前記第1方向に延伸する第3部分を含み、
前記第3エレメントは、前記第1方向に延伸する第4部分を含み、
前記第1エレメント、前記第2エレメント及び前記第3エレメントは、前記第1エレメント、前記第2エレメント、前記第3エレメントの順、又は、前記第2エレメント、前記第1エレメント、前記第3エレメントの順に、前記第1方向及び前記第2方向とは異なる第3方向に並んでいる、車両用窓ガラス。
【請求項2】
前記アンテナは、第1接続エレメントと第2接続エレメントとの少なくとも一方を有し、
前記第1接続エレメントは、前記第1エレメント又は前記第2エレメントを前記給電部に電気的に接続し、
前記第2接続エレメントは、前記第3エレメントを前記給電部に電気的に接続する、請求項1に記載の車両用窓ガラス。
【請求項3】
前記第1接続エレメントと前記第2接続エレメントとの少なくとも一方は、前記第3方向に延伸する部分を有する、請求項2に記載の車両用窓ガラス。
【請求項4】
前記第1部分と前記第2部分と前記第3部分とのうち前記第4部分に最も近接する部分と、前記第4部分との間隔は、5mm以上200mm以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項5】
前記第2部分の前記第2方向への延伸部と、前記第1部分との間隔は、1mm以上30mm以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項6】
前記第1部分の長さをD、前記第2周波数帯の電波の空気中における波長をλ、前記ガラス板の波長短縮率をkとするとき、Dは、
0.10×λ×k≦D≦0.24×λ×k
を満足する、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項7】
前記給電部から前記第1部分及び前記第2部分を経由して前記第1開放端までの経路長をL、前記第1周波数帯の電波の空気中における波長をλ、前記ガラス板の波長短縮率をkとするとき、Lは、
0.48×λ×k≦L≦0.99×λ×k
を満足する、請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項8】
前記第1部分の長さをD、前記給電部から前記第3部分を経由して前記第2開放端までの経路長をLとするとき、
<L
を満足する、請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項9】
前記給電部から前記第3部分を経由して前記第2開放端までの経路長をL、前記第2周波数帯の電波の空気中における波長をλ、前記ガラス板の波長短縮率をkとするとき、Lは、
0.17×λ×k≦L≦0.42×λ×k
を満足する、請求項1から8のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項10】
前記給電部から前記第4部分を経由して前記第3開放端までの経路は、L字形状を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項11】
前記給電部から前記第4部分を経由して前記第3開放端までの経路長をL、前記第3周波数帯の電波の空気中における波長をλ、前記ガラス板の波長短縮率をkとするとき、Lは、
0.19×λ×k≦L≦0.44×λ×k
を満足する、請求項1から10のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項12】
前記アンテナは、前記第3エレメントにおける分岐点から分岐し、開放端を有する分岐エレメントを有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項13】
前記アンテナは、
前記第3エレメントを前記給電部に電気的に接続する第2接続エレメントと、
前記第2接続エレメントにおける分岐点から分岐し、開放端を有する分岐エレメントと、を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項14】
前記分岐エレメントは、前記第3方向に延伸する部分を含む、請求項12又は13に記載の車両用窓ガラス。
【請求項15】
前記分岐エレメントの長さをL、前記第1周波数帯の電波の空気中における波長をλ、前記ガラス板の波長短縮率をkとするとき、Lは、
0.11×λ×k≦L≦0.50×λ×k、
を満足する、請求項12から14のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項16】
前記給電部から前記分岐点までの経路長をL、前記第1周波数帯の電波の空気中における波長をλ、前記ガラス板の波長短縮率をkとするとき、Lは、
0.11×λ×k≦L≦0.50×λ×k
を満足する、請求項12から15のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項17】
前記第3方向は、前記第1方向に略直交する、請求項1から16のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項18】
前記給電部は、前記ガラス板が取り付けられる窓枠の角部の近傍に位置するように設けられた、請求項1から17のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項19】
前記ガラス板は、サイドガラス用である、請求項1から18のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項20】
前記第1エレメント、前記第2エレメント及び前記第3エレメントは、前記第1エレメント、前記第2エレメント、前記第3エレメントの順に、前記第3方向に並んでいる、請求項1から19のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項21】
前記第1周波数帯は、地上デジタルテレビ放送波の帯域であり、前記第2周波数帯は、DAB Band IIIの帯域であり、前記第3周波数帯は、FM放送波の帯域である、請求項1から20のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項22】
前記第1方向及び前記第2方向は、前記ガラス板が車両に取り付けられたとき、鉛直方向に略平行となる、請求項1から21のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項23】
前記第1方向及び前記第2方向は、前記ガラス板が車両に取り付けられたとき、水平方向に略平行となる、請求項1から21のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項24】
前記給電部から前記第1部分及び前記第2部分を経由して前記第1開放端までの経路長をL、前記給電部から前記第4部分を経由して前記第3開放端までの経路長をLとするとき、LはLよりも短い、請求項1から23のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項25】
前記給電部から前記第3部分を経由して前記第2開放端までの経路長をLとするとき、LはLよりも短い、請求項24に記載の車両用窓ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両に搭載されるアンテナとして、AM放送波、FM放送波、地上デジタルテレビ放送波、DAB(Digital Audio Broadcasting)等の複数の周波数帯の信号を受信可能な複合的なアンテナ素子が集約されたアンテナが実用化されている。例えば、第1給電部に接続され、FM放送波及びDAB Band IIIの電波を受信する第1アンテナと、第2給電部に接続され、AM放送波を受信する第2アンテナと、第3給電部に接続され、TV放送帯域の電波を受信する第3アンテナと、を備えるガラスアンテナが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-142162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、VHF帯とUHF帯の両方の電波を受信するには、給電部の異なる複数のアンテナが必要となるため、アンテナの構成が複雑であった。
【0005】
本開示は、VHF帯とUHF帯の両方の電波を比較的簡素な構成で受信可能なアンテナを備える車両用窓ガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
ガラス板と、
前記ガラス板に設けられ、第1周波数帯の電波、前記第1周波数帯よりも低い第2周波数帯の電波及び前記第2周波数帯よりも低い第3周波数帯の電波を受信するアンテナと、を備え、
前記第1周波数帯は、UHF帯に含まれる帯域であり、
前記第2周波数帯及び前記第3周波数帯は、VHF帯に含まれる帯域であり、
前記アンテナは、給電部と、前記給電部に電気的に接続された第1接続端から前記第1接続端とは反対側の第1開放端まで延伸する第1エレメントと、前記給電部に電気的に接続された第2接続端から前記第2接続端とは反対側の第2開放端まで延伸する第2エレメントと、前記給電部に電気的に接続された第3接続端から前記第3接続端とは反対側の第3開放端まで延伸する第3エレメントと、を有し、
前記第1エレメントは、第1方向に延伸する第1部分と、前記第1部分から折り返して前記第1方向とは反対側の第2方向に延伸する第2部分とを、含み、
前記第2エレメントは、前記第1方向に延伸する第3部分を含み、
前記第3エレメントは、前記第1方向に延伸する第4部分を含み、
前記第1エレメント、前記第2エレメント及び前記第3エレメントは、前記第1エレメント、前記第2エレメント、前記第3エレメントの順、又は、前記第2エレメント、前記第1エレメント、前記第3エレメントの順に、前記第1方向及び前記第2方向とは異なる第3方向に並んでいる、車両用窓ガラスを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、VHF帯とUHF帯の両方の電波を比較的簡素な構成で受信可能なアンテナを備える車両用窓ガラスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態にかかるアンテナを備える車両用窓ガラスの一構成例を示す平面図である。
図2】第2実施形態にかかるアンテナを備える車両用窓ガラスの一構成例を示す平面図である。
図3】第3実施形態にかかるアンテナを備える車両用窓ガラスの一構成例を示す平面図である。
図4】第4実施形態にかかるアンテナを備える車両用窓ガラスの一構成例を示す平面図である。
図5】第5実施形態にかかるアンテナを備える車両用窓ガラスの一構成例を示す平面図である。
図6】第6実施形態にかかるアンテナを備える車両用窓ガラスの一構成例を示す平面図である。
図7】第3実施形態にかかるアンテナを備える車両用窓ガラスを車両の窓枠に取り付けた窓ガラス取り付け構造の一構成例を示す平面図である。
図8】地上デジタルテレビ放送波、DAB Band III及びFM放送波の帯域における第3実施形態のアンテナの反射特性の一例を示す図である。
図9】分岐エレメントの長さと分岐点の位置を変化させたときの、地上デジタルテレビ放送波の帯域におけるアンテナの反射特性の一例を示す図である。
図10】分岐エレメントの長さと分岐点の位置を変化させたときの、DAB Band IIIの帯域におけるアンテナの反射特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本開示にかかる各実施形態について説明する。なお、理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。X軸方向、Y軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向は、互いに直交する。XY平面は、それぞれ、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面を表す。
【0010】
本実施形態における車両用窓ガラスの例として、車両の後部に取り付けられるリアガラス、車両の前部に取り付けられるフロントガラス、車両の側部に取り付けられるサイドガラスなどがある。車両用窓ガラスは、これらの例に限られない。
【0011】
図1は、第1実施形態にかかるアンテナを備える車両用窓ガラスの一構成例を示す平面図である。図1に示す窓ガラス101は、車両用窓ガラスの一例であり、車体に形成された窓枠210に取り付けられる。窓ガラス101は、ガラス板10と、アンテナ20Aとを備える。図1は、ガラス板10の表面の法線方向からの平面視で、窓ガラス101の一部を示している。
【0012】
窓枠210は、接地可能な導電性の部位であり、フランジとも称される。窓枠210は、窓ガラス101によって覆われる開口部を形成する枠辺211を有する。図1には、窓枠210の一部及び枠辺211の一部が示されている。
【0013】
ガラス板10は、車両用のガラス板の一例であり、透明又は半透明な板状の誘電体である。ガラス板10は、窓枠210に取り付けられる外周縁12を有する。図1には、外周縁12の一部が示されている。ガラス板10は、車内側からの平面視で外周縁12が窓枠210と重なるように、窓枠210に取り付けられる。
【0014】
アンテナ20Aは、アンテナの一例であり、ガラス板10に設けられている。アンテナ20Aは、第1周波数帯Fの電波、第1周波数帯Fよりも低い第2周波数帯Fの電波及び第2周波数帯Fよりも低い第3周波数帯Fの電波を受信可能に形成されており、それらの各周波数帯における周波数で共振する。
【0015】
アンテナ20Aの形状は、周波数が30MHz~300MHzのVHF(Very High Frequency)帯および300MHz~3GHzのUHF(Ultra High Frequency)帯の電波の送受に適している。例えば、第1周波数帯Fは、UHF帯に含まれる地上デジタルテレビ放送波の帯域(470MHz~710MHz)に設定され、第2周波数帯Fは、VHF帯に含まれるDAB Band IIIの帯域(170MHz~240MHz)に設定され、第3周波数帯Fは、VHF帯に含まれるFM放送波の帯域(76MHz~108MHz)に設定される。
【0016】
アンテナ20Aは、給電部21、第1エレメント30、第2エレメント40及び第3エレメント50を有する。
【0017】
給電部21は、給電用の電極である。給電部21は、窓ガラス101が窓枠210に取り付けられた状態で枠辺211の近傍に位置するように、ガラス板10の外周縁12の近傍に設けられている。給電部21は、コネクタ等の導電性部材を介して、給電線の一端(例えば、同軸ケーブルの信号線の一端)に電気的に接続される。給電線の他端は、例えば、受信機等の通信機器に接続される。給電部21の形状は、例えば、正方形、略正方形、長方形、略長方形などの方形状や多角形状が実装上好ましいが、これらに限られず、円、略円、楕円、略楕円などの円状のように、他の形状でもよい。
【0018】
第1エレメント30は、給電部21に電気的に接続された端部である第1接続端39から第1接続端39とは反対側の端部である第1開放端35まで延伸する線状導体である。第1エレメント30は、第1方向(この例では、正のY軸方向)に延伸する第1部分31と、第1部分31から折り返して第1方向とは反対側の第2方向(この例では、負のY軸方向)に延伸する第2部分32とを含む。なお、第2部分32は、第1部分31の端部から折り返して延伸する図1に示す形態に限られず、第1部分31の途中から折り返して延伸してもよい。
【0019】
図1に示す例では、第1部分31は、給電部21に接続された第1端部(第1接続端39)と、第2部分32の端部に接続された第2端部とを有し、第1端部から第2端部まで直線的に延伸する線条エレメントである。一方、第2部分32は、第1部分31の第2端部に接続された第3端部と、第3端部とは反対側の第4端部(第1開放端35)とを有し、第3端部から第4端部まで折れ曲がって延伸する線条エレメントである。
【0020】
図1に示す例では、第2部分32は、第1方向(この例では、正のY軸方向)とは異なる方向に第1部分31から延伸する方向転換部32aと、方向転換部32aから第2方向(この例では、負のY軸方向)に延伸する延伸部32bとを含む。延伸部32bは、第1部分31に沿って第1開放端35まで延伸する。
【0021】
なお、第2部分32は、図1に示す例では、第1部分31に対して第3エレメント50側とは反対側に折り返しているが、第1部分31に対して第3エレメント50側に折り返してもよい。この場合、第2部分32の延伸部32bは、第1エレメント30の第1部分31と第2エレメント40の第3部分43との間に位置することが好ましい。
【0022】
また、第1エレメント30は、第1方向及び第2方向とは異なる方向に延伸する部分を更に含んでもよく、例えば、延伸部32bの途中又は端部から延伸する部分を含んでもよい。
【0023】
第2エレメント40は、給電部21に電気的に接続された端部である第2接続端49から第2接続端49とは反対側の端部である第2開放端45まで延伸する線状導体である。第2エレメント40は、第1方向(この例では、正のY軸方向)に延伸する第3部分43を含む。
【0024】
図1に示す例では、第3部分43は、給電部21に第1接続エレメント61を介して接続された第5端部(第2接続端49)と、第5端部とは反対側の第6端部(第2開放端45)とを有し、第5端部から第6端部まで直線的に延伸する線条エレメントである。
【0025】
なお、第2エレメント40は、第1方向とは異なる方向に延伸する部分を更に含んでもよく、例えば、第3部分43の途中又は端部から延伸する部分を含んでもよい。
【0026】
第3エレメント50は、給電部21に電気的に接続された端部である第3接続端59から第3接続端59とは反対側の端部である第3開放端55まで延伸する線状導体である。第3エレメント50は、第1方向(この例では、正のY軸方向)に延伸する第4部分54を含む。
【0027】
図1に示す例では、第4部分54は、給電部21に第1接続エレメント61及び第2接続エレメント62を介して接続された第7端部(第3接続端59)と、第7端部とは反対側の第8端部(第3開放端55)とを有し、第7端部から第8端部まで直線的に延伸する線条エレメントである。
【0028】
なお、第3エレメント50は、第1方向とは異なる方向に延伸する部分を更に含んでもよく、例えば、第4部分54の途中又は端部から延伸する部分を含んでもよい。
【0029】
図1において、第1エレメント30、第2エレメント40及び第3エレメント50は、第1エレメント30、第2エレメント40、第3エレメント50の順に、第1方向及び第2方向とは異なる第3方向(この例では、正のX軸方向)に並んでいる。図1に示す例では、第1部分31、第3部分43及び第4部分54は、第1部分31、第3部分43、第4部分54の順に、正のX軸方向に並んで配置されている。
【0030】
このように、アンテナ20Aは、複数のエレメント(第1エレメント30、第2エレメント40及び第3エレメント50)を備えるので、UHF帯とVHF帯の両方で共振するようにアンテナ20Aのチューニングを容易にできる。また、第1エレメント30は、第1方向に延伸する第1部分31と、第1部分31から折り返して第1方向とは反対側の第2方向に延伸する第2部分32とを含むことで、UHF帯とVHF帯の両方で共振するようにアンテナ20Aのチューニングをより容易にできる。さらに、第1エレメント30、第2エレメント40及び第3エレメント50は、単一の給電部21に電気的に接続されているので、アンテナ20Aは、UHF帯とVHF帯の両方の電波を比較的簡素な構成で受信できる。
【0031】
第3方向(この例では、正のX軸方向)は、第1方向(この例では、正のY軸方向)に略直交すると、第3方向が第1方向に直交しない形態に比べて、UHF帯とVHF帯の両方で共振するようにアンテナ20Aのチューニングを容易にできる。
【0032】
第1方向及び第2方向は、ガラス板10が車両の窓枠210に取り付けられたとき、水平面に垂直な方向(鉛直方向)に略平行となると、アンテナ20Aの垂直偏波の受信感度(アンテナ利得)が向上する。これは、第1部分31、第2部分32の延伸部32b、第3部分43及び第4部分54が延伸する方向を、鉛直方向に近づけられるからである。
【0033】
あるいは、第1方向及び第2方向は、ガラス板10が車両の窓枠210に取り付けられたとき、水平面に平行な方向(水平方向)に略平行となると、アンテナ20Aの水平偏波の受信感度(アンテナ利得)が向上する。これは、第1部分31、第2部分32の延伸部32b、第3部分43及び第4部分54が延伸する方向を、水平方向に近づけられるからである。
【0034】
ここで、給電部21から第1部分31及び第2部分32を経由して第1開放端35までの経路長をLとし、給電部21から第3部分43を経由して第2開放端45までの経路長をLとし、給電部21から第4部分54を経由して第3開放端55までの経路長をLとする。
【0035】
経路長Lは経路長Lよりも短いと、VHF帯内の第3周波数帯Fでのアンテナ20Aの共振周波数をLの調整により容易にチューニングでき、UHF帯内の第1周波数帯Fでのアンテナ20Aの共振周波数をLの調整により容易にチューニングできる。さらに、経路長Lは経路長Lよりも短いと、VHF帯内の第3周波数帯Fでのアンテナ20Aの共振周波数をLの調整により容易にチューニングでき、VHF帯内の第2周波数帯Fでのアンテナ20Aの共振周波数をLの調整により容易にチューニングできる。
【0036】
図1に示す例では、アンテナ20Aは、第1接続エレメント61と第2接続エレメント62との両方を有する。この例では、第1接続エレメント61は、第2エレメント40の第2接続端49を給電部21に電気的に接続する線条エレメントであり、第2接続エレメント62は、第3エレメント50の第3接続端59を給電部21に電気的にする線条エレメントである。第2接続エレメント62は、第3エレメント50を第2エレメント40に接続するエレメントでもよく、図1に示すように、第3エレメント50の第3接続端59を第2エレメント40の第2接続端49に接続してもよい。この例では、第3接続端59は、第2接続エレメント62及び第1接続エレメント61を介して給電部21に電気的に接続されている。
【0037】
第1接続エレメント61と第2接続エレメント62との少なくとも一方は、第3方向(この例では、正のX軸方向)に延伸する部分を有すると、第1部分31と第3部分43と第4部分54との相互の間隔をある程度確保できる。よって、第1エレメント30、第2エレメント40及び第3エレメント50の各々による共振周波数のチューニングが相互に影響し合うことを抑制できる。図1に示す例では、第1接続エレメント61は、給電部21から第2接続端49まで第3方向に延伸し、第2接続エレメント62は、第2接続端49から第3接続端59まで第3方向に延伸する。
【0038】
第1部分31と第2部分32と第3部分43とのうち第4部分54に最も近接する部分と、第4部分54との間隔Wは、5mm以上200mm以下であると、第3周波数帯F(例えば、FM放送波の帯域)でのアンテナ20Aのアンテナ利得が向上する。図1に示す例では、間隔Wは、第3部分43と第4部分54との最短距離に相当する。
【0039】
間隔Wが5mm未満であると、第4部分54に最も近接する部分と第4部分54との容量結合が強くなるため、第3周波数帯Fでのアンテナ20Aのアンテナ利得が低下しやすくなる。一方、間隔Wが200mmを超えると、アンテナ20Aの小型化が難しくなる。第3周波数帯Fでのアンテナ20Aのアンテナ利得が向上する点で、間隔Wは、10mm以上が好ましく、15mm以上がより好ましく、20mm以上がさらに好ましい。また、間隔Wは、アンテナ20Aの小型化を実現するために、150mm以下が好ましく、100mm以下がより好ましく、50mm以下がさらに好ましい。
【0040】
第2部分32の第2方向(この例では、負のY軸方向)への延伸部32bと、第1部分31との間隔Wは、1mm以上30mm以下であると、第1周波数帯F(例えば、地上デジタルテレビ放送波の帯域)のアンテナ利得が向上する。
【0041】
間隔Wが1mm未満であると、第1エレメント30の形成が難しくなる。間隔Wが30mmを超えると、第1周波数帯Fのアンテナ利得が低下しやすくなる。間隔Wは、第1エレメント30の形成を容易にするために、2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。また、第1周波数帯Fのアンテナ利得を確保する点で、間隔Wは、25mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましく、15mm以下がさらに好ましく、10mm以下が特に好ましい。
【0042】
第1部分31の長さをD、第2周波数帯Fの電波の空気中における波長をλ、ガラス板10の波長短縮率をkとする。図1に示す例では、長さDは、給電部21に接続された第1端部(第1接続端39)から第2部分32の端部が接続された第2端部までの経路長に相当する。このとき、Dは、
0.10×λ×k≦D≦0.24×λ×k ・・・式1a
を満足すると、第1周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にできる。式1aを満足する範囲でDを調整すると、第1周波数帯Fでの共振周波数の変化が大きいのに対し、第2周波数帯Fの共振周波数の変化が小さいからである。
【0043】
は、第1周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にする点で、
0.11×λ×k≦D≦0.23×λ×k ・・・式1b
を満足すると好ましく、
0.12×λ×k≦D≦0.22×λ×k ・・・式1c
を満足するとより好ましい。
【0044】
また、Dは、第2周波数帯Fの電波の空気中における中心波長をλ2Cとするとき、第1周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にする点で、
0.13×λ2C×k≦D≦0.20×λ2C×k ・・・式1d
を満足するとさらに好ましく、
0.14×λ2C×k≦D≦0.19×λ2C×k ・・・式1e
を満足するととくに好ましい。
【0045】
なお、中心波長とは、周波数帯の中心周波数を有する電波の波長をいう。
【0046】
給電部21から第1部分31及び第2部分32を経由して第1開放端35までの経路長をL、第1周波数帯Fの電波の空気中における波長をλ、ガラス板10の波長短縮率をkとする。このとき、Lは、
0.48×λ×k≦L≦0.99×λ×k ・・・式2a
を満足すると、第1周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にできる。式2aを満足する範囲でLを調整すると、第1周波数帯Fでの共振周波数の変化が大きいのに対し、第2周波数帯Fの共振周波数の変化が小さいからである。
【0047】
は、第1周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にする点で、
0.49×λ×k≦L≦0.99×λ×k ・・・式2b
を満足すると好ましく、
0.50×λ×k≦L≦0.99×λ×k ・・・式2c
を満足するとより好ましい。
【0048】
また、Lは、第1周波数帯Fの電波の空気中における中心波長をλ1Cとするとき、第1周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にする点で、
0.63×λ1C×k≦L≦0.83×λ1C×k ・・・式2d
を満足するとさらに好ましく、
0.64×λ1C×k≦L≦0.82×λ1C×k ・・・式2e
を満足するととくに好ましい。
【0049】
給電部21から第3部分43を経由して第2開放端45までの経路長をL、第2周波数帯Fの電波の空気中における波長をλ、ガラス板10の波長短縮率をkとする。このとき、Lは、
0.17×λ×k≦L≦0.42×λ×k ・・・式3a
を満足すると、第2周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にできる。式3aを満足する範囲でLを調整すると、第2周波数帯Fでの共振周波数の変化が大きいのに対し、第3周波数帯Fの共振周波数の変化が小さいからである。
【0050】
経路長Lは、第2周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にする点で、
0.18×λ×k≦L≦0.41×λ×k ・・・式3b
を満足すると好ましく、
0.19×λ×k≦L≦0.40×λ×k ・・・式3c
を満足するとより好ましい。
【0051】
また、Lは、第2周波数帯Fの電波の空気中における中心波長をλ2Cとするとき、第2周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にする点で、
0.21×λ2C×k≦L≦0.36×λ2C×k ・・・式3d
を満足するとさらに好ましく、
0.22×λ2C×k≦L≦0.35×λ2C×k ・・・式3e
を満足するととくに好ましい。
【0052】
さらに、第1部分31の長さDと、給電部21から第3部分43を経由して第2開放端45までの経路長L、とを比較すると、第1周波数帯F及び第2周波数帯Fの共振周波数のチューニングを容易にできる点で、
<L ・・・式3f
を満足すればよく、
×1.1<L ・・・式3g
を満足すると好ましく、
×1.2<L ・・・式3h
を満足するとより好ましい。
【0053】
給電部21から第4部分54を経由して第3開放端55までの経路は、L字形状を有すると、第3周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にできる。当該経路は、L字形状を有すればよく、例えば、第3エレメント50の先端部は、折れ曲がってもよい。
【0054】
給電部21から第4部分54を経由して第3開放端55までの経路長をL、第3周波数帯Fの電波の空気中における波長をλ、ガラス板10の波長短縮率をkとする。このとき、Lは、
0.19×λ×k≦L≦0.44×λ×k ・・・式4a
を満足すると、第3周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にできる。式4aを満足する範囲でLを調整すると、第3周波数帯Fでの共振周波数の変化が大きいのに対し、第2周波数帯Fの共振周波数の変化が小さいからである。
【0055】
は、第3周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にする点で、
0.21×λ×k≦L≦0.43×λ×k ・・・式4b
を満足すると好ましく、
0.23×λ×k≦L≦0.41×λ×k ・・・式4c
を満足するとより好ましい。
【0056】
また、Lは、第3周波数帯Fの電波の空気中における中心波長をλ3Cとするとき、第3周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にする点で、
0.23×λ3C×k≦L≦0.37×λ3C×k ・・・式4d
を満足するとさらに好ましく、
0.25×λ3C×k≦L≦0.35×λ3C×k ・・・式4e
を満足するととくに好ましい。
【0057】
図2は、第2実施形態にかかるアンテナを備える車両用窓ガラスの一構成例を示す平面図である。第2実施形態において、上述の実施形態と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで省略する。図2に示す窓ガラス102は、アンテナ20Bを備える。第2実施形態のアンテナ20Bは、第1実施形態にかかるアンテナ20Aと同様の構成を有するので、アンテナ20Aが有する上述の効果と同様の効果を有する。第2実施形態にかかるアンテナ20Bは、第1エレメント30、第2エレメント40及び第3エレメント50の第3方向への並び順が、第1実施形態にかかるアンテナ20Aと相違する。
【0058】
図2において、第1エレメント30、第2エレメント40及び第3エレメント50は、第2エレメント40、第1エレメント30、第3エレメント50の順に、第3方向(この例では、正のX軸方向)に並んでいる。図2に示す例では、第1部分31、第3部分43及び第4部分54は、第3部分43、第1部分31、第4部分54の順に、正のX軸方向に並んで配置されている。
【0059】
図2に示す例では、アンテナ20Bは、第1接続エレメント61と第2接続エレメント62との両方を有する。この例では、第1接続エレメント61は、第1エレメント30の第1接続端39を給電部21に電気的に接続する線条エレメントであり、第2接続エレメント62は、第3エレメント50の第3接続端59を給電部21に電気的にする線条エレメントである。第2接続エレメント62は、第3エレメント50を第1エレメント30に接続するエレメントでもよく、図2に示すように、第3エレメント50の第3接続端59を第1エレメント30の第1接続端39に接続してもよい。この例では、第3接続端59は、第2接続エレメント62及び第1接続エレメント61を介して給電部21に電気的に接続されている。
【0060】
図2に示す例では、第1接続エレメント61は、給電部21から第1接続端39まで第3方向に延伸し、第2接続エレメント62は、第1接続端39から第3接続端59まで第3方向に延伸する。また、図2に示す例では、間隔Wは、第1部分31と第4部分54との最短距離に相当する。
【0061】
図3は、第3実施形態にかかるアンテナを備える車両用窓ガラスの一構成例を示す平面図である。第3実施形態において、上述の実施形態と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで省略する。図3に示す窓ガラス103は、アンテナ20Cを備える。第3実施形態にかかるアンテナ20Cは、第1実施形態にかかるアンテナ20Aと同様の構成を有するので、アンテナ20Aが有する上述の効果と同様の効果を有する。第3実施形態にかかるアンテナ20Cは、分岐エレメント70を有する点で、第1実施形態にかかるアンテナ20Aと相違する。
【0062】
図3において、分岐エレメント70は、第3エレメント50の第4部分54における分岐点76から分岐する線状導体であり、分岐点76とは反対側の端部に開放端75を有する。分岐エレメント70を備えることで、UHF帯とVHF帯の両方で共振するようにアンテナ20Cのチューニングをより容易にできる。図3に示す例では、分岐エレメント70は、第3方向(この例では、正のX軸方向)に延伸する部分77を含む。分岐エレメント70は、例えば、分岐点76から開放端75まで直線的に第3方向に延伸する線条エレメントである。
【0063】
分岐エレメント70の長さをL、第1周波数帯Fの電波の空気中における波長をλ、ガラス板10の波長短縮率をkとする。図3に示す例では、長さLは、分岐点76から開放端75までの経路長に相当する。このとき、Lは、
0.11×λ×k≦L≦0.50×λ×k ・・・式5a
を満足すると、第1周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にできる。式5aを満足する範囲でLを調整すると、第1周波数帯Fでの共振周波数の変化が大きいのに対し、第2周波数帯Fの共振周波数の変化が小さいからである。
【0064】
は、第1周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にする点で、
0.11×λ×k≦L≦0.49×λ×k ・・・式5b
を満足すると好ましく、
0.11×λ×k≦L≦0.48×λ×k ・・・式5c
を満足するとより好ましい。
【0065】
また、Lは、第1周波数帯Fの電波の空気中における中心波長をλ1Cとするとき、第1周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にする点で、
0.14×λ1C×k≦L≦0.42×λ1C×k ・・・式5d
を満足するとさらに好ましく、
0.14×λ1C×k≦L≦0.41×λ1C×k ・・・式5e
を満足するととくに好ましい。
【0066】
給電部21から分岐点76までの経路長をL、第1周波数帯Fの電波の空気中における波長をλ、ガラス板10の波長短縮率をkとする。図3に示す例では、長さLは、給電部21から第3接続端59を経由して分岐点76までの経路長に相当する。このとき、Lは、
0.11×λ×k≦L≦0.50×λ×k ・・・式6a
を満足すると、第1周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にできる。式6aを満足する範囲でLを調整すると、第1周波数帯Fでの共振周波数の変化が大きいのに対し、第2周波数帯Fの共振周波数の変化が小さいからである。
【0067】
は、第1周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にする点で、
0.11×λ×k≦L≦0.49×λ×k ・・・式6b
を満足すると好ましく、
0.11×λ×k≦L≦0.48×λ×k ・・・式6c
を満足するとより好ましい。
【0068】
また、Lは、第1周波数帯Fの電波の空気中における中心波長をλ1Cとするとき、第1周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にする点で、
0.14×λ1C×k≦L≦0.42×λ1C×k ・・・式6d
を満足するとさらに好ましく、
0.14×λ1C×k≦L≦0.41×λ1C×k ・・・式6e
を満足するととくに好ましい。
【0069】
分岐エレメント70の分岐点76が式5a及び式6aを満足する箇所に位置することで、分岐エレメント70は、給電部21からk×(λ/4)の付近に取り付けられた"λ/4スタブ"として機能する。分岐エレメント70が"λ/4スタブ"として機能することで、第3エレメント50により発生する高次の共振周波数が第3周波数帯Fに出現することを抑制するので、第1周波数帯Fでの共振周波数のチューニングをより容易にできる。
【0070】
図4は、第4実施形態にかかるアンテナを備える車両用窓ガラスの一構成例を示す平面図である。第4実施形態において、上述の実施形態と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで省略する。図4に示す窓ガラス104は、アンテナ20Dを備える。第4実施形態にかかるアンテナ20Dは、第1実施形態にかかるアンテナ20Aと同様の構成を有するので、アンテナ20Aが有する上述の効果と同様の効果を有する。第4実施形態にかかるアンテナ20Dは、分岐エレメント80を有する点で、第1実施形態にかかるアンテナ20Aと相違する。
【0071】
図4において、分岐エレメント80は、第2接続エレメント62における分岐点86から分岐する線状導体であり、分岐点86とは反対側の端部に開放端85を有する。分岐エレメント80を備えることで、UHF帯とVHF帯の両方で共振するようにアンテナ20Dのチューニングをより容易にできる。図4に示す例では、分岐エレメント80は、第3方向(この例では、正のX軸方向)に延伸する部分87を含む。分岐エレメント80は、例えば、分岐点86から部分88及び部分87を経由して開放端85までL字状に折れ曲がって延伸する線条エレメントである。
【0072】
分岐エレメント80の長さをL、第1周波数帯Fの電波の空気中における波長をλ、ガラス板10の波長短縮率をkとする。図4に示す例では、長さLは、分岐点86から開放端85までの経路長に相当する。このとき、Lは、第3実施形態と同様に、上記の式5a、好ましくは式5b、より好ましくは式5c、さらに好ましくは式5d、とくに好ましくは式5eを満足すると、第1周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にできる。
【0073】
給電部21から分岐点86までの経路長をL、第1周波数帯Fの電波の空気中における波長をλ、ガラス板10の波長短縮率をkとする。図4に示す例では、長さLは、給電部21から第2接続端49を経由して分岐点86までの経路長に相当する。このとき、Lは、第3実施形態と同様に、上記の式6a、好ましくは式6b、より好ましくは式6c、さらに好ましくは式6d、とくに好ましくは式6eを満足すると、第1周波数帯Fでの共振周波数のチューニングを容易にできる。
【0074】
分岐エレメント80を、第3実施形態と同様に、"λ/4スタブ"として機能させてもよい。また、分岐エレメント80は、フランジ(窓枠210)と容量結合する部分を有することで"λ/4スタブ"としての機能が向上しアンテナ利得を高められる。図4に示す例では、部分87がフランジと容量結合していると好ましい。なお、分岐エレメント80とフランジとが、容量結合する距離は、150mm以下であればよく、100mm以下が好ましく、50mm以下がより好ましい。該距離の下限は0mm超であればよい。
【0075】
図5は、第5実施形態にかかるアンテナを備える車両用窓ガラスの一構成例を示す平面図である。第5実施形態において、上述の実施形態と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで省略する。図5に示す窓ガラス105は、アンテナ20Eを備える。第5実施形態のアンテナ20Eは、第1実施形態にかかるアンテナ20Aと同様の構成を有するので、アンテナ20Aが有する上述の効果と同様の効果を有する。第5実施形態にかかるアンテナ20Eは、第1接続エレメント61を有するが第2接続エレメント62を有しない点で、第1実施形態にかかるアンテナ20Aと相違する。
【0076】
図5において、第1接続エレメント61は、第1エレメント30の第1接続端39を給電部21に電気的に接続する線条エレメントである。第1接続エレメント61は、第1エレメント30を第2エレメント40に接続するエレメントでもよい。
【0077】
図6は、第6実施形態にかかるアンテナを備える車両用窓ガラスの一構成例を示す平面図である。第6実施形態において、上述の実施形態と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで省略する。図6に示す窓ガラス106は、アンテナ20Fを備える。第6実施形態にかかるアンテナ20Fは、第1実施形態にかかるアンテナ20Aと同様の構成を有するので、アンテナ20Aが有する上述の効果と同様の効果を有する。第6実施形態にかかるアンテナ20Fは、第2接続エレメント62を有するが第1接続エレメント61を有しない点で、第1実施形態にかかるアンテナ20Aと相違する。
【0078】
図6において、第2接続エレメント62は、第3エレメント50の第3接続端59を給電部21に電気的に接続する線条エレメントである。第2接続エレメント62は、第3エレメント50を第2エレメント40に接続するエレメントでもよい。
【0079】
図7は、第3実施形態にかかるアンテナを備える車両用窓ガラスを車両の窓枠に取り付けた窓ガラス取り付け構造の一構成例を示す平面図である。図7には、第3実施形態にかかるアンテナ20Cを示すが、図7についての説明は、他の実施形態にかかるアンテナにも援用できる。図7は、車体200に形成された窓枠210に取り付けた窓ガラス103を車内側からの視点で示す図である。
【0080】
本実施形態にかかる車両用窓ガラスは、水平面に垂直な鉛直方向に略平行に設置される窓ガラス(例えば、サイドガラス)に適用すると、垂直偏波と水平偏波の両方の受信感度(アンテナ利得)が向上する点で特に好適である。図7は、窓ガラス103をサイドガラスに適用した場合を例示する。ガラス板10は、サイドガラス用のガラス板の一例である。
【0081】
窓枠210は、ガラス板10によって覆われる開口部を形成するように、枠辺211a,211b,211c,211dを有する。ガラス板10は、ガラス縁12a,12b,12c,12dを含む外周縁12を有する。ガラス縁12a,12b,12c,12dは、それぞれに対応する枠辺211a,211b,211c,211dに取り付けられる。なお、窓枠210に取り付けた窓ガラス103を車内側からの視点で見ると、ガラス縁12a,12b,12c,12dは、車体200又は窓枠210に隠れるが、図7では、便宜上、実線で示されている。
【0082】
窓枠210は、枠辺211aと211cとに挟まれた角部13を含む。給電部21は、角部13の近傍領域14に設けられていると、ガラス板10が窓枠210に取り付けられたとき、給電部21から延伸するエレメントは、枠辺211aと枠辺211cとのうち少なくとも一方と近接する。これにより、給電部21から延伸するエレメントは、枠辺211aと枠辺211cとのうち少なくとも一方と容量結合するので、垂直偏波又は水平偏波の受信感度(アンテナ20Cのアンテナ利得)が向上する。なお、給電部21から延伸するエレメントと、枠辺211a,211cとが容量結合する距離は、例えば、0mm超150mm以下である。また、該距離は、0mm超100mm以下が好ましく、0mm超50mm以下がより好ましい。
【0083】
例えば、図7において、Y軸方向が鉛直方向に略平行であると、近傍領域14は、ガラス板10の左下の角部13の近傍領域である。鉛直方向に略平行に延伸する第1エレメント30は、鉛直方向に略平行な枠辺211cに近接している。これにより、第1周波数帯Fの水平偏波(例えば、水平偏波の地上デジタルテレビ放送波)の受信感度が向上する。一方、鉛直方向に略平行に延伸する第2エレメント40及び第3エレメント50は、第1エレメント30よりも枠辺211cから離れている。これにより、第2周波数帯Fの垂直偏波(例えば、垂直偏波のDAB Band IIIの放送波)の受信感度が向上する。
【0084】
近傍領域14の外縁は、角部13と、角部13に接続される枠辺211aの一部と、角部13に接続される枠辺211cの一部と、枠辺211aの一部に対向する仮想的な辺14bと、枠辺211cの一部に対向する仮想的な辺14dとを含む。枠辺211aは、ガラス板が取り付けられる窓枠の第1辺の一例であり、ガラス縁12cは、ガラス板が取り付けられる窓枠の第2辺の一例である。
【0085】
例えば、枠辺211に囲まれる開口部(図7の場合、枠辺211を表す実線の内側領域)の面積をS、近傍領域14の面積をSとする。このとき、面積Sは、
(1/100)×S≦S≦(1/9)×S ・・・式7a
を満足するとよい。
【0086】
なお、近傍領域14は、図7ではガラス板10の左下の角部13の近傍領域であるが、ガラス板10の他の角部の近傍領域でもよい。
【0087】
図8は、地上デジタルテレビ放送波、DAB Band III及びFM放送波の帯域における第3実施形態のアンテナ20C(図3)の反射係数S11の一例を示す図である。図8に示す反射係数S11は、アンテナ20Cを備える窓ガラス103を図7に示すサイドガラスに適用した場合の実車での測定結果である。なお、サイドガラスの表面は、水平面に垂直な鉛直方向に略平行になるように設置した。
【0088】
図8において、"FM"は、第1エレメント30、第2エレメント40及び分岐エレメント70をアンテナ20C(図3)から削除したアンテナを表す。"DAB+DTV"は、第3エレメント50及び分岐エレメント70をアンテナ20C(図3)から削除したアンテナを表す。"FM+DAB+DTV"は、アンテナ20C(図3)を表す。図8に示すように、アンテナ20C(図3)によれば、地上デジタルテレビ放送波、DAB Band III及びFM放送波の3つの周波数帯で共振する結果が得られた。
【0089】
なお、図8の測定時の各部(図3)の寸法等の条件は、
:30mm
:5mm
:160mm
:260mm
:270mm
:605mm
:60mm
:60mm
とした。このとき、λ1C≒508mm、λ2C≒1448mm、λ3C≒3259mmであり、k=0.67であるので、D≒0.165×k×λ2Cであり、L≒0.764×k×λ1Cであり、L≒0.278×k×λ2Cであり、L≒0.277×k×λ3Cであり、L≒0.176×k×λ1Cであり、L≒0.176×k×λ1Cであった。
【0090】
図9は、分岐エレメント70の長さと分岐点の位置を変化させたときの、地上デジタルテレビ放送波の帯域におけるアンテナの反射特性S11の一例を示す図である。図10は、分岐エレメント70の長さと分岐点の位置を変化させたときの、DAB Band IIIの帯域におけるアンテナの反射特性S11の一例を示す図である。分岐エレメント70の作用をわかりやすくするため、図9,10の測定には、第1エレメント30及び第2エレメント40をアンテナ20C(図3)から削除したアンテナ(以下、"アンテナA"と称する)を使用した。図9,10に示す反射係数S11は、L=Lを保った状態でL及びLを50mmから230mmまで変化させたときの、アンテナAを備える窓ガラスを図7に示すサイドガラスに適用した場合の実車での測定結果である。
【0091】
図9によれば、L及びLが50mm(上記の式5a及び式6aで定義される下限値"0.11×λ×k"に相当)以上であれば、地上デジタルテレビ放送波の周波数帯で共振する結果が得られた。一方、図10によれば、L及びLが140mm(上記の式5a及び式6aで定義される上限値"0.50×λ×k"に相当)以下であれば、DAB Band IIIの帯域での共振が抑制される結果が得られた。つまり、式5a及び式6aを満足する範囲でL及びLを調整すると、地上デジタルテレビ放送波の周波数帯での共振周波数の変化が大きくなるのに対し、DAB Band IIIの共振周波数の変化が小さくなる結果が得られた。よって、式5a及び式6aを満足する範囲でL及びLを調整すると、地上デジタルテレビ放送波の周波数帯での共振周波数のチューニングを容易にできる結果が得られた。
【0092】
以上、実施形態を説明したが、本開示の技術は上記の実施形態に限定されない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
【0093】
例えば、エレメントの「端部」は、エレメントの延伸の始点又は終点でもよいし、その始点又は終点手前の導体部分である始点近傍又は終点近傍でもよい。また、エレメントの「端部」には、本発明の効果を逸脱しない範囲で、折れ曲がりや折り返しが形成されてもよい。また、エレメント同士の接続部は、曲率を有して接続されてもよい。
【0094】
また、アンテナエレメント及び電極は、例えば、導電性金属を含有するペースト(例えば、銀ペースト等)を窓ガラスの車内側表面にプリントして焼付けて形成される。しかし、アンテナエレメント及び電極の形成方法は、この方法に限定されない。例えば、アンテナエレメント又は電極は、銅等の導電性物質を含有する線状体又は箔状体を窓ガラスの車内側表面又は車外側表面に設けることで形成されてもよい。あるいは、アンテナエレメント又は電極は、窓ガラスに接着剤等により貼付されてもよく、窓ガラス自体の内部に設けられてもよい。
【0095】
また、アンテナエレメントと電極との少なくともいずれかを形成する導体層を合成樹脂製フィルムの内部又はその表面に設け、導体層付き合成樹脂製フィルムを窓ガラスの車内側表面又は車外側表面に設置する構成が採用されてもよい。さらに、アンテナエレメントと電極との少なくともいずれかが形成されたフレキシブル回路基板を窓ガラスの車内側表面又は車外側表面に設置する構成が採用されてもよい。
【0096】
また、図7に示すように、ガラス板10は、その外周縁12に沿って遮光膜11を有し、ガラス板10の平面視で、電極及びアンテナエレメントの一部分又は全体が遮光膜11に重複してもよい。遮光膜11の具体例として、黒色セラミックス膜等のセラミックスが挙げられる。この場合、窓ガラスを車外側から見ると、遮光膜11と平面視で重複する部分が車外から見え難くなり、窓ガラスのデザイン性が向上する。
【符号の説明】
【0097】
10 ガラス板
11 遮光膜
12 外周縁
12a,12b,12c,12d ガラス縁
13 角部
14 近傍領域
14b,14d 辺
20A,20B,20C,20D,20E,20F アンテナ
21 給電部
30 第1エレメント
31 第1部分
32 第2部分
32a 方向転換部
32b 延伸部
35 第1開放端
39 第1接続端
40 第2エレメント
43 第3部分
45 第2開放端
49 第2接続端
50 第3エレメント
54 第4部分
55 第3開放端
59 第3接続端
61 第1接続エレメント
62 第2接続エレメント
70 分岐エレメント
75 開放端
76 分岐点
80 分岐エレメント
85 開放端
86 分岐点
101,102,103,104,105,106 窓ガラス
200 車体
210 窓枠
211,211a,211b,211c,211d 枠辺
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10