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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113223
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】ハーネスクリップ
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/30 20060101AFI20220728BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
H02G3/30
F16B2/08 F
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009293
(22)【出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】米原 正貢
(72)【発明者】
【氏名】東山 正弘
(72)【発明者】
【氏名】後藤 忠光
【テーマコード(参考)】
3J022
5G363
【Fターム(参考)】
3J022DA15
3J022EA16
3J022EC14
3J022EC22
3J022FB08
3J022FB12
3J022GA04
3J022GA16
3J022GB42
3J022GB56
5G363AA07
5G363AA12
5G363BA02
5G363DA13
5G363DA15
5G363DA20
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】受部と蓋部の当接部分に過大な負荷が作用することを防止でき、かつ受部と蓋部の当接部分において相対的なズレが発生することを防止できるハーネスクリップを提供することを目的とする。
【解決手段】ロッカパネル8に対して固定される受部2と、受部2に対して固定される蓋部3とが備えられ、受部2と蓋部3によって形成される内部空間Sに挿通されたワイヤーハーネス10を保持するハーネスクリップ1である。ハーネスクリップ1には、受部2の底壁部分21にロッカパネル8の孔部8aに挿入されるアンカー部23が設けられている。また、蓋部3の側壁部分32に、少なくとも蓋部3に対してロッカパネル8へ向かう方向の荷重Pが作用するとロッカパネル8に当接する荷重受け部36が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定対象に対して固定される受部と、
前記受部に対して固定される蓋部とが備えられ、
前記受部と前記蓋部によって形成される内部空間に挿通されたワイヤーハーネスを保持するハーネスクリップであって、
前記受部の底壁部分に前記固定対象の孔部に挿入されるアンカー部が設けられ、
前記蓋部の側壁部分に、少なくとも前記蓋部に対して前記固定対象へ向かう方向の荷重がかかると当該固定対象に当接する荷重受け部が設けられた
ハーネスクリップ。
【請求項2】
前記蓋部に対して前記固定対象へ向かう方向の荷重がかかっていない状態において、前記荷重受け部が前記固定対象から離間している
請求項1に記載のハーネスクリップ。
【請求項3】
前記荷重受け部が、前記蓋部の側壁部分から側方へ延びる横板と、当該横板から下方へ延びる縦板と、当該縦板から側方へ延びて前記固定対象に当接する底板と、前記横板と前記縦板と前記底板に交わる補強板とを有し、
前記補強板は、前記ワイヤーハーネスの挿通方向における中間位置に設けられた
請求項1又は請求項2に記載のハーネスクリップ。
【請求項4】
前記蓋部の側壁部分が、当該側壁部分における最外端に対して内斜め下方側に向かって延設された延設部分を有し、
前記横板は、前記延設部分から側方へ延びている
請求項3に記載のハーネスクリップ。
【請求項5】
前記受部の端部と前記蓋部の端部に爪板が設けられ、
前記受部に対して前記蓋部を閉じると、前記受部の前記爪板に前記蓋部の前記爪板が係止する係止部を有し、
前記係止部は、前記受部と前記蓋部の当接部分から前記荷重受け部までの間に配置された
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のハーネスクリップ。
【請求項6】
前記受部に前記固定対象に当接する台座部を有し、
前記台座部は、前記受部側の前記爪板を支持する
請求項5に記載のハーネスクリップ。
【請求項7】
前記受部の端部と前記蓋部の端部に凹凸形状が設けられ、
前記受部に対して前記蓋部を閉じると、前記受部の前記凹凸形状に前記蓋部の前記凹凸形状が嵌合する嵌合部を有している
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のハーネスクリップ。
【請求項8】
前記受部の端部にレール部と前記蓋部の端部にフック部とが設けられ、
前記受部に対して前記蓋部を閉じると、前記受部の前記レール部に前記蓋部の前記フック部が係合する係合部を有している
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のハーネスクリップ。
【請求項9】
前記係合部は、前記レール部に隣接される前記受部の端部に荷重受け面が設けられ、前記フック部に隣接される前記蓋部の端部に荷重受け面が設けられた
請求項8に記載のハーネスクリップ。
【請求項10】
前記係合部は、前記受部又は前記蓋部の少なくとも一方に前記固定対象に対して垂直方向に延びる直立部分が設けられた
請求項8又は請求項9に記載のハーネスクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、受部と蓋部によって形成される内部空間に挿通されたワイヤーハーネスを保持するハーネスクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、サイドシルと呼ばれるロッカパネル上にキッキングプレートを配置し、ロッカパネルとキッキングプレートの隙間にワイヤーハーネスを配索した車体構造が知られている。このような車体構造において、ワイヤーハーネスは、ロッカパネルに固定されたハーネスクリップによって保持される(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
ところで、このような車体構造を有する車両に人が乗降する際には、人がキッキングプレートを踏むことにより、キッキングプレートに大きな荷重をかけてしまう場合がある。この場合、キッキングプレートからハーネスクリップに荷重が伝達し、ハーネスクリップの一部に大きな負荷が作用してしまうという問題があった。つまり、ハーネスクリップは、ロッカパネル等の固定対象に対して固定される受部と、受部に対して固定される蓋部とが備えられるところ、受部と蓋部の互いの端部が当接する当接部分(受部に対して蓋部を閉じると互いの端部が当接する当接部分)に過大な負荷が作用してしまうという問題があった。さらには、受部と蓋部の少なくとも一方が変形し、受部と蓋部の当接部分において相対的なズレが発生してしまうという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-68811号公報
【特許文献2】特開2007-89340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、受部と蓋部の当接部分に過大な負荷が作用することを防止でき、かつ受部と蓋部の当接部分において相対的なズレが発生することを防止できるハーネスクリップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、固定対象に対して固定される受部と、前記受部に対して固定される蓋部とが備えられ、前記受部と前記蓋部によって形成される内部空間に挿通されたワイヤーハーネスを保持するハーネスクリップであって、前記受部の底壁部分に前記固定対象の孔部に挿入されるアンカー部が設けられ、前記蓋部の側壁部分に、少なくとも前記蓋部に対して前記固定対象へ向かう方向の荷重がかかると当該固定対象に当接する荷重受け部が設けられたことを特徴としている。
【0007】
この発明により、受部と蓋部の当接部分に過大な負荷が作用することを防止でき、かつ受部と蓋部の当接部分において相対的なズレが発生することを防止できる。
詳述すると、本願発明に係るハーネスクリップは、蓋部の側壁部分に荷重受け部が設けられている。そして、荷重受け部は、少なくとも蓋部に対して固定対象へ向かう方向の荷重がかかると、この固定対象に当接する。こうして、蓋部から受部へ全ての荷重が伝達しないため、受部と蓋部の当接部分に過大な負荷が作用することを防止できる。つまり、蓋部にかかった荷重が全て受部に伝達されず、一部が荷重受け部を介して固定対象に伝達されるため、受部と蓋部の当接部分に過大な負荷が作用することを防止できる。なお、当接部分に過大な負荷が作用することを防止できるということは、当接部分の破損防止や耐久性向上という効果をもたらす。
【0008】
さらに、本願発明に係るハーネスクリップによれば、蓋部の端部から受部の端部へ伝達される荷重が低減するため、受部の変形が抑制されることとなる。このとき、作用反作用の法則によって蓋部の端部における荷重も低減するため、蓋部の変形も抑制されることとなる。このように、受部と蓋部の変形が抑制されることにより、互いの端部の変位(変形に起因するズレ)が小さくなる。なお、互いの端部の変位が小さくなるということは、受部と蓋部の当接部分において相対的なズレが発生することを防止できるということである。そのため、互いの端部がズレるときの異音やズレが戻るときの異音の発生防止という効果をもたらす。
【0009】
この発明の態様として、前記蓋部に対して前記固定対象へ向かう方向の荷重がかかっていない状態において、前記荷重受け部が前記固定対象から離間していてもよい。なお、本願発明に係るハーネスクリップにおいては、荷重受け部が固定対象から上方に浮き上がった状態となっている。
【0010】
この発明により、蓋部に対して固定対象へ向かう方向の荷重がかかっていない状態では荷重受け部と固定対象の間に隙間が生じるため、例えば車両の走行時やサイドドアの開閉時に固定対象であるロッカパネルが振動しても、振動が蓋部に伝わらない。したがって、ロッカパネルの振動によって蓋部がガタついてしまうことを防止できる。さらには、蓋部のガタつきによって蓋部が開いてしまうことを防止できる。
【0011】
またこの発明の態様として、前記荷重受け部が、前記蓋部の側壁部分から側方へ延びる横板と、当該横板から下方へ延びる縦板と、当該縦板から側方へ延びて前記固定対象に当接する底板と、前記横板と前記縦板と前記底板に交わる補強板とを有し、前記補強板は、前記ワイヤーハーネスの挿通方向における中間位置に設けられてもよい。
【0012】
この発明により、荷重受け部を構成する横板と縦板と底板とを補強板でつなげるため、曲げ変形及び捻り変形に対する剛性が高まる。また、補強板が中間位置に設けられるため、ワイヤーハーネスの挿通方向に沿う一方側と他方側で曲げ変形及び捻り変形に対する剛性に偏りがなくなる。さらに、蓋部の側壁部分から側方へ延びる横板が、蓋部の剛性を高める補強リブとして機能する。これにより、受部と蓋部の当接部分に局所的な負荷が作用しないため、受部と蓋部の変形がさらに抑制されることとなる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記蓋部の側壁部分が、当該側壁部分における最外端に対して内斜め下方側に向かって延設された延設部分を有し、前記横板は、前記延設部分から側方へ延びていてもよい。なお、本願発明に係るハーネスクリップにおいては、延設部分も含めて蓋部の全体が円弧状となっている。
【0014】
この発明により、横板を含む荷重受け部が蓋部における最外端の下方側、あるいは、少なくとも大きく離れない位置に配置されるため、曲げ変形及び捻り変形に対する剛性が高まる。つまり、蓋部における側壁部分と荷重受け部をつなぐ横板の長さが短くなるため、横板がつながる蓋部の曲げ変形及び捻り変形に対する剛性が高まる。さらに、受部及び蓋部の本体部分に対して荷重受け部の出っ張りを抑えることができるので、小型化の実現が可能となる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記受部の端部と前記蓋部の端部に爪板が設けられ、前記受部に対して前記蓋部を閉じると、前記受部の前記爪板に前記蓋部の前記爪板が係止する係止部を有し、前記係止部は、前記受部と前記蓋部の当接部分から前記荷重受け部までの間に配置されてもよい。
【0016】
この発明により、蓋部にかかった荷重が全て受部に伝達されず、一部が荷重受け部を介して固定対象に伝達されるため、受部と蓋部の変形が抑制されて係止部に過大な負荷が作用することを防止できる。つまり、受部と蓋部の変形が抑制されることにより、互いの端部の変位が小さくなるため、端部近傍に配置される係止部に過大な負荷が作用することを防止できる。さらに、不用意に係止部の係止状態が解消されることを防止できる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記受部に前記固定対象に当接する台座部を有し、前記台座部は、前記受部側の前記爪板を支持してもよい。なお、本願発明に係るハーネスクリップにおいては、アンカー部を挟み込むように二つの台座部が設けられており、一方の台座部が爪板を支持している。
【0018】
この発明により、台座部によって受部の固定対象に対する位置が規制され、荷重受け部によって蓋部の固定対象に対する位置が規制されるため、受部と蓋部の当接部分に過大な負荷が作用することを防止できる。また、受部と蓋部の変形が抑制されることにより、受部と蓋部の当接部分において相対的なズレが発生することを防止できる。さらに、受部側の爪板が、固定対象に当接して曲げ変形や捻り変形の規制を受ける台座部に設けられることにより、この爪板の変位(変形に起因するズレ)が小さくなる。したがって、係止部を構成する互いの爪板が外れて蓋部が開いてしまうことを防止できる。また、これら爪板が破損してしまうことを防止できる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記受部の端部と前記蓋部の端部に凹凸形状が設けられ、前記受部に対して前記蓋部を閉じると、前記受部の前記凹凸形状に前記蓋部の前記凹凸形状が嵌合する嵌合部を有してもよい。
【0020】
この発明により、受部の端部に設けられた凹凸形状と蓋部の端部に設けられた凹凸形状が嵌合して接触面積が増えるため、受部と蓋部の当接部分に過大な負荷が作用することを防止できる。また、受部と蓋部の少なくとも一方が変形しても互いの端部が嵌合しているため、受部と蓋部の当接部分において相対的なズレが発生することを防止できる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記受部の端部にレール部と前記蓋部の端部にフック部とが設けられ、前記受部に対して前記蓋部を閉じると、前記受部の前記レール部に前記蓋部の前記フック部が係合する係合部を有してもよい。
【0022】
この発明により、レール部をフック部が把持した状態で互いが係合するため、受部と蓋部の当接部分において相対的なズレが発生することを防止できる。このとき、受部の端部に沿って設けられたレール部が、受部の剛性を高める補強リブとして機能するため、受部の変形がさらに抑制されることとなる。また、蓋部の端部に沿って設けられたフック部が、蓋部の剛性を高める補強リブとして機能するため、蓋部の変形がさらに抑制されることとなる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記係合部は、前記レール部に隣接される前記受部の端部に荷重受け面が設けられ、前記フック部に隣接される前記蓋部の端部に荷重受け面が設けられてもよい。なお、本願発明に係るハーネスクリップにおいては、荷重受け面が固定対象に対して平行に設けられ、互いに対向している。
【0024】
この発明により、受部の端部に設けられた荷重受け面と蓋部の端部に設けられた荷重受け面が当接して接触面積が増えるため、受部と蓋部の当接部分に過大な負荷が作用することを防止できる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記係合部は、前記受部又は前記蓋部の少なくとも一方に前記固定対象に対して垂直方向に延びる直立部分が設けられてもよい。なお、本願発明に係るハーネスクリップにおいては、受部側に直立部分が設けられている。
【0026】
この発明により、固定対象に対して垂直方向に直立部分が設けられるため、固定対象へ向かう方向の荷重に対して剛性が高まる。そのため、直立部分が設けられた箇所にて変形が抑制されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ロッカパネルとキッキングプレートの隙間においてワイヤーハーネスを保持しているハーネスクリップの斜視図。
図2】受部に対して蓋部が開いた状態のハーネスクリップの斜視図。
図3】受部に対して蓋部が閉じた状態のハーネスクリップの斜視図。
図4図1における矢印Xの方向から視たハーネスクリップの正面図。
図5図1における矢印Yの方向から視たハーネスクリップの側面図。
図6】ハーネスクリップのヒンジ部側の拡大図。
図7】受部に対して蓋部を閉じる際のヒンジ部側の動作態様を示す説明図。
図8】ハーネスクリップの反ヒンジ部側の拡大図。
図9】受部に対して蓋部を閉じる際の反ヒンジ部側の動作態様を示す説明図。
図10】ハーネスクリップにおける荷重伝達経路を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の一実施例を図面に基づいて詳述する。
図1はロッカパネル8とキッキングプレート9の隙間においてワイヤーハーネス10を保持しているハーネスクリップ1の斜視図であり、図2は受部2に対して蓋部3が開いた状態のハーネスクリップ1の斜視図であり、図3は受部2に対して蓋部3が閉じた状態のハーネスクリップ1の斜視図である。図4図1における矢印Xの方向から視たハーネスクリップ1の正面図であり、図5図1における矢印Yの方向から視たハーネスクリップ1の側面図である。
【0029】
また、図6はハーネスクリップ1のヒンジ部7側の拡大図であり、図7は受部2に対して蓋部3を閉じる際のヒンジ部7側の動作態様を示す説明図である。図8はハーネスクリップ1の反ヒンジ部側の拡大図であり、図9は受部2に対して蓋部3を閉じる際の反ヒンジ部側の動作態様を示す説明図である。そして、図10はハーネスクリップ1における荷重伝達経路を示す説明図である。なお、本願においては、各図面に示すように、前後方向、上下方向、左右方向を規定する。
【0030】
図1に示すように、サイドシルと呼ばれるロッカパネル8の上方には、キッキングプレート9が配置されている。ロッカパネル8とキッキングプレート9の隙間には、ワイヤーハーネス10が配索されている。このワイヤーハーネス10は、ロッカパネル8に固定されたハーネスクリップ1によって保持される。
【0031】
図2及び図3に示すように、ハーネスクリップ1は、ロッカパネル8に対して固定される受部2と、受部2に対して固定される蓋部3とが備えられる。ハーネスクリップ1は、受部2に対して蓋部3を開けることにより、受部2上にワイヤーハーネス10を配置することができる。また、受部2に対して蓋部3を閉じることにより、受部2上に配置されたワイヤーハーネス10を保持することができる。
【0032】
図4及び図5に示すように、ハーネスクリップ1は、受部2及び蓋部3のほか、係合部4、嵌合部5、係止部6を有している。以下に、受部2及び蓋部3について詳述し、その後に係合部4、嵌合部5、係止部6について詳述するものとする。なお、ハーネスクリップ1は、軸方向視にて略円環形状となる。本願においては、受部2と蓋部3によって囲まれる円形状の空間を内部空間Sとする。
【0033】
受部2は、円環形状のうちの約1/4周部分に相当する略円弧状に形成されている。受部2は、内部空間Sの下方側壁部にあたる底壁部分21と、内部空間Sの左方側壁部にあたる側壁部分22とを有している。底壁部分21は、最下部から右側端部にかけて斜め上方へ湾曲する形状となっており、最下部から左側端部にかけて斜め上方へ真っすぐ延びる形状となっている。側壁部分22は、底壁部分21の左側端部から上方へ延びている。
【0034】
また、受部2の下側外周には、アンカー部23が設けられている。アンカー部23は、ロッカパネル8の孔部8aに挿入される円柱部231と、ロッカパネル8の裏面に掛かる爪部232と、ロッカパネル8の表面に当接する傘部233とを有している。傘部233は、ロッカパネル8の表面に当接した状態で上方へ付勢することにより、ロッカパネル8に対するハーネスクリップ1のガタつきをなくす役割をなしている。
【0035】
また、受部2の左下側外周には、第1台座部24が設けられている。図6に示すように、第1台座部24は、底壁部分21の左側中途部から湾曲しつつ下方へ延びる縦板241と、底壁部分21の左側端部近傍から下方へ延びる縦板242と、二つの縦板241、242の下端部をつないで左右方向に延びる底板243とを有している。
【0036】
さらに、受部2の右下側外周には、第2台座部25が設けられている。図8に示すように、第2台座部25は、底壁部分21の右側中途部から湾曲しつつ下方へ延びる縦板251と、底壁部分21の右側端部近傍から下方へ延びる縦板252と、二つの縦板251、252の下端部をつないで左右方向に延びる底板253とを有している。なお、第2台座部25の底板253は、縦板252よりも右方へ延びている。そして、底板253の右側端部から上方に後述する受部側爪板61が延びている。
【0037】
蓋部3は、円環形状のうちの約3/4周部分に相当する略円弧状に形成されている。蓋部3は、内部空間Sの上方側壁部にあたる上壁部分31と、内部空間Sの右方側壁部にあたる側壁部分32と、内部空間Sの左方側壁部にあたる側壁部分33とを有している。上壁部分31と側壁部分32は、最上部から右側端部にかけて連続して湾曲する形状となっており、上壁部分31と側壁部分33は、最上部から左側端部にかけて連続して湾曲する形状となっている。
【0038】
また、蓋部3の左上側外周には、第1プレート固定部34が設けられている。図4に示すように、第1プレート固定部34は、互いに対向する一対の爪板34a、34bで構成されている。第1プレート固定部34は、キッキングプレート9の挿入片91を係止することにより、キッキングプレート9を固定することができる。
【0039】
さらに、蓋部3の右側外周には、第2プレート固定部35が設けられている。図8に示すように、第2プレート固定部35は、側壁部分32の外周面から突出した爪部35aと、この爪部35aに対向する爪板35bとで構成されている。第2プレート固定部35は、キッキングプレート9の挿入片92を係止することにより、キッキングプレート9を固定することができる。なお、第2プレート固定部35の爪板35bは、後述する荷重受け部36の右側端部から上方へ延びている。
【0040】
また、蓋部3の右下側外周には、荷重受け部36が設けられている。図8に示すように、荷重受け部36は、側壁部分32における延設部分32Rから右方へ延びる横板361と、横板361の中央部分から下方へ延びる縦板362と、縦板362の下端部から右方へ延びる底板363とを有している。延設部分32Rとは、側壁部分32における最外端32e(右方側へ最も突出した位置)を回り込んで内斜め下方側に向かって延設された部位を指す。なお、底板363とロッカパネル8は、僅かに隙間があけて対向している。図10に示すように、蓋部3に対してロッカパネル8へ向かう方向の荷重Pがかかると、底板363とロッカパネル8が当接する。
【0041】
さらに、荷重受け部36は、横板361と縦板362と底板363とに垂直に交わる補強板364を有している。図5に示すように、補強板364は、ワイヤーハーネス10の挿通方向における中間位置に設けられている。中間位置とは、荷重受け部36の前側端部と後側端部の中間を指しており、厳密な意味ではなく適宜な範囲を許容した意味である。なお、荷重受け部36の補強板364は、キッキングプレート9の挿入片92を介して横板361に荷重が作用した際に、横板361から底板363に荷重を伝える役割をなしている。そのため、補強板364は、キッキングプレート9の挿入片92を係止する第2プレート固定部35の下方に配置されている。
【0042】
ところで、受部2と蓋部3は、ヒンジ部7によって連結されている。ヒンジ部7は、受部2の側壁部分22と、蓋部3の左側端部に設けられた後述するフック部42とを薄肉の樹脂板でつないだ構成とされている。
【0043】
また、本願発明のハーネスクリップ1は、ヒンジ部7側における受部2と蓋部3の当接部分に係合部4を有している。図6に示すように、係合部4は、受部2の左側端部に設けられたレール部41と、蓋部3の左側端部に設けられたフック部42とで構成されている。
【0044】
レール部41は、受部2の左側端部に一体的に形成されている。図6に示すように、レール部41は、側壁部分22の上端部から左方へ突出し、かつ側壁部分22の上端面22aよりも上方へ延びた形状となっている。なお、レール部41の下端面41aは、左斜め下から右斜め上へ傾斜している。加えて、レール部41に隣接する側壁部分22の上端面22aは、ロッカパネル8に対して平行であり、蓋部3から作用した荷重を受ける荷重受け面43として機能する。
【0045】
フック部42は、蓋部3の左側端部に一体的に形成されている。図6に示すように、フック部42は、側壁部分33の下端部近傍から左方へ延びる横板421と、横板421の左側端部から下方へ延びる縦板422と、縦板422の下端部から右方へ延びる爪板423とで軸方向視にて略C字形状となっている。なお、フック部42を構成する爪板423の上端面42aは、右斜め上から左斜め下へ傾斜している。加えて、フック部42に隣接する側壁部分33の下端面33aは、ロッカパネル8に対して平行であり、受部2から作用した荷重を受ける荷重受け面44として機能する。
【0046】
このような構成とすることにより、受部2に対して蓋部3を閉じる際には、図7に示すように、レール部41の下端面41aにフック部42を構成する爪板423の上端面42aを引っ掛け、その状態のままで蓋部3を閉じる必要がある。蓋部3が完全に閉じている場合は、レール部41をフック部42が把持した状態で係合し、かつ荷重受け面43と荷重受け面44が当接(少なくとも僅かな隙間をあけて対向)することとなる。
【0047】
さらに、本願発明のハーネスクリップ1は、反ヒンジ部側における受部2と蓋部3の当接部分に嵌合部5を有している。図8に示すように、嵌合部5は、受部2の右側端部に設けられた受部側凹凸形状51と、蓋部3の右側端部に設けられた蓋部側凹凸形状52とで構成されている。
【0048】
受部側凹凸形状51は、受部2の右側端部に一体的に形成されている。図8に示すように、受部側凹凸形状51は、ロッカパネル8に対して垂直である垂直面と、ロッカパネル8に対して平行である平行面とで形成された角部511を有している。また、受部側凹凸形状51は、受部2の内周長を延長するように、前述の平行面から上方に突出した突出部512を有している。なお、図2に示すように、突出部512は、受部側凹凸形状51の前後方向における中間部分のみに設けられている。
【0049】
蓋部側凹凸形状52は、蓋部3の右側端部に一体的に形成されている。図8に示すように、蓋部側凹凸形状52は、蓋部3を完全に閉じるとロッカパネル8に対して垂直となる垂直面と、蓋部3を完全に閉じるとロッカパネル8に対して平行となる平行面とで形成された隅部521を有している。また、蓋部側凹凸形状52は、蓋部3の内周長を短縮するように、前述の平行面から上方に切欠いた切欠部522を有している。
【0050】
このような構成とすることにより、受部2に対して蓋部3を閉じる際には、図9に示すように、受部側凹凸形状51に向かって蓋部側凹凸形状52が案内される。そして、蓋部3が完全に閉じている場合は、角部511と隅部521が嵌合することとなる。同時に、突出部512と切欠部522が嵌合することとなる。
【0051】
さらに、本願発明のハーネスクリップ1は、反ヒンジ部側における受部2と蓋部3の当接部分から荷重受け部36までの間に係止部6を有している。図8に示すように、係止部6は、受部2の第2台座部25に設けられた受部側爪板61と、蓋部3の右側端部に設けられた蓋部側爪板62とで構成されている。
【0052】
受部側爪板61は、受部2の第2台座部25に一体的に形成されている。図8に示すように、受部側爪板61は、第2台座部25の底板253から上方に延びている。受部側爪板61は、前述の延設部分32Rの下方側に収まっている。また、受部側爪板61は、その先端部分の受部2側に爪部61a(図9参照)を有している。爪部61aは、受部2の右側端部よりも右方に配置されている。
【0053】
蓋部側爪板62は、蓋部3の右側端部に一体的に形成されている。図8に示すように、蓋部側爪板62は、蓋部3の右側端部近傍から下方に延びている。蓋部側爪板62は、前述の延設部分32Rの下方側に収まっている。また、蓋部側爪板62は、その先端部分の荷重受け部36側に爪部62a(図9参照)を有している。爪部62aは、蓋部3の右側端部に対して、下方に配置されている。なお、図2に示すように、爪部62aは、蓋部側爪板62の前後方向における中間部分のみに設けられている。
【0054】
このような構成とすることにより、受部2に対して蓋部3を閉じる際には、図9に示すように、受部2の右側端部と受部側爪板61の間に蓋部側爪板62が案内される。そして、蓋部3が完全に閉じている場合は、受部側爪板61の爪部61aと蓋部側爪板62の爪部62aが互いに引っ掛かることとなる。こうして、受部2に対して蓋部3を閉じた状態で係止することができるのである。
【0055】
以上のように、ハーネスクリップ1は、ロッカパネル8に対して固定される受部2と、受部2に対して固定される蓋部3とが備えられ、受部2と蓋部3によって形成される内部空間Sに挿通されたワイヤーハーネス10を保持する。ハーネスクリップ1は、受部2の底壁部分21にロッカパネル8の孔部8aに挿入されるアンカー部23が設けられている。また、蓋部3の側壁部分32に、蓋部3に対してロッカパネル8へ向かう方向の荷重Pがかかるとロッカパネル8に当接する荷重受け部36が設けられている。
【0056】
このようなハーネスクリップ1によれば、受部2と蓋部3の当接部分に過大な負荷が作用することを防止でき、かつ受部2と蓋部3の当接部分において相対的なズレが発生することを防止できる。
詳述すると、ハーネスクリップ1は、蓋部3の側壁部分32に荷重受け部36が設けられている。そして、荷重受け部36は、蓋部3に対してロッカパネル8へ向かう方向の荷重Pがかかると、このロッカパネル8に当接する。こうして、蓋部3から受部2へ全ての荷重が伝達しないため、受部2と蓋部3の当接部分に過大な負荷が作用することを防止できる。つまり、蓋部3にかかった荷重Pが全て受部2に伝達されず、一部が荷重受け部36を介してロッカパネル8に伝達されるため、受部2と蓋部3の当接部分に過大な負荷が作用することを防止できる。なお、当接部分に過大な負荷が作用することを防止できるということは、当接部分の破損防止や耐久性向上という効果をもたらす。
【0057】
さらに、このようなハーネスクリップ1によれば、蓋部3の端部から受部2の端部へ伝達される荷重が低減するため、受部2の変形が抑制されることとなる。このとき、作用反作用の法則によって蓋部3の端部における荷重も低減するため、蓋部3の変形も抑制されることとなる。このように、受部2と蓋部3の変形が抑制されることにより、互いの端部の変位(変形に起因するズレ)が小さくなる。なお、互いの端部の変位が小さくなるということは、受部2と蓋部3の当接部分において相対的なズレが発生することを防止できるということである。そのため、互いの端部がズレるときの異音やズレが戻るときの異音の発生防止という効果をもたらす。
【0058】
また、蓋部3に対してロッカパネル8へ向かう方向の荷重Pがかかっていない状態において、荷重受け部36がロッカパネル8から離間している。なお、本願発明に係るハーネスクリップ1においては、荷重受け部36がロッカパネル8から上方に浮き上がった状態となっている。
【0059】
このようなハーネスクリップ1によれば、蓋部3に対してロッカパネル8へ向かう方向の荷重Pがかかっていない場合では荷重受け部36とロッカパネル8の間に隙間が生じるため、例えば車両の走行時やサイドドアの開閉時にロッカパネル8が振動しても、振動が蓋部3に伝わらない。したがって、ロッカパネル8の振動によって蓋部3がガタついてしまうことを防止できる。さらには、蓋部3のガタつきによって蓋部3が開いてしまうことを防止できる。
【0060】
また、荷重受け部36が、蓋部3の側壁部分32から側方へ延びる横板361と、横板361から下方へ延びる縦板362と、縦板362から側方へ延びてロッカパネル8に当接する底板363と、横板361と縦板362と底板363に交わる補強板364とを有し、補強板364は、ワイヤーハーネス10の挿通方向における中間位置に設けられている。
【0061】
このようなハーネスクリップ1によれば、荷重受け部36を構成する横板361と縦板362と底板363とを補強板364でつなげるため、曲げ変形及び捻り変形に対する剛性が高まる。また、補強板364が中間位置に設けられるため、ワイヤーハーネス10の挿通方向に沿う一方側と他方側で曲げ変形及び捻り変形に対する剛性に偏りがなくなる。さらに、蓋部3の側壁部分32から右方へ延びる横板361が、蓋部3の剛性を高める補強リブとして機能する。これにより、受部2と蓋部3の当接部分に局所的な負荷が作用しないため、受部2と蓋部3の変形がさらに抑制されることとなる。
【0062】
また、蓋部3の側壁部分32が、側壁部分32における最外端(右方側へ最も突出した位置)に対して内斜め下方側に向かって延設された延設部分32Rを有し、横板361は、延設部分32Rから右方へ延びている。なお、本願発明に係るハーネスクリップ1においては、延設部分32Rも含めて蓋部3の全体が円弧状となっている。
【0063】
このようなハーネスクリップ1によれば、横板361を含む荷重受け部36が蓋部3における最外端の下方側、あるいは、少なくとも大きく離れない位置に配置されるため、曲げ変形及び捻り変形に対する剛性が高まる。つまり、蓋部3における側壁部分32と荷重受け部36をつなぐ横板361の長さが短くなるため、横板361がつながる蓋部3の曲げ変形及び捻り変形に対する剛性が高まる。さらに、受部2及び蓋部3の本体部分に対して荷重受け部36の出っ張りを抑えることができるので、小型化の実現が可能となる。
【0064】
また、受部2の端部と蓋部3の端部に爪板(受部側爪板61及び蓋部側爪板62)が設けられ、受部2に対して蓋部3を閉じると、受部2の受部側爪板61に蓋部3の蓋部側爪板62が係止する係止部6を有し、係止部6は、受部2と蓋部3の当接部分から荷重受け部36までの間に配置されている。
【0065】
このようなハーネスクリップ1によれば、蓋部3にかかった荷重Pが全て受部2に伝達されず、一部が荷重受け部36を介してロッカパネル8に伝達されるため、受部2と蓋部3の変形が抑制されて係止部6に過大な負荷が作用することを防止できる。つまり、受部2と蓋部3の変形が抑制されることにより、互いの端部の変位が小さくなるため、端部近傍に配置される係止部6に過大な負荷が作用することを防止できる。さらに、不用意に係止部6の係止状態が解消されることを防止できる。
【0066】
また、受部2にロッカパネル8に当接する台座部(第1台座部24及び第2台座部25)を有し、第2台座部25は、受部2側の受部側爪板61を支持している。なお、本願発明に係るハーネスクリップ1においては、アンカー部23を挟み込むように第1台座部24と第2台座部25が設けられており、一方の第2台座部25が受部側爪板61を支持している。
【0067】
このようなハーネスクリップ1によれば、第1台座部24と第2台座部25によって受部2のロッカパネル8に対する位置が規制され、荷重受け部36によって蓋部3のロッカパネル8に対する位置が規制されるため、受部2と蓋部3の当接部分に過大な負荷が作用することを防止できる。また、受部2と蓋部3の変形が抑制されることにより、受部2と蓋部3の当接部分において相対的なズレが発生することを防止できる。さらに、受部2側の受部側爪板61が、ロッカパネル8に当接して曲げ変形や捻り変形の規制を受ける第2台座部25に設けられることにより、この受部側爪板61の変位(変形に起因するズレ)が小さくなる。したがって、係止部6を構成する受部側爪板61と蓋部側爪板62が外れて蓋部3が開いてしまうことを防止できる。また、これら受部側爪板61と蓋部側爪板62が破損してしまうことを防止できる。
【0068】
また、受部2の端部と蓋部3の端部に凹凸形状(受部側凹凸形状51及び蓋部側凹凸形状52)が設けられ、受部2に対して蓋部3を閉じると、受部2の受部側凹凸形状51に蓋部3の蓋部側凹凸形状52が嵌合する嵌合部5を有している。
【0069】
このようなハーネスクリップ1によれば、受部2の端部に設けられた受部側凹凸形状51と蓋部3の端部に設けられた蓋部側凹凸形状52が嵌合して接触面積が増えるため、受部2と蓋部3の当接部分に過大な負荷が作用することを防止できる。また、受部2と蓋部3の少なくとも一方が変形しても互いの端部が嵌合しているため、受部2と蓋部3の当接部分において相対的なズレが発生することを防止できる。
【0070】
また、受部2の端部にレール部41と蓋部3の端部にフック部42とが設けられ、受部2に対して蓋部3を閉じると、受部2のレール部41に蓋部3のフック部42が係合する係合部4を有している。
【0071】
このようなハーネスクリップ1によれば、レール部41をフック部42が把持した状態で互いが係合するため、受部2と蓋部3の当接部分において相対的なズレが発生することを防止できる。このとき、受部2の端部に沿って設けられたレール部41が、受部2の剛性を高める補強リブとして機能するため、受部2の変形がさらに抑制されることとなる。また、蓋部3の端部に沿って設けられたフック部42が、蓋部3の剛性を高める補強リブとして機能するため、蓋部3の変形がさらに抑制されることとなる。
【0072】
また、係合部4は、レール部41に隣接される受部2の端部に荷重受け面43が設けられ、フック部42に隣接される蓋部3の端部に荷重受け面44が設けられている。なお、本願発明に係るハーネスクリップ1においては、荷重受け面43と荷重受け面44がロッカパネル8に対して平行に設けられ、互いに対向している。
【0073】
このようなハーネスクリップ1によれば、受部2の端部に設けられた荷重受け面43と蓋部3の端部に設けられた荷重受け面44が当接して接触面積が増えるため、受部2と蓋部3の当接部分に過大な負荷が作用することを防止できる。
【0074】
また、係合部4は、受部2又は蓋部3の少なくとも一方にロッカパネル8に対して垂直方向に延びる直立部分(受部2の側壁部分22)が設けられている。なお、本願発明に係るハーネスクリップ1においては、受部2側に直立部分(側壁部分22)が設けられている。
【0075】
このようなハーネスクリップ1によれば、ロッカパネル8に対して垂直方向に直立部分(側壁部分22)が設けられるため、ロッカパネル8へ向かう方向の荷重Pに対して剛性が高まる。そのため、直立部分(側壁部分22)が設けられた箇所にて変形が抑制されることとなる。
【0076】
この発明の構成と前述の実施形態との対応において、この発明のハーネスクリップはハーネスクリップ1に対応し、
以下同様に、
受部は受部2に対応し、
蓋部は蓋部3に対応し、
係合部は係合部4に対応し、
嵌合部は嵌合部5に対応し、
係止部は係止部6に対応し、
ヒンジ部はヒンジ部7に対応し、
固定対象はロッカパネル8に対応し、
キッキングプレートはキッキングプレート9に対応し、
ワイヤーハーネスはワイヤーハーネス10に対応し、
受部の底壁部分は底壁部分21に対応し、
アンカー部はアンカー部23に対応し、
台座部は第1台座部24及び第2台座部25に対応し、
蓋部の側壁部分は側壁部分32に対応し、
延設部分は延設部分32Rに対応し、
荷重受け部は荷重受け部36に対応し、
横板は横板361に対応し、
縦板は縦板362に対応し、
底板は底板363に対応し、
補強板は補強板364に対応し、
レール部はレール部41に対応し
フック部はフック部42に対応し、
荷重受け面は荷重受け面43に対応し、
荷重受け面は荷重受け面44に対応し、
凹凸形状は受部側凹凸形状51に対応し、
凹凸形状は蓋部側凹凸形状52に対応し、
爪板は受部側爪板61に対応し、
爪板は蓋部側爪板62に対応し、
荷重は荷重Pに対応し、
内部空間は内部空間Sに対応するも、この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0077】
例えばハーネスクリップ1においては、蓋部3に対してロッカパネル8へ向かう方向の荷重Pがかかった場合に、荷重受け部36がロッカパネル8に当接するのであるが、常に荷重受け部36がロッカパネル8に当接していてもよい。
【0078】
また、ハーネスクリップ1においては、ヒンジ部7側における受部2と蓋部3の当接部分に係合部4を有しているが、係合部4を有しない構成であってもよい。あるいは、係合部4の代わりに嵌合部5を有する構成であってもよい。
【0079】
また、ハーネスクリップ1においては、反ヒンジ部側における受部2と蓋部3の当接部分に嵌合部5を有しているが、嵌合部5を有しない構成であってもよい。あるいは、受部2と蓋部3の当接部分ではない他の箇所に嵌合部5を有する構成であってもよい。
【0080】
さらに、ハーネスクリップ1においては、反ヒンジ部側における受部2と蓋部3の当接部分から荷重受け部36までの間に係止部6を有しているが、係止部6を有しない構成であってもよい。あるいは、受部2と蓋部3の当接部分から荷重受け部36までの間でない他の箇所に係止部6を有する構成であってもよい。
【0081】
加えて、ハーネスクリップ1においては、受部2に対して蓋部3を開閉自在とするヒンジ部7を有しているが、ヒンジ部7を有しない構成であってもよい。あるいは、ヒンジ部7の代わりに係止部6を有する構成であってもよい。この場合、係合部4を有しない構成か係合部4の代わりに嵌合部5を有する構成が考えられる。
【0082】
最後に、本願発明に係るハーネスクリップ1は、キッキングプレート9よりも剛性が高くなるように設計されている。そのため、キッキングプレート9に想定以上の荷重がかかると、ハーネスクリップ1が破損する前にキッキングプレート9が破損する。このようにしたのは、キッキングプレート9に想定以上の荷重がかかっても、交換作業が容易なキッキングプレート9の破損のみで済ませるという思想に基づいたものである。したがって、ハーネスクリップ1の破損を防ぎ、破損に伴う交換作業等の所要時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0083】
1…ハーネスクリップ
2…受部
3…蓋部
4…係合部
5…嵌合部
6…係止部
7…ヒンジ部
8…ロッカパネル
9…キッキングプレート
10…ワイヤーハーネス
21…底壁部分
23…アンカー部
24…第1台座部
25…第2台座部
32…側壁部分
32R…延設部分
36…荷重受け部
361…横板
362…縦板
363…底板
364…補強板
41…レール部
42…フック部
43…荷重受け面
44…荷重受け面
51…受部側凹凸形状
52…蓋部側凹凸形状
61…受部側爪板
62…蓋部側爪板
P…荷重
S…内部空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10