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特開2022-113293真空チャック及びそれを備える検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113293
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】真空チャック及びそれを備える検査装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20220728BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
H01L21/68 P
H01L21/66 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009420
(22)【出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】元山 崇
(72)【発明者】
【氏名】高橋 武孝
(72)【発明者】
【氏名】山本 聡
【テーマコード(参考)】
4M106
5F131
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106BA01
4M106CA31
4M106DD01
4M106DJ02
4M106DJ04
4M106DJ05
4M106DJ06
5F131AA02
5F131AA40
5F131BA39
5F131CA07
5F131EA02
5F131EA10
5F131EB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】反りが大きく形成されたウェーハであっても個別チップに分割する前に半導体チップの機能検査をウェーハの状態で検査する装置を提供する。
【解決手段】真空チャックは、真空チャック本体190の上側表面に形成された複数の同心円状の第1の円周溝152と、複数の第1の円周溝の各々の位置において、上下方向に延び周方向に間隔を置いて形成した複数の第1の穴154と、半径方向に延び第1の穴を半径方向に連通する第1の連通穴158と、チャック本体の上側表面の複数の同心円状の位置に、周方向に間隔を置いて形成された複数の第2の穴132と、半径方向に延び第2の穴を半径方向に連通する第2の連通穴136と、チャック本体の上面側であって、第1の穴及び第2の穴が配設された位置よりも半径方向外側に形成された第2の円周溝140と、第2の円周溝に嵌合するリング状の弾性体とを備える。第2の円周溝は、上面部が底部より狭いアリ溝である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハを真空吸着する、円板状に形成されたチャック本体を有する真空チャックにおいて、
前記チャック本体の上面に形成した複数の同心円状の第1の円周溝と、複数の前記第1の円周溝の各々の位置において、前記チャック本体の上下方向に延び、周方向に間隔を置いて形成した複数の第1の穴と、前記チャック本体の半径方向に延び、複数の前記第1の穴を半径方向に連通する第1の連通路と、前記チャック本体の上面の複数の同心円状の位置に周方向に間隔を置いて形成した複数の第2の穴と、前記チャック本体の半径方向に延び、複数の前記第2の穴を前記チャック本体の半径方向に連通する第2の連通路と、前記チャック本体の上面側であって、前記第1の穴及び前記第2の穴が配設されたすべての位置よりも半径方向外側に形成された第2の円周溝と、前記第2の円周溝に嵌合するリング状の弾性体とを備え、
前記第2の円周溝は、前記チャック本体の上面における半径方向幅が底面における半径方向幅よりも狭く形成されたアリ溝であることを特徴とする真空チャック。
【請求項2】
半導体ウェーハを真空吸着する、円板状に形成されたチャック本体を有する真空チャックにおいて、
前記チャック本体の上面に形成した複数の同心円状の第1の円周溝と、複数の前記第1の円周溝の各々の位置において、前記チャック本体の上下方向に延び、周方向に間隔を置いて形成した複数の第1の穴と、前記チャック本体の半径方向に延び、複数の前記第1の穴を半径方向に連通する第1の連通路と、前記チャック本体の上面の複数の同心円状の位置に周方向に間隔を置いて形成した複数の第2の穴と、前記チャック本体の半径方向に延び、複数の前記第2の穴を前記チャック本体の半径方向に連通する第2の連通路と、前記チャック本体の上面側であって、前記第1の穴及び前記第2の穴が配設されたすべての位置よりも半径方向外側に形成された第2の円周溝と、前記第2の円周溝に嵌合するリング状の弾性体とを備え、前記弾性体は、リング状チューブに形成されているかもしくは発泡材料製の中実Oリング形状に形成されていることを特徴とする真空チャック。
【請求項3】
前記第2の円周溝は、前記チャック本体の上面における半径方向幅が底面における半径方向幅よりも狭く形成されたアリ溝であり、前記チャック本体の上面に形成した複数の同心円状の第3の円周溝と、複数の前記第3の円周溝の各々の位置において、前記チャック本体の上下方向に延び、周方向に間隔を置いて形成した複数の第3の穴と、前記チャック本体の半径方向に延び、前記第3の穴を半径方向に連通する第3の連通路をさらに備え、複数の前記第3の穴は、複数の前記第1の穴と複数の前記第2の穴より半径方向内側に位置した穴を含むことを特徴とする請求項2に記載の真空チャック。
【請求項4】
前記第1の連通路と前記第3の連通路を兼用したことを特徴とする請求項3に記載の真空チャック。
【請求項5】
前記複数の第2の穴の穴径は、前記第1の穴の穴径より大径に形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の真空チャック。
【請求項6】
前記真空チャックにおいて、前記第1の連通路及び前記第2の連通路が形成されている部分よりも下方に、この真空チャックを加熱するヒーターを、もしくはヒーター及びこの真空チャックを冷却する冷却液が流通する冷却液通路を、配設したことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の真空チャック。
【請求項7】
前記第1の穴と前記第3の穴の半径方向配設数の和は、前記第2の穴の半径方向配設数より多いことを特徴とする請求項3または4に記載の真空チャック。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の真空チャックと、ウェーハの上面に形成される複数の半導体チップを一括して測定可能なプローブカードを備えることを特徴とするウェーハの検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハを吸着する真空チャック及びそれを備える検査装置に係り、特に反りを有する半導体ウェーハを吸着するのに好適な、真空チャック及びそれを備える検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高速・高集積化が進み、実装面積を縮小できる他にも、配線の実効インダクタンスも削減できるという利点を有するウェーハレベルパッケージ(WLP:Wafer Level Package)が多く使用される。WLPは、ウェーハ上でチップをパッケージングするもので、より少ない消費電力で、より大きな帯域幅、スピード、及び信頼性を得ることができる。これらの利点を生かして、モバイルコンシューマ機器、ハイエンド・スーパーコンピューティング、ゲーム、人工知能、インターネット関連製品で使用されるマルチチップ・パッケージに、より幅広いフォームファクタが提供可能になっている。
WLPの一種である超広帯域メモリ(HBM:High Band-width Memory)では、1個のプロセッサに積層された複数のメモリを連結しておりその作製では、半導体ウェーハからなる基板上に、一般的には平面形が矩形形状を有する多数の超広帯域メモリチップを形成し、その後約100~200mm程度の大きさの多数の超広帯域メモリに半導体ウェーハを分割している。超広帯域メモリでは、プロセッサと、複数のメモリ(DRAM)が上下方向に積層されたメモリ部とをシリコン介在物(Silicon Interposer)を介して連結しており、プロセッサとメモリ部の連結物が、シリコン介在物を介して基板に連結及び載置される構造になっている。
【0003】
このように形成される超広帯域メモリの機能検査を実施する場合、半導体ウェーハから分割形成された超広帯域メモリチップ単体を個々に検査するよりも、分割する直前のウェーハ状態で各超広帯域メモリを検査するほうが、検査効率が向上することは明らかである。分割されていない半導体ウェーハの状態で、超広帯域メモリを一括して検査するためには、検査用プローブを保護しながら検査プローブを所定位置に容易に位置決めできるよう、半導体ウェーハが平坦である必要がある。しかしながら、以下に記載のように超広帯域メモリが形成されたウェーハでは、反りが生じている場合があり、現状では半導体ウェーハから分割された超広帯域メモリを個々に検査する方法が用いられている。
【0004】
一方、反りのある半導体ウェーハであっても半導体ウェーハの状態でウェーハに形成された、超広帯域メモリではないものの一般の半導体チップを検査する試みもある。超広帯域メモリがその上に形成された直径φ300mmの12インチウェーハでは、超広帯域メモリの数が、例えば400個以上も形成される場合もある。このようなウェーハでは大径化してもその厚さは数百μm程度であるからウェーハ全体の剛性は低く、ウェーハ処理時に、特にパッケージング時に加わる外力等で、ウェーハに反りやうねり(変形)が生じやすくなっている。ウェーハの反りは、周辺部と中央部との間の高さの差で示されるが、その値は数mm程度になる場合もある。
【0005】
ところで、大径のウェーハで周囲部が中心部に比べて大きく反って変形していると、ウェーハをチャックに載置した際に周囲部を真空吸引しても、従来の吸引径では周囲空気を空引きする状態となり、ウェーハの周囲部はチャックに吸引されることなく反り状態を維持したままとなる。もし反り状態のままで検査を実行すると、検査プローブがウェーハ表面に斜めに当接し、最悪の場合、ウェーハもしくは高価なプローブを損傷する虞れがある。このようなウェーハの反りに起因する不具合を解消するために、ウェーハを検査中にウェーハの反りをキャンセルする方法が、従来種々提案されている。
【0006】
特許文献1には、大きな反りが存在するウェーハ等の基板を吸着保持する場合であっても、基板の平坦度を良好に保持することが記載されている。具体的には、基体の上面における連通経路の開口部を囲う位置に、環状に窪んだ環状凹部を形成し、環状の弾性素材からなるシール部材の下部要素を環状凹部に配置する。一方、シール部材の上部要素を基体の上面から突出させる。そして上部要素に、環状の内側方向に向かいながら上方に向かって延在する第1の部分と、環状の外側方向に向かいながら上方に延在する第2の部分を設けている。
【0007】
また特許文献2には、反りが生じているワークを真空吸着するワークステージが、真空を供給する凹部を有する基台と、凹部上に取り付ける複数の貫通孔を形成した吸着板を備えることが記載されている。さらに、反りが生じたワークを吸着保持する吸着板の周辺部にシール用弾性体を設けることも記載されている。
【0008】
特許文献3には、ウェーハ加工機がウェーハの平坦度に影響されずにウェーハを吸着保持できる吸着盤構造を有することが記載されている。具体的には、吸着盤の外周に、ゴム板である弾性素材で形成されスカート状に拡開して吸着盤の吸着面から所定長さ延在した、筒体を設ける。これにより、ウェーハ面と吸着面との間に隙間が生じても、筒体がウェーハ面の反り、うねりあるいは段差に応じて弾性変形しながらウェーハ面に密着し、囲いを形成する。その結果、上記隙間をシールすることができ、エアや研削液が吸引溝から吸引されるのを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-4017号公報
【特許文献2】特開2010-153419号公報
【特許文献3】特開平7-308856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に記載の真空チャックでは、ほぼ円形のセラミックス製基体の周縁部に環状凹部を形成し、その環状凹部に弾性体からなるシール部材を配置している。弾性体は蛇腹またはベローズ状であり、その上端面でウェーハに接する。真空吸着したときに、ウェーハと弾性体の接触位置を変化させることなく、蛇腹状もしくはベローズ状の弾性体が伸縮して基体に対してウェーハを吸着する。これにより、ウェーハは平坦にされて所定位置で保持される。
【0011】
しかしながらこの特許文献1に記載の真空チャックでは、蛇腹状の弾性体を縮める場合に、弾性体を収納する大きな溝をセラミックス基体に設ける必要がある。それとともに、ベローズ状であり単純形状でないので、縮めたときに弾性体の一部が円滑な変形からずれて、面内方向においてセラミック基体の上面とウェーハ裏面の間にはみ出す虞れがある。もし弾性体が溝からはみ出ると、ウェーハ裏面に異物が付着する虞れがあり、異物が付着するとウェーハを吸引したときの吸着力でウェーハが破損する事態も起こり得る。さらに、ウェーハを検査の適正位置に位置決めできなくなるとともに、ウェーハの吸着方向高さが変化し平坦度を担保できなくなり、プローブとの衝突現象を発生する虞れも生じる。超広帯域メモリの機能検査が温度制御環境下での検査、例えば低温機能検査または高温機能検査であれば、ウェーハ位置が適正でないと設定温度がずれる虞れもある。
【0012】
特許文献2に記載のワークステージでは、矩形形状の基台の周縁近傍にシール材を配置してその上にワークを載置し、一方シール材で区画した基台の内部の空間に矩形の穴あき吸着板を配置している。そして、矩形の吸着板の裏面から真空吸引することでシール材を収縮させ、ワークを平板の吸着板に倣わせている。
【0013】
しかしこのワークステージは露光等に使用するものであるから、周縁部で大きな反りがあるワークを下に凸形状でワークステージ上に配置すると、真空吸引前の状態では、ワークはシール材では当接せずに中央部が吸着板に当接することになり、ワークの反りを解消して吸引することが困難になる。このようなワークを真空吸引前の状態でシール材にワークを当接させるためには、シール材の高さを高くすればよいが、シール材の高さを高くしても真空吸引時には吸着板との距離が短いシール材の中央部がすぐに吸着板に当接し、ワークは反りを維持したままもしくはわずかに反りを低減して吸着された状態になりがちである。一方、上に凸形状にしてワークをワークステージ上に配置すると、真空吸引前にワークはシール材に当接することが可能である。しかしながら、シール材で区画された部分の中央部では吸着板との距離が長くなりすぎて十分な真空吸着効果を得ることが難しく、反りが維持された状態となる。
【0014】
特許文献3に記載のウェーハ加工機では、ウェーハの外周研削等の加工時に、チャックが反りのあるウェーハを真空吸着して保持している。そして、チャックは外周部に弾性体を有し、ウェーハの裏面を弾性体に当接させた後、真空吸引してチャックにウェーハを保持する。それとともに、弾性体にウェーハを当接させて、チャックとウェーハ間に隙間を無くし、研削水等がウェーハ裏面に侵入することを防止している。しかしながらこの公報に記載の加工機は研削水の侵入が防げればよいので、ウェーハの反り自体を補正することは考慮されていない。つまり、外周研削等をウェーハが反った形状のまま継続しても、何ら問題を生じていない。
【0015】
本発明は、上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は大径であるがゆえにその周縁部での反りが大きく形成されたウェーハであっても、半導体チップの機能検査を、個別チップに分割する前にウェーハの状態で検査可能にすることにある。そして好ましくは、一括して半導体チップの機能検査をウェーハ状態で可能にすることも目的とする。なお機能検査は温度環境下の試験を含み、ウェーハに形成された全半導体チップに対して均一な温度環境を実現することも目的とする。そして本発明は、これら複数の目的の内の少なくとも一つを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成する本発明の特徴は、半導体ウェーハを真空吸着する、円板状に形成されたチャック本体を有する真空チャックにおいて、前記チャック本体の上面に形成した複数の同心円状の第1の円周溝と、複数の前記第1の円周溝の各々の位置において、前記チャック本体の上下方向に延び、周方向に間隔を置いて形成した複数の第1の穴と、前記チャック本体の半径方向に延び、前記第1の穴を半径方向に連通する第1の連通路と、前記チャック本体の上面の複数の同心円状の位置に周方向に間隔を置いて形成した複数の第2の穴と、前記チャック本体の半径方向に延び、前記第2の穴を前記チャック本体の半径方向に連通する第2の連通路と、前記チャック本体の上面側であって、前記第1の穴及び前記第2の穴が配設された位置よりも半径方向外側に形成された第2の円周溝と、前記第2の円周溝に嵌合するリング状の弾性体とを備え、前記第2の円周溝は、前記チャック本体の上面における半径方向幅が底面における半径方向幅よりも狭く形成されたアリ溝としたことにある。
【0017】
上記目的を達成する本発明の他の特徴は、半導体ウェーハを真空吸着する、円板状に形成されたチャック本体を有する真空チャックにおいて、前記チャック本体の上面に形成した複数の同心円状の第1の円周溝と、複数の前記第1の円周溝の各々の位置において、前記チャック本体の上下方向に延び、周方向に間隔を置いて形成した複数の第1の穴と、前記チャック本体の半径方向に延び、前記第1の穴を半径方向に連通する第1の連通路と、前記チャック本体の上面の複数の同心円状の位置に周方向に間隔を置いて形成した複数の第2の穴と、前記チャック本体の半径方向に延び、前記第2の穴を前記チャック本体の半径方向に連通する第2の連通路と、前記チャック本体の上面側であって、前記第1の穴及び前記第2の穴が配設された位置よりも半径方向外側に形成された第2の円周溝と、前記第2の円周溝に嵌合するリング状の弾性体とを備え、前記弾性体は、リング状チューブに形成されているかもしくは発泡材料製の中実Oリング形状に形成されていることにある。
【0018】
そしてこれらの特徴において、前記チャック本体の上面に形成した複数の同心円状の第3の円周溝と、複数の前記第3の円周溝の各々の位置において、前記チャック本体の上下方向に延び、周方向に間隔を置いて形成した複数の第3の穴と、前記チャック本体の半径方向に延び、前記第3の穴を半径方向に連通する第3の連通路をさらに備え、前記複数の第3の穴は、前記複数の第1の穴と前記複数の第2の穴よりも半径方向内側に位置する穴を含むことが好ましい。なお、前記第1の連通路と前記第3の連通路は兼用されていてもよい。
【0019】
上記特徴において、前記複数の第2の穴の穴径は、前記第1の穴の穴径より大径に形成されていることが好ましく、前記真空チャックにおいて、前記第1の連通路及び前記第2の連通路が形成されている部分よりも下方に、この真空チャックを加熱するヒーター、もしくはヒーター及びこの真空チャックを冷却可能な冷却液が流通する冷却液通路を配設してもよく、前記第1の穴と前記第3の穴の半径方向配設数の和は、前記第2の穴の半径方向配設数より多くしてもよい。
【0020】
上記目的を達成する本発明のさらに他の特徴は、ウェーハの検査装置が上記いずれかの特徴を備える真空チャックと、ウェーハの上面に形成される複数の半導体チップを一括して測定可能なプローブカードを備えることにある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ウェーハの機能検査に用いる、ウェーハを吸着する真空吸着チャックにおいて、真空吸着チャックの外周縁近傍に環状の溝を形成し、その溝に嵌合した状態で真空吸引前にウェーハが有する反り量よりも高く溝から突出する弾性体を真空吸着チャックに配設し、溝近くに開口する真空吸引用通路を形成したので、半導体チップの機能検査を、個別チップに分割する前にウェーハの状態で検査可能になる。また、ウェーハに形成された全半導体チップに対して均一な温度環境を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る検査装置の一実施例の正面図である。
図2】検査装置が検査する半導体ウェーハの一例を示す図である。
図3】本発明に係る真空チャックの一実施例の斜視図である。
図4図3に示した真空チャックの上面図である。
図5】真空チャックの模式断面図である。
図6図4に示した真空チャックの吸引部の詳細形状を示す断面図である。
図7】ウェーハの真空吸着を説明する断面図である。
図8】真空チャックを加熱及び冷却するシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るウェーハ検査用に適した真空チャック及びそれを備える検査装置の一実施例を、図面を用いて説明する。図1は、本発明に係る真空チャック100を備えたウェーハ検査装置200の一実施例の正面図である。本ウェーハ検査装置200では、半導体ウェーハ(以下ウェーハとも称す)W上に形成された半導体チップのパッドに、プローブカード266が有する複数のプローブ264を同時に接触させて、電気的検査を実施する。電気的検査では、各種温度状態における作動状態をもチェックする。そのため、ウェーハWを加熱及び冷却する手段が、一般的に設けられている。
【0024】
図1に示すように、ウェーハ検査装置200は、基台236と、基台236上に設けられた移動ベース242とXYZ-Θテーブル240とを備える。XYZ-Θテーブル240の上面には、ウェーハWが載置されウェーハWを真空吸着する本発明に係る真空チャック(以下チャックとも称す)100が配設されている。詳細を後述するように、真空チャック100は制御装置210が備える温度制御システム300に接続されており、真空チャック100に載置されるウェーハWの温度を制御可能になっている。また、ウェーハWの真空吸着を確実にするために、真空チャック100には真空ポンプ等の真空排気装置270が接続されている。
【0025】
XYZ-Θテーブル240は、ウェーハWをX方向(図で左右方向)に移動させるX軸テーブル244と、ウェーハWをY方向(図で奥行き方向)に移動させるY軸テーブル246と、ウェーハWをZ方向(図で上下方向)に移動させるZ軸テーブル248を備える。XYZ-Θテーブル240は、ウェーハWを上下方向軸周りに回転させるΘテーブル252をさらに備える。
【0026】
XYZ-Θテーブル240を取り囲んで側部には、支柱218が、上方にはヘッドステージ234が設けられている。ヘッドステージ234は、一部に開口部が設けられており、その開口部にカードホルダ262が取り付けられている。カードホルダ262には、ウェーハWに形成される検査対象の半導体チップ450(図2(a)参照)に応じたプローブカード266が取り付けられている。さらに、プローブカード266には半導体チップ450に当接する複数のプローブ264が配設されている。プローブ264はチップ450に形成されるμmオーダーの微小な端子を特定して当接するために、繊細な構造であり、余分な負荷が働かない構造をしている、したがって、プローブ264は検査時に、ウェーハWに所定姿勢及び所定速度で接近するよう設定されている。
【0027】
支柱218の上端には回動可能にテストヘッド220が設けられている。テストヘッド220が回動したときに、テストヘッド220がプローブカード266に対向する面には、コンタクトシリンダ268が設けられており、プローブ264が検出した情報をテストヘッド220を介して制御装置210に送信する。
【0028】
XYZ-Θテーブル240は、移動ベース242を介して図で左右方向に移動可能である。ウェーハWが搬送部230に搬送されていると、XYZ-Θテーブル240は図で右側のウェーハ情報取得・設定位置204に移動し、ウェーハWを真空チャック100に載置及び吸着したのち、ヘッドステージ234に固定されたカメラ232等を用いて位置情報やチップ450情報を取得する。ウェーハの情報を取得したら、XYZ-Θテーブル240は図で左側の検査位置202に移動し、プローブ264を用いた検査を一括して行う。ここで、「一括」とは、ウェーハWを真空チャック100に吸着したまま、XYZ-Θテーブル240を駆動して複数のチップ450、好ましくはウェーハW面上に作成されたすべてのチップ450について連続して検査することを意味する。
【0029】
図2に、本発明に係る真空チャック100が載置及び吸着可能な半導体ウェーハWの一例を示す。なお、真空チャック100が載置及び吸着可能な半導体ウェーハWは図2に示すものに限らず、あらゆる半導体ウェーハWが載置及び吸着可能であり、特に反りを有する半導体ウェーハWであっても本真空チャック100は吸着できるという、格別な特徴を有する。
【0030】
図2(a)は、半導体ウェーハWの上面図であり、図2(b)は半導体ウェーハW上に多数形成される半導体チップ450の一例を示す、側面模式図である。半導体ウェーハWはいわゆる12インチウェーハで直径φ300mmであり、オリエンテーションフラットが形成された面内に、幅約13.3mmで長さ約10.9mmのチップ450が400個以上形成されている。
【0031】
図2(b)に示す半導体チップ450は、超広帯域メモリ(HBM:High Bandwidth Memory)と呼ばれるもので、プロセッサ410と多数層(図では4層)が積層されたメモリ(DRAM)420を有し、積層部のメモリ420の下方にインターフェイス(I/F)426が配置されている。プロセッサ410とメモリ420は、シリコン介在物(インターポーザ)430を介して接続され、プロセッサ410とメモリ420の一体品が、シリコン介在物430を介して半導体ウェーハ基板(シリコン基板)400に接続されている。プロセッサ410とシリコン介在物430の間、シリコン介在物430と半導体ウェーハ基板400の間、及びシリコン介在物430とインターフェイス426の間は、それぞれに形成された端子412、402、422等を用いて接続され、各メモリ420間はリード線424で接続されている。このように形成した半導体チップ450は、プロセッサ410と積層されたメモリ420の重量の相違、及びチップ450を形成する時の加工方法等に起因して、数100μmの厚さに形成される半導体チップ450をひずませる要因となる。
【0032】
図3ないし図6を用いて、図1に示した検査装置200が備える、本発明に係る真空チャック100の一実施例を説明する。図3は、真空チャック100の斜視図であり、図4はその上面図である。図5は、真空チャック100が備えるチャック本体190の模式縦断面図であり、ウェーハWの加熱及び/または冷却手段を備える各種の例を示す図であり、図5(a)は加熱手段のみを備える場合の例であり、図5(b)は、加熱及び冷却の双方の手段を備える最も標準的な場合の例であり、図5(c)は真空吸着部と冷却部が一体化した加熱及び冷却の双方の手段を備える場合の例である。この図5では、左半分を図4のB位置における断面で、右半分を図4のAまたはC位置における断面で示している。図6は、チャック本体190に形成する吸引穴と真空シールの詳細を説明するための図であり、図6(a)は吸引穴の位置関係を説明するためのチャック本体190の縦断面図、図6(b)は弾性体の嵌合状態を説明するための断面図である。
【0033】
以下の説明では、図5(b)に示した標準型の真空チャック100を例にとり説明するが、図5(a)、(c)に示したその他の真空チャック100の場合も同様である。図5(b)に示すように、真空チャック100は、最上部に位置する円板状の真空吸着ブロックであるチャック本体190と、このチャック本体190の下方に配置される円板状の冷却ブロック170と、冷却ブロック170の下方に配置される円板状の加熱ブロック180とを備える。これらのブロック190、170、180は、図示しないボルト等を用いて一体化されて、円柱状の真空チャック100を形成する。冷却ブロック170には、複数の冷却液通路172が形成されており、チラーで冷却された冷却水のような冷却液が流通する。また、加熱ブロック180にはヒーター182が配設されており、渦巻き状に多重に巻回されている。
【0034】
真空チャック100の最上部を形成する真空吸着ブロック190には、ウェーハWを安定して吸着・保持するために従来から多数の穴や溝が形成されている。本発明では、これらの従来の穴や溝に加えて、反りのあるウェーハWに対応可能なように新たな穴と溝及び溝に嵌合する弾性体110を真空チャック100に設けている。
【0035】
図3及び図4に示すように、チャック本体190はウェーハWより大径の円形に形成されており、ウェーハWが載置される部分には、平坦なウェーハWを吸引して固定保持するために、半径方向に複数の第1の吸引穴154が形成されている。これらの吸引穴154は周方向に複数個所(図では4か所、C位置)に設けられており、同心円状に多数形成した深さが浅い溝152内に形成されている。溝152の数は、吸着するウェーハWがφ300mm程度の場合には、好ましくは10個以上、より好ましくは20個以上であり、吸引穴154の周方向個数は、好ましくは4個以上である。
【0036】
なお、チャック本体190の中心側(小径側)では、第1の吸引穴154の個数を減らしてもよい。周方向の同一位置にある各第1の吸引穴154は、外周部から半径方向に延びた第1の連通路158で連通している。チャック本体190の外周部には、第1の連通路158のそれぞれの位置に応じて真空吸引用の金具が取り付けられた真空吸引配管接続部120が設けられており(図3参照)、配管を介して真空排気装置270に接続されている(図1参照)。これにより、チャック本体190の上面全体が真空吸引される。
【0037】
本実施例では、チャック本体190の中心部には、真空解除後にウェーハWを真空チャックから容易に引き離すことができるように押しピンが配設される。そのため、真空チャックには周方向に間隔を置いて押しピン穴124が形成されている。このようにチャック本体190の中心部には、後述する温度センサを配設するための加工含めて種々の加工がなされるので、加工が集中する。過度な加工を避けるため、第1の吸引穴154を中心部付近では省略し、主としてチャック本体190の中心部を真空吸引するための第3の吸引穴156を、第1の吸引穴154とは異なる周方向位置(図ではA位置)に形成している。第1の吸引穴154の場合と同様に、第3の吸引穴156に対しても、チャック本体190の外周から中心に向けて第3の連通路160が形成されている。なお、第1の吸引穴154と第3の吸引穴156の径は、同一に設定している。これら第1、第3の吸引穴154、156を用いてウェーハWの裏面を真空吸引することにより、平坦なウェーハWの場合には、何ら支障なくウェーハWを真空チャック100に固定・保持でき、検査装置200における各種検査をプログラム通り実行できる。なお本実施例では、第3の吸引穴156と第3の連通路160を第1の吸引穴154と第1の連通路158とは別位置に設けているが、複数ある第1の連通路158の内の1個とそれに対応する第1の吸引穴154を第3の連通路160と第3の吸引穴156として、兼用することもできる。
【0038】
ところでウェーハWの半導体ウェーハ基板400が外径に対して非常に薄い大径のウェーハWでは、特にHBMのような半導体チップ450が形成されているウェーハWでは、その周縁部で反り量が大きくなり、上記第1、第3の吸引穴154、156だけを用いて吸引しても周縁部でウェーハWと真空チャック100の間に隙間が生じる場合がある。その場合上述したように、ウェーハWを検査しようとすると、プローブ264が正規姿勢とは異なる姿勢でウェーハWの表面に当接する虞れがある。ウェーハW検査用のプローブ264は繊細な器具であり、正規姿勢または所定姿勢から外れてウェーハWに当接すると、高価なプローブ264が破損する一因になる。
【0039】
このような不具合の発生を防止するために、本発明では、ウェーハWの特に周縁部を平坦保持する、円周溝140と第2の吸引穴132を設けている。つまり、φ300mmウェーハが載置される位置であって、その外周近傍にシール用の弾性体110が嵌合可能な円周溝140を形成する。図6(b)を参照して、溝140の断面は、角部をR加工したほぼ台形状をしており、チャック本体190の上面側の幅Wが底面側の幅Wより狭いアリ溝となっている。
【0040】
溝140に嵌合する弾性体110は、変形が容易でかつ、真空吸引前は溝140からはみ出ている部分が、真空吸引時及び吸引後に溝140の幅内にとどまり、位置ずれしてウェーハWとチャック本体190間に噛みこむことを発生せず、最終的に溝140内にすべてが収容されるように構成する。弾性体110は、シリコン樹脂製や4フッ化エチレン樹脂製のチューブであるか、発泡材料で構成された中実Oリングである。発泡材料としては、シリコン樹脂が好ましい。
【0041】
弾性体110が4フッ化エチレン樹脂のチューブの場合には、チューブ110を所定長さに切断してからリング状にして、変形させながらアリ溝140内に保持する。チューブ110をアリ溝140内に保持した状態では、チューブ110の最大径d部は、アリ溝140内にほとんど元来のチューブ110の外径(呼び径に相当)を保持したままとどまる。この状態では、チューブ110は自然高さhである。この自然高さhは、検査対象のウェーハWの外周部、より正確には、この弾性体110が当接する位置でのウェーハWの最大許容反り量に対応する。
【0042】
すなわち、ウェーハWが弾性体110に当接する位置での反り量がh以下の場合には、チャック本体190にウェーハWを載置した状態では、ウェーハWの外周部は弾性体110で仕切られ、チャック本体190とウェーハW間に密閉空間を構成できる。これにより、以下に説明する真空吸引が可能になる。これに対して、ウェーハWの反りがhを超えていると、チャック本体190とウェーハW間には周縁部で隙間が形成され、ウェーハWを平坦化する真空吸引を実行しても空引きとなる虞れがある。多くのウェーハWでは、反り量は2mm以下であるから、本実施例においても、hが2mm以上となるようにアリ溝140の大きさとチューブ110の大きさ(径及び厚さ、または剛性)を設定する。
【0043】
以上のようにアリ溝140を形成すると、チャック本体190とウェーハW間には密閉空間を構成できるが、その密閉空間は第1の吸引穴154や第3の吸引穴156を用いて真空吸引する場合の隙間に比べて大きいうえに、吸引によりウェーハWの半導体ウェーハ基板400の剛性に抗してウェーハWを平坦にする力を発生する必要がある。そこで、本実施例では、第1の吸引穴154や第3の吸引穴156に比して大径の第2の吸引穴132を、チャック本体190の外径側を中心に配置する。図4に示すように、第1、第3の吸引穴154、156とは周方向に異なる複数の位置(本実施例では4か所:B位置)であって、円周アリ溝140が形成された外径位置よりも内径側の複数か所に、第2の吸引穴132を設ける。本実施例の場合は、径方向5か所に設けている。同じ周方向位置にある第2の吸引穴132同士は、外周側から中心に向けて形成された第2の連通路136で連通される。
【0044】
図6(a)に第1~第3の吸引穴154、132、156と第1~第3の連通路158、136、160及びアリ溝140の位置関係を、周方向に重ねて示す。第1、第3の吸引穴154、156の直径φD1、φDは1mm程度であり、それらは、チャック本体190の半径方向に間隔を置いて形成されている。そして、複数の第1の吸引穴154を連通する第1の連通路158は、複数の第3の吸引穴156を連結する第3の連通路160よりも半径方向に外側の位置で止まっている。
【0045】
主としてウェーハWの外周側の反りを矯正するための複数の第2の吸引穴132は、直径φDが、φDやφDの数倍の径である、2~3mm程度に形成されており、半径方向に第1の吸引穴154の間であって、チャック本体190の大径側を中心に複数位置に形成されている。第2の吸引穴132を連通する第2の連通路136がチャック本体190の外周部から中心に向けて延びており、その長さは第1の連通路158よりも一般的には短い。すなわち、第2の吸引穴132は、ウェーハWの外周縁部のそり矯正に貢献するものであることが第2の吸引穴132の配置から分かる。なお、第1の吸引穴154及び第3の吸引穴156が形成されるチャック本体190の半径位置には、1mm以下の深さの全円周溝152が形成されており、吸引ムラを低減している。また、第1の吸引穴154と第2の吸引穴132の周方向の個数はほぼ同じであるが、半径方向には第1の吸引穴154が10~25個程度あるのに対して、第2の吸引穴132は5個程度である。したがって第3の吸引穴156をも含めると、第1、第3の吸引穴154、156の総個数は第2の吸引穴132の数より多い。
【0046】
第1~第3の吸引穴154、132、156よりも外径側には、断面台形状の上述アリ溝140が配置されている。すなわちアリ溝140は、最外周側の円周溝152または第1の吸引穴154よりも外径側に位置しており、アリ溝140よりも外径側の空気を第1~第3の吸引穴154、132、156が空引きするのを防止するシール溝である。
【0047】
図7に、以上のように構成した本発明の真空チャック100を用いて大口径ウェーハWを吸引する一例を、模式的に示す。なお真空吸引方法は、本方法に限らず、すべての吸引穴から同時にまたは同時に異なる種類の吸引穴から吸引するようにしてもよい。図7(a)は、チャック本体190にウェーハWを載置した状態である。真空吸引は行われてはおらず、弾性体110の下に凸の反りのあるウェーハの外周部が当接し、ウェーハWとの間に密閉空間が形成されるとともに、弾性体110にはウェーハの自重のみが作用している。このとき、弾性体110は、ほぼ自然高さまたはわずかに変形した高さhで静定している。
【0048】
この状態から、図7(b)に示すように、反りが少なくほぼ平坦なウェーハWの中心部を、第3の吸引穴156を用いて先行して真空吸着する。これにより、真空吸引時にウェーハWが水平面内で移動しないようにする。ウェーハWをチャック本体190に対して固定することで、図7(c)に示す周縁部の真空吸着時の気流の発生により、ウェーハWが位置ずれするのを防止する。
【0049】
次に、第1の吸引穴154とともに第2の吸引穴132から真空吸引する。なお、第1の吸引穴154からの真空吸引は、第2の吸引穴132からの真空吸引によりウェーハWが平坦に矯正された後に開始してもよい。第2の吸引穴132は、その径が第1の吸引穴154の径の数倍あるので吸引力が大きく、ウェーハWの剛性に抗してウェーハWを平坦にすることが可能である。このように第2の吸引穴132からの吸引は、大きな力を発生させるので、ウェーハWを水平面内で移動させる力も生じやすい。そのため、第3の吸引穴156や第1の吸引穴154からの吸引を併用する。
【0050】
一旦ウェーハWがチャック本体190に吸引されると、弾性体110によるシール作用により、ウェーハWとチャック本体190の吸着面102の間からの漏れはほとんど生じないから、真空吸着は第1、第3の吸引穴154、156からの吸引のみ、もしくはわずかに第2の吸引穴132からの吸引を併用することで対処できる。
【0051】
図7(d)~(f)は、図7(a)~(c)に示した各状態におけるアリ溝140内の弾性体110の状態を拡大して模式的に示す図である。真空吸引していない状態で弾性体110にウェーハWの裏面を当接させると、チャック本体190の吸着面102からの弾性体110の高さは自然高さh程度になる。一方、ウェーハWの中心側だけを吸引したときには、弾性体110はわずかにその高さを減らし、吸着面102からの高さはh(<h)となる。次いで、第2の吸引穴132から真空吸引してウェーハWを平坦化すると、弾性体110はアリ溝140からはみ出すことなく実質的にアリ溝140内に全体が収容される。これにより、ウェーハWは完全に平坦化され、ウェーハWが傾いて、プローブ264と誤接触することが防止される。
【0052】
図8に、図5に示した加熱・冷却ブロックを用いた、ウェーハWの温度制御ブロック図を示す。ここでは、ウェーハWの加熱・制御を、図5(b)に示す標準的な真空チャック100の場合を例にとり説明するが、その他の真空チャック(図5(a)、(c))でも同様である。ウェーハWが載置される真空チャック100にはヒーター182が内蔵されており、図示しないが冷却液流路も内部に形成されている。
【0053】
冷却液流路は、検査装置200から遠隔に配置されたチラーユニット310が備える冷却ユニット(冷却装置)314に冷却液配管316で接続されている。冷却液配管316は、チラーユニット310で発生した冷却液を真空チャック100に送給する往配管316aと、真空チャック100で暖められた冷却液をチラーユニット310に戻す還配管316bとを有する。冷却ユニット314は、チラーユニット310が備えるチラー制御部312により信号線308を介して制御される。真空チャック100に内蔵されたヒーター182は、電力線338により温度制御装置320が備えるヒータ制御器324に接続されており、ヒータ制御器324から電力が供給される。
【0054】
このように構成した加熱・冷却機構を用いて真空チャック100の表面温度を均一に所定温度、例えば-10℃~+100℃の内の1点または多点に制御するために、真空チャック100の異なる5点に温度センサ334が埋め込まれている。温度センサ334の出力は5ch変換ボード(A/D変換器)332に入力されてデジタル信号に変化され、温度制御装置320が備える主制御装置322に信号線336を介して入力される。主制御装置322は、信号線326を介してヒータ制御器324に接続されているとともに、信号線318を介してチラー制御部312にも接続されている。したがって、温度センサ334が検出した真空チャック100の吸着面102の温度、換言すればウェーハWの温度がフィードバックされて、ヒーター182の温度と冷却液の温度が制御される。その際、ウェーハWに対向して配置される検査手段であるプローバ(CPU)222の検出結果も、温度制御装置320にフィードバックされる。
【0055】
以上説明したように、本実施例の真空チャックによれば、ウェーハの周縁部が反っている300mmの大口径ウェーハであっても、反り量が2mm程度までであれば十分に平坦化することができ、ウェーハでの機能検査を一括して実行することが可能になった。また、ウェーハの反りは下に凸であれば上記反り範囲まで確実に平坦化できるし、下に凸であっても2mm程度までであれば確実に平坦化できることを確認した。
【0056】
なお、ウェーハWを本真空チャック100を用いて温度制御した試験・検査では、高温時に反りが常温時よりも増幅されて拡大する傾向があった。そのため、常温で2mmの反り量が100℃では反り量が4mmにもなり、その温度で真空吸引しようとしても、許容反り量を超えた隙間が形成されて真空吸引できない。このような不具合に対しては、真空吸引するタイミングを常温時とし、真空吸引したままの状態で常温から試験・検査温度までウェーハの温度を上昇させることで対応可能であった。これより、高温時であっても、その温度状態で2mm程度の反り量しかないウェーハWであれば、温度に関係なく良好な試験・検査を実行できることが判明した。
【0057】
上記実施例では弾性体をチューブとしたが、弾性体を中実の発泡樹脂とすることで、真空吸引したときに内部の気泡部から空気が吸引されて弾性体全体が収縮し、弾性体全体をアリ溝内に収容するよう変形することができる。したがって、チューブ式の弾性体同様に、真空吸引時に弾性体が、アリ溝から半径方向内外側にはみ出て真空吸引を妨げるもしくはウェーハを傾斜して吸引することを防止でき、ウェーハを平坦に矯正できる。発泡材料を使用した場合、真空吸引を解除しても中実であるから真空吸引前の状態にほぼ完全に復元して剛性をも回復する。したがって、新たなウェーハが載置されてもその前のウェーハと同じ状態を再現できる。すなわち同じ程度の反り量のウェーハまで、検査可能となる。これにより、プローブカードが備えるプローブとウェーハが不適当な姿勢で接触することに起因する、プローブの破損の発生を防止できる。
【符号の説明】
【0058】
100…真空チャック、102…吸着面、110…弾性体(チューブまたは発泡材料製Oリング)、120…真空吸引配管接続部、124…押しピン穴、132…第2の(吸引)穴、136…第2の連通路、140…(円周)溝またはアリ溝、152…(円周)溝、154…第1の(吸引)穴、156…第3の(吸引)穴、158…第1の連通路、160…第3の連通路、170…冷却ブロック、172…冷却液通路、180…加熱ブロック、182…ヒーター、190…吸着ブロック(チャック本体)、200…(ウェーハ)検査装置、202…検査位置、204…ウェーハ情報取得・設定位置、210…制御装置、218…支柱、220…テストヘッド、222…プローバ(CPU)、230…(ウェーハ)搬送部、232…カメラ、234…ヘッドステージ、236…基台、240…XYZ-Θテーブル、242…移動ベース、244…X軸テーブル、246…Y軸テーブル、248…Z軸テーブル、252…Θテーブル、262…カードホルダ、264…プローブ、266…プローブカード、268…コンタクトシリンダ、270…真空排気装置、300…温度制御システム、310…チラーユニット、312…チラー制御部、314…冷却ユニット(冷却装置)、316…冷却液配管、316a…往配管、316b…還配管、318…信号線、320…温度制御装置、322…主制御装置、324…ヒータ制御器、326…信号線、332…5ch変換ボード(A/D変換器)、336…信号線、338…電力線、334…温度センサ、400…半導体ウェーハ基板(シリコン基板)、402…端子、410…プロセッサ、412…端子、420…メモリ(DRAM)、422…端子、424…リード線、426…インターフェイス(I/F)、430…シリコン介在物(インターポーザ)、450…(半導体)チップ、d…弾性体最大径、D…第1の吸引穴径、D…第2の吸引穴径、D…第3の吸引穴径、h…弾性体の自然高さ、h…弾性体の高さ(中間位置)、W…(半導体)ウェーハ、W…アリ溝幅(底面)、W…アリ溝幅(上面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8